(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エステル系化合物は、シクロアルカンの何れか2つの炭素原子が、エステル基を含む側鎖をそれぞれ有している化合物である、請求項2に記載の断熱箱体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について説明する。
【0022】
<断熱箱体の製造方法>
まず、断熱箱体の製造方法について説明する。本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法は、断熱材料を箱体に注入する注入工程と、前記断熱材料を発泡させる発泡工程とを少なくとも含んでいる。そして、本実施形態にかかる製造方法では、上記の注入工程において、断熱材料を注入するための注入装置の注入ノズルに、断熱材料に含まれる可塑剤を塗布する。これにより、注入ノズルおよび注入装置の部品(例えば、注入ピストンなど)からの断熱材料の離間性を向上のさせることができる。
【0023】
注入工程の前段階では、箱体が組み立てられる。箱体は、例えば、外箱51と、内箱52とで形成される(
図2参照)。この箱体の何れかの側面に、断熱材料が注入される注入穴が形成されている。注入工程では、この注入穴に注入装置100の注入ノズル111(
図1参照)がセットされ、注入装置100から箱体の内部の空間へ断熱材料が注入される。
【0024】
ここで、本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法に用いられる断熱材料の注入装置について説明する。
図1には、注入装置100の注入ノズル111の周辺の構成を示す。
図1に示すように、注入装置100の注入ノズル111の周辺には、断熱材料を注入するための注入用ピストン112と、クリーニングピストン113とが設けられている。断熱材料は、注入用ピストン112の周辺に設けられた断熱材料の吐出部から吐出され、注入用ピストン112によって注入ノズル111へ押し出される。
【0025】
そして、注入用ピストン112によって断熱材料が吐出された後、クリーニングピストン113が注入ノズル111へ向かって下降する。これにより、注入ノズル111の周囲に残った断熱材料を断熱箱体内へ注入し、注入ノズル111が洗浄される。
【0026】
なお、
図1に示す断熱材料の注入装置100は、一例であり、本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法に用いられる注入装置はこれに限定されない。
【0027】
注入工程後の発泡工程では、箱体内に注入された断熱材料が反応し、ガスを発生させる。これにより、箱体の内部空間に発泡断熱材(具体的には、ポリウレタンフォーム)が形成される。発泡断熱材は、硬化し、硬質の発泡断熱材の断熱層53(
図2参照)が得られる。
【0028】
以上のようにして、断熱箱体が形成される。
【0029】
続いて、断熱箱体の製造に用いられる断熱材料について、説明する。本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法に使用される断熱材料は、主として、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、および可塑剤などを含んでいる。
【0030】
ポリイソシアネートとは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。そのような化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと呼ぶ)、ポリメリックMDI、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジメチルジフェニルジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、およびトリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
また、ポリイソシアネートとして、例えば、1分子中に複数の活性水素を有する化合物に、この化合物の活性水素の当量より多い当量のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を反応させてなるイソシアネートプレポリマ−、もしくは、前記ポリイソシアネート同士を数分子反応させてなるオリゴマーを使用することもできる。
【0032】
ポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、メチルグリコシド、ソルビトール、シュークローズ等の活性水素を有する化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ基を有する化合物を1分子またはそれ以上付加させてなるポリエーテルポリオール化合物、フタル酸などの多官能カルボン酸化合物に多官能ヒドロキシ化合物が重縮合してなるポリエステルポリオール化合物、ポリエチレングリコール、および、これらの化合物を組
み合わせた混合物が挙げられる。これらポリオールの全水酸基価は200〜800mgKOH/gが好ましい。水酸基価が200mgKOH/g未満であるとポリウレタンフォームの強度が弱くなり、水酸基価が800mgKOH/gより大きくなるとポリウレタンフォームが脆くなる。
【0033】
ポリイソシアネートは、ポリオール、またはポリオールと水とに含まれる水酸基1個に対して、イソシアネート基が、好ましくは0.8〜1.4個の範囲となるように配合され、より好ましくは1.0〜1.2個の範囲となるように配合される。
【0034】
なお、上述したポリイソシアネートおよびポリオール以外にも、一般的なポリウレタンフォームの製造に用いることのできるポリイソシアネート系化合物およびポリオール系化合物を使用することもできる。
【0035】
発泡剤は、ポリウレタンの形成過程でガスを発生し、ポリウレタン中に気泡を形成する。発泡剤としては、例えば、炭素数が4以上6以下の炭化水素が用いられる。炭素数が3以下の炭化水素は、沸点が低く取り扱いが困難で、既存の高圧発泡機では使用することが難しい。また、炭素数が3以下の炭化水素は、ポリオール等のポリウレタン原料への溶解性が悪く、発泡時に突沸を起こしやすく、均質で微小な気泡構造を有するポリウレタンフォームが得られない。炭素数が7以上の炭化水素は、沸点が高く、気化しにくいために十分な発泡倍率のポリウレタンフォームが得られない。したがって、発泡剤として、炭素数が4以上6以下の炭化水素が好適に用いられる。
【0036】
炭素数が4〜6の炭化水素としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ネオヘキサンおよびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、シクロペンタンがより好ましい。これは、シクロペンタンは、ポリウレタンフォーム発泡時の温度で気化し気泡を形成するのに適した沸点を有するとともに、炭素数が4〜6の炭化水素のなかでガス熱伝導率が低いためである。
【0037】
可塑剤は、樹脂成形品に柔軟性を付与する。断熱材料中に可塑剤が含まれていることで、注入工程時に、注入装置100の注入ノズル111や各ピストン112および113の周辺で断熱材料が固まってしまうことを抑制することができる。すなわち、可塑剤は、注入工程時の潤滑剤としての機能も果たしている。
【0038】
可塑剤は、例えば、エステル系化合物、およびカルボン酸化合物から成る群から選択される少なくとも一つである。エステル系化合物とカルボン酸化合物とは、何れか一方のみで用いられてもよいし、混合して用いられてもよい。
【0039】
エステル系化合物としては、例えば、フタル酸エステル化合物、アジピン酸エステル化合物、トリメリット酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、クエン酸エステル化合物が挙げられる。
【0040】
ここで、フタル酸エステル化合物とは、ベンゼンのオルト位、メタ位、またはパラ位に、2つのエステル基を有する化合物を意味する。具体的には、フタル酸エステル化合物は、オルト体のフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステルのうちのいずれかである。
【0041】
このフタル酸エステル化合物は、ベンゼンの何れか2つの炭素原子が、エステル基を含む側鎖をそれぞれ有している化合物ということもできる。この側鎖は、−(C=O)−O−R1で表される。ここで、R1は、例えば、炭素数3以上12以下のアルキル基である。
【0042】
このフタル酸エステル化合物として、より具体的には、DOIP(イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)またはイソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルとも呼ばれる)、DOTP(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)またはテレフタル酸ジ−2−エチルヘキシルとも呼ばれる)、DOP(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)またはフタル酸ジ−2−エチルヘキシルとも呼ばれる)、およびDINP(フタル酸ジイソノニルとも呼ばれる)などが挙げられる。
【0043】
これらのフタル酸エステル化合物の中でも、ベンゼンのメタ位、またはパラ位に、2つのエステル基を有する化合物(具体的には、DOIP、またはDOTP)が、箱体を形成しているスチレン系樹脂化合物との相性の良さの観点から好ましい。
【0044】
アジピン酸エステル化合物として具体的には、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)などが挙げられる。トリメリット酸エステル化合物として具体的には、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)などが挙げられる。リン酸エステル化合物として具体的には、リン酸トリクレシル(TCP)などが挙げられる。クエン酸エステル化合物として具体的には、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)などが挙げられる。
【0045】
また、エステル系化合物の他の例としては、シクロアルカンの何れか2つの炭素原子が、エステル基を含む側鎖をそれぞれ有している化合物である。シクロアルカンとしては、例えば、炭素数が4以上8以下のシクロアルカンが挙げられる。当該化合物は、このようなシクロアルカンにおいて、環状構造を形成する炭素原子のうちの任意の2つの炭素原子が、−(C=O)−O−R2で表される側鎖をそれぞれ有している。ここで、R2は、例えば、炭素数3以上12以下のアルキル基である。
【0046】
シクロアルカンの何れか2つの炭素原子が、エステル基を含む側鎖を有している化合物として、より具体的には、Hexamoll(登録商標)DINCH(シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル)が挙げられる。
【0047】
上述のエステル系化合物は、何れか1種類のみで使用されてもよいし、複数種類を混合して使用されてもよい。
【0048】
カルボン酸化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の活性水素を有するカルボン酸化合物が挙げられる。1分子中に2個以上の活性水素を有するカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、フタル酸、ヒドロキシ安息香酸等が挙られる。なお、これらのカルボン酸化合物の中には、水とともに含有することで、ポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生するものもある。このようなカルボン酸化合物は、発泡剤としての機能も果たす。
【0049】
なお、本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法では、注入工程時に、この可塑剤を、注入装置100の注入ノズル111の周囲(例えば、注入ノズル111の内壁面、クリーニングピストン113の先端部分の周囲など)に塗布する。これにより、注入ノズル111からの断熱材料の離間性を向上させることができる。そのため、断熱箱体の製造工程の生産性を向上させることができる。
【0050】
このように、本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法では、注入工程時に可塑剤を注入ノズル111に塗布しておき、箱体への断熱材料の注入時に、可塑剤を断熱材料中に微量に混入させるという方法で使用する。これにより、ポリイソシアネートなどの他の断熱材料中に可塑剤を事前に混合させるという方法と比較して、より少量の可塑剤で、注入ノズル111からの断熱材料の離間性向上効果、および、断熱材料の潤滑性向上効果を得ることができる。したがって、断熱材料が可塑剤を多く含むことによって起こり得る発泡断熱性の強度の低下、およびポリウレタンフォームの硬化不良などを抑制することができる。
【0051】
なお、可塑剤は、断熱材料の全体量に対して質量比で、0.1%以上5%以下の範囲内で含まれていることが好ましく、0.5%以上3%以下の範囲内で含まれていることがより好ましい。断熱材料中の可塑剤の含有量が0.1%未満であると、注入工程時に断熱材料が固まりやすくなり、注入ノズル111からの断熱材料の離間性が低下する可能性がある。また、断熱材料中の可塑剤の含有量が5%を超えると、得られる発泡断熱材が軟化する可能性がある。
【0052】
本実施形態にかかる断熱箱体の製造方法に使用される断熱材料には、上述の各種材料の他に、整泡剤、触媒、鎖延長剤、架橋剤、充填剤、難燃材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、着色剤等が、必要に応じて含まれていてもよい。
【0053】
整泡剤は、発泡時において気泡の大きさを整え、その安定度を向上させるものである。整泡剤としては、例えば、ポリシロキサンとポリアルキレングリコールとのコポリマーの中から選択されるものが挙げられる。
【0054】
触媒としては、例えば、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類等の種々のアミン化合物が使用可能である。
【0055】
また、箱体の材料としては、ある程度の剛性を有する樹脂材料、金属材料などを使用することができる。例えば、断熱箱体を冷蔵庫の筐体として使用する場合には、冷蔵庫の筐体として一般的に使用されている材料を使用することができる。
【0056】
箱体の材料として樹脂材料を用いる場合には、例えば、スチレン系樹脂化合物を用いることができる。スチレン系樹脂は、射出成形用のプラスチック材料のうちでも主流を占める樹脂材料であり、他の樹脂と比較して一般的に成形性が良いという特性を有する。スチレン系樹脂化合物として、具体的には、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)、SAN(スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂)などが挙げられる。なお、箱体の材料には、主成分としてスチレン系樹脂化合物が含まれるとともに、それ以外の材料が少量含まれていてもよい。
【0057】
なお、箱体の材料として、ABS、HIPS、およびSANの何れかを使用する場合には、断熱材料中に含まれる可塑剤として、DOIP、DOTP、およびDINCHの少なくとも何れか一つを使用することが好ましい。これは、後述の実施例にも示されるように、DOIP、DOTP、およびDINCHは、スチレン系樹脂材料へのケミカルアタックが小さく、スチレン系樹脂材料との化学的な相性が良いためである。
【0058】
以上のように、本実施形態にかかる断熱箱の製造方法では、断熱材料に柔軟性および潤滑性を付与するための可塑剤を、事前に断熱材料中に混合するのではなく、注入装置100の注入ノズル111の周辺に塗布することによって添加する。これにより、少量の可塑剤で注入ノズルからの断熱材料の離間性を向上させることができる。したがって、断熱箱体の製造方法の生産性を向上させることができる。また、この製造方法によれば、得られる発泡断熱材中の可塑剤の含有量を、発泡断熱材の硬度に悪影響を与えない程度の量に抑えることができる。そのため、得られる断熱箱体の強度を維持し、断熱箱体の品質の劣化を抑えることができる。
【0059】
本実施形態にかかる製造方法によって得られる断熱箱体は、例えば、冷蔵庫、保温器などの断熱庫の筐体として利用することができる。
【0060】
<断熱箱体について>
続いて、本実施形態にかかる断熱箱体について説明する。本実施形態にかかる断熱箱体は、断熱層と箱体とを有している。断熱層は、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、および可塑剤を含む断熱材料を用いて形成される。箱体は、スチレン系樹脂化合物を含んでいる。
【0061】
断熱材料中に含まれるポリイソシアネート、ポリオール、および発泡剤としては、上述の断熱箱体の製造方法で使用可能なものが同様に使用可能である。また、断熱材料中に含まれる可塑剤は、(A)イソフタル酸エステル化合物、(B)テレフタル酸エステル化合物、および(C)シクロアルカンの何れか2つの炭素原子が、エステル基を含む側鎖をそれぞれ有している化合物から成る群から選択される少なくとも一つである。
【0062】
上記(A)のイソフタル酸エステル化合物は、ベンゼン環のメタ位にエステル基を有する化合物である。この(A)の化合物として、具体的には、DOIP(イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)またはイソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルとも呼ばれる)が挙げられる。
【0063】
上記(B)のテレフタル酸エステル化合物は、ベンゼン環のパラ位にエステル基を有する化合物である。この(A)の化合物として、具体的には、DOTP(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)またはテレフタル酸ジ−2−エチルヘキシルとも呼ばれる)が挙げられる。
【0064】
上記(C)の化合物において、シクロアルカンとしては、例えば、炭素数が4以上8以下のシクロアルカンが挙げられる。この(C)の化合物は、このようなシクロアルカンにおいて、環状構造を形成する炭素原子のうちの任意の2つの炭素原子が、−(C=O)−O−R2で表される側鎖をそれぞれ有している。ここで、R2は、例えば、炭素数3以上12以下のアルキル基である。この(C)の化合物として、具体的には、Hexamoll(登録商標)DINCH(シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル)が挙げられる。
【0065】
箱体に含まれるスチレン系樹脂化合物は、上述の断熱箱体の製造方法で使用可能なものが同様に使用可能である。スチレン系樹脂化合物として、具体的には、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)、SAN(スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂)などが挙げられる。なお、箱体には、主成分としてスチレン系樹脂化合物が含まれるとともに、それ以外の化合物が少量含まれていてもよい。
【0066】
本実施形態にかかる断熱箱体は、例えば、上述した断熱箱体の製造方法を用いて製造することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態にかかる断熱箱体は、箱体の材料として、ABS、HIPS、およびSANなどのスチレン系樹脂化合物が使用される。また、本実施形態にかかる断熱箱体は、断熱材料中に含まれる可塑剤として、上記の(A)、(B)、および(C)のうちの何れかの化合物が使用される。これらの化合物は、スチレン系樹脂化合物を含む箱体と接触した場合のケミカルアタックが小さい。そのため、本実施形態にかかる断熱箱体によれば、箱体における割れや亀裂などの発生が低減される。そのため、品質のより向上した断熱箱体を得ることができる。
【0068】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、上述の第1の実施形態で説明した断熱箱体の製造方法によって製造された断熱箱体を備えている冷蔵庫1に関する。
【0069】
図2は、第2の実施形態にかかる冷蔵庫1の全体構成を示す側面断面図である。
図2に示すように、冷蔵庫1は、上段に冷蔵室11、中段に野菜室12、及び下段に冷凍室13を備えている。冷蔵室11には、冷蔵室扉11aが設けられている。野菜室12には、引き出し式の冷蔵室扉12aが設けられている。冷凍室13には、引き出し式の冷凍室扉13aが設けられている。
【0070】
冷蔵庫1には、各貯蔵空間を周囲から断熱するための断熱構造として、断熱箱体50が設けられている。断熱箱体50は、冷蔵庫1の外周を覆うように設けられている。
【0071】
冷蔵庫1の内部には、冷凍サイクルが設けられている。冷凍サイクルは、冷媒が流通する冷媒管(冷媒流路)を介して、圧縮機31、凝縮器(図示せず)、膨張器(図示せず)、及び、冷却器32が接続されて構成されている。
【0072】
冷却器32は、冷蔵庫1の背面側に設けられた冷却室35内に配置されている。冷却室35は、各貯蔵空間と、断熱箱体50との間に配置されている。また、圧縮機31は、冷蔵庫1の底部の背面側に設けられた機械室30内に配置されている。
【0073】
断熱箱体50は、主として、外箱51と、内箱52と、断熱層(断熱材)53とを備えている。外箱51は、断熱箱体50の外周面を形成する。外箱51は、冷蔵庫1の外形も部分的に形成している。内箱52は、断熱箱体50の内周面を形成する。また、内箱52は、貯蔵空間(例えば、冷蔵室11、野菜室12、冷凍室13)及び冷却室35との境界を形成している。
【0074】
断熱箱体50は、第1の実施形態で説明した断熱箱体の製造方法によって製造される。
【0075】
すなわち、内箱52は、例えば、第1の実施形態で説明したスチレン系樹脂化合物(より具体的には、ABS、HIPS、またはSANなど)で形成することができる。外箱51は、従来公知の材料で形成することができる。
【0076】
断熱層53は、主として、発泡断熱材で構成される。具体的には、断熱層53は、硬質発泡ポリウレタン(硬質ポリウレタンフォームともいう)で形成されている。硬質発泡ウレタンは、2種類の主原料(ポリイソシアネートおよびポリオール)に発泡剤、可塑剤、触媒、製泡剤などを混合し、泡化反応と樹脂化反応を同時に起こして得られる均一な樹脂発泡体である。硬質発泡ポリウレタンを形成するための断熱材料としては、第1の実施形態で説明したものを用いることができる。
【0077】
本実施形態にかかる冷蔵庫1の断熱箱体50は、その製造工程(具体的には、断熱材料の注入工程)において、断熱材料の注入ノズルに可塑剤が塗布される。これにより、注入ノズルおよび注入ピストンなどに断熱材料が付着し、硬化することが抑制されるため、断熱箱体50の生産性を向上させることができる。なお、断熱箱体50の断熱層53中には少量の可塑剤が含まれている。
【0078】
また、断熱材料中に含まれる可塑剤として、DOIP、DOTP、およびHexamoll(登録商標)DINCHのうちの何れかを選択することが好ましい。また、断熱箱体50の内箱52を形成する樹脂材料として、ABSまたはHIPSを選択することが好ましい。断熱材料の可塑剤と断熱箱体50の樹脂材料とをこのような組み合わせとすることで、樹脂材料の劣化や断熱箱体の割れの発生を抑えることができる。
【0079】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、上述の第1の実施形態で説明した断熱箱体を備えている冷蔵庫1に関する。冷蔵庫1の構成は、上述の第2の実施形態で説明した冷蔵庫1の構成と同じである。
【0080】
なお、上述の第2および第3の実施形態では、本発明の一例として、冷蔵庫の断熱箱体を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限定はされない。本発明の断熱箱体は、上述した冷蔵庫以外にも、例えば、保温器の断熱箱体、湯沸かし器の筐体、冷水供給装置の筐体などに適用することができる。
【0081】
<実施例>
以下に、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、断熱箱体の箱体を形成している樹脂材料に対する、断熱材料中に含まれる可塑剤の影響を、以下に示す試験方法を用いて調べた。この試験方法は、ベルゲンの1/4楕円法ベース試験と呼ばれる。
【0082】
(試験方法)
図3に示すように、先端に向かうにつれて曲げ応力のかかる冶具に板状の試験片(テストピース)を固定した上で、表面に薬品試料(可塑剤)を塗布し、23℃の温度環境下で、所定時間(50時間)経過させた。所定時間経過後、試験片にクラックが生じているか否かを確認した。また、50時間以内にクラックが発生した試験片については、クラックが発生するまでの時間を記録した。
【0083】
本実施例では、試験片として、ABSで形成された樹脂板(3種類)と、HIPSで形成された樹脂板(1種類)を用いた。また、薬品試料として、断熱材料の可塑剤として使用可能なDOP、DOIP、DOTP、およびHexamoll(登録商標)DINCHの4種類を用いた。なお、試験片の形状および薬品試料の塗布条件は同一条件とした。
【0084】
結果を、以下の表1に示す。以下の表1では、50時間以内にクラックが発生した試験片については、クラックが発生するまでの時間を示す。また、50時間経過時点でクラックが発生しなかった試験片については、試験片の状態を観察した結果を示す。表1では、横軸に試験片の種類を示し、縦軸に薬品試料(可塑剤)の種類を示す。
【0085】
また、表1に示す「〇」および「×」の判定基準は以下の通りである。
〇:目視にてクラック無
×:目視にてクラック有もしくは表面溶解有
【0087】
以上のように、DOP以外の可塑剤(DOIP、DOTP、およびHexamoll(登録商標)DINCH)は、ABS製の樹脂板およびHIPS製の樹脂板の何れに塗布されてもクラックを発生させることはなかった。
【0088】
これは、DOPでは、DOPの化学構造に含まれるベンゼン環の自由電子と、ABSなどの樹脂化合物に含まれるベンゼン環の自由電子とがすり変わることにより、樹脂板がDOPによって浸食されるためであると推察される。一方、DOIPおよびDOTPでは、ベンゼン環の側鎖に含まれる2つのエステル基が、メタ位またはパラ位という比較的離れた位置に存在する。そして、2つのエステル基によって、DOIPおよびDOTPの化学構造に含まれるベンゼン環が保護されるため、ABSなどの樹脂化合物に含まれるベンゼン環との間で自由電子のすり変わりが抑制されると推察される。これにより、DOIPおよびDOTPは、樹脂板を侵食することなく、クラックなどの発生が抑制されると考えられる。
【0089】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。