(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記憶部と制御部とを備え、構造上複数に区分可能な販売不動産を区分単位で原価計算する部屋別原価按分計算処理装置で実行させるための部屋別原価按分計算処理プログラムであって、
前記記憶部は、
前記販売不動産の区分毎の契約情報を記憶する契約マスタと、
前記販売不動産の区分毎の価格と面積とを記憶するプロジェクトマスタと、
前記販売不動産の区分毎の原価を算出する単位となる費目毎の按分方法区分や振替対象区分を設定する費目マスタと、
を含み、
前記制御部で実行させるための、
前記販売不動産に関して実際に支払った支払データを抽出する実績データ抽出手段と、
前記販売不動産の区分毎の契約情報を収集する契約情報収集ステップと、
前記販売不動産の区分毎の価格情報と面積情報とを収集する価格面積情報収集ステップと、
前記販売不動産の前記支払データと前記価格情報と前記面積情報とに基づいて区分毎の原価を按分して作成する原価作成ステップと、
を含むこと、
を特徴とする部屋別原価按分計算処理プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態により限定されるものではない。
【0015】
[1.概要]
従来の不動産開発を行うデベロッパーなどでは、販売不動産の原価計算を表計算ソフトや手計算などを用いて処理していた。そして、その計算結果を検算してから部屋別原価を作成する必要があるため、原価を把握するまでに時間がかかっていた。
【0016】
そこで、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置では、部屋の価格や面積によって、マンションなどの不動産全体に掛かる原価を全戸按分や残戸按分により自動計算するよう処理することができる。また、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置では、原価を算出する単位となる費目別に価格で按分するか面積で按分するかを設定可能としている。さらに、引渡後に発生した追加原価については、引渡済部屋も含めて全戸按分とするか、未引渡部屋のみの残戸按分とするかを制御可能としている。このように、不動産の原価計算において、原価を価格按分とするか面積按分とするかを制御する機能については、デベロッパーだからこそ管理できる点に着目したものである。
【0017】
[2.構成]
本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置の構成の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置の構成の一例を示すブロック図である。なお、本実施形態では、部屋別原価按分計算処理を行う対象不動産として、マンションなどの区分所有建物を用いて説明しているが、構造上複数に区分可能な販売不動産であれば適用が可能である。
【0018】
部屋別原価按分計算処理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、部屋別原価按分計算処理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0019】
部屋別原価按分計算処理装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。部屋別原価按分計算処理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0020】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線又は無線の通信回線を介して、部屋別原価按分計算処理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、部屋別原価按分計算処理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。
【0021】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、およびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。ここで、記憶部106は、契約マスタ106a、プロジェクトマスタ106b、費目マスタ106c等を備えている。
【0022】
契約マスタ106aは、構造上複数に区分可能な販売不動産の区分毎の契約情報を記憶している。この契約情報には、マンションの場合、各部屋の契約者の情報や引渡日などが含まれる。例えば、引渡日は、後述する原価計算において引渡後に発生した追加原価を引渡済部屋も含めて全戸按分とするか、未引渡の残戸按分とするかを制御する場合などに用いられる。
【0023】
プロジェクトマスタ106bは、販売不動産の区分毎の価格と面積とを記憶している。この価格には、マンションの各部屋の販売価格の他、その販売価格に含まれる土地価格と建物価格とがある。また、面積には、マンションの各部屋の占有面積と土地面積とがある。この価格と面積は、原価を算出する単位となる費目毎の原価按分方法区分で管理する場合に用いられる。例えば、原価按分方法区分の販売価格按分、土地価格按分、建物価格按分を用いて原価計算する場合は、プロジェクトマスタ106bの価格情報を用いる。また、原価按分方法区分の販売面積按分、土地面積按分を用いて原価計算する場合は、プロジェクトマスタ106bの面積情報を用いる。
【0024】
費目マスタ106cは、販売不動産の区分毎の原価を算出する単位となる費目毎の原価按分方法区分や原価振替対象区分を設定し、記憶している。原価按分方法区分や原価振替対象区分の設定は、マンションの場合の費目として土地購入費、土地造成費、建設工事費、広告宣伝費等があり、各費目の性質に応じて設定が行われる。本実施形態の特徴は、この費目マスタ106cにより、対象不動産の原価を価格按分あるいは面積按分とするか、また、全戸按分あるいは未引渡の残戸按分とするかはデベロッパー側で任意に設定できるようにした点にある。
【0025】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、およびマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0026】
制御部102は、部屋別原価按分計算処理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。ここで、制御部102は、機能概念的に、実績データ抽出手段としての実績データ抽出部102a、契約情報収集手段としての契約情報収集部102b、価格面積情報収集手段としての価格面積情報収集部102c、原価作成手段としての原価作成部102d、端数処理手段としての端数処理部102e、実データ更新手段としての実データ更新部102f等を備えている。
【0027】
実績データ抽出部102aは、販売不動産に関して実際に支払った支払データを抽出する。この支払データには、支払いを行った支払伝票番号、発生日、費目コード、金額等のデータがあり、原価按分未作成のデータを抽出する。なお、支払データの発生日が処理年月日以降のデータについては対象外とし、処理年月日までの実績データを抽出する。
【0028】
契約情報収集部102bは、販売不動産の区分毎の契約情報を収集する。この契約情報には、マンションの場合、各部屋の契約者情報や引渡日などのデータがある。引渡日は、原価計算において引渡後に発生した追加原価を引渡済部屋も含めて全戸按分とするか、未引渡の残戸按分とするかの算出の基準となる。処理年月日の時点で各部屋の引渡が終わっているか否かは、引渡フラグを用いて判別している。
【0029】
価格面積情報収集部102cは、販売不動産の区分毎の価格情報と面積情報とを収集する。この価格情報には、マンションの場合、部屋別の販売価格と、その内訳として土地価格と建物価格とがある。また、面積情報には、部屋別の専有面積と土地面積とがある。収集した部屋別の価格情報と面積情報は、部屋別の原価を算出する際に用いられる。
【0030】
原価作成部102dは、販売不動産の支払データと価格情報と面積情報とに基づいて区分毎の原価を按分して作成する。マンションの部屋別原価を作成する場合は、費目マスタ106cに設定されている原価按分方法区分や原価振替対象区分に基づいて、部屋別の原価を作成する。例えば、マンションの費目には、土地購入費、土地造成費、建設工事費、広告宣伝費等があり、各費目の性質に応じた原価按分方法区分や原価振替対象区分が設定されている。
【0031】
端数処理部102eは、原価作成手段によって販売不動産の区分毎の原価を作成する際に、生じた端数を販売不動産の区分の中で価格あるいは面積の少なくとも一方が最も大きい区分に寄せて処理する。これは、原価作成部102dにおける原価計算では、割算や掛算を用いて算出するため端数が生じ、この端数をどこかに戻す必要があるからである。本実施形態では、例えば端数があった場合、一番大きい販売価格(税抜)かつ一番大きい部屋番号の原価に端数を寄せるようにしている。これにより、販売価格も面積も一番大きい部屋が複数あったとしても、部屋番号で端数を寄せる部屋を特定することが可能となる。なお、端数処理の条件は、必ずしもこれに限定する必要はなく、状況に応じて適宜端数を寄せる部屋の条件を変えても良い。
【0032】
実データ更新部102fは、端数処理部102eによって端数処理を行った販売不動産の区分毎の原価を実際に使用するデータに更新する。これは、原価計算を行う処理年月日によって、原価を算出する対象となる部屋が異なってくるため、最終的には過去に算出された部屋の原価データを含むマンション全体の原価データに更新することで、実際に使用するデータとなるからである。
【0033】
[3.処理概要]
本実施形態の処理概要について、
図2〜
図6を参照して説明する。
図2は、部屋別原価按分計算処理に用いられる原価按分方法区分と原価振替対象区分の一例を示す図である。
図3は、部屋別原価按分計算処理を行う前提条件の一例を示す図である。
図4は、部屋の販売価格で全戸按分計算処理を行う場合の一例を示す図である。
図5は、土地原価は土地価格で建物原価は建物価格で全戸按分計算処理を行う場合の一例を示す図である。
図6は、土地原価は土地面積で建物原価は占有面積で全戸按分計算処理を行う場合の一例を示す図である。
【0034】
マンション販売を行うデベロッパーは、販売住戸を契約者に引渡した際に原価計上を行うが、マンションの原価は引渡した戸数に応じて計算を行っている。また、マンション原価については、土地にかかる原価と建物にかかる原価に分けられ、引渡時に土地原価は土地販売価格、建物原価は建物販売価格で原価計上してほしいという要望が存在する。さらに、販売後に追加原価が発生した場合は、全戸で按分するのか、未引渡の残戸で按分するのかがユーザ毎に異なっている。
【0035】
このため、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100は、マンション全体の原価を部屋別の販売価格や面積を使って按分する場合、それらを管理しているデベロッパーが最も適していることに着目した。特に、部屋別原価按分計算処理装置100は、原価を算出する単位となる費目毎に販売価格で按分するか面積で按分するかを設定可能とし、引渡後に発生した追加原価については引渡済部屋を含む全戸按分とするか、未引渡部屋のみの残戸按分とするかが制御できるように、汎用設定を可能としている。
【0036】
[仕組み]
本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100は、原価を算出する単位となる費目毎に原価按分方法区分や原価振替対象区分の管理を行い、これらを組み合わせることによって原価按分計算が行われる。例えば、原価按分方法区分は、
図2に示すように、0〜4までの各区分値に対し、それぞれ“販売価格按分”、“土地価格按分”、“建物価格按分”、“販売面積按分”、“土地面積按分”という区分名があり、それに対する定義付けが行われている。また、原価振替対象区分は、
図2に示すように、0〜1までの各区分値に対し、それぞれ“未引渡の部屋のみで按分”、“全部屋で按分”という区分名があり、それに対する定義付けが行われている。そして、それぞれの区分値での計算式は、
図2に示すように、上記した原価按分方法区分と原価振替対象区分の組み合わせにより、部屋別原価金額を算出する計算式が決まってくる。
【0037】
[前提条件]
例えば、サンプルマンションにおける部屋別原価金額を算出する場合は、
図3に示すように、サンプルマンションの部屋別価格および専有面積、発生原価(2017年3月までの残高)、追加発生原価(2017年4月)、および、引渡スケジュールなどの前提条件が必要となる。
【0038】
[部屋販売価格で全戸按分する場合の例1]
図3の前提条件に基づいて、部屋販売価格で全戸按分する場合は、
図4に示すように費目マスタの設定を行う。費目名としては、土地購入費、土地造成費、建設工事費、広告宣伝費があり、各費目名に対して原価按分方法区分と原価振替対象区分とを設定する。
図4の場合は、部屋販売価格で全戸按分するため、原価按分方法区分は全て“0:販売価格”で按分する設定となる。また、原価振替対象区分は、土地購入費、土地造成費、建設工事費については追加発生原価が生じても“1:全部屋で按分”するが、広告宣伝費については、追加の宣伝広告費は全戸按分に適さないため、“0:未引渡の部屋のみで按分”するように設定される。
【0039】
この費目マスタの設定内容に基づいて、
図4に示す各部屋の原価金額(2017年3月)の計算式に従って原価金額を計算すると、各部屋における費目コード毎の原価金額が算出される。なお、端数処理については、ここでは部屋別に原価を割り振った後、端数がある場合は、一番大きい販売価格(税抜)かつ一番大きい部屋番号に寄せるようにしている。端数処理の具体例については、
図12および
図18を用いて後述する。
【0040】
また、
図3に示すように、2017年4月に追加発生原価が生じたため、この原価金額の計算については、
図4の各部屋の原価金額(2017年4月)の計算式に基づいて、各部屋における費目コード毎の原価金額が算出される。追加発生した建設工事費については、“1:全部屋で按分”される。追加発生した広告宣伝費については、“0:未引渡の部屋のみで按分”する設定のため、未引渡の部屋番号の101と102について広告宣伝費の按分が行われる。
【0041】
[土地原価は土地価格、建物原価は建物価格で全戸按分する場合の例2]
図3の前提条件に基づいて、土地原価は土地価格、建物原価は建物価格で全戸按分する場合は、
図5に示すように費目マスタの設定を行う。各費目名に対して原価按分方法区分と原価振替対象区分とを設定する。
図5の場合は、土地原価は土地価格で按分するため、土地購入費と土地造成費は“1:土地価格按分”となり、建設工事費と広告宣伝費は“2:建物価格按分”となる。また、原価振替対象区分は、土地購入費、土地造成費、建設工事費については追加発生原価が生じても“1:全部屋で按分”するが、広告宣伝費については、追加の宣伝広告費は全戸按分に適さないため、“0:未引渡の部屋のみで按分”する。
【0042】
この費目マスタの設定内容に基づいて、
図5に示す各部屋の原価金額(2017年3月)の計算式に従って原価金額を計算すると、各部屋における費目コード毎の原価金額が算出される。また、端数処理についても
図4と同様であって、部屋別に原価を割り振った後、端数がある場合は、一番大きい販売価格(税抜)かつ一番大きい部屋番号に寄せるようにする。
【0043】
また、2017年4月に追加発生原価が生じた場合の原価金額の計算は、
図5の各部屋の原価金額(2017年4月)の計算式に基づいて、各部屋における費目コード毎の原価金額を算出する。追加発生した建設工事費については、“1:全部屋で按分”する。追加発生した広告宣伝費については、“0:未引渡の部屋のみで按分”する設定のため、未引渡の部屋番号の101と102について広告宣伝費の按分が行われる。
【0044】
[土地原価は土地面積、建物原価は専有面積で全戸按分する場合の例3]
図3の前提条件に基づいて、土地原価は土地面積、建物原価は専有面積で全戸按分する場合は、
図6に示すように費目マスタの設定を行う。各費目名に対して原価按分方法区分と原価振替対象区分とを設定する。
図6の場合は、土地原価は土地面積で按分するため、土地購入費と土地造成費は“4:土地面積按分”となり、建設工事費と広告宣伝費は“3:販売面積按分”となる。また、原価振替対象区分は、土地購入費、土地造成費、建設工事費については追加発生原価が生じても“1:全部屋で按分”するが、広告宣伝費については、追加の宣伝広告費は全戸按分に適さないため、“0:未引渡の部屋のみで按分”する。
【0045】
この費目マスタの設定内容に基づいて、
図6に示す各部屋の原価金額(2017年3月)の計算式に従って原価金額を計算すると、各部屋における費目コード毎の原価金額が算出される。また、端数処理については、
図4と同様に部屋別に原価を割り振った後、端数がある場合は、一番大きい販売価格(税抜)かつ一番大きい部屋番号に寄せるようにする。
【0046】
また、2017年4月に追加発生原価が生じた場合の原価金額の計算は、
図6の各部屋の原価金額(2017年4月)の計算式に基づいて、各部屋における費目コード毎の原価金額を算出する。追加発生した建設工事費については、“1:全部屋で按分”する。追加発生した広告宣伝費については、“0:未引渡の部屋のみで按分”する設定のため、未引渡の部屋番号の101と102について広告宣伝費の按分が行われる。
【0047】
[4.具体例]
本実施形態の具体例について、
図7〜
図19を参照して、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100の処理の一例について説明する。
図7は、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置における処理動作の一例を示すフローチャートである。
図8は、追加原価発生前の実績データ抽出処理の一例を示す図である。
図9は、追加原価発生前の契約情報収集処理の一例を示す図である。
図10は、追加原価発生前の部屋別の価格・面積情報収集処理の一例を示す図である。
図11は、追加原価発生前の発生明細ワークとレートワークから費目単位で各部屋の原価を作成する処理の一例を示す図である。
図12は、追加原価発生前の端数処理の一例を示す図である。
図13は、追加原価発生前の部屋別原価ワークを実データに更新する処理の一例を示す図である。
図14は、追加原価発生後の実績データ抽出処理の一例を示す図である。
図15は、追加原価発生後の契約情報収集処理の一例を示す図である。
図16は、追加原価発生後の部屋別の価格・面積情報収集処理の一例を示す図である。
図17は、追加原価発生後の発生明細ワークとレートワークから費目単位で各部屋の原価を作成する処理の一例を示す図である。
図18は、追加原価発生後の端数処理の一例を示す図である。
図19は、追加原価発生後の部屋別原価ワークを実データに更新する処理の一例を示す図である。
【0048】
[処理の流れ]
本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100の実績データ抽出部102aは、
図7に示すように、実績データとしての支払データおよび部屋別原価按分作成履歴明細データに基づいて、原価按分未作成のデータ(実績発生明細ワーク)を抽出する(ステップSA−1)。
【0049】
続いて、契約情報収集部102bは、契約マスタ106aで管理している各部屋の契約者と引渡日に関する契約情報を収集し(ステップSA−2)、処理年月日の時点における引渡の有無を引渡フラグで判別できるようにする(契約ワーク)。
【0050】
さらに、価格面積情報収集部102cは、部屋別の価格と面積情報とをプロジェクトマスタ106bから収集し(ステップSA−3)、各部屋の原価計算に必要な部屋別レートワークを作成する。
【0051】
そして、原価作成部102dは、上記した費目マスタ106c、実績発生明細ワーク、部屋別レートワーク、部屋別レートワーク、および、過去に引渡しがあって原価按分処理済の部屋を管理する部屋別原価振替データを用いて、各部屋の部屋別原価ワークを作成する(ステップSA−4)。
【0052】
端数処理部102eは、上記作成された部屋別原価ワーク、部屋別レートワーク、実績発生明細ワークに基づいて端数処理を実施し(ステップSA−5)、端数処理後の部屋別原価ワークを作成する。つまり、部屋別に原価を割り振った後、端数が生じると、本実施形態では、一番販売価格(税抜)が大きく、かつ、一番大きい部屋番号に寄せるようにしている。
【0053】
実データ更新部102fは、端数処理を行った部屋別原価ワークに処理年月日を追加し、実際に使用する部屋別原価データとして更新する(ステップSA−6)。また、上記の実績発生明細ワークにも処理年月日を追加することにより、部屋別原価按分作成履歴明細データとして更新する。さらに、上記した契約ワークにも、引渡済みを示す引渡フラグが「1」の部屋番号のみを抽出し、部屋別原価振替データとして更新する。
【0054】
このように、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100は、上記のような流れによって部屋別原価の按分計算処理が行われる。以下では、処理年月日が2017年3月31日の場合と、2017年4月30日に実施した場合とに分けて、それぞれの処理過程と処理結果を具体的に説明する。
【0055】
[処理年月日:2017年3月31日に実施した場合]
実績データ抽出処理(ステップSA−1)では、
図8に示すように、実績データ抽出部102aは、支払データと部屋別原価按分作成履歴明細データとに基づいて、原価按分未作成のデータを抽出する。つまり、3月31日の処理年月日までに発生した支払伝票番号は、00001〜00004までで、支払伝票番号の00005と00006については4月1日以降に発生するため、今回の処理の対象外となる。このため、処理年月日までに発生した原価は、実績発生明細ワークとして抽出される。なお、部屋別原価按分作成履歴明細データについては、過去に按分作成処理を行っていないため該当データが無く、空欄のままである。
【0056】
契約情報収集処理(ステップSA−2)では、
図9に示すように、契約情報収集部102bは、契約マスタ106aで管理している各部屋の契約番号、部屋番号、契約者名、引渡日に基づいて、処理年月日の2017年3月31日の時点での引渡の有無を引渡フラグで判別できるようにした契約ワークを作成する。引渡フラグが「1」の場合は、処理年月日までに引渡しが済んだ部屋を示し、引渡フラグが「0」の場合は、処理年月日の時点で未引渡しの部屋を示している。
【0057】
部屋別の価格・面積情報の収集処理(ステップSA−3)では、
図10に示すように、価格面積情報収集部102cは、プロジェクトマスタ106bのプロジェクトマスタ_価格とプロジェクトマスタ_面積と部屋別原価振替データとに基づいて、部屋別の販売価格(税抜)、土地価格、建物価格、引渡済販売価格(税抜)、引渡済土地価格、引渡済建物価格、合計販売価格(税抜)、合計土地価格、合計建物価格、専有面積、土地面積、引渡済専有面積、引渡済土地面積、合計専有面積、合計土地面積などのデータを収集した部屋別レートワークを作成する。ここでは、過去に引渡があった部屋でかつ原価按分処理済みのデータを管理する部屋別原価振替データは、該当データが無い。このため、部屋別レートワークにおける引渡済販売価格(税抜)、引渡済土地価格、引渡済建物価格と引渡済専有面積、引渡済土地面積のデータが無いことから、全て「0」と表示される。
【0058】
実績発生明細ワークと部屋別レートワークから各部屋の原価を作成する処理(ステップSA−4)では、
図11に示すように、原価作成部102dは、費目マスタ106cの設定に基づいて、上記作成した実績発生明細ワークと部屋別レートワークから、部屋別の費目コード毎の原価を算出した部屋別原価ワークを作成する。その場合の計算ロジックは、
図11に示すように、費目マスタの設定に基づいており、費目名が土地購入費と土地造成費については、原価按分方法区分が土地価格按分であり、原価振替対象区分が全戸で按分する。また、費目名が建設工事費については、原価按分方法区分が建物価格按分であり、原価振替対象区分が全戸で按分する。さらに、費目名が広告宣伝費については、原価按分方法区分が建物価格按分であり、原価振替対象区分が未引渡の部屋のみで按分する。なお、ここでは、費目マスタの原価振替対象区分が“0:未引渡の部屋のみで按分”となっているが、部屋別原価振替データにデータが無いため、全部屋番号が対象となる。
【0059】
端数処理の実施(ステップSA−5)では、
図12に示すように、端数処理部102eは、部屋別に原価を割り振った部屋別原価ワークの作成時に端数が生じた場合、本実施形態では一番大きい販売価格(税抜)で、かつ、一番大きい部屋番号に寄せるようにする。具体的には、
図11の部屋別レートワークで見ると、販売価格(税抜)が一番高く、かつ、一番大きい部屋番号は203(¥4,000,000)である。このため、生じた端数金額は、
図12に示す部屋別原価ワークの部屋番号203に全て寄せて処理される。具体的な端数金額は、
図12の計算ロジックに示すように、土地購入費が“¥4”、土地造成費が“¥2”、建設工事費が“¥2”、広告宣伝費が“¥1”となり、部屋番号203のそれぞれの原価に加算され、端数処理後の値となる。
【0060】
部屋別原価ワークを実データに更新する処理(ステップSA−6)では、
図13に示すように、実データ更新部102fは、端数処理を行った部屋別原価ワークに処理年月日を追加し、実際に使用する部屋別原価データとして更新する。また、上記した実績発生明細ワークに処理年月日を追加し、部屋別原価按分作成を行った履歴明細データとして更新する。さらに、上記した契約ワークの引渡フラグが「1」の引渡済みの部屋番号を抽出し、部屋別原価振替データとして更新する。
【0061】
このように、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100は、2017年3月31日に部屋別の原価按分計算処理を実施する際に、費目マスタ106cの設定に応じて、価格按分にするか面積按分にするか、また、品目に応じて全戸按分にするか未引渡の残戸按分にするかなどを容易に制御可能となり、迅速に原価を把握できるようになった。
【0062】
[処理年月日:2017年4月30日に実施した場合]
上記した2017年3月31日に部屋別原価按分計算処理を行い、その1ヶ月後の2017年4月30日に再び部屋別原価按分計算処理を行う場合、前回の処理年月日には発生していなかった追加原価が発生することがあり、その場合の原価をどのように按分するかが問題となる。2017年4月30日に行った部屋別原価按分計算処理について以下説明する。
【0063】
実績データ抽出処理(ステップSA−1)では、
図11に示すように、実績データ抽出部102aは、支払データと部屋別原価按分作成履歴明細データとに基づいて、原価按分未作成のデータを抽出する。つまり、今回対象となるデータは、支払データの支払伝票番号のうち00005と00006となる。部屋別原価按分作成履歴明細データに記載されているデータは、
図14に示すように、2017年3月31日に既に按分処理を行っているため対象データに含めない。従って、2017年3月31日〜2017年4月30日までに発生した原価は、実績発生明細ワークとして抽出される。
【0064】
契約情報収集処理(ステップSA−2)では、
図15に示すように、契約情報収集部102bは、契約マスタ106aで管理している各部屋の契約番号、部屋番号、契約者名、引渡日に基づいて、処理年月日の2017年4月30日の時点での引渡の有無を引渡フラグで判別できるようにした契約ワークを作成する。ここでは、既に引渡済みの部屋番号103、201、202、203に加えて、2017年4月10日に部屋番号102の引渡しが行われたため、
図15に示すように、部屋番号102の引渡フラグも「1」となる。部屋番号101は、引渡日が未定であるため、引渡フラグは「0」のままとなる。
【0065】
部屋別の価格・面積情報の収集処理(ステップSA−3)では、
図16に示すように、価格面積情報収集部102cは、プロジェクトマスタ106bのプロジェクトマスタ_価格とプロジェクトマスタ_面積と部屋別原価振替データとに基づいて、部屋別の販売価格(税抜)、土地価格、建物価格、引渡済販売価格(税抜)、引渡済土地価格、引渡済建物価格、合計販売価格(税抜)、合計土地価格、合計建物価格、専有面積、土地面積、引渡済専有面積、引渡済土地面積、合計専有面積、合計土地面積などのデータを収集した部屋別レートワークを作成する。ここでは、過去に引渡済みの部屋番号データ(103、201、202、203)が部屋別原価振替データとして残っている。このため、部屋別レートワークにおける引渡済販売価格(税抜)、引渡済土地価格、引渡済建物価格、引渡済専有面積、引渡済土地面積のデータには、それぞれ3月に引き渡した分の合計価格や合計面積が入力される。
【0066】
実績発生明細ワークと部屋別レートワークから各部屋の原価を作成する処理(ステップSA−4)では、
図17に示すように、原価作成部102dは、費目マスタ106cの設定に基づいて、上記作成した実績発生明細ワークと部屋別レートワークから、部屋別の費目コード毎の原価を算出した部屋別原価ワークを作成する。ここでは、2017年4月1日に建設工事費が発生し、2017年4月10日に広告宣伝費が発生しているため、部屋別原価ワークもこの費目についてのみ作成される。その場合の計算ロジックは、
図17に示すように、費目マスタの設定に基づいており、費目名が建設工事費については、原価按分方法区分が建物価格按分であり、原価振替対象区分が全戸で按分する。さらに、費目名が広告宣伝費については、原価按分方法区分が建物価格按分であり、原価振替対象区分が未引渡の部屋のみで按分する。このため、広告宣伝費は、
図17に示す部屋別原価振替データにデータの無い部屋番号(101と102)のみで按分処理される。
【0067】
端数処理の実施(ステップSA−5)では、
図18に示すように、端数処理部102eは、部屋別に原価を割り振った部屋別原価ワークの作成時に端数が生じた場合、本実施形態では一番大きい販売価格(税抜)で、かつ、一番大きい部屋番号に寄せるようにする。今回の場合では、
図18の部屋別原価ワークで見ると、建設工事費は部屋番号203が一番大きく、広告宣伝費は部屋番号102が一番大きい販売価格となるので、端数金額はそれぞれの部屋番号に寄せるように処理する。具体的な端数金額は、
図18の計算ロジックに示すように、広告宣伝費が“¥1”となるので部屋番号102の原価に加算され、建設工事費が“¥2”となるので部屋番号203の原価に加算されることで、端数処理後の値となる。
【0068】
部屋別原価ワークを実データに更新する処理(ステップSA−6)では、
図19に示すように、実データ更新部102fは、端数処理を行った部屋別原価ワークに処理年月日を追加し、実際に使用する部屋別原価データとして更新する。また、上記した実績発生明細ワークに処理年月日を追加し、部屋別原価按分作成を行った履歴明細データとして今回原価按分した2行のデータを原価按分済みとしてデータを更新する。さらに、上記した契約ワークの引渡フラグが「1」の引渡済みの部屋番号を抽出し、部屋別原価振替データとして今回原価按分した部屋番号102のデータを原価按分済みとしてデータを更新する。
【0069】
このように、本実施形態に係る部屋別原価按分計算処理装置100は、引き渡し後に発生した追加原価についても引渡済部屋も含めて全戸按分とするか、未引渡部屋のみの残戸按分とするかを、費目マスタ106cの設定によって容易に制御可能となり、迅速に原価が把握できるようになった。
【0070】
なお、上記実施形態では、原価按分計算処理の対象をマンションなどの区分所有建物を用いて説明したが、本発明は必ずしも区分所有建物に限定されるものではなく、構造上複数に区分可能な販売不動産を区分単位で原価計算する場合であれば、適用可能である。
【0071】
[5.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0072】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0073】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0074】
また、部屋別原価按分計算処理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0075】
例えば、部屋別原価按分計算処理装置100が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて部屋別原価按分計算処理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部102を構成する。
【0076】
また、このコンピュータプログラムは、部屋別原価按分計算処理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0077】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto−Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu−ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0078】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0079】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0080】
また、部屋別原価按分計算処理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、部屋別原価按分計算処理装置100は、当該情報処理装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0081】
さらに、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能付加に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。