(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のサイド補強層の両方の前記複数の補強コードが、前記第1部分と前記第2部分とをそれぞれ備える請求項1から請求項3のいずかれ1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたものを含め、従来のサイド補強層を有する空気入りタイヤは、乗り心地性について、更なる改良の余地がある。
【0006】
本発明は、サイド補強層を設けて操縦安定性を向上させながら、乗り心地性を向上できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、前記一対のサイドウォール部のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置され、ビードコアと、前記ビードコアに連なってタイヤ径方向外側に延びるビードフィラーとを備える一対のビード部と、前記一対のビード部の前記ビードフィラーに対して、タイヤ幅方向に隣接し、かつタイヤ径方向外側に延びるようにそれぞれ配置され、引き揃えられた複数の補強コードと、前記複数の補強コードを被覆するゴム層とを備え、前記複数の補強コードはタイヤ周方向に間隔をあけて配置され、かつ前記複数の補強コードはタイヤ径方向に対して傾斜している、一対のサイド補強層とを備え、前記一対のサイド補強層の少なくとも一方の前記複数の補強コードは、前記サイド補強層のタイヤ径方向の内端を含み、タイヤ周方向に対して第1傾斜角度を有する第1部分と、前記サイド補強層のタイヤ径方向の外端を含み、タイヤ周方向に対して前記第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度を有する第2部分とをそれぞれ備
え、前記一対のサイド補強層のタイヤ径方向の内端は、前記ビードコアのタイヤ径方向の外端よりタイヤ径方向外側にそれぞれ位置し、前記一対のサイド補強層のタイヤ径方向の外端は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向の外端と、前記トレッド部に配置されたベルトの端部との間にそれぞれ位置する、空気入りタイヤを提供する。
【0008】
ビードフィラーに対してタイヤ幅方向に隣接してタイヤ径方向外側に延びるように配置されたサイド補強層を設けることで、サイドウォール部の変形が抑制される。その結果、操縦安定性が向上する。
【0009】
補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、補強コードのタイヤ径方向の内端におけるタイヤ周方向に対する接線である基準線に対して、補強コードがなす角度(鋭角)と定義される。
【0010】
個々の補強コードにおいて、タイヤ径方向の外端を含む部分、つまり最外周側の部分である第2部分が有する第2傾斜角度は、タイヤ径方向の内端を含む部分、つまり最内周側の部分である第1部分が有する第1傾斜角度よりも小さい。補強コードの傾斜角度をこのように設定することで、サイド補強層のタイヤ径方向外側の領域におけるタイヤ径方向の剛性は、タイヤ径方向内側の領域におけるタイヤ径方向の剛性に対して相対的に低くなる。このように、サイド補強層のタイヤ径方向外側の領域のタイヤ径方向の剛性が相対的に低いことで、サイドウォール部のタイヤ幅方向の剛性の過度な増大が抑制される。その結果、サイドウォール部のタイヤ幅方向の変形が過度に抑制されず、サイドウォール部のタイヤ幅方向の変形性がある程度確保されるので、乗り心地性が向上する。
【0011】
補強コードの第1及び第2部分における傾斜角度を上述のように設定し、サイド補強層のタイヤ径方向外側の領域における剛性を相対的に低く設定することで、サイドウォール部のタイヤ径方向の弾性係数の過度な増大が抑制される。その結果、路面から空気入りタイヤへのタイヤ径方向の負荷入力に対する伝達遮断性が向上する。かかる伝達遮断性の向上によっても、乗り心地性が向上する。
【0012】
ビードコアはそれ自体で高剛性であるため、ビードコアに対してタイヤ幅方向に隣接して一対のサイド補強層をそれぞれ配置しても、それ以上の剛性向上は期待できず、重量増のみを招き得る。従って、一対のサイド補強層のタイヤ径方向の内端は、ビードコアのタイヤ径方向の外端よりタイヤ径方向の外側に位置することが好ましい。
【0013】
サイドウォール部のトレッド部に近い領域までサイド補強層が設けられていると、サイドウォール部のタイヤ幅方向の変形が過度に妨げられ、乗り心地性が低下し得る。一対のサイド補強層の外端が、トレッド部に配置されたベルトの端部よりもタイヤ径方向内側よりもタイヤ径方向内側に位置することで、サイドウォール部のタイヤ幅方向の変形性が確保され、必要な乗り心地性が得られる。
【0014】
サイド補強層の補強コードの傾斜角度が過度に小さいと、サイドウォール部のタイヤ径方向の剛性が不足し、操縦安定性を十分に向上させることができない。また、サイド補強層の補強コードの傾斜角度が過度に大きいと、サイドウォール部のタイヤ径方向の剛性が過度に大きくなり、必要な乗り心地性が得られない。さらに、第2傾斜角度が第1傾斜角度に対してある程度の差で小さくないと、サイド補強層のタイヤ径方向外側の領域におけるタイヤ径方向の剛性を相対的に低くすることの効果が十分得られず、乗り心地性が向上しない。
【0015】
従って、前記第1傾斜角度は25度以上45度以下であり、前記第2傾斜角度は15度以上35度以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記第1傾斜角度から前記第2傾斜角度を引いた差が5度以上であることが好ましい。
【0017】
前記一対のサイド補強層の両方の前記複数の補強コードが、前記第1部分と前記第2部分とをそれぞれ備えてもよい。
【0018】
空気入りタイヤの回転向きが指定されており、前記一対のサイド補強層のいずれについても、個々の前記補強コードは、タイヤ径方向の内端よりもタイヤ径方向の外端が前記回転向きの前方側に位置するように、タイヤ径方向に対して傾斜してもよい。
【0019】
一対のサイド補強層において、補強コードはタイヤ径方向に対して同じ向きに傾斜している。つまり、一対のサイド補強層のいずれについても、補強コードは、タイヤ径方向の内端よりもタイヤ径方向の外端が回転向きの前方側に位置するように、タイヤ径方向に対して傾斜している。そのため、車両の制動時に路面から空気入りタイヤが受ける力の向きは、個々の補強コードを伸縮させる向きではなく、補強コードをタイヤ周方向にさらに傾斜させ、ないしは補強コードを曲げる向きとなる。その結果、車両の制動時の接地長を伸ばすことができ、制動性が向上する。
【0020】
また、前記一対のサイド補強層のタイヤ径方向の外端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側にそれぞれ位置してもよい。
【0021】
一対のサイド補強層の外端
が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に位置することで、サイドウォール部のタイヤ幅方向の変形性が確保され、必要な乗り心地性が得られる。
【0022】
前記一対のサイド補強層の厚さはそれぞれ、1.05mm以上1.70mm以下に設定し得る。
【0023】
前記一対のサイド補強層のいずれについても、前記補強コードはスチールコードであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の空気入りタイヤによれば、サイド補強層を設けることにより操縦安定性を向上させながら、乗り心地性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1の子午線半断面図、つまりタイヤ赤道面に直交する面における断面図である。空気入りタイヤ1は、回転向きが指定されている。つまり、
図1において、矢印Bで示す車両(図示)の前進時の空気入りタイヤ1の回転向きCが指定されている。なお、
図1では、サイドウォール部3A、ビード部4A、チェーファー層13A、及びサイド補強層21Aが車両に対してアウト側に位置し、サイドウォール部3B、ビード部4B、チェーファー層13B、及びサイド補強層21Bが車両に対してイン側に位置する。
【0028】
空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2のタイヤ幅方向の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部3A,3Bと、これら一対のサイドウォール部3A,3Bのタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置された一対のビード部4A,4Bを備える。
【0029】
一対のビード部4A,4Bの間には、トレッド部2及びサイドウォール部3A,3Bのタイヤ径方向内側に、トロイダル状のカーカスプライ5が配置されている。カーカスプライ5のタイヤ径方向内側には、インナーライナー6が配置されている。トレッド部2では、カーカスプライ5のタイヤ径方向外側に、複数層のベルト層7とベルト補強層8(ベルト)とが設けられている。
【0030】
個々のビード部4A,4Bは、ビードコア11と、ビードコア11に連なってタイヤ径方向外側に延びるゴム製のビードフィラー12とを備える。ビードコア11は、複数本のビードワイヤを束ねて環状に構成したものである。ビードコア11のタイヤ径方向の外側の端面(外端)11aに沿って、断面形状が概ね三角形状である環状のビードフィラー12が配置されている。
【0031】
ビード部4A,4Bの周囲には、チェーファー層13A,13Bが配置されている。チェーファー層13A,13Bは、カーカスプライ5の外面側(ビード部4A,4Bとは反対側)に隣接して配置されており、カーカスプライ5と共に、ビード部4A,4Bの周囲においてタイヤ幅方向内側から外側へ折り返され、タイヤ径方向の外側へ巻き上げられている。
【0032】
また、ビード部4A,4Bでは、カーカスプライ5の巻き上げられた部分とビードフィラー12との間に、サイド補強層21A,21Bが配置されている。以下、
図1のように指定されたインアウトで空気入りタイヤ1が車両に正規に装着された場合に、車両に対してアウト側に位置するサイド補強層21Aをアウト側サイド補強層21Aと呼び、車両に対してイン側に位置するサイド補強層21Bをイン側サイド補強層21Bと呼ぶ。
【0033】
図2A,2Bを併せて参照すると、個々のアウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bは、タイヤ幅方向から見ると概ね環状をなす帯状である。また、個々のアウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bは、引き揃えられた複数の補強コード22と、これら複数の補強コード22を被覆するゴム層23とを有する。本実施形態では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのゴム層23のゴム硬度を同一に設定している。また、本実施形態では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのいずれについても、補強コード22はスチールコードである。引張強度を含む必要な特性が得られるのであれば、補強コード22はアラミドコードのような樹脂コードであってもよい。さらに、本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとで、補強コード22の直径(コード径)とエンド数を同一に設定している。
【0034】
図1を参照すると、本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとは、幅WS1,WS2が同一である。また、本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとは、タイヤ径方向の内端21aの径方向の位置P1と、タイヤ径方向の外端21bの位置P2も同一である。
【0035】
アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの内端21a(位置P1)は、ビードコア11のタイヤ径方向外側の端面
(外端)11a(位置P3)よりタイヤ径方向の外側に位置する。また、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向の外端21b(位置P2)は、ビードフィラー12のタイヤ径方向の外端12a(位置P4)とベルト補強層8のタイヤ幅方向外側の端部8aとの間に位置する。本実施形態では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向の外端21b(位置P2)は、ビードフィラー12のタイヤ径方向の外端12a(位置P4)とカーカスプラス5の巻き上げられた部分の端部5a(位置P5)との間に位置している。より具体的には、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向の外端21b(位置P2)は、タイヤ最大幅位置P6よりも、タイヤ径方向の内側に位置している。
【0036】
本実施形態では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの厚さは同一であり、1.05mm以上1.70mm以下の範囲に設定されている。
【0037】
本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bのいずれについても、複数の補強コード22は、タイヤ周方向に間隔をあけて配置されている。また、本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとで、個々の補強コード22の形状、寸法、及びタイヤ幅方向から見たときの姿勢を同一に設定している。まず、アウト側サイド補強層21A及びイン側サイド補強層21Bのいずれについても、個々の補強コード22は、後に詳述するように、タイヤ幅方向から見て折れ線状である。また、アウト側サイド補強層21A及びイン側サイド補強層21Bのいずれについても、個々の補強コード22はタイヤ周方向とタイヤ径方向のいずれにも一致しない方向に延びている。つまり、アウト側サイド補強層21A及びイン側サイド補強層21Bのいずれについても、個々の補強コード22はタイヤ周方向とタイヤ径方向の両方に対して傾斜している。
【0038】
アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとで、補強コード22はタイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜している。具体的には、
図2A及び
図3Aを参照すると、アウト側サイド補強層21Aでは、個々の補強コード22は、タイヤ径方向の内端22aよりも外端22bが空気入りタイヤ1の回転向きC(前述のように車両が
図1において矢印Bで示すように前進する際の回転向き)の前方側に位置するように、タイヤ周方向及びタイヤ径方向に対して傾斜している。同様に、
図2B及び
図3Bを参照すると、イン側サイド補強層21Bでは、個々の補強コード22は、タイヤ径方向の内端22aよりも外端22bが空気入りタイヤ1の回転向きCの前方側に位置するように、タイヤ周方向及びタイヤ径方向に対して傾斜している。
【0039】
図3A及び
図3Bを参照すると、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22は、内端22aを含む内側直線部(第1部分)22cと、外端22bを含む外側直線部(第2部分)22dと、内側直線部22cと外側直線部22dとの間の曲り部22eとを備える。アウト側サイド補強層21Aにおける内側直線部22cと外側直線部22dの長さ、及び曲り部22eの曲り角度は、イン側サイド補強層21Bと同一に設定されている。
【0040】
図3Aを参照すると、アウト側サイド補強層21Aの補強コード22では、内側直線部22cはタイヤ周方向に対して傾斜角度θa1をなし、外側直線部22dはタイヤ周方向に対して傾斜角度θb1をなす。傾斜角度θb1は傾斜角度θa1よりも小さい。同様に、
図3Bを参照すると、イン側サイド補強層21Bの補強コード22では、内側直線部22cはタイヤ周方向に対して傾斜角度θa2をなし、外側直線部22dはタイヤ周方向に対して傾斜角度θb2をなす。傾斜角度θb2は傾斜角度θa2よりも小さい。傾斜角度θa1,θb1,θa2,θb2は、補強コード22のタイヤ径方向の内端22aにおけるタイヤ周方向に対する接線である基準線SLに対して、補強コード22がなす角度(鋭角)と定義される。
【0041】
本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aの補強コード22の内側直線部22cと外側直線部22dの傾斜角度θa1,θb1と、イン側サイド補強層21Bの補強コード22の内側直線部22cと外側直線部22dの傾斜角度θa2,θb2とがそれぞれ同一に設定されている。
【0042】
アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの内側直線部22cの傾斜角度θa1,θa2は、25度以上45度以下に設定される。また、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの外側直線部22dの傾斜角度θb1,θb2は、15度以上35度以下に設定される。
【0043】
アウト側サイド補強層21Aにおける内側直線部22cの傾斜角度θa1からアウト側サイド補強層21Aにおける外側直線部22dの傾斜角度θb1を引いた差は、5度以上に設定される。同様に、イン側サイド補強層21Bにおける内側直線部22cの傾斜角度θa2からイン側サイド補強層21Bにおける外側直線部22dの傾斜角度θb2を引いた差は、5度以上に設定される。つまり、傾斜角度θa1,θb1,θa2,θb2は、以下の関係を満たすように設定される。
【0044】
(数1)
θa1−θb1≧5°
θa2−θb2≧5°
【0045】
以上の構成を有する本実施形態に係る空気入りタイヤ1の種々の特徴を説明する。
【0046】
一対のビード部4A,4Bのビードフィラー12に対してタイヤ幅方向に隣接してタイヤ径方向外側に延びるように配置されたアウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bを設けることで、サイドウォール部3A,3Bの変形が抑制される。その結果、操縦安定性が向上する。
【0047】
個々の補強コード22において、外端22bを含む部分、つまり最外周側の部分である外側直線部22dが有する傾斜角度θb1,θb2は、内端22aを含む部分、つまり最内周側の部分である内側直線部22cが有する傾斜角度θa1,θa2よりも小さい。補強コード22の傾斜角度θa1,θa2,θb1,θb2をこのように設定することで、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向外側の領域におけるタイヤ径方向の剛性は、タイヤ径方向の内側の領域におけるタイヤ径方向の剛性に対して相対的に低くなる。このように、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向外側の領域のタイヤ径方向の剛性が相対的に低いことで、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ幅方向の剛性の過度な増大が抑制される。その結果、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ幅方向の変形が過度に抑制されず、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ幅方向の変形性がある程度確保されるので、乗り心地性が向上する。
【0048】
補強コード22の内側直線部22cと外側直線部22dの傾斜角度θa1,θa2,θb1,θb2を上述のように設定し、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向外側の領域における剛性を相対的に低く設定することで、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ径方向の弾性係数の過度な増大が抑制される。その結果、路面から空気入りタイヤ1へのタイヤ径方向の負荷入力に対する伝達遮断性が向上する。かかる伝達遮断性の向上によっても、乗り心地性が向上する。
【0049】
図2Aから
図3Bを参照すると、前述のように、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとのいずれについても、補強コード22はタイヤ径方向及びタイヤ周方向に対して同じ向き、つまりタイヤ径方向の内端22aよりもタイヤ径方向の外端22bが回転向きCの前方側に位置する向きに傾斜している(傾斜角度θa1,θa2,θb1,θb2)。かかるアウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22の傾きの設定により、制動性が向上する。以下、この点について詳述する。
【0050】
図4を参照すると、車両の制動時に路面から空気入りタイヤ1が受ける力Faは、車両及び空気入りタイヤ1自体の重量に由来する鉛直方向上向きの力Fbと、トレッド部2と路面Gとの間の摩擦力に由来する水平方向で車両の進行方向とは反対向きの力Fcの合力とみなせる。アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22の傾きを本実施形態のように設定していると、路面Gから空気入りタイヤ1が受ける力Faの向きは、補強コード22をタイヤ周方向にさらに傾斜させ、ないしは補強コード22を曲げる向きとなる。そのため、空気入りタイヤ1の接地形状CCの車両進行方向の寸法(接地長L)が、通常走行時(破線で示す)と比べて制動時(実線で示す)に大幅に長くなる。車両の制動時の接地長Lが大幅に延びることで、制動性が向上する。
【0051】
図5に示す比較例では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22のタイヤ径方向及びタイヤ周方向に対する傾斜が、本実施形態とは逆向きである。つまり、
図5の比較例では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22は、タイヤ径方向の内端22aよりもタイヤ径方向の外端22bが回転向きCの後方側に位置する向きに傾斜している。アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22の傾きをこのように設定していると、路面Gから空気入りタイヤ1が受ける力Faの向きは、個々の補強コード22を伸縮させる向きとなる。その結果、本実施形態とは異なり、接地長Lは、通常走行時(破線で示す)と比べて制動時(実線で示す)に余り長くならず、制動性は本実施形態と比較して劣る。
【0052】
また、本実施形態では、アウト側サイド補強層21Aの補強コード22の傾斜角度θa1,θb1と、イン側サイド補強層21Bの補強コード22の傾斜角度θa2,θb2とが等しいことで、車両の制動時にイン側とアウト側とで接地長Lが均一化される。これによっても制動性が向上する。
【0053】
アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22の傾斜角度θa1,θa2,θb1,θb2が過度に小さいと、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ径方向の剛性が不足し、操縦安定性を十分に向上させることができない。また、アウト側及びイン側サイド補強層の補強コードの傾斜角度が過度に大きいと、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ径方向の剛性が過度に大きくなり、必要な乗り心地性が得られない。さらに、傾斜角度θb1,θb2が傾斜角度θa1,θa2に対してある程度の差で小さくないと、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向外側の領域におけるタイヤ径方向の剛性を相対的に低くすることの効果が十分得られず、乗り心地性が向上しない。これらの理由から、前述のように、内側直線部22cの傾斜角度θa1,θa2を25度以上45度以下に設定し、外側直線部22dの傾斜角度θb1,θb2を15度以上35度以下に設定することが好ましい。また、内側直線部22cの傾斜角度θa1,θa2から外側直線部22dの傾斜角度θb1,θb2を引いた差を、前述のように5度以上に設定することが好ましい。
【0054】
ビードコア11はそれ自体で高剛性であるため、ビードコア11に対してタイヤ幅方向に隣接してアウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bを配置しても、それ以上の剛性向上は期待できず、重量増のみを招き得る。従って、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向の内端21aは、本実施形態のように、ビードコア11のタイヤ径方向の外端、つまり端面11aよりもタイヤ径方向の外側に位置することが好ましい。
【0055】
サイドウォール部3A,3Bのトレッド部2に近い領域までアウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bが設けられていると、サイドウォール部3のタイヤ幅方向の変形が過度に妨げられ、乗り心地性が低下し得る。本実施形態のように、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの外端21bが、ベルト補強層8のタイヤ幅方向外側の端部8aよりも、好ましくはタイヤ最大幅位置P6よりもタイヤ径方向の内側に位置することで、サイドウォール部3A,3Bのタイヤ幅方向の変形性が確保され、必要な乗り心地性が得られる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bを設けることにより操縦安定性を向上させながら、乗り心地性を向上できる。
【0057】
以下、本発明の第2及び第3実施形態を説明する。これらの実施形態における、特に言及しない構造、作用、及び機能は、第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同一又は同様の要素には、同一の符号が付されており、それらの要素に関する第1実施形態に関する説明と図面も参照される。
【0058】
(第2実施形態)
図6A及び
図6Bを参照すると、本実施形態では、補強コード22は2個の曲げ部22f,22gを備え、内側直線部22cと外側直線部22dとの間に中間直線部22hを備える。また、第1実施形態と同様に、補強コード22は、タイヤ径方向の内端22aよりも外端22bが空気入りタイヤ1の回転向きCの前方側に位置するように、タイヤ周方向及びタイヤ径方向に対して傾斜している。
【0059】
アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとで、中間直線部22hのタイヤ周方向に対する傾斜角度θc1,θc2を同一に設定している。第1実施形態と同様に、アウト側サイド補強層21Aとイン側サイド補強層21Bとの間で、内側直線部22cの傾斜角度θa1,θa2を同一に設定し、外側直線部22dの傾斜角度θb1,θb2を同一に設定している。アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのいずれについても、中間直線部22hの傾斜角度θc1,θc2は、内側直線部22cの傾斜角度θa1,θa2よりも小さく、外側直線部22dの傾斜角度θb1,θb2よりも大きい。
【0060】
補強コード22に、3個以上の曲げ部を設けてもよい。
【0061】
(第3実施形態)
図7A及び
図7Bを参照すると、本実施形態では、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bの補強コード22のタイヤ幅方向から見た形状が、同一曲率を有する円弧状(回転向きCの後方側に凸状)である。また、第1実施形態と同様に、補強コード22は、タイヤ径方向の内端22aよりも外端22bが空気入りタイヤ1の回転向きCの前方側に位置するように、タイヤ周方向及びタイヤ径方向に対して傾斜している。
【0062】
補強コード22は円弧状であるので傾斜角度は、内端22aから外端22bに向けて漸減している。例えば、内端22aにおける傾斜角度θd1,θd2(第1及び第2実施形態における傾斜角度θa1,θa2に相当)よりも、外端22b付近における傾斜角度θe1,θe2(第1及び第2実施形態における傾斜角度θb1,θb2に相当)が小さい。
【0063】
補強コード22のタイヤ幅方向から見た形状を、回転向きCの後方側に凸状である円弧状以外の曲線(例えば楕円弧)としてもよい。
【0064】
第2及び第3実施形態のいずれについても、第1実施形態と同様に、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bのタイヤ径方向外側の領域におけるタイヤ径方向の剛性を、タイヤ径方向の内側の領域におけるタイヤ径方向の剛性に対して相対的に低く設定している。これにより、アウト側及びイン側サイド補強層21A,21Bを設けることにより操縦安定性を向上させながら、乗り心地性を向上できる。
【0065】
また、第2及び第3実施形態のいずれについても、第1実施形態と同様に、補強コード22は、タイヤ径方向の内端22aよりも外端22bが空気入りタイヤ1の回転向きCの前方側に位置するように傾斜しているので、制動性を向上できる。
【0066】
図8に示す変形例に係る空気入りタイヤ1は、カーカスプライ5の巻き上げられた部分とビードフィラー12との間、つまりビードフィラー12に対してタイヤ幅方向外側に配置されたサイド補強層21A,21Bに加え、ビードフィラー12に対してタイヤ幅方向内側に配置されたサイド補強層21A’,21B’を備える。ビードフィラー12に対してタイヤ幅方向内側に配置されたサイド補強層21A’,21B’のみを設け、ビードフィラー12に対してタイヤ幅方向外側に配置されたサイド補強層21A,21Bをなくしてもよい。