【文献】
Mol. Ther., 2013, Vol.21, No.3, p.638-647
【文献】
J. Immunother., 2011, Vol.34, No.6, p.469-479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガンマデルタT細胞受容体(TCR)とキメラ抗原受容体(CAR)とを発現するT細胞であって、前記ガンマデルタTCRはガンマデルタT細胞活性化のためのシグナル1を提供するために用いられ、前記CARは共刺激シグナル2を提供するために用いられ、前記CARが、
(i)抗原結合ドメイン;
(ii)膜貫通ドメイン;および
(iii)T細胞シグナル伝達共受容体由来の共刺激細胞内シグナル伝達ドメインであって、標的抗原が前記CARの前記抗原結合ドメインに結合した際に共刺激シグナル2を提供し、該共刺激シグナル2を前記ガンマデルタT細胞に伝達し、シグナル1を前記ガンマデルタT細胞に伝達しない、共刺激細胞内シグナル伝達ドメイン;
を含み、
前記ガンマデルタTCRとCARとは、それぞれ各抗原に結合した際に、前記ガンマデルタTCRがシグナル1を提供し、前記CARが共刺激シグナル2を提供し、この場合にようやく前記ガンマデルタT細胞が完全に活性化され、前記ガンマデルタTCRに結合することができる第1抗原と前記CARに結合することができる第2抗原とを発現する標的細胞を殺傷することができるように配置され、
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10、IL2−R、IL7−R、IL21−R、NKp30、NKp44またはDNAM−1(CD226)シグナル伝達ドメインを含む、T細胞。
前記ガンマデルタTCRが、リン酸化抗原;主要組織適合複合体クラスI鎖関連A(MICA);主要組織適合複合体クラスI鎖関連B(MICB);NKG2Dリガンド1−6(ULBP1−6);CD1c;CD1d;内皮タンパク質C受容体(EPCR);リポヘキサペプチド;フィコエリスリンまたはヒスチジルtRNA合成酵素に結合することができる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞。
前記ガンマデルタT細胞刺激剤が、イソペンテニルピロリン酸(IPP);IPP類似体;およびファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)阻害剤から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、ガンマデルタ(γδ)T細胞のCARを用いることにより、「on target−off tumour毒性」を低下させる機構を解明した。本明細書に記載のシステムでは、CARを用いて、抗原がCARの抗原認識ドメインに結合した際に、共刺激シグナル(シグナル2)をγδT細胞に与える。このようにして、シグナル2は、CARがその標的抗原に結合した際にのみ、T細胞に与えられる(
図2A)。γδT細胞活性化のためのシグナル1は、リン酸化抗原などの危険シグナルによって活性化される内因性TCRによって与えられる。
【0009】
γδT細胞は、最適なエフェクター機能のために、シグナル1およびシグナル2の両方を必要とする。したがって、本システムでは、γδT細胞は、標的細胞が(i)CARによって認識される抗原を発現する場合;および(ii)内因性γδTCRによって認識される危険シグナルを発現する場合にのみ、細胞毒性、増殖およびサイトカイン分泌について完全に活性化されることになる。
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、ガンマデルタT細胞受容体(TCR)とキメラ抗原受容体(CAR)とを発現するT細胞であって、CARが、
(i)抗原結合ドメイン;
(ii)膜貫通ドメイン;および
(iii)共刺激細胞内シグナル伝達ドメイン
を含み;ここで細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原の抗原結合ドメインへの結合に続いて共刺激シグナルをT細胞に与える、T細胞を提供する。
【0011】
このように、第1抗原のγδTCRへの結合はシグナル1の産生をもたらし、第2抗原のCARの抗原結合ドメインへの結合はシグナル2の産生をもたらす。
【0012】
抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原(TAA)に結合することができ得る。
【0013】
抗原結合ドメインは、GD2、CD33、CD19またはEGFRに結合することができ得る。
【0014】
細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10、CD28、CD27、41BB、OX40、CD30、IL2−R、IL7−R、IL21−R、NKp30、NKp44またはDNAM−1(CD226)シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0015】
CARの膜貫通ドメインは、CD8ストークまたはCD28膜貫通ドメインを含み得る。
【0016】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインはDAP10シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0017】
CARは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインをさらに含み得る。
【0018】
γδTCRは、リン酸化抗原/ブチロフィリン3A1複合体;主要組織適合複合体クラスI鎖関連A(MICA);主要組織適合複合体クラスI鎖関連B(MICB);NKG2Dリガンド1−6(ULBP1−6);CD1c;CD1d;内皮タンパク質C受容体(EPCR);リポヘキサペプチド;フィコエリスリンまたはヒスチジルtRNA合成酵素に結合することができ得る。
【0019】
CARは、以下のアミノ酸配列の1つを含み得る:
[配列番号1](aCD33−Fc−DAP10 CAR)
MAVPTQVLGLLLLWLTDARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASEDIYFNLVWYQQKPGKAPKLLIYDTNRLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYYCQHYKNYPLTFGQGTKLEIKRSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSRSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLSNYGMHWIRQAPGKGLEWVSSISLNGGSTYYRDSVKGRFTISRDNAKSTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAQDAYTGGYFDYWGQGTLVTVSSMDPAEPKSPDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMIARTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKKDPKFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVCARPRRSPAQEDGKVYINMPGRG
[配列番号2](aGD2−Fc−DAP10 CAR)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGQVQLQESGPGLVKPSQTLSITCTVSGFSLASYNIHWVRQPPGKGLEWLGVIWAGGSTNYNSALMSRLTISKDNSKNQVFLKMSSLTAADTAVYYCAKRSDDYSWFAYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSENQMTQSPSSLSASVGDRVTMTCRASSSVSSSYLHWYQQKSGKAPKVWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQYSGYPITFGQGTKVEIKRSDPAEPKSPDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMIARTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKKDPKFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIFWVCARPRRSPAQEDGKVYINMPGRG
【0020】
さらなる態様では、本発明は、CARであって、(i)抗原結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;および(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含み;ここで細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激細胞内シグナル伝達ドメインを含むがCD3内部ドメインを含まない、CARを提供する。
【0021】
共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10、CD28、CD27、41BB、OX40、CD30、IL2−R、IL7−R、IL21−R、NKp30、NKp44またはDNAM−1(CD226)シグナル伝達ドメインから選択され得る。
【0022】
第2の態様では、本発明は、CARであって、抗原結合ドメイン;膜貫通ドメイン;および細胞内シグナル伝達ドメインを含み;ここで細胞内シグナル伝達ドメインはDAP10シグナル伝達ドメインを含む、CARを提供する。細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10シグナル伝達ドメインからなり得るか、または本質的にそれからなり得る。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の第2の態様に記載のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3内部ドメインを含まない。
【0024】
本発明の第2の態様に記載のCARは、本発明の第1の態様で定めたCARであり得る。
【0025】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1または第2の態様で定めたCARをコードする核酸配列を提供する。
【0026】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様で定めた核酸配列を含むベクターを提供する。
【0027】
ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはトランスポゾンであり得る。
【0028】
第5の態様では、本発明は、本発明の第3の態様に記載の核酸配列または本発明の第4の態様に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、本発明の第1の態様に記載の細胞の作製方法に関する。
【0029】
本方法は、細胞をガンマデルタT細胞刺激剤で刺激する工程を含み得る。
【0030】
γδT細胞刺激剤は、例えば、イソペンテニルピロリン酸(IPP);ブロモヒドリンピロリン酸および(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−2−エニルピロリン酸などのIPP類似体;ならびにアミノビスホスホネート(例えば、ゾレドロネートまたはパミドロネート)などのファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)阻害剤から選択され得る。
【0031】
細胞は、被験体から単離された試料に由来し得る。
【0032】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に記載の細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
第7の態様では、本発明は、本発明の第6の態様に記載の医薬組成物を被験体に投与する工程を含む、疾患の治療方法に関する。
【0034】
本方法は、γδT細胞刺激剤を被験体に投与する工程を含み得る。
【0035】
γδT細胞刺激剤は、例えば、イソペンテニルピロリン酸(IPP);ブロモヒドリンピロリン酸および(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−2−エニルピロリン酸などのIPP類似体;ならびにアミノビスホスホネート(例えば、ゾレドロネートまたはパミドロネート)などのファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)阻害剤から選択され得る。
【0036】
本方法は、以下の工程:
(i)被験体からの細胞含有試料の単離;
(ii)本発明の第3の態様に記載の核酸試料または本発明の第4の態様に記載のベクターでの、細胞の形質導入またはトランスフェクション;および
(iii)(ii)からの細胞を被験体に投与すること
を含み得る。
【0037】
第8の態様では、本発明は、疾患の治療で用いるための、本発明の第6の態様に記載の医薬組成物に関する。
【0038】
第9の態様では、本発明は、疾患の治療および/または予防のための医薬の製造における、本発明の第1の態様に記載の細胞の使用に関する。
【0039】
本明細書に記載の疾患は、がん、微生物感染またはウイルス感染であり得る。
【0040】
本発明は、したがって、内因性γδTCRに結合することができる(したがって、産生シグナル1を刺激する)第1抗原と、CARに結合することができる(したがって、産生シグナル2を刺激する)第2抗原とを発現する標的細胞によってのみ完全に活性化され、それゆえ、標的細胞を殺傷することができるγδT細胞を提供する。
【0041】
本発明のγδT細胞は、したがって、望ましくない「on target−off tumour」効果を低下させるのに有用である。特に、低レベルのTAAを発現する正常細胞は、内因性γδTCRによって認識される危険シグナルを発現せず、したがってγδT細胞の完全な活性化に必要なシグナル1を与えないため、本発明のγδT細胞を活性化しない。
【発明を実施するための形態】
【0043】
γδT細胞
T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)構成成分に基づいて2つのグループに分けられる。TCRヘテロ二量体は、95%のT細胞ではα鎖およびβ鎖からなる。これらは、抗原提示細胞上のMHC分子によって提示されるペプチドを介して外来抗原を認識し、適応免疫に必須のものである。
【0044】
5%のT細胞はγ鎖およびδ鎖からなるTCRを有する。γδTCRはMHC非拘束性であり、腫瘍によって発現される細胞ストレスのマーカーを検出する。
【0045】
γδT細胞は病原体および形質転換細胞をHLA非拘束的に認識する。それらは、細胞ストレスのマーカー(例えば、形質転換細胞によってメバロン酸塩生合成経路の副産物として放出されるリン酸化抗原)に応答する。γδT細胞は、特に抗体オプソニン化標的細胞の存在下で、先天性細胞毒性機能および抗原提示能力の両方を示す。
【0046】
γδT細胞は、「リンパ球ストレス監視」を担当し、すなわち、クローン性増殖もしくはde novo分化の必要性なしに、感染または非微生物ストレスを即座に感知して応答することに関与している。
【0047】
γδT細胞の活性化は、刺激シグナルと阻害シグナルとのバランスによって調節される。それらは、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MICB、およびUL16結合タンパク質(ULBP)ファミリーの様々なメンバーなどのNKG2Dとしても知られる活性化受容体キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK、メンバー1(KLRK1)のMHC関連リガンドと組み合わせたγδTCRリガンド(例えばリン酸化抗原)によって活性化される。
【0048】
γδ細胞は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)も発現し、それらは賦活性または阻害性のいずれかであり、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、2つのドメイン、長い細胞質尾部、1(KIR2DL1)およびキラー細胞免疫グロブリン様受容体、3つのドメイン、長い細胞質尾部、1(KIR3DL1)が含まれる。
【0049】
標的細胞の効果的な殺傷をもたらすγδT細胞の完全な活性化には、産生シグナル1およびシグナル2の生成が必要である(
図1および2A)。
【0050】
γδT細胞は、形質転換細胞または感染細胞上に存在する危険シグナル抗原からT細胞活性化のシグナル1を引き出す。これらの危険シグナル抗原は、γδTCRによって認識される。γδT細胞に対するT細胞活性化のシグナル2は、一般に、形質転換細胞または感染細胞上に存在する危険シグナル分子(MICAなど)によっても誘導される。シグナル2は、例えば、NKG2D受容体およびDAP10を介して形質導入され得る(
図2A)。
【0051】
免疫検出を回避する手段として、がん細胞は、γδT細胞のシグナル2を効果的に遮断する可溶性NKG2Dリガンドを頻繁に分泌し、したがってその活性化を防ぎ、腫瘍の浸潤を促進する(
図2B)。
【0052】
第1の態様では、本発明は、γδTCRとCARとを発現するT細胞を提供し、ここでCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナルをT細胞へ与える。
【0053】
したがって、γδTCRおよびCARの構成は、各受容体に結合した際に、γδTCRがシグナル1を与え、CARがシグナル2をそれぞれ与えるというものである。
【0054】
本明細書で使用される共刺激シグナルは、完全γδT細胞活性化に必要とされるシグナル2と同義である。
【0055】
このようにして、本発明の第1の態様のγδT細胞はようやく完全に活性化され、γδTCRに結合することができる(したがって、産生シグナル1を刺激する)第1抗原、およびCARと結合することができる(したがって、産生シグナル2を刺激する)第2抗原を発現する標的細胞を殺傷することができる(
図2C)。
【0056】
γδTCRへの抗原結合がない場合、シグナル1は生成されず、完全なγδT細胞活性化は得られない。言い換えれば、γδTCRへの抗原結合がない場合、γδT細胞は標的細胞を殺傷するように刺激されない(
図2D)。
【0057】
CARへの抗原結合がない場合、シグナル2は生成されず、完全なγδT細胞活性化は得らない。言い換えれば、CARへの抗原結合がない場合、γδT細胞は標的細胞を殺傷するように刺激されない。
【0058】
本発明のγδT細胞は、任意のγδTCRを発現し得る。γδTCRリガンドの例は、当該分野で知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0059】
例として、本発明の細胞によって発現されるγδTCRは、リン酸化抗原(例えば、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、ブロモヒドリンピロリン酸(BrHPP)および(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−2−エニルピロリン酸(HMBPP));主要組織適合複合体クラスI鎖関連A(MICA);主要組織適合複合体クラスI鎖関連B(MICB);NKG2Dリガンド1−6(ULBP1−6);CD1c;CD1d;内皮タンパク質C受容体(EPCR);リポヘキサペプチド;フィコエリスリンまたはヒスチジルtRNA合成酵素を認識し得る。
【0060】
本発明の細胞の1つの利点は、(i)特定の抗原に結合する抗原結合ドメインおよび(ii)特定の共刺激内部ドメインを含むCARを含むことである。このように、本発明の細胞は、CARによって結合され得る抗原を含む環境において活性化する傾向がより大きくなるが、なぜなら、CARによる抗原の結合がもたらすのは、共刺激内部ドメインを介するシグナル伝達およびシグナル2産生であるためである。例えば、CARの抗原結合ドメインがTAAに特異的である場合、CARによって与えられる共刺激シグナルに起因してTAAが発現される腫瘍環境では、本発明の細胞が活性化する傾向は増大することになる。
【0061】
キメラ抗原受容体
本発明のT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。
【0062】
キメラ抗原受容体(CAR)は、任意の特異性を免疫エフェクター細胞に移植する改変受容体である。典型的なCARでは、モノクローナル抗体の特異性がT細胞に移植される。CARをコードする核酸は、例えば、レトロウイルスベクターを用いてT細胞に移植され得る。このようにして、養子細胞移植用の多数のがん特異的T細胞を生成することができる。このアプローチの第I相臨床試験は、有効性を示す。
【0063】
CARの標的抗原結合ドメインは、通常、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介してシグナル伝達内部ドメインに融合される。CARが標的抗原に結合すると、それを発現するT細胞に活性化シグナルが伝達される。
【0064】
初期のCAR設計は、FcεR1またはCD3ζのγ鎖のいずれかの細胞内部分に由来する内部ドメインを有していた。結果的に、これらの第1世代受容体は、免疫学的シグナル1を伝達し、これは同種標的細胞のT細胞殺傷を引き起こすのに十分であったが、T細胞を完全に活性化して増殖および生存させることはできなかった。この制限を克服するために、複合内部ドメインが構築された:T細胞共刺激分子の細胞内部分の、CD3ζの細胞内部分への融合は、抗原認識後に活性化シグナルと共刺激シグナルとを同時に伝達することができる第2世代受容体をもたらす。最もよく使用される共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインである。これは、最も強力な共刺激シグナル −すなわちT細胞増殖を引き起こす免疫学的シグナル2を供給する。密接に関連し、生存シグナルを伝達するOX40および41BBなどのTNF受容体ファミリー内部ドメインを含むいくつかの受容体も記載されてきた。活性化、増殖および生存シグナルを伝達することができる内部ドメインを持つさらに強力な第3世代CARが、現在では記載されている。
【0065】
本発明のγδT細胞は、標的抗原が結合した際に、シグナル2をγδT細胞に伝達する共刺激シグナル伝達内部ドメインを含むCARを含む。
【0066】
本発明のT細胞のCARは、CARがT細胞などの細胞内部で発現される場合、新生タンパク質が小胞体およびその後それが発現されている細胞の表面に向けられるように、シグナルペプチドを含み得る。
【0067】
シグナルペプチドのコアは、単一アルファヘリックスを形成する傾向がある疎水性アミノ酸の長いストレッチを含み得る。シグナルペプチドは、短い正の電荷を帯びたアミノ酸のストレッチから始まることができ、これは転座中のポリペプチドの適切な位相を強化するのに役立つ。シグナルペプチドの末端には、典型的にはシグナルペプチダーゼによって認識され切断されるアミノ酸のストレッチが存在する。シグナルペプチダーゼは、転位中または転位完了後のいずれかで切断し、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成し得る。次いで、遊離シグナルペプチドは特異的プロテアーゼにより消化される。
【0068】
シグナルペプチドは、分子のアミノ末端に存在し得る。
【0069】
シグナルペプチドは、配列番号6、7もしくは8、または5、4、3、2もしくは1個のアミノ酸突然変異(挿入、置換または付加)を有するその変異体を含み得るが、但し、そのシグナルペプチドが依然としてCARの細胞表面発現を引き起こすように機能することを条件とする。
【0070】
[配列番号6]
MGTSLLCWMALCLLGADHADG
【0071】
配列番号6のシグナルペプチドは、小型で高効率である。それは、末端グリシンの後に約95%の切断を与えると予測され、シグナルペプチダーゼによる効率的な除去を与える。
【0072】
[配列番号7]
MSLPVTALLLPLALLLHAARP
【0073】
配列番号7のシグナルペプチドは、IgG1に由来する。
【0074】
[配列番号8]
MAVPTQVLGLLLLWLTDARC
【0075】
配列番号8のシグナルペプチドは、CD8に由来する。
【0076】
共刺激細胞内シグナルドメイン
細胞内ドメイン/内部ドメインは、典型的なCARのシグナル伝達部位である。
【0077】
本発明のγδT細胞は、標的抗原が結合した際に、シグナル2をγδT細胞に伝達する共刺激シグナル伝達内部ドメインを含むCARを含む。したがって、本発明のγδT細胞は、標的抗原が結合した際に、シグナル1をγδT細胞に伝達しないCARを含む。
【0078】
T細胞共刺激受容体は、活性化閾値を低下させ、T細胞アネルギーを防ぎ、T細胞機能を増強する定性的および定量的変化を誘導することが知られている。
【0079】
多くのγδT細胞の共受容体が当技術分野で知られている。これらの受容体の1つ以上を介した産生シグナル伝達は、γδT細胞の完全な活性化と標的細胞殺傷とをもたらすことができる。
【0080】
本発明のγδT細胞は、CARの抗原結合ドメインへの抗原の結合がγδT細胞において産生シグナル2シグナル伝達を生じるように、γδT細胞共受容体に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0081】
細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、DAP10、CD28、CD27、41BB、OX40、CD30、IL2−R、IL7−R、IL21−R、NKp30、NKp44またはDNAM−1(CD226)シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0082】
細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0083】
DAP10は、NKG2D受容体と会合するシグナル伝達サブユニットである(
図1を参照)。それは、NKG2Dの排他的結合パートナーおよびシグナル伝達中間体であり、脂質キナーゼカスケードを誘発するYxxM活性化モチーフを含有する。
【0084】
DAP10シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列の例を以下に示す:
【0085】
[配列番号3]
CARPRRSPAQEDGKVYINMPGRG
【0086】
さらなる例示的な共刺激ドメインは、配列番号9〜19として示される。
【0087】
[配列番号9](CD28内部ドメイン)
KRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAY
【0088】
[配列番号10](CD27内部ドメイン)
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
【0089】
[配列番号11](41BB内部ドメイン)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
【0090】
[配列番号12](OX40内部ドメイン)
RRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI
【0091】
[配列番号13](CD30内部ドメイン)
HRRACRKRIRQKLHLCYPVQTSQPKLELVDSRPRRSSTQLRSGASVTEPVAEERGLMSQPLMETCHSVGAAYLESLPLQDASPAGGPSSPRDLPEPRVSTEHTNNKIEKIYIMKADTVIVGTVKAELPEGRGLAGPAEPELEEELEADHTPHYPEQETEPPLGSCSDVMLSVEEEGKEDPLPTAASGK
【0092】
[配列番号14](IL2−R内部ドメイン)
TWQRRQRKSRRTI
【0093】
[配列番号15](IL7−R内部ドメイン)
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0094】
[配列番号16](IL21−R内部ドメイン)
SLKTHPLWRLWKKIWAVPSPERFFMPLYKGCSGDFKKWVGAPFTGSSLELGPWSPEVPSTLEVYSCHPPRSPAKRLQLTELQEPAELVESDGVPKPSFWPTAQNSGGSAYSEERDRPYGLVSIDTVTVLDAEGPCTWPCSCEDDGYPALDLDAGLEPSPGLEDPLLDAGTTVLSCGCVSAGSPGLGGPLGSLLDRLKPPLADGEDWAGGLPWGGRSPGGVSESEAGSPLAGLDMDTFDSGFVGSDCSSPVECDFTSPGDEGPPRSYLRQWVVIPPPLSSPGPQAS
【0095】
[配列番号17](NKp30内部ドメイン)
GSTVYYQGKCLTWKGPRRQLPAWPAPLPPPCGSSAHLLPPVPGG
【0096】
[配列番号18](NKp44内部ドメイン)
WWGDIWWKTMMELRSLDTQKATCHLQQVTDLPWTSVSSPVEREILYHTVARTKISDDDDEHTL
【0097】
[配列番号19](DNAM−1(CD226)内部ドメイン)
NRRRRRERRDLFTESWDTQKAPNNYRSPISTSQPTNQSMDDTREDIYVNYPTFSRRPKTRV
【0098】
細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0099】
細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号3もしくは9〜19として示される配列またはその変異体を含み得る。
【0100】
変異体は、配列番号3または9〜19と少なくとも75%の配列同一性を共有する配列を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0101】
変異体は、配列番号3または9〜19と少なくとも80%の配列同一性を共有する配列を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0102】
変異体は、配列番号3または9〜19と少なくとも85%の配列同一性を共有する配列を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0103】
変異体は、配列番号3または9〜19と少なくとも90%の配列同一性を共有する配列を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0104】
変異体は、配列番号3または9〜19と少なくとも95%の配列同一性を共有する配列を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0105】
変異体は、配列番号3または9〜19と少なくとも99%の配列同一性を共有する配列を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0106】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号3として示される配列、または
配列番号3と少なくとも75、80、85、90、95または99%の配列同一性を共有するその変異体を含み得るが、但し、その配列が有効な共刺激シグナル伝達ドメインを提供することを条件とする。
【0107】
一実施形態では、内部ドメインはCD3内部ドメインを含まない。例えば、内部ドメインは、CD3イプシロン鎖、CD3ガンマ鎖および/またはCD3デルタ鎖を含まない。特定の実施形態では、内部ドメインはCD3ゼータ内部ドメインを含まない。
【0108】
例示的なCD3ゼータ内部ドメインは、配列番号26として示される。
【0109】
[配列番号26](CD3ゼータ内部ドメイン)
RSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0110】
本明細書に記載のCD3ゼータ内部ドメインは、配列番号26または配列番号26に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するその変異体を含むか、またはそれからなっていてもよく、有効な膜貫通ドメイン/細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを提供する。
【0111】
抗原結合ドメイン
抗原結合ドメインは、抗原を認識するCARの部位である。抗体、抗体模倣体、およびT細胞受容体の抗原結合部位に基づく抗原結合ドメインを含む多くの抗原結合ドメインが当該分野で知られている。例えば、抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体由来一本鎖可変フラグメント(scFv);標的抗原の天然リガンド;標的に対して十分な親和性を有するペプチド;単一ドメイン抗体;Darpin(設計アンキリン反復タンパク質)などの人工単一結合剤;またはT細胞受容体由来一本鎖を含み得る。
【0112】
抗原結合ドメインは、抗体の抗原結合部位に基づかないドメインを含み得る。例えば、抗原結合ドメインは、腫瘍細胞表面受容体の可溶性リガンドであるタンパク質/ペプチド(例えば、サイトカインもしくはケモカインなどの可溶性ペプチド);または膜に固定されたリガンドの細胞外ドメインもしくは結合対の一方が腫瘍細胞上に発現する受容体に基づくドメインを含み得る。
【0113】
例として、本明細書に記載の実施例は、GD2およびCD33にそれぞれ結合するCARに関する。
【0114】
抗原結合ドメインは、抗原の天然リガンドに基づき得る。
【0115】
抗原結合ドメインは、コンビナトリアルライブラリー由来の親和性ペプチドまたはde novo設計された親和性タンパク質/ペプチドを含み得る。
【0116】
腫瘍関連抗原(TAA)
抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原(TAA)に結合し得る。
【0117】
広範囲にわたるTAAが当該分野で知られており、本発明において使用されるCARは、任意のTAAに特異的に結合することができる任意の抗原結合ドメインを含み得る。
【0118】
例として、本発明で使用するCARは、表1に記載のTAAに特異的に結合することができ得る。
【0120】
がん免疫療法におけるTAAの標的化に関連する問題は、低レベルのTAAが正常組織で発現され得ることである。例えば、GD2は神経芽腫TAAであるが、神経にも発現する;PSMAは前立腺がんTAAであるが、正常な腎臓、肝臓および結腸細胞、ならびに脳の星状細胞にも見られる。この問題は、高度に選択的な標的が不足している固形腫瘍でより深刻である。
【0121】
正常で健常な細胞でのTAAの発現は、「on−target,off−tumour」副作用をもたらし得る。本発明のγδT細胞は、γδTCRおよびCARの両方に対するリガンドを発現する細胞によってのみ活性化されるため、本発明はこれらの効果を軽減する。したがって、低レベルでTAAを発現する正常で健常な細胞は、γδTCRに結合することができる危険シグナル抗原を発現しないため、本発明のγδT細胞を活性化しない(
図2D)。
【0122】
CARの抗原結合ドメインは、GD2、CD33、CD19またはEGFRに結合することができ得る。
【0123】
ジシアロガングリオシド(GD2、例えばpubchem:6450346により示される)は、主に細胞表面上に発現されるシアル酸含有スフィンゴ糖脂質である。この糖鎖抗原の機能は、完全には理解されていない;しかしながら、それは腫瘍細胞の細胞外マトリックスタンパク質への付着において重要な役割を果たすと考えられている。GD2は、神経芽細胞腫上に高密度に、均一に、ほぼ普遍的に発現する。正常組織では、GD2発現は、皮膚メラニン細胞、および末梢疼痛線維ミエリン鞘に主として限定される。CNS内では、GD2は胚抗原であるように見えるが、散在性希突起膠細胞および後脳下垂体内で発現しているのがかすかに見られた。
【0124】
抗原結合ドメインは、配列番号20として示される配列またはその変異体を含み得るが、但し、その変異体がGD2に結合する能力を保持することを条件とする。
【0125】
[配列番号20]
METDTLLLWVLLLWVPGSTGQVQLQESGPGLVKPSQTLSITCTVSGFSLASYNIHWVRQPPGKGLEWLGVIWAGGSTNYNSALMSRLTISKDNSKNQVFLKMSSLTAADTAVYYCAKRSDDYSWFAYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSENQMTQSPSSLSASVGDRVTMTCRASSSVSSSYLHWYQQKSGKAPKVWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQYSGYPITFGQGTKVEIKRS
【0126】
抗原結合ドメインは、配列番号20として示される配列、または配列番号20と少なくとも75、80、85、90、95または99%の配列同一性を共有するその変異体を含み得るが、但し、その変異体がGD2に結合する能力を保持することを条件とする。
【0127】
CD33(例えばUniprotアクセッション番号P20138によって示される)は、細胞へのシアル酸依存性結合を媒介する骨髄単球由来細胞の推定接着分子である。これは、骨髄特異的であると通常考えられているが、一部のリンパ様細胞でも見ることができる。
【0128】
抗原結合ドメインは、配列番号21として示される配列またはその変異体を含み得るが、但し、その変異体がGD2に結合する能力を保持することを条件とする。
【0129】
[配列番号21]
MAVPTQVLGLLLLWLTDARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASEDIYFNLVWYQQKPGKAPKLLIYDTNRLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYYCQHYKNYPLTFGQGTKLEIKRSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSRSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLSNYGMHWIRQAPGKGLEWVSSISLNGGSTYYRDSVKGRFTISRDNAKSTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAQDAYTGGYFDYWGQGTLVTVSSM
【0130】
抗原結合ドメインは、配列番号21として示される配列、または配列番号21と少なくとも75、80、85、90、95または99%の配列同一性を共有するその変異体を含み得るが、但し、その変異体がGD2に結合する能力を保持することを条件とする。
【0131】
ヒトCD19抗原は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する95kdの膜貫通糖タンパク質である(例えばUniprot P15391で示される)。CD19は、B細胞分化においてかなり早期に発現され、B細胞の形質細胞への分化の終わりに消失されるだけである。したがって、CD19は、多発性骨髄腫以外の全てのB細胞悪性腫瘍で発現される。CD19は、正常なB細胞コンパートメントによっても発現される。
【0132】
EGFR(例えばUniprotアクセッション番号P00533で示される)は、EGFファミリーのリガンドに結合し、いくつかのシグナル伝達カスケードを活性化して細胞外キューを適切な細胞応答に変換する受容体チロシンキナーゼである。既知のリガンドには、EGF、TGFA/TGF−アルファ、アンフィレグリン、エピゲン/EPGN、BTC/ベータセルリン、エピレグリン/EREGおよびHBEGF/ヘパリン結合EGFが含まれる。EGFRは、多くのがん細胞によって高レベルで発現される。しかしながら、それは正常で健常な細胞によっても発現される。
【0133】
スペーサードメイン
CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと連結させ、抗原結合ドメインを内部ドメインから空間的に分離するスペーサー配列を含み得る。柔軟なスペーサーは、抗原結合ドメインが異なる方向に配向することを可能にし、結合を容易にする。
【0134】
スペーサー配列は、例えば、IgG1Fc領域、IgG1ヒンジまたはヒトCD8ストークもしくはマウスCD8ストークを含み得る。あるいは、スペーサーは、lgG1Fc領域、lgG1ヒンジまたはCD8ストークと類似の長さおよび/またはドメインスペーシング特性を有する代替リンカー配列を含んでいてもよい。ヒトIgG1スペーサーを改変し、Fc結合モチーフを除去してもよい。
【0135】
これらのスペーサーのアミノ酸配列の例を以下に示す:
【0136】
[配列番号22](ヒトIgG1のヒンジCH
2CH
3)
AEPKSPDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMIARTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKKD
【0137】
[配列番号23](ヒトCD8ストーク)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDI
【0138】
[配列番号24](ヒトIgG1ヒンジ)
AEPKSPDKTHTCPPCPKDPK
【0139】
スペーサーは、配列番号22〜24と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を共有する配列番号22〜24のいずれかの変異体であってもよく、配列番号9〜11として示されるアミノ酸配列の機能的活性を保持する。
【0140】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜にまたがるCARの配列である。
【0141】
膜貫通ドメインは、膜において熱力学的に安定な任意のタンパク質構造であり得る。これは、典型的には、いくつかの疎水性残基を含むアルファヘリックスである。任意の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインを使用して、本発明の膜貫通部位を供給することができる。タンパク質の膜貫通ドメインの存在および範囲は、TMHMMアルゴリズム(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM−2.0/)を用いて当業者によって測定することができる。さらに、タンパク質の膜貫通ドメインが比較的単純な構造、すなわち、膜にまたがるのに十分な長さの疎水アルファヘリックスを形成すると予測されるポリペプチド配列である場合、人工的に設計されたTMドメインも使用され得る(特許文献1は、合成膜貫通成分を記載する)。
【0142】
膜貫通ドメインは、任意のI型膜貫通タンパク質に由来し得る。膜貫通ドメインは、疎水性ヘリックスを形成することが予測される合成配列であり得る。
【0143】
膜貫通ドメインは、良好な受容体安定性を与えるCD28に由来し得る。
【0144】
膜貫通ドメインは、配列番号25として示される配列を含み得る。
【0145】
[配列番号25](CD28膜貫通ドメイン)
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
【0146】
核酸
本発明は、本明細書に記載のCARをコードする核酸配列をさらに提供する。
【0147】
核酸配列は、配列番号1または配列番号2として示されるアミノ酸配列を有するCARをコードすることができ得る。
【0148】
[配列番号4](aCD33−Fc−DAP10 CAR)
ATGGCCGTGCCCACTCAGGTCCTGGGGTTGTTGCTACTGTGGCTTACAGATGCCAGATGTGACATCCAGATGACACAGTCTCCATCTTCCCTGTCTGCATCTGTCGGAGATCGCGTCACCATCACCTGTCGAGCAAGTGAGGACATTTATTTTAATTTAGTGTGGTATCAGCAGAAACCAGGAAAGGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGATACAAATCGCTTGGCAGATGGGGTCCCATCACGGTTCAGTGGCTCTGGATCTGGCACACAGTATACTCTAACCATAAGTAGCCTGCAACCCGAAGATTTCGCAACCTATTATTGTCAACACTATAAGAATTATCCGCTCACGTTCGGTCAGGGGACCAAGCTGGAAATCAAAAGATCTGGTGGCGGAGGGTCAGGAGGCGGAGGCAGCGGAGGCGGTGGCTCGGGAGGCGGAGGCTCGAGATCTGAGGTGCAGTTGGTGGAGTCTGGGGGCGGCTTGGTGCAGCCTGGAGGGTCCCTGAGGCTCTCCTGTGCAGCCTCAGGATTCACTCTCAGTAATTATGGCATGCACTGGATCAGGCAGGCTCCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGGTCTCGTCTATTAGTCTTAATGGTGGTAGCACTTACTATCGAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACTATCTCCAGGGACAATGCAAAAAGCACCCTCTACCTTCAAATGAATAGTCTGAGGGCCGAGGACACGGCCGTCTATTACTGTGCAGCACAGGACGCTTATACGGGAGGTTACTTTGATTACTGGGGCCAAGGAACGCTGGTCACAGTCTCGTCTATGGATCCCGCCGAGCCCAAATCTCCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTCCCGTGGCCGGCCCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCGCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAACCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCCCTGCACAATCACTATACCCAGAAATCTCTGAGTCTGAGCCCAGGCAAGAAGGACCCCAAGTTCTGGGTCCTGGTGGTGGTGGGAGGCGTGCTGGCCTGTTACTCTCTCCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGTGCGCCAGACCACGGCGGAGCCCAGCCCAGGAGGACGGCAAGGTGTACATCAACATGCCCGGCCGCGGCTGA
【0149】
[配列番号5](aGD2−Fc−DAP10 CAR)
ATGGAGACCGACACCCTGCTGCTGTGGGTGCTGCTGCTGTGGGTGCCAGGCAGCACCGGCCAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGCCTGGTGAAGCCCAGCCAGACCCTGAGCATCACCTGCACCGTGAGCGGCTTCAGCCTGGCCAGCTACAACATCCACTGGGTGCGGCAGCCCCCAGGCAAGGGCCTGGAGTGGCTGGGCGTGATCTGGGCTGGCGGCAGCACCAACTACAACAGCGCCCTGATGAGCCGGCTGACCATCAGCAAGGACAACAGCAAGAACCAGGTGTTCCTGAAGATGAGCAGCCTGACAGCCGCCGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCAAGCGGAGCGACGACTACAGCTGGTTCGCCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCTCTGGCGGAGGCGGCTCTGGCGGAGGCGGCTCTGGCGGAGGCGGCAGCGAGAACCAGATGACCCAGAGCCCCAGCAGCTTGAGCGCCAGCGTGGGCGACCGGGTGACCATGACCTGCAGAGCCAGCAGCAGCGTGAGCAGCAGCTACCTGCACTGGTACCAGCAGAAGAGCGGCAAGGCCCCAAAGGTGTGGATCTACAGCACCAGCAACCTGGCCAGCGGCGTGCCCAGCCGGTTCAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGACTACACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCAGCAGTACAGCGGCTACCCCATCACCTTCGGCCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAGCGGTCGGATCCCGCCGAGCCCAAATCTCCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTCCCGTGGCCGGCCCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCGCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAACCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCCCTGCACAATCACTATACCCAGAAATCTCTGAGTCTGAGCCCAGGCAAGAAGGACCCCAAGTTCTGGGTCCTGGTGGTGGTGGGAGGCGTGCTGGCCTGTTACTCTCTCCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGTGCGCCAGACCACGGCGGAGCCCAGCCCAGGAGGACGGCAAGGTGTACATCAACATGCCCGGCCGCGGCTGA
【0150】
核酸配列は、配列番号1または2によってコードされるものと同じアミノ酸配列をコードし得るが、遺伝コードの縮重のために異なる核酸配列を有し得る。核酸配列は、配列番号4または配列番号5として示される配列と少なくとも80、85、90、95、98または99%の同一性を有し得るが、但し、それが本発明の第1の態様において定めたCARをコードすることを条件とする。
【0151】
変異体
配列比較は、目測で、またはより一般には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実施することができる。これらの公的および商業的に入手可能なコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の配列同一性を計算することができる。
【0152】
配列同一性は、連続した配列にわたって計算されてもよく、すなわち、一方の配列を他方の配列と整列させ、一方の配列中の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と一残基ずつ直接比較する。これは、「非ギャップ」アライメントと呼ばれる。典型的には、そのような非ギャップアライメントは、比較的短い数の残基(例えば、50個未満の連続したアミノ酸)にわたってのみ行われる。
【0153】
これは非常に単純で一貫した方法であるが、例えば、他の点では同一の配列対において、1つの挿入または欠失により、その後に続くアミノ酸残基がアラインメントから外され、そのためグローバルアライメントが行われた場合に%相同性の大幅な減少を潜在的に生じることが考慮されていない。結果として、ほとんどの配列比較方法は、全体的な相同性スコアを過度に不利にすることなく、考えられる挿入および欠失を考慮に入れた最適アライメントを作成するように設計される。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して局所相同性を最大にすることによって達成される。
【0154】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、アラインメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当て、同じ数の同一アミノ酸について、できるだけ少ないギャップの配列アラインメント −2つの比較した配列間の類似性が高いことを反映する− が、多くのギャップを持つスコアよりも高いスコアを達成するようにする。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ内のそれぞれ後続の残基に対してより小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」が通常使用される。これは、最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然ながら、ギャップのより少ない最適化アライメントを作成する。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを修正することを可能にする。しかしながら、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する際は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(下記参照)を使用する際、アミノ酸配列のデフォルトのギャップペナルティは、ギャップについては−12、それぞれの延長については−4である。
【0155】
最大%配列同一性の計算は、したがって、ギャップペナルティを考慮に入れ、最適アライメントの作成を最初に必要とする。そのようなアラインメントを実行するのに適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(非特許文献2)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、限定されないが、BLASTパッケージ(非特許文献3を参照)、FASTA(非特許文献4)およびGENEWORKS比較ツール一式が挙げられる。BLASTおよびFASTAの両方が、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(非特許文献5を参照)。しかしながら、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。
【0156】
最終的な配列同一性は同一性の観点から測定することができるが、アライメントプロセス自体は、典型的には、all−or−nothing対比較に基づくものではない。代わりに、化学類似性または進化距離に基づいて各対での比較にスコアを割り当てるスケーリングされた類似性スコアマトリックスが通常使用される。一般的に使用されるそのようなマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス −BLASTプログラム一式のデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、通常、公開デフォルト値か、提供された場合にはカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(詳細については、ユーザーマニュアルを参照)。GCGパッケージでは公開デフォルト値を使用するか、または他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62などのデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0157】
ソフトウェアが最適アラインメントを作成すると、%配列同一性を計算することが可能である。ソフトウェアは、典型的にはこれを配列比較の一部として行い、数値結果を与える。
【0158】
本発明による用語「変異体」は、配列からのまたは配列への1つ(もしくはそれ以上)のアミノ酸の任意の置換、変異、修飾、置換、欠失または付加を含むが、但し、得られるアミノ酸配列が未修飾配列と実質的に同じ活性を保持することを条件とする。
【0159】
保守的置換は、例えば以下の表に従って行うことができる。第2列の同じブロック内のアミノ酸、好ましくは第3列の同じ行内のアミノ酸が、互いに置換され得る:
【0161】
多くの異なるポリヌクレオチドおよび核酸が、遺伝コードの縮重の結果として同じポリペプチドをコードし得ることは、当業者に理解されるであろう。さらに、当業者は、型通りの技術を用いて、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行ない、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映させ得ることが理解されるべきである。
【0162】
本明細書に記載の核酸配列またはアミノ酸配列は、本明細書に示すような核酸配列またはアミノ酸配列を含み得るか、それからなり得るか、または本質的にそれからなり得る。
【0163】
ベクター
本発明は、本発明の核酸配列を含むベクターも提供する。そのようなベクターは、核酸配列を宿主細胞に導入し、それが本発明の第1の態様の分子を発現および産生するように使用され得る。
【0164】
ベクターは、例えば、プラスミド、またはレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。
【0165】
ベクターは、T細胞をトランスフェクトまたは形質導入することができ得る。
【0166】
ベクターは、iCasp9またはRQR8などの自殺遺伝子をコードする核酸配列も含み得る。
【0167】
自殺遺伝子は、許容できない毒性に直面して、T細胞などの養子移植細胞の選択的破壊を可能にする遺伝的にコードされた機構である。
【0168】
カスパーゼ9の活性化は細胞アポトーシスをもたらす。カスパーゼ9の背後にある活性化機構は、iCasp9分子によって活用された。カスパーゼ9が活性化するために必要なことは、カスパーゼ9がホモ二量体化するためのエネルギー障壁を乗り越えることのみである。ホモ二量体は構造変化を起こし、二量体対の一方のタンパク質分解ドメインが活性化する。生理学的には、これはカスパーゼ9のCARDドメインのAPAF−1への結合によって起こる。iCasp9において、APAF−1ドメインは、二量体化の化学的誘導物質(CID)に選択的に結合するように変異した修飾FKBP12で置換されている。CIDの存在は、ホモ二量体化および活性化をもたらす。iCasp9は、ヒトFK506結合タンパク質(FKBP)に融合した修飾ヒトカスパーゼ9に基づく(非特許文献6)。それは、AP1903として知られている小分子CIDの存在下での条件付二量体化を可能にする。
【0169】
RQR8の発現は、T細胞を抗CD20抗体リツキシマブに対して反応しやすくするが、完全長CD20分子よりも小型である(非特許文献7)。
【0170】
医薬組成物
本発明は、本発明のベクターまたはCAR発現T細胞を、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、および場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物と一緒に含有する医薬組成物にも関する。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態であり得る。
【0171】
方法
本発明は、本発明の核酸配列またはベクターを細胞に導入する工程を含む、本発明の細胞の作製方法にも関する。
【0172】
本発明のCAR発現細胞は、患者自身の末梢血(第一者)、またはドナー末梢血(第二者)からの造血幹細胞移植の設定において、または無縁ドナー(第三者)からの末梢血のいずれかから、ex vivoで作製され得る。あるいは、CAR T細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のT細胞へのex vivo分化に由来し得る。これらの場合、CAR T細胞は、ウイルスベクターでの形質導入、DNAまたはRNAでのトランスフェクションを含む多くの手段のうちの1つにより、CARをコードするDNAまたはRNAを導入することによって生成される。
【0173】
本方法は、細胞をγδT細胞刺激剤で刺激することをさらに含み得る。本明細書中で使用される「γδT細胞刺激剤」は、細胞の混合出発集団からγδT細胞の増殖および/または生存を選択的に刺激する任意の薬剤を指す。
【0174】
したがって、得られた細胞集団は、細胞の出発集団と比較して増加したγδT細胞数 −例えば、特定のγδTCR受容体を発現する特定のγδT細胞− で濃縮される。
【0175】
本発明に従って産生されたγδT細胞集団は、γδT細胞、例えば特定のγδTCR受容体を発現する特定のγδT細胞で濃縮され得る。すなわち、本発明に従って産生されるγδT細胞集団は、γδT細胞数が増加することになる。例えば、本発明のγδT細胞集団は、被験体から単離された試料中のγδT細胞と比較して、特定のγδTCR受容体を発現するγδT細胞数が増加することになる。換言すると、γδT細胞のパーセンテージまたは割合は増加することになるという点で、γδT細胞集団の組成は、「未変性」T細胞集団(すなわち、本明細書に記載の増殖工程を受けていない集団)の組成とは異なる。
【0176】
本発明のγδT細胞集団は、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%のγδT細胞を有し得る。
【0177】
本発明のγδT細胞集団は、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%の、
特定のγδTCR受容体を発現するγδT細胞を有し得る。
【0178】
例として、γδT細胞刺激剤は、イソペンテニルピロリン酸(IPP);IPP類似体(例えば、ブロモヒドリンピロリン酸もしくは(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−2−エニルピロリン酸);ファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)阻害剤またはゾレドロネートもしくはパミドロネートなどのアミノビスホスホネートであり得る。
【0179】
γδT細胞刺激剤は、一般的なT細胞分裂促進因子、例えばIL−2などの分裂促進性サイトカインと組み合わせて使用され得る。
【0180】
γδT細胞を刺激する追加の方法は当該分野で知られており、例えば、コンカナバリンA(非特許文献8)、プラスチック上に固定化された抗γδTCR抗体;フィーダーとしての改変人工抗原提示細胞および抗γδTCR抗体でコーティングされた改変人工抗原提示細胞(非特許文献9)の使用が含まれる。
【0181】
治療方法
疾患の治療方法は、本発明のベクターまたはT細胞の治療的使用に関する。この点において、ベクターまたはT細胞は、疾患に関連する少なくとも1つの症状を軽減させる、縮小させるもしくは改善するためにおよび/または疾患の進行を減速させる、縮小させるもしくは阻むために、既存の疾患または状態を有する被験体に投与され得る。
【0182】
CAR発現T細胞は、患者自身の末梢血(第一者)、またはドナー末梢血(第二者)からの造血幹細胞移植の設定において、または無縁ドナー(第三者)からの末梢血のいずれかから、ex vivoで作製され得る。あるいは、CAR T細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のT細胞へのex vivo分化に由来し得る。これらの場合、CAR T細胞は、ウイルスベクターでの形質導入、DNAまたはRNAでのトランスフェクションを含む多くの手段のうちの1つにより、CARをコードするDNAまたはRNAを導入することによって生成される。
【0183】
一実施形態では、γδT細胞を含む試料は、被験体から事前に単離されていてもよい。
【0184】
本発明のCAR T細胞は、本明細書に記載の方法によって作製され得る。特に、疾患の治療方法で用いるCAR発現T細胞は、ウイルスベクターでのT細胞の形質導入または本明細書に記載のような共刺激CARをコードするDNAもしくはRNAでのトランスフェクション、およびγδT細胞刺激剤を用いるγδT細胞の増殖の工程を含む方法によって生成され得る。
【0185】
γδT細胞刺激剤は、イソペンテニルピロリン酸(IPP);IPP類似体(例えば、ブロモヒドリンピロリン酸もしくは(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−2−エニルピロリン酸);ファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)阻害剤または、例えばゾレドロネートもしくはパミドロネートなどのアミノビスホスホネートであり得る。
【0186】
本発明のCAR分子を発現するT細胞は、例えば、がん、微生物感染およびウイルス感染を含む様々な疾患の治療に使用され得る。
【0187】
がんは、例えば、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(腎臓細胞)、肺がん、脳腫瘍、黒色腫、白血病、リンパ腫、膵臓がん、前立腺がんまたは甲状腺がんであり得る。
【0188】
本発明の方法および使用は、追加の組成物と組み合わせて実施され得る。例えば、治療を受ける疾患ががんである場合、本発明の組成物は、化学療法および/または放射線療法などの追加のがん療法と組み合わせて投与され得る。
【0189】
本発明の組成物は、イソペンテニルピロリン酸(IPP);IPP類似体(例えば、ブロモヒドリンピロリン酸もしくは(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−2−エニルピロリン酸);ファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)阻害剤またはゾレドロネートもしくはパミドロネートなどのアミノビスホスホネートなどのγδT細胞刺激剤と組み合わせて投与され得る。
【0190】
特に、ゾレドロネートおよびパミドロネートは、Vδ2+γδT細胞のin vivo増殖のためにIL−2と組み合わせて使用することができる。このアプローチを用いた多くの第I相臨床試験が存在する(非特許文献10を参照)。
【0191】
「組み合わせて」は、本発明の組成物の投与前、投与と同時に、または投与後の、追加の療法またはγδT細胞刺激剤の適用を指し得る。
【0192】
ここで、本発明を実施例としてさらに説明するが、これは本発明を実施する際に当業者を援助するためのものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0193】
(実施例1:共刺激CARを発現するγδT細胞の生成)
健常ドナーの血液から、Ficoll密度勾配分離を用いてPBMCを抽出した。それらを、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100u/mlヒトIL−2および5μMゾレドロン酸を補充したRPMI 1640培地で5日間培養した。
【0194】
5日後、それらを、マーカー遺伝子として作用し、リツキシマブ(αCD20)感受性自殺遺伝子も提供するRQR8に融合したCAR構築物を含むレトロウイルスで形質導入した。
【0195】
本明細書に記載の例示的なCARには、aGD2特異的scFv、IgG1のFc部分に基づくリンカー、CD28由来の膜貫通ドメインおよびDAP10の内部ドメイン(
図10参照)が挙げられる。
【0196】
第2の例示的なCARには、CD33特異的scFv、lgG1のFc部分に基づくリンカー、CD28由来の膜貫通ドメインおよびDAP10の内部ドメイン(
図11参照)が挙げられる。
【0197】
抗GD2−Fc−DAP10 CARとγδT細胞の内因性TCRとの共発現が実証された(
図4)。
【0198】
(実施例2:aGD2−Fc−DAP10 CARで形質導入されたVδ2γδT細胞によるGD2+細胞株LAN1およびTC71の殺傷)
LAN1およびTC71細胞系は共にGD2を発現することが知られている。
【0199】
GD2+神経芽腫細胞株LAN1の有意な殺傷は、CAR形質導入細胞を使用した場合にのみ見られ、非形質導入(NT)Vδ2細胞をエフェクターとして使用した場合には見られなかった(
図5A)。
【0200】
aGD2−Fc−DAP10 CARを24時間ゾレドロン酸処理と組み合わせて使用した場合、GD2+ユーイング肉腫細胞株TC71に対する相加効果があった(
図5B)。
【0201】
細胞ストレスに応答してγδTCRによって与えられるシグナル1を欠損するαβT細胞へのCARの添加は、Vδ2+γδT細胞におけるCARの効果とは異なり、細胞毒性に対して効果はなかった(
図5C)。これは、CARシグナル単独ではT細胞活性化には不十分であることを示している。
【0202】
γδT細胞におけるaGD2−Fc−DAP10 CARの発現は、GD2陰性SK−N−SH細胞のGD2特異的殺傷をもたらさなかった(
図6)。
【0203】
(実施例3:長期共培養およびGD2特異的増殖後のCAR発現の保存)
形質導入の24日後に共培養を開始し、照射されたGD2+(LAN1)およびGD2−(SK−N−SH)神経芽腫細胞(
図7A)の存在下で、CARおよびTCRVδ2の存在についての細胞の連続分析を行った。
【0204】
aGD2−Fc−DAP10形質導入Vδ2+細胞の増殖は、照射されたGD2+標的細胞の存在下でのみ見られた(
図7B)。
【0205】
(実施例4:抗CD33−DAP10 CARを発現するγδT細胞による、CD33+単球ではなくCD33+AML細胞の特異的殺傷)
CD33発現の等価レベルが、3つのAML細胞株および単球において実証された(
図8)。
【0206】
Vδ2γδT細胞を、抗CD33−Fc−DAP10または抗CD33−Fc−CD28−CD3z CAR構築物のいずれかで形質導入した。
【0207】
抗CD33−Fc−CD28−CD3z CAR構築物は、CD33の存在下でシグナル1およびシグナル2を与える。抗CD33−Fc−DAP10は、CD33の存在下でシグナル2を与える。
【0208】
aCD33−CD28−CD3z CARで形質導入された細胞は、いずれのCD33陽性細胞も殺傷し、健常単球を温存しなかった。aCD33−Fc−DAP10 CARで形質導入された細胞は、単球を殺傷しない(
図9A)。
【0209】
非形質導入対照と比較して、aCD33−Fc−DAP10 CARで形質導入したVδ2γδT細胞によるAMLの殺傷の有意な増強はあったが、単球の殺傷の増強はなかった(
図9B)。
【0210】
上記明細書で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載の方法およびシステムの様々な修正形態および変形形態は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、分子生物学、細胞免疫学または関連分野の当業者には明らかである本発明を実施するための記載の様式の様々な修正形態は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。