特許第6986400号(P6986400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986400
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】医療用具へのRFタグ取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/98 20160101AFI20211213BHJP
   G06K 19/02 20060101ALI20211213BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20211213BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211213BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61B90/98
   G06K19/02 020
   C09J183/04
   C09J11/06
   C09J7/00
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-180991(P2017-180991)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-55008(P2019-55008A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年4月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓道
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037569(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0119481(US,A1)
【文献】 特開2005−102803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − A61B 17/94
A61B 90/90 − A61B 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグの少なくとも一部を未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートにて被覆して、医療用具と前記RFタグとを固定する固定工程と、
前記未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材を形成する硬化工程と、
を含み、
前記未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートは、自立した形状を保持でき、かつ可塑性を有する固体状のシートである医療用具へのRFタグ取り付け方法。
【請求項2】
前記固定工程は、
前記医療用具と前記RFタグとの間に前記未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを配置して前記医療用具と前記RFタグとを貼り付ける貼付工程と、
前記RFタグの上から前記医療用具に前記未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを巻回する巻回工程と、
を含む請求項に記載の医療用具へのRFタグ取り付け方法。
【請求項3】
前記貼付工程では、前記医療用具に前記未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを巻回することにより配置して前記医療用具と前記RFタグとを貼り付ける請求項に記載の医療用具へのRFタグ取り付け方法。
【請求項4】
電波の発信方向が異なる少なくとも2つの前記RFタグを前記医療用具に取り付ける請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用具へのRFタグ取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具へのRFタグ取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RF(Radio Frequency)タグやバーコードを用いて各種道具の管理を簡便かつ確実に行うための管理システムの利用が広がっている。とりわけ、道具の置き忘れや紛失(特に、手術に用いた道具の被手術者の体内への置き忘れ)が深刻な問題を引き起こし得る医療の現場では、医療に用いる道具(以下、医療用具という。)の置き忘れや紛失がないように、徹底した医療用具の管理が要求される。このため、医療分野は、上記のような管理システムを導入する対象として有望な分野のひとつであると考えられる。
【0003】
例えば、手術を行う際には、手術前後において医療用具の数や種類を確認し、医療用具の置き忘れ等がないことを確認する。このとき、確認ミス等(いわゆるヒューマンエラー)により医療用具の数等が誤認され、置き忘れ等が看過されることがある。このような現場にRFタグを用いた管理システムを導入することで、システムおよび人間によるダブルチェックを実現することができ、その結果、確認ミス等の発生を抑制し、医療用具の置き忘れ等を高い確度で抑制することができるようになる。また、RFタグを用いた管理システムを導入することで、これまで確認ミス等の発生を抑制するために占有されていたリソース(人員や時間)を再配分または削減することもできるようになる。このように、RFタグを用いた管理システムの利用により、医療(特に手術)の質や安全性の向上、医療現場の負担軽減や効率化等の効果が見込まれる。
【0004】
ところで、RFタグを用いて医療用具の管理を行うためには、何らかの手段でRFタグを医療用具に取り付ける必要がある。既存の医療用具にRFタグを取り付けるための方法としては、粘着テープや両面粘着テープを用いる方法が考えられる。また、結束バンド(ケーブルタイ)、ワイヤーまたはシリコーンゴムチューブを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これらの方法によれば、医療用具へのRFタグの取り付けを非常に簡便に行うことが可能となる。
【0005】
また、医療用具に関するものではないが、上記テープや結束バンド等を用いる方法以外に、液体ゴムや熱収縮チューブを用いて工具にRFタグを取り付ける方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この方法を医療用具に適用すれば、丈夫でかつ耐久性に優れた固定部材により、RFタグを医療用具に確実に取り付けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−033370号公報
【特許文献2】特開2006−309690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、粘着テープあるいは両面粘着テープを用いる方法は、粘着剤が耐水性、耐油性および耐熱性に劣るため、RFタグを取り付けた医療用具(以下、「RFタグ付き医療用具」という。)を、血液、タンパク質、脂肪等が直接付着する環境や繰り返しの洗浄・殺菌(消毒および滅菌を含む。以下同じ。)が行われる環境のような過酷な環境下で使用する場合、粘着剤の劣化や流出が発生し、長期に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら、RFタグを医療用具に固定しておくことができないという問題を有する。
【0008】
また、結束バンド、ワイヤーまたはシリコーンチューブを用いる方法は、RFタグ付き医療用具を前述のような過酷な環境下で使用する場合、結束バンド等を構成する材料の伸縮や劣化により緩み等が生じて固定力が弱まるとともに、結束バンド等と医療用具との間に空隙が生じて汚れが付着しやすくなる。かかる理由から、長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら、RFタグを医療用具に固定しておくことができないという問題がある。
【0009】
また、液体ゴムを用いる方法は、医療用具にRFタグを取り付けるときに液体ゴムが液状であるため、医療用具へのRFタグの取り付け位置のずれが発生しやすいという問題を有する。さらに、熱収縮チューブを用いる方法は、熱収縮チューブを被せることができない部分や位置(例えば、リング状の部分やチューブに入りきらないほど太い部分)へのRFタグの取り付けが難しいという問題を有する。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、多種多様な医療用具の正確な位置にRFタグを長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら固定可能なRFタグ付き医療用具を提供することを目的とする。なお、「衛生的に適切な状態」とは、RFタグを固定する固定部材を構成する材料の流出、汚れが付着しやすい部分(例えば、医療用具と固定部材との間の隙間)の存在または発生、洗浄・殺菌を行った後の汚れの残存等、衛生上問題となる事項を医療用途上の観点からみて許容範囲内とすることが可能であることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一実施形態に係るRFタグ付き医療用具は、医療用具と、RFタグと、RFタグの少なくとも一部を被覆してRFタグを医療用具に接着する自己接着シリコーンゴム接着部材と、を備える。
【0012】
別の実施形態に係るRFタグ付き医療用具において、さらに、自己接着シリコーンゴム接着部材は、RFタグの上から医療用具に巻回される第1接着部材と、医療用具とRFタグとの間に配置される第2接着部材と、を備えても良い。
【0013】
別の実施形態に係るRFタグ付き医療用具において、第2接着部材は医療用具に巻回されていても良い。
【0014】
別の実施形態に係るRFタグ付き医療用具は、また、電波の発信方向が異なる少なくとも2つのRFタグを備えても良い。
【0015】
また、医療用具へのRFタグ取り付け方法の一実施形態は、RFタグの少なくとも一部を未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートにて被覆して、医療用具とRFタグとを固定する固定工程と、自己接着シリコーンゴムシートを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材を形成する硬化工程と、を含む。
【0016】
別の実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法において、さらに、固定工程は、医療用具とRFタグとの間に未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを配置して医療用具とRFタグとを貼り付ける貼付工程と、RFタグの上から医療用具に未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを巻回する巻回工程と、を含んでも良い。
【0017】
別の実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法において、貼付工程では、医療用具に未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートを巻回することにより配置して医療用具とRFタグとを貼り付けても良い。
【0018】
別の実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法は、また、電波の発信方向が異なる少なくとも2つのRFタグを医療用具に取り付ける方法でも良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多種多様な医療用具の正確な位置に、RFタグを長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら固定可能なRFタグ付き医療用具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(1a)、側面図(1b)およびA1−A1線断面図(1c)をそれぞれ示す。
図2図2は、第1実施形態に係る医療用具へのRFタグの取り付け方法を示す。
図3図3は、第2実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(3a)およびA2−A2線断面図(3b)をそれぞれ示す。
図4図4は、第2実施形態に係る医療用具へのRFタグの取り付け方法を示す。
図5図5は、第3実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(5a)およびA3−A3線断面図(5b)をそれぞれ示す。
図6図6は、第3実施形態に係る医療用具へのRFタグの取り付け方法を示す。
図7図7は、第4実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(7a)、側面図(7b)およびA4−A4線断面図(7c)をそれぞれ示す。
図8図8は、第5実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(8a)、側面図(8b)、A5−A5線断面図(8c)、別のRFタグ付き医療用具の図8(8c)に相当する断面図(8d)およびさらに別のRFタグ付き医療用具の図8(8c)に相当する断面図(8e)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のRFタグ付き医療用具および医療用具へのRFタグ取り付け方法の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。各実施形態においては、基本的な構成および特徴が同じ構成要素については、他の実施形態においても同じ符号を使用し、説明を省略する場合がある。
【0022】
(第1実施形態)
1.RFタグ付き医療用具
図1は、第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(1a)、側面図(1b)およびA1−A1線断面図(1c)をそれぞれ示す。
【0023】
第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具1は、図1に示すように、医療用具10、RFタグ20および自己接着シリコーンゴム接着部材30を備える。
【0024】
本明細書における「医療用具」とは、医療のために使用される道具、つまり、器具や機械のことをいう。なお、本明細書における「医療用具」は、医療用具全体と医療用具の部品との両方を含む。本発明は、医療用具の中でも、生体に対して用いるものであって、洗浄・殺菌を行った上で繰り返し使用するもの(使い捨てではないもの)を主な対象とする。
本明細書における「医療」には、いわゆる医療行為またはそれに密接に関連する行為(例えば、手術; 治療; 検尿や検便等の検査準備行為; 検温、血液検査および血圧測定等の検査; 爪切り等の身体の清潔を保つための行為、身長や体重の計測)も含むものとする。
【0025】
この実施形態では、医療用具10としてピンセットを例示するが、医療用具10はピンセットに限定されるものではない。例えば、後述する第4実施形態における医療用具12は、ハサミ(剪刀)である。また、医療用具10としては、医療分野で使用される器具や機械であれば特に制約はない。医療用具10は、動力等を有しない比較的単純な器具であってもよく、あるいは電力を使用するものや動力(電動モーター等)を有するもののように複雑な機械であってもよい。ピンセットおよびハサミ以外の医療用具の具体例としては、メス(先刃刀、円刃刀)、鉗子、持針器、鉤、開創器、膿盆、舌圧子、哺乳瓶、拡大鏡、咽頭鏡、電気メス、超音波メス、レーザーメス、体温計、医療用ドリル、ボーンソー、人工呼吸器、麻酔器、内視鏡、手術用のロボットハンド、ロボットハンド用のアタッチメント器具を挙げることができる。
【0026】
RFタグ20は、RFタグ付き医療用具1の管理を行うためのものである。「RFタグ」とは、「Radio Frequencyタグ」の略称である。なお、RFタグ20は、電子タグ、ICタグ、無線タグ、RFIDタグ等、他の名称で呼称されることもある。この実施形態でいう「RFタグ」は、対応するリーダ(専用の受信装置の他、PCやスマートフォンにリーダの機能を備えたもの等)とともに好適に用いられ、リーダとの間で非接触にてデータを送信または送受信できるものをいう。かかる非接触の送信または送受信は、好ましくは電波によって行われる。なお、リーダは、ライタ(書き込み)を兼ねていてもよい。RFタグ20は、好ましくは、ICチップを含む制御回路、メモリ、アンテナ等の部品を一体化したものである。
【0027】
RFタグ20は、リーダからの電波等をエネルギーとして動作可能であって電池を内蔵しないパッシブタグ、電池を内蔵して自らの電力により電波を発するアクティブタグ、電池を内蔵しつつも上位のシステムへの通信起動をパッシブ方式で行うセミアクティブタグのいずれをも含み得る。さらに、RFタグ20は、電磁誘導方式、電波方式のいずれの方式で駆動可能なタグでも良い。RFタグ20の形状は、箱型(すなわち、直方体)、球体、卵型、カード型、コイン型、スティック型、ラベル型等の如何なる形状でも良い。
【0028】
自己接着シリコーンゴム接着部材30は、後述する未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート30aを硬化させたものである。自己接着シリコーンゴム自体については後ほど詳述する。ここで、自己接着シリコーンゴム接着部材30は、医療用具10へのRFタグ20の取り付け時において薄いシート形状であるが、硬化後もなお当該シート形状を維持しているか否かは保証の限りではない。自己接着シリコーンゴム接着部材30は、前記取付け時に複数枚重ねることで厚みが増したり、RFタグ20や医療用具10の各表面の凹凸等に応じて不均一な厚みとなったりすることもある。
【0029】
自己接着シリコーンゴム接着部材30は、RFタグ20の少なくとも一部(第1実施形態においては、底面を除く全面)を被覆し、自身も医療用具10に固定される。RFタグ20の取り付けの安定性および血液等や洗浄・殺菌環境からのRFタグの保護の観点から、RFタグ20の底面を除く全面を自己接着シリコーンゴム接着部材30により被覆する(つまり、RFタグ20を密封する)のが好ましいが、医療用具10と反対側の面(上面)だけを自己接着シリコーンゴム接着部材30によって被覆されていても良い。自己接着シリコーンゴム接着部材30は、図1(1c)に示すように、医療用具10に1周より若干長めに巻回されている。自己接着シリコーンゴム接着部材30を医療用具10に1周以上巻回することで、RFタグ20および自己接着シリコーンゴム接着部材30を配置する対象の材質の種類にかかわらず、RFタグ20の取り付けについて十分な安定性が得られる。
【0030】
なお、医療用具10がシリコーンゴムからなる場合のように、自己接着シリコーンゴム接着部材30を固定する位置における医療用具10の材質と自己接着シリコーンゴム接着部材30との親和性が高い場合には、自己接着シリコーンゴム接着部材30が1周以上巻回されていなくても、RFタグ20の取り付けについて十分な安定性が得られる場合もある。
【0031】
なお、図1(1c)において、自己接着シリコーンゴム接着部材30の端部付近が大きく段差になるように図示されているが、これは、自己接着シリコーンゴム接着部材30が自己接着シリコーンゴム接着部材30同士で重なり合っていることをわかりやすくするためのものである。自己接着シリコーンゴム接着部材30は、比較的薄い。これは、自己接着シリコーンゴム接着部材30の元となる未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート30aが薄くかつ可塑性に富むからである。このため、自己接着シリコーンゴム接着部材30の端部付近が大きく段差になることを回避することができる。これは、図2(2d)をはじめとする他の図においても同様である。
【0032】
自己接着シリコーンゴム接着部材30は、少なくとも可視光の一部を通過させ、自己接着シリコーンゴム接着部材30越しにRFタグ20を視認可能であるのが好ましい。「可視光の一部を通過」させるために、自己接着シリコーンゴム接着部材30は、透明または半透明であるのが好ましい。
【0033】
一方、自己接着シリコーンゴム接着部材30は、着色がなされていても良い。その場合、色は、例えば、RFタグ付き医療用具1を用いる場所(例えば、手術室)での視認性がよい色とすることもできる。また、RFタグ付き医療用具1が複数ある場合には、医療用具10の種類、医療用具10の所在場所、医療用具10を使用する順番や術式の種類等に応じて異なる色の自己接着シリコーンゴム接着部材30を用いても良い。着色手段は、特に制約されないが、染料や顔料を自己接着シリコーンゴムに含めることで実現可能である。
【0034】
ここで、自己接着シリコーンゴムについて説明する。この実施形態における「自己接着シリコーンゴム」は、無溶剤のシリコーン系接着剤の一種であり、高い接着力とともに、熱安定性、耐候性、良好な耐水性、優れた可撓性を有し、過酷な条件で実施される殺菌(例えば、高圧蒸気滅菌、EOG滅菌、電子線滅菌、煮沸滅菌)の繰り返しにも耐えることができる。また、自己接着シリコーンゴムで被覆した物(この実施形態ではRFタグ)について、殺菌時の温度、湿度、化学的または物理的な作用等が及ぼす影響を緩和することができる。さらに、自己接着シリコーンゴムは、一般的なシリコーンゴムと同様に、衛生面においても優れるという特性を有する。
【0035】
未硬化(硬化前)の自己接着シリコーンゴムは、自立した形状を保持でき、かつ、押圧力に従って変形可能である(可塑性を有する固体状である)。このため、未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートは、配置する場所の凹凸や曲面に応じて変形させることで、配置する場所の表面形状にかかわらず密着させることが可能であり、高い接着力を有する。なお、配置する場所にプライマーを塗布することで、自己接着シリコーンゴムの接着力を一層高めることもできる。
【0036】
未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートは、25℃におけるウイリアムス可塑度が50〜500の範囲内にあることが好ましく、50〜300の範囲内にあることがより好ましく、50〜250の範囲内にあることがさらにより好ましい。なお、ウイリアムス可塑度は、平行板可塑度計(ウイリアムスプラストメーター)を使用し、JIS K 6249「未硬化および硬化シリコーンゴムの試験方法」に規定の測定方法に準じて測定されるものである。
【0037】
自己接着シリコーンゴムは、付加反応型または縮合反応型のシリコーンゴムであり、好ましくは常温での放置(空気中の水分との反応)または加熱という手軽な手段により硬化する。つまり、自己接着シリコーンゴムは、配置から硬化に至るまで取り扱いに特殊なスキル等を要求せず、簡単な方法で固着させることが可能である。
【0038】
以下、この実施形態にて好適に使用可能な自己接着シリコーンゴムについて詳細に説明する。
【0039】
(1)縮合反応型の自己接着シリコーンゴム
縮合反応型の自己接着シリコーンゴムは、主に以下の成分から構成される。
【0040】
(1−1)オルガノポリシロキサン
縮合反応型の自己接着シリコーンゴムの主剤成分であり、下記の化学式(1)または化学式(2)により表されるジオルガノポリシロキサンである。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
上記の化学式(1),(2)において、Rは一価の炭化水素基である。Rとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、アリル基等)、アリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェニルエチル基等)、および、上記炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の少なくとも一部をハロゲンやシアノ基等で置換したもの(クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基等)から選択される一または複数の炭化水素基を挙げることができる。Rの炭素数としては、1〜12であることが好ましく、1〜10であることが一層好ましい。
【0044】
上記の化学式(1),(2)においては、Aは酸素原子または−(CH−(mは1〜8)で表されるポリメチレン基(メチレン基を含む)である。Aは、酸素原子またはエチレン基であることが好ましい。
【0045】
上記の化学式(1),(2)において、nは(1−1)成分の25℃における動粘度を100〜1000000cm/sの範囲内とする任意の数である。当該動粘度は、500〜500000cm/sの範囲内とすることが一層好ましい。
【0046】
上記の化学式(1),(2)において、Bは加水分解性基である。Bとしては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、ケトオキシム基(ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基等)、アルケニルオキシ基(イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等)を挙げることができる。なお、上記の化学式(1),(2)におけるxは2または3である。
【0047】
上記(1−1)成分は、公知の方法(例えば、環状シロキサンまたは線状オリゴマーと酸触媒または塩基触媒とを用いた平衡反応による方法)により製造することができる。
【0048】
なお、(1−1)成分であるジオルガノポリシロキサンに分岐構造を導入する場合には、常法として、重合中にSiO3/2単位およびSiO4/2単位のうち少なくとも一方を含むシランまたはシロキサンをジオルガノポリシロキサンがゲル化しない程度に添加する方法を用いることができる。(1−1)成分については、汚れを低減するため、洗浄等により低分子シロキサンを除去してから用いることが好ましい。
【0049】
(1−2)架橋剤
架橋剤としては、加水分解性基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するシラン、または、当該シランの部分加水分解縮合物を用いる。加水分解性基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ケトオキシム基(ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基等)、アルケニルオキシ基(イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等)、アミノ基(N−ブチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等)、アミド基(N−メチルアセトアミド基等)を挙げることができる。これらの中では、アルコキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基を用いることが好ましい。架橋剤の配合量は、(1−1)成分100質量部に対して1〜50質量部の範囲内にあることが好ましく、2〜30質量部の範囲内にあることが一層好ましく、5〜20質量部の範囲内にあることがより一層好ましい。
【0050】
(1−3)硬化触媒
硬化触媒は必須ではないが、硬化触媒を用いることにより、自己接着シリコーンゴムの硬化を促進することができる。硬化触媒の例としては、アルキル錫エステル化合物(ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等)、チタン酸エステルまたはチタンキレート化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等)、その他の適切な有機金属化合物(ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等)、アミノアルキル基置換アルコキシシラン(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、アミン化合物またはその塩(ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等)、第4級アンモニウム塩(ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等)、アルカリ金属の低級脂肪酸塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等)、のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジアルキルヒドロキシルアミン(ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等)、グアニジル基を有するシランまたはシロキサン(テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等)を挙げることができる。これらは、1種のみで用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。硬化触媒の配合量は、(1−1)成分100質量部に対して0〜20質量部の範囲内にあることが好ましく、0.001〜10質量部の範囲内にあることが一層好ましく、0.01〜5質量部の範囲内にあることがより一層好ましい。
【0051】
(1−4)充填剤
充填剤は、必須ではないが、補強等の目的で好適に用いることができる。充填剤の例としては、補強剤(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、これらのシリカの表面を有機珪素化合物で疎水化処理したシリカ、石英粉末、タルク、ゼオライト、ベントナイト等)、繊維質充填剤(アスベスト、ガラス繊維、有機繊維等)、塩基性充填剤(炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セライト等)を挙げることができる。これらの中では、シリカ、炭酸カルシウムおよびゼオライトを用いることが好ましく、表面を疎水化処理したヒュームドシリカおよび炭酸カルシウムを用いることが一層好ましい。上記充填剤の配合量は、目的や充填剤の種類により選択することができるが、(1−1)成分に対して1〜90体積%の範囲内にあり、5〜60体積%の範囲内にあることが好ましい。
【0052】
(1−5)接着性付与成分
接着性付与成分は必須ではないが好適に用いられる。接着性付与成分の例としては、アミノ基含有オルガノアルコキシシラン(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、メルカプト含有オルガノアルコキシシラン(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物を挙げることができる。接着性付与成分の配合量は、(1−1)成分100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0053】
(2)付加硬化型の自己接着シリコーンゴム
付加硬化型の自己接着シリコーンゴムは、主に以下の成分から構成される。
【0054】
(2−1)オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンは、付加硬化型の自己接着シリコーンゴムの主剤であり、一分子中に平均2個以上のアルケニル基を有する。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基およびヘプテニル基を挙げることができる。これらの中では、ビニル基を用いることが好ましい。また、本成分中、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基の例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、アリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基等)、ハロゲン化アルキル基(3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等)を挙げることができる。これらの中では、メチル基を用いることが好ましい。本成分の分子構造の例としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状を挙げることができる。本成分の25℃における粘度は100000mPa・s以上であることが好ましく、1000000mPa・s以上であることが一層好ましい。
【0055】
本成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、(CHSiO1/2で示されるシロキサン単位と(CH(CH=CH)SiO1/2で示されるシロキサン単位とSiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の少なくとも一部をアルキル基(エチル基、プロピル基等)、アリール基(フェニル基、トリル基等)、ハロゲン化アルキル基(3,3,3−トリフルオロプロピル基等)から選ばれる置換基で置換したオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのビニル基の少なくとも一部をアルケニル基(アリル基、プロペニル基等)で置換したオルガノポリシロキサン、および、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物を用いることができる。
【0056】
(2−2)水素化オルガノポリシロキサン
水素化オルガノポリシロキサンは、付加硬化型の自己接着シリコーンゴムの硬化剤として作用するものであり、1分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素を有する。本成分中のケイ素に結合する有機基の例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、アリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基等)、ハロゲン化アルキル基(3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等)を挙げることができる。上記の中では、メチル基を用いることが好ましい。本成分の分子構造の例としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状を挙げることができる。本成分の25℃における粘度は限定されないが、1〜1000000mPa・sの範囲内にあることが好ましく、1〜10000mPa・sの範囲内にあることが一層好ましい。
【0057】
本成分の水素化オルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(CHHSiO1/2で示されるシロキサン単位とSiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の少なくとも一部をアルキル基(エチル基、プロピル基等)、アリール基(フェニル基、トリル基等)、ハロゲン化アルキル基(3,3,3−トリフルオロプロピル基等)で置換したオルガノポリシロキサン、および、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物を用いることができる。これらの中では、得られる硬化物の機械的特性(特に伸び)が向上することから、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するオルガノポリシロキサンとの混合物を用いることが好ましい。
【0058】
付加硬化型の自己接着シリコーンゴムにおける本成分の含有量は、(2−1)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20の範囲内となる量であり、0.1〜10の範囲内となる量であることが好ましく、0.1〜5の範囲内となる量であることが一層好ましい。上記のような範囲としたのは、本成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、自己接着シリコーンゴムが十分に硬化しやすくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限以下では、硬化した自己接着シリコーンゴムの機械的特性がより高くなる傾向があるからである。また、本成分として、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するオルガノポリシロキサンとの混合物を用いる場合には、前者のオルガノポリシロキサンの含有量は、(2−1)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜10の範囲内となる量であることが好ましく、0.1〜10の範囲内となる量であることが一層好ましく、0.1〜5の範囲内となる量であることがより一層好ましい。また、後者のオルガノポリシロキサンの含有量は、(2−1)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜20の範囲内となる量であることが好ましく、0.5〜10の範囲内となる量であることが一層好ましく、0.5〜5の範囲内となる量であることがより一層好ましい。
【0059】
(2−3)硬化触媒
硬化触媒は必須ではないが、好ましい例としてヒドロシリル化反応用白金系触媒を挙げることができる。ヒドロシリル化反応用白金系触媒の例としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトンの錯体、塩化白金酸とオレフィン類の錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体、および、これらを担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に担持させたものを挙げることができる。これらの中では、触媒活性の高さから、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体を用いることが好ましい。また、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体を用いることが一層好ましい。本成分の配合量は、(2−1)成分100万質量部に対して、白金金属原子として1〜1000質量部の範囲内にあることが好ましく、1〜100質量部の範囲内にあることが一層好ましい。
【0060】
(2−4)充填剤
充填剤は、付加硬化型の自己接着シリコーンゴムの機械的強度を向上させるために添加する方が好ましいものであり、通常、シリコーンゴムの配合に用いられる公知の化合物を用いることができる。本成分としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、粉砕石英、および、これらのシリカの粉末を有機ケイ素化合物(オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン等)で表面処理した粉末を挙げることができる。特に、硬化した自己接着シリコーンゴムの機械的強度を十分に向上させるためには、本成分としてBET比表面積が50m/g以上であるシリカ粉末を用いることが好ましい。
【0061】
付加硬化型の自己接着シリコーンゴムにおいて本成分の添加は任意であるが、硬化した自己接着シリコーンゴムの機械的強度を向上させるためには、本成分の配合量が(2−1)成分100質量部に対して1〜1000質量部の範囲内にあることが好ましく、1〜400質量部の範囲内にあることが一層好ましい。また、付加硬化型の自己接着シリコーンゴムは、その他任意の成分として、例えば、ヒュームド酸化チタン、ケイ藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等の無機質充填剤および有機充填剤を含有していてもよい。付加硬化型の自己接着シリコーンゴムは、これらの充填剤の表面を前記の有機ケイ素化合物で処理した充填剤を含有していても良い。充填剤の配合量は、目的や充填剤の種類により選択することができるが、(2−1)成分に対して1〜90体積%の範囲内にあり、5〜60体積%の範囲内にあることが好ましい。
【0062】
(2−5)接着性付与成分
本成分は、必須ではないが、付加硬化型の自己接着シリコーンゴムを接着剤として機能させるためにその接着性を付与、向上させるために好適に用いることができるものである。本成分の例として、シランカップリング剤およびこれらの部分加水分解物(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等)、「エポキシ基、酸無水物基、αシアノアクリル基」を有する有機化合物、「エポキシ基、酸無水物基、αシアノアクリル基」を有するシロキサン化合物、「エポキシ基、酸無水物基、αシアノアクリル基」とアルコキシシリル基とを併有する有機化合物またはシロキサン化合物、チタン化合物(テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等)、アルミニウム化合物(エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等)、ジルコニウム化合物(ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等)を挙げることができる。なお、上記のシロキサン化合物としては、アルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の低級脂肪族不飽和基またはこれらとヒドロシリル基とを併有するものが接着性向上について効果的な寄与を期待できる。上記接着性付与成分の含有量は、特に限定されないが、(2−1)成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0063】
さらに、付加硬化型の自己接着シリコーンゴムには、その硬化性を調整するために、アセチレン系化合物(3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等)、エンイン化合物(3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等)、1分子中にビニル基を5質量%以上持つオルガノシロキサン化合物(1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)、その他の硬化抑制剤(ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等)を含有することが好ましい。これらの含有量は限定されないが、(2−1)成分100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0064】
付加硬化型の自己接着シリコーンゴムを調製する方法は限定されず、必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができるが、予め(2−1)成分と(2−3)成分とを加熱混合して調製したベースコンパウンドに、残余の成分を添加することが好ましい。なお、その他任意の成分を添加する場合、ベースコンパウンドを調製する際に添加してもよく、また、その他任意の成分が加熱混合により変質する場合には、(2−2)成分や(2−4)成分を添加する際に添加してもよい。また、ベースコンパウンドを調製する際、前記の有機ケイ素化合物を添加して、(2−3)成分の表面をin−situ処理してもよい。
【0065】
未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシートは、上記の縮合反応型の自己接着シリコーンゴムまたは付加反応型の自己接着シリコーンゴムを調製し、シート状に形成したものである。
【0066】
2.医療用具へのRFタグ取り付け方法
次に、第1実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法について説明する。
【0067】
図2は、第1実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法を示す。なお、図2の各図は、図1(1c)に相当する断面図である。
【0068】
この実施形態に係る医療用具へのRFタグの取り付け方法は、医療用具10上に配置されたRFタグ20の少なくとも一部(第1実施形態においては底面を除く全面)を未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート30aにより被覆し、当該シート30aを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材30とすることにより、RFタグ20を医療用具10に固定する方法である。本明細書においては、「シート状」には、テープ状、丸紐状やフィルム状等の形状(つまり、薄膜状の形状全般)を含む。また、未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート30a(以後、単に「シート30a」という。)の厚みとしては、例えば、0.2〜10.0mmの範囲内が好ましい。さらに好ましい厚さは0.7〜2.0mmの範囲である。
【0069】
なお、「医療用具へのRFタグ取り付け方法」は、医療用具10にRFタグ20を固定してRFタグ付き医療用具1を製造する方法とも解釈できることから、「RFタグ付き医療用具の製造方法」と称しても良い。この実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法(若しくはRFタグ付き医療用具の製造方法)は、医療用具10上にRFタグ20を配置した上で、RFタグ20の少なくとも一部をシート30aにて被覆して、医療用具10とRFタグ20とを固定する固定工程と、シート30aを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材30を形成する硬化工程と、を含む。
【0070】
本明細書において、「RFタグ付き医療用具1」の形態は、RFタグ20が医療用具10上に直接的に接触配置されている(すなわち、医療用具10と直に接している)形態と、RFタグ20が医療用具10上に何らかの部材(例えば、後述する実施形態のようにRFタグ20の上から医療用具10に巻回されているシート30aとは別のシート30a)を介して配置されている形態との両方を含むように解釈される。
【0071】
以下、図2(2a)〜(2d)を参照して、この実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法の詳細について説明する。
【0072】
まず、医療用具10を準備する(図2(2a)参照。)。ここで、医療用具10表面のシート30aを配置する位置(被着面)に存在する汚れ、水分、油分等を予め除去することが好ましい。当該除去は、例えば、洗浄剤(アルコール等)を含ませた拭き取り用具(布や脱脂綿等)を用いて拭き取る方法で実施可能である。
【0073】
次に、RFタグ20を医療用具10上の所望の位置に配置する(図2(2b)参照。)。RFタグ20を配置する位置は、医療用具10を扱う際に邪魔にならず、かつ、RFタグ20の読み取りに支障のない位置であるのが好ましい。医療用具10を扱う際に邪魔にならない位置とは、医療用具10を扱う際に手が触れにくい位置や、医療用具10がその使用対象と接触する位置(例えば、ピンセットであれば先端、ハサミであれば刃)以外の位置を意味する。
【0074】
次に、医療用具10上に配置されたRFタグ20の少なくとも一部(この実施形態においては底面以外の全面)をシート30aにより被覆して、RFタグ20を医療用具10に固定する(固定工程: 図2(2c)参照。)。RFタグ20の取り付けの安定性の観点から、RFタグ20と医療用具10との接触面(底面)以外の面をシート30aにより被覆することが好ましい。シート30aは、ハサミ(医療用具10とは別の一般的な道具)等を用いて適切な形状に整形することができる。固定工程では、シート30aは、医療用具10の周囲に1周より多く巻きつける方が好ましい。RFタグ20をシート30aにより被覆する際には、シート30aの上から押圧する等して形状を整え、医療用具10およびRFタグ20とシート30aとの間になるべく空隙が生じないようにするのが好ましい。
【0075】
次に、シート30aを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材30を形成して、RFタグ20を医療用具10に強固に取り付ける(硬化工程: 図2(2d)参照。)。硬化は、常温15〜35℃での放置(養生)によって行われるが、常温より高い温度まで加熱する手段によって行うこともできる。また、縮合反応型の自己接着シリコーンゴムでは空気中の水分と反応するので、常温よりもさらに低い温度で硬化可能である。
【0076】
以上の工程により、医療用具10にRFタグ20を取り付けて、RFタグ付き医療用具1を完成する。
【0077】
3.第1実施形態の特有の作用効果
【0078】
この実施形態によれば、シート30aは、自己接着シリコーンゴムから成るため、使用時にはテープのように扱うことができ、硬化後には熱安定性、耐候性、良好な耐水性、優れた可撓性を有する接着体となる。このため、RFタグ付き医療用具1を、血液等が直接付着したり、繰り返しの洗浄・殺菌(消毒および滅菌を含む。以下同じ。)が行われる過酷な環境下で使用する場合であっても、長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながらRFタグ20を医療用具10に固定しておくことができる。また、シート30aは使用時に折り曲げ等自由変形することができるため、RFタグ20および医療用具10の各形状に依存せずに使用できる。
【0079】
また、シート30aは可塑性を有する固体状の物質であるため、液状の接着剤を用いる場合と比べて、RFタグ20の取り付け位置のずれや予期せぬ位置への付着等が発生しにくい他、固定の操作性にも優れている。
【0080】
ところで、医療の現場では、RFタグを用いた管理システムを導入すべき理由は、医療用具の置き忘れや紛失がないようにするという上記の理由(第1の理由)に限られるものではなく、以下のような理由(第2の理由)によるものであってもよい。例えば、手術に用いる医療用具は、術式別に構成されるコンテナに予め収納される。このとき、コンテナに収納する医療用具の種類や数量について間違いがあると、医療用具の置き忘れ等が発生しやすくなったり、手術の経過に悪影響が出たりする。このように、医療の現場では、医療用具を適切な場所に適切に収納することが要求される。医療用具の収納についてRFタグを用いた管理システムを利用することで、管理の厳密化と簡易化とを両立できる等、大きな効果が得られる。医療用具は過酷な環境下で使用されるため、医療用具を管理する理由が第2の理由であっても、多種多様な医療用具の正確な位置に、RFタグを長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら固定可能であることが、RFタグを用いた管理システムを運用するための前提条件となる。このため、シート30aを用いることにより得られる上記の効果は、第2の理由の場合であっても有効である。
【0081】
また、RFタグを用いた管理システムを導入すべき理由は、以下のような理由(第3の理由)によるものであってもよい。医療用具は、繰り返し使用できるものであっても、劣化や損耗によりメンテナンスや修理が必要になることもあれば、使用不可能になることもある。医療用具の使用回数や使用期間についての管理を適切に行わない場合には、医療用具の使用中に医療用具の破損等が発生することを防げず、破損部分の脱離や紛失等の事故が発生し得る。使用回数や使用期間の管理が必要であるのは医療用具以外の道具(工具等)についても同様であるが、医療用具は人体に用いるものも多く、破損等が深刻な事態を引きおこし得る。しかし、多数の医療用具(医療施設等の規模にもよるが、数万個程度となることも珍しくない)の使用回数や使用期間を人力のみで管理しようとすると、どこかの段階で確認ミス等が発生し、結局は医療用具の破損に起因する事故の発生を防ぐことができなくなるおそれがある。一方で、RFタグを用いた管理システムを用いる(例えば、医療用具を使用するごとにリーダで読み取りを行う)ことで、簡便かつ正確に医療用具の使用回数や使用期間についての管理を行うことができ、確認ミス等の発生を抑制することが可能となり、ひいては医療用具の使用中の破損等を十分に抑制することが可能となる。医療用具を管理する理由が第3の理由であっても、多種多様な医療用具の正確な位置に、RFタグを長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら固定可能であることが、RFタグを用いた管理システムを運用するための前提条件となる。このため、シート30aを用いることにより得られる上記の効果は、第3の理由の場合であっても有効である。
【0082】
さらに、RFタグを用いた管理システムを導入すべき理由は、以下のような理由(第4の理由)によるものであってもよい。使い捨てではない医療用具については、基本的に使用するごとに洗浄・殺菌が行われる。医療用具の洗浄・殺菌が適切に行われない場合には、感染症の拡大等、深刻な事態が発生しうる。しかし、多数の医療用具について洗浄・殺菌を適切に行ったか否かの記録を人力で管理しようとすると、どこかの段階で確認ミス等が発生し、結局は適切な洗浄・殺菌がなされない医療用具がそのまま再使用され、感染症等を発生または拡大させてしまうおそれがある。一方で、RFタグを用いた管理システムを用いる(例えば、医療用具を洗浄・殺菌するごとにリーダで読み取りを行い、洗浄・殺菌に関する履歴を記録する)ことで、簡便かつ正確に洗浄・殺菌が行われたか否かについての管理を行うことができ、確認ミス等の発生を抑制することが可能となり、ひいては、感染症等の発生または拡大を防止又は十分に抑制することが可能となる。医療用具を管理する理由が第4の理由であっても、多種多様な医療用具の正確な位置に、RFタグを長期間に渡り、かつ、衛生的に適切な状態を保ちながら固定可能であることが、RFタグを用いた管理システムを運用するための前提条件となる。このため、シート30aを用いることにより得られる上記の効果は、第4の理由の場合であっても有効である。
【0083】
また、シート30aは、好ましくは、硬化させたときに少なくとも可視光の一部を通過させ、自己接着シリコーンゴム接着部材30越しにRFタグ20を視認できるものである。このため、RFタグ20の位置やRFタグ20に記載された管理番号等を目視で容易に確認可能である。
【0084】
また、シート30aは、硬化後に着色された自己接着シリコーンゴム接着部材30を形成可能なものでも良い。この場合には、自己接着シリコーンゴム接着部材30の色によりRFタグ付き医療用具1自体の視認性や識別性を向上させることができる。
【0085】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成あるいは工程については、適宜、省略し、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0086】
1.RFタグ付き医療用具
図3は、第2実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(3a)およびA2−A2線断面図(3b)をそれぞれ示す。
【0087】
第2実施形態に係るRFタグ付き医療用具2は、基本的には第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具1と同様の構成を有するが、RFタグ20が自己接着シリコーンゴム接着部材30を介在して医療用具10に固定されている点で、第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具1と異なる。
【0088】
RFタグ付き医療用具2において、RFタグ20と医療用具10とを接着している自己接着シリコーンゴム接着部材30は、RFタグ20の上から医療用具10に巻回される第1接着部材31と、医療用具10とRFタグ20との間に配置される第2接着部材40と、を備える。
【0089】
2.医療用具へのRFタグ取り付け方法
【0090】
図4は、第2実施形態に係る医療用具へのRFタグの取り付け方法を示す。
【0091】
第2実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法は、基本的には第1実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法と同様の方法であるが、医療用具10の表面とRFタグ20との間に、硬化後に第2接着部材40となる未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート40a(以後、単に「シート40a」という。)を配置する点で、第1実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法と異なる。
【0092】
この実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法(若しくはRFタグ付き医療用具の製造方法)は、RFタグ20の少なくとも一部をシート30aにて被覆して、医療用具10とRFタグ20とを固定する固定工程と、シート30aを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材30を形成する硬化工程と、を含む。さらに、上記固定工程は、医療用具10とRFタグ20との間にシート40aを配置して医療用具10とRFタグ20とを貼り付ける貼付工程と、RFタグ20の上から医療用具10に、上記貼付工程で用いたシート40aとは別のシート31aを巻回する巻回工程と、を含む。シート31aは、硬化後に第1接着部材31(自己接着シリコーンゴム接着部材30の一形態)となる。シート40aは、硬化後に第2接着部材40(自己接着シリコーンゴム接着部材30の別の形態)となる。以下、第2実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法について詳述する。
【0093】
まず、医療用具10を準備する(図4(4a)参照。)。この工程は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
次に、医療用具10の表面にシート40aを配置する(図4(4b)参照。)。
【0095】
次に、シート40aの上にRFタグ20を配置すると共に貼付する(貼付工程: 図4(4c)参照。)。貼付工程は、RFタグ20を医療用具10に固定する固定工程の一部を構成する。
【0096】
次に、医療用具10上に配置されたRFタグ20の少なくとも一部(第2実施形態においては底面を除く全面)をシート31aにより被覆する(巻回工程: 図4(4d)参照。)。巻回工程は、第1実施形態における固定工程と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
次に、シート31a,40aを硬化させてRFタグ20を医療用具10に固定して取り付ける(硬化工程: 図4(4e)参照。)。硬化工程および硬化方法は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
以上の工程により、医療用具10にRFタグ20を取り付けて、RFタグ付き医療用具2を完成することができる。
【0099】
3.第2実施形態の特有の作用効果
【0100】
この実施形態によれば、先に述べた第1の実施形態の作用効果に加えて、RFタグ20が医療用具10に対してより確実に固定できるため、RFタグ20の位置ずれを抑制でき、かつより長期間の固定が可能となるという作用効果も得られる。特に、医療用具10の表面に凹凸が多いような場合であっても、RFタグ20を医療用具10に安定して固定することができる。
【0101】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態において、第1実施形態および第2実施形態と共通する構成あるいは工程については、適宜、省略し、第1実施形態および第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0102】
1.RFタグ付き医療用具
図5は、第3実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(5a)およびA3−A3線断面図(5b)をそれぞれ示す。
【0103】
第3実施形態に係るRFタグ付き医療用具3は、基本的には第2実施形態に係るRFタグ付き医療用具2と同様の構成を有するが、RFタグ20が医療用具10に巻回される自己接着シリコーンゴム接着部材30を介在して医療用具10に固定されている点で、第2実施形態に係るRFタグ付き医療用具2と異なる。
【0104】
RFタグ付き医療用具3において、RFタグ20と医療用具10とを接着している自己接着シリコーンゴム接着部材30は、RFタグ20の上から医療用具10に巻回される第1接着部材32と、医療用具10とRFタグ20との間に配置される第2接着部材41と、を備える。第2接着部材41は医療用具10に巻回される。この例では、第2接着部材41は、第1接着部材32と別部材であるが、第1接着部材32と連接する1つの接着部材であっても良い。その場合、当該1つの接着部材の巻回される途中にRFタグ20を挟みこむようにして、RFタグ20が医療用具10に固定されても良い。
【0105】
2.医療用具へのRFタグ取り付け方法
【0106】
図6は、第3実施形態に係る医療用具へのRFタグの取り付け方法を示す。
【0107】
第3実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法は、基本的には第2実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法と同様の方法であるが、医療用具10の表面とRFタグ20との間に、硬化後に第2接着部材41となる未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート41a(以後、単に「シート41a」という。)を巻回することにより配置する点で、第2実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法と異なる。
【0108】
この実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法(若しくはRFタグ付き医療用具の製造方法)は、RFタグ20の少なくとも一部をシート30aにて被覆して、医療用具10とRFタグ20とを固定する固定工程と、シート30aを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材30を形成する硬化工程と、を含む。また、上記固定工程は、医療用具10とRFタグ20との間にシート41aを配置して医療用具10とRFタグ20とを貼り付ける貼付工程と、RFタグ20の上から医療用具10に、上記貼付工程で用いたシート41aとは別のシート32aを巻回する巻回工程と、を含む。さらに、上記貼付工程では、医療用具10に未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート41aを巻回することにより配置して医療用具10とRFタグ20とを貼り付ける。シート32aは、硬化後に第1接着部材32(自己接着シリコーンゴム接着部材30の一形態)となる。シート41aは、硬化後に第2接着部材41(自己接着シリコーンゴム接着部材30の別の形態)となる。以下、第3実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法について詳述する。なお、シート32aとシート41aとを連接した1つのシートを用意して、RFタグ20を当該1つのシートの巻回される途中に挟みこむようにして医療用具10に固定するようにしても良い。
【0109】
まず、医療用具10を準備する(図6(6a)参照。)。この工程は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
次に、医療用具10の表面にシート41aを配置する(図6(6b)参照。)。このとき、シート41aを医療用具10の周囲に巻回する。第3実施形態における巻回工程では、シート41aは、医療用具10の周囲に1周より多く巻きつける方が好ましい。シート41aを巻回する際には、シート41aの上から押圧する等して形状を整え、医療用具10とシート41aとの間になるべく空隙が生じないようにするのが好ましい。
【0111】
次に、シート41aの上にRFタグ20を配置すると共に貼付する(貼付工程: 図6(6c)参照。)。この工程は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
次に、医療用具10上に配置されたRFタグ20の少なくとも一部(第3実施形態においては底面を除く全面)をシート32aにより被覆する(巻回工程: 図4(4d)参照。)。この工程は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
次に、シート32a,41aを硬化させてRFタグ20を医療用具10に固定して取り付ける(硬化工程: 図6(6e)参照。)。この工程は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
以上の工程により、医療用具10にRFタグ20を取り付けて、RFタグ付き医療用具3を完成することができる。
【0115】
3.第3実施形態の特有の作用効果
【0116】
この実施形態によれば、先に述べた第1の実施形態および第2の実施形態の作用効果に加えて、RFタグ20が医療用具10に対してより一層確実に固定できるため、RFタグ20の位置ずれを一層確実に抑制でき、かつより一層長期間の固定が可能となるという作用効果も得られる。特に、医療用具10の表面に凹凸が多いような場合であっても、RFタグ20を医療用具10に一層安定して固定することができる。
【0117】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態において、第3実施形態と共通する構成あるいは工程については、適宜、省略し、第3実施形態と異なる点について主に説明する。
【0118】
1.RFタグ付き医療用具
図7は、第4実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(7a)、側面図(7b)およびA4−A4線断面図(7c)をそれぞれ示す。
【0119】
第4実施形態に係るRFタグ付き医療用具4は、基本的には第3実施形態に係るRFタグ付き医療用具3と同様の構成を有するが、医療用具12がハサミ(剪刀)である点で、第3実施形態に係るRFタグ付き医療用具3と異なる。
【0120】
RFタグ付き医療用具4において、RFタグ20と医療用具12とを接着している自己接着シリコーンゴム接着部材30は、RFタグ20の上から医療用具12に巻回される第1接着部材33と、医療用具12とRFタグ20との間に配置される第2接着部材42と、を備える。第2接着部材42は医療用具12に巻回される。なお、上記例では、第2接着部材42は、第1接着部材33と別部材であるが、第1接着部材33と連接する1つの接着部材であっても良い。その場合、当該1つの接着部材の巻回される途中にRFタグ20を挟みこむようにして、RFタグ20が医療用具12に固定されても良い。
【0121】
2.医療用具へのRFタグ取り付け方法
【0122】
第4実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法は、医療用具12がハサミである点ならびに第1接着部材33および第2接着部材42の形状に対応する未硬化状態のシリコーンゴムシートを用いる点以外の点については、実質的に第3実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法と同様の方法であるため、説明を省略する。
【0123】
3.第4実施形態の作用効果
【0124】
この実施形態によれば、第3実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0125】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態において、前述の各実施形態と共通する構成あるいは工程については、適宜、省略し、前述の各実施形態と異なる点について主に説明する。
【0126】
1.RFタグ付き医療用具
図8は、第5実施形態に係るRFタグ付き医療用具の平面図(8a)、側面図(8b)、A5−A5線断面図(8c)、別のRFタグ付き医療用具の図8(8c)に相当する断面図(8d)およびさらに別のRFタグ付き医療用具の図8(8c)に相当する断面図(8e)をそれぞれ示す。
【0127】
第5実施形態に係るRFタグ付き医療用具5は、基本的には第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具1と同様の構成を有するが、複数のRFタグ20,22を備える点で第1実施形態に係るRFタグ付き医療用具1と異なる。
【0128】
第5実施形態に係るRFタグ付き医療用具5は、図8(8a)〜図8(8c)に示すように、2個のRFタグ20,22を医療用具10に備える。第5実施形態では、RFタグ20,22の数は2個であるが、3個以上でも良い。RFタグ20と、RFタグ22とは、それぞれ異なる方向に電波を発送信可能に配置されている。具体的には、RFタグ20,22は、医療用具10の厚さ方向表側と裏側に配置されている。このように、RFタグ付き医療用具5が電波の発信方向の異なる少なくとも2つのRFタグ20,22を備えることにより、リーダによる読み取りがより容易になる。特に、医療用具10が鉄、SUSを含む鉄系合金のような金属製の医療用具である場合、医療用具10自体が電波遮蔽体となり、リーダによってRFタグ20(あるいはRFタグ22)との間で非接触通信を行うことが難しい場合がある。
【0129】
しかし、複数個のRFタグ20,22を、それぞれ異なる方向に電波を発信可能に医療用具10に取り付けることにより、1個のRFタグ(例えば、RFタグ20)との通信が困難でも、別のRFタグ(例えば、RFタグ22)との通信が容易な状況になる可能性がある。なお、3個以上のRFタグを医療用具10に取り付けた場合には、それらの内の少なくとも2つが異なる方向に電波を発信可能に医療用具10に取り付ける限り、少なくとも2つのRFタグが同じ方向に電波を発信するように医療用具10に取り付けても良い。もちろん、全てのRFタグがそれぞれ異なる方向に電波を発信可能に医療用具10に取り付けることもできる。
【0130】
また、図8のように、RFタグ20,22は、医療用具10を挟んで反対側の面にそれぞれ取り付けられても良いが、医療用具10の同じ面に取り付けられても良い。その場合でも、RFタグ20,22は、それらから電波の発信方向が互いに異なるように、医療用具10に取り付けられる。
【0131】
RFタグ付き医療用具5は、図8(8d)に示すRFタグ付き医療用具6のように、自己接着シリコーンゴム接着部材30(第2接着部材40)を医療用具10とRFタグ20,22の少なくとも1つとの間に介在させても良い。
【0132】
また、RFタグ付き医療用具5は、図8(8e)に示すRFタグ付き医療用具7のように、医療用具10に巻回される自己接着シリコーンゴム接着部材30(第2接着部材41)を医療用具10とRFタグ20,22の少なくとも1つとの間に介在させても良い。
図8(8e)に示す例では、第2接着部材41は、第1接着部材32と別部材であるが、第1接着部材32と連接する1つの接着部材であっても良い。その場合、当該1つの接着部材の巻回される途中にRFタグ20を挟みこむようにして、RFタグ20が医療用具10に固定されても良い。
【0133】
2.医療用具へのRFタグ取り付け方法
第5実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法は、前述の第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法と共通する。すなわち、第5実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法は、医療用具10上にRFタグ20,22を配置する配置工程と、RFタグ20,22の少なくとも一部をシート30aにて被覆して、医療用具10とRFタグ20,22とを固定する固定工程と、シート30aを硬化させて自己接着シリコーンゴム接着部材30を形成する硬化工程と、を含む。また、第5実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法において、前記固定工程は、医療用具10とRFタグ20,22との間にシート40aを配置して医療用具10とRFタグ20,22とを貼り付ける貼付工程と、RFタグ20,22の上から医療用具10に、貼付工程で用いたものとは別のシート31aを巻回する巻回工程と、を含むようにしても良い。なお、シート31aは、シート40aと同一シートであっても良い。その場合、RFタグ20,22は、該同一シート間に挟みこまれるようにして医療用具10に固定されても良い。さらに、第5実施形態に係る医療用具へのRFタグ取り付け方法において、上記貼付工程では、医療用具10にシート41aを巻回することにより配置して医療用具10とRFタグ20とを貼り付け、その後、RFタグ20,22の上から医療用具10に、貼付工程で用いたものとは別のシート32aを巻回する巻回工程を実施しても良い。その場合においても、シート32aは、シート41aと同一シートであり、RFタグ20,22は、該同一シート間に挟みこまれるようにして医療用具10に固定されても良い。
【0134】
3.第5実施形態の特有の作用効果
第5実施形態によれば、前述の第1、第2および第3実施形態の作用効果に加え、複数の方向からRFタグを認識させやすくすることが可能となるという特有の作用効果が得られる。このため、リーダをRFタグ付き医療用具5にかざしたときに、1個のRFタグ(例えば、RFタグ20)からの電波を受信できなかった場合でも、別のRFタグ22からの電波を受信できる可能性がある。したがって、紛失したRFタグ付き医療用具5を探す場合に、発見確率が高まる。また、複数の方向からRFタグを認識させやすくすることでリーダを何回もかざしなおす手間を省き、RFタグ付き医療用具5の使用者がRFタグを認識させようとする際のストレスを低減することが可能となる。
【0135】
(その他実施形態)
以上、本発明の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0136】
上記各実施形態および各図面において記載した構成要素の数、形状、位置、大きさ、角度等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。また、上記の第5実施形態においては、2個のRFタグ20,22は同じ種類のものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。複数のRFタグは、それぞれまたは一部のみが異なる種類のものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、医療用具を製造または使用するあらゆる産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,2,3,4,5,6,7・・・RFタグ付き医療用具、10,12・・・医療用具、20,22・・・RFタグ、30・・・自己接着シリコーンゴム接着部材、30a,31a,32a,40a,41a・・・シート(未硬化状態の自己接着シリコーンゴムシート)、31,32・・・自己接着シリコーンゴム接着部材(第1接着部材)、40,41・・・自己接着シリコーンゴム接着部材(第2接着部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8