特許第6986097号(P6986097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986097
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20211213BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61F13/49 315A
   A61F13/494 111
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-561499(P2019-561499)
(86)(22)【出願日】2017年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2017047070
(87)【国際公開番号】WO2019130510
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 光佑
(72)【発明者】
【氏名】植田 章之
(72)【発明者】
【氏名】福田 優子
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰之
【審査官】 武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−75277(JP,A)
【文献】 特開2014−42742(JP,A)
【文献】 特開2006−223881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液保持性の吸収体と、該吸収体の長手方向に沿う両側部それぞれから幅方向外方に延出し該側部に沿って延びる脚周りカフとを備える吸収性物品であって、
前記脚周りカフには、それぞれ、前記長手方向に沿って延びるレッグ弾性部材が伸長状態で2本以上配されており、
前記脚周りカフは、前記レッグ弾性部材の中で、最も前記幅方向の外方に位置する最外レッグ弾性部材と最も前記幅方向の内側に位置する最内レッグ弾性部材との間の前記幅方向中央を通り前記長手方向に延びる仮想線を境に、該仮想線から前記最外レッグ弾性部材を含むまでの脚周りカフ第1領域と、該仮想線から前記最内レッグ弾性部材を含むまでの脚周りカフ第2領域とに区分され、
前記脚周りカフ第1領域及び前記脚周りカフ第2領域の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、
前記伸び量が5であるときには、前記脚周りカフ第1領域の応力が、前記脚周りカフ第2領域の応力よりも大きく、
前記伸び量が100であるときには、前記脚周りカフ第2領域の応力が、前記脚周りカフ第1領域の応力よりも大きい、吸収性物品。
【請求項2】
前記脚周りカフの自然状態において、前記最外レッグ弾性部材が配されている部位での前記脚周りカフ第1領域の長さが、前記最内レッグ弾性部材が配されている部位での前記脚周りカフ第2領域の長さよりも短い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記最外レッグ弾性部材の伸長率は、前記最内レッグ弾性部材の伸長率よりも高い、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記最内レッグ弾性部材のモジュラスは、前記最外レッグ弾性部材のモジュラスよりも高い、請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記最内レッグ弾性部材の太さは、前記最外レッグ弾性部材の太さよりも太い、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記脚周りカフには、前記レッグ弾性部材が3本以上配されており、
前記脚周りカフ第2領域に配される前記レッグ弾性部材の本数が、前記脚周りカフ第1領域に配される前記レッグ弾性部材の本数よりも多い、請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記脚周りカフ第1領域及び前記脚周りカフ第2領域それぞれに、前記レッグ弾性部材が複数本配されており、
前記脚周りカフ第2領域の前記レッグ弾性部材の間隔は、前記脚周りカフ第1領域の前記レッグ弾性部材の間隔と同じか、又は該脚周りカフ第1領域の前記レッグ弾性部材の間隔よりも短い、請求項1〜6の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記伸び量が6以上70以下の範囲で、前記脚周りカフ第1領域の応力と、前記脚周りカフ第2領域の応力との大小関係が逆転する、請求項1〜7の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記脚周りカフには、前記レッグ弾性部材が3本以上配されており、
前記最外レッグ弾性部材の伸長率は、前記脚周りカフ第2領域に配置されたすべての弾性部材の伸長率よりも高く、
前記レッグ弾性部材は、その伸長率が、前記最外レッグ弾性部材側から前記最内レッグ弾性部材側に向かって、漸次低くなっている、請求項1〜8の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記脚周りカフには、前記レッグ弾性部材が3本以上配されており、
前記脚周りカフ第2領域に配置されたすべての弾性部材の太さは、前記最外レッグ弾性部材の太さよりも太く、
前記レッグ弾性部材は、その太さが、前記最外レッグ弾性部材側から前記最内レッグ弾性部材側に向かって、漸次太くなっている、請求項1〜9の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収体の非肌対向面には液難透過性の裏面シートが配されており、
前記吸収性物品を前記幅方向に沿って断面視して、前記裏面シートは、縦方向に沿う両側縁が、それぞれ、前記脚周りカフ第2領域内まで延在している、請求項1〜10の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収性物品は、使い捨ておむつであり、
着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、
前記脚周りカフは、前記腹側部と前記背側部とに亘って配されており、
前記レッグ弾性部材が前記脚周りカフに固定されている固定端部が、少なくとも前記腹側部内まで延在している、請求項1〜11の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性物品は、使い捨ておむつであり、
着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、
前記腹側部及び前記背側部には、前記幅方向に伸長状態で配された胴周り弾性部材が配されており、
前記脚周りカフは、前記腹側部と前記背側部とに亘って配されており、
前記レッグ弾性部材が前記脚周りカフに固定されている固定端部は、前記腹側部に配された胴周り弾性部材及び前記背側部に配された胴周り弾性部材の何れか一方よりも、着用者の胴が通されるウエスト開口部寄りに位置している、請求項1〜12の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記脚周りカフよりも前記幅方向内側に防漏カフを備え、該防漏カフが前記吸収体の前記側部に沿って延び、
前記防漏カフには、前記長手方向に沿って延びる防漏カフ用弾性部材が伸長状態で1本以上配されており、
前記吸収体の肌対向面には液透過性の表面シートが配され、
前記防漏カフは、前記長手方向の両端部が、前記吸収体上に位置する前記表面シートの肌対向面に固定されている、請求項1〜13の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記吸収性物品を前記幅方向に沿って断面視して、
前記吸収体の前記側部の側縁と前記最内レッグ弾性部材との距離が、該吸収体の該側部の側縁と、前記防漏カフ用弾性部材の内で該側縁から最も前記防漏カフの自由端部側に位置する該防漏カフ用弾性部材との距離よりも短い、請求項14に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚周りカフを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品では、該物品の着用状態において、着用者の脚周りでの密着性を高め、該物品からの液漏れを防止することを目的として、吸収体の長手方向に沿う両側部よりも外方に、該側部に沿って延びる脚周りカフが配置されることがある。例えば特許文献1には、吸収体の両側部よりも外方に弾性サイドフラップを設け、弾性サイドフラップの弾性域を自由端部側に設け、自由端部側に位置する第1弾性域と、第1弾性域の横方向の内側に位置する第2弾性域とに区分した際に、第1弾性域の伸長応力が第2弾性域の伸長応力よりも低くなるようにした吸収性物品が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、吸収体の両側部よりも外方に起立カフスを設け、該起立カフスが、これを長手方向に伸長した状態で、その起立端から物品の中央側に向かう起立部と、途中で折り返し反転して外側に向かう平面当り部とを有する使い捨て吸収性物品が記載されている。特許文献2に記載の使い捨て吸収性物品は、前記平面当り部及び前記起立部に弾性伸縮部材をそれぞれ幅方向に間隔をおいて複数本配している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−171692号公報
【特許文献2】特開2001−25485号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、液保持性の吸収体と、該吸収体の長手方向に沿う両側部それぞれから幅方向外方に延出し該側部に沿って延びる脚周りカフとを備える吸収性物品を提供するものである。前記脚周りカフには、それぞれ、前記長手方向に沿って延びるレッグ弾性部材が伸長状態で2本以上配されている。前記脚周りカフは、前記レッグ弾性部材の中で、最も前記幅方向の外方に位置する最外レッグ弾性部材と最も前記幅方向の内側に位置する最内レッグ弾性部材との間の前記幅方向中央を通り前記長手方向に延びる仮想線を境に、該仮想線から前記最外レッグ弾性部材を含むまでの脚周りカフ第1領域と、該仮想線から前記最内レッグ弾性部材を含むまでの脚周りカフ第2領域とに区分できる。前記脚周りカフ第1領域及び前記脚周りカフ第2領域の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、前記伸び量が5であるときには、前記脚周りカフ第1領域の応力が、前記脚周りカフ第2領域の応力よりも大きい。そして、前記伸び量が100であるときには、前記脚周りカフ第2領域の応力が、前記脚周りカフ第1領域の応力よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
[図1]図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを模式的に示す斜視図である。
[図2]図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側を模式的に示す展開平面図である。
[図3]図3は、図1に示すおむつを分解して模式的に示す分解斜視図である。
[図4]図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。
[図5]図5は、脚周りカフにおける脚周りカフ第2領域及び脚周りカフ第1領域の伸びと応力との関係を示すグラフである。
[図6]図6は、図1に示すおむつを着用者に着用させたときの股間部の状態を示す模式図である。
[図7]図7は、図1に示すおむつを着用者に着用させたときの状態を示す模式図である。
[図8]図8は、本発明の吸収性物品の他の実施形態の使い捨ておむつにおける横方向に沿う断面を模式的に示す断面図(図4相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
吸収性物品に脚周りカフを設けることで、吸収性物品と着用者の脚周りとの密着性は向上する傾向にある。しかし、着用直後の着用状態から着用者の動作に起因して、脚周りカフが着用者の脚周りへ当接する程度が変化して、吸収性物品と着用者の脚周りとの密着性が低下し両者間に液漏れの発生の一因となる隙間が生じることがある。そのような隙間を防止するために、着用時から脚周りカフに強い伸縮応力を発現させようとすると、着用中に脚周りに脚周りカフによる締め付け跡等を形成してしまい着用者への負担が大きくなってしまう。着用直後から着用中においても隙間を生じ難くし、脚周りカフによる締め付け跡も付き難い脚周りカフに関し、特許文献1及び特許文献2には、何ら記載されていない。
【0008】
本発明は、脚周りカフを有する吸収性物品の改良に関し、更に詳しくは、着用直後の脚周りカフが股下部内に侵入し、親水幅(体液を吸収できる範囲)を狭めず、着用者の動作に起因して吸収性物品と着用者の脚周りとの距離が変化して股下空間が形成されるような状態でも、脚周りカフが隙間なく着用者の脚周りに沿うことでモレを防止でき、装着時において、着用者の脚周りに脚周りカフによる締め付け跡が付き難い吸収性物品に関する。
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1の概略構成が示されている。おむつ1は、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部1Aと背側に配される背側部1Cとに区分される。おむつ1は、腹側部1A及び背側部1Cと、それらの間に位置する股下部1Bとを有する。おむつ1は、着用者の前後方向に対応して腹側部1Aから股下部1Bを介して背側部1Cに延びる長手方向Xと、これに直交する幅方向Yとを有している。
【0010】
おむつ1は、図2及び図3に示すように、長手方向Xに長い液保持性の吸収体23、該吸収体23の肌対向面に配される表面シート21及び該吸収体23の非肌対向面に配される裏面シート22を有する吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌対向面側に位置して該吸収性本体2を固定している外装体3とを有する。おむつ1においては、図1に示すように、腹側部1Aにおける外装体3及び背側部1Cにおける外装体3それぞれの長手方向Xに沿う両側部どうしが接合されており、それによって一対のサイドシール部S,S、並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
【0011】
本明細書において、「肌対向面」は、おむつ1又はその構成部材(例えば表面シート21)における、おむつ1の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、おむつ1又はその構成部材における、おむつ1の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該使い捨ておむつ1の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0012】
吸収性本体2は、図2に輪郭線で示したように平面視して長方形形状をなし、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在している。吸収性本体2は、その長手方向を、展開且つ伸長状態におけるおむつ1の長手方向Xに一致させて、外装体3の幅方向Yの中央部に固定されている。外装体3は、図2に示すとおり、おむつ1の展開且つ伸長状態においておむつ1の外形を形作っている。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法、すなわち弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じとなるまで広げた状態をいう。
【0013】
吸収性本体2は、図3に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート21、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート22、及び両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。吸収体23は、おむつ1の幅方向Yの中央部に位置している。表面シート21及び裏面シート22としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21として各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート22としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
【0014】
吸収体23は、図3に示すとおり、平面視において長手方向Xに沿って延びる略長方形形状をなし、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在している。吸収体23は、吸収性材料を含む液保持性の吸収性コア(図示せず)と、該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆するコアラップシート(図示せず)とを含んで構成されている。吸収性コアとコアラップシートとの間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されている。
【0015】
吸収性コアは、吸収性材料を含むコア形成材料が積繊されてなる。吸収性材料としては、この種の吸収性コアの形成材料として通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。吸収性コアの形成材料として、例えば木材パルプ、親水化剤により処理された合成繊維等の親水性繊維や吸水性ポリマー粒子が挙げられる。吸収性コアは、親水性繊維の積繊体、あるいは該積繊体に吸水性ポリマー粒子を担持させたものであり得る。コアラップシートとしては、透水性のシート材を用いることができ、例えば、紙及び不織布等を用いることができる。吸収性コアは、おむつ1の具体的な用途に応じて単層構造又は多層構造であり得る。
【0016】
図2及び図3に示すとおり、おむつ1は、吸収性本体2の長手方向Xに沿う両側部域に、吸収体23の長手方向Xに沿う側部23sから幅方向Y外方に延出する一対の脚周りカフ24,24を備えている。脚周りカフ24は、吸収体23の側部23sに沿って長手方向Xに延びており、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在している。また、おむつ1は、吸収性本体2の長手方向Xに沿う両側部域において、一対の脚周りカフ24,24よりも幅方向Y内側に一対の防漏カフ28,28を備えている。防漏カフ28は、吸収体23の前記側部23sに沿って長手方向Xに延びており、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在している。脚周りカフ24及び防漏カフ28は、伸長状態で配された弾性部材が収縮することによっておむつ1の着用時に股下部1Bで起立し、それによって尿等の排泄液の幅方向Yの外方への流出を阻止するものである。脚周りカフ24及び防漏カフ28の詳細については後述する。
【0017】
外装体3は、図2及び図3に示すように、腹側部1Aに位置する腹側外装体3Aと背側部1Cに位置する背側外装体3Cとを有している。腹側外装体3A及び背側外装体3Cは、おむつ1の着用時に着用者の胴回りに配され、おむつ1の展開且つ伸長状態において矩形状である。股下部1Bは、おむつ1の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、おむつ1の長手方向Xの中央部又はその近傍に位置している。
【0018】
腹側外装体3Aと背側外装体3Cとは同様の構成を有している。そのため、以下においては、腹側外装体3A及び背側外装体3Cの構成について、主として腹側外装体3Aを例にして説明するが、背側外装体3Cについても同様の説明が適用される。尤も、本発明の吸収性物品は、腹側外装体3Aと背側外装体3Cとが同様の構成を有するものに限られない。また、腹側外装体3A及び背側外装体3Cの何れか一方のみが、後述する構成の折り返し部31Eを有していてもよい。
【0019】
腹側外装体3Aは、図2及び図3に示すように、おむつ1の非肌対向面である外面を形成する外層シート31と、外層シート31に隣接してその肌対向面側に位置する内層シート32と、それらのシート31,32間に配された複数の胴周り弾性部材33とを具備している。腹側部1Aである腹側外装体3Aには、幅方向Yに伸長状態の胴周り弾性部材33が、長手方向Xに間隔を空けて複数本配されている。胴周り弾性部材33は、糸状又は帯状であり、外層シート31と内層シート32との間に接着剤により挟持固定されている。おむつ1では、外層シート31及び内層シート32は、いずれも伸縮性を有していない非伸縮性シートであるが、腹側外装体3Aにおける両シート31,32間に、胴周り弾性部材33が幅方向Yに伸長した状態で配されており、複数の胴周り弾性部材33の幅方向Yの伸縮性によって、腹側外装体3Aが、全域にわたって幅方向Yに伸縮性を有している。腹側外装体3Aのウエスト開口部WHの開口縁部には、胴周り弾性部材33の一部によってウエストギャザーが形成される。
【0020】
腹側外装体3Aでは、図2及び図3に示すように、外層シート31は、内層シート32の長手方向Xの端縁から延出し、内層シート32の肌対向面側に折り返される折り返し部31Eを有している。折り返し部31Eは、吸収性本体2の長手方向Xの腹側端部2Fを被覆して、吸収性本体2の表面シート21及び内層シート32と接合されている。該接合手段は、特に限定されず、接着剤、融着などの公知の接合手段を用いることができる。外層シート31及び内層シート32としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、疎水性の各種不織布等を用いることができる。
【0021】
脚周りカフ24には、長手方向Xに沿って延びるレッグ弾性部材25が伸長状態で2本以上配されているところ、おむつ1では、図4に示すように、各脚周りカフ24に2本のレッグ弾性部材25,25が配されている。脚周りカフ24は、例えば、脚周りカフ24を構成する1枚のシートを二つ折りし、二つ折りされたシート間にレッグ弾性部材25を伸長状態で配して接着剤等で固定したシート部材を、吸収性本体2の長手方向Xに沿う両側部域における表面シート21と裏面シート22との間に接着剤等で固定して形成されている。尚、脚周りカフ24を構成する1枚のシートを二つ折りせず、該シートのいずれか一方の面にレッグ弾性部材25を伸長状態で配して接着剤等で固定したシート部材を、吸収性本体2の裏面シート22の非肌対向面に接着剤等で固定して形成してもよい。
【0022】
脚周りカフ24は、図2及び図4に示すように、最大伸長状態において、2本のレッグ弾性部材25,25の中で、最も幅方向Yの外方に位置する最外レッグ弾性部材25sと最も幅方向Yの内側に位置する最内レッグ弾性部材25iとの間の幅方向中央ctを通って長手方向Xに延びる仮想線ILを境に、仮想線ILから最外レッグ弾性部材25sを含むまでの脚周りカフ第1領域STと、仮想線ILから最内レッグ弾性部材25iを含むまでの脚周りカフ第2領域ITとに区分できる。「最大伸長状態」とは、腹側部1Aから背側部1Cまで延在する脚周りカフ24を、吸収体23の長手方向Xに沿う側部23sの側縁から切り離し、各レッグ弾性部材25を除去した状態での設計寸法、すなわちレッグ弾性部材25の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じとなるまで広げた状態をいう。最大伸長状態の脚周りカフ24において、仮想線ILは、長手方向Xに沿って直線状に延びている。脚周りカフ第1領域STは、仮想線ILと最外レッグ弾性部材25sの幅方向(X方向)の外縁との間の領域であり、少なくとも最外レッグ弾性部材25sを含み、最大伸長状態において、長手方向Xに沿って延びており、平面視して略矩形となっている。同様に、脚周りカフ第2領域ITは、仮想線ILと最内レッグ弾性部材25iの幅方向(X方向)の内縁との間の領域であり、少なくとも最内レッグ弾性部材25iを含み、最大伸長状態において、長手方向Xに沿って延びており、平面視して略矩形となっている。
【0023】
脚周りカフ第1領域STと脚周りカフ第2領域ITとは、これらを伸長させたときの伸長性が相違することによって特徴付けられる。詳細には、脚周りカフ第1領域ST及び脚周りカフ第2領域ITの自然状態での延び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、伸び量が5であるときには、脚周りカフ第1領域STの応力が、脚周りカフ第2領域ITの応力よりも大きくなっている。一方、伸び量が100であるときには、脚周りカフ第2領域ITの応力が、脚周りカフ第1領域STの応力よりも大きくなっている。この関係をグラフに示すと図5に記載のとおりとなる。
【0024】
尚、上述した「伸び量」は次のように定義される。脚周りカフ24の自然状態での伸び量が0であるとは、脚周りカフ24にある弾性部材すべてが伸長しておらず、最も長さが短い状態をいい、特に、最外レッグ弾性部材25sが配されている部位での脚周りカフ24の長さが最も短くなっている。この、最外レッグ弾性部材25sが配されている部位での脚周りカフ24の自然長での長さをL1とし、最大伸長状態での長さをL2としたとき、L1とL2との間の任意の長さLでの伸び量は、〔(L−L1)/(L2−L1)〕×100で表される。また、脚周りカフ24を脚周りカフ第2領域ITと脚周りカフ第1領域STとに分けた場合においても、脚周りカフ第1領域ST又は脚周りカフ第2領域ITにおいて、最も短い自然状態での長さL1を伸び量0の時の長さとする。最大伸長状態での長さとは、脚周りカフ第1領域ST及び脚周りカフ第2領域ITから各レッグ弾性部材25を除去した状態で測定される脚周りカフ第1領域ST及び脚周りカフ第2領域ITの長さのことである。
【0025】
図5に示すとおり、伸び量が5の場合、脚周りカフ第1領域STの応力が、脚周りカフ第2領域ITの応力よりも大きくなっている。そして伸び量を次第に増加させていくと、脚周りカフ第1領域STの応力及び脚周りカフ第2領域ITの応力のいずれも増加していくが、増加率は両者において相違する。具体的には、脚周りカフ第1領域STの応力は、グラフの傾きが小さく、増加率が小さいので、伸び量を大きく増加させても応力は大きく増加しない。これとは対照的に、脚周りカフ第2領域ITの応力は、伸び量を所定の値まで増加させた後、急激にグラフの傾きが大きくなり、増加率が大きいので、伸び量を大きく増加させると脚周りカフ第2領域ITの応力も大きく増加する。その結果、伸び量が特定の値において、脚周りカフ第1領域STの応力の値と脚周りカフ第2領域ITの応力の値とが一致し、それよりも伸び量が大きくなると、脚周りカフ第1領域STの応力と脚周りカフ第2領域ITの応力との大小関係がそれまでと逆転し、脚周りカフ第2領域ITの応力の値が脚周りカフ第1領域STの応力の値よりも大きくなる。このように伸び量が100であるときには、脚周りカフ第2領域ITの応力が、脚周りカフ第1領域STの応力よりも大きくなる。
【0026】
脚周りカフ第1領域STの応力と、脚周りカフ第2領域ITの応力との間にこのような関係があることで、おむつ1においては、着用直後の着用状態から着用者の動作に起因して、おむつ1と着用者の脚周りとの距離が変化しようとした場合であっても、着用者の脚周りと脚周りカフ24との密着性が向上し、着用者の脚周りへの脚周りカフ24の当接が安定的に維持され、両者間に液漏れ発生の原因となる隙間が発生しづらくなるという有利な効果が奏される。しかも脚周りカフ24による着用者の脚周りへの締め付け跡が付き難くなるという有利な効果が奏される。このことを図6及び図7を参照しながら説明する。
【0027】
図6に示す状態は、おむつ1の着用直後の身体と吸収性本体2との間の距離が近くなった状態である。このような状態においては、脚周りカフ24の伸び量は一般に大きくなっている。その結果、脚周りカフ第1領域STの応力の値と脚周りカフ第2領域ITの応力の値とを比較すると、脚周りカフ第2領域ITの応力が、脚周りカフ第1領域STの応力よりも大きくなっている。よって、脚周りカフ第2領域ITが、脚周りカフ第1領域STよりも強く収縮しようとするので、脚周りカフ24は、図6に示すとおり、吸収体23から近い側の脚周りカフ第2領域ITが脚周りカフ第1領域STよりも着用者に肌側に向かって起立する。したがって、脚周りカフ第1領域STがおむつ1の内部に入り込み股下空間を狭めてしまうことを防ぐことができる。
【0028】
次に、図7に示す状態は、おむつ1の着用後、着用者の動作に起因して着用者の身体と吸収性本体2との間の距離が離れた状態である。このような状態においては、脚周りカフ24の伸び量は一般に小さくなっている。その結果、脚周りカフ第1領域STの応力の値と脚周りカフ第2領域ITの応力の値とを比較すると、脚周りカフ第1領域STの応力が、脚周りカフ第2領域ITの応力よりも大きくなっている。よって、脚周りカフ第1領域STが、脚周りカフ第2領域ITよりも強く収縮しようとするので、脚周りカフ24は、図7に示すとおり、吸収体23から脚周りカフ第2領域ITよりも幅方向Yに離れた脚周りカフ第1領域STが脚周りカフ第2領域ITよりも着用者に肌側に向かって起立する。したがって、脚周りカフ24は、脚周りカフ24の伸び量が小さいので、脚周りカフ第1領域STが、着用者の鼠径部よりも外側の脚の付け根に適切に当接し、着用者の動作に起因して着用者の体と吸収性本体2との間の距離が離れた場合でも、着用者の脚周りと脚周りカフ24との間に隙間が発生しづらくなる。それによって、液漏れの発生が効果的に防止され、着用者の脚周りへの締め付け跡が付き難くなる。
【0029】
このように、おむつ1によれば、おむつ1の着用直後の着用状態においても、着用者の動作に起因しておむつ1と着用者の脚周りとの距離が変化しようとした場合においても、脚周りカフ24の股下空間への入り込みを防ぎ、かつ着用者の脚周りに沿うことで着用者の脚周りと脚周りカフ24との間に液漏れ発生の原因となる隙間も発生し難くなる。この効果を一層顕著なものとする観点から、伸び量が6以上70以下の範囲で、特に7以上65以下の範囲で、脚周りカフ第1領域STの応力と脚周りカフ第2領域ITの応力との大小関係がそれまでと逆転することが好ましい。脚周りカフ第1領域STの応力と脚周りカフ第2領域ITの応力との大小関係は、例えば後述する種々の手段によって適切に調整することができる。
【0030】
上述した脚周りカフ第1領域STの応力及び脚周りカフ第2領域ITの応力は、次のようにして測定される。
(1)脚周りカフ24を切りとる。具体的には、最内レッグ弾性部材25i及び最外レッグ弾性部材25sを含み、伸縮動作を行った場合でもそれぞれのレッグ弾性部材25が外れないように、最内レッグ弾性部材25iの5mm程内側の位置から最外レッグ弾性部材25sの5mm程外側の位置までをサンプルとして切り出す。切り出したサンプルは、最内レッグ弾性部材25iの5mm程内側の位置及び最外レッグ弾性部材25sの5mm程外側の位置に、別のレック弾性部材25を含まないように切り出す。この時、最内レッグ弾性部材25iからその内側の切断線までの距離と、最外レッグ弾性部材25sからその外側の切断線までの距離を等しくする。仮想線ILで脚周りカフ第2領域IT及び脚周りカフ第1領域STに二分し、測定片を調する。
(2)各測定片について、長手方向Xの両端部に位置する弾性部材が存在していない領域をそれぞれ、端部から10mm幅で、(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC−1210A)のチャックに挟む。
(3)各測定片を、伸び量が100になるまで速度300mm/minで上方向に引っ張り、伸び量5のときの行きの応力と伸び量100のときの応力とを測定する。伸び量100のときとは、脚周りカフ第1領域ST及び脚周りカフ第2領域ITともに、チャック間が、最大伸長状態での長さL2から挟みしろ20mmを引いた距離になるまで引っ張ったときを指す。
【0031】
図7に示すように、脚周りカフ24の脚周りカフ第1領域STを脚周りカフ第2領域ITよりも着用者に肌側に向かって起立させ、脚周りカフ第1領域STを着用者の鼠径部よりも外側の脚の付け根に適切に当接させて、着用者の脚周りと脚周りカフ24との間に隙間を発生しづらくする観点から、脚周りカフ24の自然状態において、脚周りカフ第1領域STの長さLsが、脚周りカフ第2領域ITの長さLiよりも短くなっていることが好ましい。つまりLs<Liであることが好ましい。この効果を一層顕著なものとする観点から、L/Lの値は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい。
【0032】
前記長さLs及びLiの測定は次のように行う。
(1)脚周りカフ24を切りとる。脚周りカフ24の中央の仮想線ILで脚周りカフ第2領域IT及び脚周りカフ第1領域STに二分し、測定片を調する。
(2)レッグ弾性部材25の収縮力が発現しない限度において、それぞれの測定片を直線状に拡げる。このとき、測定片を粘着テープなどで台に貼り付けるとよい。
(3)それぞれの測定片において、最外レッグ弾性部材25s及び最内レッグ弾性部材25iが配されている部位における該測定片の一方側の端部から他方の端部までの最短部の長さを測定する。
(4)(1)〜(3)の測定を3回行い、(3)で測定した最外レッグ弾性部材25s及び最内レッグ弾性部材25iが配されている部位における測定片の最短部の長さの3回の測定結果の平均をそれぞれLs、Liとする。
【0033】
前記長さLs及びLiが上述の関係を満たすようにするためには、例えば脚周りカフ24において、レッグ弾性部材25,25の中で、最外レッグ弾性部材25sの伸長率Ssは、脚周りカフ第2領域ITに配されるレッグ弾性部材25の伸長率Siよりも高くなっていることが好ましい。特にSs/Siの値は、1.01以上2.00、以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい。SiよりもSsを大きくするには、脚周りカフ第2領域ITのレッグ弾性部材25よりも最外レッグ弾性部材25sを高い伸長率で伸長させた状態下に、脚周りカフ第2領域のレッグ弾性部材25及び最外レッグ弾性部材25sを脚周りカフ24に取り付ければよい。尚、脚周りカフ24にレッグ弾性部材25が3本以上配されている場合には、最外レッグ弾性部材25sの伸長率Ssが脚周りカフ第2領域ITのすべてのレッグ弾性部材25の伸長率Siよりも高く、レッグ弾性部材25は、その伸長率が、最外レッグ弾性部材25s側から最内レッグ弾性部材25i側に向かって、漸次低くなっていることが好ましい。ここで、「漸次低くなっている」とは、3本以上のレッグ弾性部材25の全ての伸長率が異なっており、最外レッグ弾性部材25s側から最内レッグ弾性部材25i側に向かって徐々に低くなっているのみならず、3本以上のレッグ弾性部材25の中で隣り合うレッグ弾性部材25の伸長率が同じものを含んでおり、最外レッグ弾性部材25s側から最内レッグ弾性部材25i側に向かって段階的に低くなっているものも含む意味である。
【0034】
前記伸長率Ss及びSiの測定は次のように行う。
(1)脚周りカフ第2領域IT及び脚周りカフ第1領域STそれぞれを最大伸長状態での長さに伸ばして固定し、レッグ弾性部材25が脚周りカフ24に接着剤などで固定されている伸縮領域の長さを測定する。伸縮領域の長さとは、レッグ弾性部材25それぞれの固定端間の距離のことである。固定端とは、レッグ弾性部材25の長手方向Xにおける端部に位置し、且つ脚周りカフ24と固定されている位置の端のことである。
(2)レッグ弾性部材25が脚周りカフ24に固定されている領域における縦方向Xに沿う両側端部でこれらレッグ弾性部材25を切り、エタノールなどを用いて脚周りカフ24からこれらレッグ弾性部材25を取り外す。
(3)レッグ弾性部材25を、収縮力が発現しない程度に直線状に拡げてそれらの自然長を測定する。この時、取り出した弾性部材25を粘着テープなどで台に貼り付けるとよい。
(4)(1)で測定した伸領域の長さを、(3)で測定したレッグ弾性部材25の自然長で割ることで、伸長率Ss及びSiが算出される。
【0035】
脚周りカフ第2領域ITの自然状態における長さLiを脚周りカフ第1領域STの自然状態における長さLsよりも長くすること、言い換えれば、脚周りカフ24の伸び量が5であるときに、脚周りカフ第2領域ITの応力Siが脚周りカフ第1領域STの応力Ssよりも小さくなるようにする観点から、図4に示すように、おむつ1を幅方向Yに沿って断面視して、裏面シート22は、長手方向Xに沿う両側縁22s,22sが、それぞれ、最内レッグ弾性部材25iを幅方向Y外方に越え、脚周りカフ第2領域IT内まで延在していることが好ましい。尚、裏面シート22の各側縁22sは脚周りカフ第1領域ST内までは延在していないことが好ましい。このように、脚周りカフ第2領域ITにおいては、レッグ弾性部材25以外に脚周りカフ第2領域ITを構成する裏面シート22が積層されていることで、脚周りカフ24の伸び量が小さい時において、収縮する力に対する抵抗となり、脚周りカフ第2領域の応力を低減させる効果が得られる。
【0036】
おむつ1と着用者の身体との間の距離にかかわらず、脚周りカフ24が着用者の鼠蹊部に適切に当接するようにする観点から、脚周りカフ24のレッグ弾性部材25,25のうち、最外レッグ弾性部材25sのモジュラスMsよりも、脚周りカフ第2領域ITの最内レッグ弾性部材25iのモジュラスMiの方が高くなっていることが好ましい。脚周りカフ第2領域ITの全てのレッグ弾性部材25のモジュラスが、最外レッグ弾性部材25sのモジュラスMsよりも高くなっていることがより好ましい。モジュラスとは、物体がその原形を保つために外力に対して抵抗しようとする引張応力のことである。Ms<Miとすることで、脚周りカフ24の伸び量が大きい領域において最内レッグ弾性部材25iのモジュラスMiを容易に大きくすることができる。この観点から、Mi/Msの値は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい。MiをMsよりも大きくするには、例えば、脚周りカフ第2領域ITの最内レッグ弾性部材25iとして高反発弾性を示すイソプレン系のゴムを、脚周りカフ第1領域STの最外レッグ弾性部材25sとして低反発弾性を示すスチレンブタジエン系の糸ゴムを用いるといった方法などがある。
【0037】
上述した「モジュラス」は次のように定義される。脚周りカフ24にあるレッグ弾性部材25それぞれを脚周りカフ24から取り外す。取り外したレッグ弾性部材25の自然長での長さをLE1とする。また、LE1の2倍の長さをLE2とする。更に、レッグ弾性部材25をLE1の1.5倍の長さLE1.5に引っ張ったときの応力をSE1.5とし、LE2の長さに引っ張った時の応力をSE2とする。そして、SE1.5とSE2との比である(SE2)/(SE1.5)の値をモジュラスMi,Msの指標とする。
【0038】
前記モジュラスMi及びMsの測定は次のように行う。
(1)エタノールなどを用いて脚周りカフ24からレッグ弾性部材25を取り外す。
(2)レッグ弾性部材25を、収縮力が発現しない程度に直線状に拡げて、レッグ弾性部材25の両側端部から内側10mmを挟みしろとして印をつけ、その両印間の伸縮領域の自然長(LE1)を測定する。
(3)レッグ弾性部材25を、端部から10mm幅で(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC−1210A)に掴み、チャック間距離がレッグ弾性部材25の伸縮領域の自然長の2倍(LE2)になるまで速度300mm/minで上方向に引っ張り、そのときの応力を測定する(SE2)。
(4)レッグ弾性部材25を、その伸縮領域の自然長の1.5倍(LE1.5)まで引っ張り、そのとき応力を測定する(SE1.5)。そして、SE2とSE1.5との比である(SE2)/(SE1.5)を算出する。
以上の測定においては、それぞれのレッグ弾性部材25の伸縮領域の自然長(LE1)は、任意の長さに揃ええてもよく、例えば、伸縮領域の自然長(LE1)を70mmとした場合には、挟みしろを含むレッグ弾性部材25の長さが90mmになるように切り出し、両端部を10mmずつ挟んで、チャック間距離が、レッグ弾性部材25の伸縮領域の自然長(LE1)、すなわち70mmからその2倍(LE2)の長さ、すなわち140mmになるまで引っ張ればよい。
【0039】
図6に示すように、脚周りカフ24の脚周りカフ第2領域ITを脚周りカフ第1領域STよりも着用者に肌側に向かって起立させ、脚周りカフ24のおむつ1の内部への入り込みを防ぎ、股下空間を確保する観点から、レッグ弾性部材25,25の中で、脚周りカフ第2領域ITの最内レッグ弾性部材25iの太さDiは、脚周りカフ第1領域STに配されている最外レッグ弾性部材25sの太さDsよりも太くなっていることが好ましい。この観点から、Di/Dsの値は、1.30以上3.00以下であることが好ましく、1.50以上2.60以下であることが一層好ましい。尚、脚周りカフ24にレッグ弾性部材25が3本以上配されている場合には、脚周りカフ第2領域ITに配されたすべてのレッグ弾性部材25は、その太さが、脚周りカフ第1領域STの最外レッグ弾性部材25sよりも太くなっていることが好ましい。さらに、脚周りカフ24のレッグ弾性部材25の太さがすべて異なっていてもよく、その場合には、その太さが、最外レッグ弾性部材25s側から最内レッグ弾性部材25i側に向かって、漸次太くなっていることが好ましい。ここで、「漸次太くなっている」とは、3本以上のレッグ弾性部材25の全ての太さが異なっており、最外レッグ弾性部材25s側から最内レッグ弾性部材25i側に向かって徐々に太くなっているのみならず、3本以上のレッグ弾性部材25の中で隣り合うレッグ弾性部材25の太さが同じものを含んでおり、最外レッグ弾性部材25s側から最内レッグ弾性部材25i側に向かって段階的に太くなっているものも含む意味である。
【0040】
一対の脚周りカフ24,24によって着用者との間の隙間の発生を防止する観点から、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在する各脚周りカフ24において、レッグ弾性部材25は、図2に示すように、少なくとも長手方向Xの腹側部1A側の脚周りカフ24に固定されている固定端部25aが腹側部1A内である腹側外装体3A内まで長手方向Xに延在していることが好ましく、腹側部1A側の固定端部25aが腹側外装体3A内まで延在していると共に長手方向Xの背側部1C側の固定端部25cが背側部1C内である背側外装体3C内まで長手方向Xに延在していることが更に好ましい。上記効果を一層奏する観点から、レッグ弾性部材25が脚周りカフ24に固定されている固定端部25aは、腹側外装体3Aに配された幅方向Yに伸長状態の胴周り弾性部材33及び背側外装体3Cに配された幅方向Yに伸長状態の胴周り弾性部材33の何れか一方よりも、着用者の胴が通されるウエスト開口部WH寄りに位置していることが好ましく、腹側外装体3Aに配された胴周り弾性部材33及び背側外装体3Cに配された胴周り弾性部材33それぞれよりも、着用者の胴が通されるウエスト開口部WH寄りに位置していることが更に好ましい。ここで、固定端部25aが胴周り弾性部材33よりもウエスト開口部WH寄りに位置しているとは、固定端部25aが少なくとも胴周り弾性部材33と厚み方向で重なっていることを含む意味である。
【0041】
着用者との間の隙間の発生を防止する観点から、図2図4に示すようにおむつ1は、一対の脚周りカフ24,24よりも内側に一対の防漏カフ28,28を備えており、一対の防漏カフ28,28の股下部1Bでの起立性を高めて隙間の発生を一層防止する観点から、各防漏カフ28は、長手方向Xの腹側部1A側の端部28a及び背側部1C側の端部28cが、吸収体23上に位置する表面シート21の肌対向面に固定されていることが好ましい。防漏カフ28は、例えば、防漏カフ28を構成する1枚のシートを二つ折りし、二つ折りされたシート間に防漏カフ用弾性部材29を伸長状態で配して接着剤等で固定したシート部材を、吸収性本体2の長手方向Xに沿う両側部域に接着剤等による固定部で固定して形成されている。このように形成された防漏カフ28の前記固定部は、吸収性本体2の前記側部域における表面シート2の肌対向面上に長手方向Xに沿って腹側部1Aから背側部1Cに亘って配されている。尚、防漏カフ28を構成する1枚のシートを二つ折りせず、該シートのいずれか一方の面に防漏カフ用弾性部材29を伸長状態で配して接着剤等で固定したシート部材を、吸収性本体2の各側部域に接着剤等で固定して形成してもよい。
【0042】
着用時の股下部1Bにおいて一対の脚周りカフ24,24の内側に一対の防漏カフ28,28が配されることは、排泄物が幅方向Yに広がるのを抑制してモレを防止することができるためより好ましい。このときに脚周りカフ24が防漏カフ28を乗り越えて股下部1B内に入り込むことを防ぐ観点から、図4に示すように、おむつ1を幅方向Yに沿って断面視して、吸収体23の長手方向Xに沿う側部23sの側縁と最内レッグ弾性部材25iとの道のりである距離K24が、吸収体23の該側部23sの側縁と、該側縁から最も遠い(最も自由端部側)防漏カフ用弾性部材29との道のりである距離K28よりも短いことが好ましい。つまりK24<K28であることが好ましい。この効果を一層顕著なものとする観点から、K24/K28の値は、0.10以上0.99以下であることが好ましく、0.25以上0.99以下であることが一層好ましい。
【0043】
前記長さK24及びK28の測定は次のように行う。
(1)防漏カフ用弾性部材29及びレッグ弾性部材25を、収縮力が発現しない程度に直線状に拡げて、脚周りカフ24と吸収体23の長手方向Xに沿う側部23Sの側縁とが厚み方向に重なる位置、及び防漏カフ28と吸収体23の前記側縁とが厚み方向に重なる位置それぞれに、印をつける。
(2)(1)で印をつけた位置から幅方向Yに平行な直線を引く。
(3)前記直線と最内レッグ弾性部材25iとが交差する位置から脚周りカフ24と吸収体23の側縁とが重なる前記印をつけた位置までの直線の距離を距離K24とする。また、前記直線と防漏カフ用弾性部材29とが交差する位置から防漏カフ28と吸収体23の前記側縁とが重なる前記印をつけた位置までの直線の距離を距離K28とする。
【0044】
着用時の股下部1Bにおいて、脚周りカフ24が防漏カフ28を乗り越え股下部1B内に入り込むことを防ぐ観点から、脚周りカフ24と同様に、防漏カフ28の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、伸び量が100のときの防漏カフ28の応力が、伸び量が100のときの脚周りカフ第2領域ITの応力よりも大きくなっていることが好ましい。
【0045】
尚、上述した防漏カフ28の延び量は次のように定義される。防漏カフ28にある防漏カフ用弾性部材29すべてが伸長しておらず、長さが最も短い状態において、自然長での長さをL3とし、最大伸長状態での長さをL4としたとき、L3とL4との間の任意の長さL5での伸び量は、(L5−L3)/(L4−L3)×100で表される。最大伸長状態での長さとは、防漏カフ28から各防漏カフ用弾性部材29を除去した状態で測定される防漏カフ28自体の長さのことである。
【0046】
防漏カフ28の応力は、次のようにして測定される。
(1)防漏カフ28を切りとる。具体的には、防漏カフ用弾性部材29の長手方向Xに沿う両側縁から3mm程度の位置にて、防漏カフ用弾性部材29以外が含まれないように切り取り、測定片を調する。
(2)測定片について、防漏カフ28の長手方向Xの両端部に位置する防漏カフ用弾性部材29のない領域をそれぞれ、端部から10mm幅で、(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC−1210A)のチャックに挟む。
(3)測定片を、伸び量が100になるまで速度300mm/minで上方向に引っ張り、伸び量100のときの応力を測定する。伸び量100のときとは、チャック間が最大伸長状態での長さL2から挟みしろ20mmを引いた距離になるまで引っ張ったときを指す。
【0047】
一対の脚周りカフ24,24によって着用者との間の隙間の発生を防止する観点から、図2に示すように平面視して、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在する各脚周りカフ24において、レッグ弾性部材25が脚周りカフ24に固定されている長手方向Xの腹側部1A側の固定端部25a及び背側部1C側の固定端部25cの一方は、各防漏カフ28において、防漏カフ用弾性部材29が防漏カフ28に固定されている長手方向Xの腹側部1A側の防漏カフ固定端部28a又は背側部1C側の防漏カフ固定端部28cよりも、おむつ1の長手方向X端部であるウエスト開口部WH寄りに位置していることが好ましく、レッグ弾性部材25の長手方向Xの腹側部1A側の固定端部25a及び背側部1C側の固定端部25cそれぞれが、各防漏カフ用弾性部材29の長手方向Xの腹側部1A側の防漏カフ固定端部29a及び背側部1C側の防漏カフ固定端部29cよりも、おむつ1の前記ウエスト開口部WH寄りに位置していることが更に好ましい。このように、レッグ弾性部材25の長さと防漏カフ用弾性部材29の長さとを比較するのではなく、レッグ弾性部材25の固定端部25a,25cの位置と防漏カフ用弾性部材29の防漏カフ固定端部28a,28cの位置とを比較することによって、実質的な伸領域の長さを比較している。
【0048】
図8には本発明の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前述したおむつ1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、おむつ1についての説明が適宜適用される。図8に示すおむつ1によっても、図1図4に示すおむつ1と同様の効果が奏される。
【0049】
図8に示すおむつ1は、脚周りカフ24を構成するレッグ弾性部材25の本数が、上述した図1図4に示すおむつ1と異なっている。具体的には、図8に示すおむつ1では、各脚周りカフ24に5本のレッグ弾性部材25,25,25・・・が配されている。図8に示すおむつ1では、最大伸長状態において、最外レッグ弾性部材25sと最内レッグ弾性部材25iとの間の幅方向中央ctを通る仮想線ILから最外レッグ弾性部材25sを含むまでの脚周りカフ第1領域STに2本のレッグ弾性部材25,25を有し、仮想線ILから最内レッグ弾性部材25iを含むまでの脚周りカフ第2領域ITに3本のレッグ弾性部材25,25,25を有している。このように脚周りカフ第2領域ITに配されるレッグ弾性部材25の本数が脚周りカフ第1領域STに配されるレッグ弾性部材25の本数よりも多いと、おむつ1の着用直後の身体と吸収性本体2との間の距離が近くなった状態、言い換えると、脚周りカフ24の伸び量が一般に大きくなっている状態において、脚周りカフ24の脚周りカフ第2領域ITが脚周りカフ第1領域STよりも着用者に肌側に向かって起立し易く、脚周りカフ第2領域ITの位置が、着用者の鼠径部に適切に当接し、脚周りカフ第1領域STが股下空間の内部へ入り込むことを防ぐ。それによって、液漏れの発生が効果的に防止される。
【0050】
前記効果を一層奏する観点から、脚周りカフ第2領域ITの3本のレッグ弾性部材25,25,25の間隔は、それぞれ、脚周りカフ第1領域STの2本のレッグ弾性部材25,25の間隔と同じか、又は脚周りカフ第1領域STの2本のレッグ弾性部材25,25の間隔よりも短いことが好ましい。このように、脚周りカフ第2領域ITの3本のレッグ弾性部材25,25,25の間隔が短いと、擬似的に1本のレッグ弾性部材25と同様の伸縮挙動をするので、脚周りカフ第2領域ITを強く収縮させることができる。このような観点から、脚周りカフ第1領域STに3本以上のレッグ弾性部材25が配されているときには、該レッグ弾性部材25,25どうしの何れの間隔よりも、脚周りカフ第2領域ITのレッグ弾性部材25,25どうしの間隔が短いことが好ましい。また、脚周りカフ第2領域ITに3本以上のレッグ弾性部材25が配されているときには、該レッグ弾性部材25,25どうしの間隔が、吸収体23側に向かって漸次短くなっていることが一層好ましい。
【0051】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態は、本発明の吸収性物品をパンツ型使い捨ておむつに適用したものであるが、これに代えて本発明を展開型の使い捨ておむつに適用してもよい。また、本発明を使い捨ておむつ以外の他の吸収性物品、例えば生理用ナプキン及び失禁パッド等に適用してもよい。
【0052】
また、図1図3に示すおむつ1は、外装体3が、腹側部1Aに位置する腹側外装体3Aと背側部1Cに位置する背側外装体3Cとに分割されており、吸収性本体2を両シート部材に架け渡して固定して形成された形態であるが、これに代えて、外装体3が腹側部1A、股下部1B及び背側部1Cにわたる連続した形状をなしており、該外体の中央部に吸収性本体2を固定して形成された形態であってもよい。このような形態のパンツ型使い捨ておむつの場合、レッグ弾性部材25を備える脚周りカフ24が外体に配されている形態であってもよい。
【0053】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
液保持性の吸収体と、該吸収体の長手方向に沿う両側部それぞれから幅方向外方に延出し該側部に沿って延びる脚周りカフとを備える吸収性物品であって、前記脚周りカフには、それぞれ、前記長手方向に沿って延びるレッグ弾性部材が伸長状態で2本以上配されており、前記脚周りカフは、前記レッグ弾性部材の中で、最も前記幅方向の外方に位置する最外レッグ弾性部材と最も前記幅方向の内側に位置する最内レッグ弾性部材との間の前記幅方向中央を通り前記長手方向に延びる仮想線を境に、該仮想線から前記最外レッグ弾性部材を含むまでの脚周りカフ第1領域と、該仮想線から前記最内レッグ弾性部材を含むまでの脚周りカフ第2領域とに区分され、前記脚周りカフ第1領域及び前記脚周りカフ第2領域の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、前記伸び量が5であるときには、前記脚周りカフ第1領域の応力が、前記脚周りカフ第2領域の応力よりも大きく、前記伸び量が100であるときには、前記脚周りカフ第2領域の応力が、前記脚周りカフ第1領域の応力よりも大きい、吸収性物品。
<2>
前記脚周りカフの自然状態において、前記最外レッグ弾性部材が配されている部位での前記脚周りカフ第1領域の長さが、前記最内レッグ弾性部材が配されている部位での前記脚周りカフ第2領域の長さよりも短い、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記最外レッグ弾性部材の伸長率は、前記最内レッグ弾性部材の伸長率よりも高い、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記最内レッグ弾性部材のモジュラスは、前記最外レッグ弾性部材のモジュラスよりも高い、前記<1>〜<3>の何れか1に記載の吸収性物品。
<5>
前記最内レッグ弾性部材の太さは、前記最外レッグ弾性部材の太さよりも太い、前記<1>〜<4>の何れか1に記載の吸収性物品。
<6>
前記脚周りカフには、前記レッグ弾性部材が3本以上配されており、前記脚周りカフ第2領域に配される前記レッグ弾性部材の本数が、前記脚周りカフ第1領域に配される前記レッグ弾性部材の本数よりも多い、前記<1>〜<5>の何れか1に記載の吸収性物品。
<7>
前記脚周りカフ第1領域及び前記脚周りカフ第2領域それぞれに、前記レッグ弾性部材が複数本配されており、前記脚周りカフ第2領域の前記レッグ弾性部材の間隔は、前記脚周りカフ第1領域の前記レッグ弾性部材の間隔と同じか、又は該脚周りカフ第1領域の前記レッグ弾性部材の間隔よりも短い、前記<1>〜<6>の何れか1に記載の吸収性物品。
<8>
前記伸び量が6以上70以下の範囲で、前記脚周りカフ第1領域の応力と、前記脚周りカフ第2領域の応力との大小関係が逆転する、前記<1>〜<7>の何れか1に記載の吸収性物品。
<9>
前記脚周りカフには、前記レッグ弾性部材が3本以上配されており、前記最外レッグ弾性部材の伸長率は、前記脚周りカフ第2領域に配置されたすべての弾性部材の伸長率よりも高く、前記レッグ弾性部材は、その伸長率が、前記最外レッグ弾性部材側から前記最内レッグ弾性部材側に向かって、漸次低くなっている、前記<1>〜<8>の何れか1に記載の吸収性物品。
<10>
前記脚周りカフには、前記レッグ弾性部材が3本以上配されており、前記脚周りカフ第2領域に配置されたすべての弾性部材の太さは、前記最外レッグ弾性部材の太さよりも太く、前記レッグ弾性部材は、その太さが、前記最外レッグ弾性部材側から前記最内レッグ弾性部材側に向かって、漸次太くなっている、前記<1>〜<9>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0054】
<11>
前記吸収体の非肌対向面には液難透過性の裏面シートが配されており、前記吸収性物品を前記幅方向に沿って断面視して、前記裏面シートは、縦方向に沿う両側縁が、それぞれ、前記脚周りカフ第2領域内まで延在している、前記<1>〜<10>の何れか1に記載の吸収性物品。
<12>
前記吸収性物品は、使い捨ておむつであり、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、前記脚周りカフは、前記腹側部と前記背側部とに亘って配されており、前記レッグ弾性部材が前記脚周りカフに固定されている固定端部が、少なくとも前記腹側部内まで延在している、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の吸収性物品。
<13>
前記吸収性物品は、使い捨ておむつであり、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、前記腹側部及び前記背側部には、前記幅方向に伸長状態で配された胴周り弾性部材が配されており、前記脚周りカフは、前記腹側部と前記背側部とに亘って配されており、前記レッグ弾性部材が前記脚周りカフに固定されている固定端部は、前記腹側部に配された胴周り弾性部材及び前記背側部に配された胴周り弾性部材の何れか一方よりも、着用者の胴が通されるウエスト開口部寄りに位置している、前記<1>〜<12>の何れか1に記載の吸収性物品。
<14>
前記脚周りカフよりも前記幅方向内側に防漏カフを備え、該防漏カフが前記吸収体の前記側部に沿って延び、前記防漏カフには、前記長手方向に沿って延びる防漏カフ用弾性部材が伸長状態で1本以上配されており、前記吸収体の肌対向面には液透過性の表面シートが配され、前記防漏カフは、前記長手方向の両端部が、前記吸収体上に位置する前記表面シートの肌対向面に固定されている、前記<1>〜<13>の何れか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記吸収性物品を前記幅方向に沿って断面視して、前記吸収体の前記側部の側縁と前記最内レッグ弾性部材との距離が、該吸収体の該側部の側縁と、前記防漏カフ用弾性部材の内で該側縁から最も前記防漏カフの自由端部側に位置する該防漏カフ用弾性部材との距離よりも短い、前記<14>に記載の吸収性物品。
<16>
前記防漏カフの自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、前記脚周りカフ第2領域及び前記防漏カフそれぞれの前記伸び量が100であるときには、前記防漏カフの応力が、前記脚周りカフ第2領域の応力よりも大きい、前記<14>又は<15>に記載の吸収性物品。
<17>
前記レッグ弾性部材が前記脚周りカフに固定されている固定端部が、前記防漏カフ用弾性部材が前記防漏カフに固定されている防漏カフ固定端部よりも、前記吸収性物品の長手方向端部寄りに位置している、前記<14>〜<16>の何れか1に記載の吸収性物品。
<18>
吸収性物品を幅方向に沿って断面視して、前記吸収体の長手方向に沿う側部の側縁と前記最内レッグ弾性部材との道のりである距離K24と、前記吸収体の該側部の側縁と、該側縁から最も遠い(最も自由端部側)前記防漏カフ用弾性部材との道のりである距離K28との比(K24/K28)の値は、0.10以上0.99以下であることが好ましく、0.25以上0.99以下であることが一層好ましい、前記<14>〜<17>の何れか1に記載の吸収性物品。
<19>
前記レッグ弾性部材の長手方向Xの腹側部側の固定端部及び背側部側の固定端部それぞれが、各前記防漏カフ用弾性部材の長手方向の腹側部側の防漏カフ固定端部及び背側部側の防漏カフ固定端部よりも、着用者の胴が通されるウエスト開口部WH寄りに位置していることが更に好ましい、前記<14>〜<18>の何れか1に記載の吸収性物品。
<20>
前記脚周りカフ第1領域及び前記脚周りカフ第2領域の自然状態でのび量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、伸び量が6以上70以下の範囲で、特に7以上65以下の範囲で、前記脚周りカフ第1領域の応力と前記脚周りカフ第2領域の応力との大小関係がそれまでと逆転することが好ましい、前記<1>〜<19>の何れか1に記載の吸収性物品。

上述した脚周りカフ第1領域STの応力及び脚周りカフ第2領域ITの応力は、次のようにして測定される。
(1)脚周りカフ24を切りとる。具体的には、最内レッグ弾性部材25i及び最外レッグ弾性部材25sを含み、伸縮動作を行った場合でもそれぞれのレッグ弾性部材25が外れないように、最内レッグ弾性部材25iの5mm程内側の位置から最外レッグ弾性部材25sの5mm程外側の位置までをサンプルとして切り出す。切り出したサンプルは、最内レッグ弾性部材25iの5mm程内側の位置及び最外レッグ弾性部材25sの5mm程外側の位置に、別のレック弾性部材25を含まないように切り出す。この時、最内レッグ弾性部材25iからその内側の切断線までの距離と、最外レッグ弾性部材25sからその外側の切断線までの距離を等しくする。仮想線ILで脚周りカフ第2領域IT及び脚周りカフ第1領域STに二分し、測定片を調する。
(2)各測定片について、長手方向Xの両端部に位置する弾性部材が存在していない領域をそれぞれ、端部から10mm幅で、(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC−1210A)のチャックに挟む。
(3)各測定片を、伸び量が100になるまで速度300mm/minで上方向に引っ張り、伸び量5のときの行きの応力と伸び量100のときの応力とを測定する。伸び量100のときとは、脚周りカフ第1領域ST及び脚周りカフ第2領域ITともに、チャック間が、最大伸長状態での長さL2から挟みしろ20mmを引いた距離になるまで引っ張ったときを指す。
【0055】
<21>
前記脚周りカフ第1領域の長さLsの値と前記脚周りカフ第2領域の長さLiの値との比(L/L)は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい、前記<1>〜<20>の何れか1に記載の吸収性物品。
<22>
前記最外レッグ弾性部材の伸長率Ssの値と前記脚周りカフ第2領域に配される前記レッグ弾性部材の伸長率Siの値との比(Ss/Si)は、1.01以上2.00、以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい、前記<1>〜<21>の何れか1に記載の吸収性物品。
<23>
前記最外レッグ弾性部材のモジュラスMsの値と前記脚周りカフ第2領域の前記最内レッグ弾性部材のモジュラスMiの値との比(Mi/Ms)は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の吸収性物品。
<24>
前記脚周りカフ第2領域の全ての前記レッグ弾性部材のモジュラスが、前記最外レッグ弾性部材のモジュラスMsよりも高くなっていることがより好ましい、前記<1>〜<23>の何れか1に記載の吸収性物品。
<25>
前記脚周りカフ第2領域の前記最内レッグ弾性部材の太さDiと、前記脚周りカフ第1領域STの前記最外レッグ弾性部材の太さDsとの比(Di/Ds)は、1.30以上3.00以下であることが好ましく、1.50以上2.60以下であることが一層好ましい、前記<1>〜<24>の何れか1に記載の吸収性物品。
<26>
長手方向の腹側部側の前記脚周りカフに固定されている前記レッグ弾性部材の固定端部が腹側部内である腹側外装体内まで長手方向に延在していると共に、長手方向の背側部側の前記脚周りカフに固定されている前記レッグ弾性部材の固定端部が背側部内である背側外装体内まで長手方向に延在していることが更に好ましい、前記<1>〜<25>の何れか1に記載の吸収性物品。
<27>
前記レッグ弾性部材が前記脚周りカフに固定されている固定端部は、前記腹側外装体に配された前記胴周り弾性部材及び前記背側外装体に配された前記胴周り弾性部材それぞれよりも、着用者の胴が通されるウエスト開口部寄りに位置していることが好ましい、前記<26>に記載の吸収性物品。
<28>
前記脚周りカフ第2領域の3本の前記レッグ弾性部材の間隔は、前記脚周りカフ第1領域のレッグ弾性部材の間隔よりも短いことが好ましい、前記<1>〜<27>の何れか1に記載の吸収性物品。
<29>
前記脚周りカフ第2領域に3本以上の前記レッグ弾性部材が配されているときには、該レッグ弾性部材25,25どうしの間隔が、吸収体23側に向かって漸次短くなっていることが一層好ましい、前記<1>〜<28>の何れか1に記載の吸収性物品。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上、詳述したとおり、本発明によれば、(1)着用直後の脚周りカフ28が股下部1B内に侵入し、親水幅(おしっこを吸収できる範囲)を狭めず、(2)着用者の動作に起因しておむつ1と着用者の脚周りとの距離が変化して股下空間が形成されるような状態でも、脚周りカフ28が隙間なく着用者の脚周りに沿うことでモレを防止でき、(3)装着時において、着用者の脚周りに脚周りカフによる締め付け跡が付き難くなる。
以上、従来では両立が困難であった上記の(1)〜(3)の事項を達成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8