(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シャントやフレキシブルケーブルは、可動部やブラシの動きを阻害してしまうおそれがあった。このため、動きを阻害しないように、一定の長さを確保して予め屈曲させるなどしておく必要があり、そのようなスペースを考慮する必要があった。
また、シャントやフレキシブルケーブル等の配置スペースを確保できない場合には、
図4に示す通電装置100のように、導電体101からブラシ102を介して電極103へ給電することが考えられる。しかし、
図4において、ブラシ102が動きやすいように導電体101とブラシ102との間の隙間を大きく設定すると、導電体101とブラシ102との接触状態が不安定になってスパークが発生し、電蝕や固着などの問題が生じ、導通状態が不安定になってしまうおそれがあった。反対に、導電体101とブラシ102との間の隙間を小さく設定すると、ブラシ102の動きが阻害され、ブラシ102と電極103との接触状態が不安定になり、導通状態が不安定になってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、安定した導通状態を確立でき、電流の安定供給を図ることができる通電装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通電装置は、摺動自在に設けられて相対移動する導電性を有した第1部材及び第2部材の間で通電するための装置である。通電装置は、通電部材及び付勢力付与部を備えている。通電部材は、第1部材の第2部材との摺動面に開口する孔に摺動自在に配される。通電部材は、孔の内壁、及び第2部材の第1部材との摺動面に当接して第1部材と第2部材とを導通する。付勢力付与部は、孔の内壁に押し付ける付勢力、及び第2部材の第1部材との摺動面に押し付ける付勢力を通電部材に付与する
。
【0007】
このように、通電装置は、通電部材が付勢力付与部に付勢されて第1部材及び第2部材の夫々に押し付けられる。このため、通電部材と第1部材及び第2部材との導通が安定して確保される。また、通電部材が付勢力付与部により付勢されているので、通電部材の第1部材及び第2部材との当接面が摩耗したとしても当接した状態が保持され、導通状態を維持できる。
したがって、本発明の通電装置は、第1部材と第2部材の間で安定した導通状態を確立することができ、電流の安定供給を図ることができる。
【0008】
本発明の通電装置において、通電部材は、自由端を夫々具備して孔の内壁に当接自在に弾性変形する複数の腕部と、第2部材に当接する当接面を具備するとともに複数の腕部の自由端の反対端を連結する連結部と、を有し
ている。また、付勢力付与部は、複数の腕部の各自由端よりも孔の中心軸側に位置し且つ各自由端に当接する形態で自由端に向かって孔の軸方向に押圧されることにより複数の腕部を拡開させる押圧部材
を有している。そして、複数の腕部を孔の内壁に押し付ける付勢力は、押圧部材を通電部材の方向に押し付ける付勢力によって生じる。
本発明の通電装置において、通電部材はコレット形状であり得る。
本発明の通電装置において、付勢力付与部は、通電部材と押圧部材の間の孔内に配されて通電部材を第2部材に当接する方向へ付勢する第1ばね部材と、及び押圧部材に隣接して孔内に配されて押圧部材を通電部材の方向へ付勢する第2ばね部材と、を有し得る。この場合、通電部材を第2部材に確実に当接させることができるとともに、第1部材との摺動面である孔の内壁にも確実に当接させることができる。このため、通電部材と第1部材及び第2部材と間の安定した導通状態の確保を実現できる。
【0009】
本発明の通電装置において、通電部材は有底筒状に形成されており、複数の腕部は、軸方向に複数のスリット状の切り込みが形成された通電部材の筒状をなす周壁であり、押圧部材は、円錐状に形成されたテーパ状部を具備し、このテーパ状部が自由端に当接し得る。この場合、テーパ状部が腕部に当接するので、第2ばね部材の軸方向の弾性力を、押圧部材により腕部を拡径させる付勢力として好適に作用させることができる。
【0010】
本発明の通電装置において、第1ばね部材は、第2ばね部材のばね定数よりも小さいばね定数を有し得る。この場合、第2ばね部材の付勢力が第1ばね部材の付勢力に勝るので、押圧部材を腕部に確実に当接させることができ、腕部を確実に拡開することができる。
【0011】
本発明の通電装置において、付勢力付与部は、第2ばね部材の押圧部材への付勢力の調整を行うアジャスト部を有し得る。この場合、通電部材を押し付ける力を調整できるので、良好な通電状態を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の通電装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態では、通電装置として、抵抗溶接装置の電極ユニットに設けられた可動電極に給電する通電装置を例示する。
【0014】
<実施形態1>
実施形態1の通電装置1は抵抗溶接装置に備えられている。抵抗溶接装置は、略同様の構成で上下一対の電極ユニットを備えている。電極ユニットは、略同様の構成で上下に一対が設けられる。この抵抗溶接装置は、一対の電極ユニットにより円筒状のワークとブラケットを挟み込んで加圧及び通電し、ブラケットに形成された突起とその周辺を溶融して2部材を溶接するプロジェクション溶接装置である。そして、通電装置1は、電極ユニットにおいて、後述するケーシング及び可動電極の2部材の間で溶接電流を通電するための装置である。
【0015】
まず、電極ユニットについて説明する。
図1に示す電極ユニット2は、上下に対向して設けられた一対の電極ユニットのうちの下側の一方を示している。
図1に示すように、電極ユニット2は、溶接治具10及び給電部20を備えている。溶接治具10は、筒状のワークWの外周面を保持する。給電部20はワークWに溶接電流を供給する。溶接治具10は、絶縁部30を介して、給電部20に着脱自在に取り付けられている。溶接治具10は、種類の異なる溶接治具に交換することで、径違い等の異品種のワークに対応可能とされている。溶接治具10及び給電部20は、環状をなす絶縁部30の中央の貫通孔に表裏から夫々嵌合することにより芯出しされ、溶接治具を交換した場合でも同軸上に並んで配置される。
【0016】
溶接治具10は、治具本体11及び絶縁スリーブ12を有している。治具本体11は下方に開口する有底の円筒状に形成されている。治具本体11は、工具鋼に絶縁コーティングを施して形成されている。絶縁スリーブ12は治具本体11の内孔11Aに挿入されており、この内孔11Aに挿入される後述する可動電極と治具本体11とを絶縁する。治具本体11の先端部にはワークWを保持する保持面部11Bが形成されている。保持面部11Bは、断面V字状に形成され、その内角において円筒状のワークWの外周面を保持して位置決めする。また、治具本体11には、V字状をなす保持面部11Bの谷に沿ってすり割溝11Cが形成されている。すり割溝11Cは、治具本体11の内孔11Aに連通して形成されている。すり割溝11Cの幅は治具本体11の内孔11Aの直径よりも小さく設定されている。治具本体11の下部には、絶縁部30に取り付けられるフランジ部11Dが設けられている。フランジ部11Dの下面には突部11Eが設けられており、環状をなす絶縁部30の中央の貫通孔30Aに嵌合している。
【0017】
給電部20は、ベース21、ケーシング22、可動電極23、ピストン24、及びライナー25を有している。ベース21は、上方に開口する有底筒状に形成されている。ベース21は、その下端部が抵抗溶接装置本体(図示せず)に固定されている。また、ベース21は、その上部開口をケーシング22により閉塞されて内部空間21Aを形成する。ケーシング22は偏平六角柱状に形成されている。ケーシング22は導電体である銅で形成されており、図示しない給電ケーブルが接続されている。ケーシング22の上面には突部22Aが設けられており、環状をなす絶縁部30の中央の貫通孔30Aに嵌合している。また、ケーシング22の下面には突部22Bが設けられており、ベース21の上側開口に嵌め込まれている。ケーシング22の中央には貫通孔22Cが形成されている。貫通孔22Cは、ケーシング22を上下に貫通する。貫通孔22Cと内孔11Aは、ケーシング22と治具本体11が絶縁部30により芯出しされて取り付けられていることにより同軸上に配されている。これら貫通孔22C及び内孔11Aには、中心軸に沿って摺動自在に可動電極23が挿入されている。
【0018】
可動電極23は、ケーシング22の貫通孔22Cに挿通されている第1可動電極23A、治具本体11の内孔11Aに挿入されている第2可動電極23B、及び第2可動電極23Bの上部に取り付けられてワークWに当接する当接部23Cの3つに分割されて設けられている。これらのうち、第1可動電極23A及び第2可動電極23Bは略同径の円柱状に形成されており、当接部23Cは、直方体形状に形成されている。また、これら第1可動電極23A、第2可動電極23B及び当接部23Cは導電体である銅で形成されている。第1可動電極23Aの上端部は、先端に向かうに連れて縮径する円錐状に形成されている。また、第2可動電極23Bの下端部はすり鉢状に陥没して形成されている。第1可動電極23Aと第2可動電極23Bは、これらのような円錐形状とすり鉢形状が嵌まり合って当接することにより、平面同士が当接するよりも大きな当接面積が確保される。また、円錐形状とすり鉢形状が嵌合することで、第1可動電極23Aと第2可動電極23Bとの芯出しも行われる。
【0019】
図1に示すように、第2可動電極23Bの上端部は、マイナスドライバー(ねじ回し)の先端部のように平らに形成されている。当接部23Cは、この第2可動電極23Bの上端面に載置されてボルト止めされている。当接部23Cは、治具本体11のすり割溝11Cに嵌め込まれている。当接部23Cは、可動電極23全体が上方へ移動することにより、その上面が保持面部11Bの表面から突出し、保持面部11Bに保持された円筒状のワークWに当接する。
【0020】
第1可動電極23Aの下端部には、ピストン24が連結されている。ピストン24は、中心軸に沿って上下に摺動自在にベース21の内部空間21A内に収納されている。詳細には、内部空間21Aにはライナー25が挿入されており、ピストン24はこのライナー25の内周面に沿って上下に摺動する。内部空間21Aは、ピストン24によって上側空間21Bと下側空間21Cとに仕切られている。上側空間21B及び下側空間21Cには、圧縮空気が供給される給排気路22D,21Dが夫々接続されている。ピストン24は、これら給排気路22D,21Dから供給される圧縮空気により上下に移動し、可動電極23を上下動させる。すなわち、可動電極23は、ピストン24の上下動に伴って上下に移動する。この際、第1可動電極23Aは、ケーシング22の貫通孔22C内を摺動して上下動する。
【0021】
また、ケーシング22には横孔22Eが形成されている。
図1及び
図2に示すように、横孔22Eは、ケーシング22の側面から中央の貫通孔22Cに向かって貫通して設けられている。換言すると、横孔22Eは、貫通孔22Cの内壁に開口して形成されている。そして、この貫通孔22Cの内壁は、ケーシング22が可動電極23と摺動する摺動面である。横孔22Eは、貫通孔22Cに直交する形態で形成されている。更に、横孔22Eは、ケーシング22の中心軸回りに等間隔に3つ形成されている。
【0022】
次に、通電装置1について説明する。本実施形態1に係る通電装置1は、上記構成の電極ユニット2において、摺動自在に設けられて相対移動するケーシング22及び可動電極23の間で通電するための装置である。
図1〜
図3に示すように、通電装置1は、通電部材40及び付勢力付与部50を備えている。
図2に示すように、本実施形態1において、通電装置1は、3つの横孔22Eに対応して3つ設けられている。
【0023】
通電部材40は、ケーシング22の横孔22Eに摺動自在に配されている。通電部材40は、横孔22Eの内壁、及び第1可動電極23Aの外周面に当接して、ケーシング22と第1可動電極23Aとを導通する。本実施形態1においては、通電部材40は、ケーシング22に接続されている図示しない給電ケーブルから供給される電流を第1可動電極23Aに通電する。また、本実施形態1において、通電部材40は、複数の腕部41及び連結部42を有している。腕部41は自由端41Aを具備しており、横孔22Eの内壁に当接自在に弾性変形する。連結部42は、第1可動電極23Aに当接する当接面42Aを具備している。また、連結部42は、複数の腕部41の自由端41Aの反対端を連結している。
【0024】
通電部材40は銅製で、横孔22Eの内径と略同径の有底筒状に形成されて横孔22E内を摺動する。複数の腕部41は、通電部材40の有底筒状をなす形状のうちの周壁に相当する部位に、軸方向に複数のスリット状の切り込み43を形成して設けられている。通電部材40は所謂コレット形状をなしている。切り込み43は、腕部41の自由端41Aの近傍が最も幅が狭く形成されているとともに、中間部においては自由端41A近傍よりも幅が広く形成されている。このため、腕部41は、自由端41Aの近傍において最も幅が広く、中間部において幅が狭く形成されている。連結部42は、通電部材40の有底筒状をなす形状のうちの底壁に相当する部位である。連結部42の第1可動電極23Aとの当接面42Aは、第1可動電極23Aの外周面に倣った凹状の曲面に形成されている。また、当接面42A近傍の外径は、腕部41の外径の大きさよりも縮径されている。
【0025】
付勢力付与部50は、横孔22Eの内壁に押し付ける付勢力、及び第1可動電極23Aのケーシング22との摺動面(第1可動電極23Aの外周面)に押し付ける付勢力を通電部材40に付与する。
図1〜
図3に示すように、付勢力付与部50は、押圧部材51、第1ばね部材52、第2ばね部材53及びアジャスト部54を有している。押圧部材51は、横孔22E内に摺動自在に配される。第1ばね部材52は、通電部材40を第1可動電極23Aに当接する方向へ付勢する。第2ばね部材53は、押圧部材51を通電部材40の方向へ付勢する。アジャスト部54は、第2ばね部材52の押圧部材51への付勢力の調整を行う。
【0026】
押圧部材51は、各腕部41の自由端41Aよりも横孔22Eの中心軸側に位置して各自由端41Aに当接する。この形態で、押圧部材51は、各自由端41Aに向かって横孔22Eの軸方向に押圧されることにより各腕部41を拡開させる。詳細には、
図3に示すように、押圧部材51は有底筒状に形成されている。押圧部材51はテーパ状部51Aを具備している。テーパ状部51Aは、有底筒状をなす押圧部材51の先端部に先細りする形態で円錐状(円錐台状)に形成されている。本実施形態の押圧部材51の場合には、テーパ状部51Aが複数の腕部41の各自由端41Aに当接して、複数の腕部41を径方向に拡径させる。
【0027】
なお、本実施形態1において、自由端41Aのテーパ状部51Aとの当接面は、テーパ状部51Aのテーパ形状に対応して面接触するテーパ状に形成されている。また、有底筒状をなす押圧部材51は基端部に開口する孔内に第2ばね部材53を収納する。押圧部材51は、第2ばね部材53の弾性力により付勢されることにより複数の腕部41の自由端41Aにテーパ状部51Aを当接させて押圧し、複数の腕部41を拡径する。また、押圧部材51には、テーパ状部51Aの先端に突起状の突起部51Bが形成されている。
【0028】
第1ばね部材52は、通電部材40と押圧部材51の間に配される。第1ばね部材52は、圧縮コイルばねであり、有底筒状をなす通電部材40内に挿入されている。また、第1ばね部材52は、一方の端面が通電部材40の連結部42の裏面(当接面42Aの反対側面)に当接している。第1ばね部材52の他方の端部には、押圧部材51の突起部51Bが挿入されているとともに、端面がテーパ状部51Aの先端部(円錐台の先端部に相当する部位)に当接している。これにより、第1ばね部材52は、通電部材40と押圧部材51との間で弾性力を作用させる。第1ばね部材52は、第2ばね部材53のばね定数よりも小さいばね定数を有している。
【0029】
第2ばね部材53は、押圧部材51とアジャスト部54の間に配される。第2ばね部材53は、第1ばね部材52のばね定数よりも大きいばね定数を有する圧縮コイルばねである。第2ばね部材53は、有底筒状をなす押圧部材51内に挿入されている。また、第2ばね部材53の一方の端面は、テーパ状部51Aの基端部(円錐台の基端部に相当する部位)に当接している。第2ばね部材53の他方の端面には、後述するアジャスト部54のスプリングガイドが当接している。これにより、第2ばね部材53は、押圧部材51とアジャスト部54の間で弾性力を作用させる。
【0030】
図2及び
図3に示すように、アジャスト部54は、押えプレート54A、アジャストボルト54B、固定ナット54C及びスプリングガイド54Dを具備している。押えプレート54Aは、ケーシング22の側面に固定的に取り付けられる。押えプレート54Aにはアジャストボルト54Bが螺合して取り付けられている。アジャストボルト54Bは、固定ナット54Cを挿通しているとともに、先端にスプリングガイド54Dを取着している。固定ナット54Cは、アジャストボルト54Bが螺合する押えプレート54Aとのダブルナット作用により、アジャストボルト54Bを固定する。スプリングガイド54Dは、第2ばね部材53の他方の端面に当接するとともに、断面凸状に形成された部位が第2ばね部材53内にコイル内側に挿入されている。スプリングガイド54Dは、アジャストボルト54Bの押えプレート54Aからの出没に伴って、横孔22E内を中心軸に沿って移動する。
【0031】
次に、上記構成の通電装置1の作用効果について説明する。
実施形態1の通電装置1は、摺動自在に設けられて相対移動するケーシング22と可動電極23の間で通電する。通電装置1は、通電部材40及び付勢力付与部50を備えている。通電部材40は、ケーシング22の可動電極23との摺動面である貫通孔22Cの内壁に開口する横孔22Eに摺動自在に配されている。通電部材40は、横孔22Eの内壁、及び可動電極23の外周面に当接してケーシング22と可動電極23とを導通する。付勢力付与部50は、通電部材40を横孔22Eの内壁に押し付ける付勢力と、可動電極23の外周面に押し付ける付勢力を付与する。
【0032】
このように、通電装置1は、通電部材40と、この通電部材40を付勢する付勢力付与部50を備えている。そして、通電部材40は、付勢力付与部50に付勢されて、ケーシング22及び可動電極23のそれぞれに向かって付勢される。このため、通電部材40は、ケーシング22と可動電極23に安定して当接し、夫々との導通が確保される。また、通電部材40が付勢力付与部50により付勢されているので、通電部材40のケーシング22及び可動電極23との当接面が摩耗したとしても当接した状態が保持され、導通状態を維持できる。
したがって、通電装置1は、ケーシング22と可動電極23の間で安定した導通状態を確立することができ、電流の安定供給を図ることができる。
【0033】
また、通電部材40は、自由端41Aを夫々具備して横孔22Eの内壁に当接自在に弾性変形する複数の腕部41、及び可動電極23(第1可動電極23A)に当接する当接面42Aを具備するとともに複数の腕部41の自由端41Aの反対端を連結する連結部42、を有している。また、付勢力付与部50は、複数の腕部41の各自由端41Aよりも横孔22Eの中心軸側に位置し且つ各自由端41Aに当接する形態で自由端41Aに向かって横孔22Eの軸方向に押圧されることにより複数の腕部41を径方向に拡開させる押圧部材51と、通電部材40と押圧部材51との間の横孔22E内に配されて通電部材40を可動電極23に当接する方向へ付勢する第1ばね部材52、及び押圧部材51に隣接して横孔22E内に配されて押圧部材51を通電部材40の方向へ付勢する第2ばね部材53を有している。これにより、通電部材40を可動電極23に確実に当接させることができるとともに、ケーシング22側の当接面である横孔22Eの内壁にも確実に当接させることができる。このため、通電部材40と、ケーシング22及び可動電極23と間の安定した導通状態の確保を実現できる。
【0034】
また、通電部材40は有底筒状に形成されており、複数の腕部41は、軸方向に複数のスリット状の切り込み42Aが形成された通電部材40の筒状をなす周壁であり、押圧部材51は、円錐状に形成されたテーパ状部51Aを具備し、このテーパ状部51Aが自由端41Aに当接する。このように、押圧部材51のテーパ状部51Aが腕部41に当接するので、第2ばね部材53の軸方向の弾性力を、押圧部材51により腕部41を拡径させる付勢力として好適に作用させることができる。
【0035】
また、第1ばね部材52は、第2ばね部材53のばね定数よりも小さいばね定数を有している。このため、第2ばね部材53の付勢力が第1ばね部材52の付勢力に勝るので、押圧部材51を腕部41に確実に当接させることができ、腕部41を確実に拡径することができる。
【0036】
また、付勢力付与部50は、第2ばね部材53の押圧部材51への付勢力の調整を行うアジャスト部54を有している。このため、通電部材40をケーシング22及び可動電極23に押し付ける力を調整できるので、良好な通電状態を維持することができる。
【0037】
また、腕部41は、自由端41Aの近傍において最も幅が広く、中間部において幅が狭く形成されている。このため、テーパ状部51Aとの当接面積が確保されて押圧部材51の付勢力を好適に受けることができるとともに、弾性変形時には、自由端41A近傍の幅と同じ場合と比較して、より撓みやすい。このため、横孔22Eの内壁により確実に当接することができる。
【0038】
また、腕部41の自由端41Aのテーパ状部51Aとの当接面は、テーパ状部51Aのテーパ形状に対応して面接触するテーパ状に形成されている。これにより、押圧部材51による軸方向の付勢力を、腕部41を拡径させるための径方向の付勢力により好適に変換することができる。
【0039】
また、連結部42の第1可動電極23Aとの当接面42Aは、第1可動電極23Aの外周面に倣った凹状の曲面に形成されている。このため、第1可動電極23Aとの当接面積が確保され、良好に通電することができる。
【0040】
また、通電装置1は、通電部材40、押圧部材51、第1ばね部材52及び第2ばね部材がケーシング22に形成された横孔22E内に収容されているので、省スペース化を図ることができる。
【0041】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1〜5に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、通電装置が抵抗溶接装置に適用される例を示したが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る通電装置は、摺動自在に設けられて相対移動する2部材間の通電全般に適用することができる。
(2)上記実施形態1では、通電部材が、第1部材の第2部材との摺動面に開口する孔に摺動自在に配される例を示したが、これに限定されず、例えば、通電部材が「孔」に代えて「溝」に配される形態であってもよい。すなわち、本発明に係る「摺動面に開口する孔」とは、孔状の場合だけでなく、溝状も含むものである。
(3)上記実施形態1では、円筒状の通電部材を例示したが、通電部材の形状はこれに限定されない。
(4)上記実施形態1では、付勢力付与部が、押圧部材、第1ばね部材及び第2ばね部材を有する例を示したが、付勢力付与部の構成はこれに限定されない。また、付勢力付与部がアジャスト部を有することも必須ではない。
(5)上記実施形態1では、通電部材が複数の腕部及び連結部を具備する例を示したが、通電部材の構成はこれに限定されない。
(6)上記実施形態1では、第1ばね部材のばね定数を第2ばね部材のばね定数よりも小さく設定したが、これに限定されず、例えば、第1ばね部材と第2ばね部材を同じばね定数としてもよいし、第1ばね部材のばね定数を第2ばね部材のばね定数よりも大きく設定してもよい。
(7)上記実施形態1では、第1可動電極がケーシング22の貫通孔22C内を摺動して上下動する形態を示したが、これに限定されず、ケーシングの貫通孔に絶縁スリーブが挿入されており、第1可動電極は、この絶縁スリーブを介して、ケーシング22の貫通孔内を摺動する形態、すなわち、第1可動電極の外周面と貫通孔の内周面とが絶縁された形態であってもよい。