(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも前記第1脱硫ユニットと前記第2脱硫ユニットとは、前記ケーシングの高さ方向に並んで配置されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の船舶用脱硫装置。
少なくとも前記第1脱硫ユニットと前記第2脱硫ユニットとは、前記ケーシングの高さ方向に垂直な方向に並んで配置されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の船舶用脱硫装置。
前記船舶用脱硫装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスを冷却するための冷却装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載の船舶用脱硫装置。
前記冷却装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスに冷却用空気を混入させるための冷却用空気供給手段を含むことを特徴とする、請求項12に記載の船舶用脱硫装置。
前記冷却装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスと熱交換するための熱交換器を含むことを特徴とする、請求項12又は13に記載の船舶用脱硫装置。
前記冷却装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスに水を噴霧する水噴霧手段を含むことを特徴とする、請求項12乃至14の何れか一項に記載の船舶用脱硫装置。
前記少なくとも一つの脱硫ユニットは、前記吸着部に洗浄水を供給するための洗浄装置を備えることを特徴とする、請求項1乃至15の何れか一項に記載の船舶用脱硫装置。
前記船舶用脱硫装置は、前記吸着部に対して乾燥用の流体を供給するための乾燥装置をさらに備えることを特徴とする、請求項16乃至20の何れか一項に記載の船舶用脱硫装置。
前記乾燥装置は、船舶に搭載されたエンジンまたはボイラから排出される排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットにより脱硫される前の前記排ガスの一部を前記吸着部に供給する乾燥用排ガス供給手段を含むことを特徴とする、請求項21に記載の船舶用脱硫装置。
前記乾燥装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスを冷却するために、空気と前記排ガスとを熱交換するための空気冷却装置を含み、前記空気冷却装置で加熱された前記空気を前記吸着部に対して供給することで前記吸着部を乾燥させることを特徴とする、請求項21又は22に記載の船舶用脱硫装置。
前記乾燥装置は、船舶に搭載されたエンジンまたはボイラから排出される排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットにより脱硫された後の前記排ガスの一部を前記吸着部に供給する処理後排ガス供給手段を含むことを特徴とする、請求項21又は23に記載の船舶用脱硫装置。
前記乾燥装置は、前記船舶に搭載されるボイラにおいて発生したスチームを前記吸着部に供給するための乾燥用スチーム供給手段を含むことを特徴とする、請求項21乃至24の何れか一項に記載の船舶用脱硫装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の湿式法による船舶用脱硫装置では、排ガス浄化後のスクラバ排水を船外に排出するため、船舶用脱硫装置を設置するには排水配管を含む大掛かりな改造工事が必要であり、ドックに入渠させる必要があることから、設置できるタイミングが限られてしまう。
また、上述した非特許文献1,2に記載された乾式法による船舶用脱硫装置では、消石灰が脱硫塔に充填されており、船上で再生操作を行わないことから、脱硫搭が大型化してしまう。また、脱硫搭における圧力損失が大きいため、排ガスを送風させるための送風機が必要となり、送風機の設置スペースを確保しなければならず、船上の限られたスペースの有効活用が困難になる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、乾式法による船舶用脱硫装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る船舶用脱硫装置は、
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを脱硫するための船舶用脱硫装置であって、
前記排ガスが導入されるケーシング、
前記ケーシングの内部に形成される吸着部、
少なくとも前記吸着部の内面によって仕切られる内側空間に形成される内側ガス流路、及び、
前記ケーシングの内面と前記吸着部の前記内面とは異なる外面とによって仕切られる外側空間に形成される外側ガス流路であって、前記内側ガス流路と前記吸着部によって隔てられる外側ガス流路、を含む少なくとも一つの脱硫ユニットを備えることを特徴とする。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ケーシングの内部において、吸着部の内面によって内側ガス流路が形成され、ケーシングの内面と吸着部の外面とによって外側ガス流路が形成されるとともに、両者は吸着部によって隔てられている。
内側ガス流路及び外側ガス流路の何れか一方に排ガスを流すことで、排ガスは吸着部を通過する。その間排ガスは吸着部で脱硫され、内側ガス流路及び外側ガス流路の何れか他方へ流出する。この際、排ガス流量が吸着部における排ガスの通過断面積(吸着部断面積)とガス流速の積であることから、上記(1)の構成のように脱硫ユニットを吸着部によって内側ガス流路と外側ガス流路とを隔てた二重構造とすることで、排ガスの通過断面積を大きく取ることができ、それにより吸着部のガス流速を小さくできる。さらに、コゼニー・カルマンの式などで表されるように、排ガスの吸着部通過距離の増加によって吸着部における圧力損失が増加することから、上記(1)の構成のように脱硫ユニットを二重構造とすることで、排ガスの吸着部通過距離を短くする(吸着部の厚みを小さくする)ことができ、圧力損失を低減できる。これにより、上記(1)の構成による脱硫ユニットを小型化できるとともに排ガスを送風するための送風機が不要となり、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記吸着部には、前記排ガス中の硫黄酸化物を吸着し、硫酸を生成することができる吸着剤が充填されている。
【0010】
上記(2)の構成によれば、吸着部に充填された吸着剤において排ガス中の硫黄酸化物が吸着されて硫酸が生成される。これにより、生成された硫酸を例えば洗浄水によって洗浄することで吸着剤を再生できるので、吸着剤の追加供給や硫黄酸化物吸着後の吸着剤の排出等が不要となる。したがって、船舶用脱硫装置を小型化できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記吸着剤は、活性炭である。
【0012】
上記(3)の構成によれば、活性炭の吸着剤を用いることで、排ガス中の硫黄酸化物を効率よく吸着できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、前記活性炭は、ペレット状に成型されている。
【0014】
上記(4)の構成によれば、活性炭がペレット状に成型されているので、吸着部において、ペレット同士が所定の隙間を確保した状態で接触するので、吸着部における排ガスまたは硫酸濃度の偏りを防ぐことができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記ケーシングは、前記ケーシングの高さ方向に対して直交する断面が方形状に形成され、
前記吸着部は、
方形状の前記断面の一辺に沿って延在する第1吸着部であって、前記ケーシングの前記内面と前記第1吸着部の外面とによって前記外側空間のうちの第1外側空間を仕切るとともに、少なくとも前記第1吸着部の内面が前記内側空間に対面する第1吸着部と、
方形状の前記断面の一辺に沿って延在する第2吸着部であって、前記ケーシングの前記内面と前記第2吸着部の外面とによって前記外側空間のうちの第2外側空間を仕切るとともに、少なくとも前記第1吸着部の前記内面との間の前記内側空間を仕切る第2吸着部と、を含む。
【0016】
上記(5)の構成によれば、第1吸着部及び第2吸着部の外面がそれぞれ外側空間に面し、第1吸着部及び第2吸着部の内面がそれぞれ内側空間に面する。また、上記(1)の構成に関して上述したように、外側空間には外側ガス流路が形成され、内側空間には内側ガス流路が形成されている。
内側ガス流路及び外側ガス流路の何れか一方に排ガスを流すことで、排ガスは第1吸着部及び第2吸着部を通過する。その間排ガスは第1吸着部及び第2吸着部で脱硫され、内側ガス流路及び外側ガス流路の何れか他方へ流出する。この際、上記(5)の構成のように脱硫ユニットを第1吸着部及び第2吸着部によって内側ガス流路と外側ガス流路とを隔てた二重構造とすることで、排ガスの通過断面積(吸着部断面積)を大きく取ることができ、それにより第1吸着部及び第2吸着部のガス流速を小さくできる。さらに、上記(5)の構成のように脱硫ユニットを二重構造としたので、排ガスの吸着部通過距離を短くする(第1吸着部及び第2吸着部の厚みを小さくする)ことで、圧力損失を低減できる。これにより、上記(5)の構成による脱硫ユニットを小型化できるとともに排ガスを送風するための送風機が不要となり、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記ケーシングは、前記ケーシングの高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成され、
前記吸着部は、前記ケーシングの内周面に沿って延在する前記外面としての外周面と、前記内側空間を仕切る前記内面としての内周面と、を有する第3吸着部を含み、
前記ケーシングの内周面と前記第3吸着部の前記外周面とによって前記外側空間が仕切られる。
【0018】
上記(6)の構成によれば、第3吸着部の外面が外側空間に面し、第3吸着部の内面が内側空間に面する。また、上記(1)の構成に関して上述したように、外側空間には外側ガス流路が形成され、内側空間には内側ガス流路が形成されている。
内側ガス流路及び外側ガス流路の何れか一方に排ガスを流すことで、排ガスは第3吸着部を通過する。その間排ガスは第3吸着部で脱硫され、内側ガス流路及び外側ガス流路の何れか他方へ流出する。この際、上記(6)の構成のように脱硫ユニットを第3吸着部によって内側ガス流路と外側ガス流路とを隔てた二重構造とすることで、排ガスの通過断面積(吸着部断面積)を大きく取ることができ、それにより第3吸着部のガス流速を小さくできる。さらに、上記(6)の構成のように脱硫ユニットを二重構造としたので、排ガスの吸着部通過距離を短くする(第3吸着部の厚みを小さくする)ことで、圧力損失を低減できる。これにより、上記(6)の構成による脱硫ユニットを小型化できるとともに排ガスを送風するための送風機が不要となり、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第3吸着部は、前記ケーシングの高さ方向において隙間を有するように形成された螺旋状を有し、
前記ケーシングに導入された前記排ガスは、前記隙間を通じて前記第3吸着部に接触し、重力の作用方向に沿って前記第3吸着部を通過するように構成され、
前記少なくとも一つの脱硫ユニットは、前記隙間に配置された、前記第3吸着部に洗浄水を供給するための洗浄装置を備える。
【0020】
上記(7)の構成によれば、第3吸着部がケーシングの高さ方向において隙間を有するように形成された螺旋状を有し、排ガスが上記隙間を通じて第3吸着部に接触し、重力の作用方向に沿って第3吸着部を通過するように構成されている。このため、上記隙間に排ガスを流すことで、第3吸着部を排ガスが通過し、排ガスの脱硫が進行する。このため、脱硫用の充填剤が充填された脱硫塔の排ガスを流す場合と比べて第3吸着部における排ガスの通過距離を短くしても所望の脱硫性能を発揮させることができるので、ケーシングの内部を流れる排ガスの流速を大きくでき、且つ圧損を抑制できる。
また、第3吸着部に洗浄水を供給するための洗浄装置が上記隙間に配置されている。これにより、第3吸着部において、洗浄水はケーシングの高さ方向に隣接する2つの上記隙間の間に位置する第3吸着部を通過することとなる。したがって、第3吸着部における洗浄水の通過距離を短くすることができるので、洗浄水が通過する上流側と下流側とで洗浄ムラが生じるのを抑制できる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、前記少なくとも一つの脱硫ユニットは、第1脱硫ユニットと、第2脱硫ユニットと、を含む。
【0022】
上記(8)の構成によれば、第1脱硫ユニット及び第2脱硫ユニットのいずれか一方を再生しながら何れか他方で排ガスの脱硫を行うことができるので、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、前記少なくとも一つの脱硫ユニットは、少なくとも第3脱硫ユニットをさらに含むことを特徴とする。
【0024】
複数の脱硫ユニットが設けられていて、何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行う場合、再生中の脱硫ユニットを除いた他の脱硫ユニットで脱硫を行うことになるが、当該他の脱硫ユニットにおける吸着部によって所定の脱硫能力を確保する必要がある。
ここで、当該所定の脱硫能力を確保するのに必要な吸着部の量をQとする。脱硫ユニットが二つの場合、何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの一つの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行わなければならないので、一つの脱硫ユニットの吸着部の量はQとなり、脱硫ユニットの数が二つであるため、船舶用脱硫装置の全体では、吸着部の量は2Qとなる。
上記(9)の構成によれば、第1脱硫ユニット〜第3脱硫ユニットの3つの脱硫ユニットを含むので、何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの二つの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行うので、二つの脱硫ユニットの吸着部の量の合計がQであればよく、脱硫ユニット一つ当たりの吸着部の量は0.5Qとなる。上記(9)の構成によれば、脱硫ユニットの数が三つであるため、船舶用脱硫装置の全体では、吸着部の量は1.5Qとなり、脱硫ユニットが2つである場合と比べて、吸着部の合計量を低減できる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)の構成において、少なくとも前記第1脱硫ユニットと前記第2脱硫ユニットとは、前記ケーシングの高さ方向に並んで配置されている。
【0026】
上記(10)の構成によれば、少なくとも第1脱硫ユニットと第2脱硫ユニットとがケーシングの高さ方向に並んで配置されているので、第1脱硫ユニットと第2脱硫ユニットとを船舶のデッキに対して垂直に並んで配置することができる。これにより、船舶用脱硫装置の設置面積を抑制でき、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)の構成において、少なくとも前記第1脱硫ユニットと前記第2脱硫ユニットとは、前記ケーシングの高さ方向に垂直な方向に並んで配置されている。
【0028】
上記(11)の構成によれば、少なくとも第1脱硫ユニットと第2脱硫ユニットとがケーシングの高さ方向に垂直な方向に並んで配置されているので、第1脱硫ユニットと第2脱硫ユニットとを船舶のデッキ上で水平に配置することができる。これにより、船舶用脱硫装置の設置高さを抑制でき、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかの構成において、前記船舶用脱硫装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスを冷却するための冷却装置をさらに備える。
【0030】
例えば吸着部に活性炭を用いた場合のように、一般的には、排ガスの脱硫率は排ガスの温度が低いほど良好である。
その点、上記(12)の構成によれば、吸着部に接触させる排ガスの温度を抑制できるので、脱硫率を向上できる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、前記冷却装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスに冷却用空気を混入させるための冷却用空気供給手段を含む。
【0032】
上記(13)の構成によれば、簡素な冷却装置によって冷却用空気を混入させることで排ガスを冷却できる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)の構成において、前記冷却装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスと熱交換するための熱交換器を含む。
【0034】
上記(14)の構成によれば、簡素な冷却装置によって排ガスを冷却できる。また、熱交換器によって回収した排ガスの熱が利用可能となるので、船舶における燃料消費量を低減できる。
【0035】
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)乃至(14)の何れかの構成において、前記冷却装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスに水を噴霧する水噴霧手段を含む。
【0036】
上記(15)の構成によれば、簡素な冷却装置によって水を噴霧することで排ガスを冷却できる。
【0037】
(16)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(15)の何れかの構成において、前記少なくとも一つの脱硫ユニットは、前記吸着部に洗浄水を供給するための洗浄装置を備える。
【0038】
上記(16)の構成によれば、吸着部を洗浄水で洗浄して吸着部を再生できるので、脱硫ユニットを小型化でき、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0039】
(17)幾つかの実施形態では、上記(16)の構成において、
前記船舶用脱硫装置は、
前記洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンクに貯留された洗浄水を前記吸着部に供給する第1供給配管と、
前記吸着部に供給されて前記吸着部を通過した後の洗浄水を前記洗浄水タンクに導く第1排水管と、を備える。
【0040】
上記(17)の構成によれば、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を洗浄水タンクに導くようにしたので、洗浄水を再利用できる。これにより、洗浄水タンクに貯留させる洗浄水の量を低減でき、洗浄水タンクを小型化できる。
【0041】
(18)幾つかの実施形態では、上記(16)の構成において、
前記船舶用脱硫装置は、
前記洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンクに貯留された洗浄水を前記吸着部に供給する第1供給配管と、
前記吸着部に供給されて前記吸着部を通過した後の洗浄水を回収する排水回収タンクと、
前記吸着部を通過した後の洗浄水を前記排水回収タンクに導く第2排水管と、
前記排水回収タンクに回収された洗浄水を前記吸着部に供給する第2供給配管と、を備える。
【0042】
上記(18)の構成によれば、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を排水回収タンクの回収することで、吸着部を通過した後の洗浄水が洗浄水タンクの洗浄水と混ざらず、洗浄水タンクの洗浄水を清浄に保つことができる。これにより、洗浄水タンクの洗浄水で吸着部を洗浄することで、吸着部の再生時に効率的に脱着できる。
また、上記(18)の構成によれば、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を排水回収タンクに回収し、回収した洗浄水を吸着部に供給することができる。排水回収タンクに回収した洗浄水に含まれる吸着部から脱着した脱着物の濃度が再び吸着部の再生を行うことができる程度の濃度であれば、排水回収タンクに回収した洗浄水を再利用できる。これにより、洗浄水タンクに貯留させる洗浄水の量を低減でき、洗浄水タンクを小型化できる。
【0043】
(19)幾つかの実施形態では、上記(18)の構成において、
前記排水回収タンクは、少なくとも第1排水回収タンクと、前記第1排水回収タンクとは異なる第2排水回収タンクとを含み、
前記吸着部を通過した後の洗浄水を前記第1排水回収タンクに導くか前記第2排水回収タンクに導くかを前記吸着部を通過した後の洗浄水に含まれる前記吸着部から脱着した脱着物の濃度に応じて切り替える切替部をさらに備える。
【0044】
上記(19)の構成によれば、吸着部から脱着した脱着物の濃度に応じて吸着部を通過した後の洗浄水を第1排水回収タンクに導くか第2排水回収タンクに導くかを切り替え可能に構成したので、第1排水回収タンク及び第2排水回収タンクに回収した洗浄水における上記脱着物の濃度を制御できる。これにより、再利用する洗浄水における上記脱着物の濃度を再び吸着部の再生を行うことができる程度の濃度に抑えることができる。これにより、洗浄水を効率的に再利用できる。したがって、洗浄水タンクに貯留させる洗浄水の量を低減でき、洗浄水タンクや排水回収タンクを小型化できる。
【0045】
(20)幾つかの実施形態では、上記(16)乃至(19)の何れかの構成において、
前記吸着部は、第1吸着領域と、前記第1吸着領域とは異なる第2吸着領域と、を少なくとも含み、
前記洗浄装置は、前記第1吸着領域、及び前記第2吸着領域に対して独立して前記洗浄水を供給可能に構成される。
【0046】
上記(20)の構成によれば、第1吸着領域及び第2吸着領域のいずれか一方を洗浄水で洗浄しながら何れか他方で排ガスの脱硫を行うことができる。したがって、例えば、一つの脱硫ユニット内で脱硫と再生とを同時に実施できるので、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
【0047】
(21)幾つかの実施形態では、上記(16)乃至(20)の何れかの構成において、前記船舶用脱硫装置は、前記吸着部に対して乾燥用の流体を供給するための乾燥装置をさらに備える。
【0048】
上記(21)の構成によれば、洗浄後の吸着部を乾燥用の流体で乾燥できる。
【0049】
(22)幾つかの実施形態では、上記(21)の構成において、前記乾燥装置は、船舶に搭載されたエンジンまたはボイラから排出される排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットにより脱硫される前の前記排ガスの一部を前記吸着部に供給する乾燥用排ガス供給手段を含む。
【0050】
上記(22)の構成によれば、簡素な乾燥装置によって、排ガスの一部で吸着部を乾燥できる。また、吸着部の乾燥のための新たな熱源が不要である。
【0051】
(23)幾つかの実施形態では、上記(21)又は(22)の構成において、前記乾燥装置は、前記排ガス発生装置から排出される前記排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットの前記ケーシングに導入される前の前記排ガスを冷却するために、空気と前記排ガスとを熱交換するための空気冷却装置を含み、前記空気冷却装置で加熱された前記空気を前記吸着部に対して供給することで前記吸着部を乾燥させる。
【0052】
上記(23)の構成によれば、空気冷却装置で排ガスから熱を奪うことで加熱された空気を吸着部に対して供給することで吸着部を乾燥させることができる。これにより、吸着部に接触させる排ガスの温度を抑制できるので、脱硫率を向上できるとともに、吸着部の乾燥のための新たな熱源が不要となる。
【0053】
(24)幾つかの実施形態では、上記(21)又は(23)の構成において、前記乾燥装置は、船舶に搭載されたエンジンまたはボイラから排出される排ガスであって、前記少なくとも一つの脱硫ユニットにより脱硫された後の前記排ガスの一部を前記吸着部に供給する処理後排ガス供給手段を含む。
【0054】
上記(24)の構成によれば、簡素な乾燥装置によって、脱硫された後の排ガスの一部で吸着部を乾燥できる。また、吸着部の乾燥のための新たな熱源が不要である。さらに、脱硫ユニットにより脱硫される前の排ガスの一部を吸着部に供給することで吸着部を乾燥する場合と比べて、脱硫ユニットから排出される排ガスの硫黄酸化物の濃度を低減できる。
【0055】
(25)幾つかの実施形態では、上記(21)乃至(24)の何れかの構成において、前記乾燥装置は、前記船舶に搭載されるボイラにおいて発生したスチームを前記吸着部に供給するための乾燥用スチーム供給手段を含む。
【0056】
上記(25)の構成によれば、簡素な乾燥装置によって、船舶に搭載されるボイラにおいて発生したスチームを吸着部に供給して吸着部を乾燥できる。また、吸着部の乾燥のための新たな熱源が不要である。
【発明の効果】
【0057】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、乾式法による船舶用脱硫装置を小型化できる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0060】
図1Aは、幾つかの実施形態に係る脱硫ユニットを備える船舶用脱硫装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
図1Bは、幾つかの実施形態に係る脱硫ユニットを備える船舶用脱硫装置の他の実施形態の全体構成を示す図である。
図1C、
図1D、
図1E、
図1F、
図1G、
図1H、
図1I、
図1J、
図1K、
図1L、及び、
図1Mは、幾つかの実施形態に係る脱硫ユニットを備える船舶用脱硫装置のさらに他の実施形態のそれぞれについて、全体構成を示す図である。
【0061】
幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1Mは、少なくとも一つの脱硫ユニット100を備えている。脱硫ユニット100は、後述するように、船舶10のエンジン11から排出される排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する吸着部を有する。脱硫ユニット100の詳細については、後で説明する。
図1A、
図1B、
図1D〜
図1K及び
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、B、1D〜1K、1Mは、例えば第1脱硫ユニット100Aと第2脱硫ユニット100Bとを備えている。これにより、後述するように、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方を再生しながら何れか他方で排ガスの脱硫を行うことができるので、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
【0062】
図1Lに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Lは、例えば第1脱硫ユニット100Aと第2脱硫ユニット100Bと第3脱硫ユニット100Cとを備えている。
複数の脱硫ユニットが設けられていて、何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行う場合、再生中の脱硫ユニットを除いた他の脱硫ユニットで脱硫を行うことになるが、当該他の脱硫ユニットにおける吸着部によって、必要とされる所定の脱硫能力を確保する必要がある。
【0063】
ここで、当該所定の脱硫能力を確保するのに必要な吸着部の量、すなわち、後述するように吸着部に充填されている吸着剤の量をQとする。脱硫ユニットが二つの場合、何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの一つの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行わなければならないので、一つの脱硫ユニットの吸着剤の量はQとなり、脱硫ユニットの数が二つであるため、船舶用脱硫装置の全体では、吸着剤の量は2Qとなる。
図1Lに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Lによれば、第1脱硫ユニット100A〜第3脱硫ユニット100Cの3つの脱硫ユニットを含むので、何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの二つの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行うので、二つの脱硫ユニットの吸着剤の量の合計がQであればよく、脱硫ユニット一つ当たりの吸着剤の量は0.5Qとなる。
図1Lに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Lによれば、脱硫ユニットの数が三つであるため、船舶用脱硫装置1Lの全体では、吸着剤の量は1.5Qとなり、脱硫ユニットが2つである場合と比べて、吸着剤の合計量を低減できる。
このように、船舶用脱硫装置における吸着剤の合計量は、脱硫ユニット数を増やすほど低減できるが、脱硫ユニットの数が増える。したがって、船舶用脱硫装置における脱硫ユニットの数は、脱硫ユニットを増やすことによる吸着剤の量の低減効果と、脱硫ユニットを増やすことによる設置スペースの増加とを勘案して適宜決定すればよい。
【0064】
図1C及び
図1Iに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1C、1Iは、一つの脱硫ユニット100を備えている。
幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1Mにおける脱硫ユニット100は、後で説明する
図2〜
図4に示した幾つかの実施形態の脱硫ユニット100の何れであってもよい。
なお、以下の説明では、説明の対象となる船舶用脱硫装置を上記の船舶用脱硫装置1A〜1Mの何れかに特定する必要がない場合、符号のアルファベットを省略し、単に船舶用脱硫装置1と表記することもある。
【0065】
図1A〜
図1H、
図1J〜
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1H、1J〜1Mでは、脱硫ユニット100は、例えば船舶10の化粧煙突13の内部に配置される。なお、脱硫ユニット100は、煙突の横のデッキ12上の空いているスペースに配置されてもよい。
図1Iに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Iでは、脱硫ユニット100は、例えば煙突14の上端に配置される。
【0066】
幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1Mでは、エンジン11と脱硫ユニット100の上流側とは、入口側排気管31で接続されている。脱硫ユニット100の下流側には、脱硫後の排ガスを排出する出口側排気管41が接続されている。
なお、幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1Mでは、エンジン11からの排ガスを脱硫ユニット100を介さずに大気中に排出するバイパス管34がバイパスバルブ35を介して入口側排気管31に接続されている。船舶10の運航時には、バイパスバルブ35は原則として閉じられ、エンジン11からの排ガスは、全量が脱硫ユニット100に供給される。但し、例えば脱硫ユニット100の点検時など、排気ガスを脱硫ユニット100側に供給することが適切でない場合には、バイパスバルブ35を開くことで、仮にエンジン11が始動されたとしても排ガスが脱硫ユニット100側に流れないようにすることもできる。
【0067】
図1A〜
図1H、
図1J〜
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1H、1J〜1Mは、吸着部の再生のための洗浄水を供給する洗浄水供給装置20を有する。洗浄水供給装置20は、例えば船舶10に積載されるコンテナ21の内部に設けられた、洗浄水タンク22と、送水ポンプ23とを有する。
洗浄水タンク22内の洗浄水は、脱硫ユニット100の再生時に送水ポンプ23で脱硫ユニット100に送水される。なお、送水ポンプ23と脱硫ユニット100とは、洗浄水供給配管24で接続されている。吸着部の再生については、後で説明する。
図1A及び
図1Jに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、IJでは、再生後の排水は、脱硫ユニット100から排水管26を介して排出されて、排水回収タンク27に回収される。
図1Kに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置IKでは、再生後の排水は、脱硫ユニット100から排水管26を介して排出されて、第1排水回収タンク27a又は第2排水回収タンク27bの何れかに回収される。なお、
図1Kに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置IKでは、後述するように、切換弁75によって脱硫ユニット100から排出される再生後の排水が第1排水回収タンク27aに回収されるか、第2排水回収タンク27bに回収されるのかが切り替えられる。
【0068】
なお、後述するように、再生後の排水には硫酸が含まれているが、その濃度は、再生後の排水によって再び吸着部の再生を行うことができる程度の低濃度である。そこで、
図1B〜
図1H、
図1L、
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1B〜1H、1L、1Mのように、再生後の排水を洗浄水タンク22に回収することで、洗浄水タンク22内の洗浄水を繰り返し吸着部の再生に利用するようにしてもよい。
すなわち、
図1B〜
図1H、
図1L、
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1B〜1H、1L、1Mの洗浄水供給装置20は、洗浄水を貯留する洗浄水タンク22と、洗浄水タンク22に貯留された洗浄水を吸着部に供給する第1供給配管である洗浄水供給配管24と、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を洗浄水タンク22に導く第1排水管である排水管26とを備える。
【0069】
吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を洗浄水タンク22に導くようにしたので、洗浄水を再利用できる。これにより、洗浄水タンク22に貯留させる洗浄水の量を低減でき、洗浄水タンク22を小型化できる。
【0070】
または、
図1J及び
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1J、1Kのように、排水回収タンク27へ回収した低濃度の硫酸水を洗浄水として吸着部の再生に利用するようにしてもよい。
図1J及び
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1J、1Kの洗浄水供給装置20は、洗浄水を貯留する洗浄水タンク22と、洗浄水タンク22に貯留された洗浄水を吸着部に供給する第1供給配管である洗浄水供給配管24と、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を回収する排水回収タンク27とを備える。
図1J及び
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1J、1Kの洗浄水供給装置20は、吸着部を通過した後の洗浄水を排水回収タンク27に導く第2排水管である排水管26と、排水回収タンク27に回収された洗浄水を吸着部に供給する第2供給配管である回収水供給配管28とを備える。
【0071】
また、
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、排水回収タンク27は、第1排水回収タンク27aと、第1排水回収タンク27aとは異なる第2排水回収タンク27bとを含む。
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、吸着部を通過した後の洗浄水を第1排水回収タンク27aに導くか第2排水回収タンク27bに導くかを吸着部を通過した後の洗浄水に含まれる吸着部から脱着した脱着物の濃度、すなわち硫酸の濃度に応じて切り替える切替部である切換弁75をさらに備える。
なお、
図1Kにおいて、切換弁75は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0072】
図1Jに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Jの洗浄水供給装置20では、送水ポンプ23の吸入側に切換弁71が設けられており、送水ポンプ23で送水する洗浄水を洗浄水タンク22に貯留されている洗浄水とするか排水回収タンク27に回収されている洗浄水とするのかを切り替えることができる。
図1Jに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Jの洗浄水供給装置20では、排水回収タンク27は、回収水供給配管28及び切換弁71を介して送水ポンプ23の吸入側に接続されている。
図1Jに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Jの洗浄水供給装置20では、切換弁71は、後述する制御装置2によって切替状態が制御される。
なお、
図1Jにおいて、切換弁71は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0073】
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、送水ポンプ23の吸入側に切換弁71が設けられている。
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、切換弁71は、送水ポンプ23で送水する洗浄水を洗浄水タンク22に貯留されている洗浄水とするのか、第1排水回収タンク27a又は第2排水回収タンク27bに回収されている洗浄水とするのかを切り替えることができる。
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、切換弁71には、回収タンク切換弁72が接続されている。回収タンク切換弁72は、切換弁71を介して送水ポンプ23で送水する洗浄水を第1排水回収タンク27aに回収されている洗浄水とするのか、第2排水回収タンク27bに回収されている洗浄水とするのかを切り替えることができる。
なお、
図1Kにおいて、切換弁71及び回収タンク切換弁72は、それぞれ三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0074】
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、第1排水回収タンク27aは、第1回収水供給配管28a、回収タンク切換弁72及び切換弁71を介して送水ポンプ23の吸入側に接続されており、第2排水回収タンク27bは、第2回収水供給配管28b、回収タンク切換弁72及び切換弁71を介して送水ポンプ23の吸入側に接続されている。すなわち、
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、切換弁71及び回収タンク切換弁72の切替状態に応じて、送水ポンプ23で送水する洗浄水が、洗浄水タンク22、第1排水回収タンク27a及び第2排水回収タンク27bの何れかに貯留されている洗浄水に変更可能である。
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、切換弁71及び回収タンク切換弁72は、後述する制御装置2によって切替状態が制御される。
【0075】
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kの洗浄水供給装置20では、吸着部を通過した後の洗浄水における硫酸の濃度が不図示の硫酸濃度検出部によって検出されるように構成されている。硫酸濃度検出部による検出結果は、後述する制御装置2に出力される。制御装置2は、硫酸濃度検出部による検出結果に基づき、切換弁75を切り替えることで、吸着部を通過した後の洗浄水を第1排水回収タンク27aに導くか第2排水回収タンク27bに導くかを切り替える。
例えば、制御装置2は、硫酸濃度検出部による検出結果に基づき、吸着部を通過した後の洗浄水における硫酸の濃度がある閾値以下の濃度であると判断できれば、吸着部を通過した後の洗浄水を第1排水回収タンク27aに導くように切換弁75を切り替える。また、例えば、制御装置2は、硫酸濃度検出部による検出結果に基づき、吸着部を通過した後の洗浄水における硫酸の濃度が上記の閾値を超える濃度であると判断できれば、吸着部を通過した後の洗浄水を第2排水回収タンク27bに導くように切換弁75を切り替える。
このように回収した洗浄水を再び利用する場合、洗浄に利用する回数が増えるほど、洗浄水中の硫酸濃度が高くなる。排水回収タンク27を、硫酸濃度別に複数設けることで、洗浄に適切な硫酸濃度の洗浄水を供給することもできる。
なお、排水回収タンクを3つ以上設け、硫酸の濃度に応じて吸着部を通過した後の洗浄水を何れの排水回収タンクに導くのかを切り替えるようにしてもよい。
【0076】
図1J及び
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1J、1Kでは、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を排水回収タンク27の回収することで、吸着部を通過した後の洗浄水が洗浄水タンク22の洗浄水と混ざらず、洗浄水タンク22の洗浄水を清浄に保つことができる。すなわち、洗浄水タンク22の洗浄水に硫酸が混入することを防止できる。これにより、洗浄水タンク22の洗浄水で吸着部を洗浄することで、吸着部の再生時に効率的に脱着できる。
また、
図1J及び
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1J、1Kでは、吸着部に供給されて吸着部を通過した後の洗浄水を排水回収タンク27に回収し、回収した洗浄水を吸着部に供給することができる。排水回収タンク27に回収した洗浄水に含まれる吸着部から脱着した脱着物である硫酸の濃度が再び吸着部の再生を行うことができる程度の濃度であれば、排水回収タンク27に回収した洗浄水を再利用できる。これにより、洗浄水タンク22に貯留させる洗浄水の量を低減でき、洗浄水タンク22を小型化できる。
【0077】
図1Kに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Kでは、吸着部から脱着した脱着物である硫酸の濃度に応じて吸着部を通過した後の洗浄水を第1排水回収タンク27aに導くか第2排水回収タンク27bに導くかを切り替え可能に構成したので、第1排水回収タンク27a及び第2排水回収タンク27bに回収した洗浄水における硫酸の濃度を制御できる。これにより、再利用する洗浄水における硫酸の濃度を再び吸着部の再生を行うことができる程度の濃度に抑えることができる。これにより、洗浄水を効率的に再利用できる。したがって、洗浄水タンク22に貯留させる洗浄水の量を低減でき、洗浄水タンク22や排水回収タンク27a、27bを小型化できる。
【0078】
吸着部の再生後に回収された排水は、船舶10の寄港時に、陸上側で回収されて処理される。また、船舶10の寄港時には、新たな洗浄水が洗浄水タンク22に供給される。
【0079】
図2は、幾つかの実施形態の脱硫ユニット100の構造を模式的に示す縦断面図である。
図3A〜
図3Fは、幾つかの実施形態に係る脱硫ユニット100の模式的な横断面図である。
図4は、他の実施形態に係る脱硫ユニット100の構造を模式的に示す縦断面図である。
図2〜
図4に示すように、幾つかの実施形態の脱硫ユニット100は、排ガスが導入されるケーシング101と、ケーシング101の内部に形成される吸着部110と、内側ガス流路121と、外側ガス流路122とを含む。内側ガス流路121は、吸着部110の内面によって仕切られる内側空間102に形成されるガス流路である。外側ガス流路122は、ケーシング101の内面と吸着部110の内面とは異なる外面とによって仕切られる外側空間103に形成され、内側ガス流路121と吸着部110によって隔てられる。
幾つかの実施形態の脱硫ユニット100では、後述するように、入口側排気管31から外側ガス流路122に導入された排ガスは、吸着部110において脱硫される。そして、吸着部110で脱硫された後の排ガスは、内側ガス流路121から出口側排気管41に排出される。なお、幾つかの実施形態の脱硫ユニット100において、入口側排気管31から内側ガス流路121に排ガスを導入し、吸着部110において脱硫させた後、外側ガス流路122から出口側排気管41に排出させてもよい。
【0080】
脱硫ユニット100を上述のように構成することで、ケーシング101の内部において、吸着部110の内面によって内側ガス流路121が形成され、ケーシング101の内面と吸着部110の外面とによって外側ガス流路122が形成されるとともに、両者は吸着部110によって隔てられている。このため、内側ガス流路121および外側ガス流路122に排ガスを流すことで、例えば
図2の矢印b,cで示すように吸着部110を排ガスが流れることによって排ガスの脱硫が進行する。
【0081】
例えば、上述した非特許文献1,2に記載された乾式法による船舶用脱硫装置では、消石灰が脱硫塔に充填されており、船上で再生操作を行わないことから、脱硫搭が大型化してしまう。また、脱硫搭における圧力損失が大きいため、排ガスを送風させるための送風機が必要となり、送風機の設置スペースを確保しなければならず、船上の限られたスペースの有効活用が困難になる。
【0082】
これに対して、幾つかの実施形態の脱硫ユニット100では、内側ガス流路121及び外側ガス流路122の何れか一方に排ガスを流すことで、排ガスは吸着部110を通過する。その間排ガスは吸着部110で脱硫され、内側ガス流路121及び外側ガス流路122の何れか他方へ流出する。この際、上述したように脱硫ユニット100を吸着部110によって内側ガス流路121と外側ガス流路122とを隔てた二重構造とすることで、排ガスの通過断面積(吸着部断面積)を大きく取ることができ、それにより吸着部110のガス流速を小さくできる。さらに、上述したように脱硫ユニット100を二重構造としたので、排ガスの吸着部通過距離を短くする(吸着部110の厚みを小さくする)ことで、圧力損失を低減できる。これにより、脱硫ユニット100を小型化できるとともに排ガスを送風するための送風機が不要となり、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0083】
なお、
図2における符号a〜dを付した矢印は、排ガスの流れを示す。また、
図2では、吸着部110の図示右側において、排ガスの流れを示す矢印の記載を省略している。
【0084】
図3A、及び
図3C〜
図3Fに示した幾つかの実施形態では、ケーシング101は、に対して直交する断面が方形状に形成されている。
図3Bに示した一実施形態では、ケーシング101は、ケーシング101の高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成されている。
【0085】
図3A〜
図3Cに示した幾つかの実施形態では、吸着部110よりもケーシング101の内側の領域に、上下方向に延在する内側多孔筒131が配置され、吸着部110よりもケーシング101の外側の領域に、上下方向に延在する外側多孔筒132が配置されている。
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態では、吸着部110よりもケーシング101の内側の領域に、上下方向に延在する内側多孔板141が配置され、吸着部110よりもケーシング101の外側の領域に、上下方向に延在する外側多孔板142が配置されている。
【0086】
図3A〜
図3Cに示した幾つかの実施形態では、吸着部110は、上下方向に延在する筒状を呈する。
図3A及び
図3Bに示した幾つかの実施形態の吸着部110は、円筒状を呈する。
図3Cに示した一実施形態の吸着部110は、角筒状を呈する。
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態では、厚板状を呈する第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとを備え、第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとが対向して配置されている。
【0087】
図3Fに示した一実施形態では、第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとの対を2対備える。一方の対の第1吸着部110Aと、他方の対の第1吸着部110Aとは、ケーシング101の高さ方向から見たときに、それぞれの延在方向が交差する。同様に、一方の対の第2吸着部110Bと、他方の対の第2吸着部110Bとは、ケーシング101の高さ方向から見たときに、それぞれの延在方向が交差する。
図3Fに示した一実施形態では、ケーシング101の高さ方向から見たときに、ケーシング101を構成する側板101aの延在方向と、2つの第1吸着部110Aのそれぞれの延在方向とが交差するように2つの第1吸着部110Aのそれぞれが配置されている。同様に、
図3Fに示した一実施形態では、ケーシング101の高さ方向から見たときに、ケーシング101を構成する側板101aの延在方向と、2つの第2吸着部110Bのそれぞれの延在方向とが交差するように2つの第1吸着部110Aのそれぞれが配置されている。
【0088】
図3Eに示した一実施形態では、第1吸着部110A及び第2吸着部110Bのそれぞれは、ケーシング101の高さ方向から見たときに、第1吸着領域111と、第1吸着領域とは異なる第2吸着領域112とを含む。
【0089】
このように、
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態では、第1吸着部110Aは、ケーシング101の内面と第1吸着部110Aの外面とによって外側空間103のうちの第1外側空間103Aを仕切るとともに、第1吸着部110Aの内面が内側空間102に対面する。なお、
図3D及び
図3Dに示した幾つかの実施形態では、第1吸着部110Aは、ケーシング101の高さ方向に対して直交するケーシング101の方形状の断面の一辺に沿って延在する。また、
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態では、第2吸着部110Bは、ケーシング101の内面と第2吸着部110Bの外面とによって外側空間103のうちの第2外側空間103Bを仕切るとともに、第1吸着部110Aの内面との間の内側空間102を仕切る。なお、
図3D及び
図3Dに示した幾つかの実施形態では、第2吸着部110Bは、ケーシング101の高さ方向に対して直交するケーシング101の方形状の断面の一辺に沿って延在する。
【0090】
したがって、
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態によれば、第1吸着部110A及び第2吸着部110Bの外面がそれぞれ外側空間103に面し、第1吸着部110A及び第2吸着部110Bの内面がそれぞれ内側空間102に面する。また、上述したように、外側空間103には外側ガス流路122が形成され、内側空間102には内側ガス流路121が形成されている。
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態では、内側ガス流路121及び外側ガス流路122の何れか一方に排ガスを流すことで、排ガスは第1吸着部110A及び第2吸着部110Bを通過する。その間排ガスは第1吸着部110A及び第2吸着部110Bで脱硫され、内側ガス流路121及び外側ガス流路122の何れか他方へ流出する。この際、
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態の脱硫ユニット100を上述したように第1吸着部110A及び第2吸着部110Bによって内側ガス流路121と外側ガス流路122とを隔てた二重構造とすることで、排ガスの通過断面積(吸着部断面積)を大きく取ることができ、それにより第1吸着部110A及び第2吸着部110Bのガス流速を小さくできる。さらに、
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態の脱硫ユニット100を二重構造としたので、排ガスの吸着部通過距離を短くする(第1吸着部110A及び第2吸着部110Bの厚みを小さくする)ことで、圧力損失を低減できる。これにより、
図3D〜
図3Fに示した幾つかの実施形態の脱硫ユニット100小型化できるとともに排ガスを送風するための送風機が不要となり、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0091】
また、
図3Bに示した一実施形態では、ケーシング101は、ケーシング101の高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成されている。そして、
図3Bに示した一実施形態の吸着部110は、ケーシング101の内周面に沿って延在する外面としての外周面114と、内側空間102を仕切る内面としての内周面113とを有する。以下の説明では、上述した厚板状を呈する第1吸着部110A及び第2吸着部110Bと区別するため、ケーシング101の高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成されている、
図3Bに示した一実施形態の吸着部110を第3吸着部110Cとも呼ぶ。
図3Bに示した一実施形態では、ケーシング101の内周面と第3吸着部110Cの外周面114とによって外側空間103が仕切られる。
【0092】
図3Bに示した一実施形態では、第3吸着部110Cの外周面114が外側空間103に面し、第3吸着部110Cの内周面113が内側空間102に面する。また、上述したように、外側空間103には外側ガス流路122が形成され、内側空間102には内側ガス流路121が形成されている。
内側ガス流路121及び外側ガス流路122の何れか一方に排ガスを流すことで、排ガスは第3吸着部110Cを通過する。その間排ガスは第3吸着部110Cで脱硫され、内側ガス流路121及び外側ガス流路122の何れか他方へ流出する。この際、
図3Bに示した一実施形態の脱硫ユニット100を第3吸着部110Cによって内側ガス流路121と外側ガス流路122とを隔てた二重構造とすることで、排ガスの通過断面積(吸着部断面積)を大きく取ることができ、それにより第3吸着部110Cのガス流速を小さくできる。さらに、
図3Bに示した一実施形態の脱硫ユニット100を二重構造としたので、排ガスの吸着部通過距離を短くする(第3吸着部110Cの厚みを小さくする)ことで、圧力損失を低減できる。これにより、
図3Bに示した一実施形態の脱硫ユニット100を小型化できるとともに排ガスを送風するための送風機が不要となり、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0093】
図4を参照して以下で説明するように、第3吸着部110Cは、ケーシング101の高さ方向において隙間を有するように形成された螺旋状を有していてもよい。
図4に示した他の実施形態に係る脱硫ユニット100では、吸着部110は、ケーシング101の高さ方向において隙間104を有するように形成された螺旋状を有する。
図4に示した他の実施形態に係る脱硫ユニット100では、ケーシング101に導入された排ガスは、隙間104を通じて吸着部110に接触し、重力の作用方向に沿って吸着部110を通過するように構成されている。すなわち、
図4に示した他の実施形態に係る脱硫ユニット100では、円筒形状を呈するケーシング101内に、螺旋形状を呈する吸着部110が配置されている。そのため、
図4に示した吸着部110は、隙間104を介してn条目の吸着領域r(n)とn+1条目の吸着領域r(n+1)とが上下方向に隣接している。以下の説明では、吸着部110における螺旋の1周分に相当する吸着領域について、何条目かを特に問わない場合には、その吸着領域を吸着領域rと呼ぶこともある。
図4に示した吸着部110では、隙間104は螺旋状の空間となる。
【0094】
図4に示した脱硫ユニット100は、隔壁105を有する。隔壁105は、吸着部110とともに内側ガス流路121と外側ガス流路122とを隔てる。隔壁105は、螺旋形状を呈する吸着部110の内周面に沿って延在する内側壁部105aと、n条目の吸着領域r(n)の上面とn+1条目の吸着領域r(n+1)の下面との間で螺旋状に延在する中間壁部105bと、螺旋形状を呈する吸着部110の外周面に沿って延在する外側壁部105cとを有する。
図4に示した脱硫ユニット100では、吸着領域rの上面と、外側壁部105cの内壁面における吸着領域rよりも上側の領域と、中間壁部105bの下面と、内側壁部105aの内壁面とが内側空間102に面する。同様に、
図4に示した脱硫ユニット100では、外側壁部105cの外壁面と、中間壁部105bの上面と、内側壁部105aの外壁面における吸着領域rよりも下側の領域と、吸着領域rの下面とが外側空間103に面する。
【0095】
図4に示した脱硫ユニット100では、ケーシング101に導入された排ガスは、隙間104を通じて吸着部110に接触し、重力の作用方向に沿って吸着部110を通過する。すなわち、
図4に示した脱硫ユニット100では、矢印eで示すように入口側排気管31から内側ガス流路121に導入された排ガスは、矢印fで示すように吸着領域rの上面と中間壁部105bとの間の隙間104を流れながら吸着領域rに流入する。吸着領域rを通過した排ガスは、矢印gで示すように吸着領域rの下面と中間壁部105bとの間の隙間104から外側ガス流路122へ流出し、矢印hで示すように、出口側排気管41へ流れる。
【0096】
このように、隙間104に排ガスを流すことで、吸着部110を排ガスが通過し、排ガスの脱硫が進行する。このため、上述した非特許文献1,2に開示された従来の脱硫塔のように脱硫用の充填剤が充填された脱硫塔の排ガスを流す場合と比べて排ガスの通過断面積(吸着部断面積)を大きく取ることができ、それにより吸着部のガス流速を小さくできる。さらに、排ガスの吸着部通過距離を短くする(吸着部の厚みを小さくする)ことで、圧力損失を低減できる。
【0097】
(吸着部110について)
幾つかの実施形態の吸着部110は、排ガス中の硫黄酸化物を吸着し、硫酸を生成することができる吸着剤115が充填されている。吸着剤115は、排ガス中の硫黄酸化物を吸着し、排ガス中の水と酸素との触媒反応により硫酸を生成する。このような吸着剤としては、例えば活性炭や活性コークスを挙げることができる。これにより、生成された硫酸を後述するように洗浄水によって洗浄することで吸着剤115を再生できるので、吸着剤115の追加供給や硫黄酸化物吸着後の吸着剤115の排出等が不要となる。したがって、船舶用脱硫装置1を小型化できる。
【0098】
幾つかの実施形態では、吸着剤115は、吸着剤115が外部に流出しない程度の大きさの網目、または羽板を多数並べた構造部材の間に充填されている。またその構造部材は、洗浄水が外部へ漏れ出ないような構造、例えばルーバー構造をしていて、各羽板が内側に傾斜をしていてもよい。網目、または羽板構造部材の外側には、孔が多数形成された多孔板(内側多孔筒131、外側多孔筒132、内側多孔板141、及び外側多孔板142)が備えられる。幾つかの実施形態の吸着部110は、該多孔板の多数の孔を介して容器の内外を排ガスが通過し、さらに網目または、羽板構造(ルーバー)を通過することで、排ガスが吸着剤115と接触するように構成されている。該多孔板は、排ガス中のオイルミストを吸着する機能を持っても良い。
【0099】
幾つかの実施形態では、吸着部110に充填された吸着剤115は、活性炭である。活性炭の吸着剤115を用いることで、排ガス中の硫黄酸化物を効率よく吸着できる。
【0100】
また、幾つかの実施形態では、吸着部110に充填された活性炭は、ペレット状に成型されている。これにより、吸着部110において、ペレット同士が所定の隙間を確保した状態で接触するので、吸着部110における排ガス、硫酸濃度の偏りを防ぐことができる。
【0101】
(洗浄装置151について)
幾つかの実施形態では、脱硫ユニット100は、吸着部110に洗浄水を供給するための洗浄装置151を備える。洗浄装置151は、例えば洗浄水を散水可能なノズルである。
排ガス中の硫黄酸化物は、吸着部110に吸着されると、上述したように硫酸に変化する。そのため、吸着部110に洗浄水を供給することで、吸着部110の硫酸が洗浄水で洗い流される。
これにより、吸着部110を洗浄水で洗浄して吸着部110を再生できるので、脱硫ユニット100を小型化でき、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0102】
脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3A〜
図3Fに示した幾つかの実施形態の吸着部110の何れかであれば、
図2に示すように、洗浄装置151は、吸着部110の上方に複数配置される。
なお、脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3A〜
図3Fに示した幾つかの実施形態の吸着部110の何れかであれば、
図2に示すように、洗浄装置151から散水された洗浄水は、吸着部110内を通過して下方に流れ、排水管26に排出される。
【0103】
例えば、脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3A又は
図3Bに示した幾つかの実施形態の吸着部110の何れかのように円筒状を呈する場合、洗浄装置151は、吸着部110の上端面と離間して対向するように、円周方向に沿って複数配置される。
また、脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3Cに示した一実施形態の吸着部110のように角筒状を呈する場合、洗浄装置151は、吸着部110の上端面と離間して対向するように、矩形の辺に沿うように複数配置される。
【0104】
脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3Dに示した一実施形態の吸着部110のように厚板状を呈する第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとを有する場合、脱硫ユニット100には、第1吸着部110Aの上端面と離間して対向する少なくとも1つの洗浄装置151と、第2吸着部110Bの上端面と離間して対向する少なくとも1つの洗浄装置151とが配置される。
なお、この場合、第1吸着部110Aに洗浄水を散水する洗浄装置151と、第2吸着部110Bに洗浄水を散水する洗浄装置151とに同時に洗浄水を供給できるように洗浄水供給配管24(
図1参照)を接続してもよい。また、洗浄水供給配管24からの洗浄水を第1吸着部110Aに散水するか第2吸着部110Bに散水するかを切り替えられるように、不図示の切換弁を設けてもよい。
【0105】
脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3Eに示した一実施形態の吸着部110のように厚板状を呈する第1吸着部110A及び第2吸着部110Bのそれぞれが第1吸着領域111と第2吸着領域112とを含む場合、各第1吸着領域111の上端面と離間して対向する位置、及び、各第2吸着領域112の上端面と離間して対向する位置のそれぞれに少なくとも1つの洗浄装置151が配置される。
なお、この場合、全ての吸着領域111、112に同時に散水できるように各洗浄装置151に洗浄水供給配管24を接続してもよい。
また、散水する吸着領域111、112を何れか一つに切り替えられるように不図示の切換弁を設けてもよい。
【0106】
脱硫ユニット100が備える吸着部110が、
図3Fに示した一実施形態の吸着部110のように第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとの対を2対備える場合、各第1吸着部110Aの上端面と離間して対向する位置、及び、各第2吸着部110Bの上端面と離間して対向する位置のそれぞれに少なくとも1つの洗浄装置151が配置される。
なお、この場合、全ての吸着部110A、110Bに同時に散水できるように各洗浄装置151に洗浄水供給配管24を接続してもよい。
また、散水する吸着部110A、110Bを4つの吸着部110A、110Bのうちの何れか一つに切り替えられるように不図示の切換弁を設けてもよい。
【0107】
図4に示した一実施形態に係る脱硫ユニット100では、洗浄装置151は、隙間104内に、螺旋状に複数配置される。
洗浄装置151から散水された洗浄水は、吸着領域rの上面から下面に向かって吸着領域r内を通過し、中間壁部105bの上面に流下する。中間壁部105bの上面に流下した洗浄後の洗浄水は、外側ガス流路122を流下して、排水管26に排出される。
これにより、吸着領域rにおいて、洗浄水はケーシング101の高さ方向に隣接する2つの隙間104の間に位置する吸着領域rを通過することとなる。したがって、吸着領域rにおける洗浄水の通過距離を短くすることができるので、洗浄水が通過する上流側と下流側とで洗浄ムラが生じるのを抑制できる。
【0108】
上述したように構成される幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1では、脱硫ユニット100において脱硫と再生とが繰り返して実施される。
例えば、
図1A、
図1B、
図1D〜
図1H、
図1J、
図1K、
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、B、1D〜1H、1J、1K、1Mでは、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方を再生しながら何れか他方で排ガスの脱硫を行うことができる。これにより、排ガスの脱硫を中断することなく、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
具体的には、
図1A、
図1B、
図1D〜
図1H、
図1J、
図1K、
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、1B、1D〜1H、1J、1K、1Mには、エンジン11からの排ガスの第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bへの流入量を制御する排ガス切替バルブ32が入口側排気管31に設置されている。また、
図1A、
図1B、
図1D〜
図1H、
図1J、
図1K、
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、1B、1D〜1H、1J、1K、1Mには、洗浄水供給装置20からの洗浄水の供給先を第1脱硫ユニット100Aと第2脱硫ユニット100Bとの間で切り替える洗浄水切替バルブ25が洗浄水供給配管24に設置されている。
なお、
図1A、
図1B、
図1D〜
図1H、
図1J、
図1K、
図1Mにおいて、排ガス切替バルブ32は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。同様に、
図1A、
図1B、
図1D〜
図1H、
図1J、
図1K、
図1Mにおいて、洗浄水切替バルブ25は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0109】
図5は、
図1A、
図1B、
図1D、
図1E、
図1J、
図1K、
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、1B、1D、1E、1J、1K、1Mにおける排ガス及び洗浄水の流れの状態を示す表である。幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、1B、1D、1E、1J、1K、1Mでは、排ガス切替バルブ32及び洗浄水切替バルブ25の切替や送水ポンプ23の運転は、
図1Aに示した制御装置2よって制御される。なお、
図1B〜
図1E及び
図1Iでは、制御装置2の記載は省略している。
なお、
図5において、「状態」の欄には、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bの処理の状態が表記されている。
図5において、「排ガス流入量」の欄には、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bに対してエンジン11からの排ガスの何%が供給されるのかが表記されている。
図5において、「洗浄水の供給有無」の欄には、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bに対する洗浄水の供給の有無が表記されている。
【0110】
第1工程は、例えば、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bにおける吸着部110がメンテナンス等を受けた直後の工程である。第1工程では、主として第1脱硫ユニット100Aに排ガスが供給されて、主として第1脱硫ユニット100Aで脱硫が行われる。
例えば、第1工程では、エンジン11からの排ガスの例えば90%を第1脱硫ユニット100Aに供給し、例えば残りの10%を第2脱硫ユニット100Bに供給する。なお、第1工程において、エンジン11からの排ガスをすべて第1脱硫ユニット100Aに供給し、第2脱硫ユニット100Bには供給しないようにしてもよい。
第1工程では、何れの脱硫ユニット100A、100Bにも洗浄水は供給されない。
【0111】
第2工程は、第1工程、又は後述する第5工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは再生が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは脱硫が行われる。
例えば、第2工程では、エンジン11からの排ガスの例えば90%を第2脱硫ユニット100Bに供給し、例えば残りの10%を第1脱硫ユニット100Aに供給する。なお、第2工程において、エンジン11からの排ガスをすべて第2脱硫ユニット100Bに供給し、第1脱硫ユニット100Aには供給しないようにしてもよい。
第2工程では、第1脱硫ユニット100Aに洗浄水が供給され、第2脱硫ユニット100Bには洗浄水が供給されない。これにより、第1脱硫ユニット100Aの吸着部110に洗浄水が散水されて、吸着部110の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第2工程における、第1脱硫ユニット100Aの再生工程は、第1脱硫ユニット100Aの洗浄工程である。
【0112】
第3工程は、第2工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは引き続き再生が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは引き続き脱硫が行われる。
例えば、第3工程では、エンジン11からの排ガスの例えば90%を第2脱硫ユニット100Bに供給し、例えば残りの10%を第1脱硫ユニット100Aに供給する。
第3工程では、何れの脱硫ユニット100A、100Bにも洗浄水は供給されない。また、上述したように、エンジン11からの排ガスの10%が第1脱硫ユニット100Aに供給されるので、第1脱硫ユニット100Aにおいて洗浄水で濡れた吸着部110が排ガスで乾燥される。すなわち、第3工程における、第1脱硫ユニット100Aの再生工程は、第1脱硫ユニット100Aの乾燥工程である。
【0113】
第4工程は、第3工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは脱硫が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは再生が行われる。
例えば、第4工程では、エンジン11からの排ガスの例えば90%を第1脱硫ユニット100Aに供給し、例えば残りの10%を第2脱硫ユニット100Bに供給する。なお、第4工程において、エンジン11からの排ガスをすべて第1脱硫ユニット100Aに供給し、第2脱硫ユニット100Bには供給しないようにしてもよい。
第4工程では、第1脱硫ユニット100Aには洗浄水が供給されず、第2脱硫ユニット100Bには洗浄水が供給される。これにより、第2脱硫ユニット100Bの吸着部110に洗浄水が散水されて、吸着部110の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第4工程における、第2脱硫ユニット100Bの再生工程は、第2脱硫ユニット100Bの洗浄工程である。
【0114】
第5工程は、第4工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは引き続き脱硫が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは引き続き再生が行われる。
例えば、第5工程では、エンジン11からの排ガスの例えば90%を第1脱硫ユニット100Aに供給し、例えば残りの10%を第2脱硫ユニット100Bに供給する。
第5工程では、何れの脱硫ユニット100A、100Bにも洗浄水は供給されない。また、上述したように、エンジン11からの排ガスの10%が第2脱硫ユニット100Bに供給されるので、第2脱硫ユニット100Bにおいて洗浄水で濡れた吸着部110が排ガスで乾燥される。すなわち、第5工程における、第2脱硫ユニット100Bの再生工程は、第2脱硫ユニット100Bの乾燥工程である。
【0115】
第5工程の後、第2工程が実施される。以降、第2工程から第5工程が繰り返し実行される。
【0116】
なお、
図1Lに示した実施形態に係る船舶用脱硫装置1Lにおいても、制御装置2が排ガス切替バルブ32A及び洗浄水切替バルブ25Aを適宜切り替えることで、第1脱硫ユニット100A〜第3脱硫ユニット100Cの3つの脱硫ユニットの何れか一つの脱硫ユニットを再生しながら残りの二つの脱硫ユニットで排ガスの脱硫を行うことができる。
【0117】
このように、
図1A〜
図1H、及び、
図1J〜
図1Mに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1H、1J〜1Mでは、吸着部110に対して乾燥用の流体を供給するための乾燥装置60を備えている。
図1A、
図1B、
図1D、
図1E、
図1J〜
図1Lに示した幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A、B、1D、1E、1J〜1Lでは、乾燥装置60は、エンジン11からの脱硫前の排ガスを洗浄水で濡れた吸着部110に供給する乾燥用排ガス供給手段33としての排ガス切替バルブ32、または排ガス切替バルブ32Aを含む。
これにより、洗浄後の吸着部110を乾燥用の流体、すなわち排ガスで乾燥できる。
また、エンジン11からの排ガスで吸着部110を乾燥するように構成したことで、簡素な乾燥装置60によって、排ガスの一部で吸着部110を乾燥できる。また、吸着部110の乾燥のための新たな熱源が不要である。
【0118】
なお、2020年から実施される一般海域における燃料油中硫黄分の規制値は、現行の3.5%以下から0.5%以下へと強化される。そのため、強化後の規制値を満足するためには、現段階で規制値を満足する排ガス中の硫黄酸化物のうち、以下の式(1)で示すように、86%以上の硫黄酸化物を除去する必要がある。
(3.5−0.5)/3.5×100=85.7 ・・・(1)
【0119】
上記第2工程から第5工程では、排ガスの例えば90%が供給される第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方で排ガスが脱硫される。仮に、排ガスの例えば残りの10%が供給される第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか他方で排ガスが全く脱硫されなかった場合でも、以下の各式(2)、(3)で示すように、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方において排ガスに含まれる硫黄酸化物を95.2%以上脱硫できれば、強化後の規制値を満足することができる。
【0120】
すなわち、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方で脱硫された後の排ガス中の硫黄の量を燃料油中硫黄分の量に換算した値をx%とすると、以下の式(2)を満たす必要がある。
3.5×0.1+x×0.9≦0.5 ・・・(2)
x≦(0.5−0.35)/0.9
x≦0.1666
ここで、脱硫が行われる第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方では、排ガス中の硫黄の量を燃料油中硫黄分の量に換算した値で3.5%からx%まで低減させなければならない。そのため、脱硫が行われる第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bのいずれか一方における脱硫率は、以下の式(3)で算出される。
(3.5−x)/3.5×100=(3.5−0.1666)/3.5×100
=95.2 ・・・(3)
【0121】
なお、上述した第2工程〜第5工程において、脱硫を行っている脱硫ユニットにエンジン11からの排ガスの例えば90%を供給し、再生を行っている脱硫ユニットに例えば残りの10%を供給するように排ガスを分配している。しかし、排ガスを分配する比率は、上記の比率に限定されない。例えば再生を行っている脱硫ユニットにおいて、排ガスが全く脱硫されなかった場合であっても、大気中に排出される排気ガスに含まれる硫黄酸化物の量が、燃料油中硫黄分の規制値を満たすのと同等以上に低減されていれば、排ガスを分配する比率は、上記の比率以外の比率であってよい。
【0122】
また、燃料油中硫黄分の規制値は、海域によって値が異なる場合がある。例えば、排出規制海域(ECA海域)では、一般海域よりも燃料油中硫黄分の規制値が低い。そこで、船舶10が運航する海域によって、脱硫を行っている脱硫ユニットと再生を行っている脱硫ユニットとの排ガスの分配比率を変更することで、燃料油中硫黄分の規制値を満たすようにしてもよい。または、船舶10が運航する海域によって、他の手段として、スチームを利用する、または、脱硫後の排ガスを利用する、または、硫黄分が少ないボイラ排ガスを利用するなどして乾燥してもよい。
具体的には、
図1Aに示した制御装置2は、例えば不図示のGPS受信装置から得られる現在の船舶10の位置と、不図示の記憶装置に予め記憶されている、燃料油中硫黄分の規制値に関する海域及び規制値の情報とに基づいて、船舶10が順守すべき燃料油中硫黄分の規制値を読み込む。そして、制御装置2は、排ガス切替バルブ32の開度を制御することで、読み込んだ規制値を満たすように、脱硫を行っている脱硫ユニットと再生を行っている脱硫ユニットとの排ガスの分配比率を変更する。
【0123】
(一実施形態の船舶用脱硫装置1Cについて)
図1Cに示した一実施形態の船舶用脱硫装置1Cは、一つの脱硫ユニット100を備えている。そのため、脱硫と再生とを同時に実施する必要がある場合には、
図3D〜
図3Fに示した、1つのケーシング101内に第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとを備えた吸着部110を用いればよい。
また、船舶10の航海距離が短く、航海中に再生を行う必要がなければ、一実施形態の船舶用脱硫装置1Cにおける脱硫ユニット100は、
図2〜
図4に示した幾つかの実施形態の脱硫ユニット100の何れであってもよい。なお、この場合には、脱硫ユニット100の再生は、例えば寄港時に実施すればよい。
【0124】
例えば、
図3Dに示した一実施形態の吸着部110を用いた場合、洗浄水供給配管24からの洗浄水を第1吸着部110Aに散水するか第2吸着部110Bに散水するかを切り替えられるように、不図示の切換弁を設ける。このように、洗浄装置151を第1吸着部110A及び第2吸着部110Bに対して独立して洗浄水を供給可能に構成することで、第1吸着部110A及び第2吸着部110Bのいずれか一方を洗浄水で洗浄しながら何れか他方で排ガスの脱硫を行うことができる。これにより、一つの脱硫ユニット100内で脱硫と再生とを同時に実施できるので、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
なお、第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとの何れか他方の吸着部は、洗浄後にはケーシング101内を流れる排ガスによって乾燥することができる。
【0125】
同様に、例えば、
図3Eに示した一実施形態の吸着部110を用いた場合、4つの吸着領域111、112のうち、散水する吸着領域111、112を何れか一つに切り替えられるように不図示の切換弁を設ける。このように、洗浄装置151を第1吸着領域111、及び第2吸着領域112に対して独立して洗浄水を供給可能に構成することで、第1吸着領域111及び第2吸着領域112のいずれか一方を洗浄水で洗浄しながら何れか他方で排ガスの脱硫を行うことができる。これにより、一つの脱硫ユニット100内で脱硫と再生とを同時に実施できるので、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
なお、洗浄後の吸着領域111、112は、ケーシング101内を流れる排ガスによって乾燥することができる。
【0126】
例えば、
図3Fに示した一実施形態の吸着部110を用いた場合、4つの吸着部110A,110Bのうち、散水する吸着部110A,110Bを何れか一つに切り替えられるように不図示の切換弁を設ける。このように、洗浄装置151を4つの吸着部110A、110Bに対して独立して洗浄水を供給可能に構成することで、4つの吸着部110A、110Bのいずれか一つを洗浄水で洗浄しながら残りの3つの吸着部110A、110Bで排ガスの脱硫を行うことができる。これにより、一つの脱硫ユニット100内で脱硫と再生とを同時に実施できるので、長期間にわたって連続的に排ガスの脱硫を行うことができる。
なお、洗浄後の吸着部110A,110Bは、ケーシング101内を流れる排ガスによって乾燥することができる。
【0127】
ここで、
図1Cに示した一実施形態の船舶用脱硫装置1Cにおいて、
図3Eに示した一実施形態の吸着部110を用いた場合の脱硫と再生のパターンについて、
図6を参照して説明する。
図6は、
図3Eに示した一実施形態の吸着部110における脱硫と再生のパターンを示す表である。説明の便宜上、
図3Eに示した一実施形態の吸着部110における4つの吸着領域111、112のうち、第1吸着部110Aの第1吸着領域111を第1領域A1とも呼び、第1吸着部110Aの第2吸着領域112を第2領域A2とも呼ぶ。同様に、第2吸着部110Bの第1吸着領域111を第3領域B1とも呼び、第2吸着部110Bの第2吸着領域112を第4領域B2とも呼ぶ。
4つの領域A1、A2、B1、B2のうち、散水する吸着領域を何れか一つに切り替えるための不図示の切換弁や送水ポンプ23の運転は、
図1Aに例示した制御装置2よって制御される。
【0128】
図6に示した第1工程は、例えば、
図3Eに示した一実施形態の吸着部110がメンテナンス等を受けた直後の工程である。第1工程では、第4領域B2を除く他の3つの領域A1、A2、B1に排ガスが供給されて、3つの領域A1、A2、B1で脱硫が行われる。第1工程では、例えば第4領域B2に洗浄水を供給することで、第4領域B2の吸着剤115の表面を洗浄水で覆うことで、第4領域B2において脱硫を行わないように休止状態とさせる。
第1工程では、第4領域B2を除く他の3つの領域A1、A2、B1には洗浄水は供給されない。
【0129】
第2工程は、第1工程、又は後述する第5工程の後に実施される工程であり、第1領域A1では再生が行われ、第1領域A1を除く他の3つの領域A2、B1、B2に排ガスが供給されて、3つの領域A2、B1、B2で脱硫が行われる。
第2工程では、第1領域A1に洗浄水が供給され、第1領域A1を除く他の3つの領域A2、B1、B2には洗浄水が供給されない。これにより、第1領域A1に洗浄水が散水されて、第1領域A1の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第2工程における、第1領域A1の再生工程は、第1領域A1の洗浄工程である。
また、第2工程の初期の段階では、第1工程において洗浄水が供給されて洗浄水で濡れている第4領域B2が排気ガスで乾燥される。第4領域B2の乾燥が進行すると、第4領域B2において排気ガスが脱硫され始める。すなわち、第2工程における第4領域B2の吸着工程の初期段階は、第4領域B2の乾燥工程となる。
【0130】
第3工程は、第2工程の後に実施される工程であり、第2領域A2では再生が行われ、第2領域A2を除く他の3つの領域A1、B1、B2に排ガスが供給されて、3つの領域A1、B1、B2で脱硫が行われる。
第3工程では、第2領域A2に洗浄水が供給され、第2領域A2を除く他の3つの領域A1、B1、B2には洗浄水が供給されない。これにより、第2領域A2に洗浄水が散水されて、第2領域A2の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第3工程における、第2領域A2の再生工程は、第2領域A2の洗浄工程である。
また、第3工程の初期の段階では、第2工程において洗浄水が供給されて洗浄水で濡れている第1領域A1が排気ガスで乾燥される。第1領域A1の乾燥が進行すると、第1領域A1において排気ガスが脱硫され始める。すなわち、第3工程における第1領域A1の吸着工程の初期段階は、第1領域A1の乾燥工程となる。
【0131】
第4工程は、第3工程の後に実施される工程であり、第3領域B1では再生が行われ、第3領域B1を除く他の3つの領域A1、A2、B2に排ガスが供給されて、3つの領域A1、A2、B2で脱硫が行われる。
第4工程では、第3領域B1に洗浄水が供給され、第3領域B1を除く他の3つの領域A1、A2、B2には洗浄水が供給されない。これにより、第3領域B1に洗浄水が散水されて、第3領域B1の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第4工程における、第3領域B1の再生工程は、第3領域B1の洗浄工程である。
また、第4工程の初期の段階では、第3工程において洗浄水が供給されて洗浄水で濡れている第2領域A2が排気ガスで乾燥される。第2領域A2の乾燥が進行すると、第2領域A2において排気ガスが脱硫され始める。すなわち、第4工程における第2領域A2の吸着工程の初期段階は、第2領域A2の乾燥工程となる。
【0132】
第5工程は、第4工程の後に実施される工程であり、第4領域B2では再生が行われ、第4領域B2を除く他の3つの領域A1、A2、B1に排ガスが供給されて、3つの領域A1、A2、B1で脱硫が行われる。
第5工程では、第4領域B2に洗浄水が供給され、第4領域B2を除く他の3つの領域A1、A2、B1には洗浄水が供給されない。これにより、第4領域B2に洗浄水が散水されて、第4領域B2の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第5工程における、第4領域B2の再生工程は、第4領域B2の洗浄工程である。
また、第5工程の初期の段階では、第4工程において洗浄水が供給されて洗浄水で濡れている第3領域B1が排気ガスで乾燥される。第3領域B1の乾燥が進行すると、第3領域B1において排気ガスが脱硫され始める。すなわち、第5工程における第3領域B1の吸着工程の初期段階は、第3領域B1の乾燥工程となる。
【0133】
第5工程の後、第2工程が実施される。以降、第2工程から第5工程が繰り返し実行される。
【0134】
(一実施形態の船舶用脱硫装置1Iについて)
図1Iに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Iは、洗浄水供給装置20を含んでいない。そのため、一実施形態の船舶用脱硫装置1Iでは、例えば寄港時に脱硫ユニット100を船舶用脱硫装置1Iから取り外し、取り外した脱硫ユニット100を陸上で再生する。そのため、一実施形態の船舶用脱硫装置1Iにおける脱硫ユニット100は、
図2〜
図4に示した幾つかの実施形態の脱硫ユニット100の何れであってもよい。
【0135】
(第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bの配置について)
第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bは、例えば
図1A、及び
図1D〜
図1Hに示すように、架台107に載せられて、ケーシング101の高さ方向に垂直な方向に並んで配置されていてもよい。第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bをケーシング101の高さ方向に垂直な方向に並ぶように配置することで、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bをデッキに対し水平に並べることができる。これにより、船舶用脱硫装置1A、1D〜1Hの設置高さを抑制でき、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0136】
また、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bは、例えば
図1Bに示すように、架台108に載せられて、ケーシング101の高さ方向に並んで配置されていてもよい。第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bをケーシング101の高さ方向に並ぶように配置することで、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bをデッキに対し垂直に並ぶように配置できる。これにより、船舶用脱硫装置1Bの設置面積を抑制でき、船上の限られたスペースを有効活用できる。
【0137】
(排ガスの冷却について)
例えば吸着部に活性炭を用いた場合のように、一般的には、排ガスの脱硫率は排ガスの温度が低いほど良好である。そこで、幾つかの実施形態に係る船舶用脱硫装置1A〜1Mでは、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスを冷却するための冷却装置50をさらに備える。
これにより、吸着部110に接触させる排ガスの温度を低下できるので、脱硫率を向上できる。
【0138】
なお、冷却装置50よって、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスをSO
3の酸露点より所定温度だけ高い温度まで冷却することが望ましい。
ここで、上記所定温度は、例えば気象の変動による入口側排気管31の外表面の温度の変動等、ケーシング101に導入される前の排ガスの温度がある程度変動する可能性があることを考慮して、例えば20度程度に設定される。
これにより、ケーシング101へ排ガスを供給する入口側排気管31等においてSO
3が硫酸となって凝縮することを抑制できるので、船舶用脱硫装置1の腐食を抑制しつつ、脱硫率を向上できる。
【0139】
なお、ケーシング101は、腐食防止のため、樹脂ライニングが施される場合があるが、その場合は、排ガスを樹脂ライニングの耐熱温度未満まで冷却してもよい。SO
3の酸露点より所定温度だけ高い温度まで冷却した場合は、ケーシング101へ排ガスを供給する配管(入口側排気管31)においてSO
3が硫酸となって凝縮して、腐食することを抑制でき、ライニングの耐熱温度未満まで冷却した場合は、樹脂ライニングにより、腐食を抑制することができる。
【0140】
例えば、
図1A〜
図1C、
図1F〜
図1H、
図1J〜
図1Lに示した幾つかの実施形態では、冷却装置50は、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスに冷却用空気を混入させるための冷却空気供給手段としての冷却用空気供給装置51である。冷却用空気供給装置51は、ファン51aを含んでいる。ファン51aは、大気を吸引し、吸引した大気を排ガスの冷却用空気として、入口側排気管31に吹き込む。これにより、簡素な冷却装置50によって冷却用空気を混入させることで排ガスを冷却できる。
【0141】
例えば、
図1D及び
図1Iに示した幾つかの実施形態では、冷却装置50は、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスと熱交換するための熱交換器52aを含む水冷装置52である。
図1D及び
図1Iに示した幾つかの実施形態では、水冷装置52は、熱交換器52aに冷却用の海水を供給する海水ポンプ52bを含む。
熱交換器52aは、入口側排気管31の途中に配置されている。エンジン11からの排ガスは、熱交換器52aにおいて海水ポンプ52bで供給される海水によって冷却された後、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される。これにより、簡素な冷却装置50によって排ガスを冷却できる。
なお、熱交換器52aで熱交換されて昇温された海水は、そのまま海洋へ戻してもよいが、例えば船室の暖房用の熱源として船舶10内で利用するようにしてもよい。このように、熱交換器52aによって回収した排ガスの熱が利用可能となるので、船舶10における燃料消費量を低減できる。
【0142】
例えば、
図1Mに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Mでは、冷却装置50は、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスと熱交換するための熱交換器54aを含む空気冷却装置54である。
図1Mに示した一実施形態では、空気冷却装置54は、熱交換器54aに冷却用の空気を供給する送風機54bを含む。
熱交換器54aは、入口側排気管31の途中に配置されている。エンジン11からの排ガスは、熱交換器54aにおいて送風機54bで供給される空気(大気)によって冷却された後、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される。これにより、簡素な冷却装置50によって排ガスを冷却できる。
なお、熱交換器54aで熱交換されて昇温された空気は、そのまま大気へ戻してもよいが、例えば船室の暖房用の熱源として船舶10内で利用するようにしてもよい。このように、熱交換器54aによって回収した排ガスの熱が利用可能となるので、船舶10における燃料消費量を低減できる。
また、熱交換器54aで熱交換されて昇温された空気を、後述するように、吸着部110の乾燥に用いてもよい。
【0143】
例えば、
図1Eに示した一実施形態では、冷却装置50は、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスに水を噴霧する水噴霧装置53である。水噴霧装置53は、水タンク53aと、水噴霧用ポンプ53bと、噴霧ノズル53cとを含む。水タンク53aは、噴霧用の水を貯留するタンクである。なお、水タンク53aを設けず、船舶10における水の供給ラインから水を得るようにしてもよい。または、洗浄水タンク22から水洗用の水と兼用してもよい。または、海水を利用しても良い。
水噴霧用ポンプ53bは、水タンク53aの水、又は、船舶10における水の供給ラインから供給される水を加圧して、噴霧ノズル53cに供給する。
噴霧ノズル53cは、例えば入口側排気管31の内部に配置されたノズルであり、水噴霧用ポンプ53bから供給された水を入口側排気管31の内部に噴霧する。
図1Eに示した一実施形態に係る冷却装置50によれば、簡素な冷却装置50によって水を噴霧することで排ガスを冷却できる。
【0144】
なお、
図1B、
図1C、
図1F〜
図1Hに示した一実施形態の冷却装置50を冷却用空気供給装置51に代えて水冷装置52や水噴霧装置53としてもよい。また、
図1Iに示した一実施形態の冷却装置50を水冷装置52に代えて冷却用空気供給装置51や水噴霧装置53としてもよい。
【0145】
(吸着部110の乾燥について)
図1A〜
図1Eに示した幾つかの実施形態では、洗浄後の吸着部110の乾燥に、脱硫前の排ガスを用いている。これに対して、
図1Fに示した一実施形態では、洗浄後の吸着部110の乾燥に、脱硫後の排ガスを用いている。具体的には、
図1Fに示した一実施形態では、第1脱硫ユニット100Aで脱硫された後の排ガスの一部を第2脱硫ユニット100Bに供給するための処理後排ガス供給手段42としての切替バルブ42Aが第1脱硫ユニット100Aに接続された出口側排気管41に設置されている。同様に、
図1Fに示した一実施形態では、第2脱硫ユニット100Bで脱硫された後の排ガスの一部を第1脱硫ユニット100Aに供給するための処理後排ガス供給手段42としての切替バルブ42Bが第2脱硫ユニット100Bに接続された出口側排気管41に設置されている。
なお、
図1Fにおいて、切替バルブ42A、42Bは、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0146】
図7は、
図1Fに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fにおける排ガス及び洗浄水の流れの状態を示す表である。一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fでは、排ガス切替バルブ32、洗浄水切替バルブ25、及び切替バルブ42A、42Bの切替や送水ポンプ23の運転は、制御装置2よって制御される。
なお、
図7において、「状態」の欄には、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bの処理の状態が表記されている。
図7において、「排ガス流入量」の欄には、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bに対してエンジン11からの排ガスの何%が供給されるのかが表記されている。
図7において、「脱硫後排ガス流入量」の欄には、第1脱硫ユニット100Aに対して第2脱硫ユニット100Bから脱硫後の排ガスの何%が供給されるのか、及び、第2脱硫ユニット100Bに対して第1脱硫ユニット100Aから脱硫後の排ガスの何%が供給されるのかが表記されている。
図7において、「洗浄水の供給有無」の欄には、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bに対する洗浄水の供給の有無が表記されている。
【0147】
第1工程は、例えば、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bにおける吸着部110がメンテナンス等を受けた直後の工程である。第1工程では、第1脱硫ユニット100Aに排ガスが供給されて、第1脱硫ユニット100Aで脱硫が行われる。
例えば、第1工程では、エンジン11からの排ガスは、すべて第1脱硫ユニット100Aに供給される。
第1工程では、第1脱硫ユニット100Aで脱硫された排ガスは、第2脱硫ユニット100Bには供給されず、全量が大気に排出される。
第1工程では、何れの脱硫ユニット100A、100Bにも洗浄水は供給されない。
【0148】
第2工程は、第1工程、又は後述する第5工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは再生が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは脱硫が行われる。
例えば、第2工程では、エンジン11からの排ガスは、すべて第2脱硫ユニット100Bに供給される。
第2工程では、第2脱硫ユニット100Bで脱硫された排ガスは、第1脱硫ユニット100Aには供給されず、全量が大気に排出される。
第2工程では、第1脱硫ユニット100Aに洗浄水が供給され、第2脱硫ユニット100Bには洗浄水が供給されない。これにより、第1脱硫ユニット100Aの吸着部110に洗浄水が散水されて、吸着部110の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第2工程における、第1脱硫ユニット100Aの再生工程は、第1脱硫ユニット100Aの洗浄工程である。
【0149】
第3工程は、第2工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは引き続き再生が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは引き続き脱硫が行われる。
例えば、第3工程では、エンジン11からの排ガスは、すべて第2脱硫ユニット100Bに供給される。
第3工程では、第2脱硫ユニット100Bで脱硫された排ガスの例えば10%を第1脱硫ユニット100Aに供給し、例えば残りの90%を大気に排出する。
第3工程では、何れの脱硫ユニット100A、100Bにも洗浄水は供給されない。また、上述したように、第2脱硫ユニット100Bからの排ガスの10%が第1脱硫ユニット100Aに供給されるので、第1脱硫ユニット100Aにおいて洗浄水で濡れた吸着部110が脱硫後の排ガスで乾燥される。すなわち、第3工程における、第1脱硫ユニット100Aの再生工程は、第1脱硫ユニット100Aの乾燥工程である。
【0150】
第4工程は、第3工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは脱硫が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは再生が行われる。
例えば、第4工程では、エンジン11からの排ガスは、すべて第1脱硫ユニット100Aに供給される。
第4工程では、第1脱硫ユニット100Aで脱硫された排ガスは、第2脱硫ユニット100Bには供給されず、全量が大気に排出される。
第4工程では、第1脱硫ユニット100Aには洗浄水が供給されず、第2脱硫ユニット100Bには洗浄水が供給される。これにより、第2脱硫ユニット100Bの吸着部110に洗浄水が散水されて、吸着部110の硫酸が洗浄水で洗い流される。すなわち、第4工程における、第2脱硫ユニット100Bの再生工程は、第2脱硫ユニット100Bの洗浄工程である。
【0151】
第5工程は、第4工程の後に実施される工程であり、第1脱硫ユニット100Aでは引き続き脱硫が行われ、第2脱硫ユニット100Bでは引き続き再生が行われる。
例えば、第5工程では、エンジン11からの排ガスは、すべて第1脱硫ユニット100Aに供給される。
第5工程では、第1脱硫ユニット100Aで脱硫された排ガスの例えば10%を第2脱硫ユニット100Bに供給し、例えば残りの90%を大気に排出する。
第5工程では、何れの脱硫ユニット100A、100Bにも洗浄水は供給されない。また、上述したように、第1脱硫ユニット100Aからの排ガスの10%が第2脱硫ユニット100Bに供給されるので、第2脱硫ユニット100Bにおいて洗浄水で濡れた吸着部110が脱硫後の排ガスで乾燥される。すなわち、第5工程における、第2脱硫ユニット100Bの再生工程は、第2脱硫ユニット100Bの乾燥工程である。
【0152】
第5工程の後、第2工程が実施される。以降、第2工程から第5工程が繰り返し実行される。
【0153】
このように、
図1Fに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fでは、吸着部110に対して乾燥用の流体を供給するための乾燥装置60を備えている。
図1Fに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fでは、乾燥装置60は、脱硫後の排ガスを洗浄水で濡れた吸着部110に供給する処理後排ガス供給手段42としてのとしての切替バルブ42A、42Bを含む。
これにより、洗浄後の吸着部110を乾燥用の流体、すなわち排ガスで乾燥できる。
また、脱硫後の排ガスで吸着部110を乾燥するように構成したことで、簡素な乾燥装置60によって、排ガスの一部で吸着部110を乾燥できる。また、吸着部110の乾燥のための新たな熱源が不要である。さらに、脱硫ユニット100により脱硫される前の排ガスの一部を吸着部に供給することで吸着部を乾燥する場合と比べて、脱硫ユニット100から排出される排ガスの硫黄酸化物の濃度を低減できる。
【0154】
なお、上述した第3工程及び第5工程において、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bの何れか一方から他方へ供給する、乾燥用の脱硫後の排ガスの量は、10%に限定されない。一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fでは、乾燥用の排ガスは、上述したとおり脱硫後の排ガスであるので、硫黄酸化物の排出量抑制の観点からは乾燥用の排ガスの量に制限はない。
しかし、乾燥用の排ガスの量を増やすためは、脱硫を行っている何れかの脱硫ユニット100A、100Bから大気へ放出する排ガス量を何れかの切替バルブ42A、42Bで減らす必要がある。そのため、乾燥用の排ガスの量を増やすと一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fにおける排ガスの圧損が増加する。したがって、一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fにおける排ガスの圧損の増加を抑制する観点から、乾燥用の排ガスの量は制限を受けることとなる。
または、圧力損失の増加を許容するため、第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bの何れか一方から他方へ供給する際、排ガスを昇圧するファンを設けてもよい。その場合は、他方へ供給するガス量を大きくでき、乾燥にかかる時間を短縮することができる。
【0155】
なお、
図1B〜
図1Eに示した幾つかの実施形態において、
図1Fに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Fと同様に、脱硫後の排ガスで吸着部110を乾燥するように構成してもよい。
【0156】
(吸着部110の乾燥に係るさらに他の実施形態について)
なお、吸着部110の乾燥に、スチームを用いてもよい。
図1Gに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Gでは、乾燥装置60は、船舶10に搭載されるボイラ15において発生したスチームを吸着部110に供給するための乾燥用スチーム供給手段61としてのスチーム切替バルブ64を備える。
ボイラ15と第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bとは、スチーム配管65で接続されている。スチーム切替バルブ64は、スチーム配管65に設置されている。スチーム切替バルブ64は、ボイラ15からのスチームの第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bへの流入量を制御する。
なお、
図1Gにおいて、スチーム切替バルブ64は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0157】
図1Gに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Gでは、制御装置2がスチーム切替バルブ64を制御することで、吸着部110の乾燥用のスチームを第1脱硫ユニット100A又は第2脱硫ユニット100Bに供給するか否かを制御する。
これにより、簡素な乾燥装置60によって、船舶10に搭載されるボイラ15において発生したスチームを吸着部110に供給して吸着部110を乾燥できる。また、吸着部110の乾燥のための新たな熱源が不要である。
【0158】
なお、
図1B〜
図1Eに示した幾つかの実施形態において、
図1Gに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Gと同様に、船舶10に搭載されるボイラ15において発生したスチームを吸着部110に供給して吸着部110を乾燥するように構成してもよい。
【0159】
また、吸着部110の乾燥に、ボイラから排出される排ガスを用いてもよい。
図1Hに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Hでは、乾燥装置60は、船舶10に搭載されるボイラ15から排出される排ガスの一部を吸着部110に供給する乾燥用排ガス供給手段66としてのボイラ排ガス切替バルブ67を含む。
ボイラ15と第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bとは、ボイラ排ガス配管68で接続されている。ボイラ排ガス切替バルブ67は、ボイラ排ガス配管68に設置されている。ボイラ排ガス切替バルブ67は、ボイラ15からの排ガスの一部の第1脱硫ユニット100A及び第2脱硫ユニット100Bへの流入量を制御する。
なお、
図1Hにおいて、ボイラ排ガス切替バルブ67は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0160】
図1Hに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Hでは、制御装置2がボイラ排ガス切替バルブ67を制御することで、吸着部110の乾燥用のボイラ排ガスを第1脱硫ユニット100A又は第2脱硫ユニット100Bに供給するか否かを制御する。
これにより、簡素な乾燥装置60によって、船舶10に搭載されるボイラ15から排出される排ガスの一部を吸着部110に供給して吸着部110を乾燥できる。また、吸着部110の乾燥のための新たな熱源が不要である。
【0161】
なお、
図1B〜
図1Eに示した幾つかの実施形態において、
図1Hに示した一実施形態に係る船舶用脱硫装置1Hと同様に、船舶10に搭載されるボイラ15から排出される排ガスの一部を吸着部110に供給して吸着部110を乾燥するように構成してもよい。
【0162】
なお、
図1Mに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Mの空気冷却装置54の熱交換器54aにおいて、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスと熱交換することで加熱された空気(加熱空気)を吸着部110の乾燥に用いてもよい。
図1Mに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Mでは、乾燥装置60は、脱硫ユニット100のケーシング101に導入される前の排ガスを冷却するために、空気と排ガスとを熱交換するための空気冷却装置54を含み、空気冷却装置54で加熱された空気を吸着部110に対して供給することで吸着部110を乾燥させる。
図1Mに示した一実施形態では、乾燥装置60は、熱交換器54aからの加熱空気を大気に逃がすか、第1脱硫ユニット100A又は第2脱硫ユニット100Bに供給するのかを切り替える切替バルブ55と、切替バルブ55を介して供給される加熱空気を第1脱硫ユニット100Aに供給するのか第2脱硫ユニット100Bに供給するのかを切り替える切替バルブ56とを備える。
なお、
図1Mにおいて、切替バルブ55、56は、三方弁として図示されているが、三方弁を2つの二方弁に置き換えてもよい。
【0163】
図1Mに示す一実施形態の船舶用脱硫装置1Mでは、制御装置2が切替バルブ55、56を制御することで、熱交換器54aからの加熱空気を第1脱硫ユニット100A又は第2脱硫ユニット100Bに供給するか否かを制御する。
これにより、簡素な乾燥装置60によって、排ガス冷却用の熱交換器54aからの加熱空気を吸着部110に供給して吸着部110を乾燥できる。また、吸着部110の乾燥のための新たな熱源が不要である。また、排ガス冷却用の熱交換器54aによって吸着部110に接触させる排ガスの温度を抑制できるので、脱硫率を向上できる。
【0164】
以上、幾つかの実施形態に係る吸着部110の乾燥について説明したが、吸着部110の乾燥のための流体の温度は、例えばケーシング101に耐食のための樹脂ライニングが施されている場合、樹脂ライニングの耐熱温度未満とされる。
【0165】
(脱硫ユニット100の他の実施形態について)
以下、脱硫ユニット100の他の実施形態について説明する。
図8A及び
図8Bは、脱硫ユニット100の他の実施形態の脱硫ユニットの構造を模式的に示す縦断面図である。
上述した幾つかの実施形態では、上下方向に延在する筒状を呈する
図3A〜
図3Cに示した吸着部110は、
図2に示すように、ケーシング101の内部に1つだけ配置されている。
しかし、例えば
図8Aに示すように、
図3A〜
図3Cに示した筒型形状を呈する吸着部110を、1つのケーシング101の内部に、ケーシング101の高さ方向に対して直交する方向に配置することでデッキに対して水平な方向に複数配置してもよい。なお、
図8Aでは表れていないが、
図8Aにおける紙面奥行き方向に筒型形状を呈する吸着部110を複数配置してもよい。
これにより、矢印iで示すように入口側排気管31から流入した排ガスは、矢印j、kで示すように吸着部110の内面及び外面に沿って排ガスが流れることによって排ガスの脱硫が進行する。
【0166】
図8Aに示すように、ケーシング101内で複数配置された吸着部110のそれぞれの出口側排気管41aをケーシング101の上部に設けた排ガス排出部41bに接続し、矢印l及び矢印mで示すように排ガス排出部41bを介して排ガスを大気に放出するようにしてもよい。
ケーシング101内に配置された複数の吸着部110の何れで脱硫を行うかを選択するために、それぞれの出口側排気管41aの出口側に、出口側排気管41aを開放又は閉止する開閉弁43を設けてもよい。
図8Aに示す例では、図示左側の開閉弁43が開いて出口側排気管41aを開放し、図示右側の開閉弁43が閉じて出口側排気管41aを閉止している状態を示している。このような構成により、脱硫ユニットに排ガスを供給する排ガス切替バルブ32は不要となる。また、開閉弁43はガスを開放したり、密閉したりする機能を有していればよく、弁でなく、ダンパー構造でもよい。
【0167】
また、例えば
図8Bに示すように、
図3A〜
図3Cに示した筒型形状を呈する吸着部110を、1つのケーシング101の内部に、ケーシング101の高さ方向に複数配置してもよい。
これにより、矢印nで示すように入口側排気管31から流入した排ガスは、矢印o、pで示すように吸着部110の内面及び外面に沿って排ガスが流れることによって排ガスの脱硫が進行する。
【0168】
図8Bに示すように、ケーシング101内で複数配置された吸着部110のそれぞれの出口側排気管41aをケーシング101の側部に設けた排ガス排出部41bに接続し、矢印q、矢印r及び矢印sで示すように排ガス排出部41bを介して排ガスを大気に放出するようにしてもよい。
ケーシング101内に配置された複数の吸着部110の何れで脱硫を行うかを選択するために、それぞれの出口側排気管41aの出口側に、出口側排気管41aを開放又は閉止する開閉弁43を設けてもよい。
図8Bに示す例では、図示下側の開閉弁43が開いて出口側排気管41aを開放し、図示上側の開閉弁43が閉じて出口側排気管41aを閉止している状態を示している。このような構成により、脱硫ユニットに排ガスを供給する排ガス切替バルブ32は不要となる。
なお、
図8Bの図示下側の開閉弁43を閉じて出口側排気管41aを閉止し、図示上側の開閉弁43を開いて出口側排気管41aを開放することで、排ガスは、外側ガス流路122を矢印tで示すように図示上側の吸着部110に向かって流れ、図示上側の吸着部110で脱硫される。
【0169】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、
図3B示した一実施形態の脱硫ユニット100では、ケーシング101の高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成されたケーシング101内に、上下方向に延在する円筒状を呈する吸着部110を配置している。しかし、ケーシング101の高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成されたケーシング101内に、
図3Cに示すような上下方向に延在する角筒状を呈する吸着部110を配置してもよい。また、ケーシング101の高さ方向に対して直交する断面が円形状に形成されたケーシング101内に、
図3D〜
図3Fに示すような厚板状を呈する第1吸着部110Aと第2吸着部110Bとを配置してもよい。