特許第6986472号(P6986472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986472
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電池用電極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20211213BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20211213BHJP
   H01M 4/08 20060101ALN20211213BHJP
   H01M 4/139 20100101ALN20211213BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
   H01M4/50
   H01M4/62 Z
   !H01M4/08 L
   !H01M4/139
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-55148(P2018-55148)
(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公開番号】特開2019-169306(P2019-169306A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2021年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】落合 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真紀
(72)【発明者】
【氏名】平田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柳木 弘
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−98012(JP,A)
【文献】 特開平10−199517(JP,A)
【文献】 特表平11−506721(JP,A)
【文献】 特開2013−182843(JP,A)
【文献】 特表2016−514892(JP,A)
【文献】 特開昭59−175563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/50
H01M 4/62
H01M 4/08
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解二酸化マンガンからなる電極活物質と、水系結着剤とを含んでシート状の集電体上に塗工されるスラリー状の電池用電極材料の製造方法であって、
水を溶媒として、前記電極材料の原料を混練しながら混合していく過程が、前記電極活物質を混合する活物質混合ステップと、前記結着剤を混合する結着剤混合ステップと、中和剤を混合する中和ステップとを含み、
前記中和剤としてLiOHを用いる、
ことを特徴とする電池用電極材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記活物質混合ステップ、前記中和ステップ、前記結着剤混合ステップをこの順に実行することを特徴とする電池用電極材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記中和ステップにより、前記電極材料のpH値を6.5以上9以下に調整することを特徴とする電池用電極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池用電極材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の電極を形成するための電極材料には、スラリー状のものがある。例えば、スパイラル型リチウム一次電池やラミネート型リチウム一次電池の正極材料などである。このスラリー状の電極材料は、粉体状の電極活物質、導電助剤、結着剤(バインダー)、必要に応じて増粘剤などを混合したものを、プラネタリーミキサーなどを用いて剪断応力を掛けながら混練することで作製される。なお、以下の特許文献1には、平板状の集電体にスラリー状の電極材料が塗工されてなる電極板を備えたリチウム電池について記載されている。
【0003】
図1に、スラリー状の電極材料を用いて作製される電池の一例として、ラミネート型蓄電素子を示した。図1(A)はラミネート型蓄電素子1の外観図であり、図1(B)は当該蓄電素子1の内部構造の概略を示す分解斜視図である。ラミネート型蓄電素子1は、図1(A)に示したように平板状の外観形状を有し、ラミネートフィルムが扁平な矩形袋状に成形されてなる外装体11内に発電要素が密封されている。また、ここに示したラミネート型蓄電素子1では、矩形の外装体11の一辺13から正極端子板23および負極端子板33が外方に導出されている。
【0004】
次に、図1(B)を参照しつつラミネート型蓄電素子1の構造について説明する。なお、図1(B)では一部の部材や部位にハッチングを施し、他の部材や部位と区別しやすいようにしている。図1(B)に示したように、外装体11は、互いに重ね合わせた矩形状の二枚のアルミラミネートフィルム(11a、11b)において図中網掛けのハッチングまたは点線の枠で示した周縁領域12が熱圧着法により溶着されて内部が密閉されたものである。
【0005】
外装体11内には、シート状の正極板20とシート状の負極板30とがセパレーター40を介して積層されてなる電極体10が電解液とともに封入されている。正極板20は金属箔などからなるシート状の正極集電体21の一主面に正極活物質を含んだスラリー状の正極材料22を塗工して乾燥させたものである。正極集電体21には、正極端子板23が接続され、正極端子板23の一方の端部は外装体11の外側に露出し、他方の端部は正極集電体21の一部に超音波溶着などの方法によって接続されている。正極材料22は正極集電体21のセパレーター40と対面する側の面に塗工されている。なお正極活物質は、ラミネート型蓄電素子1がリチウム一次電池であれば、二酸化マンガンなどを採用することができる。
【0006】
負極板30は金属板や金属箔などからなるシート状の負極集電体31の一主面に負極活物質を含んだ負極材料32を配置したものである。負極集電体31は、正極集電体21と同様に、負極端子板33が接続され、その負極端子板33の一方の端部が外装体11の外側に露出している。負極材料32は、負極活物質を含んだスラリー状の材料を塗工して乾燥させたものであってもよいし、ラミネート型蓄電素子1がリチウム一次電池であれば、金属リチウムあるいはリチウム金属からなる負極活物質そのものであってもよい。そして、正極板20と負極板30の双方の電極材料同士(22−32)がセパレーター40を介して対面している。このように、一般的なラミネート型蓄電素子は、金属箔や金属板からなるシート状の集電体にスラリー状の電極材料が塗工された電極板を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−98012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、スラリー状の電極材料は、粉体状の電極活物質と導電助剤とに結着剤を加えたものを、溶媒を用いて混練したものである。電極板を作製する際には、そのスラリー状の電極材料を、シート状の集電体上にスキージなどを用いて塗工する。なお、スラリー状の電極材料に含ませる結着剤には、溶媒として水を用いた水系と、有機溶剤を用いた溶剤系とがある。水系結着剤としては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)がよく知られている。また、溶剤系結着剤にはPVDFなどがある。
【0009】
ところで、近年、環境に対する社会的意識が高まっていることから、電池用電極材料に用いられる結着剤にも環境負荷が少ない水系結着剤を使用することが望まれている。しかしながら、リチウム一次電池の一般的な正極活物質である電解二酸化マンガン(以下、EMDとも言う)は、硫酸を用いた洗浄工程を経て製造されるため、このEMDを正極の電極活物質とした電極材料に水系結着剤を用いると、結着剤自体が分解してしまう。そして、電極材料に凝集が発生したり、電極材料の粘度が高くなってしまったりして、塗工に適したスラリー状の電極材料を作製することが困難となる。分解した水系結着剤の減量分を補うために、多量の水系結着剤を電極材料に含ませれば、放電反応に寄与しない結着剤の量が相対的に増え、電池の放電性能が劣化する。電極材料の酸性度を低下させるために電極材料を多量の水で希釈すれば、塗工後の電極材料を乾燥させるために多大な時間が掛かる。また、加熱のために多大なエネルギーも必要となる。そのため、電池の製造コストが増大する。
【0010】
そこで本発明は、EMDからなる電極活物質と水系結着剤とを使用しつつ、塗工性に優れたスラリー状の電池用電極材料を、製造コストを増加させることなく製造できる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、電解二酸化マンガンからなる電極活物質と、水系結着剤とを含んでシート状の集電体上に塗工されるスラリー状の電池用電極材料の製造方法であって、
水を溶媒として、前記電極材料の原料を混練しながら混合していく過程が、前記電極活物質を混合する活物質混合ステップと、前記結着剤を混合する結着剤混合ステップと、中和剤を混合する中和ステップとを含み、
前記中和剤としてLiOHを用いる、
ことを特徴としている。
【0012】
また、前記活物質混合ステップ、前記中和ステップ、前記結着剤混合ステップをこの順に実行することを特徴とする電池用電極材料の製造方法とすればより好ましい。前記中和ステップにより、前記電極材料のpH値を6.5以上9以下に調整することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電池用電極活物質の製造方法によれば、EMDからなる電極活物質と水系結着剤とを使用しつつ、塗工性に優れたスラリー状の電池用正極材料を、製造コストを増加させることなく製造することができる。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】スラリー状の電極材料を用いた電極板を備えた電池の一例である、ラミネート型蓄電素子の構造を示す図である。
図2】本発明の実施例に係る電池用電極材料の製造方法の手順を示す図である。
図3】上記電池用電極材料の塗工状態を示す図である。
図4】集電体上に塗工された上記電池用電極材料の剥離強度を示す図である。
図5】上記電池用電極材料の粘度の経時変化を示す図である。
図6】上記電池用電極材料のTI値の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
===実施例===
本発明の実施例に係る電極材料の製造方法では、EMDからなる粉体状の電極活物質、粉体状の導電助剤、結着剤、および増粘剤からなる混合物を混練することで電極材料を作製する。そして、実施例に係る電極材料の製造方法では、その混練の過程で、EMDを含んで酸性を示す混練中の電極材料をLiOHで中和することで結着剤を増量したり、多量の水で希釈したりすることなく、塗工性に優れた電極材料を得ることができる。
【0016】
===電極材料の作製手順===
本発明の実施例に係る方法で作製した電極材料について、塗工性などを評価するために、中和処理の有無、あるいは中和剤の種類などの製造条件が異なる各種電極材料をサンプルとして作製した。図2にサンプルの製造手順を示した。まず、スラリー状の増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースなど)を、純水を希釈剤として混合し(s1)、その混合物を、プラネタリーミキサーを用いて混練する。次に、増粘剤に導電助剤(例えば、アセチレンブラックを加えてさらに混練する(S2)。そして、電極活物質であるEMDをプラネタリーミキサーに投入して混練する(s3)。EMDをプラネタリーミキサーに投入したならば、サンプルに応じた中和剤を投入し、混練中にある材料(以下、混練物とも言う)のpH値を調整した(s4→s5)。中和剤としては、サンプルに応じて、LiOH、NaOH、KOH、NHのいずれかの水溶液を用いた。また、中和処理(s5)では、中性であるpH7に対し、電極材料がpH7±0.5となるように調整した。なお、中和処理(s5)を行う前の電極材料のpH値は3〜5であった。そして、中和処理(s5)後の混練物に水系結着剤(例えば、SBR)と、溶媒である純水とを追加して混練した。それによって、スラリー状のサンプルを得た(s6)。なお、正極活物質、導電助剤、および結着剤の割合は、例えば、93wt%、3wt%、および4wt%とすることができる。
【0017】
===特性評価===
<塗工性>
上述したようにして作製した各種サンプルについて、まず、塗工性の良否を確認した。ここでは、PETフィルム上に各サンプルを200μmの厚さで塗工した後、サンプルを80℃の温度の恒温槽内に20分間置いて乾燥させた。そして、塗工面を目視により観察した。図3は各サンプルの塗工面を示す写真である。図3に示したように、中和剤にLiOHを用いたサンプルの塗工面100aは、塗工面が滑らかであり、ひびなどの欠陥を確認することができなかった。一方、中和処理を行わなかったサンプルの塗工面100b、および中和剤としてNaOH、KOH、NHのそれぞれを用いたサンプルの塗工面(100c、100d、100e)には、ひびが発生していた。
【0018】
なお、図1に示した一般的なラミネート型蓄電素子1では、電極板(正極板)における電極材料(正極材料)の塗工厚は20μm程度であるが、ここでは、電池の容量をより大きくすることを想定し、塗工厚を200μmとしている。そのため、平面上に塗工された各サンプルには、乾燥処理に際し、面方向に収縮する方向に大きな応力が掛かる。すなわち、図3に示した各サンプルは、ひびなどの欠陥が発生し易い条件で塗工されたものである。そして、中和剤にLiOHを使用したサンプルは、電極材料の酸性度を低下させて結着剤の分解を抑制することができ、塗工性を向上させることができる。さらには、他の中和剤とは異なり、電極材料をより厚く塗工しても、乾燥後の塗工面にひびなどが発生しない。すなわち、中和剤にLiOHを使用して作製した電極材料は、乾燥後でも高い柔軟性を有している。したがって、中和剤にLiOHを使用して作製された電極材料は、電池の高容量化にも寄与する。
【0019】
<剥離強度>
次に、中和剤にLiOHを使用したサンプル(以下、実施例に係る電極材料とも言う)を集電体上に塗工し、実際に電池に組み込める状態の電極(以下、実施例に係る電極とも言う)を作製し、実施例に係る電極材料の剥離強度を測定した。ここでは、厚さ20μmのステンレス箔からなる集電体上に、実施例に係る電極材料を200μmの厚さで塗工した。そして、矩形状の集電体上に実施例に係る電極材料が塗工されたものを恒温槽にて80℃、30分の条件で乾燥させた。それによって、剥離強度を測定するための実施例に係る電極を得た。また、実施例に係る電極材料と比較するために、中和処理を行わずに作製したサンプル(以下、比較例に係る電極材料)を、実施例と同様の厚さで集電体上に塗工し、実施例と同様の条件で乾燥させて得た電極(以下、比較例に係る電極とも言う)も用意した。
【0020】
なお、剥離強度は、JIS6854規格に準拠した90゜引っ張り試験を行うことで測定した。また、実施例に係る電極材料のpH値は7.39であり、比較例に係る電極材料のpH値は4.20であった。図4に、実施例と比較例とに係る電極材料の剥離強度を示した。
【0021】
図4では、矩形状の集電体において互いに対向する二辺間の距離を測定距離としている。そして、図中では、測定距離が約50mmとなる一方の辺の位置から約230mmの他方の辺の位置までが集電体における対辺間の領域に対応している。図4に示したように、実施例に係る電極材料では、一方の辺の位置で剥離し始めたときの引っ張り強度が8N以上であったが、比較例に係る電極材料では、3N以下の引っ張り強度で剥離した。
【0022】
また、実施例に係る電極材料は、一方の辺の位置で剥離した後、他方の辺に向かう全測定領域にわたり、比較例に係る電極材料に対して5倍以上の剥離強度を示した。すなわち、実施例に係る電極材料は、200μmもの厚さで集電体上に塗工されても、十分に高い剥離強度を有していることが確認できた。そして、実施例に係る電極材料を、例えば、図1に示したラミネート型蓄電素子1における正極材料22に使用すれば、外力によって外装体11内で正極板20が撓んでも、その正極材料22は、集電体21から剥離し難い。また、スパイラル型電池に実施例に係る電極板を適用した場合、実施例に係る電極材料は、電極板を巻回する際の応力によって集電体から剥離し難い。
【0023】
<粘度安定性>
ところで、実際の電池の製造現場では、作製済みの電極材料を用いて電池を組み立てる。すなわち、電極材料は、あらかじめ大量に作製されて保管されることになる。したがって、製造直後の特性が良好な電極材料であっても、粘度が経時変化すれば、その電極材料を実際の電池に利用することが難しくなる。
【0024】
そこで、次に、実施例と比較例とに係る電極材料について、粘度の経時変化を調べてみた。具体的には、電極材料を密閉型軟膏容器に入れて室温で14日間保管した。そして、適時に、電極材料の粘度を、動的粘弾性測定装置(レオメータ−)を用いて測定し、保管期間中のTI値(10/1)を求めた。周知のごとく、TI値は、プラネタリーミキサーなどを用いて剪断応力が掛けられながら混練される材料における凝集の度合いを示す指標であり、凝集性が高いとTI値も高くなる。例えば、遅いずり速度Dで剪断応力を掛けて電極材料を混練すると、凝集体がほぐれずに抵抗が高くなり、粘度が高くなる。一方、速いずり速度Dで混練すると、凝集体も動いてしまい高い流動性を示し、粘度が低くなる。このように、TI値は、ずり速度Dに応じた粘度の変化のし易さを示す指標となり、TI値が低いほど凝集体がほぐれ易く、均一に分散されていることを示す。図5に電極材料の粘度の経時変化を示した。図5では、所定のずり速度D(例えば、D=1(1/s))における粘度を示している。図6に、TI値の経時変化を示した。図6では、例えば、ずり速度Dが0.1(1/s)のときと、D=1(1/s)のときとの粘度に基づくTI値(10/1)を示した。
【0025】
図5に示したように、実施例に係る電極材料は、保管期間中、粘度が一定であり、その粘度も低かった。一方、比較例に係る電極材料は、粘度が不安定であり、粘度の値も高かった。また、図6に示したように、実施例に係る電極材料は、保存期間中のTI値が一定であり、その数値も低かった。比較例に係る電極材料は、実施例に係る電極材料に対してTI値が高く、その値も不安定であった。このように、実施例に係る電極材料は、保管期間中にわたって低粘度で凝集が少ない状態を維持することが確認できた。
【0026】
===その他の実施例===
上記実施例に係る電池用電極材料の製造方法では、溶媒として水を用いつつ、電極材料の原料を順次混練しながら混合していくこととしていた。そして、電極活物質を混練物中に投入した後に中和剤を投入し、その上で、結着剤を投入していた。すなわち、酸性度が高い状態にある混練物に結着剤を投入する前に、混練物を中和することで、結着剤の分解を確実に抑制していた。もちろん、前後の工程間の時間を短縮すれば、正極活物質を投入した後に結着剤を投入し、その上で中和剤を投入しても、結着剤の分解が進む前に混練物を中和することができる。
【0027】
実施例に係る電池用電極材料の製造方法では、中和処理により、電極材料のpH値を7±0.5程度(6.5≦pH値≦7.5)に調整していたが、中和処理では、結着剤が分解しない程度に酸性度を低下させればよい。また、結着剤は、アルカリ性の混練物中では分解することがない。したがって、結着剤については、pH値の上限は特にない。しかし、電極材料が強アルカリ性であると、その電極材料を金属からなる集電体上に塗工した際、その金属を腐食させる可能性がある。一般的には、pH値が9より大きいと腐食する可能性があることから、pH値は9以下であることが望ましい。したがって、中和処理によって電極材料のpH値を6.5≦pH値≦9.0の範囲で調整すれば、より好ましい。
【0028】
本発明の実施例に係る方法で作製される電極材料は、EMDを電極活物質としたスラリー状であればよく、適用される電池は、ラミネート型やスパイラル型のリチウム一次電池に限らない。金属箔などのシート状の集電体上にスラリー状の電極材料が塗工されてなる電極板を備えた電池であれば、一次電池、二次電池を問わず適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ラミネート型蓄電素子、10 電極体、11 外装体、
11a,11b ラミネートフィルム、20 正極板、21 正極集電体、
22 正極材料、23 正極端子板、30 負極板、31 負極集電体、
32 負極材料、33 負極端子板、40 セパレーター、
100a〜100e 電極材料の塗工面、s3 電極活物質混合工程、
s5 中和処理、s6 結着剤混合工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6