特許第6986286号(P6986286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986286
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】海洋生物DNAポリメラーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20211213BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20211213BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20211213BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20211213BHJP
【FI】
   C12N15/54
   C12N9/12ZNA
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12Q1/6844 Z
   C12Q1/6869 Z
【請求項の数】28
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-501756(P2019-501756)
(86)(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公表番号】特表2019-509766(P2019-509766A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】EP2017056865
(87)【国際公開番号】WO2017162765
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2020年3月9日
(31)【優先権主張番号】1604876.1
(32)【優先日】2016年3月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518338943
【氏名又は名称】ウニベルシテテット イ トロムソ−ノルゲス アークティスク ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン, アトレ ノラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピオトロフスキー, イヴォンヌ
(72)【発明者】
【氏名】アセファ, ネッサネット ギザウ
(72)【発明者】
【氏名】レインズ, オラフ
【審査官】 山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−536684(JP,A)
【文献】 特開2001−136965(JP,A)
【文献】 Datebase UniProt[online], Accession No. A0A0M3RBD1〈https://www.uniprot.org/uniprot/A0A0M3RBD1〉09-Dec-2015 uploaded, Definition: DNA polymerase I,2015年12月09日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/54
C12N 9/12
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12Q 1/6844
C12Q 1/6869
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼが、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項2】
前記DNAポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項3】
前記DNAポリメラーゼが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項4】
前記DNAポリメラーゼが、0℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも30%を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項5】
前記DNAポリメラーゼが、20℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも60%を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項6】
前記DNAポリメラーゼが最大活性を示す温度から最大10℃逸脱した温度で、前記DNAポリメラーゼがその最大ポリメラーゼ活性の少なくとも30%を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項7】
前記DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に0℃〜40℃の温度範囲の任意の温度で前記DNAポリメラーゼを15分間インキュベートした後も、その最大活性の少なくとも40%を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項8】
前記DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に0℃〜37℃の温度範囲の任意の温度で前記DNAポリメラーゼを15分間インキュベートした後も、その最大活性の少なくとも60%を示す、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項9】
前記DNAポリメラーゼが、6.0〜8.5の範囲のpHで42℃〜45℃の融解温度を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項10】
前記DNAポリメラーゼが、大腸菌(E.coli)クレノーフラグメントDNAポリメラーゼ、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼおよび/またはアリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)由来のDNAポリメラーゼより高いポリメラーゼ活性を有し、前記DNAポリメラーゼ活性が25℃で評価されるものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項11】
前記DNAポリメラーゼが、大腸菌(E.coli)クレノーフラグメントDNAポリメラーゼ、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼおよび/またはアリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)由来のDNAポリメラーゼより少なくとも50%高い鎖置換活性を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項12】
前記DNAポリメラーゼが、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)DNAポリメラーゼより高い処理能力を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項13】
前記DNAポリメラーゼが、0mM〜210mM NaClの濃度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも30%を示す、請求項1〜12のいずれか1項に記載の単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと、緩衝剤とを含む、組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項16】
配列番号2で記載されるヌクレオチド配列を含むか、または配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項17】
請求項15または16に記載の核酸分子と、前記核酸分子によってコードされるタンパク質配列の転写および翻訳に必要な制御配列とを含む、発現ベクター。
【請求項18】
1つもしくは複数の請求項17に記載の発現ベクターまたは1つもしくは複数の請求項15もしくは16に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを作製する方法であって、
(i)コードされる前記DNAポリメラーゼの発現に適した条件下で、請求項17に記載の組換え発現ベクターのうち1つもしくは複数のものまたは請求項15もしくは16に記載の核酸分子のうち1つもしくは複数のものを含む宿主細胞を培養する段階と、
(ii)前記宿主細胞または増殖培地もしくは上清から前記DNAポリメラーゼを単離または採取する段階と
を含む、方法。
【請求項20】
ヌクレオチド重合への請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントの使用。
【請求項21】
核酸増幅反応またはシーケンシング反応への請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントの使用。
【請求項22】
前記DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを一定温度で使用する、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記反応が、等温核酸増幅反応である、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを用いるヌクレオチド重合の方法であって、
(i)請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと、鋳型核酸分子と、前記鋳型核酸分子の一部分とアニールすることが可能なオリゴヌクレオチドプライマーと、1つまたは複数の種のヌクレオチドとを含む反応混合物を準備する段階と、
(ii)前記オリゴヌクレオチドプライマーが前記鋳型核酸分子とアニールし、前記DNAポリメラーゼが1つまたは複数のヌクレオチドを重合させることにより前記オリゴヌクレオチドプライマーを伸長させる条件下で前記反応混合物をインキュベートする段階と
を含む、方法。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを用いて核酸を増幅する方法であって、
(i)請求項1〜13のいずれか1項に記載のDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと、鋳型核酸分子と、前記鋳型核酸分子酸分子の一部分とアニールすることが可能なオリゴヌクレオチドプライマー(1つまたは複数)と、ヌクレオチドとを含む反応混合物を準備する段階と、
(ii)前記オリゴヌクレオチドプライマー(1つまたは複数)が前記鋳型核酸分子とアニールし、前記DNAポリメラーゼが1つまたは複数のヌクレオチドを重合させることにより前記オリゴヌクレオチドプライマー(1つまたは複数)を伸長させてポリヌクレオチドを生成する条件下で前記反応混合物をインキュベートする段階と
を含む、方法。
【請求項26】
一定温度で実施する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記一定温度が、0℃〜42℃である、請求項22に記載の使用または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記一定温度が、10℃〜25℃である、請求項27に記載の使用または請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDNAポリメラーゼに関する。本発明は特に、サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種由来のDNAポリメラーゼに基づくDNAポリメラーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物同定の標準法では依然として、原因病原体を培養し、次いで表現型を分化させるが、この過程の実施および解析には数日を要することが多く、この遅れが感染症の罹病率および死亡率に大きな影響を及ぼすことがある。さらに、多くの微生物は培地で増殖することができず、このため、既存の培養方法では検出されない。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は多くの方法で分子遺伝学および分子診断の分野に革命をもたらした。PCR技術で主力となっているのが、加熱および冷却の周期的事象とともに鎖の分離、プライマーのアニーリングおよび伸長を生じさせ、標的DNA配列を増幅させる耐熱性の高忠実度DNAポリメラーゼである。現在、PCR技術は生物医学および生命科学の研究のほか分子診断にも広く用いられている。
【0003】
病院外の患者のコミュニティでの疾患診断を可能にする医療ツールまたは医療装置としてポイントオブケア(POC)診断が記載されている。理想的な診断検査法は、「ASSURED」基準、すなわち、手頃であり、高感度であり、特異的であり、利用しやすく、迅速かつ確実で、設備を必要とせず、必要とする者に対して実施されるという基準を満たすものであるべきである。PCR技術には大きな可能性が秘められているものの、依然としていくつか制約があり、加熱と冷却の工程を繰り返す高精度な電動温度サイクリング設備の使用およびその設備を稼働させる熟練者が必要であるアニーリング工程での誤ったプライミングよる非特異的増幅が問題となっており、また、PCRが「粗」試料中の阻害化合物の影響を受けやすいということもある。さらに、PCR装置が大型の設計であることから、PCRはPOC技術プラットフォームに取り込むには不完全な解決法であり、PCRベースの方法をPOC診断の主要なテクノロジードライバーとして採用するのは困難なものとなっている。
【0004】
最近、PCRをベースとしない方法または等温増幅法が注目を集めつつある。これらの方法では、一定(中程度)の温度で核酸増幅が起こり、高精度の温度サイクルおよび制御も高温で安定な酵素も不要である。等温増幅法は、PCRと同等の解析感度および特異性を有し、PCRよりも阻害化合物に対する耐性が高く、短時間で結果が得られ、使用も容易であることが報告されている。このような特徴があることから、等温増幅法はPOC分子診断プラットフォームを開発し、「ASSURED」基準を満たすことを目的とする者に極めて望ましいものである。この10年間に、核酸(RNAおよびDNAの両方)の等温増幅に関する方法が多数公開されている(Gill,P.およびA.Ghaemi(2008)Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 27(3):224−243;Craw,P.およびW.Balachandran(2012)Lab Chip 12(14):2469−2486;de Paz,H.D.ら(2014)Expert Rev Mol Diagn 14(7):827−843;Yan,L.ら(2014)Mol Biosyst 10(5):970−1003で概説されている)。その方法のいくつかでは、反応設定に使用するDNAポリメラーゼに固有の鎖置換活性によって成否が左右される。鎖置換という用語は、ポリメラーゼが合成時に遭遇する下流のDNAを置換する能力を表す。
【0005】
診断以外の目的とする分野にも、DNAポリメラーゼにより可能になった等温増幅技術により利益がもたらされる。この点に関して、ゲノム研究には、特にDNAが少量しか存在しない場合および/または単一の細胞を用いる方法に全ゲノム増幅(多置換増幅)が重要なものとなっている。Pacific Biosciences社の一分子リアルタイム(SMRT)DNAシーケンシング技術および2013年にMaらが公開した次世代シーケンシングのための等温増幅法(Ma,Z.ら,Proc Natl Acad Sci USA 110(35):14320−14323)の例があるように、次世代シーケンシング法でも、市販のもの、概念実証段階にあるものを問わず、鎖置換ポリメラーゼが重要なものとなっている。
【0006】
しかし、様々な等温技術に現在用いられているポリメラーゼ酵素のツールボックスはごく限られている。様々な等温法には通常、30〜65℃の反応温度が必要であり、この温度は主として、反応に使用するポリメラーゼの機能範囲によって決まる。
【0007】
例えば、大腸菌(E.coli)クレノーフラグメントDNAポリメラーゼは、比較的狭い温度範囲でのみ有用なレベルのポリメラーゼ活性を示し、低温ないし中温(例えば、25℃)では比較的活性が低い。当該技術分野で必要とされるのは、広範囲の温度、特に低温ないし中温で、好ましくはそれより高い温度でも有用なレベルのポリメラーゼ活性および優れた安定性を示すDNAポリメラーゼである。このようなポリメラーゼは、室温またはその付近の温度を含めた広範囲の温度で実施する等温増幅反応に有用であると思われる。本発明者らは、これらの基準を驚くほど満たすサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種由来のDNAポリメラーゼを同定した。サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種は低温に適応しており、そのDNAポリメラーゼIは低温で活性を示す。しかし、他の海洋生物のDNAポリメラーゼとは異なり、サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のDNAポリメラーゼIは、20〜25℃超で急速に不活化することはなく、このため、広範囲の温度で極めて有用なDNAポリメラーゼである。さらに、サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のDNAポリメラーゼIは、全般的に他の海洋生物のポリメラーゼよりはるかに活性が高い。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、第一の態様では、単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを提供し、前記DNAポリメラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0009】
配列番号1のDNAポリメラーゼは、ノルウェー北部で単離された海洋細菌であるサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種(本明細書ではPB、PbまたはPbIとも呼ぶ)由来のDNAポリメラーゼIのアミノ酸配列に基づくものである。ただし、配列番号1には、野生型サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のDNAポリメラーゼI配列中に存在する5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインがない。好ましい実施形態では、5’−3’−エキソヌクレアーゼ活性が増幅混合物中のプライマーおよび/または産物を分解し得ることから通常好ましくないものであるため、DNAポリメラーゼ酵素に5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインが存在しない。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、単離DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを提供し、前記DNAポリメラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列よりなるか、または配列番号1と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列よりなる。
【0011】
好ましい実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、配列番号1と少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、85%、90%または95%、例えば少なくとも98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、配列番号1と比較して単一または複数のアミノ酸変化(付加、置換、挿入または欠失)を有するアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)。このような配列は、好ましくは、変化したアミノ酸を最大5個、例えば1個のみ、2個、3個、4個または5個、好ましくは1個、2個または3個、より好ましくは1個または2個含み得る。置換は保存的アミノ酸または非保存的アミノ酸によるものであり得る。好ましくは、前記変化は保存的アミノ酸置換である。
【0013】
好ましくは、本発明のDNAポリメラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼは配列番号1のアミノ酸配列よりなる。
一実施形態では、DNAポリメラーゼは配列番号3のアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)。本発明は、配列番号3の変異体およびフラグメントも提供する。本明細書に記載される配列番号1の変異体およびフラグメントのタイプは、配列番号3の変異体およびフラグメントに準用される。
【0014】
本発明のDNAポリメラーゼの酵素的に活性なフラグメントも提供される。酵素的に活性なフラグメントとは、DNAポリメラーゼ活性を有するフラグメントのことである。酵素的に活性なフラグメントは、長さが少なくとも400アミノ酸、少なくとも450アミノ酸、少なくとも475アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも525アミノ酸、少なくとも550アミノ酸、少なくとも560アミノ酸、少なくとも570アミノ酸または少なくとも575アミノ酸であり得る。好ましいフラグメントは、長さが少なくとも525アミノ酸、少なくとも550アミノ酸、少なくとも560アミノ酸、少なくとも570アミノ酸または少なくとも575アミノ酸である。フラグメントは、配列番号1の対応する部分と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(例えば、少なくとも98%、99%または99.5%)または100%同一である。
【0015】
所与のDNAポリメラーゼには一般に、最大ポリメラーゼ活性が観察される温度がある。多くのDNAポリメラーゼでは、温度が最大活性の観察される温度から逸脱する(例えば、低下または上昇する)と一般に、ごくわずかな温度の逸脱であってもポリメラーゼ活性の著明な低下がみられ、このことは、多くのポリメラーゼが極めて狭い温度範囲で実施する応用での使用にのみ適することを意味する。
【0016】
本発明者らは、サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のDNAポリメラーゼIが、低温ないし中温を含めた広範囲の温度で、最大ポリメラーゼ活性が観察される温度でのDNAポリメラーゼ活性と比較して相当なDNAポリメラーゼ活性を示す点で有利であることを明らかにした。換言すれば、本発明者らは、このサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のDNAポリメラーゼIが、多くのDNAポリメラーゼとは異なり、最大活性が観察される温度と大幅に異なる温度で、その最大ポリメラーゼ活性の有用な割合を示すことを明らかにした。
【0017】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、広範囲の温度にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の相当な割合を示す。
好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼがその最大活性を示す温度は約37℃〜42℃、好ましくは37℃〜40℃(例えば、37℃、38℃、39℃または40℃)である。
【0018】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、0℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の相当な割合を示す。
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、0℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも30%を示す。
【0019】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、10℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも40%を示す。
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、15℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも50%を示す。
【0020】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、20℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも60%を示す。
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、30℃〜35℃の温度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも70%(好ましくは、少なくとも80%または少なくとも90%)を示す。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼが最大活性を示す温度から最大約10℃(例えば1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、9℃または10℃)逸脱(上昇または低下)した温度で、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも約30%を示す。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼが最大活性を示す温度から最大約5℃(例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃)逸脱(上昇または低下)した温度で、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも約60%を示す。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼが最大活性を示す温度より最大約35℃〜40℃低い(例えば、40℃、30℃、20℃、10℃または5℃低い)温度で、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも約30%を示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼが最大活性を示す温度より最大約12℃〜約15℃低い(例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、10℃、12℃または15℃低い)温度で、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも約60%を示す。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼが最大活性を示す温度より最大約5℃〜約10℃低い(例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃低い)温度で、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも約70%(好ましくは、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%または95%)を示す。
【0026】
DNAポリメラーゼ活性を解析するのに適したアッセイは当該技術分野で公知である。したがって、このようなアッセイを用い、ポリメラーゼがその最大活性を示す温度で示されるDNAポリメラーゼ活性と比較した所与の温度でのDNAポリメラーゼ活性を求めることができる。上記のDNAポリメラーゼ活性は、単一ヌクレオチド組込みアッセイを用いて評価し得る。例示的な単一ヌクレオチド組込みアッセイでは、19ヌクレオチドからなり5’末端がフルオロフォアで標識されたプライマーを40ヌクレオチドからなる鋳型DNA鎖とアニールさせ;反応設定中、存在する唯一のdNTPはdATPであり、このため、ポリメラーゼはプライマーを5’−3’方向に20位で1ヌクレオチド分のみ伸長させることができ(鋳型鎖上の対応する(相補的な)位置にはTが1つ存在するため);それに続く変性ポリアクリルアミドゲル(例えば、12%ポリアクリルアミド/7M尿素)およびフルオロフォア標識オリゴヌクレオチドのスキャンによる解析では、19オリゴヌクレオチドからなるプライマーおよびヌクレオチドアデニンの分だけ伸長し、したがって20オリゴヌクレオチドからなるプライマーがみられ;伸長プライマー(強度1)および未伸長プライマー(強度0)を表すバンドの濃度測定により酵素活性(すなわち、ポリメラーゼ活性)を求め;組込み[%]=強度1/(強度0+強度1)×100により相対組込み率を算出する。
【0027】
このように、(i)19ヌクレオチドからなり、5’末端がフルオロフォアで標識されたプライマーを準備する段階、(ii)前記プライマーを40ヌクレオチドからなる鋳型DNA鎖とアニールさせてプライマー−鋳型複合体を形成させる段階、(iii)プライマーの3’末端の20位に組み込まれる唯一のdNTP(前記dNTPはアニールする鋳型DNA鎖上の関連するヌクレオチドに相補的なものである)の存在下、前記アニールしたプライマー−鋳型複合体を関連する温度(すなわち、検討する温度)でDNAポリメラーゼとインキュベートする段階および(iv)未伸長プライマー(19ヌクレオチド)に対する伸長プライマー(20ヌクレオチド)の量を求め、未伸長プライマーに対する伸長プライマーの量がポリメラーゼ活性のレベルに対応する(すなわち、伸長プライマーの量が多いほどポリメラーゼ活性が高いことを表す)段階を有するアッセイでDNAポリメラーゼ活性を評価し得る。
【0028】
好ましいプライマーおよび鋳型鎖については実施例に記載する。
特に好ましい単一ヌクレオチド組込みアッセイについては、本明細書の実施例の節に記載する。したがって、好ましい実施形態では、相対DNAポリメラーゼ活性は、実施例の節に記載される単一ヌクレオチド組込みアッセイにより評価されるものである。
【0029】
本発明者らは驚くべきことに、このサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のDNAポリメラーゼIが、通常の海洋環境よりも大幅に高い温度を含めた広範囲の温度で、他の多くのDNAポリメラーゼと比較して、特にアリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)などの他の海洋生物由来のDNAポリメラーゼと比較して優れた安定性(温度安定性)を示すことも明らかにした。これに関連して、「安定な」DNAポリメラーゼは、そのDNAポリメラーゼが広範囲の温度に曝露された後もポリメラーゼ活性をほとんど失わないことを意味する。別の観点から言えば、優れた「安定性」は、DNAポリメラーゼが広範囲の温度に曝露された後も相当なポリメラーゼ活性を保持する(すなわち、相当な残存活性を有する)ことを意味する。
【0030】
したがって、本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に広範囲の温度でインキュベート(プレインキュベート)した後も、その最大ポリメラーゼ活性の相当な割合を保持する。これに関連して、最大ポリメラーゼ活性は、DNAポリメラーゼ活性アッセイの開始前に氷上(約0℃)でDNAポリメラーゼのインキュベーション(プレインキュベーション)を実施したときに観察されるポリメラーゼ活性であり得る。
【0031】
好ましくは、インキュベーション(プレインキュベーション)は約15分間(15分間が好ましい)にわたるものである。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に、インキュベーション(プレインキュベーション)の温度に関係なく、前記インキュベーション後にDNAポリメラーゼを氷上で(例えば、約5分間)冷却する。
【0032】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に、0℃〜40℃(例えば、0℃〜15℃、0℃〜20℃、0℃〜25℃または0℃〜37℃)の温度範囲の任意の温度でDNAポリメラーゼをインキュベートした後も、その最大活性の少なくとも40%を示す。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。
【0033】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に、0℃〜37℃(例えば、0℃〜15℃、0℃〜20℃、0℃〜25℃、0℃〜30℃または0℃〜35℃)の温度範囲の任意の温度でDNAポリメラーゼをインキュベートした後も、その最大活性の少なくとも60%(好ましくは、少なくとも70%または少なくとも80%)を示す。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。
【0034】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性を評価する前に、0℃〜30℃(例えば、0℃〜15℃、0℃〜20℃または0℃〜25℃)の温度範囲の任意の温度でDNAポリメラーゼをインキュベートした後も、その最大活性の少なくとも70%(好ましくは、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%)を示す。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性アッセイ(例えば、単一ヌクレオチド伸長反応)の開始前に37℃で15分間インキュベートした後も、DNAポリメラーゼ活性アッセイの開始前に、氷上(0℃)で15分間のインキュベーションを実施した場合に観察されるポリメラーゼ活性の少なくとも60%(好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%)を示す、すなわち、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%の「残存」活性がみられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性アッセイ(例えば、単一ヌクレオチド伸長反応)の開始前に30℃で15分間インキュベートした後も、DNAポリメラーゼ活性アッセイの開始前に、氷上(0℃)で15分間のインキュベーションを実施した場合に観察されるポリメラーゼ活性の最小70%(好ましくは少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも80%、少なくとも90%または100%)を示す、すなわち、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%の「残存」活性がみられる。
【0037】
DNAポリメラーゼの温度安定性を解析するのに適した実験は当該技術分野で公知であり、そのいずれも用い得る。DNAポリメラーゼの温度安定性は、ポリメラーゼ活性を求めるアッセイを実施する前に、DNAポリメラーゼを被験温度(例えば、0℃(例えば氷上)、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、40℃または45℃)で一定時間(例えば、5分〜25分、好ましくは約15分)の間インキュベートすることにより評価し得る。好ましくは、ポリメラーゼ活性を求めるアッセイを実施する前に、DNAポリメラーゼを被験温度(例えば、0℃(例えば氷上)、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、40℃または45℃)で15分間インキュベートし、次いで、DNAポリメラーゼを氷上で(例えば、5分間)冷却することによりDNAポリメラーゼ安定性を評価し得る。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、好ましくは、単一ヌクレオチド組込みアッセイ、好ましくは本明細書の他の箇所に記載される単一ヌクレオチド組込みアッセイを用いて評価し得る。特に好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は、実施例の節に記載する単一ヌクレオチド組込みアッセイにより評価されるものである。
【0038】
本発明の特に好ましいDNAポリメラーゼは、広範囲の温度にわたって優れた安定性および優れた活性を有する。
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼの融解温度(Tm)の解析により評価される広範囲にわたるpH安定性プロファイル(pH6.0〜pH8.5)を有する。本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、6.0〜8.5の範囲のpHで約42℃〜45℃、好ましくは約43℃〜44℃の融解温度を有する。融解温度(Tm)はthermofluor実験により求め得る(Ericssonら,Anal.Biochem.,2006,357,289−298)。特に好ましいアッセイを実施例の節に記載する。
【0039】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、いくつかの市販のDNAポリメラーゼより高いDNAポリメラーゼ活性(比活性)を有する。
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、約25℃(25℃が好ましい)の温度でいくつかの市販のDNAポリメラーゼより高いDNAポリメラーゼ活性(比活性)を有する。
【0040】
DNAポリメラーゼ活性(比活性)は、任意の適切なアッセイを用いて解析することが可能であり、当業者であれば適切なアッセイを容易に選択することができる。本明細書で論じられるDNAポリメラーゼ活性は、等温増幅アッセイを用いて評価し得る。本明細書で論じられるDNAポリメラーゼ活性は、等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。例示的な分子ビーコンアッセイでは、分子ビーコン鋳型は、GCリッチなステム領域により連結されたループ領域を含み;分子ビーコン鋳型は、近接するため消光する2つのフルオルフォア(fluorphore)を有し;分子ビーコン鋳型とアニールしたプライマーがDNAポリメラーゼ(DNAポリメラーゼI)により伸長すると、ステムが開き、前に消光したフルオロフォアの蛍光の回復により、2つのフルオロフォア間の距離の増大が測定される。
【0041】
このように、(i)GCリッチなステム領域により連結されたループ領域を含み、互いに近接していることにより消光する2つのフルオルフォア(fluorphore)を含む鋳型DNA分子(分子ビーコン鋳型)を準備する段階、(ii)プライマーを前記鋳型DNA分子とアニールさせる段階、(iii)前記鋳型−プライマー複合体をDNAポリメラーゼと(例えば、約25℃、好ましくは25℃で)インキュベートする段階および(iv)前に消光したフルオロフォアの蛍光の回復を測定し、前記蛍光がDNAポリメラーゼ活性を表す段階を有するアッセイでDNAポリメラーゼ活性を評価し得る。
【0042】
好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、約25℃(25℃が好ましい)で実施する等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。
【0043】
好ましい分子ビーコン鋳型およびプライマーについては実施例に記載する。
好ましいDNAポリメラーゼ活性アッセイは、本明細書の実施例の節に記載され、等温分子ビーコンアッセイである、ポリメラーゼ活性アッセイである。したがって、好ましい実施形態では、実施例の節に記載されるポリメラーゼ活性アッセイによりDNAポリメラーゼ活性を評価する。
【0044】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、大腸菌(E.coli)クレノーフラグメントDNAポリメラーゼ(本明細書ではKFとも呼ぶ)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(本明細書ではBstとも呼ぶ)および/または市販のG.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼBst2.0の変異体より高いポリメラーゼ活性(比活性)を有する。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、(例えば、25℃で実施する)等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載されるポリメラーゼ活性アッセイによりDNAポリメラーゼ活性を評価する。
【0045】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、大腸菌(E.coli)クレノーフラグメントDNAポリメラーゼより少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%または少なくとも150%高いポリメラーゼ活性(比活性)を有する。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、(例えば、25℃で実施する)等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載されるポリメラーゼ活性アッセイによりDNAポリメラーゼ活性を評価する。
【0046】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼより少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%または少なくとも1000%高いポリメラーゼ活性(比活性)を有する。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、(例えば、25℃で実施する)等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載されるポリメラーゼ活性アッセイによりDNAポリメラーゼ活性を評価する。
【0047】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、市販のG.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Bst2.0)の変異体より少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%または少なくとも500%高いポリメラーゼ活性(比活性)を有する。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、(例えば、25℃で実施する)等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載されるポリメラーゼ活性アッセイによりDNAポリメラーゼ活性を評価する。
【0048】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、特に約25℃(25℃が好ましい)の温度で、他の海洋生物のポリメラーゼ(例えば、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)由来のDNAポリメラーゼ)より高いDNAポリメラーゼ活性(比活性)を有する。本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)由来のDNAポリメラーゼより少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%高いポリメラーゼ活性(比活性)を有する。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。DNAポリメラーゼ活性は、(例えば、25℃で実施する)等温分子ビーコンアッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載されるポリメラーゼ活性アッセイによりDNAポリメラーゼ活性を評価する。
【0049】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、本明細書に記載されるDNAポリメラーゼ活性アッセイにより25℃で解析したとき、好ましくは、本明細書の実施例の節に記載されるDNAポリメラーゼ活性アッセイにより解析したとき、少なくとも200,000mRFU/(分・μg)、少なくとも250,000mRFU/(分・μg)または少なくとも300,000mRFU/(分・μg)のDNAポリメラーゼ活性(比活性)を有する。
【0050】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは高い鎖置換活性を有する。多くの等温増幅法では反応設定に使用するDNAポリメラーゼに固有の鎖置換活性によって成否が左右されるため、これは重要な特性である。「鎖置換」という用語は、ポリメラーゼが合成時に遭遇する下流のDNAを置換する能力を表す。
【0051】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、約25℃(好ましくは25℃)の温度で他の市販のDNAポリメラーゼより高い鎖置換活性を有する。
DNAポリメラーゼの鎖置換活性を評価するのに適したアッセイは当該技術分野で公知であり、当業者であれば適切なアッセイを容易に選択することができる。例示的な鎖置換活性アッセイでは、「コールド」プライマーおよび3’末端をフルオロフォア(例えば、TAMRA)で標識したレポーター鎖を、アニールしたプライマーの3’末端とアニールしたレポーター鎖の5’末端との間にヌクレオチドギャップが1つ生じるように、5’末端に消光剤(例えば、BHQ2)を有する(したがって、消光剤が近接していることによりフルオロフォアが消光する)鋳型鎖とアニールさせ;DNAポリメラーゼの鎖置換活性が生じると、フルオロフォア標識オリゴヌクレオチド(レポーター鎖)が鋳型鎖から移動し、その結果、フルオロフォアと消光剤が近接した状態ではなくなり、蛍光の増大を測定することが可能になる。
【0052】
鎖置換活性は、(i)5’末端に消光剤(蛍光消光剤)を有する鋳型DNA分子を準備する段階、(ii)アニールしたプライマーの3’末端とアニールしたレポーター鎖の5’末端との間にヌクレオチドギャップが1つ生じるように、前記鋳型DNA分子をコールドプライマー(すなわち、非蛍光オリゴヌクレオチド)および3’末端をフルオロフォアで標識したレポーター鎖(レポーターオリゴヌクレオチド)とアニールさせ、互いに近接していることにより消光剤がフルオロフォアを消光させる段階、(iii)前記鋳型コールドプライマー−レポーター鎖複合体をDNAポリメラーゼと(例えば、約25℃、好ましくは25℃で)インキュベートする段階および(iv)前に消光したフルオロフォアの蛍光を測定し、前記蛍光が鎖置換活性を表す段階を有するアッセイで評価し得る。
【0053】
好ましい実施形態では、25℃で実施するアッセイで鎖置換を評価する。
好ましいプライマー、レポーター鎖および鋳型鎖を実施例に記載する。
好ましい実施形態では、実施例の節に記載される鎖置換活性アッセイにより鎖置換活性を評価する。
【0054】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、大腸菌(E.coli)クレノーフラグメントDNAポリメラーゼより少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%または少なくとも2000%高い鎖置換活性を有する。好ましくは、鎖置換活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。鎖置換活性は、本明細書に記載される(例えば、25℃で実施する)鎖置換アッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載される鎖置換アッセイにより鎖置換活性を評価する。
【0055】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼより少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500、少なくとも600%または少なくとも700%高い鎖置換活性を有する。好ましくは、鎖置換活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。鎖置換活性は、本明細書に記載される(例えば、25℃で実施する)鎖置換アッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載される鎖置換アッセイにより鎖置換活性を評価する。
【0056】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、市販のG.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Bst2.0)の変異体より少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%または少なくとも400%高い鎖置換活性を有する。好ましくは、鎖置換活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。鎖置換活性は、本明細書に記載される(例えば、25℃で実施する)鎖置換アッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載される鎖置換アッセイにより鎖置換活性を評価する。
【0057】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、他の海洋生物のポリメラーゼ(例えば、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)由来のDNAポリメラーゼ)より高い鎖置換活性を有する。本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、約25℃(25℃が好ましい)の温度で他の海洋生物のDNAポリメラーゼより高い鎖置換活性を有する。いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)由来のDNAポリメラーゼより少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%または少なくとも500%高い鎖置換を有する。好ましくは、鎖置換活性は約25℃(25℃が好ましい)で評価されるものである。鎖置換活性は、本明細書に記載される(例えば、25℃で実施する)鎖置換アッセイを用いて評価し得る。より好ましくは、実施例の節に記載される鎖置換アッセイにより鎖置換活性を評価する。
【0058】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、本明細書に記載される鎖置換活性アッセイにより、好ましくは本明細書の実施例の節の鎖置換活性アッセイにより25℃で解析したとき、少なくとも20,000mRFU/(分・μg)、少なくとも25,000mRFU/(分・μg)または少なくとも30,000mRFU/(分・μg)の鎖置換活性を有する。
【0059】
本発明の好ましいDNAポリメラーゼは高い処理能力を有する。DNAポリメラーゼと関連する「処理能力」とは、DNAポリメラーゼが合成(ヌクレオチド組込み)時に解離するまでDNA鋳型鎖との結合を維持する能力のことであり、したがって、所与のポリメラーゼの処理能力が増大するとDNA合成全体の効率が増大し得る。換言すれば、処理能力は、鋳型鎖との結合事象当たりにDNAポリメラーゼにより付加される平均ヌクレオチド数の尺度となる。より長いDNAを合成する必要がある場合、処理能力の高いDNAポリメラーゼが特に重要なものとなり得る。
【0060】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、市販のG.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(BstpolI、Bst2.0)およびバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)DNAポリメラーゼ(本明細書ではBSUとも呼ぶ)より高い処理能力を有する。好ましい実施形態では、より高い処理能力は大幅に高いものである。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、市販のG.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(BstpolI、Bst2.0)および/またはB.スブチリス(B.subtilis)DNAポリメラーゼ(本明細書ではBSUとも呼ぶ)より少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも1500%または少なくとも2000%高い処理能力を有する。
【0061】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、市販のG.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(BstpolI、Bst2.0)より少なくとも5000%、少なくとも10,000%、少なくとも15,000%、少なくとも20,000%、少なくとも25,000%または少なくとも30,000%高い処理能力を有する。
【0062】
本発明のいくつかのDNAポリメラーゼは、B.スブチリス(B.subtilis)DNAポリメラーゼ(本明細書ではBSUとも呼ぶ)より少なくとも1000%、少なくとも1500%または少なくとも2000%高い処理能力を有する。
【0063】
処理能力を解析するのに適したアッセイは当該技術分野で周知である。適切で特に好ましい処理能力アッセイについては本明細書の実施例の節に記載する。
本発明の好ましいDNAポリメラーゼは、様々な塩(NaCl)濃度にわたって有用なレベルのポリメラーゼ活性を有する。換言すれば、本発明のDNAポリメラーゼは、広範囲の塩濃度にわたって、最大ポリメラーゼ活性が観察される塩濃度で観察されるDNAポリメラーゼ活性の相当な割合を示す。DNAポリメラーゼ活性を求めるのに適したアッセイについては本明細書の他の箇所に記載する。DNAポリメラーゼ活性を求めるのに好ましいアッセイは、例えば本明細書に記載される、好ましくは実施例の節に記載される等温分子ビーコンアッセイである。
【0064】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼがその最大活性を示すNaCl濃度は約65mM〜100mM(例えば、70mM、75mM、80mM、85mMまたは90mM)である。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、約0mM〜210mM NaClの濃度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の相当な割合(例えば、少なくとも30%)を示す。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、約20mM〜150mM NaClの濃度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも60%を示す。
いくつかの実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、約60mM〜120mM NaClの濃度範囲にわたって、その最大ポリメラーゼ活性の少なくとも80%(好ましくは、少なくとも90%または少なくとも95%)を示す。
【0067】
好ましくは、適切な対照レベルと比較したとき、上記の能力および特性が、測定可能レベルまたは有意レベルで、より好ましくは統計的に有意なレベルで観察される。適切な有意レベルについては本明細書の他の箇所で論じる。より好ましくは、先行技術のDNAポリメラーゼで観察される能力と比較したとき、上記の能力および特性のうち1つまたは複数のものが、測定可能に優れている、またはより好ましくは有意に優れているレベルで観察される。
【0068】
別の態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)か、または配列番号1と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)、単離DNAポリメラーゼを提供し、前記DNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼドメインがない(例えば、配列番号5のアミノ酸配列の一部または全部がない)。本発明のその他の態様の他の特徴および特性は、本発明のこの態様に準用される。
【0069】
さらに別の態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)か、または配列番号1と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む(またはこれよりなる)、単離DNAポリメラーゼを提供し、前記DNAポリメラーゼは、サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種由来の野生型DNAポリメラーゼではない。本発明のその他の態様の他の特徴および特性は、本発明のこの態様に準用される。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、本発明のDNAポリメラーゼを含む分子(例えば、タンパク質)を提供する。
本願全体を通して使用される「a」および「an」という用語は、のちに上限または除外が具体的に記載される場合を除き、それらが、言及される成分または段階のうちの「少なくとも1つもの」、「少なくとも第一のもの」、「1つまたは複数のもの」または「複数のもの」を意味するという意味で使用される。実施可能な組合せの限界およびパラメータについては、任意の単一薬剤の量と同じく、本開示を踏まえれば当業者に明らかになるであろう。
【0071】
本明細書で定義される本発明のDNAポリメラーゼもしくはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子またはこれと実質的に相同な核酸分子が本発明のさらなる態様を構成する。好ましい核酸分子は、配列番号1のサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種DNAポリメラーゼIの配列またはそれと実質的に相同な配列をコードする核酸である。好ましい核酸分子は、配列番号2で記載されるヌクレオチド配列を含む(またはこれよりなる)ものであるか、またはそれと実質的に相同な配列である。任意選択で、配列番号2の最後の3つのヌクレオチドが省かれ得る。本発明の核酸配列は、配列番号2と少なくとも70%または75%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の配列同一性を有する配列を含む。したがって、本発明の核酸配列は、配列番号2の配列に対する単一または複数の塩基変化(付加、置換、挿入または欠失)を含む。
【0072】
特に好ましい核酸分子は、配列番号2で記載されるヌクレオチド配列を含む。
また別の好ましい核酸分子は、配列番号2で記載されるヌクレオチド配列よりなる。
本発明は、本明細書に記載される核酸分子の変性型、例えば、配列番号2を含む(またはこれよりなる)核酸分子の変性型であるヌクレオチド配列を含む(またはこれよりなる)核酸分子にも及ぶ。
【0073】
本発明の核酸分子は、好ましくは「単離」または「精製」されたものである。
相同性(例えば、配列同一性)は、任意の都合のよい方法により評価し得る。しかし、配列間の相同性(例えば、同一性)の大きさを求めるには、配列のマルチプルアライメントを作成するコンピュータプログラム、例えばClustal W(Thompson,Higgins,Gibson,Nucleic Acids Res.,22:4673−4680,1994)が有用である。必要に応じて、Clustal WアルゴリズムをBLOSUM 62スコア行列(HenikoffおよびHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915−10919,1992)ならびにギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1とともに用いて、一方の配列の全長の少なくとも50%がアライメントに含まれる最上位のマッチを2配列間で得ることができる。配列を整列させるのに使用し得る他の方法として、2配列間で最上位のマッチが得られ、2配列間で一致するアミノ酸の数が求められるようSmithおよびWaterman(SmithおよびWaterman,Adv.Appl.Math.,2:482,1981)により修正されたNeedlemanおよびWunschのアライメント法(NeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.,48:443,1970)がある。2つのアミノ酸配列間の百分率同一性を算出するその他の方法が当該技術分野で一般に認められており、例えば、CarilloおよびLiptonにより記載されているもの(CarilloおよびLipton,SIAM J.Applied Math.,48:1073,1988)およびComputational Molecular Biology,Lesk編,Oxford University Press,New York,1988,Biocomputing:Informatics and Genomics Projectsに記載されているものがこれに含まれる。
【0074】
このような計算には一般にコンピュータプログラムを用いる。この目的には、配列のペアを比較し整列させるALIGN(MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17,1988)、FASTA(PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448,1988;Pearson,Methods in Enzymology,183:63−98,1990)およびギャップBLAST(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402,1997)、BLASTP、BLASTNまたはGCG(Devereux,Haeberli,Smithies,Nucleic Acids Res.,12:387,1984)などのプログラムも有用である。さらに、欧州バイオインフォマティクス研究所のDaliサーバは構造に基づくタンパク質配列のアライメントを提供している(Holm,Trends in Biochemical Sciences,20:478−480,1995;Holm,J.Mol.Biol.,233:123−38,1993;Holm,Nucleic Acid Res.,26:316−9,1998)。
【0075】
基準点を設けることにより、ALIGNプログラムに初期パラメータ(例えば、インターネット上のGENESTREAMネットワークサーバ(IGH、モンペリエ、フランス)で利用可能である)を用いて、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性、配列同一性などを有する本発明による配列を決定し得る。
【0076】
本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を類似した側鎖を有する別のアミノ酸残基に置き換えるアミノ酸置換のことである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されている。
【0077】
本発明のDNAポリメラーゼは遺伝的にコードされたアミノ酸を含むが、1つまたは複数の非遺伝的にコードされたアミノ酸も含み得る。
本明細書に記載される本発明のDNAポリメラーゼの変異体または酵素的に活性なフラグメントは、DNAポリメラーゼ活性を有することに加え、好ましくは本明細書に記載される他の特性を1つまたは複数、より好ましくは本明細書に記載される他の特性をすべて有する。
【0078】
本明細書で核酸の分子または配列およびタンパク質またはポリペプチド、例えばDNAポリメラーゼに関連して使用される「単離(された)」または「精製(された)」という用語は、単離された形態である、精製された形態である、または実質的にその天然の環境を含まない、例えば、(実際にそれが天然に存在する場合)生物体から単離された形態または精製された形態である上記の分子を指すか、あるいは技術的工程により作製された上記の分子を指し、例えば、組換え分子および合成により作製した分子がこれに含まれる。
【0079】
したがって、DNAポリメラーゼなどのタンパク質またはポリペプチド分子に関連して使用される場合、「単離(された)」または「精製(された)」という用語は通常、由来源に由来する細胞物質も他のタンパク質も実質的に含まないタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、このような単離タンパク質または精製タンパク質は、組換え技術により作製する場合は培地を、また化学的に合成する場合は化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない。
【0080】
考え得る発現ベクターとしては、ベクターが使用する宿主細胞と適合性がある限り、特に限定されないがコスミドまたはプラスミドが挙げられる。発現ベクターは「宿主細胞の形質転換に適したもの」であり、このことは、その発現ベクターが、本発明の核酸分子と、発現に使用する宿主細胞に基づいて選択され、核酸分子と作動可能に連結された制御配列とを含むことを意味する。作動可能に連結されたとは、核酸がその発現が可能なように制御配列と連結されていることを意味するものとする。
【0081】
したがって、本発明は、一態様では、本発明の核酸分子またはそのフラグメントと、本発明の核酸分子によってコードされるタンパク質配列の転写および翻訳に必要な制御配列とを含む、発現ベクター(好ましくは組換え発現ベクター)を提供する。
【0082】
適切な制御配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物または昆虫の遺伝子を含めた様々な入手源に由来するものであり得、当該技術分野で周知である。適切な制御配列の選択は、のちに論じるように、選択する宿主細胞によって決まり、当業者により容易に達成され得る。このような制御配列の例としては、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、翻訳開始シグナルを含めたリボソーム結合配列が挙げられる。さらに、選択する宿主細胞および用いるベクターによっては、それ以外の配列、例えば複製起点、追加のDNA制限部位、エンハンサーおよび転写誘導能を与える配列などを発現ベクターに組み込み得る。
【0083】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の組換え分子で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易にする選択マーカー遺伝子も含み得る。
組換え発現ベクターは、組換えタンパク質の発現増大;組換えタンパク質の溶解度増大;およびアフィニティー精製でリガンドとしての役割を果たすことによる標的組換えタンパク質精製の促進(例えば、精製および/または同定を可能にするのに適した「タグ」、例えばHisタグまたはmycタグが存在し得る)をもたらす融合部分をコードする遺伝子も含み得る。
【0084】
組換え発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換宿主細胞を作製することができる。「〜で形質転換した」、「〜をトランスフェクトした」、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、当該技術分野で公知の多数の可能な技術のうちの1つにより細胞に核酸(例えば、ベクター)を導入することを包含するものとする。宿主細胞を形質転換およびトランスフェクトするのに適した方法は、Sambrookら,1989(Sambrook,FritschおよびManiatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)およびその他の実験用テキストにみることができる。
【0085】
適切な宿主細胞としては、多種多様な原核宿主細胞および真核細胞が挙げられる。好ましくは、本発明のタンパク質を大腸菌(Escherichia coli)などの細菌宿主細胞で発現させ得る。
【0086】
組換え技術による融合により、タンパク質などの他の分子(例えば、エピトープタグ)とコンジュゲートした本発明のDNAポリメラーゼおよびタンパク質を含むN末端またはC末端(側)融合タンパク質を調製し得る。
【0087】
さらなる態様は、本発明の1つまたは複数の発現構築物または発現ベクターを含む宿主細胞またはウイルスを提供する。また、本発明の核酸分子のうち1つまたは複数のものを含む宿主細胞またはウイルスも提供される。本発明のDNAポリメラーゼを発現することが可能な宿主細胞またはウイルスはさらなる態様を構成する。好ましい宿主細胞としては、Rosetta 2(DE3)細胞(Novagen社)が挙げられる。
【0088】
必要に応じて、本発明のDNAポリメラーゼは、天然源から単離したもの、例えばサイクロバチルス(Psychrobacillus)の抽出物から単離したもの、または組換えにより宿主細胞に産生させ、そこから単離し精製したものであり得る。したがって、本発明のDNAポリメラーゼは、組換え酵素、特に単離組換え酵素であり得る。ある特定の実施形態では、DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼが天然にみられる生物体と同じ生物体ではない、またはそのような生物体に由来するものではない宿主細胞、すなわち異種宿主細胞で組換え技術により産生される。
【0089】
組換えDNA技術を用いて本発明のDNAポリメラーゼを作製し得る。あるいは、DNAポリメラーゼの産生に無細胞発現系を用いることができる。あるいは、1度に1アミノ酸ずつ段階的伸長によりDNAポリメラーゼが生成するよう化学合成を用いて本発明のDNAポリメラーゼを作製し得る。このような化学合成技術(例えば、固相合成)はタンパク質化学で周知である。
【0090】
本発明のさらなる態様は、本発明のDNAポリメラーゼを作製する方法であって、本発明の宿主細胞を培養する段階を含む方法を提供する。好ましい方法は、(i)コードされるDNAポリメラーゼまたはタンパク質の発現に適した条件下で、本発明の組換え発現ベクターのうち1つもしくは複数のものまたは本発明の核酸分子のうち1つもしくは複数のものを含む宿主細胞を培養する段階;および任意選択で、(ii)宿主細胞または増殖培地/上清からDNAポリメラーゼまたはタンパク質を単離または採取する段階を含む。このような作製方法は、DNAポリメラーゼもしくはタンパク質産物を精製し、かつ/またはDNAポリメラーゼもしくは産物を少なくとも1つの追加の成分、例えば許容される緩衝剤もしくは担体などを含む組成物に調製する段階も含み得る。
【0091】
当該技術分野で公知であり、文献に広く記載されているタンパク質の精製技術のいずれかまたはその任意の組合せを用いて、DNAポリメラーゼを宿主細胞/培地から分離または単離し得る。このような技術としては、例えば、沈殿、限外ろ過、透析、様々なクロマトグラフィー技術、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離などを挙げ得る。上で論じたように、単離、可溶化および/または精製もしくは同定を補助するため、アミノ酸モチーフまたはその他のタンパク質もしくは非タンパク質タグ、例えばポリヒスチジンタグ(例えば、His6タグ)を有するよう本発明のDNAポリメラーゼを修飾し得る。
【0092】
本発明のDNAポリメラーゼの好ましい作製方法については、本明細書の実施例の節に記載する。
別の態様では、本発明は、ヌクレオチド(例えば、dNTP)重合への本発明のDNAポリメラーゼの使用を提供する。したがって、1つまたは複数のヌクレオチドにより核酸(DNA)鎖を伸長させるのに本発明のDNAポリメラーゼを使用し得る。
【0093】
別の態様では、本発明は、核酸(DNA)増幅反応またはシーケンシング反応への本発明のDNAポリメラーゼの使用を提供する。
別の態様では、本発明は、例えば本明細書に記載するような、分子ビーコンアッセイ、鎖置換アッセイまたは単一ヌクレオチド組込みアッセイへの本発明のDNAポリメラーゼの使用を提供する。
【0094】
好ましくは、本発明の使用および方法では、一定温度で、すなわち温度サイクリングを用いずに、本発明のDNAポリメラーゼを使用する。したがって、等温反応で本発明のDNAポリメラーゼを使用するのが特に好ましい。等温増幅反応で本発明のDNAポリメラーゼを使用するのが特に好ましい。等温反応は一定温度で実施するものである。多数の等温増幅技術が当該技術分野で公知であり、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)、多置換増幅(MDA)および交差プライミング増幅(CPA)がこれに含まれる。
【0095】
別の態様では、本発明は、本発明のDNAポリメラーゼを用いるヌクレオチド重合の方法を提供する。好ましくは、前記方法は、本発明のDNAポリメラーゼと、鋳型核酸分子と、鋳型核酸分子の一部分とアニールすることが可能なオリゴヌクレオチドプライマーと、1つまたは複数の種のヌクレオチド(例えば、デオキシヌクレオシド三リン酸、dNTPS)とを含む反応混合物を準備することと、オリゴヌクレオチドプライマーが鋳型核酸分子とアニールし、前記DNAポリメラーゼが1つまたは複数のヌクレオチドを重合させることにより前記オリゴヌクレオチドプライマーを伸長させる条件下で前記反応混合物をインキュベートすることとを含む。適切な条件は当該技術分野で周知である。好ましくは、一定温度を用い、好ましい温度については本明細書の他の箇所に記載する。任意選択で、(例えば、ゲル電気泳動により)ポリヌクレオチド産物の生成を検出する。
【0096】
別の態様では、本発明は、本発明のDNAポリメラーゼを用いて核酸(DNA)を増幅する方法を提供する。前記方法は通常、本発明のDNAポリメラーゼと、鋳型核酸分子と、鋳型核酸分子酸分子の一部分とアニールすることが可能なオリゴヌクレオチドプライマー(1つまたは複数)(例えば、2つ以上のプライマー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのプライマー)と、ヌクレオチド(例えば、デオキシヌクレオシド三リン酸、dNTPS)とを含む反応混合物を準備することと、オリゴヌクレオチドプライマー(1つまたは複数)が鋳型核酸分子とアニールし、前記DNAポリメラーゼが1つまたは複数のヌクレオチドを重合させることにより前記オリゴヌクレオチドプライマー(1つまたは複数)を伸長させてポリヌクレオチドを生成する条件下で前記反応混合物をインキュベートすることとを含む。適切な条件は当該技術分野で周知である。好ましい核酸増幅の方法は等温増幅法である。本発明の等温増幅法は一定温度で実施し、好ましい温度については本明細書の他の箇所に記載する。任意選択で、(例えば、ゲル電気泳動により)ポリヌクレオチド産物の生成を検出する。
【0097】
例示的な等温増幅法としては、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)、多置換増幅(MDA)および交差プライミング増幅(CPA)が挙げられる。
【0098】
好ましくは、本発明の方法および使用に用いる一定温度は、低温ないし中温、例えば、0℃〜約42℃、好ましくは、約10℃〜約40℃、約20℃〜約40℃、約25℃〜約40℃、約30℃〜約40℃、約35℃〜約40℃または約37℃〜約40℃である。いくつかの実施形態では、一定温度は、約10℃〜約15℃であるか、または約10℃〜約20℃である。いくつかの実施形態では、一定温度は約10℃〜約30℃である。いくつかの実施形態では、一定温度は約20℃〜約30℃である。いくつかの実施形態では、一定温度は約10℃〜約25℃である。いくつかの実施形態では、一定温度は約20℃〜約25℃である。約25℃の一定温度が好ましい。いくつかの実施形態では、一定温度は25℃である。
【0099】
反応中に温度を修正するいかなる積極的手段も講じない、例えば温度サイクリングを実施しない場合、温度は一定であると見なされ得る。それでもなお、「一定」温度には方法の実施中に最大約5℃、通常、最大3℃または2℃の温度変動が許容され得る。
【0100】
本発明のDNAポリメラーゼをポイントオブケア分子診断プラットフォームに使用し得る。
本発明のDNAポリメラーゼを全ゲノム増幅に使用し得る。
【0101】
本発明のDNAポリメラーゼを次世代シーケンシング法に使用し得る。(「第一世代」の方法であるサンガージデオキシヌクレオチド法に関連して)いわゆる「次世代」または「第二世代」シーケンシング法が普及しつつある。これらの新たな技術は、例えば、並列シーケンシング反応、例えば大量並列シーケンシング反応を用いる結果としての、または時間のかからない段階を経ることによるハイスループットを特徴とする。各種のハイスループットシーケンシング法は、単一分子シーケンシングをもたらし、パイロシーケンシング、可逆的ターミネーターシーケンシング、ライゲーションによる切断プローブシーケンシング、ライゲーションによる非切断プローブシーケンシング、DNAナノボールおよびリアルタイム単一分子シーケンシングなどの技術を用いるものである。
【0102】
本発明のDNAポリメラーゼの酵素的に活性なフラグメントを用いる使用および方法も提供され、本明細書で本発明のDNAポリメラーゼに言及する場合、文脈上そうでないことが明らかでない限り、本発明のDNAポリメラーゼはそのような活性フラグメントを包含する。
【0103】
本発明の使用および方法は通常、in vitroで実施する。
本発明は、本発明のDNAポリメラーゼを含む組成物も提供する。このような組成物は、好ましくは緩衝剤を含む。任意選択で、本発明の組成物は、核酸増幅反応(例えば、等温増幅反応)を実施するのに必要な試薬、例えば、鋳型DNAのある領域とアニールして増幅され得るオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはヌクレオチド(例えば、dNTP)のうち1つまたは複数のものをさらに含む。組成物は通常、水性であり、Tris、HEPESなどの標準的な緩衝剤で緩衝されている。
【0104】
本発明は、1つもしくは複数の本発明のDNAポリメラーゼ、1つもしくは複数の本発明の組成物、1つもしくは複数の本発明の核酸分子、1つもしくは複数の本発明の発現ベクターまたは1つもしくは複数の本発明の宿主細胞もしくはウイルスを含むキットをさらに含む。好ましくは、前記キットは、本明細書に記載される方法および使用、例えば、等温増幅反応などの核酸増幅法に使用するためのものである。好ましくは、前記キットは、例えば核酸増幅のためのキット構成要素を使用するための指示書を含む。
【0105】
本明細書に開示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列ならびにその配列識別番号(配列番号)
ヌクレオチド配列はいずれも、この技術分野の慣例に従い5’から3’の方向で本明細書に記載する。
【0106】
配列番号1−サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種から単離された短縮DNAポリメラーゼIのアミノ酸配列。
配列番号1
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配列番号2−配列番号1のサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種DNAポリメラーゼIの配列をコードする核酸配列
配列番号2
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配列番号3−サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種から単離された完全長DNAポリメラーゼIのアミノ酸配列。
配列番号3
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配列番号4−配列番号3のサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種DNAポリメラーゼIの配列をコードする核酸配列。
配列番号4
atgtatttgtcaaccgagaaaatcctattattagacggcaatagtttggcataccgagct
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配列番号5−サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種から単離されたDNAポリメラーゼIの5’−3’エキソヌクレアーゼ機能ドメインを含む配列。
配列番号5
MYLSTEKILLLDGNSLAYRAFFALPLLTNEHGIHTNAVYGFTMMLQKIMDEENPTHMLVAFDAGKTTFRHSTFGDYKGGRQKTPPELSEQFPYIRKLIDAYGIKRYELEMYEADDIIGTLSKRADEKGQQVVIVSGDKDLTQLATDKTTVYITRKGITDIEKYTPEHVQEKYGLTPLQIIDMKGLMGDASDNIPGVPGVGEKTAIKLLKEHGSVEDLYKALDTVSGVKLKEKLIANEEQAIMSKALATIETAAPIQISIDDLSYTGPNMEEVIEVWKELAFKTLLEKSDYISEESET
配列番号6−本明細書に記載される実験に使用したアリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)の短縮DNAポリメラーゼのアミノ酸配列。
配列番号6
VDRSKYETIFTKEAFSAWLEKVNNAEVTAFDTETDSLDYMVANLIGLSFSVEEGEAAYVP
VAHDYLDAPEQLDRDWVLAQLKPYLEDETKAKVGQNLKYDASVLARYDIEMKGIKFDTML
ESYVYNSVAGKHNMDSLALRYLQHNTISFEEIAGKGKKQLTFNQIALEEAAPYAAEDADI
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SIEEVTSEDRRRAKAINFGLIYGMSAFGLAKQIGISRGEAQDYMNVYFERYPGVMQYMEE
TRLLATEQGYVETLYGRRLYLPEINARNAIRRKAAERAAINAPMQGTAADIIKKAMILVD
NWIEAEGTGRVNLLMQVHDELVFEVKEDELEAITKQVTALMEAAVSLDVPLIAESGFGDN
WDEAH
PB DNAポリメラーゼとの比較に使用する市販の酵素、すなわち、KF、Bst、Bst2.0、BSU、T4およびT7 DNAポリメラーゼはいずれも、New England Biolabs社から購入する。
【0107】
これより、以下の図面を参照しながら非限定的な実施例により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】組換えにより作製したサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種(PB)由来の海洋生物ポリメラーゼの25℃(比活性)でのポリメラーゼ活性を他のポリメラーゼと比較したものを示す図である。商業的に既知のポリメラーゼは、KF(クレノーフラグメント大腸菌(E.coli))、Bst(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus))、Bst 2.0(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus))およびBSU(B.スブチリス(B.subtilis))である。
図2】鎖置換活性アッセイの設定の概要を示す図である。F=フルオロフォア。Q=消光剤。
図3】組換えにより作製したサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種(PB)由来の海洋生物ポリメラーゼの25℃(比活性)での鎖置換活性を他のポリメラーゼと比較したものを示す図である。商業的に既知のポリメラーゼは、KF(クレノーフラグメント大腸菌(E.coli))、Bst(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus))、Bst 2.0(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus))およびBSU(B.スブチリス(B.subtilis))である。
図4】PBポリメラーゼおよび他のポリメラーゼの様々なNaCl濃度でのポリメラーゼ活性を示す図である。商業的に既知のポリメラーゼは、KF(クレノーフラグメント大腸菌(E.coli))、Bst(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus))、Bst 2.0(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus))およびBSU(B.スブチリス(B.subtilis))である。
図5】PBポリメラーゼのポリメラーゼ活性に対する温度の影響を示す図である。
図6】KFと比較したPBポリメラーゼの安定性に対する温度の影響を示す図である。KFはクレノーフラグメント(大腸菌(E.coli))である。
図7】様々なpHでのPBポリメラーゼIの融解温度(Tm(℃))解析を示す図である。
図8】市販の好熱性BstpolI(Bst2.0)、中温性BsuおよびPB polI(PbI)の間の処理能力(Prの印を付けたレーン)の比較を示す図である。T7は既知の高処理能力酵素であり、高処理能力の陽性対照として用いられている。Pの印を付けたレーンはポリメラーゼ活性を表し、Prは処理能力を表す。処理能力は、酵素が鋳型鎖から解離すればDNAポリメラーゼの標識基質との再結合で競合し、ゲル上に見られる最終産物収量(+80ヌクレオチド組込み)が少なくなる非標識DNAトラップのインキュベーションに基づいて解析される。
【発明を実施するための形態】
【0109】
(実施例)
クローン化、遺伝子発現およびタンパク質精製
配列番号1のPBポリメラーゼの作製
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼIおよびその短縮された「大きいフラグメント」(PDB 1L3S)の構造に関する知見に基づき、発現構築物中の不要な5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインが除去されている、すなわち、PBポリメラーゼのPCR産物に不要なエキソヌクレアーゼドメインがなくなるよう順方向プライマーが設計されている。Gateway(登録商標)Technology(Thermo Fisher社)を用いてサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種由来のDNAポリメラーゼIをコードする遺伝子をベクターpET151/D−TOPO(登録商標)にクローン化した。ポリメラーゼ連鎖反応の開始物質をサイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種のゲノムDNAとした。遺伝子は順方向プライマー(5’−CACCACAGAAGTAGCATTCGAGATTGTT−3’(配列番号7))および逆方向プライマー(5’−TTACTTCGTGTCATACCAAGATGAACC−3’(配列番号8))の使用により短縮されており、ポリメラーゼIのいわゆる大きいフラグメントと類似している。
【0110】
Rosetta 2(DE3)細胞(Novagen(登録商標))で組換えタンパク質産生を実施した。細胞をテリフィックブロスで増殖させ、IPTGの添加により遺伝子発現を誘導した。タンパク質産生を15℃で6時間実施した。第一精製段階では、固定化Ni2+−アフィニティークロマトグラフィーによりHis6タグ化タンパク質を精製した。第二段階は、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼによるタグの切断であり、4℃で一晩実施した。His6タグおよびHis6タグ化TEVプロテアーゼからタンパク質を分離するため、第三段階で2回目のNi2+−アフィニティークロマトグラフィーを実施した。タンパク質精製の第四段階および最終段階は、HiLoad 16/600 Superdex 200pg(GE Healthcare社)でのサイズ排除クロマトグラフィーとした。最終タンパク質溶液を濃縮し、50%グリセロールを加えて−20℃で保管した。
【0111】
ポリメラーゼ活性アッセイ
この実験は、25℃で分子ビーコンアッセイを用いてPBポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を特定の市販のポリメラーゼと比較するものである。
【0112】
ポリメラーゼ活性アッセイは、分子ビーコンプローブ(Summerer,Methods Mol.Biol.,2008,429,225−235から修正したもの)に基づくものである。分子ビーコン鋳型は、GCリッチ8量体ステム領域(配列がイタリック体で示されている)によって連結された23量体ループと43量体の伸長部分とからなる。ループ形成により、フルオロフォアであるDabcylとFAMが近接するため消光する。分子ビーコン鋳型とアニールするプライマーのDNAポリメラーゼIにより伸長が起こると、ステムが開き、FAM蛍光の回復により2つのフルオロフォアの距離の増大が測定される(励起485nm、発光518nm)。
【0113】
分子ビーコン鋳型
5’−GGCCCGTDabcylAGGAGGAAAGGACATCTTCTAGCATFAMACGGGCCGTCAAGTTCATGGCCAGTCAAGTCGTCAGAAATTTCGCACCAC−3’(配列番号9)
プライマー
5’−GTGGTGCGAAATTTCTGAC−3’(配列番号10)
10mMトリス−HCl(pH8.0)、100mM NaCl中10μMの分子ビーコン鋳型と15μMのプライマー20μlを95℃で5分間インキュベートすることにより分子ビーコン基質を作製した。次いで、反応物を室温で2時間冷却させた。基質溶液を最終濃度10μMで−20℃にて保管した。
【0114】
50マイクロリットルの反応物は、200nMの基質と200μMのdNTP(等モル量のdATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)とからなるものとした。PBポリメラーゼIについては、反応物に50mMビス‐トリスプロパン(pH8.5)、100mM NaCl、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロール中5mMのMgCl2をさらに含めた。商業的に既知のポリメラーゼIについては、New England Biolabs社から提供された各反応緩衝液を使用した。各ポリメラーゼに最適な塩に応じて反応緩衝液中の最終塩濃度を100mMに調整した。黒色の96ウェル蛍光アッセイプレート(Corning(登録商標))で活性アッセイを25℃にて実施した。タンパク質溶液の添加(すなわち、ポリメラーゼの添加)により反応を開始させた。適切な時間間隔で、485nmでの励起および518nmでの発光によりFAM蛍光の増大を相対蛍光単位として測定した。測定はSpectraMax(登録商標)Gemini Microplate Reader(Molecular Devices社)で実施した。
【0115】
このポリメラーゼ活性アッセイの結果を図1に示す。PBポリメラーゼは、市販(New England Biolabs社)のポリメラーゼであるKF(クレノーフラグメント大腸菌(E.coli))、Bst(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)由来のポリメラーゼ)、Bst 2.0(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)由来のポリメラーゼ)より高いポリメラーゼ活性を示している。この温度では、B.スブチリス(B.subtilis)由来のBSUポリメラーゼのみがポリメラーゼ活性より高い活性を示している。
【0116】
このほか、PBポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を海洋生物源由来の他のDNAポリメラーゼと比較するため、同じタイプのポリメラーゼ活性アッセイを実施した(データ不掲載)。PBポリメラーゼには、試験した他の海洋生物のポリメラーゼ(例えば、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)のDNAポリメラーゼ)と比較して著明に高いポリメラーゼ活性がみられた。
【0117】
鎖置換活性アッセイ
この実験は、25℃で鎖置換活性アッセイを用いてPB DNAポリメラーゼの鎖置換活性を特定の市販のポリメラーゼと比較するものである。鎖置換と呼ばれる、ポリメラーゼが鎖を置換する能力は多くの等温増幅法に重要なものである。
【0118】
鎖置換特性を評価する際に重要なのは、安定したアッセイを設計することである。アッセイ設定の概要を図2に示す。このアッセイは、DNAポリメラーゼの鎖置換活性を介してのみ達成可能な消光レポーター鎖の置換時に測定される蛍光シグナルの増大に基づくものである。対照として、鎖置換陰性ポリメラーゼT4を使用し、このアッセイで活性は示さなかった(結果不掲載)。
【0119】
鎖置換活性アッセイのための基質は、19オリゴヌクレオチドの「コールド」プライマー(配列番号11)と、20オリゴヌクレオチドからなり3’末端をTAMRAフルオロフォア(F)で標識したレポーター鎖(配列番号12)とからなるものである。鋳型鎖は40オリゴヌクレオチドからなり、5’末端がBlack Hole Quencher 2(BHQ2)で標識されている(配列番号13)。プライマーが鋳型鎖とアニールし、鋳型鎖上の20位にヌクレオチドギャップが1つ残る。さらに、標識が近接しているため、BHQ2によりフルオロフォアTAMRAが消光する。DNAポリメラーゼIの鎖置換活性が生じると、TAMRA標識オリゴヌクレオチドが鋳型鎖から移動する。その結果、フルオロフォアと消光剤が近接した状態ではなくなり、TAMRA蛍光の増大を測定することが可能になる(励起525nm、発光598nm)。
【0120】
5’−TATCCACCAATACTACCCT CGATACTTTGTCCACTCAAT[TAMRA]−3’
3’−ATAGGTGGTTATGATGGGATGCTATGAAACAGGTGAGTTA[BHQ2]−5’
上記の鎖置換活性アッセイを用いて、mRFU/(分・μg)で表したPBポリメラーゼの鎖置換活性を解析した。10mMトリス−HCl(pH8.0)、100mM NaCl中10μMの「コールド」プライマー、10μMのレポーター鎖および10μMの鋳型鎖20μlを95℃で5分間インキュベートすることにより、鎖置換活性アッセイのための基質を作製した。次いで、反応物を室温で2時間冷却した。基質溶液を最終濃度10μMで−20℃にて保管した。
【0121】
50マイクロリットルの反応物は、200nMの基質と200μMのdNTP(等モル量のdATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)とからなるものとした。PBポリメラーゼIについては、反応物に50mMビス‐トリスプロパン(pH8.5)、100mM NaCl、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロール中5mMのMgCl2をさらに含めた。商業的に既知のポリメラーゼIについては、New England Biolabs社から提供された各反応緩衝液を使用した。各ポリメラーゼに最適な塩に応じて反応緩衝液中の最終塩濃度を100mMに調整した。黒色の96ウェル蛍光アッセイプレート(Corning(登録商標))で活性アッセイを25℃にて実施した。タンパク質溶液の添加(すなわち、ポリメラーゼの添加)により反応を開始させた。適切な時間間隔で、525nmで励起させ598nmで発光を記録することにより、TAMRA蛍光の増大を相対蛍光単位として測定した。測定はSpectraMax(登録商標)M2e Microplate Reader(Molecular Devices社)で実施した。
【0122】
この鎖置換活性の結果を図3に示す。結果から、サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種(PB)由来のポリメラーゼは、市販のポリメラーゼであるKF(クレノーフラグメント大腸菌(E.coli))、Bst(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)由来のポリメラーゼ)、Bst 2.0(G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)由来のポリメラーゼ)より優れた鎖置換活性を有することがわかる。サイクロバチルス(Psychrobacillus)菌種(PB)のDNAポリメラーゼは市販のBSU(B.スブチリス(B.subtilis))ポリメラーゼと同程度の鎖置換活性を示している。
【0123】
このほか、PBポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を海洋生物源由来の他のDNAポリメラーゼと比較するため、同じタイプの鎖置換活性アッセイを実施した(データ不掲載)。PBポリメラーゼには、試験した他の海洋生物のポリメラーゼ(例えば、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)のDNAポリメラーゼ)と比較して著明に高い鎖置換活性がみられた。
【0124】
ポリメラーゼ活性に対する塩濃度の影響の解析
血液などの粗試料中には、ポリメラーゼ反応を阻害し得る化合物が複数存在し得る。このような化合物の1つが塩である(高塩含有量)。ポリメラーゼ活性に対する塩濃度の影響を評価する実験を以下に記載する通りに実施した。
【0125】
記載のポリメラーゼ活性アッセイを用い、反応緩衝液中に存在する塩の量を変化させてPB DNAポリメラーゼに最適なNaCl濃度を解析した。100パーセントの活性は、ポリメラーゼ活性が最大となる塩濃度を指す。換言すれば、各被験DNAポリメラーゼについて、観察された最大ポリメラーゼ活性を100%の活性値として設定する。各曲線のその他の値(データポイント)は、各ポリメラーゼの100%の活性に対して相対的なものである。
【0126】
50マイクロリットルの反応物は、200nMの基質と200μMのdNTP(等モル量のdATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)とからなるものとした。PBポリメラーゼIについては、反応物に50mMビス‐トリスプロパン(pH8.5)、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロール中5mMのMgCl2をさらに含めた。商業的に既知のポリメラーゼIの緩衝液については、New England Biolabs社により提供された各緩衝液から塩を省いた組成に従って調製した。この実験で試験した各NaCl濃度を個別に各反応物に加えた。黒色の96ウェル蛍光アッセイプレート(Corning(登録商標))で活性アッセイを25℃にて実施した。タンパク質溶液をPBについては1μg/ml、Bstについては16単位/ml、Bst 2.0については16単位/ml、BSUについては2.5単位/mlまたはKFについては2単位/mlで添加することにより反応を開始させた。適切な時間間隔で、485nmでの励起および518nmでの発光によりFAM蛍光の増大を相対蛍光単位として測定した。測定はSpectraMax(登録商標)Gemini Microplate Reader(Molecular Devices社)で実施した。
【0127】
この実験の結果を図4に示す。図4から明らかなように、PB DNAポリメラーゼには様々な塩濃度の範囲に対する耐性がみられる。
【0128】
PBポリメラーゼのポリメラーゼ活性に対する温度の影響
PBポリメラーゼIのポリメラーゼ活性に対する温度の影響を単一ヌクレオチド組込みアッセイで検討した。
【0129】
単一ヌクレオチド組込みアッセイ
19オリゴヌクレオチドからなるプライマー(配列番号15)を40オリゴヌクレオチドからなる鋳型鎖(配列番号14)とアニールさせる。プライマーの5’末端をFAMフルオロフォアで標識する。反応設定では、dATPのみを供給するため、ポリメラーゼはプライマーを5’−3’方向に20位の1ヌクレオチド分のみ伸長させることができる。それに続く変性ポリアクリルアミドゲル(12%ポリアクリルアミド/7M尿素)およびFAM標識オリゴヌクレオチドのスキャンによる解析では、19オリゴヌクレオチドからなるプライマーおよびヌクレオチドアデニンの分だけ伸長し、したがって20オリゴヌクレオチドからなるプライマーがみられる。伸長プライマー(強度1)および未伸長プライマー(強度0)を表すバンドの濃度測定により酵素活性を求める。相対組込み率を
組込み[%]=強度1/(強度0+強度1)×100
により算出する。
【0130】
5’−ATTGAGTGGAGATAGTATCGTAGGGTAGTATTGGTGGATA−3’ 40量体
3’−TCCCATCATAACCACCTAT[FAM]−5’ 19量体
10mMトリス−HCl(pH8.0)、100mM NaCl中0.5μMのフルオロフォア標識プライマーおよび0.5μMの鋳型DNA 20μlを75℃で5分間インキュベートすることにより、単一ヌクレオチド組込みアッセイのための基質を作製した。次いで、反応物を室温で2時間冷却した。基質溶液を最終濃度0.5μMで−20℃にて保管した。
【0131】
10マイクロリットルの反応物は、30nMの基質と10μMのdATPとを含むものとした。PBポリメラーゼIについては、反応物に50mMトリス(pH8.5)、100mM NaCl、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロール中5mMのMgCl2をさらに含めた。室温での反応緩衝液のpHを各インキュベーション温度でpH8.5となるよう調整した。0.018ng/μlのタンパク質PBポリメラーゼIの添加により反応を開始させ、各温度(すなわち、図5のデータポイントに対応する温度)で15分間インキュベートした。陰性対照として、タンパク質溶液の代わりにタンパク質希釈緩衝液を使用した。
【0132】
変性ゲルローディング緩衝液(95%ホルムアミド、10mM EDTA、0.1%キシレンシアノール)2.5μlの添加および95℃で5分間のインキュベーションにより反応を停止させた。変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%ポリアクリルアミド/7M尿素)には、試料体積6μlをゲル上に負荷した。0.5×TBE緩衝液(44.5mMトリス、44.5mMホウ酸、1mM EDTA)を用いゲル電気泳動を50Wで1時間15分実施し、次いで、ゲルをPharosFX Plus Imager(Bio−Rad社)でスキャンした。
【0133】
この実験の結果を図5に示す。100パーセントの活性は、活性が最も高い温度の値を指す。換言すれば、被験PB DNAポリメラーゼについて、観察された最大ポリメラーゼ活性を100%の活性値として設定する。各曲線のその他の値(データポイント)は、各ポリメラーゼの100%の活性に対して相対的なものである。例を挙げれば、インキュベーション温度20℃では、PBポリメラーゼのポリメラーゼ活性は、観察された最大PBポリメラーゼ活性の約60%である、すなわち、約60%の「相対」活性がみられる。
【0134】
図5の結果から、PBポリメラーゼは広範囲の温度にわたって相当なポリメラーゼ活性を示す。
【0135】
KF(クレノーフラグメント)と比較したPBポリメラーゼの安定性に対する温度の影響。
PBポリメラーゼIの安定性に対する温度の影響を単一ヌクレオチド組込みアッセイで検討した。
【0136】
単一ヌクレオチド組込みアッセイ
19オリゴヌクレオチドからなるプライマー(配列番号15)を40オリゴヌクレオチドからなる鋳型鎖(配列番号14)とアニールさせる。プライマーの5’末端をFAMフルオロフォアで標識する。反応設定では、dATPのみを供給するため、ポリメラーゼはプライマーを5’−3’方向に20位の1ヌクレオチド分のみ伸長させることができる。それに続く変性ポリアクリルアミドゲル(12%ポリアクリルアミド/7M尿素)およびFAM標識オリゴヌクレオチドのスキャンによる解析では、19オリゴヌクレオチドからなるプライマーおよびヌクレオチドアデニンの分だけ伸長し、したがって20オリゴヌクレオチドからなるプライマーがみられる。伸長プライマー(強度1)および未伸長プライマー(強度0)を表すバンドの濃度測定により酵素活性を求める。相対組込み率を
組込み[%]=強度1/(強度0+強度1)×100
により算出する。
【0137】
5’−ATTGAGTGGAGATAGTATCGTAGGGTAGTATTGGTGGATA−3’ 40量体
3’−TCCCATCATAACCACCTAT[FAM]−5’ 19量体
10mMトリス−HCl(pH8.0)、100mM NaCl中0.5μMのフルオロフォア標識プライマーおよび0.5μMの鋳型DNA20μlを75℃で5分間インキュベートすることにより、単一ヌクレオチド組込みアッセイのための基質を作製した。次いで、反応物を室温で2時間冷却した。基質溶液を最終濃度0.5μMで−20℃にて保管した。
【0138】
PBポリメラーゼIについては、50mMビス‐トリスプロパン(pH8.5)、100mM NaCl、5mM MgCl2、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロール中、10μlの反応を実施した。不活化温度を試験するため、0.018ng/μlのPBポリメラーゼIを反応緩衝液に加え、各温度(すなわち、図6のデータポイントに対応する温度)で15分間インキュベートし、次いで、氷上で5分間冷却した。KFについては、New England Biolabsにより提供された各緩衝液の組成に従い、最適pHで25℃にて反応緩衝液を調製した。タンパク質を0.67単位/mlで反応緩衝液に加え、PBポリメラーゼIについて記載した通りに反応物をインキュベートした。陰性対照として、タンパク質溶液の代わりにタンパク質希釈緩衝液を使用した。
【0139】
30nMの基質および10μMのdATPの添加により単一ヌクレオチド伸長反応を開始させ、混合物を25℃で15分間インキュベートした。変性ゲルローディング緩衝液(95%ホルムアミド、10mM EDTA、0.1%キシレンシアノール)2.5μlの添加および95℃で5分間のインキュベーションにより反応を停止させた。変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%ポリアクリルアミド/7M尿素)には、試料体積6μlをゲル上に負荷した。0.5×TBE緩衝液(44.5mMトリス、44.5mMホウ酸、1mM EDTA)を用いゲル電気泳動を50Wで1時間15分実施し、次いで、ゲルをPharosFX Plus Imager(Bio−Rad社)でスキャンした。
【0140】
この実験の結果を図6に示す。100パーセントの活性は、氷上(0℃)でインキュベートした酵素試料を指す。換言すれば、各被験DNAポリメラーゼ(PBおよび大腸菌(E.coli)由来のクレノーフラグメント(KF))について、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前にポリメラーゼを氷上(0℃)で15分間インキュベートした場合に観察されたポリメラーゼ活性を100%の活性値として設定する。各曲線のその他の値(データポイント)は、各ポリメラーゼの100%の活性に対して相対的なものである。例を挙げれば、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前に37℃で15分間インキュベートした後のPBポリメラーゼのポリメラーゼ活性は、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前に氷上(0℃)で15分間のインキュベーションを実施した場合に観察されたPBポリメラーゼ活性の約80%である、すなわち、約80%の「残存」活性がみられる。
【0141】
図6の結果から、PBポリメラーゼは、様々な温度で事前にインキュベートした後もKFより高いポリメラーゼ活性を保持することがわかる。換言すれば、PBポリメラーゼは、温度に対する安定性がKFポリメラーゼより高い。例えば、PBポリメラーゼは、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前に30℃で15分間インキュベートしても、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前に氷上(0℃)でインキュベートした場合と同じポリメラーゼ活性を保持している(すなわち、30℃でインキュベーションを実施しても100%の残存活性がみられる)。これに対し、KFポリメラーゼは、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前に30℃で15分間インキュベートすると、ポリメラーゼ活性が、単一ヌクレオチド伸長反応の開始前に氷上(0℃)でインキュベーションを実施した場合に観察された活性の約60%にとどまっている(すなわち、30℃でインキュベーションを実施すると約60%の残存活性がみられる)。
【0142】
このほか、PBポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を海洋生物源に由来する他のDNAポリメラーゼと比較するため、同じタイプのアッセイを実施した(データ不掲載)。PBポリメラーゼには、試験した他の海洋生物のポリメラーゼ(例えば、アリイビブリオ・サルモニシダ(Aliivibrio salmonicida)のDNAポリメラーゼ)と比較して著明に高い安定性がみられた。
【0143】
様々なpH緩衝液中でのPBポリメラーゼの融解温度を示す生物物理学的データ
Ericssonら(Anal.Biochem.,2006,357,289−298)に従い、thermofluor実験によりタンパク質の融解温度(Tm)を求めた。濃度50mM、pH6.0〜pH9.5の緩衝液を数種類試験した。最終希釈率6倍の各緩衝液SYPRO(登録商標)Orange(Sigma Aldrich社)とタンパク質(すなわち、PBポリメラーゼ)12.5μgを薄壁PCRプレート(Biorad社)のウェルの中で十分に混合した。ウェルを光学品質のシールテープ(Biorad社)で密閉した。最終反応物の体積を25μlとした。thermofluor実験では、10〜90℃の温度範囲について3秒間隔で0.3℃ずつ上昇させながらスキャンした。
【0144】
この実験の結果を図7に示す。PBポリメラーゼIは、pH6〜8.5の範囲で広範囲のpH安定性プロファイルを示しており、さらに、融解温度の平均値が約43〜44℃であることから、相対的温度適用範囲も広い。
【0145】
処理能力
処理能力とは、DNAポリメラーゼが合成(ヌクレオチド組込み)時に解離するまでDNA鋳型鎖との結合を維持する能力のことであり、したがって、所与のポリメラーゼの処理能力が増大するとDNA合成全体の効率が増大し得る。この特徴は、より長いDNAを合成する必要がある場合に特に重要なものとなり得る。このため、単一の結合事象後の重合度を測定するよう処理能力アッセイを設計する。伸長産物にポリメラーゼの処理能力が反映されるように、この場合、各プライマー鋳型が1回だけ伸長するように、過剰のトラップDNAを加えた。
【0146】
100量体鋳型
3’ATGTTGGTTCTCGTATGCTGCCGGTCACGGCTTAAGTGTGCCACAACACACAACCAACACCACCACAACACACCAACAACCACAACACACACAACCACAC−5’(配列番号16)
Fam標識20量体プライマー
5’FAM−TACAACCAAGAGCATACGAC(配列番号17)
プライマー−鋳型DNA基質を調製するため、50mM NaClおよび50mMトリス/HCl(pH7.5)の存在下、100量体の鋳型(0.5μM)を20量体のFAM標識プライマー(0.5μM)と75℃で5分間インキュベートし、室温で少なくとも2時間冷却した。本明細書で試験するPBポリメラーゼIおよび市販のポリメラーゼ(New England Biolabs社)を50mMトリス−HCl(PBポリメラーゼIおよびT7 DNAポリメラーゼにはpH8.5、Bst 2.0およびBSUにはpH7.5)、50mM KCl(PBポリメラーゼI、Bst 2.0、T7 DNAポリメラーゼ)または50mM NaCl(BSU)、0.2mg/ml BSA、1mM DTTおよび2%グリセロール中、DNA基質(25nM)およびdNTPs(10μM)と25℃で10分間プレインキュベートした。
【0147】
5mM MgCl2およびトラップの1.1mg/mlニシン精子DNAを添加することにより反応(Pr)を開始させ、2分後、停止液(95%ホルムアミド、10mM EDTA、,0.05%ブロモフェノールブルー)の添加により停止させた。トラップの効果をみるため、MgCl2との反応開始前(R0)、並行する反応の形で同じ量のPbIを1.1mg/mlトラップおよびDNA基質とプレインキュベートした。プライムした基質の完全重合の対照として、同じ反応条件下でトラップを一切添加せずに別の反応(P)を実施した。P反応で同等のポリメラーゼ活性が得られた酵素量を処理能力解析の開始点として用いた。したがって、以下の量の酵素を処理能力解析に用いた:PBポリメラーゼI 0.013μg、Bst 2.0 0.14μgおよびBSU 0.016μg。
【0148】
反応を95℃で5分間加熱し、8M尿素を含有する10%TBE−ポリアクリルアミドゲル上で産物を分解した。次いで、Pharose FX Plus imager(BioRad社)により画像を可視化した。
【0149】
この実験の結果を図8に示す。この結果から、PBポリメラーゼはBsuおよびBst2.0より大幅に高い処理能力を有し、これらの酵素の性能がPB>Bsu>Bst 2.0の順であることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]