(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1、2に記載の技術はあらかじめ粉体を貯留する粉体貯留槽に対してではなく、それぞれワークの切削形成時に生成される異物や化学反応によって発生した少量の粉塵に対して適用される技術であり大量に発生する粉塵に対応可能な集塵機構ではなかった。
【0008】
そこで、本発明では粉体を搬送する際に装置内から外部に飛散する粉体を可及的に低減して装置内に留めることで、粉体塗布装置を汚損する虞を可及的に低減し、さらに、粉体飛散による所定の箇所以外への粉体付着を可及的に低減して粉体利用の歩留まりを向上し、ワークの表面の所定位置に所定量の絶縁塗料を塗布できる粉体飛散防止機構を備えた粉体塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様の1つは、
粉体貯留槽に貯留した粉体内にワークを漬けることでワーク表面に粉体を塗布する粉体塗布装置であって、粉体貯留槽の上部円形開口部には、粉体貯留槽に前端が連通した状態で粉体貯留槽の上部円形開口部の略接線方向に飛散粉体の吸引路を形成したことを特徴とする粉体塗布装置である。
【0010】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、上部円形開口部の上端部と吸引路の上端部とを略同一の高さとしたことを特徴とする粉体塗布装置である。
【0011】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、
粉体貯留層に供給する粉体を収納した粉体タンクの下方にガイド筒を介して粉体供給ケースの始端を連通し、粉体供給ケースの後端は粉体貯留槽の上部円形開口部に連通し、しかも、粉体タンクと粉体供給ケースとを連通したガイド筒の周辺には粉体供給ケースの供給孔を閉塞する略漏斗状の飛散遮蔽体を配設したことを特徴とする粉体塗布装置である。
【0012】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、粉体供給ケースの終端供給口は下方に指向するようにエルボ状に形成したことを特徴とする粉体塗布装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る粉体塗布装置によれば、
粉体貯留槽に貯留した粉体内にワークを漬けることでワーク表面に粉体を塗布する粉体塗布装置であって、粉体貯留槽の上部円形開口部には、粉体貯留槽に前端が連通した状態で粉体貯留槽の上部円形開口部の略接線方向に飛散粉体の吸引路を形成したため、ワークの粉体塗布部を粉体貯留槽中の粉体に埋入して粉体塗布を行う際に粉体貯留槽中の粉体が装置の周辺に飛散しても粉体貯留槽の上部円形開口部に吸引路が形成されているので、粉体貯留槽の開口周縁から槽外に飛散しようとする粉体は、その直前の上部円形開口部で吸引されることで槽外への飛散を防止できる。
さらに、この吸引路を円形開口部の接線方向に伸延することで飛散した粉体が粉体貯留槽の上部で螺旋軌跡を形成し、この粉体の螺旋軌跡により粉体貯留槽の中心に負圧を生起し、粉体貯留槽の中心への向心力を生起することで槽外への粉体の飛散を可及的に抑制して槽外に飛散しようとする粉体量を低減できる。
また、粉体貯留槽の外部に飛散する粉体は螺旋軌跡の最外部から螺旋軌跡の接線方向に離脱するため、その接線方向に吸引路を備えることで粉体が容易に吸引路に引き込まれて装置の周囲に飛散する虞を低減できる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、上部円形開口部の上端部と吸引路の上端部とを略同一の高さとしたため、粉体貯留槽の上方に舞い上がり再び粉体貯留槽に貯留される可能性のある粉体を積極的に吸引しないで粉体の歩留まりを向上できる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、
粉体貯留層に供給する粉体を収納した粉体タンクの下方にガイド筒を介して粉体供給ケースの始端を連通し、粉体供給ケースの後端は粉体貯留槽の上部円形開口部に連通し、しかも、粉体タンクと粉体供給ケースとを連通したガイド筒の周辺には粉体供給ケースの供給孔を閉塞する略漏斗状の飛散遮蔽体を配設したため、粉体タンクからガイド筒を介して粉体供給ケースに落下供給された粉体が粉体供給ケースに形成した供給孔とガイド筒との隙間からケースの外部に飛散する虞を可及的に低減する。
また、粉体の飛散を防止する飛散遮蔽体を略漏斗状とすることで供給孔に配設した飛散遮蔽体の外側面が供給孔の内周面と当接して粉体の飛散を可及的に低減することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、粉体供給ケースの終端供給口は下方に指向するようにエルボ状に形成したため、終端供給口を水平状に形成した場合と比較して粉体が粉体貯留槽の外部に飛散する蓋然性を可及的に低減できる。
また、終端供給口を粉体貯留槽の粉体面に指向したため、粉体は粉体貯留槽の粉体面に粉体山を形成し、終端供給口から粉体貯留槽の粉体面への粉体の落下距離を短くして、落下の衝撃により粉体が飛散する蓋然性を可及的に低減できる。
また、粉体山の形状が山の頂部から裾にかけて緩やかな傾斜を形成しており、この傾斜面を上部より供給された粉体が転がり落ちることで落下時の衝撃を緩和して粉体が飛散する蓋然性を可及的に低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の要旨は、粉体貯留槽の上部円形開口部には、粉体貯留槽に前端が連通した状態で粉体貯留槽の上部円形開口部の略接線方向に飛散粉体の吸引路を形成し、前記上部円形開口部の上部と前記吸引路の上部を略同一の高さとし、また、粉体を収納した粉体タンクの下方にガイド筒を介して粉体供給ケースの始端を連通し、粉体供給ケースの後端は前記粉体貯留槽の前記上部円形開口部に連通し、しかも、粉体タンクと粉体供給ケースとを連通したガイド筒の周辺には粉体供給ケースの供給孔を閉塞する略漏斗状の飛散遮蔽体を配設し、また、前記粉体供給ケースの終端供給口は下方に指向するようにエルボ状に形成したことことにある。
本発明の実施形態を
図1から
図9に基づき詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に示す粉体塗布装置Aは、ワークWに粉体Pを塗布する粉体塗布部100と、ワークWを加熱、昇温する予熱部(図示せず)と、ワークWを搬送する搬送装置200とを備える。なお、本実施形態におけるワークWは、
図1に示すように、モータ内のロータを回転させるためのステータであり、粉体塗布装置Aは、このステータの上下両側面に形成されるステータコイルの溶接部(粉体塗布面W1)に粉体Pを塗布する装置である。
【0020】
粉体Pを塗布するワークWの粉体塗布面W1は、予熱部により所定の温度まで加熱・昇温される。この予熱部で加熱・昇温されたワークWは、搬送装置200で把持固定されて粉体塗布部100の粉体貯留槽131まで搬送される。
【0021】
搬送装置200は、
図1に示すようにワークWを把持するための把持アーム210と、把持アーム210を昇降作動させる昇降機構220と、把持アーム210を左右に移動可能とした移動機構230とで構成している。
【0022】
把持アーム210は、左右先端に把持爪211,211を対向形成している。この把持爪211,211の内、少なくともいずれか一方の把持爪211の後部には左右シリンダー機構の左右ピストンロッドを連結している。把持アーム210は、左右ピストンロッドの前進作動によりワークWの周面部W2に把持爪211を当接してワークWを把持可能に構成している。また、把持爪211,211の上部、及び、左右シリンダー機構の上部には、矩形板状の支持アーム214を設けており、この支持アーム214に把持爪211と左右シリンダー機構の上部を連結している。支持アーム214の平面視略中央上部には、昇降機構220が連結されている。
【0023】
昇降機構220は、移動機構230に垂設した上下シリンダー221と、その内部で上下動する上下ピストンロッド222とを有する。この上下ピストンロッド222は、上下シリンダー221の内部で空気圧を調整することで上下動自在としており、上下ピストンロッド222の下端部に、支持アーム214が連結されている。これにより、上下ピストンロッド222の上下動にともない、支持アーム214が上下動するように構成されている。
【0024】
移動機構230は、断面略コ字状のフレーム231と、このフレーム231に連結した直線状のアーム部の両端に回転自在に支持された車輪232,232と、車輪232,232を駆動させるモータ233とを有する。移動機構230は、車輪232,232を、粉体塗布部100と予熱部の上側に配設した移動レール234上に位置させ、移動レール234に沿って移動するように構成されている。以上のような構成により、搬送装置200は、移動レール234に沿って移動機構230を移動させることで、昇降機構220を介して把持アーム210に把持されたワークWを、予熱部から粉体塗布部100に搬送する。
【0025】
図1に示すように、粉体塗布部100は、ワークWに塗布する粉体Pを供給するための粉体貯留タンク部110と、この粉体貯留タンク部110に貯留した粉体Pを搬送するための粉体供給部120と、この粉体供給部120に連通してワークWに粉体Pを塗布するための粉体貯留部130と、この粉体貯留部130の粉体貯留槽131から外部に飛散する粉体Pを吸引処理するための粉体吸引部140とを備える。
【0026】
粉体貯留タンク部110は、
図1,2に示すように、直方体状の粉体タンク111を有し、粉体タンク111の内部には粉体Pを貯留している。粉体タンク111の下面には、粉体タンク111の貯溜空間と連通するように、円筒状のガイド筒112を設けている。ガイド筒112の下側は、粉体供給部120の粉体供給ケース121の基端部(始端部)に連通している。このガイド筒112を介して粉体タンク111内の粉体Pが、粉体供給ケース121に供給される。
【0027】
また、ガイド筒112の外周面は弾性体で形成されたジャバラ113によって囲繞されている。
図5に示すように、ジャバラ113は、略円筒状でその周面が山折りと谷折りの繰り返し構造で構成されており、粉体タンク111の下面と粉体供給ケース121との間に介装されている。
【0028】
粉体供給部120は、
図4,5に示すように、粉体Pを搬送するための粉体供給ケース121と、粉体供給ケース121の基端部に設けられた飛散遮蔽体123と、粉体供給ケース121の先端部(終端部)に形成したエルボ部124と、粉体供給ケース121内で供給孔122側からエルボ部124に向けて粉体Pを搬送するための振動を生起する電磁フィーダ160とを有する。
【0029】
粉体供給ケース121は、
図5に示すように、粉体Pの搬送路として略水平方向に延設されている。粉体供給ケース121は、ガイド筒112に対する連結側を始端側とし、粉体貯留部130へ向けて直線状に延設されており、横長矩形状の横断面形状をなす扁平状の粉体供給経路を構成する。この粉体供給ケース121の基端部上面には略円形の供給孔122を穿設しており、この供給孔122に前述のガイド筒112を挿入している。
【0030】
また、粉体供給ケース121の供給孔122には、飛散遮蔽体123が設けられている。飛散遮蔽体123は、供給孔122を介して下端部を粉体供給ケース121に挿入させたガイド筒112と、供給孔122との間に設けられている。飛散遮蔽体123は、
図5に示すように、略円板状のフランジ部125と、フランジ部125の下側に設けられた略截頭円錐状の飛散規制部126とを有し、全体として略漏斗状に構成された一体の部材である。このフランジ部125と飛散規制部126の平面視略中央には嵌合孔127を穿設しており、この嵌合孔127に前述のガイド筒112を挿通している。飛散遮蔽体123は、例えばゴム等の弾性体で構成されており嵌合孔127の孔径をガイド筒112の外径よりも若干小さい構成とすることで、ガイド筒112を嵌合孔127に挿通した際の飛散遮蔽体123が拡大して飛散規制部126の外周面と供給孔122の内周面とを当接し、密着状態を形成する。
【0031】
このような構成において、粉体タンク111の下面部と粉体供給ケース121の上面部との間に架設されたガイド筒112を被覆するように、ジャバラ113が設けられている。具体的には、
図5に示すように、ジャバラ113の上端部は、粉体タンク111の下面部に設けられガイド筒112の上端部を貫通させた支持プレート114に固定されている。ジャバラ113の上側の開口端部には、フランジ部が形成されており、このフランジ部が、ボルト等の固定具により支持プレート114の下面に固定されている。また、ジャバラ113の下端部は、飛散遮蔽体123のフランジ部125に固定されている。ジャバラ113の下側の開口端部には、フランジ部が形成されており、このフランジ部が、ボルトなどの固定具によりフランジ部125の上面に固定されている。
【0032】
以上のような構成により、粉体貯留タンク部110から粉体供給部120に落下供給される粉体Pについて、飛散遮蔽体123の飛散規制部126と供給孔122との接触、及びガイド筒112を囲繞するジャバラ113により粉体Pが粉体供給ケース121の外部に飛散する蓋然性を可及的に低減している。
【0033】
また、粉体供給ケース121の先端部、すなわち、粉体Pを搬送する粉体供給ケース121の終端部には、
図4,6に示すように略L字上のエルボ部124を設けている。エルボ部124は、粉体供給ケース121の上面を湾曲させて側面視略円弧状に形成し、粉体供給ケース121の上面部と、粉体供給ケース121の先端側の垂直状の壁面部との間の角部分をR形状部128とする。エルボ部124は、粉体供給ケース121の先端側の壁面部と、この先端側の壁面部に対向するとともに粉体供給ケース121の下面部に対して直角状に形成された手前側の壁面部と、左右の側面部とにより、下側を開口側とした矩形状の開口形状をなす終端供給口129を形成している。エルボ部124は、終端供給口129の開口部を後述する粉体貯留槽131内の粉体Pの粉体面P1に対向するように設けており、その終端供給口129より粉体Pが垂直落下するように構成している。
【0034】
また、粉体供給ケース121の始端近傍の下部には、
図4,
図8に示すように粉体Pを搬送するための電磁フィーダ160を配設している。この電磁フィーダ160は、磁性材料を励磁して粉体供給ケース121を斜め下方に引き付ける振動生起部161と、振動生起部161による粉体供給ケース121の変位量を復元する弾性体162と、振動生起部161の近傍に配設した可動コア163と、可動コア163に連結した可動フレーム164とを有し、これらを略箱型のフィーダケース166の内部に収納して構成している。
【0035】
振動生起部161は、磁性材料の周りにコイル165を巻いた電磁石であり、この電磁石を励磁することで振動生起部161の上端部167近傍に位置する可動コア163をこの上端部167側に引き付けることができる。
【0036】
可動コア163は、略箱型の金属で側面視略コ字状の可動フレーム164の前端部に連結している。可動フレーム164は上面部を粉体供給ケース121と連結しており、前端部に配設した可動コア163の動きと連動して粉体供給ケース121を移動させることができる。
【0037】
また、可動フレーム164は前後両端部を弾性体162と連結しており、可動コア163の動きから生起される可動フレーム164の変形をこの弾性体162の弾性力により復元している。すなわち、この可動フレーム164は、振動生起部161を励磁することで変位する可動コア163の変位状態と、この変位状態を解消するための弾性体162の復元力とで往復運動を繰り返し、いわゆる振動状態を生起している。また、可動フレーム164の上面部は粉体供給ケース121と連結しており、この可動フレーム164の動きに連動して粉体供給ケース121も振動している。
【0038】
このような構成とすることで、粉体供給ケース121内の粉体Pは電磁フィーダ160で生起される振動により緩やかにエルボ部124の終端供給口129に搬送される。なお、図中符号168は、電磁フィーダ160にて生起した振動が電磁フィーダ160と粉体供給ケース121以外に伝達されることを規制するために配設した振動規制用の弾性バネ168である。
【0039】
従って、粉体供給ケース121内の粉体Pの搬送は、電磁フィーダ160の振動と、粉体供給ケース121の終端に設けたエルボ部124の終端供給口129を粉体貯留槽131の粉体面P1に対向して設けることで飛散しにくい状態を形成して成される。
【0040】
このように電磁フィーダ160の振動により粉体Pを緩やかに搬送することで、
図6に示すように、粉体Pは粉体貯留槽131の粉体面P1に粉体山Mを形成しながら粉体貯留槽131に貯留される。従って、粉体Pの落下距離は粉体山Mの高さ分だけ短縮され、粉体Pを供給する際の衝撃を低減して粉体Pの飛散を抑制することができる。
また、終端供給口129より落下した粉体Pは、粉体山Mの頂部に位置する粉体Pが崩れるように作用することで粉体Pの落下時の衝撃を緩和している。さらに、粉体Pは、粉体山Mの頂部から粉体山Mの裾、すなわち、粉体貯留槽131の粉体面P1近傍にかけて形成される緩やかな傾斜面を粉体Pが回転落下することで、終端供給口129からの落下衝撃を緩和して粉体Pが飛散することを可及的に低減している。
【0041】
粉体貯留部130は、
図7に示すように、前述の粉体供給部120により搬送された粉体Pを貯留する粉体貯留槽131と、粉体貯留槽131の底面を構成する多孔板132を介して粉体貯留槽131内に粉体Pを撹拌する空気を供給するエアー供給部133と、粉体貯留槽131を支持する支持ケース134と、粉体貯留槽131を振動するための振動フィーダ170と、振動フィーダ170を収納する振動ケース135とを有する。
【0042】
粉体貯留槽131は、
図3及び
図7に示すように、粉体Pの貯留空間を形成する部分として、略円筒状の周壁部を含む本体部を有し、本体部の底面部を、複数の空気注入孔137を設けた多孔板132により構成している。粉体貯留槽131は、その本体部において上側を開口側とし、本体部をなす略円筒状の周壁部の上端部を上部円形開口部136としている。空気注入孔137は、粉体貯留槽131に貯留される粉体Pの粒径よりも小さな孔径を有し、多孔板132を板厚方向に貫通形成されており、多孔板132において全体的に満遍なく多数形成されている。
【0043】
空気注入孔137は、
図7に示すように角度をつけて形成しており、多孔板132下部に設けたエアー供給部133の空気搬送路152から空気を注入することで粉体貯留槽131内の粉体Pが螺旋渦を形成するように構成している。すなわち、空気注入孔137は、直線状の孔であるとともに、多孔板132の板面に対して垂直な方向(鉛直方向)に対して傾斜状に形成されており、多数の空気注入孔137は、多孔板132の下方から空気注入孔137を通って粉体貯留槽131内に流入する空気により平面視右回りに螺旋渦が生起されるように配置形成されている。
【0044】
また、粉体貯留槽131の下端部の外周周縁部には、周縁フランジ部138が設けられている。粉体貯留槽131の下部には略円筒形の支持ケース134を配設しており、粉体貯留槽131の外周に設けた周縁フランジ部138で連結している。なお、周縁フランジ部138と支持ケース134との連結手段は図示していないが、ボルトとナットなどによって位置関係が固定されればよく特段限定されるものではない
【0045】
エアー供給部133は、
図2及び
図7に示すように、空気を圧送する空気圧縮部151と、圧縮された空気を粉体貯留槽131に伝達するための空気搬送路152とを有する。空気搬送路152は、基端部を空気圧縮部151に連結し、先端部を支持ケース134の周面から内部に挿通し、支持ケース134内で垂直に立ち上げて粉体貯留槽131の多孔板132の下部に連結している。
【0046】
そのため、空気圧縮部151で圧縮された空気は、空気搬送路152と多孔板132を経由して粉体貯留槽131内の粉体Pまで伝達される。多孔板132に穿設した空気注入孔137は空気の流れが粉体貯留槽131内で平面視右回りとなるように傾斜をつけている。従って、粉体貯留槽131内の粉体Pは粉体貯留槽131内で螺旋軌跡を形成し、粉体貯留槽131の内周面近傍に偏倚して中央部が凹んだ状態を形成する。この偏倚状態を解消するために、粉体貯留槽131の下部には略円筒状の振動ケース135の内部に振動フィーダ170を配設している。
【0047】
振動フィーダ170は、
図4,
図9に示すように、固定台171と、固定台171の上部に位置する可動台172と、可動台172の平面視略中央下面に位置する可動コア173と、可動コア173を引き付けるための磁性材料を励磁する振動生起部174と、振動生起部174により下方に引き付けられた可動コア173を元の位置に復元する弾性体175と、これらを収納する略円筒形のフィーダケース177とを有する。
【0048】
固定台171は略円筒形の台座であり、ボルト等の固定具によりフィーダケース177に固定されている。この固定台171の上部には可動台172を配設している。
【0049】
可動台172は、略円筒形の外形を有し、固定台171の上側において固定台171に対して略同心配置されるとともに、固定台171との間に隙間を設けた状態で、固定台171に連結されている。可動台172は、固定台171から可動台172にかけて斜設された弾性体175により連結されており、弾性体175による連結構造によって、固定台171に対して揺動可能に支持された状態で設けられている。つまり、可動台172は、弾性体175による固定台171に対する連結支持構造によって揺動可能に構成されている。
【0050】
また、可動台172の上面には略円板状の振動伝達部176を連結しており、その振動伝達部176の周面部を粉体貯留槽131の下端内周面139に当接している。すなわち、粉体貯留槽131における多孔板132の下側には、下側を開放側とする略円形状の凹部が形成されており、この凹部に嵌合する態様で、振動伝達部176が設けられている。本実施形態では、振動伝達部176は、周縁フランジ部138の下面と略面一となるとともに、多孔板132に対してわずかな隙間を隔てて対向するように設けられている。また、可動台172の平面視略中央下面には略箱型で金属製の可動コア173を設けており、可動コア173の下部近傍には振動生起部174を配設している。
【0051】
振動生起部174は、磁性材料の周りにコイルを巻いた電磁石であり、この電磁石を励磁することで振動生起部174の電磁石の上端開口部近傍に位置する可動コア173を下方に引き付けることができる。
【0052】
また、上述の通り弾性体175は固定台171と可動台172とに斜設されており、振動生起部174によって下方に引き付けられた可動コア173に連動して下方移動した可動台172の変位量を弾性体175の弾性力により斜め上方に押し戻すことができる。
【0053】
このように振動フィーダ170を形成することで、振動生起部174による可動台172の下方移動と、弾性体175による復元力を連続することで振動状態を生起し、この振動を可動台172に連結した粉体貯留槽131に振動伝達部176の周面を介して伝達することで、粉体貯留槽131内の粉体Pの粉体面P1を均して、ワークWの粉体塗布面W1に粉体Pを塗布し易い状態を形成している。なお、フィーダケース177の下側には、振動フィーダ170で生起した振動が振動フィーダ170や粉体貯留槽131等の所定の箇所以外に伝達されることを規制するための振動規制用の弾性バネ178が配設されている。
【0054】
また、粉体貯留槽131の上部円形開口部136の周縁には粉体貯留槽131内から飛散した粉体Pを吸引するための粉体吸引部140を形成している。
【0055】
この粉体吸引部140は、
図2,3に示すように、粉体貯留槽131の略円筒状の周壁部の上部円形開口部136の外周面形状に沿って配設した吸引路141と、吸引路141に連結した幅広の主吸引路142と、主吸引路142の吸引開口部143に連結した吸引ホース144と、吸引ホース144と連結した粉体吸引機構145とを有する。
【0056】
粉体吸引部140において、吸引路141および主吸引路142は、平面視で略扇状ないし略三角形状をなす一体的なダクト部分を構成する。吸引路141は、粉体吸引部140において比較的幅狭の通路を構成する部分であり、粉体貯留槽131の外側において粉体貯留槽131の周壁部に沿うように付設されている。吸引路141は、内周壁部、外周壁部、下面部及び上面部を有し、これらによって略矩形状の通路断面形状をなす(
図7参照)。
【0057】
主吸引路142は、粉体吸引部140において、吸引路141に対して粉体Pの吸引の流れにおける下流側の部分を構成する。主吸引路142は、平面視で吸引路141の外周壁部に対して接線方向に延設された第1の側壁部と、平面視で上部円形開口部136がなす略円形状における径方向に沿う第2の側壁部とを有する。また、主吸引路142は、その外周側の端部において、平面視で略矩形状に沿う外形をなす突端形状部を有し、この突端形状部の下面に、吸引開口部143が形成されている。
【0058】
このような粉体吸引部140は、吸引路141および主吸引路142により、次のような平面視形状をなす吸引通路を構成する。すなわち、粉体吸引部140は、その内周壁部を、全体にわたって粉体貯留槽131の周壁部に沿うように円弧状に湾曲した側壁部とする。また、粉体吸引部140は、その外周壁部については、吸引路141の部分では、内周壁部と同様に粉体貯留槽131の周壁部に沿うように円弧状に湾曲した側壁部とし、主吸引路142の部分では、吸引路141の外周壁部から接線状に延出した直線状の側壁部とする。また、粉体吸引部140の吸引路141側の端部は、平面視で上部円形開口部136がなす略円形状における径方向に沿う端壁部により塞がれており、粉体吸引部140の主吸引路142側の端部は、上述した第2の側壁部および突端形状部により塞がれている。したがって、粉体吸引部140は、平面視において、主に吸引路141により構成された略「C」字状の円弧状部分と、主に主吸引路142により構成されこの円弧状部分の一端側から徐々に広がった扇状ないし三角形状の部分とが合わさったダクト形状をなす。なお、粉体吸引部140は、その内周壁部と粉体貯留槽131の周壁部との間にわずかに間隔を隔てた状態で設けられている。ただし、粉体吸引部140は、その内周壁部を粉体貯留槽131の周壁部に接触させるようにして設けられてもよい。
【0059】
粉体吸引部140においては、その上部に、複数の吸引口146が形成されている。吸引口146は、平面視で矩形状をなすとともに、横断面視において粉体吸引部140の内周壁部と上面部との角部分を切り欠いた態様で形成されている(
図7参照)。複数の吸引口146は、粉体吸引部140の内周壁部の湾曲形状に沿って、内周壁部の全体にわたって略等間隔で設けられている。
【0060】
粉体吸引部140は、粉体貯留槽131に対して、吸引路141の上端部147は上部円形開口部136の上端部148と略同等の高さとなるように配設している。本実施形態では、粉体吸引部140の吸引通路を形成する上面部の上面、つまり吸引口146の上側の開口端面と、粉体貯留槽131の周壁部における開口端面とが、同一平面上に位置するように、粉体吸引部140が設けられている。
【0061】
粉体吸引部140は、粉体貯留槽131の周囲において、粉体貯留槽131の周方向について互いに連続した態様で3箇所に設けられている。また、各粉体吸引部140は、粉体貯留槽131の周方向について、吸引路141に対する主吸引路142の配設側を共通としている。本実施形態では、各粉体吸引部140において、吸引路141に対して時計回りにおける前側に主吸引路142が設けられている。
【0062】
図3に示すように、本実施形態では、3つの粉体吸引部140は、粉体貯留槽131の周方向について、粉体貯留槽131の周壁部の一部の範囲(例えば50〜70°の角度範囲)を除いた残りの部分の全体をカバーするように配設されている。そして、例えば粉体貯留槽131の周方向について約8°間隔で等間隔に吸引口146が配置形成された構成において、粉体吸引部140の非配設部位から時計回り(右回り)の順に、8個の吸引口146を有する粉体吸引部140Aと、14個の吸引口146を有する粉体吸引部140Bと、12個の吸引口146を有する粉体吸引部140Cとの3つの粉体吸引部140が隣接配置されている。なお、隣り合う粉体吸引部140同士は、主吸引路142の第2の側壁部と吸引路141の端壁部とを合わせた状態で設けられており、隣り合う粉体吸引部140間は互いに非連通状態となっている。このように、上部円形開口部136の周方向について、粉体吸引部140の非配設部位を除いた部分を略3分割するように、3つの粉体吸引部140が上部円形開口部136の周縁に沿って配設されている。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る粉体塗布装置Aにおいては、粉体吸引部140により、粉体貯留槽131の上部円形開口部136には、粉体貯留槽131に前端が連通した状態で粉体貯留槽131の上部円形開口部136の略接線方向に飛散粉体の吸引路として吸引路141および主吸引路142が形成されている。
【0064】
このような構成によれば、ワークWの粉体塗布部100を粉体貯留槽131中の粉体Pに埋入して粉体塗布を行う際に粉体貯留槽131中の粉体Pが装置の周辺に飛散しても粉体貯留槽131の上部円形開口部136に吸引路が形成されているので、粉体貯留槽131の開口周縁から槽外に飛散しようとする粉体Pは、その直前の上部円形開口部136で吸引されることで槽外への飛散を防止できる。
【0065】
さらに、この吸引路を上部円形開口部136の接線方向に伸延することで飛散した粉体Pが粉体貯留槽131の上部で螺旋軌跡を形成し、この粉体Pの螺旋軌跡により粉体貯留槽131の中心に負圧を生起し、粉体貯留槽131の中心への向心力を生起することで槽外への粉体Pの飛散を可及的に抑制して槽外に飛散しようとする粉体量を低減できる。また、粉体貯留槽131の外部に飛散する粉体Pは螺旋軌跡の最外部から螺旋軌跡の接線方向に離脱するため、その接線方向に吸引路を備えることで粉体Pが容易に吸引路に引き込まれて装置の周囲に飛散する虞を低減できる。
【0066】
また、粉体吸引部140は粉体Pの吸引方向を上部円形開口部136の略接線方向にすると共に、上部円形開口部136を略3分割するように吸引路141を配設することで、粉体貯留槽131内の粉体Pに螺旋軌跡を形成することができる。粉体Pは、この螺旋軌跡の回転中心と外側との圧力差による向心力により粉体貯留槽131の外部に飛散することが抑制される。また、吸引路141の幅狭の通路は主吸引路142に滑らかに連結している。
【0067】
主吸引路142は、吸引路141との連結部より拡開形成されており、その終端下部に形成した平面視略円形の吸引開口部143の近傍でその幅員を狭くなるように構成している。このような形態とすることで主吸引路142は、複数の吸引口146,・・・,146から吸引される粉体Pに対する吸引力を適切なものとし、吸引路141及び主吸引路142で粉体Pが停滞することを抑制する。
【0068】
吸引開口部143は、吸引ホース144と連結しており、吸引ホース144の終端部に連結する粉体吸引機構145によって粉体Pを吸引可能としている。この粉体Pの吸引は、その吸引方向を吸引開口部143からの自然落下とすることで粉体吸引機構145による吸引力だけでなく粉体Pの自重による自然落下との相互作用により粉体Pを吸引し易い構成としている。
【0069】
また、吸引路141は、粉体貯留槽131側の上部に吸引口146を設けている。この吸引口146,・・・,146は、平面視略四角形状で上部円形開口部136の周縁に沿って複数設けられている。このように吸引口146,・・・,146を複数形成することで1つ1つの吸引開口を狭くして吸引力を向上し、粉体Pを効率よく吸引できるように構成している。
【0070】
また、本実施形態に係る粉体塗布装置Aは、吸引路141の上端部147は上部円形開口部136の上端部148と略同等の高さに設けることで粉体貯留槽131の上方に飛散する粉体Pを必要以上に吸引しないように構成している。つまり、上部円形開口部136の上端部148と、粉体吸引部140の開口端面である上端部147とを互いに略同一の高さとしている。
【0071】
このような構成によれば、粉体貯留槽131の上方に舞い上がり再び粉体貯留槽131に貯留される可能性のある粉体Pを積極的に吸引しないで粉体Pの歩留まりを向上できる。
【0072】
また、本実施形態に係る粉体塗布装置Aは、粉体Pを収納した粉体タンク111の下方にガイド筒112を介して粉体供給ケース121の始端を連通し、粉体供給ケース121の後端は粉体貯留槽131の上部円形開口部136に連通し、しかも、粉体タンク111と粉体供給ケース121とを連通したガイド筒112の周辺には粉体供給ケース121の供給孔122を閉塞する略漏斗状の飛散遮蔽体123を配設している。
【0073】
このような構成によれば、粉体タンク111からガイド筒112を介して粉体供給ケース121に落下供給された粉体Pが粉体供給ケース121に形成した供給孔122とガイド筒112との隙間からケースの外部に飛散する虞を可及的に低減することができる。また、粉体Pの飛散を防止する飛散遮蔽体123を略漏斗状とすることで供給孔122に配設した飛散遮蔽体123の外側面が供給孔122の内周面と当接して粉体Pの飛散を可及的に低減することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る粉体塗布装置Aは、粉体供給ケース121の終端供給口129は下方に指向するようにエルボ状に形成したという構成を備える。
【0075】
このような構成によれば、終端供給口129を水平状に形成した場合と比較して粉体Pが粉体貯留槽131の外部に飛散する蓋然性を可及的に低減できる。また、終端供給口129を粉体貯留槽131の粉体Pの粉体面P1に指向したため、粉体Pは粉体貯留槽131の粉体面P1に粉体山Mを形成し、終端供給口129から粉体貯留槽131の粉体面P1への粉体Pの落下距離を短くして、落下の衝撃により粉体Pが飛散する蓋然性を可及的に低減できる。また、粉体山Mの形状が山の頂部から裾にかけて緩やかな傾斜を形成しており、この傾斜面を上部より供給された粉体Pが転がり落ちることで落下時の衝撃を緩和して粉体Pが飛散する蓋然性を可及的に低減できる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る粉体塗布装置Aによれば、粉体タンク111と粉体供給ケース121とを連通したガイド筒112の周辺に粉体供給ケース121の供給孔122を閉塞する略漏斗状の飛散遮蔽体123を配設すると共に、粉体供給ケース121の終端供給口129を下方の粉体貯留槽131に対向するようにエルボ部124を備え、粉体供給ケース121の後端は粉体貯留槽131の上部円形開口部136に連通し、しかも、粉体貯留槽131の上部円形開口部136には、粉体貯留槽131の内部に前端が連通した状態で粉体貯留槽131の上部円形開口部136の周縁の略接線方向に飛散する粉体Pの吸引口146,・・・,146を複数形成することで、粉体塗布装置Aの外部に粉体Pが飛散する虞を可及的に防止できる。
【0077】
以上のように構成された粉体塗布装置AによりワークWに粉体Pを塗布する工程について説明する。
【0078】
まず、ワークWは、搬入口(図示せず)において、粉体Pの粉体塗布面W1側を上側として載置されている。載置状態のワークWは、搬送装置200の把持アーム210に連結した左右シリンダー機構を作動させることで、把持アーム210の把持爪211が当接する周面部W2から把持される。その後、ワークWは、把持アーム210に把持された状態で、搬送装置200の上部に設けた昇降機構220の動作により上空に持ち上げられる。
【0079】
次に、上空に持ち上げられたワークWは、搬送装置200の移動機構230により搬入口に隣接した予熱部に搬送される。
【0080】
次に、予熱部に搬送されたワークWは、上下ピストンロッド222を下方に駆動させることで降下し、ワークWを予熱するための予熱装置内に載置される。その後、ワークWは粉体塗布面W1を所定の温度(例えば約140度)まで加熱、昇温される。
【0081】
次に、加熱・昇温されたワークWは、搬送装置200の把持アーム210に連結した左右シリンダー機構を作動させることで把持され、移動機構230により、粉体貯留槽131の上部に搬送される。
【0082】
次に、ワークWは昇降機構220の上下ピストンロッド222を駆動することで降下され、ワークWの粉体塗布面W1を粉体貯留槽131内の粉体P内に粉体面P1から浸漬する。なお、本工程はワークWの溶接部に粉体Pを塗布する工程であり、粉体Pの塗布量に斑が生起しないように粉体貯留槽131内の粉体Pの粉体面P1に浸漬、引き上げる作動を5回繰り返す。
【0083】
次に、粉体Pを塗布されたワークWは昇降機構220の動作により上空に引き上げられ、その後、移動機構230により、粉体貯留部130の近傍に設けられた重量測定部(図示せず)に移動させられる。重量測定部では、粉体Pの塗布前後でのワークWの重量を比較することで粉体塗布面W1に所定の分量が塗布されているかを確認する。重量測定部において所定の分量の粉体PがワークWの粉体塗布面W1に塗布されていることを確認後、粉体Pの塗布作業を終了する。
【0084】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、実用新案登録請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。