特許第6986426号(P6986426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986426
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/20 20060101AFI20211213BHJP
   F01D 11/08 20060101ALI20211213BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20211213BHJP
   F16J 15/44 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F01D5/20
   F01D11/08
   F02C7/28 A
   F16J15/44 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-229357(P2017-229357)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-100204(P2019-100204A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】椙下 秀昭
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−321721(JP,A)
【文献】 特開昭50−128008(JP,A)
【文献】 特開2003−106107(JP,A)
【文献】 特開2014−066134(JP,A)
【文献】 特開2013−181543(JP,A)
【文献】 特開2011−202601(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/091599(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/026468(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0017072(US,A1)
【文献】 米国特許第5997249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/12− 5/28, 9/02− 9/04,
11/00−11/24,25/04−25/06
F02C 7/28
F16J 15/32−15/3296,15/44−15/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転軸と、
該回転軸から径方向外側に向かって延びる翼本体、および該翼本体の先端に設けられたシュラウドを有する動翼と、
前記回転軸及び前記動翼を外周側から囲うケーシングと、
前記ケーシングの内面に設けられて、前記シュラウドの外周面に対向するシール部と、
を備え、
前記シュラウドの外周面が、
前記シール部が対向するシール対向領域よりも上流側から該シール対向領域内にわたって配置されて、上流側から下流側に向かうに従って前記回転軸の回転方向後方側に向かって延びる複数の溝部が形成された溝形成領域と、
前記シール対向領域における前記溝形成領域の下流側に配置され、前記軸線を中心とした円筒面状をなす平滑領域と、
を有し、
前記シール対向領域における前記平滑領域の下流側に配置され、上流側から下流側に向かうに従って前記回転軸の回転方向後方側に向かって延びる複数の誘導溝部が形成された誘導溝形成領域を有し、
前記シール部は、前記ケーシングの内面のうち、前記溝形成領域及び前記平滑領域に対向する領域に設けられたハニカムシールと、前記誘導溝形成領域に対向する領域に設けられたシールフィンを有するタービン。
【請求項2】
前記溝部の深さは、前記シール部と前記シュラウドの外周面との間の離間寸法よりも大きい請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記溝部の深さは、上流側から下流側に向かうに従って次第に小さくなる請求項1又は2に記載のタービン。
【請求項4】
前記シールフィンは、前記ケーシングの内面から前記シュラウドの外周面に向かって延びるとともに、前記軸線方向に間隔をあけて複数が配列されている請求項1から3のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項5】
前記ハニカムシールは、前記ケーシングの内面に設けられ、前記軸線に対する径方向に延びる複数の孔部を有する請求項1から3のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項6】
前記誘導溝部の深さは、上流側から下流側に向かうに従って次第に大きくなる請求項1から5のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項7】
前記軸線に対する径方向から見て、前記誘導溝部が前記軸線に対してなす角度は、前記溝部が前記軸線に対してなす角度と異なっている請求項1から6のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項8】
前記平滑領域に設けられ、前記軸線に対する周方向に延びるとともに、該平滑領域から前記ハニカムシールに向かって突出するレール部を有する請求項1から7のいずれか一項に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、軸線回りに回転するロータと、ロータに取り付けられた複数の動翼と、ロータ及び動翼を外側から覆うケーシングと、ケーシングの内面に取り付けられた複数の静翼と、を備えている。軸線方向の一方側から高温高圧の蒸気が流入することで、動翼にエネルギーが付加され、回転軸は回転する。この回転エネルギーによって、蒸気タービンに接続された発電機等が駆動される。
【0003】
ここで、上記のような蒸気タービンでは、ロータの円滑な回転を実現するため、動翼の先端部(シュラウド)とケーシングの内周面との間には、一定のクリアランスが設けられることが一般的である。しかしながら、当該クリアランスを流通する蒸気は、動翼や静翼に衝突することなく下流側に流れ去ってしまうことから、ロータの回転駆動に際して何ら寄与するところがない。加えて、クリアランスを流通する蒸気は、スワール成分(周方向の速度成分)を含んでいる。このようなスワール成分によって、クリアランス内部における圧力分布が不均一化になり、その結果としてロータに振動を生じる可能性がある。したがって、スワール成分を低減することが可能な技術が望まれている。
【0004】
このような技術の一例として、例えば下記特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1には、シュラウドカバーの上流側端部に、旋回流(スワール流れ)を遮る旋回防止板を設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5147885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された構成では、シュラウドカバーの上流側におけるスワール成分は低減できるものの、シュラウドカバーの外周面とケーシングの内周面との間のクリアランスには依然として蒸気の漏れ流れが流れ込んでしまう。その結果、この漏れ流れが再びスワール流れを形成してしまう可能性がある。即ち、上記特許文献1に記載された装置には改善の余地がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、スワール成分をさらに低減することで、軸振動を抑制することが可能なタービン提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、タービンは、軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から径方向外側に向かって延びる翼本体、および該翼本体の先端に設けられたシュラウドを有する動翼と、前記回転軸及び前記動翼を外周側から囲うケーシングと、前記ケーシングの内面に設けられて、前記シュラウドの外周面に対向するシール部と、を備え、前記シュラウドの外周面が、前記シール部が対向するシール対向領域よりも上流側から該シール対向領域内にわたって配置されて、上流側から下流側に向かうに従って前記回転軸の回転方向後方側に向かって延びる複数の溝部が形成された溝形成領域と、前記シール対向領域における前記溝形成領域の下流側に配置され、前記軸線を中心とした円筒面状をなす平滑領域と、を有し、前記シール対向領域における前記平滑領域の下流側に配置され、上流側から下流側に向かうに従って前記回転軸の回転方向後方側に向かって延びる複数の誘導溝部が形成された誘導溝形成領域を有し、前記シール部は、前記ケーシングの内面のうち、前記溝形成領域及び前記平滑領域に対向する領域に設けられたハニカムシールと、前記誘導溝形成領域に対向する領域に設けられたシールフィンを有する
【0009】
この構成によれば、溝形成領域に形成された溝部によって、上流側から流れてきた流体を転向することができる。ここで、上流側から流れてくる流体は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸の回転方向前方側から後方側に向かうスワール成分を含んでいる。一方で、溝部は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸の回転方前方側から後方側に向かって延びている。このため、溝部内に流れ込んだスワール成分は当該溝部に案内されることで転向される。これにより、スワール成分が低減され、シュラウドの外周面における圧力分布の偏りを低減することができる。
さらに、この構成によれば、平滑領域の下流側に、誘導溝形成領域が形成されている。これにより、平滑領域を通じて上流側から流れてきた流体を転向することができる。特に、誘導溝部は、上流側から下流側に向かうに従って回転軸の回転方向前方側から後方側に向かって延びている。したがって、誘導溝部を通過した流体は、翼本体側を流れる流体の流れに沿って流れることになる。これにより、動翼の出口付近における混合損失を低減することができる。
加えて、この構成によれば、ケーシングの内面のうち、溝形成領域及び平滑領域に対向する領域にはハニカムシールが設けられ、誘導溝形成領域に対向する領域にはシールフィンが設けられている。これにより、溝形成領域及び平滑領域に対向する領域では、スワール流れを効率的に低減することができる。一方で、誘導溝形成領域に対向する領域では、上流側の溝部によって転向されることで、当初のスワール流れとは異なる方向に流れる周方向流れが生じている。誘導溝形成領域に対向する領域では、ハニカムシールではなく、シールフィンが設けられていることから、この周方向流れは、抑止されることなく、動翼の出口に向かって流れる。これにより、動翼の出口付近における混合損失を積極的に低減することができる。
【0010】
さらに、溝形成領域の下流側には、平滑領域が形成されている。これにより、当該平滑領域におけるシュラウドの外周面とシール部との間のクリアランスを小さくすることができる。したがって、当該クリアランスを通じた軸線方向における流体の流れを低減することができる。したがって、タービンの性能を向上させることができる。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、前記溝部の深さは、前記シール部と前記シュラウドの外周面との間の離間寸法よりも大きくてもよい。
【0012】
この構成によれば、溝部の深さが、シール部とシュラウドの外周面との間の離間寸法よりも大きいことから、上流側から流れてきた流体の大部分は、シール部とシュラウドの外周面との間ではなく、溝部に流れ込む。これにより、漏れ流れを低減するとともに、溝部によって効率的にスワール成分を低減することができる。
【0013】
本発明の第三の態様によれば、前記溝部の深さは、上流側から下流側に向かうに従って次第に小さくなってもよい。
【0014】
この構成によれば、溝部の深さが、上流側から下流側に向かうに従って次第に小さくなる。即ち、上流側では溝部内に流れ込んだスワール成分は当該溝部に案内されることで転向されるためスワール成分の低減が期待でき、溝部の下流側では溝部の深さが一定である場合に比べて溝部の深さが浅くなるため、流体が溝部を経由した漏れ流れを低減することができる。これにより、タービンの性能をさらに向上させることができる。
【0015】
本発明の第四の態様によれば、前記シールフィンは、前記ケーシングの内面から前記シュラウドの外周面に向かって延びるとともに、前記軸線方向に間隔をあけて複数が配列されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、シールフィンを用いることによって、シール部としてのシール性能を向上させることができる。特に、複数のシールフィンが軸線方向に間隔をあけて配列されていることから、軸線方向における流体の漏れ流れをさらに低減することができる。
【0017】
本発明の第五の態様によれば、前記ハニカムシールは、前記ケーシングの内面に設けられ、前記軸線に対する径方向に延びる複数の孔部を有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、ハニカムシールを用いることによって、シール部としてのシール性能を向上させることができる。特に、ハニカムシールに形成された複数の孔部によって効率的に流体を捕捉することができるため、軸線方向における流体の漏れ流れをさらに低減することができる。
【0021】
本発明の第の態様によれば、前記誘導溝部の深さは、上流側から下流側に向かうに従って次第に大きくなってもよい。
【0022】
この構成によれば、誘導溝部の深さが、上流側から下流側に向かうに従って次第に大きくなる。即ち、溝部の深さが一定である場合に比べて、流体が誘導溝部内に滞留する可能性を低減することができる。これにより、タービンの性能をさらに向上させることができる。
【0023】
本発明の第の態様によれば、前記軸線に対する径方向から見て、前記誘導溝部が前記軸線に対してなす角度は、前記溝部が前記軸線に対してなす角度と異なっていてもよい。
【0024】
この構成によれば、翼本体の形状や、スワール流れの方向に応じて、溝部及び誘導溝部が軸線に対してなす角度を適切に設定することができる。これにより、スワール流れを効率的に低減することができる。
【0025】
本発明の第の態様によれば、前記シール部は、前記ケーシングの内面のうち、前記溝形成領域及び前記平滑領域に対向する領域に設けられたハニカムシールと、前記誘導溝形成領域に対向する領域に設けられたシールフィンを有してもよい。
【0026】
この構成によれば、ケーシングの内面のうち、溝形成領域及び平滑領域に対向する領域にはハニカムシールが設けられ、誘導溝形成領域に対向する領域にはシールフィンが設けられている。これにより、溝形成領域及び平滑領域に対向する領域では、スワール流れを効率的に低減することができる。一方で、誘導溝形成領域に対向する領域では、上流側の溝部によって転向されることで、当初のスワール流れとは異なる方向に流れる周方向流れが生じている。誘導溝形成領域に対向する領域では、ハニカムシールではなく、シールフィンが設けられていることから、この周方向流れは、抑止されることなく、動翼の出口に向かって流れる。これにより、動翼の出口付近における混合損失を積極的に低減することができる。
【0027】
本発明の第十の態様によれば、タービンは、前記平滑領域に設けられ、前記軸線に対する周方向に延びるとともに、該平滑領域から前記ハニカムシールに向かって突出するレール部を有してもよい。
【0028】
この構成によれば、レール部がハニカムシールに向かって突出していることから、シュラウドの外周面とハニカムシールとの隙間をさらに小さくすることができる。これにより、軸線方向の漏れ流れをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、スワール成分をさらに低減することで、軸振動を抑制することが可能なタービン提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第一実施形態に係る蒸気タービンの構成を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るシュラウドを径方向外側から見た図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るシュラウドを径方向外側から見た図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大図である。
図7】本発明の第三実施形態に係るシュラウドを径方向外側から見た図である。
図8】本発明の第四実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大図である。
図9】本発明の各実施形態に係る蒸気タービンの変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン100(タービン)は、軸線O回りに回転する回転軸1と、回転軸1に取り付けられた複数の動翼2と、回転軸1及び動翼2を外周側から覆うケーシング3と、ケーシング3の内周面(内面)に設けられたシール部4(図2参照)と、を備えている。
【0042】
回転軸1は、軸線Oに沿って延びる円柱状をなしている。回転軸1の軸線O方向における全領域のうち、ケーシング3で覆われる部分は、他の部分に比べて径寸法が大きい。回転軸1の軸端は、ジャーナル軸受5、及びスラスト軸受6によって支持されている。ジャーナル軸受5は、回転軸1における軸線Oに対する径方向への荷重を支持する。ジャーナル軸受5は、回転軸1の両端部に1つずつ設けられている。スラスト軸受6は、回転軸1における軸線O方向への荷重を支持する。スラスト軸受6は、回転軸1の軸線O方向一方側に1つのみ設けられている。
【0043】
回転軸1の外周面上には、軸線O方向に間隔をあけて、複数の動翼列20が設けられている。各動翼列20は、軸線Oに対する周方向に配列された複数の動翼2を有している。動翼2は、回転軸1の外周面に設けられたプラットフォーム21から径方向外側に向かって突出している。動翼2は、翼型の断面形状を有する翼本体22と、翼本体22の先端(径方向外側の端部)に取り付けられた動翼シュラウド23(シュラウド)と、を有している。
【0044】
ケーシング3は、軸線Oを中心とする略筒状をなしている。ケーシング3の軸線O方向一方側の端部には、外部から供給された作動流体(蒸気S)を取り込む蒸気供給管31が設けられている。ケーシング3の軸線O方向他方側の端部には、蒸気Sを排出する蒸気排出管32が設けられている。以降の説明では、蒸気排出管32から見て蒸気供給管31が位置する側を上流側と呼び、蒸気供給管31から見て蒸気排出管32が位置する側を下流側と呼ぶ。
【0045】
ケーシング3の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて、複数の静翼列33が設けられている。上述の動翼列20と静翼列33は、軸線O方向に交互に配列されている。言い換えると、各動翼列20は、互いに隣接する一対の静翼列33同士の間に入り込むようにして配置されている。各静翼列33は、軸線Oに対する周方向に配列された複数の静翼34を有している。各静翼34は、動翼2とは異なる方向に延びる翼型断面を有している。静翼34の径方向内側の端部には、静翼シュラウド35が設けられている。
【0046】
ケーシング3の内部において、静翼34と動翼2が配列された領域は、蒸気Sが流通する主流路F1を形成する。さらに、ケーシング3の内周面と動翼シュラウド23との間には空間が形成されており、この空間はキャビティ50とされている。蒸気Sは、上流側の蒸気供給管31を介して、上述のように構成された蒸気タービン100に供給される。その後、回転軸1の回転に伴って静翼34と動翼2の列を通過し、やがて下流側の蒸気排出管32を通じて後続の装置(不図示)に向かって排出される。ここで、静翼34と動翼2の列を通過する際、前述のキャビティ50にも蒸気Sは流入する。
【0047】
シール部4は、キャビティ50に流入する蒸気の流れを低減するために設けられる。図2に示すように、本実施形態に係るシール部4は、ケーシング3の内周面から径方向内側に向かって突出する複数のシールフィン41である。シールフィン41は板面が軸線O方向を向く板状をなしている。キャビティ50内には、軸線O方向に間隔をあけて複数のシールフィン41が配列されている。各シールフィン41は、動翼シュラウド23の外周面に、わずかな隙間(クリアランス)をあけて対向している。動翼シュラウド23の外周面のうち、シールフィン41と対向する領域は、シール対向領域A1とされている。
【0048】
次に、本実施形態に係る動翼2の詳細な構成について、図2図3を参照して説明する。図2に示すように、動翼2の翼本体22は、回転軸1の外周面上に設けられたプラットフォーム21によって支持されている。翼本体22は、上述の主流路F1上に露出している。図3に示すように、翼本体22は、径方向から見て翼型の断面形状を有している。翼本体22は、径方向外側から見て、回転軸1の回転方向R前方側に向かって突出するように曲面状に湾曲している。より詳細には、翼本体22の上流側(前縁2L側)の端部を含む部分は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方向R後方側から前方側に向かって延びている。一方で、翼本体22の下流側(後縁2T側)の端部を含む部分は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方向R前方側から後方側に向かって延びている。
【0049】
動翼シュラウド23は、翼本体22の径方向外側の端部に取り付けられている。動翼シュラウド23は、径方向外側から見て、例えば平行四辺形状をなしている。動翼シュラウド23は、上述のキャビティ50内に収容されている。キャビティ50は、軸線Oに対する周方向から見て、略矩形の断面形状を有している。キャビティ50内における上流側の面(キャビティ上流面51)は、動翼シュラウド23における上流側の面(シュラウド上流面231)と軸線O方向に隙間をあけて対向している。キャビティ50内における径方向外側の面(キャビティ底面52)は、上述のシールフィン41を介して、動翼シュラウド23の外周面(シュラウド外周面232)に対向している。キャビティ50内における下流側の面(キャビティ下流面53)は、動翼シュラウド23における下流側の面(シュラウド下流面233)と隙間をあけて対向している。
【0050】
シュラウド外周面232は、上流側から下流側に向かって順に配置された溝形成領域A2、平滑領域A3を有している。図3に示すように、溝形成領域A2には、複数の溝部60が形成されている。複数の溝部60は、溝部60自身の延びる方向に直交する方向に間隔をあけて配列されている。溝形成領域A2は、シュラウド外周面232の上流端から当該シール対向領域A1内にわたって配置されている。図3では、溝形成領域A2の軸線O方向における寸法は、平滑領域A3の軸線O方向における寸法よりも小さく図示しているが、平滑領域A3の軸線O方向より大きくても良い。
【0051】
各溝部60は、例えば、シュラウド外周面232から径方向内側に向かって凹む角溝である。溝形状は角溝である必要はなく、U字溝やV字溝でも同様の効果は得られる。各溝部60は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方向R前方側から後方側に向かって直線状に延びている。なお、溝部60が軸線Oに対してなす角度は、実際に形成されるスワール流れ(後述)の流れ方向に応じて、90°から180°までの範囲内で適宜設定される。本実施形態では、溝部60の深さ(軸線Oに対する径方向における溝部60の寸法)は、上流側から下流側にかけて一定とされている。また、溝部60の深さは、シールフィン41の先端(径方向内側の端部)とシュラウド外周面232との間の離間寸法よりも大きい。
【0052】
溝形成領域A2の下流側には、平滑領域A3が形成されている。平滑領域A3は、軸線Oを中心とする円筒面状をなしている。平滑領域A3上には、突起や段差等が形成されていない。平滑領域A3は、上述のシールフィン41に隙間をあけて対向することで、シール対向領域A1の一部をなしている。
【0053】
次に、本実施形態に係る蒸気タービン100の動作について説明する。蒸気タービン100を駆動するに当たっては、まず外部の蒸気供給源(不図示)から、上述の蒸気供給管31を通じて蒸気Sがケーシング3内に供給される。ケーシング3内に供給された蒸気Sは、主流路F1を通過する間に、動翼2と静翼34に交互に衝突することで、回転軸1を回転させる。回転軸1の回転エネルギーは、軸端に接続された発電機等(不図示)によって取り出される。
【0054】
ここで、ケーシング3内に流入した蒸気Sの一部は、主流路F1ではなく、キャビティ50内に流入する。以下では、主流路F1に流入する蒸気を主流S1と呼び、キャビティ50内に流入する蒸気を副流S2と呼ぶ。キャビティ50内に流入した副流S2は、回転軸1の回転に伴うスワール成分(周方向速度成分)を含んでいる。具体的には、副流S2は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方向R後方側から前方側に向かって流れる。このようなスワール成分が卓越した場合、ケーシング3内における周方向の圧力分布に偏りが生じてしまう。圧力分布の偏りによって、回転軸1に振動を生じる場合がある。
【0055】
しかしながら、本実施形態では、動翼シュラウド23に溝形成領域A2が形成されている。溝形成領域A2の溝部60は、上述のように、上流側から下流側に向かうに従って回転方向R前方側から後方側に向かって延びている。即ち、溝部60は、上記の副流S2におけるスワール成分を打ち消す方向に延びている。したがって、溝部60に流入することで副流S2は転向し、上流側から下流側に向かうに従って回転方向R前方側から後方側に向かって流れる。これにより、スワール成分が低減され、回転軸1に振動が生じる可能性が低減される。さらに、溝部60を通過することで転向した副流S2は、下流側の平滑領域A3に向かう。平滑領域A3は、複数のシールフィン41に対向している。したがって、副流S2は、シールフィン41によってせき止められる。これにより、副流S2の流量自体が低減され、蒸気タービン100の性能を向上させることができる。
【0056】
以上、説明したように、上記の構成によれば、溝形成領域A2に形成された溝部60によって、上流側から流れてきた流体を転向することができる。ここで、上流側から流れてくる流体は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方向R前方側から後方側に向かうスワール成分を含んでいる。一方で、溝部60は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方前方側から後方側に向かって延びている。このため、溝部60内に流れ込んだスワール成分は当該溝部60に案内されることで転向される。これにより、スワール成分が低減され、シュラウド外周面232における圧力分布の偏りを低減することができる。
【0057】
さらに、溝形成領域A2の下流側には、平滑領域A3が形成されている。これにより、当該平滑領域A3におけるシュラウド外周面232とシール部4との間のクリアランスを小さくすることができる。したがって、当該クリアランスを通じた軸線O方向における流体の流れを低減することができる。したがって、タービンの性能を向上させることができる。
【0058】
加えて、上記の構成によれば、溝部60の深さが、シール部4とシュラウド外周面232との間の離間寸法よりも大きいことから、上流側から流れてきた流体の大部分は、シール部4とシュラウド外周面232との間ではなく、溝部60に流れ込む。これにより、漏れ流れを低減するとともに、溝部60によって効率的にスワール成分を低減することができる。
【0059】
さらに加えて、上記の構成によれば、シールフィン41を用いることによって、シール部4としてのシール性能を向上させることができる。特に、複数のシールフィン41が軸線O方向に間隔をあけて配列されていることから、軸線O方向における蒸気の副流S2をさらに低減することができる。
【0060】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0061】
[第二実施形態]
続いて、本発明の第二実施形態について、図4図5を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図4に示すように、本実施形態では、シール部4として、上記のシールフィン41に代えて、ハニカムシール42が設けられている。ハニカムシール42は、キャビティ底面52に沿って配置されている。ハニカムシール42は、軸線Oに対する径方向に延びる複数の孔部が形成された多孔質の部材である。ハニカムシール42は、例えばセラミック等のように被削性が比較的に良好な材料で一体に形成されている。
【0062】
さらに、本実施形態では、シュラウド外周面232における平滑領域A3上に、当該平滑領域A3からハニカムシール42に向かって突出するレール部70が設けられている。レール部70は、軸線Oに対する周方向から見て略矩形の断面形状を有している。図5に示すように、レール部70は、軸線Oに対する周方向に延びている。レール部70は、シュラウド外周面232上において、軸線O方向の略中央部に設けられている。レール部70の径方向外側の面(レール部外周面71)は、蒸気タービン100を組み立てた直後の状態において、ハニカムシール42の径方向内側の面(シール内周面421)に対して隙間なく対向している。蒸気タービン100を駆動すると、レール部外周面71とシール内周面421とが互いにこすれ、シール内周面421がわずかに削られる。即ち、レール部外周面71とシール内周面421との間には、動翼シュラウド23(回転軸1)の回転を妨げない限りにおいて最小限の隙間が形成される。
【0063】
上記の構成によれば、ハニカムシール42を用いることによって、シール部4としてのシール性能を向上させることができる。特に、ハニカムシール42に形成された複数の孔部によって効率的に副流S2を捕捉することができるため、軸線O方向における蒸気の漏れ流れをさらに低減することができる。
【0064】
さらに、上記の構成によれば、レール部70がハニカムシール42に向かって突出していることから、シュラウドの外周面とハニカムシール42との隙間をさらに小さくすることができる。これにより、軸線O方向の漏れ流れをさらに低減することができる。
【0065】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0066】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図6図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図6に示すように、本実施形態では、上述の平滑領域A3の下流側に、誘導溝形成領域A4が設けられている。誘導溝形成領域A4には、複数の誘導溝部80が形成されている。
【0067】
各誘導溝部80は、シュラウド外周面232から径方向内側に向かって凹む角溝である。溝形状は角溝である必要はなく、U字溝やV字溝でも同様の効果は得られる。図7に示すように、各誘導溝部80は、上流側から下流側に向かうに従って、回転軸1の回転方向R前方側から後方側に向かって直線状に延びている。なお、誘導溝部80が軸線Oに対してなす角度は、上述した翼本体22の出口角度(即ち、翼本体22の後縁2Tが軸線Oに対してなす角度)に応じて、90°から180°までの範囲内で適宜設定される。言い換えると、誘導溝部80が軸線Oに対してなす角度は、翼本体22の出口角度に略等しく、後続の静翼列33の入口角度に略等しい。特に、誘導溝部80が軸線Oに対してなす角度は、溝部60が軸線Oに対してなす角度と異なっていてもよい。
【0068】
本実施形態では、誘導溝部80の深さ(軸線Oに対する径方向における溝部60の寸法)は、上流側から下流側にかけて一定とされている。また、誘導溝部80の深さは、シールフィン41の先端(径方向内側の端部)とシュラウド外周面232との間の離間寸法よりも大きい。
【0069】
上記の構成では、平滑領域A3に沿って上流側から下流側に流れてきた副流S2を、誘導溝部80の延びる方向に応じて転向することができる。具体的には、副流S2の流れ方向は、翼本体22の出口角度に略等しくなるとともに、後続の静翼列33の入口角度に略等しくなる。即ち、副流S2は、翼本体22側を流れる蒸気の流れ(主流S1)と略同一の方向に転向される。
【0070】
このように、上記の構成によれば、平滑領域A3の下流側に、誘導溝形成領域A4が形成されている。これにより、平滑領域A3を通じて上流側から流れてきた流体を転向することができる。特に、誘導溝部80は、上流側から下流側に向かうに従って回転軸1の回転方向R前方側から後方側に向かって延びている。したがって、誘導溝部80を通過した流体は、翼本体22側を流れる蒸気の流れ(主流S1)に沿って流れることになる。これにより、動翼2の出口付近における混合損失を低減することができる。
【0071】
さらに、上記の構成によれば、翼本体22の形状や、スワール流れの方向に応じて、溝部60及び誘導溝部80が軸線Oに対してなす角度を適切に設定することができる。これにより、スワール流れを効率的に低減することができる。
【0072】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0073】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図8を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図8に示すように、本実施形態では、平滑領域A3上に、上述のレール部70が設けられ、平滑領域A3の下流側には、誘導溝形成部が設けられている。さらに、溝形成領域A2と平滑領域A3に対向するキャビティ底面52上には、上述のハニカムシール42が設けられている。一方で、誘導溝形成領域A4に対向するキャビティ底面52上には、シールフィン41が設けられている。
【0074】
この構成によれば、溝形成領域A2及び平滑領域A3に対向する領域では、溝部60によって副流S2を転向することで、スワール流れを効率的に低減することができる。一方で、誘導溝形成領域A4に対向する領域では、上流側の溝部60によって転向されることで、当初のスワール流れとは異なる方向に流れる周方向流れが生じている。誘導溝形成領域A4に対向する領域では、ハニカムシール42ではなく、シールフィン41が設けられていることから、この周方向流れは、動翼2の出口に向かって流れる。これにより、動翼2の出口付近における混合損失を積極的に低減することができる。
【0075】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記の各実施形態では、溝部60、及び誘導溝部80が、軸線O方向の全域にわたって一定の深さを有している構成を例に説明した。しかしながら、溝部60、及び誘導溝部80の態様は上記に限定されず、図9に示す構成を採ることも可能である。図9の例では、溝部60の深さが、上流側から下流側に向かうに従って次第に小さくなっている。さらに、誘導溝部80の深さは、上流側から下流側に向かうに従って次第に大きくなっている。この構成によれば、溝部60の深さが一定である場合に比べて、流体が溝部60内、及び誘導溝部80内に滞留する可能性を低減することができる。これにより、タービンの性能をさらに向上させることができる。
【0076】
加えて、上記の各実施形態では、蒸気タービン100の動翼2を例に構成を説明した。しかしながら、本発明の適用対象は蒸気タービン100に限定されず、ガスタービンのタービン部に適用することも可能である。
【0077】
なお、上記の溝部60、及び誘導溝部80(溝形成領域A2、及び誘導溝形成領域A4)は、回転軸1に設けられた全ての動翼列20のうち、最も下流側の動翼列20を除く動翼列20に適用することが望ましい。副流S2を転向させるために各動翼2が仕事をすることで各動翼2段の効率がわずかに低下するが、このような構成によれば、最終段の動翼2によって熱落差を回収することができるため、蒸気タービン100全体としての効率低下を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…回転軸
2…動翼
2L…前縁
2T…後縁
3…ケーシング
4…シール部
5…ジャーナル軸受
6…スラスト軸受
20…動翼列
21…プラットフォーム
22…翼本体
23…動翼シュラウド
31…蒸気供給管
32…蒸気排出管
33…静翼列
34…静翼
35…静翼シュラウド
41…シールフィン
42…ハニカムシール
50…キャビティ
51…キャビティ上流面
52…キャビティ底面
53…キャビティ下流面
60…溝部
70…レール部
71…レール部外周面
80…誘導溝部
100…蒸気タービン
231…シュラウド上流面
232…シュラウド外周面
233…シュラウド下流面
421…シール内周面
A1…シール対向領域
A2…溝形成領域
A3…平滑領域
A4…誘導溝形成領域
F1…主流路
O…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9