(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986420
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/16 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
B60C11/16 Z
B60C11/16 E
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-215877(P2017-215877)
(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-85010(P2019-85010A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【審査官】
弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】
カナダ国特許出願公開第02773438(CA,A1)
【文献】
特開2016−166014(JP,A)
【文献】
特開2009−166806(JP,A)
【文献】
特開平03−054005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、スタッドピンが装着されるピン穴を有する空気入りタイヤであって、
前記ピン穴の周囲には、径方向外側に向かうに従って徐々に深くなり、前記ピン穴の深さの10%以下の深さを有する窪みが形成されており、
前記窪みは複数である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記窪みは、ピン穴を中心とする周方向に均等に配置されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッド部に、スタッドピンが装着されるピン穴を有する空気入りタイヤであって、
前記ピン穴の周囲には、径方向外側に向かうに従って徐々に深くなり、前記ピン穴の深さの10%以下の深さを有する窪みが形成されており、
前記窪みは、前記ピン穴の中心から径方向外側に向かうに従って幅寸法が大きくなっている、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッドピンが装着されるピン穴の周囲に、外径方向に延びる複数の凹部を形成した空気入りタイヤが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、ピン穴に対してほぼ同じ深さを有する凹部が近傍に配置されており、ピン穴によるスタッドピンの保持強度が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5452588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スタッドの耐抜け性を確保し、アイス性能を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
スタッドピンが装着されるピン穴が形成されたトレッド部を備え、
前記ピン穴の周囲には、径方向外側に向かうに従って徐々に深くなり、前記ピン穴の深さの10%以下の深さを有する窪み
が形成されており、前記窪みは複数である、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、ピン穴の周囲に形成された窪みが、ピン穴によるスタッドピンの保持強度に悪影響を与えることがない。しかも、窪みによって形成されたエッジが、氷雪面に対して食い込むように作用する。これにより、しっかりと保持されたスタッドピンと窪みのエッジ効果によって優れたアイス性能を発揮する。
また、窪みによって形成されるエッジ数が増え、より一層優れたアイス性能を発揮できる。
【0010】
前記窪みは、ピン穴を中心とする周方向に均等に配置されているのが好ましい。
【0011】
この構成により、スタッドピンを中心とするいずれの方向であってもエッジ効果が得られ、直進時だけでなく旋回時等にも優れたアイス性能を発揮する。
【0012】
前記窪みは、ピン穴の中心から径方向外側に向かうに従って幅寸法が大きくなっているのが好ましい。
【0013】
この構成により、スタッドピンの保持状態に影響を与えにくいピン穴の外径側でエッジ長さを拡大でき、さらに優れたアイス性能を発揮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ピン穴の周囲に、径方向外側に向かうに従って徐々に深くなり、ピン穴深さの10%以下の深さを有する
窪みを形成するようにしたので、ピン穴によるスタッドピンの良好な保持状態を維持しつつ、アイス性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部1の部分展開図である。トレッド部1には、タイヤ幅方向中心にセンターリブ2が形成されている。センターリブ2からタイヤ幅方向の両側には傾斜溝3によって画定される傾斜ブロック4が延びている。これにより、傾斜ブロック4はタイヤ周方向に所定間隔で配置される。
【0018】
傾斜溝3は、幅広の第1傾斜溝3Aと、幅狭の第2傾斜溝3Bとで構成されている。第1傾斜溝3Aは、両側縁の一部がジグザグ状に形成されている。
【0019】
傾斜ブロック4の途中には、両側の第1傾斜溝3Aと第2傾斜溝3Bに、ほぼ直交して連通する縦溝5が形成されている。縦溝5は、タイヤ周方向に配置される傾斜ブロック4間で、タイヤ幅方向のセンター側とサイド側とに交互に位置がずれている。これにより、傾斜ブロック4は、センターブロック6とショルダーブロック7とに分離されている。センターブロック6は、短尺な第1センターブロック6aと、長尺な第2センターブロック6bとで構成されている。ショルダーブロック7は、第1センターブロック6aに続く長尺な第1ショルダーブロック7aと、第2センターブロック6bに続く短尺な第2ショルダーブロック7bとで構成されている。
【0020】
センターリブ2と、これに続くセンターブロック6には、センターリブ2側を中心として放射状に第1サイプ8が形成されている。また、ショルダーブロック7には、その長手方向に沿って2本又は3本の第2サイプ9が形成されている。各サイプ8,9は波形で、第1サイプ8では一端が傾斜溝3に連通し、他端がセンターリブ2又はセンターブロック6内で終端している。第2サイプ9は、一端が縦溝5に連通し、他端がショルダーブロック7内で終端している。但し、各ブロック6,7には、後述するように、ピン領域10が形成され、このピン領域10にはサイプ8,9は形成されていない。
【0021】
センターリブ2、センターブロック6及びショルダーブロック7には、ピン領域10が形成されている。ピン領域10は、センターリブ2上、第1センターブロック6aのタイヤ幅方向側の端部、第2センターブロック6bの中央部及びタイヤ幅方向側の端部、第1ショルダーブロック7aのセンター側、第2ショルダーブロック7bの中央部にそれぞれ形成されている。これは、トレッド部1をセンターリブ2に沿ったセンター領域、その両側のメディエイト領域、さらにそのタイヤ幅方向外側のショルダー領域に分割した場合、ピン領域10の数が各領域ほぼ均等となるように配置されている。また、ピン領域10は、タイヤ周方向にもほぼ均等となるように配置されている。
【0022】
図2に示すように、ピン領域10の中心部にはピン穴11が形成され、そこにはスタッドピン12が装着されている。ピン穴11の周囲には、3箇所等分で窪み13が形成されている。各窪み13は、ピン穴11の中心に対して径方向外側に向かって徐々に幅が広がるように延びている。窪み13の内縁13aは、ピン穴11と同心円上に形成され、両側縁は、半径R1で窪み13の幅を広げる内側円弧縁13bと、さらに径方向外側へと延びる直線状の外側縁13cとで構成されている。窪み13の外縁は、半径R2の外側円弧縁13dと、そこから両側縁と平行に延びる内側縁13eと、最も径方向外側に位置する最外縁13fとで構成されている。窪み13の底面は、内縁からその径方向外側で、外側円弧縁13dに接する同心円まで徐々に深くなる傾斜面13gと、同心円の径方向外側で、外側縁13c、内側縁13e及び最外縁13fで囲まれた同一深さの平坦面13hとで構成されている。窪み13で最も深い平坦面の深さは、ピン穴11の深さに対して10%以下(ここでは、0.8mm)とされている。なお、傾斜面13gが形成される領域が窪み13の扇状部13A、平坦面13hが形成される領域が窪み13の分岐部13Bとなっている。
【0023】
前記構成のピン領域10を形成された空気入りタイヤによれば、次のような利点がある。
【0024】
(1)スタッドピン12に対して周囲に形成される窪み13が、ピン穴11の深さの10%以下であるので、接地圧が作用しても、ピン穴11によるスタッドピン12の保持強度を低下させることがない。特に、窪み13を、ピン穴11の中心に向かうに従って徐々に浅くなるように形成しているので、よりピン穴11による保持強度を高めることができる。
【0025】
(2)窪み13はピン穴11の中心に対して径方向外側に向かうに従って幅広としており、しかもその先端部分が二股に分岐しているので、形成されるエッジの長さを長くすることができる。したがって、氷雪面に接地した際の引っ掻き効果(エッジ効果)が得られる。
【0026】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0027】
前記実施形態では、1つのピン領域10に対する窪み13の数を3個としたが、この数に制限されることはなく、1、2又は4個以上とすることも可能である。
【0028】
前記実施形態では、窪み13に2つの分岐部13Bを有する構成としたが、分岐部13Bは3以上とすることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…トレッド部
2…センターリブ
3…傾斜溝
4…傾斜ブロック
5…縦溝
6…センターブロック
6a…第1センターブロック
6b…第2センターブロック
7…ショルダーブロック
7a…第1ショルダーブロック
7b…第2ショルダーブロック
8…第1サイプ
9…第2サイプ
10…ピン領域
11…ピン穴
12…スタッドピン
13…窪み
13A…扇状部
13B…分岐部
13a…内縁
13b…内側円弧縁
13c…外側縁
13d…外側円弧縁
13e…内側縁
13f…最外縁
13g…傾斜面
13h…平坦面