(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、液状樹脂を吐出対象物に供給して樹脂成形を行う樹脂成形装置であって、前記液状樹脂を前記吐出対象物に吐出するノズルと、前記ノズルに接触して前記ノズルを加熱する加熱部と、前記ノズル及び前記加熱部が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とを切り替える切替機構とを備えることを特徴とする。
この樹脂成形装置であれば、ノズル及び加熱部が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とが切り替えられるので、ノズルに加熱部を設ける必要がない。その結果、ノズルの構造を複雑化することなく、ノズルにおいて液状樹脂を加熱することができる。ノズルの構造が複雑化されないので、ノズル交換の作業性を悪くすることも無い。また、液状樹脂が加熱されて液状樹脂の粘度が低くなり、ノズルから吐出されやすく、吐出量の精度を向上させることができ、吐出後の糸引き状態を早期に解消することができる。
【0013】
ノズルの構造を複雑化すること無く積極的にノズルを冷却できるようにするためには、前記ノズルに接触して前記ノズルを冷却する冷却部を備え、前記切替機構は、前記ノズル及び前記冷却部が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とを切り替えることが望ましい。
この構成であれば、液状樹脂への悪影響(例えば不要な熱硬化)を低減することができる。また、ノズルを冷却することで液状樹脂の粘度を高くすることができ、液状樹脂を吐出しない待機状態においてノズルから液状樹脂が垂れることを防止することができる。
【0014】
ノズルの温度を管理できるようにするためには、前記ノズルの温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出温度に基づいて前記切替機構を制御する制御部とを備えることが望ましい。
【0015】
加熱されたノズルの温度が低下しにくくするためには、前記ノズルの外面に設けられ、前記ノズルよりも熱容量の大きい保温部材を備えることが望ましい。
【0016】
前記ノズルの表面の少なくとも一部に黒化処理が施されていることが望ましい。
この構成であれば、例えば成形型等のノズル外部からの熱輻射が吸収されやすく、当該熱輻射によってノズルを加熱する又は温度低下を防ぐことができる。
【0017】
樹脂成形装置は、前記ノズルを有し、前記ノズルから液状樹脂を吐出させるディスペンサと、前記ディスペンサが待機するとともに前記ディスペンサに液状樹脂を供給する供給モジュールとを備えている。この構成において、前記加熱部は、前記供給モジュールに設けられていることが望ましい。
このように供給モジュールに加熱部を設けているので、待機状態のノズルを加熱することができる。その結果、液状樹脂を吐出する前にノズルを十分に加熱できるようになる。
【0018】
樹脂成形装置は、前記吐出対象物が成形型であり、前記成形型及び前記成形型を型締めする型締め機構を有する成形モジュールを備えている。この構成において、前記加熱部は、前記成形モジュールに設けられていることが望ましい。
このように成形モジュールに加熱部を設けているので、液状樹脂を吐出する直前にノズルを加熱することができる。その結果、加熱されたノズルの温度が低下する前に液状樹脂を吐出することができる。
【0019】
前記加熱部は、前記ノズルから液状樹脂を吐出させるディスペンサに前記切替機構を介して設けられていることが望ましい。
この構成であれば、ノズルから液状樹脂を吐出させている最中にノズルを加熱するができる。
【0020】
また、本発明の樹脂成形品の製造方法は、液状樹脂をノズルから吐出対象物に吐出して、吐出された液状樹脂を用いて樹脂成形して樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、前記ノズルに対して接離可能に設けられた加熱部に前記ノズルを接触させて加熱した後に前記吐出対象物に液状樹脂を吐出することを特徴とする。
この樹脂成形品の製造方法であれば、ノズルに対して接離可能に設けられた加熱部を用いてノズルを加熱しているので、ノズルに加熱部を設ける必要がない。その結果、ノズルの構造を複雑化することなく、ノズルにおいて液状樹脂を加熱することができる。ノズルの構造が複雑化されないので、ノズル交換の作業性を悪くすることも無い。また、液状樹脂が加熱されて液状樹脂の粘度が低くなり、ノズルから吐出されやすく、吐出量の精度を向上させることができ、吐出後の糸引き状態を早期に解消することができる。
【0021】
前記吐出対象物への液状樹脂の吐出後に前記ノズルを前記ノズルに対して接離可能に設けられた冷却部に接触させて冷却することが望ましい。
この構成であれば、液状樹脂への悪影響(例えば不要な熱硬化)を低減することができる。また、ノズルを冷却することで液状樹脂の粘度を高くすることができ、吐出後においてノズルから液状樹脂が垂れることを防止することができる。
【0022】
<本発明の実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。なお、本出願書類においては、「液状」という用語は常温において液状であって流動性を有することを意味しており、流動性の高低、言い換えれば粘度の程度を問わない。また、本出願書類において、「樹脂成形品」とは、少なくとも樹脂成形された樹脂部分を含む製品を意味し、後述するような基板に装着されたチップが成形型により樹脂成形されて樹脂封止された形態の封止済基板を含む概念の表現である。
【0023】
本実施形態の樹脂成形装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1に示される樹脂成形装置1は、圧縮成形法を使用した樹脂成形装置である。本実施形態においては、例えば、半導体チップが装着された基板を樹脂成形する対象として、樹脂材料として流動性樹脂である液状樹脂を使用する場合を示す。なお、「基板」としては、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、樹脂基板、金属基板などの一般的な基板及びリードフレームなどが挙げられる。
【0024】
具体的に樹脂成形装置1は、
図1に示すように、基板供給・収納モジュール2と、4つの成形モジュール3A、3B、3C、3Dと、供給モジュール4とを、それぞれ構成要素として備える。構成要素である基板供給・収納モジュール2と、成形モジュール3A〜3Dと、供給モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0025】
基板供給・収納モジュール2には、封止前基板5を供給する封止前基板供給部6と封止済基板7を収納する封止済基板収納部8とが設けられる。封止前基板5には、例えば、光素子としてLEDチップなどが装着される。基板供給・収納モジュール2には、ローダ9とアンローダ10とが設けられ、ローダ9とアンローダ10とを支えるレール11がX方向に沿って設けられる。ローダ9とアンローダ10とは、レール11に沿ってX方向に移動する。
【0026】
レール11に支えられたローダ9及びアンローダ10は、基板供給・収納モジュール2と各成形モジュール3A、3B、3C、3Dと供給モジュール4との間を、X方向に移動する。ローダ9には、各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、封止前基板5を上型に供給するための移動機構12が設けられる。各成形モジュールにおいて、移動機構12はY方向に移動する。アンローダ10には、各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、封止済基板7を上型から受け取る移動機構13が設けられる。各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、移動機構13はY方向に移動する。
【0027】
各成形モジュール3A、3B、3C、3Dには、互いに対向する一対の成形型が設けられている。本実施形態の一対の成形型は、昇降可能な下型14と、下型14に相対向して配置された上型(図示なし、
図2(a)参照)とである。各成形モジュール3A、3B、3C、3Dは、上型と下型14とを型締め及び型開きする型締め機構15を有する。液状樹脂が収容され硬化する空間であるキャビティ16が下型14に形成されている。言い換えれば、キャビティ16は液状樹脂が収容される収容部である。キャビティ16における型面は離型フィルム17によって被覆される。
【0028】
供給モジュール4には、吐出対象物である下型14のキャビティ16に液状樹脂を供給する樹脂供給機構18が設けられる。樹脂供給機構18は、レール11によって支えられ、移動機構20によってレール11に沿ってX方向に移動する。樹脂供給機構18には、液状樹脂の吐出機構であるディスペンサ19が設けられる。各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、ディスペンサ19は移動機構20によってY方向に移動し、キャビティ16に液状樹脂を吐出する。
図1に示されるディスペンサ19は、予め主剤と硬化剤とが混合された液状樹脂を使用する1液タイプのディスペンサである。主剤としては、熱硬化性と透光性とを有するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などが使用される。
【0029】
供給モジュール4には真空引き機構21が設けられる。真空引き機構21は、各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて上型と下型14とを型締めする直前にキャビティ16から、空気を強制的に吸引して排出する。また、供給モジュール4には、樹脂成形装置1全体の動作を制御する制御部22が設けられる。
図1においては、真空引き機構21と制御部22とを供給モジュール4に設けた場合を示した。これに限らず、真空引き機構21と制御部22とを他のモジュールに設けてもよい。なお、制御部22は、例えば、CPU、内部メモリ、AD変換器、入出力インバータ等を有する専用乃至汎用のコンピュータから構成される。
【0030】
図1及び
図2を参照して、樹脂供給機構18が下型14に設けられたキャビティ16に液状樹脂30(
図2参照)を供給する機構について説明する。
図2(a)に示すように、各成形モジュール3A、3B、3C、3D(
図1参照)には、上型23と下型14とフィルム押え部材24とが設けられる。
【0031】
離型フィルム17は、キャビティ16の型面及びその周囲の型面を被覆する。フィルム押え部材24は、キャビティ16の周囲において、離型フィルム17を下型14の型面に押さえ付けて固定するための部材である。フィルム押え部材24は中央部に開口を有し、その開口の内部に成形型が位置する。上型23には、例えば、LEDチップ25などが装着された封止前基板5が、吸着又はクランプなどによって固定されて配置される。キャビティ16の内部には、それぞれのLEDチップ25に対応する個別キャビティ26が設けられる。
【0032】
キャビティ16の全面を覆うようにして、離型フィルム17が供給される。下型14に設けられたヒータ(図示なし)によって離型フィルム17が加熱される。加熱された離型フィルム17は軟化して伸長する。キャビティ16の周囲において、フィルム押え部材24により、軟化した離型フィルム17が下型14の型面に押さえ付けられて固定される。各個別キャビティ26における型面に沿うようにして、軟化した離型フィルム17が吸着される。なお、
図2(a)においては、フィルム押え部材24を用いる場合を示した。これに限らず、離型フィルム17とフィルム押え部材24とを使用しなくてもよい。
【0033】
図2に示されるように、ディスペンサ19は、所定量の液状樹脂30を送出する送出機構27と、液状樹脂30を貯留するシリンジ28と、液状樹脂30を吐出するノズル29とを有する。ディスペンサ19において、送出機構27とシリンジ28とノズル29とが接続されて一体的に構成される。したがって、各構成要素(送出機構27、シリンジ28、ノズル29)を互いに着脱でき、各構成要素単位を同種で異なる構成単位に交換できる。例えば、異なる材料や異なる粘度などを有する液状樹脂30を予め複数のシリンジ28に貯留して保管しておき、製品に応じて必要なシリンジ28をディスペンサ19に取り付けて使用できる。加えて、容量が異なるシリンジ28を選択して使用できる。
【0034】
ノズル29を交換することによって、液状樹脂30が吐出される方向を真下、真横、斜め下など、任意の方向に設定できる。加えて、液状樹脂30の粘度に対応してノズル29の吐出口の口径を変更できる。更に、シリンジ28とノズル29との間にスタティックミキサを設けることができる。例えば、液状樹脂30に添加剤として蛍光体などが添加された場合であっても、スタティックミキサによって液状樹脂30が攪拌されることにより、蛍光体が沈殿することなく均一な状態で液状樹脂30を吐出できる。
【0035】
ディスペンサ19は、上下方向(Z方向)にも移動させることができる。
図2(a)に示されたディスペンサ19を、鉛直面内(Y軸とZ軸とを含む面内)又は水平面内(X軸とY軸とを含む面内)において、ある1点を中心にして部分的に回転するように往復動させることができる。この場合には、ディスペンサ19の先端部が円弧の一部分を描くようにして往復動する。
【0036】
図1及び
図2を参照して、樹脂成形装置1の動作として成形モジュール3Cを使用する場合について説明する。まず、例えば、LEDチップ25が装着された封止前基板5を、LEDチップ25が装着された面を下側にして、封止前基板供給部6からローダ9に受け渡す。次に、ローダ9を、基板供給・収納モジュール2からレール11に沿って成形モジュール3Cまで+X方向に移動させる。
【0037】
次に、成形モジュール3Cにおいて、移動機構12を使用して、ローダ9を下型14と上型23(
図2(a)参照)との間の所定の位置まで−Y方向に移動させる。LEDチップ25が装着された面を下側にした封止前基板5を、上型23の下面に吸着又はクランプによって固定する。封止前基板5を上型の下面に配置した後に、基板供給・収納モジュール2における元の位置まで、ローダ9を移動させる。
【0038】
次に、樹脂供給機構18を使用して、ディスペンサ19を、供給モジュール4における待機位置から、レール11に沿って成形モジュール3Cまで−X方向に移動させる。このことによって、樹脂供給機構18を、モジュール3Cにおける下型14の近傍の所定の位置まで移動させる。移動機構20を使用して、ディスペンサ19を下型14の上方における所定の位置まで移動させる。
【0039】
次に、
図2(a)に示すように、ディスペンサ19のノズル29から液状樹脂30を吐出する。具体的には、ディスペンサ19のノズル29から下型14に設けられたキャビティ16に向かって液状樹脂30を吐出する。このことによって、キャビティ16に液状樹脂30を供給する。
【0040】
次に、液状樹脂30をキャビティ16に供給した後に、移動機構20を使用してディスペンサ19を樹脂供給機構18まで後退させる。樹脂供給機構18を供給モジュール4における元の待機位置まで移動させる。
【0041】
次に、成形モジュール3Cにおいて、型締め機構15を使用して下型14を上昇させることによって、上型23と下型14とを型締めする。型締めすることによって、封止前基板5に装着されたLEDチップ25を、キャビティ16に供給された液状樹脂30に浸漬させる。このとき、下型14に設けられたキャビティ底面部材(図示なし)を使用して、キャビティ16内の液状樹脂30に所定の樹脂圧力を加えることができる。
【0042】
なお、型締めする過程において、真空引き機構21を使用してキャビティ16内を吸引してもよい。このことによって、キャビティ16内に残留する空気や液状樹脂30中に含まれる気泡などが成形型の外部に排出される。加えて、キャビティ16内が所定の真空度に設定される。
【0043】
次に、下型14に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、液状樹脂30を硬化させるために必要な時間だけ、液状樹脂30を加熱する。このことによって、液状樹脂30を硬化させて硬化樹脂を形成する。このことにより、封止前基板5に装着されたLEDチップ25を、キャビティ16の形状に対応して形成された硬化樹脂によって樹脂封止する。液状樹脂30を硬化させた後に、型締め機構15を使用して上型23と下型14とを型開きする。
【0044】
次に、ローダ9を、アンローダ10が成形モジュール3Cまで移動することを妨げない適当な位置まで退避させる。例えば、基板供給・収納モジュール2から、成形モジュール3D又は供給モジュール4における適当な位置まで、ローダ9を退避させる。その後に、アンローダ10を、基板供給・収納モジュール2からレール11に沿って成形モジュール3Cまで+X方向に移動させる。
【0045】
次に、成形モジュール3Cにおいて、移動機構13を下型14と上型23との間の所定の位置まで−Y方向に移動させた後に、移動機構13が上型23から封止済基板7を受け取る。封止済基板7を受け取った後、移動機構13をアンローダ10まで戻す。アンローダ10を基板供給・収納モジュール2に戻して、封止済基板7を封止済基板収納部8に収納する。この時点で、最初の封止前基板5の樹脂封止が完了して、最初の封止済基板7が完成する。
【0046】
次に、成形モジュール3D又は供給モジュール4における適当な位置まで退避させていたローダ9を、基板供給・収納モジュール2に移動させる。封止前基板供給部6からローダ9に次の封止前基板5を受け渡す。以上のようにして樹脂封止を繰り返す。
【0047】
なお、本実施形態においては、封止前基板5の供給、樹脂供給機構18及びディスペンサ19の移動、液状樹脂30の吐出、上型23と下型14との型締め及び型開き、封止済基板7の収納などの動作は、制御部22により制御される。
【0048】
<ノズル29の温調機構>
そして、本実施形態の樹脂成形装置1は、ノズル29とは別体に設けられ、ノズル29の温度を調整する温調機構を有している。
【0049】
具体的に樹脂成形装置1は、
図1、
図3及び
図4に示すように、ノズル29に接触してノズル29を加熱する加熱部31と、ノズル29に接触してノズル29を冷却する冷却部32と、ノズル29の温度を検出する温度センサ33と、ノズル29と加熱部31又は冷却部32との接触/非接触を切り替える切替機構34とを備えている。
【0050】
本実施形態の加熱部31、冷却部32及び温度センサ33は、供給モジュール4に設けられている。
【0051】
加熱部31は、
図3に示すように、内部にヒータ(図示なし)が内蔵された例えば金属製のブロック311(以下、加熱ブロック311ともいう。)である。加熱部31は供給モジュール4に固定してあり、ノズル29の外面に接触して加熱する接触加熱面311aを有している。本実施形態の接触加熱面311aは、ノズル29の先端面29aに接触する面である。ノズルの先端面29aが平坦面であるため、接触加熱面311aも平坦面としてある。ヒータは、例えば発熱抵抗体である。
【0052】
冷却部32は、
図4に示すように、例えば金属製のブロック321(以下、冷却ブロック321ともいう。)である。冷却部32は供給モジュール4に固定してあり、ノズル29の外面に接触して冷却する接触冷却面321aを有している。本実施形態の接触冷却面321aは、上記の接触加熱面311aと同様に、ノズル29の先端面29aに接触する面である。ノズルの先端面29aが平坦面であるため、接触冷却面321aも平坦面としてある。なお、冷却部32は冷却ブロック321の内部にクーラを内蔵したものであっても良い。クーラとしては、ペルチェ素子、気体又は液体の冷却媒体が流れる冷却配管を用いることが考えられる。
【0053】
加熱部31及び冷却部32は、例えばX方向に沿って(レール11の延在方向)並んで設けられている。また、加熱部31の接触加熱面311a及び冷却部32の接触冷却面321aは、移動機構20によりY方向に移動するノズル29の先端面29aが接触するように、Y方向を向いて設けられている。
【0054】
切替機構34は、ノズル29及び加熱部31が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とを切り替えるとともに、ノズル29及び冷却部32が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とを切り替えるものである。
【0055】
本実施形態の切替機構34は、移動機構20により構成されている。この移動機構20により、ディスペンサ19をX方向及びY方向に移動させることによって、ノズル29及び加熱部31の接触/非接触、及びノズル29及び冷却部32の接触/非接触が切り替えられる。この移動機構20による接触/非接触の切り替えは制御部22により制御される。
【0056】
温度センサ33は、例えば赤外線センサ等の非接触センサである。この温度センサ33は、供給モジュール4において加熱部31及び冷却部32に接触しているノズル29の温度を検出することができる位置に設けられている(
図3及び
図4参照)。本実施形態では、接触状態にあるノズル29を側方から温度検出するものであるが、上方や下方から温度検出するものであっても良い。また、
図1等では1つの温度センサ33により加熱温度及び冷却温度の両方を検出する構成であるが、加熱部31及び冷却部32それぞれに1つずつ温度センサ33を設けても良い。この温度センサ33による検出信号は、制御部22に送信されて移動機構20により切り替え動作が制御される。
【0057】
次に液状樹脂の吐出前後におけるディスペンサ19の動きについて簡単に説明する。
【0058】
液状樹脂30を吐出対象部である下型14に吐出する前のディスペンサ19は供給モジュール4で待機している。このとき、制御部22は移動機構20を制御してノズル29の先端面29aを加熱ブロック311の接触加熱面311aに接触させる(
図3参照)。このノズル加熱時には、温度センサ33を用いてノズル温度を検出し、ノズル温度が所定の設定加熱温度(例えば25〜40℃)となるまで加熱する。設定加熱温度を超えた場合、制御部22は、移動機構20を制御してノズル29を冷却ブロック321に接触させて冷却して設定加熱温度とすることもできる。単にノズル29を加熱ブロック311から離間させることによって設定加熱温度となるようにしても良い。
【0059】
このようにノズル29を加熱した後に、制御部22は、移動機構20を制御して、ディスペンサ19を成形モジュール3A〜3Dに移動させ、ノズル29から液状樹脂30を吐出させて下型14に液状樹脂30を供給する。
【0060】
液状樹脂を供給した後、制御部22は、移動機構20を制御して、ディスペンサ19を供給モジュール4に戻す。このとき、制御部22は、移動機構20を制御してノズル29の先端面29aを冷却ブロック321の接触冷却面321aに接触させる(
図4参照)。このノズル冷却時には、温度センサ33を用いてノズル温度を検出し、ノズル温度が所定の設定冷却温度(例えば20℃未満)となるまで冷却する。そして、設定冷却温度以下となった場合に、制御部22は移動機構20を制御してノズル29を冷却ブロック321から離間させる。また、次の液状樹脂30の供給に伴う加熱動作に至るまでノズル29を冷却ブロック321に接触させた状態を維持するようにしても良い。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置1によれば、ノズル29及び加熱部31が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とが切り替えられるので、ノズル29に加熱部31を設ける必要がない。その結果、ノズル29の構造を複雑化することなく、ノズル29において液状樹脂30を加熱することができる。ノズル29の構造が複雑化されないので、ノズル交換の作業性を悪くすることも無い。また、液状樹脂30が加熱されて液状樹脂30の粘度が低くなり、ノズル29から吐出されやすく、吐出量の精度を向上させることができ、吐出後の糸引き状態を早期に解消することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ノズル29及び冷却部32が互いに接触する接触状態と互いに離間する離間状態とが切り替えられるので、ノズル29に冷却部32を設ける必要がない。その結果、ノズル29の構造を複雑化すること無く、積極的にノズル29を冷却でき、液状樹脂30への悪影響(例えば不要な熱硬化)を低減することができる。ノズル29を冷却することで液状樹脂30の粘度を高くすることができ、供給モジュール4における待機状態においてノズル29から液状樹脂30が垂れることを防止することができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、加熱部31を供給モジュール4に設けているので、吐出前における待機状態のノズル29を加熱することができる。その結果、液状樹脂30を吐出する前にノズル29を十分に加熱できるようになる。その他、冷却部32を供給モジュール4に設けているので、吐出後における待機状態のノズル29を冷却することができる。その結果、液状樹脂30を吐出した後に十分にノズル29を冷却でき、液状樹脂30の粘度を高くして、ノズル29から液状樹脂30を垂れにくくすることができる。
【0064】
<その他の実施形態>
前記実施形態では、加熱部31を供給モジュール4に設けているが、
図5に示すように成形モジュール3A〜3Dに設けても良い。
図5では、4つの成形モジュール3A〜3Dを備える構成であり、各成形モジュール3A〜3Dに加熱部31を設けた例を示している。複数の成形モジュール3A〜3Dを有する構成の場合、その少なくとも1つの成形モジュール3A〜3Dに加熱部31を設ける構成としても良い。これらの場合、例えば成形モジュール3A〜3Dにおいて加熱部31又はディスペンサ19の少なくとも一方を移動させて接触/非接触を切り替える。
【0065】
前記実施形態では、加熱ブロック311の接触加熱面311a及び冷却ブロック321の接触冷却面321aがノズル29の先端面29aに接触する構成であったが、ノズル29の例えば上面や側面等のその他の外面であっても良い。
【0066】
前記実施形態ではディスペンサ19が移動することによって加熱部31及び冷却部32に接触する構成であったが、加熱部31及び冷却部32を移動させて、接触/非接触を切り替える切替機構34を設けても良い。この場合、例えば供給モジュール4で待機状態にあるディスペンサ19に対して加熱部31及び冷却部32を移動させて接触させる。
【0067】
前記実施形態では温度センサ33の検出温度を用いて接触/非接触を切り替えるものであったが、温度センサ33の検出温度を用いること無く、接触時間によって接触/非接触を切り替える(シーケンス制御する)ものであっても良い。
【0068】
また、加熱部31をディスペンサ19に設ける構成としても良い。つまり、加熱部31もディスペンサ19と一体的に移動することになる。この場合、加熱部31は、ディスペンサ19に切替機構34を介して設けられることになる。この切替機構34は、
図6に示すように、加熱部31を支持するとともに、加熱部31がノズル29に接触する接触位置Pと加熱部31がノズル29から離間した離間位置Qとの間で回転可能に設けられた支持部材35と、当該支持部材35を回転させるアクチュエータ(図示なし)とを有する。
図6では、ノズル29の左右両側に加熱部31を設けてノズル29の左右側面に接触する構成であるが、ノズル29の上面に接触する構成としても良い。なお、アクチュエータを設けること無く、例えば、ディスペンサ19の移動に連動して、支持部材35が外部の部材に接触することにより回転するように構成しても良い。冷却部32についても、加熱部31と同様にディスペンサ19に設ける構成としても良い。
【0069】
さらに、
図7に示すように、ノズル29の外面に保温部材36を設けても良い。この保温部材36は、ノズル29の熱容量よりも大きな熱容量を有するものである。
図7にはノズル29の左右側面及び上面を覆うように保温部材36を設けた例を示しているが、これに限られず、ノズル29の外面の少なくとも一部を覆うものであれば良い。また、保温部材36はノズル29に対して着脱可能に構成されている。
図7でははめ込み式の保温部材36を示している。このように保温部材36を設けることによって、加熱されたノズル29の温度低下を抑えることができる。また、液状樹脂30がノズル29を通過することによるノズル29の温度低下を抑えることができる。さらに保温部材36を着脱可能に構成することによって、ノズル交換の作業性を悪くすることがない。
【0070】
前記実施形態では、加熱ブロック311及び冷却ブロック321の1つの平面とノズルの1つの平面とが接触するものであったが、
図8に示すように、例えば加熱ブロック311及び冷却ブロック321に凹部Mを形成して、当該凹部Mの内面を接触加熱面311a及び接触冷却面321aにノズル29が接触するように構成しても良い。なお凹部Mをノズル29に形成しても良い。つまり、加熱ブロック311及び冷却ブロック321とノズル29とが複数の面で接触するように構成しても良い。これならば、熱交換面積を大きくすることができ、効率的にノズル29の温調を行うことができる。
【0071】
その上、ノズル29の表面の少なくとも一部に黒化処理を施しても良い。ここで、黒化処理は、ノズル29の表面が赤外線を吸収しやすくするために当該表面を黒色化するためのものであり、例えば、黒色クロムメッキ、黒色亜鉛メッキ、低温黒色クロム処理、黒色無電解ニッケルメッキ、黒染め、黒色アルマイト処理、亜鉛メッキ後の黒色クロメート処理、イオンプレーティングなどを用いることができる。この黒化処理は、ノズル29の材質(例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウムなど)に応じて適宜選択される。
【0072】
前記実施形態の樹脂成形装置1は、成形型に離型フィルムを固定した後に、その成形型に液状樹脂30を供給するものであり、吐出対象物が成形型14であったが、成形型14に離型フィルム17を固定する前に離型フィルム17に液状樹脂30を供給するものの場合には、吐出対象物は離型フィルム17となる。
【0073】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。