【実施例】
【0050】
本発明の態様及び実施形態は、以下の実施例によって例証される。
【0051】
DMD遺伝子の読取り枠を切断する大部分の突然変異は、ジストロフィン発現の喪失を引き起こし、DMDにつながる。しかしながら、疾患重症度の改善は、DMDエクソン6内で始まる代替翻訳開始から生じ得、高度に機能的なN切断ジストロフィンの発現につながる。この新規のアイソフォームは、グルココルチコイド誘導性のエクソン5内のIRESの使用から生じる。IRES活性は、下記のペプチド配列決定及びリボソームプロファイリングの両方によって患者筋内で確認された。エクソンスキッピングによるIRES上流の切断読取り枠の生成は、患者由来の細胞株及びDMDマウスモデルの両方において、機能的N切断アイソフォームの合成につながり、発現が、筋肉を収縮誘導性傷害から保護し、筋力を対照マウスと同レベルに補正する。これらの結果は、DMD遺伝子の5’エクソン内に突然変異を有する患者のための、新規の治療的アプローチを支持する。Wein et al.,Abstracts/Neuromuscular Disorders,23:738−852(2013)も参照されたい。
【0052】
実施例1
ヒト筋標本からのIRES誘導性翻訳の証拠
少なくとも最初の2つのDMDエクソン内の停止コドンにつながるナンセンス及びフレームシフト突然変異が、エクソン6翻訳開始を介して軽度のBMD表現型をもたらすはずであることを我々は以前に公開した[Gurvich et al.,Human Mutation,30:633−640(2009)]。しかしながら、最も一般的な単一エクソン重複であり、重複したエクソン2配列内で早期停止コドンをもたらす、エクソン2の重複は、それが通常はDMDと関連付けられるため、この予測に対する例外であると思われる[White et al.,Human Mutation,27:938−945(2006)]。しかしながら、早期停止コドンももたらすエクソン2の欠失は、我々の大規模集団[Flanigan et al.,Human Mutation,30:1657−1666(2009)]または他の公的に入手可能な大規模カタログ(www.dmd.nl)のいずれも記載されていなかった。この報告された症例の欠如は、エクソン2欠失を有する患者における臨床特徴が、無症候性であるか、またはN切断アイソフォームの発現に起因して非常に軽度であるかのいずれかを意味すると解釈した。
【0053】
この解釈は、偶然に検出された血清クレアチンキナーゼ漸増の評価のために(550iu/L、正常値<200iu/L)、6歳で最初に示されたイタリア人少年におけるエクソン2の欠失(DEL2)の検出によって確認された。正常な早期運動マイルストーンが報告され、家族内で筋ジストロフィーが報告されたことはなかった。彼の神経学的検査は、15歳で全体的に正常であった。筋生検は、わずかな線維サイズの変動性を示し(
図7a)、いくつかの部分において、いくつかの濃く染色された超収縮線維と共に、増加した数の中心核を示した。C末端抗体を使用する免疫蛍光分析は、膜におけるジストロフィンの存在を示した(
図7b)。興味深いことに、ウェスタンブロットは、検出されたジストロフィンが、より小さい分子量(約410kDa)を有していたことを明らかにし(
図1a)、突然変異分析は、エクソン2の欠失を明らかにした(7c〜g)。タンデム質量分析(LC−MS/MS)
20を使用する後次ペプチド配列決定は、エクソン6内の翻訳開始と一致して、ジストロフィンに対して検出され、適合された99個の固有ペプチドの中で、エクソン1〜5によってコードされる任意の残基の非存在を確認した(
図1b及び表1)。
【表1】
表1 ヒト筋肉におけるペプチドスペクトル適合。エクソン1〜10内でコードされるジストロフィンペプチド。(N)は、ペプチド配列が正常な対照筋またはエクソン2の欠失を有する患者からの筋肉内で検出された回数を表す。
【0054】
相補的アプローチにおいて、エクソン2フレームシフト突然変異(c.40_41del[p.Glu14ArgfsX17]、FSと称される)を有する軽度BMD患者から単離された筋RNAを使用して、DMD翻訳効率、プロモータ使用、及び代替スプライシングを調べたところ、そのウェスタンブロットは、N末端エピトープが欠如した同じ小分子量のジストロフィン(約410kDa)の発現も明らかにした(
図1c、
図8a)。ウェスタンブロット結果を確認するために、同じFS患者からの筋ホモジネートを使用して、リボソーム保護された断片について(すなわち、RNase消化後に単離されたリボソームフットプリント)及び総RNAについて、RNA−Seqライブラリーを構築した。リボソーム保護された断片(RPF)からの読取り対RNA−Seqからの読取りの比を使用して、正常な筋肉と患者の筋肉におけるmRNA翻訳効率を比較した。最も豊富な筋mRNAの上位1000の中で、DMDは、翻訳効率の最も大きい変化を示し(
図1d)、フレームシフトされた患者FSにおけるDMD筋転写を翻訳するリボソームの量の約5倍低減を示す。この減少した翻訳量は、患者の軽度BMD表現型を考慮して予想されるジストロフィンレベルの低減、ならびにp.Trp3X患者
4及び他の5’突然変異対立遺伝子において見られるジストロフィンの量の両方と一致する(
図1c)。
【0055】
DMDイントロン1〜8において観察される鋸歯RNA−Seqパターン(
図1e)は、主要な転写開始が、ジストロフィン筋特異的プロモータ(Dp427m)に位置していたこと、及びDMDエクソン1〜7が、対照及びFS患者標本の両方において、効率的な共転写スプライシングを受けたことを確認した[Ameur et al.,Nature Structural&Molecular Biology,18:1435−1440(2011)]。ジストロフィンの2つの代替427kDアイソフォーム(Dp427p及びDp427c)は、主に中枢神経系において発現され、代替エクソン1配列の使用においてのみ、Dp427mとは異なる。Dp427pまたはDp427cプロモータのいずれかからの強力な初期RNAシグナルの欠失は、代替プロモータの上方制御が、エクソン6内の代替AUG使用に寄与しないことを確認した(
図1e)。両標本において、代替プロモータから新規5’UTRのスプライシングを示すDp427mエクソン1とエクソン11との間の既知の接合部に排他的にマップされたエクソン−エクソン接合部に及ぶRNA−Seq読取りは、エクソン6 AUG使用に寄与しなかった。Dp427m エクソン1〜11上にマップされたリボソームフットプリントの分布は、正常レベルのエクソン1 AUG開始、続いてエクソン2における早期終結、及びエクソン6フレーム内AUGコドン後の翻訳の再開(
図1f)を明らかにし、DMD転写の本体へと続いて(
図8b、c、及びd)、効率的な代替翻訳開始と一致する。
【0056】
実施例2
生体外転写/翻訳研究
リボソームプロファイリング及びタンパク質分析の両方を患者筋において直接使用して、効率的な代替翻訳開始の新たな証拠を実証し、高い翻訳効率に寄与する要素を特徴付けることを求めた。DMDのエクソン1〜5がIRESを含有するかどうかを決定するために、エクソン1〜+4位置で始まるエクソン6の一部を包含して天然AUG開始コドン(c.4_c.369、エクソン1〜6と称される)を除外するcDNAの5’部分を、ジシストロニック二重ルシフェラーゼレポーターベクターpRDEFにクローン化した。このベクターは、上流cap依存性ウミシイタケルシフェラーゼ(RLuc)オープン読取り枠(ORF)を、SV40プロモータの制御下で含有し、下流cap非依存性ホタルルシフェラーゼ(FLuc)ORFを、関心対象の配列の制御下で含有し、2つのORFは、リボソーム走査を予防する二次構造要素(dEMCV)によって分離された(
図2c)。EMCV IRES配列を陽性対照として使用し、全ての値を空ベクターに対して正規化した。各例において、エクソン6 AUGを、下流FLucレポーターと共にフレーム内に置いたエクソン6から49ヌクレオチドを含めた。この配列は、2つのフレーム内AUG(M124及びM128)、及びクローン化目的で使用される10個の追加ヌクレオチドを含めて、最初の39ntに対応する。T7媒介性RNAは、異なる構築体から生成され、それらを使用して、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)翻訳アッセイを行った(
図2a、左パネル)。対応するRNAのサイズ及び完全性は、ホルムアルデヒドアガロースゲルを使用してチェックした(
図2b)。DMDのエクソン1〜5のCap非依存性翻訳活性(下流FLuc対RLuc発光の比として表される)は、FLucシグナルの1.5〜1.7倍の増加をもたらし、対照EMCV IRESで見られる3.4〜3.8倍の増加より少ないが、IRES活性と一致した(
図2a、左パネル)。
【0057】
実施例3
細胞培養物中のIRES活性
RRLベースの翻訳は、おそらくは、この特殊化した抽出物中の限定量のRNA結合タンパク質に起因して、または組織特異的IRESトランス作用因子(ITAF)の欠如に起因して、ウイルス性または真核細胞性IRESのいずれかのIRES活性を過小評価し得る。したがって、アッセイは、ジストロフィンを発現するC2C12筋芽細胞において行われ、エクソン1〜6構築体の存在が、エクソン6単独ベクターに対して、約8倍高いFluc発現につながることを観察した(
図2a、右パネル)。これは、対照EMCV IRESの活性の約50%を表し、エクソン1〜5内の比較的強いIRESの存在を示唆する。IRESの位置をマップするために、DMD遺伝子の5’部分(エクソン1〜5)からなる欠失構築体または適切な対照を、pRDEFにクローン化した(
図2c)。この配列の最初の300ヌクレオチド(nt)の欠失は、FLuc発現を著しく変化させなかったが、最後の71nt(エクソン5のほぼ全てを表す)の除去または反転は、FLucレポーターの発現を完全に抑制し、さらにエクソン5内の欠失は、大幅に低減したFLuc発現をもたらす。推定IRESが筋特異的因子を必要とするという仮説を検証するために、ジストロフィンを内因的に発現しないHEK293K細胞において、及び商用のヒト筋芽細胞株(hSKMM)において実験を繰り返した。ECMV IRESとは異なり、推定DMD IRESは、293K細胞においてFLuc発現を刺激しなかったが、hSKMM細胞内の刺激のレベルは、C2C12結果を複製し(
図9a)、IRESが筋内で優先的に活性であることを示唆する。
【0058】
対照実験を行い、異常なスプライシング事象、不可解なプロモータ活性、またはジシストロニックアッセイの誤解釈につながる他の潜在的な人為的結果の可能性を排除した。上流SV40プロモータを除去して、エクソン1〜6(c.4_c.369)DMD配列を含有するpRDEFベクターのプロモータレスバージョンを生成した。この構築体のC2C12筋芽細胞への形質移入は、RLuc及びFLucの両方からほんのわずかなバックグラウンド発光を示し、DMDコード配列におけるいかなる不可解なプロモータ活性に対しても強く反論する(データ図示せず)。RT−PCR(
図2d及び9c)によって異常なスプライシングは検出されず、RNA完全性は、ノーザンブロットによって確認された(
図2e及び9b)。
【0059】
特に、エクソン2の重複または欠失のいずれかが、中断された読取り枠をもたらすが、異なる関連臨床表現型は、IRES活性が、エクソン2重複の存在下で消滅し得るという仮説につながった。この仮説をC2C12細胞内で試験し、IRES活性化が、全長(エクソン1〜6)と欠失2 cDNAとの間で等しかったが、エクソン2重複の存在下で顕著に低減し(
図2f)、エクソン2の欠失ではなく重複が、IRES活性を除去することを確認した。
【0060】
実施例4
アウトオブフレームエクソンスキッピングは、IRES媒介性ジストロフィンを生体外で駆動することができる。
エクソン5 IRESの前のエクソンのスキッピングを考慮すると、エクソン2の除去のみが、読取り枠を崩壊させ、早期停止コドンをもたらすであろう(
図3a)。このエクソンの欠失を治療的に使用して、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の使用によっても[Wood et al.,Brain:A Journal of Neurology,133:957−972(2010)、van Deutekom et al.,New England Journal of Medicine,357:2677−2686(2007)、及びKinali et al.,Lancet Neurology,8:918−928(2009)]、またはAAV−U7媒介性アンチセンス送達の使用によっても[Goyenvalle et al.,Science,306:1796−1799(2004)、及びVulin et al.,Molecular Therapy:Journal of the American Society of Gene Therapy,20:2120−2133(2012)]、IRESの活性化を増加させ得ることを企図した。4つの異なる配列(
図3bにおいてそれぞれ「B」、「AL」、「AS」、及び「C」と標識される)を、U7snRNA標的のために選択し、各々をAAV1にクローン化して、ドキシシクリン誘導性MyoDを発現する野生型またはエクソン2重複線維芽細胞株(FibroMyoDと称される)のいずれかから生成された筋芽細胞におけるエクソンスキッピング効率を評価した[Chaouch et al.,Human Gene Therapy,20:784−790(2009)]。全ての構築体は、エクソン2の1つまたは2つのコピーのいずれかをスキップすることができた(
図10)。後次に、スキッピング効率を増加させるために、U7−C及びU7−AL標的アンチセンス配列の各々の2つのコピーを、単一自己相補的(sc)AAV1ベクター(及び指定されたAAV1.U7−ACCA)にクローン化され、そのゲノムは、
図15に3’〜5’配向で示される。U7−C及びU7−ALを使用して、ALとBとの間のアンチセンス配列における任意の可能な重複を回避した。既知のアンチセンス配列(AON H2A)を、スキッピングの陽性対照として使用した[Tennyson and Worton,Nucleic Acids Res.,24:3059−3064(1996)]。FibroMyoD細胞の感染によって、DMD転写の88.6%がエクソン2の完全スキッピングを有し、N末端切断ジストロフィンの生成につながった(
図3c、3d、及び12a)。
【0061】
実施例5
IRES駆動されたN切断ジストロフィンは、エクソン2の重複を内包する新規のマウスモデルにおけるアウトオブフレームエクソンスキッピング後に発現される。
U7−ACCAベクターが、C57BL/6バックグラウンドでエクソン2の重複を担持するマウスモデル(Dup2マウス、下の実施例8で説明される)において生体内でエクソン2をスキップする能力を試験した。結果として得られるDMD mRNAは、エクソン2の2つのコピーを含有し、読取り枠を崩壊させて、ジストロフィン発現のほぼ完全な非存在をもたらす。AAV1.U7−ACCA(1e11vg)を、6〜8週齢のDup2マウス(n=5)またはBI6対照マウスの前脛骨に直接注入した。4週間後、注入された筋肉からのRT−PCR分析は、Dup2またはBI6におけるエクソン2のほぼ完全なエクソンスキッピングを実証する(
図4a、4b)。RT−PCR結果と一致して、Dmdイントロン1及び2で観察された鋸歯RNA−Seqパターンは、重複したエクソン2の共転写スプライシングの抑制、ならびに治療マウスにおけるエクソン1〜エクソン3の共転写スプライシングの高い効率性を確認した(
図4c)。ウェスタンブロット及び免疫染色は、N切断タンパク質の発現を実証する。サルコレンマ染色は、β−ジストログリカン及びnNOSに対して回復され(
図4d、4e)、機能的ジストログリカン複合体の存在を示唆する。
【0062】
エクソンスキッピング及びタンパク質発現の用量応答の程度を評価するために、Dup2マウスの前脛骨(TA)への筋内注入(IM)を使用して、用量漸増研究も行った。IM漸増用量は、
図18aに記載される。
図18bに見られるように、スキップされた転写の程度は、予想された用量応答を示す。
図18bは、タンパク質発現において同様の予想された用量応答を示し、1注入当たり3.1E11vgで最大であり、生理学的力欠陥の著しい補正を伴う(
図18c)。
【0063】
実施例6
グルココルチコイドは、ジストロフィンIRESの活性化を増加させる。
ジストロフィンの類似体であるウトロフィンの5’UTRにおいて見出される筋特異的IRESが、グルココルチコイド活性化されることが見出されたため、IRES活性に対するグルココルチコイド曝露の効果を調べた[Miura et al.,PloS One,3:e2309(2008)]。さらに、グルココルチコイド、プレドニゾン、及びデフラザコートでの治療は、DMDのための標準治療である。増加濃度の6−メチル−プレドニゾロン(PDN)の存在下で、C2C12細胞内のエクソン5〜6構築体を使用して、エクソン5 IRES活性を評価したところ、下流FLuc活性が、PDNの存在下での約7倍変化から、6.4μM PDNでの20倍超へと用量依存的に増加した(
図5a)。このグルココルチコイド活性化は、エクソン6単独もしくは反転されたエクソン5対照構築体の形質移入後、または293Kにおいて見られなかった(
図5a及びS5a)。ジストロフィン発現の増加は、6.4μM PDNで処置したDup2 FibroMyoD細胞において見られ(
図5b)、Dup2マウス(n=5)の、U7−ACCA及びPDN両方での共治療は、U7−ACCA単独を超えるジストロフィン発現の増加をもたらし(
図5c〜d)、グルココルチコイド誘導性と一致する。未治療のDup2と比較して3%未満の増加は、希少標本においてPDN単独で見られ(
図5cに表される)、Dup2モデルにおけるIRESのいくらかの漏出性を示唆する。全ての例において、このジストロフィン発現の増加は、AAVベクターゲノムコピー数の差に起因しなかった(データ図示せず)。ウトロフィン翻訳が、コルチコステロイドによって制御され得、過剰発現が、非存在ジストロフィンを補償し得るため、同じ注入筋におけるウトロフィンレベルを評価した(
図5e)。未治療のDup2動物において、ウトロフィンレベルは、mdx、標準ジストロフィノパシーマウスモデルにおいて報告されたものと同様に、BI6と比較して増加した。4群の比較は、PDN治療動物と未治療動物との間のウトロフィンレベルの統計的有意差を明らかにせず(
図5f)、PDN治療後の機能的救済の原因として、ウトロフィン上方制御を除外する。
【0064】
実施例7
局所IRES駆動されたN切断ジストロフィン発現は、筋膜を安定させ、Dup2マウス筋の力欠陥を補正する。
IRES駆動されたアイソフォームの発現が、Dup2マウスにおいて筋完全性及び生理学を改善したかどうかを調べた。mdxマウスの場合と同様に、Dup2マウスのジストロフィン変化は、中心化核を特徴とする広範囲の筋再生として、4週齢で定量可能である(Vulinら、原稿印刷中)。4週齢のDup2マウスの前脛骨筋へのAAV1.U7−ACCAの筋内注入の1ヶ月後、IRES駆動されたアイソフォームの発現は、中心化核の著しい低減をもたらす(
図6a)。このアイソフォームが膜完全性を回復することを実証するために、治療及び未治療のDup2マウスを、ダウンヒル走行プロトコルに供し、エヴァンスブルー染料(EBD)を注入し、これが膜損傷によって透過処理された骨格筋線維に入る。EBDの腹腔内注入に続いて、ジストロフィン染色していない線維においてのみ取込みが見出され、N切断タンパク質が、サルコレンマを安定させ、このタンパク質の生体内の機能性についてさらなる証拠を提供することを示唆する(
図4f)。EBD陽性線維の数の定量は、IRES駆動されたアイソフォームの発現が、これらのマウスにおいて筋線維の保護をもたらすことを確認する(
図6b)。重要なことに、この膜保護は、後肢握力(
図6c)及び筋特定力(
図6d)の、BI6対照マウスにおいて見られるレベルへの回復と関連付けられる。プレドニゾンの有無にかかわらず、U7−ACCAを注入したDup2筋は、未治療のDup2筋よりも収縮誘導性傷害に対して著しく高い耐性を示し、両方の治療の複合は、BI6対照との有意差を示さなかった(
図6e)。PDNによるいくつかのDup2筋において見られるジストロフィンの最小(<3%)発現にもかかわらず(
図5c)、PDN単独によるDup2筋の治療は、筋生理の有意な改善をもたらさない(
図6)。
【0065】
実施例8
DMDモデル
DMDエクソン2重複のモデルの実施例は、以下のように、生体内及び生体外モデルを含む。
mdxdup2マウスモデル
【0066】
DMD遺伝子座内にエクソン2の重複を担持するマウスを発育させた。エクソン2重複突然変異は、最も一般的なヒト重複突然変異であり、比較的重症のDMDをもたらす。
【0067】
挿入ベクターのマップを
図Dに示す。このマップにおいて、数字は、クローン化部位、及びエクソン、及び制限部位の相対位置を示す。ネオカセットは、遺伝子の同一方向であり、挿入点は、正確にはイントロン2内の32207/32208bpである。少なくとも150bp超過のイントロン配列は、挿入されたエクソン2の各側で保持され、E2領域は、1775−2195bpである。エクソン2及びイントロン2のサイズは、それぞれ62bp及び209572bpである。
【0068】
雄C57BL/6 ES細胞は、エクソン2構築体を担持するベクターで形質移入し(
図D)、次に挿入をPCRによってチェックした。多くのアルビノBL/6胚盤胞において、1つの良好なクローンが見出され、増幅され、注入された。注入された胚盤胞を、レシピエントマウスに移植した。キメラ雄からのジストロフィン遺伝子は、PCRによって、次にRT−PCRによってチェックした。コロニーは拡大され、ホモ接合性に繁殖された数匹の雌マウスを含む。4週齢ヘミ接合性mdxdup2マウスからの筋肉内のジストロフィン発現は、本質的に非存在であった。
不死化された条件誘導性のfibroMyoD細胞株
【0069】
哺乳動物線維芽細胞内のMyoD遺伝子の発現は、筋原性系統への細胞の分化転換をもたらす。そのような細胞は、筋管へとさらに分化され得、それらは、DMD遺伝子を含む筋遺伝子を発現する。
【0070】
テトラシクリン誘導性プロモータの制御下でMyoDを条件的に発現する不死化細胞株を生成した。これは、tet誘導性MyoDであり、ヒトテロメラーゼ遺伝子(TER)を含有する、レンチウイルスの初代線維芽細胞株の安定した形質移入によって達成される。結果として得られる安定した株は、MyoD発現が、ドキシシクリンでの治療によって開始されるのを可能にする。そのような細胞株は、エクソン2の重複を担持するDMD患者から生成された。
【0071】
この株を使用し、Dr.Steve Wilton(Perth,Australia)によって提供された2’−O−メチルアンチセンスオリゴマー(AON)を使用して、重複スキッピングが実証された。複数の細胞株を試験した。
一時的にMyoD形質移入された一次細胞株
【0072】
アデノウイルス−MyoDで一時的に形質移入された初代線維芽細胞株を使用して、原理証明実験を行った。アデノウイルス構築体は、細胞ゲノムに統合されなかったが、MyoDは一時的に発現された。結果として得られるDMD発現は、エクソンスキッピング実験を行うのに十分であった(しかし、再現性は、安定して形質移入された株を支持する)。
【0073】
実施例9
Dup2マウスモデルにおけるAAV9−U7_ACCAの静脈内注入は、N切断アイソフォームの著しい発現及び強度低下の補正をもたらす。
AAV9−U7−ACCAゲノムが、静脈内注入時に、Dup2マウスにおいて生体内でエクソン2をスキップする能力を試験した。マウスへの投与のために、U7−ACCAゲノムを、rAAV9ベクター(本明細書において、AAV9−U7_ACCAと指定される)にクローン化した。AAV9−U7_ACCAを、5匹のDup2マウスの尾静脈(3.3E12vg/kg)に注入した。注入の1ヶ月後に、治療動物を調べた。
【0074】
実験の結果を
図17に示す。
【0075】
静脈内投与の用量漸増研究も実行した(
図19a)。
図19bに見られるように、スキップされた転写の程度は、IM研究において見られるように、予想された用量応答を示す。最高レベルにおいて、転写の大半は、全長ジストロフィンに翻訳される野生型転写、またはN切断アイソフォームに翻訳されるエクソン2欠失した転写のいずれかからなり、いずれかのアイソフォームは、マウスへの機能的利益を提供する(ヒトと同様)。
図19cは、タンパク質発現において、同様の予想される用量応答を示す。非常に重要なことに、臨床的有用性に関して、より高い用量で、横隔膜及び心筋におけるジストロフィンの疑いなく豊富な発現が存在する。免疫ブロット上のタンパク質発現の定量(
図19d)は、用量漸増応答を確認する。
【0076】
ヒト新生児におけるDMDの新生児スクリーニング(NBS)は、現在実行可能であり、したがって、Dup2マウスにおける出生後1日目(P1)に、AAV9.U7−ACCAベクター(8×10
11vg)結果の送達によるN切断アイソフォームの早期発現の利点を検証した。この単一注入は、全ての筋肉においてN切断アイソフォームの広範囲の発現をもたらし、治療後1〜6ヶ月に渡って筋線維の保護を持続した(
図20)。
【0077】
実施例10
以下の配列(5’〜3’に示される)を有するPPMOを、Dup2マウスに投与する。
Cアンチセンスオリゴマー:AUUCUUACCUUAGAAAAUUGUGC(配列番号10)
ALアンチセンスオリゴマー:GUUUUCUUUUGAACAUCUUCUCUUUCAUCUA(配列番号11)
【0078】
AL−PPMOを、野生型C2C12マウス筋芽細胞に形質移入した(
図22)。形質移入の3日後に、RT−PCRを行い、効率的なエクソン2スキッピングを実証した(
図22a)。同様の実験を、Dup2マウスモデルにおいて行った。エクソン2スキッピング及びタンパク質発現の程度を評価するために、AL−PPMOの、Dup2マウスの前脛骨(TA)への筋内注入を行った。
図22bに示されるように、エクソン2スキッピングは、効率的に達成された。
図22cは、同じ治療TA筋を使用して得られた。ジストロフィンの免疫染色を実行し、ジストロフィンの結果は、効率的な生成及び形質膜タンパク質の局在化を実証した。
【0079】
別の実験において、12mg/kgで週3用量の別の集団のマウスの尾静脈において、全身注入が与えられる。第1の注入後4週間目に、スキッピング及びジストロフィン回復を評価する。
【0080】
実施例11
エクソン1または2内にナンセンス突然変異を内包する患者は、依然として、高度に機能的なN末端切断ジストロフィンアイソフォームを発現する。これは、リボソームの再入及びエクソン6からの翻訳を可能にする、エクソン5内のIRESの存在に起因する。したがって、ナンセンス突然変異の形成が、ミスセンス突然変異またはフレーム内欠失重複のいずれかを、エクソン1〜4内に担持するヒト患者細胞株において、IRESの活性化を強制するはずであると仮定する。エクソン2の除去のみが、エクソン3において停止コドンを生成する。したがって、上述の突然変異を担持する患者におけるエクソン2の完全スキッピングは、エクソン3において停止コドンを誘導し、それによりIRES媒介性N末端切断アイソフォームの生成を誘導する。。
【0081】
これらのエクソン内に突然変異を担持するヒト患者から細胞を収集した。次に、これらの細胞を、ジストロフィンを発現する細胞型である筋管(以降、「筋線維芽細胞」と称される)へと次にさらに分化し得る線維芽細胞の変換を強制する誘導性MyoDを発現するレンチウイルスに感染させた。エクソン1〜4内にミスセンス突然変異またはフレーム内欠失もしくは重複を内包する患者からの細胞を収集することを目的とするにもかかわらず、ナンセンス突然変異を担持する患者からの細胞のみが入手可能であった。これらの細胞は、BMD患者に由来し、該患者は、ナンセンス突然変異を担持するため、既にN末端切断ジストロフィンアイソフォームを天然に発現していた。しかしながら、分化におけるAAV1.U7−ACCAでの治療は、14日目までにIRES開始されたアイソフォームの、より高い発現をもたらした(
図21)。
【0082】
実施例における結果の考察
N切断されているが機能的なジストロフィンの発現を駆動し得る、DMDエクソン5内のグルココルチコイド応答性IRESの存在を実証した。エクソン2フレームシフト突然変異を有するBMD患者からのリボソームプロファイリングは、ジストロフィン翻訳効率の軽度低減、ならびにエクソン5及び6内で始まるリボソーム負荷と一致するリボソームフットプリントパターンを実証した。我々がエクソン1ナンセンス突然変異を有する患者において最初に説明した[Flanigan et al.,Neuromuscular Disorders:NMD,19:743−748(2009)]、このIRES誘導されたアイソフォームの、疾患重症度の改善との関連はまた、エクソン2欠失の最初に報告された症例から質量分析データによって確認され、全体的に無症候性の対象において見出された。最後に、新規治療アプローチにおいて、アウトオブフレームエクソンスキッピングを誘導して、早期停止コドンを生成し、結果として、患者由来の細胞株及び新規DMDマウスモデルの両方において、IRESの活性化を強制し、ジストロフィン複合体の成分を回復し、筋障害の病理学的及び生理学的特徴を補正した。
【0083】
ほとんどの真核性mRNAは、モノシストロン性であり、それらの5’末端に特殊化されたcap構造を有し、40Sリボソームサブユニットによる走査が始まる場所であるため、翻訳開始に必要とされる。cap依存性5’→3’走査モデルの開始に対する明らかな証拠にもかかわらず、生物情報学的分析は、ヒト転写の約50%が、転写特異的翻訳効率を媒介し制御し得る、5’UTRの短い上流オープン読取り枠(uORF)を含むことを示唆した。uORFは、漏出性走査または末端依存性再開のいずれかを調節することによって機能し得るが、uORFはまた、哺乳動物陽イオン性アミノ酸輸送因子1遺伝子、CAT1/SLC7A1に対して示されるように、IRES要素へのアクセスを動的に制御することができる。レポーターアッセイを介したIRES特定に関して挙げられる注意事項を認識して、RT−PCR及びノーザンブロットによるRNA完全性の評価、プロモータのないプラスミドの使用、及び適切な陽性IRES対照の使用を含む、本研究において行われた全ての対照実験は、IRES活性に起因するcap非依存性開始と一致した。DMD IRES活性を担持する最小領域を、EMCV(588nt)と比較して長さは短いが、c−myc 5’UTR(50nt)において特定されるものと同様のサイズの71ntにマップした。これは、そのような小IRESが、ジシストロニックベクター内で使用され得るため重要な特徴であり、AAVなどのウイルスベクターにパッケージされる場合、空間が制限される。
【0084】
細胞IRESが翻訳を調節する精密な分子機序は、文献において定義されていないが、ITAFの要件が強く示唆された。これらの細胞タンパク質は、IRES活性を補助するようにトランスで作用する。ほぼ全てのITAFが、RNA結合ドメインを担持することが示され、RNAシャペロンとして作用し、IRES一次配列が、その活性に固有の適切な立体構造状態を獲得するのを助けると仮定された。これは、エクソン2重複の存在下でのジストロフィンIRES活性の喪失と関連する可能性があり、複雑な二次構造の形成によってIRES機能を除外し得るか、またはエクソン5 IRESへのITAFアクセスを干渉する阻害性uORFの形成を引き起こす。
【0085】
我々の結果は、ジストロフィン発現の転写後制御のこれまでに説明されていない機序を介した5’切断突然変異の救済のための分子説明を提供する。この新たな細胞IRESの特定及び結果として生じるジストロフィンアイソフォームは、筋肉及びジストロフィンの基本生物学を理解するための重要な意味合いを有する。我々はDMDのエクソン5が高度に保存されることに気づき、イヌ、マウス、ウマ、及びニワトリDMD遺伝子において、ヒトとの87%同一性、ならびにD.レリオ及びX.トロピカリスを含む39種の中で67%の同一性が見出される。そのような高度に保存された領域内のIRESの存在は、代替翻訳開始に対するプログラムされた役割を支持する選択的圧力を強く示唆する。通常条件下でのIRESの役割は、明らかでないが、関連細胞系統特異的及び/または条件活性化シグナルを理解するための継続的な努力が、IRES制御の基礎となる機序を解明し、ジストロフィンの潜在的に新規の機能を明瞭にするであろう。
【0086】
興味深い疑問は、N切断されたアイソフォームがどのように機能的であり続けるかである。ジストロフィンの主な細胞的役割は、F−アクチン細胞骨格と筋形質膜との間の重要な構造的架橋の役割として機能することによって、収縮力を、サルコレンマを渡って細胞外構造に伝達することであると想定される。ジストロフィン内の2つの領域、ABD1(アクチン結合ドメイン、残基15〜237に及ぶ)及びABD2(残基1468〜2208に及ぶ)は、F−アクチン結合に関与する。多くの研究が、ABD1ドメイン内の欠失の設定において、ジストロフィンの安定性の欠如を示した。しかしながら、これらの研究の大半が、ABD2ドメインを欠失するマイクロジストロフィン構築体を用いて行われたことに気づき、ABD1とアクチンとの間の相互作用を増強することが示された。そのようなミニタンパク質は、アクチンに結合し、全長バージョンと比較して異なる方法でアクチン動態を修飾する。そのような構築体による結果は、ABD2の非存在が、アクチンへのジストロフィンの結合を完全に排除しないことを示すが、ABD1の非存在は、ジストロフィンとアクチンとの間の相互作用を完全に妨害する可能性は低い。ABD1に対して欠失されたトランス遺伝子の発現は、mdx表現型を減少させ、Mバンド及びZラインのコスタマー(costameric)パターンを回復し、ジストロフィンとサブサルコレンマ細胞骨格との間のリンクが、ABD1との相互作用よりも多くを必要とすることを示唆する。これと一致して、細胞骨格の他のメンバーが、ジストロフィンスペクトリン反復と相互作用することが示された。
【0087】
いくつかのシリーズは、ABD1に影響を及ぼす突然変異に起因するBMDが、より重症であることを示唆するが[Beggs et al.,American Journal of Human Genetics,49:54−67(1991)]、我々の臨床的及び実験的観察は、ABD1ドメインの一部または全てが欠如した他のBMD患者の報告と同様に[Winnard et al.,Human Molecular Genetics,2:737−744(1993);Winnard et al.,American Journal of Human Genetics,56:158−166(1995)及びHeald et al.,Neurology,44:2388−2390(1994)]、正準ABD1の最初の半分が欠如しているにもかかわらず、IRES駆動されたN切断アイソフォームの重要な機能性を明らかに示す(
図3a)。IRES活性を誘導するために、アウトオブフレーム転写を生成することによって、このアイソフォームの発現を強制することは、実質的な治療可能性を保持するため、これは特に関心対象である。この新規のアウトオブフレーム戦略は、DMD/BMD患者において既に使用されている薬物である、グルココルチコイド治療と組み合わせることができ、IRES活性化を増加させるはずである。重要なことに、エクソン2重複を有する患者(1つの大きなシリーズにおいてDMD患者のほぼ2%を表す)に対して個人化されたエクソンスキッピングアプローチではなく、そのようなタンパク質の発現を誘導するためのエクソン2のアウトオブフレームスキッピングが、DMD遺伝子の5’末端における突然変異を担持する全ての患者(同じ集団において最大6%)の治療に企図される[Flanigan et al.,Neuromuscular Disorders:NMD,19:743−748(2009)]。
【0088】
本発明は、特定の実施形態に関して説明されたが、当業者であれば、変型及び修飾を思いつくであろうことが理解される。したがって、特許請求の範囲内に現れるような限定のみが、本発明に課されるべきである。
【0089】
本出願に対して参照される全ての文書は、特にそれらが参照される内容に特に注意して、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。