【文献】
Victor ILISIE et al.,Improving PET Sensitivity and Resolution by Photon Interaction Sequence Timing Discrimination,IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference,2017年,https://ieeexpore.ieee.org/document/8532644
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1交線が存在し、且つ、前記第1および第2コンプトンコーンの少なくとも一方が前記同時計数の計測ラインに重なる場合、前記TOF情報と前記同時計数の計測ラインとからガンマ線発生位置を取得する、請求項1に記載のガンマ線発生位置の取得方法。
前記第1交線が存在しないと判定された場合、前記第2交点の有無を判定する前記工程と、前記散乱同時計数の計測ラインを算出する前記工程と、前記ガンマ線発生位置を取得する前記工程とは、実施されない、請求項1又は2に記載のガンマ線発生位置の取得方法。
前記第2交点が存在しないと判定された場合、前記散乱同時計数の計測ラインを算出する前記工程と、前記ガンマ線発生位置を取得する前記工程とは、実施されない、請求項1又は2に記載のガンマ線発生位置の取得方法。
前記ガンマ線発生位置に近い側に位置する前記シンチレータのコンプトン散乱比率は、前記ガンマ線発生位置から遠い側に位置する前記シンチレータのコンプトン散乱比率よりも高い、請求項6又は7に記載のPET装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記特許文献1においては、偶発同時計数及び散乱同時計数をノイズとして単に除去する。これに対して上記非特許文献1では、散乱同時計数のガンマ線発生位置を推定することによって実質的な感度向上を図り、これにより高精細な画像撮影の実現を図っている。しかしながら、上記非特許文献1に示される手法にてガンマ線発生位置を多数の候補から精度よく推定する場合、長い計算時間を要してしまう。
【0007】
本発明の一側面は、上記課題に鑑みてなされたものであり、短時間で高精細な画像撮影が可能なPET装置及びPET装置における散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るPET装置における散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法は、被写体の周囲に配置されると共に当該被写体を挟む一対の検出器によって、ガンマ線を検出する工程と、一対の検出器にて検出されるガンマ線の入射方向を第1および第2コンプトンコーンとして推定する工程と、一対の検出器にて検出されるガンマ線の同時計数情報を取得する工程と、同時計数情報に基づいた同時計数の計測ライン、およびガンマ線のエネルギー情報から、ガンマ線の散乱面を推定する工程と、第1および第2コンプトンコーンの表面同士が重なる第1交線の有無を判定する工程と、第1交線が存在し、且つ、第1および第2コンプトンコーンのいずれも同時計数の計測ラインに重ならない場合、第1交線および散乱面が重なる第2交点の有無を判定する工程と、第2交点が存在する場合、第2交点から散乱同時計数の計測ラインを算出し、散乱同時計数の計測ラインおよびガンマ線のTOF情報からガンマ線発生位置を取得する工程と、を備える。
【0009】
このPET装置の取得方法によれば、上記第2交点が存在する場合、散乱同時計数が、ガンマ線発生位置を取得するためのデータとして利用できる。これにより、全ての散乱同時計数を単にノイズとして除去する場合と比較して、検出器の感度が実質的に向上する。加えて、例えば上記第2交点が1点存在する場合、被検体の形状、線源分布等の複雑な条件を加味したモンテカルロシミュレーション等による計算を要することなく、直接計測される散乱同時計数の情報を用いてガンマ線発生位置を推定できる。したがって上記取得方法によれば、短時間で高精細な画像撮影が可能になる。
【0010】
第1交線が存在し、且つ、第1交線および同時計数の計測ラインが重なる場合、TOF情報と同時計数の計測ラインとからガンマ線発生位置を取得してもよい。この場合、真の同時計数が明確に選択できるので、より高精細な画像撮影が可能になる。
【0011】
第1交線が存在しないと判定された場合、第2交点の有無を判定する工程と、散乱同時計数の計測ラインを算出する工程と、ガンマ線発生位置を取得する工程とは、実施されなくてもよい。この場合、不要な偶発同時計数をノイズとして除去できるので、高精細な画像撮影が可能になる。
【0012】
第2交点が存在しないと判定された場合、散乱同時計数の計測ラインを算出する工程と、ガンマ線発生位置を取得する工程とは、実施されなくてもよい。この場合、不要な散乱同時計数をノイズとして除去できるので、高精細な画像撮影が可能になる。
【0013】
本発明の他の一側面に係るPET装置は、被写体の周囲に配置され、信号処理部を有する複数の検出器と、複数の検出器にて検出された情報に基づいてガンマ線発生位置を取得するデータ処理部と、を備え、信号処理部は、複数の検出器において被写体を挟む一対の検出器のそれぞれに入射されるガンマ線の入射方向を、第1および第2コンプトンコーンとして推定するコンプトンコーン推定部を備え、データ処理部は、一対の検出器にて検出されるガンマ線の同時計数情報を取得する同時計数取得部と、同時計数情報に基づいた同時計数の計測ラインおよびガンマ線のエネルギー情報に基づいて、ガンマ線の散乱面を推定する散乱面推定部と、第1および第2コンプトンコーンの表面同士が重なる第1交線の有無を判定する第1交線判定部と、第1交線が存在し、且つ、第1および第2コンプトンコーンのいずれも同時計数の計測ラインに重ならない場合、第1交線および散乱面が重なる第2交点の有無を判定する第2交点判定部と、第2交点が存在する場合、第2交点から散乱同時計数の計測ラインを算出する同時計数ライン算出部と、散乱同時計数の計測ラインおよびガンマ線のTOF情報からガンマ線発生位置を取得するガンマ線発生位置取得部と、を備える。
【0014】
このPET装置によれば、第2交点判定部にて第2交点が存在すると判定された場合、ガンマ線発生位置取得部は、ガンマ線発生位置を取得するためのデータとして散乱同時計数を利用できる。これにより、全ての散乱同時計数を単にノイズとして除去する場合と比較して、検出器の感度が実質的に向上する。加えて、例えば上記第2交点が1点存在すると判定された場合、被検体の形状、線源分布等の複雑な条件を加味したモンテカルロシミュレーション等による計算を要することなく、ガンマ線発生位置取得部は、散乱同時計数の情報を用いてガンマ線発生位置を推定できる。したがって上記PET装置によれば、短時間で高精細な画像撮影が可能になる。
【0015】
複数の検出器のそれぞれは、ガンマ線の入射方向において積層される複数のガンマ線検出部を有し、複数のガンマ線検出部のそれぞれは、シンチレータ及び光センサアレイを有してもよい。この場合、各検出器におけるガンマ線の位置分解能、時間分解能等の検出性能を向上できる。
【0016】
ガンマ線検出部に含まれるシンチレータの厚さは、被写体に近いほど薄くてもよい。この場合、高時間分解能性能に加えて、コンプトンコーン推定部によって推定されるコンプトンコーンの分解能を向上できる。
【0017】
シンチレータのそれぞれは、同一の材料から構成され、材料は、LSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶を含んでもよい。この場合、製造コストを低減しつつ、シンチレータにおけるガンマ線の感度を向上できる。
【0018】
ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータのコンプトン散乱比率は、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータのコンプトン散乱比率よりも高くてもよい。また、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータはLaBr
3:Ce結晶を含み、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータはLSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶を含んでもよい。この場合、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータにてコンプトン散乱比率を向上させ、且つ、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータにおけるガンマ線の感度を向上できる。
【0019】
シンチレータの厚さは、2mm以上5mm以下であってもよい。この場合、十分な同時計数タイミング分解能を得ることができる。加えて、ガンマ線の感度を確保すると共にコンプトンコーンを良好に推定できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、短時間で高精細な画像撮影が可能なPET装置及びPET装置における散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1(a)は、本実施形態のPET装置の概略図である。
図1(b)は、PET装置の検出器リングの概略図である。
図1(a)に示されるPET装置1は、被検体(被写体)Tから放出される放射線を検出する装置である。被検体Tは、例えば、陽電子放出核種(陽電子を放出する放射性同位元素)で標識された薬剤が投与された生物もしくは物体である。PET装置1によれば、検出した放射線に基づいて、複数のスライス位置において被検体Tの断層像を取得できる。
【0024】
PET装置1は、被検体Tが載置されるベッド(図示せず)と、断面円形状を呈する開口を有するガントリ2と、ガントリ2内の検出器リングで検出されたデータが転送されるデータ処理部3と、データ処理部3にて処理されたデータに基づいて画像を再構成する画像処理部4と、を備えている。
図1(b)に示されるように、PET装置1のガントリ2内の検出器リングにおいては、所定線L0を中心線とする円周上に、複数の放射線位置検出器(検出器)10がリング状に配置されている。検出器リングでは、隣り合う放射線位置検出器10同士は、互いに接触している。PET装置1にて被検体Tから放出されるガンマ線を検出するとき、被検体Tは、ガントリ2の開口内に位置している。このとき、複数の放射線位置検出器10は、被検体Tの周囲に配置されている。
【0025】
図2は、放射線位置検出器及び検出器信号処理部の構成図である。
図2に示される放射線位置検出器10は、入射されたガンマ線の入射位置、入射エネルギー、入射時刻及び入射方向を取得するためのセンサである。放射線位置検出器10は、DOI(Depth Of Interaction)技術を利用するガンマ線検出部11〜14と、ガンマ線検出部11〜14から送信される信号を処理する検出器信号処理部(信号処理部)SPと、を備えている。ガンマ線検出部11〜14は、入射されたガンマ線を検知して電気信号を生成する装置であり、ガンマ線の入射方向において互いに積層されている。ガンマ線検出部11が被検体Tに最も近い位置に設けられ、ガンマ線検出部14が被検体Tから最も遠い位置に設けられる。
図2においては、ガンマ線検出部11〜14が側面図として示されており、検出器信号処理部SPはブロック図として示されている。なお、以下ではガンマ線検出部11〜14が互いに積層される方向を、単に「積層方向」もしくは「ガンマ線の入射方向」とする。
【0026】
ガンマ線検出部11は、シンチレータ21aと、光センサアレイ22aと、プリント回路基板23aとを有する。
【0027】
シンチレータ21aは、ガンマ線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する部材であり、積層方向に直交する方向に沿って2次元に配置される複数のシンチレータ部(不図示)を備える。複数のシンチレータ部は、例えばマトリクス状に配置される。各シンチレータ部は、互いに物理的に分離してもよいし、レーザ加工処理によって互いに光学的に分離されてもよい。各シンチレータ部が互いに物理的に分離する場合、隣り合うシンチレータ部同士の間には遮光層が設けられてもよい。ガンマ線の感度を確保すると共にコンプトンコーンを良好に推定する観点から、シンチレータ21aの厚さは、例えば2mm以上である。また、十分な同時計数タイミング分解能(CTR:Coincidence Timing Resolution)を得る観点から、シンチレータ21aの厚さは、例えば5mm以下である。十分なCTRは、例えば100ps以下である。シンチレータ21aを構成する材料は、例えばLSO:Ce結晶、LYSO:Ce結晶、もしくはLaBr
3:Ce結晶等である。コスト及びガンマ線の感度の観点から、シンチレータ21aは、LSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶から構成されてもよい。良好なCTR及びコンプトン散乱比率の観点から、シンチレータ21aは、LaBr
3:Ce結晶から構成されてもよい。
【0028】
光センサアレイ22aは、シンチレータ21aにて発生したシンチレーション光を検知する部材であり、積層方向に直交する方向に沿って2次元に配置される複数の光センサ(不図示)を含む。各光センサは、シンチレータ21aの各シンチレータ部に対応して設けられる。本実施形態では、光センサアレイ22aは、MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)である。各センサのピッチは、例えば約1mm以上約4mm以下である。
【0029】
プリント回路基板23aは、光センサアレイ22aにて検知された光を電気信号として処理する部材である。プリント回路基板23aは、例えば増幅回路、コンバータ等を含む。プリント回路基板23aにて処理された電気信号を、配線W1を介して検出器信号処理部SPに送信する。プリント回路基板23aは、各光センサのカソードからの出力をまとめ、そのタイミングをピックオフしたデジタル信号(タイミングピックオフ信号)とし、検出器信号処理部SPに当該タイミングピックオフ信号を送信する。また、プリント回路基板23aは、各光センサのアノードからの出力を重心演算可能な4出力に変換されたアナログ信号(4chアナログ信号)とし、検出器信号処理部SPに当該4chアナログ信号を送信する。なお、配線W1は、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。
【0030】
ガンマ線検出部12〜14は、ガンマ線検出部11と同様に、対応するシンチレータ21b〜21dと、対応する光センサアレイ22b〜22dと、対応するプリント回路基板23b〜23dとを有する。シンチレータ21b〜21dは、シンチレータ21aと同様の構成を有する。光センサアレイ22b〜22dは、光センサアレイ22aと同様の構成を有する。プリント回路基板23b〜23dは、プリント回路基板23aと同様の構成を有し、対応する配線W2〜W4を介して検出器信号処理部SPに接続されている。
【0031】
ガンマ線検出部11〜14において、シンチレータ21a〜21dの厚さは、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。もしくは、シンチレータ21a〜21dのうち一部の厚さが、他と異なってもよい。シンチレータ21a〜21dの厚さが互いに異なる場合、被検体Tに近いシンチレータほど薄くてもよい。すなわち、ガンマ線検出部11〜14において、シンチレータ21aの厚さが最も薄く、シンチレータ21dの厚さが最も厚くてもよい。シンチレータの厚さが薄い場合、良好なTOF情報を得ることができる。加えて、PET装置1の仕様に合わせて、放射線位置検出器10の感度と時間分解能性能とを調整できる。なお、シンチレータ21b〜21dの厚さは、5mmより大きくてもよい。また、シンチレータ21a〜21dは、互いに同一の材料から構成されてもよいし、互いに異なる材料から構成されてもよい。また、一部のシンチレータが他のシンチレータと異なる材料から構成されてもよい。シンチレータ21a〜21dが互いに同一の材料から構成される場合、当該材料は、例えばLSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶によって構成される。シンチレータ21a〜21dを構成する材料が互いに異なる場合、もしくは一部のシンチレータが他のシンチレータと異なる材料から構成される場合、例えばガンマ線発生位置(例えば、被検体Tの所定部分)に近い側に位置するシンチレータのコンプトン散乱比率は、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータのコンプトン散乱比率よりも高くしてもよい。具体的には、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータはLaBr
3:Ce結晶から構成され、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータはLSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶から構成されてもよい。この場合、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータにてコンプトン散乱比率を向上させ、且つ、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータにおけるガンマ線の感度を向上できる。なお本実施形態では、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータはシンチレータ21a,21bであり、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータはシンチレータ21c,21dであるが、これに限られない。ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータはシンチレータ21aのみであってもよいし、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータはシンチレータ21dのみであってもよい。
【0032】
検出器信号処理部SPは、ガンマ線検出部11〜14にて生成された信号から、ガンマ線の入射位置情報、ガンマ線の入射エネルギー情報、ガンマ線の入射時刻情報、ガンマ線の入射角度情報を取得(算出)する信号処理回路である。以下では、
図2の検出器信号処理部SPの機能的構成について説明する。
図2に示される検出器信号処理部SPは、入射位置取得部SP1と,エネルギー取得部SP2と、入射時刻取得部SP3と、コンプトンコーン推定部SP4とを備える。
【0033】
入射位置取得部SP1は、放射線位置検出器10に入射されたガンマ線の入射位置情報を取得する。入射位置取得部SP1は、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれからガンマ線の入射位置情報を取得する。入射位置取得部SP1は、例えば、プリント回路基板23a〜23dから受信する4chアナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号を用いて重心位置演算をする。これにより、入射位置取得部SP1は、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれに入射したガンマ線の入射位置情報を取得する。この入射位置情報は、例えば、シンチレータ21a〜21dにて検知したシンチレータセグメントの位置情報に相当する。
【0034】
エネルギー取得部SP2は、放射線位置検出器10に入射されたガンマ線のエネルギー情報を取得する。エネルギー取得部SP2は、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれからガンマ線のエネルギー情報を取得する。このとき、エネルギー取得部SP2は、各ガンマ線検出部11〜14にて取得したエネルギーの相対値が一致する補正を実施する。エネルギー取得部SP2は、例えば、プリント回路基板23a〜23dから受信する4chアナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号の総和を取得することでガンマ線のエネルギー情報を取得する。
【0035】
入射時刻取得部SP3は、放射線位置検出器10に入射されたガンマ線の入射時刻情報を取得する。入射時刻取得部SP3は、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれからガンマ線の入射時刻情報を取得する。このとき、入射時刻取得部SP3は、各ガンマ線検出部11〜14の位置の違い、シンチレータ21a〜21dの厚さの違い、及び配線W1〜W4の長さの違い等に応じた遅延時間の補正を実施する。入射時刻取得部SP3は、例えばTDC(Time-to-Digital Converter)回路を用いて、プリント回路基板23a〜23dから受信するタイミングピックオフ信号をガンマ線の入射時刻データに変換する。
【0036】
コンプトンコーン推定部SP4は、各放射線位置検出器10に入射されたガンマ線の入射方向をコンプトンコーンとして推定する。コンプトンコーン推定部SP4は、コンプトン散乱によって電子に加わるエネルギーと、散乱されたガンマ線のエネルギーと、コンプトン散乱が発生した場所と、散乱されたガンマ線が光電吸収された場所との情報に基づいて、放射線位置検出器10に入射されたガンマ線の入射方向を、角度(散乱角度)を持つ円錐面であるコンプトンコーンに推定する。推定されるコンプトンコーンの角度分解能は、例えば5度以下である。
【0037】
コンプトンコーンとは、ガンマ線の1光子が飛来する方向を示す領域である。光子のコンプトン散乱は、光子が電子と弾性散乱を起こす現象である。光子のエネルギーが高い場合(例えば、光子のエネルギーが511keVである場合)、前方散乱が支配的である。このため本実施形態では、ガンマ線が検出された検出器のうち被検体Tに最も近い検出器にてコンプトン散乱が発生した場所をFIP(First Interaction Point)とし、当該FIPを用いてコンプトンコーンが推定される。FIPは、コンプトン散乱における反跳電子及び散乱ガンマ線のエネルギーと、散乱角度との関係から算出してもよい。
【0038】
データ処理部3は、放射線位置検出器10にて生成された信号から、被検体Tにおけるガンマ線の発生箇所情報(ガンマ線発生位置)を取得(算出)する信号処理回路である。データ処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニットである。このようなデータ処理部3では、例えばROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。
【0039】
次に、
図3を用いながらデータ処理部3の機能的構成について説明する。
図3は、データ処理部を示すブロック図である。
図3に示されるデータ処理部3は、同時計数取得部31と、散乱面推定部32と、第1交線判定部33と、第2交点判定部34と、同時計数ライン算出部35と、ガンマ線発生位置取得部36とを備える。
【0040】
同時計数取得部31は、各放射線位置検出器10にて検出されたガンマ線の同時計数情報を取得する。同時計数情報は、所定の時間幅内に2つの放射線位置検出器10がガンマ線を検出した事象(イベント)を示す情報である。このため、同時計数取得部31は、まず、各放射線位置検出器10から送信された電気信号から、各放射線位置検出器10が、同時もしくは所定の時間幅内にガンマ線を検出したか否かを判定する。上記判定がポジティブであった場合、各放射線位置検出器10から送信されるガンマ線の情報を取得する。そして、同時計数取得部31は、取得した同時計数されたガンマ線の情報に基づいて、同時計数の計測ラインLOR1(後述する
図4を参照)を算出する。なお、所定の時間幅は、例えば8×10
−9秒以内である。
【0041】
散乱面推定部32は、同時計数情報に基づいて算出された同時計数の計測ラインと、放射線位置検出器10に入射されたガンマ線のエネルギー情報とに基づいて、ガンマ線の散乱面を推定する。散乱面推定部32は、例えば、被検体Tを挟む一対の放射線位置検出器10にて取得されたガンマ線のエネルギー情報と、同時計数の計測ラインLOR1とに基づいて、ガンマ線の散乱面SS(後述する
図4を参照)を推定する。具体例としては、散乱面推定部32は、まず、散乱されなかったガンマ線を検知した一方の放射線位置検出器10から取得されるエネルギーEaと、任意の位置(散乱位置)にて1回散乱されたガンマ線を検知した他方の放射線位置検出器10から取得されるエネルギーEbとから、散乱角度θabを算出する。そして、一対の放射線位置検出器10の検出位置に沿って散乱角度θabが成立する全ての位置を描くことによって、長尺楕円体表面である散乱面SSを推定する。散乱面SSは、
図4における破線で示した部分に相当する。散乱角度θabは、式「θab=cos
−1(2−Ea/Eb)」によって示される。エネルギーEaは電子の静止質量エネルギーである511keVに相当する。エネルギーEbは、例えば、エネルギーEaの1/3よりも大きく、エネルギーEaよりも小さい。
【0042】
第1交線判定部33は、推定されたコンプトンコーンの表面同士が重なる交線(第1交線)の有無を判定する。第1交線判定部33は、例えば、被検体Tを挟む一対の放射線位置検出器10にて推定された、第1コンプトンコーンCCA及び第2コンプトンコーンCCB(後述する
図4を参照)の表面同士が重なる第1交線CL1(後述する
図4を参照)の有無を判定する。第1交線は、線状を呈してもよいし、点状を呈してもよい。加えて、この第1交線あるいは第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBのいずれかが同時計数の計測ラインと一致する場合、当該同時計数ラインは、散乱ではない真の同時計数ラインとされる。この場合、上記計測ラインとTOF情報とによってガンマ線発生位置が求められる。
【0043】
第2交点判定部34は、上記第1交線が存在し、且つ、各コンプトンコーンのいずれも同時計数の計測ラインに重ならない場合、上記第1交線および上記散乱面が重なる第2交点の有無を判定する。第2交点判定部34は、例えば、第1交線CL1が存在し、且つ、第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBのいずれも同時計数の計測ラインLOR1に重ならない場合、第1交線CL1および散乱面SSが重なる第2交点CP2(後述する
図4を参照)の有無を判定する。この第2交点は、コンプトン散乱点として推定される。第2交点判定部34は、第1交線が存在しない場合、上記第2交点の有無を判定しない。この場合、データ処理部3は、一対の放射線位置検出器10にて検知されたガンマ線を偶発同時計数と判定する。もしくは、第2交点判定部34は、第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBの少なくとも一方が同時計数の計測ラインLOR1に重なる場合、上記第2交点の有無を判定しない。この場合、同時計数取得部31にて取得された同時計数を真の同時計数とする。本実施形態では、第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBの少なくとも一方が計測ラインLOR1に重なるとは、計測ラインLOR1の全体が第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBの少なくとも一方に重なるとしてもよい。
【0044】
同時計数ライン算出部35は、上記第2交点が存在すると判定された場合、第2交点から散乱同時計数の計測ラインを算出する。同時計数ライン算出部35は、例えば、第2交点CP2が存在する場合、第2交点CP2から散乱同時計数の計測ラインLOR2(後述する
図4を参照)を算出する。計測ラインLOR2は、例えば、放射線位置検出器10と第2交点とを結ぶ直線に相当する。第2交点が存在しない場合、同時計数ライン算出部35は、散乱同時計数の計測ラインを算出しない。この場合、データ処理部3は、散乱同時計数をノイズとして扱う。なお、第2交点が数点存在すると判定された場合、同時計数ライン算出部35は、各第2交点の散乱同時計数の計測ラインを算出する。
【0045】
ガンマ線発生位置取得部36は、散乱同時計数の計測ラインおよびガンマ線のTOF情報から散乱同時計数のガンマ線発生位置を取得する。ガンマ線発生位置取得部36は、例えば、算出された散乱同時計数の計測ラインLOR2と、ガンマ線のTOF情報とからガンマ線発生位置AP(後述する
図4を参照)を取得する。また、ガンマ線発生位置取得部36は、例えば第1交線CL1が存在し、且つ、第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBの少なくとも一方が同時計数の計測ラインLOR1に重なる場合、同時計数の計測ラインLOR1とTOF情報とからガンマ線発生位置を取得する。ガンマ線発生位置取得部36は、第2交点が存在しないと判定された場合、散乱同時計数を用いてガンマ線発生位置を取得しない。この場合もまた、データ処理部3は、散乱同時計数をノイズとして扱う。なお、第2交点が数点存在すると判定された場合、ガンマ線発生位置取得部36は、例えば各第2交点の散乱同時計数の計測ラインと、上記TOF情報とを用いたモンテカルロシミュレーション等によって、ガンマ線発生位置を推定する。
【0046】
次に、
図4〜
図6を参照しながら、本実施形態に係るPET装置1を用いた散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法の一例について説明する。
図4は、散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法を説明するための模式図である。
図5は、
図4のα−α線に沿った断面図である。
図6は、散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法のフローチャートである。以下では、
図4に示されるように、一対の放射線位置検出器10A,10Bを用いた場合における散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法を説明する。
図4に示される放射線位置検出器10A,10Bは、所定線L0(
図1(b)を参照)に対して点対称に配置されておらず、且つ、被検体Tを挟むように配置されている。
図4においては、放射線位置検出器10A,10B以外の放射線位置検出器は、省略されている。
【0047】
図4〜
図6に示されるように、放射線位置検出器10A,10Bのそれぞれに入射されたガンマ線の入射位置、入射エネルギーおよび入射時刻を取得すると共に、当該ガンマ線の入射方向を第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBとして推定する(ステップS1)。ステップS1では、まず、放射線位置検出器10A,10Bのそれぞれに入射されたガンマ線を検出し、各電気信号(例えば、4chアナログ信号、タイミングピックオフ信号等)を生成する。続いて、入射位置取得部SP1、エネルギー取得部SP2及び入射時刻取得部SP3は、放射線位置検出器10A,10Bのそれぞれにおいて入射されたガンマ線の入射位置、入射エネルギー、及び入射時刻を示す情報を、上記電気信号から取得する。続いて、コンプトンコーン推定部SP4は、取得したガンマ線のエネルギーと、入射位置とから、ガンマ線の入射方向を第1コンプトンコーンCCA及び第2コンプトンコーンCCBとして推定する。
【0048】
ここで、
図7を参照しながら、上記ステップS1について詳細に説明する。
図7は、
図6に示されるステップS1の具体例を示すフローチャートである。
図7に示されるように、まず、放射線位置検出器10Aにガンマ線が入射される(ステップS101)。続いて、放射線位置検出器10Aが備えるガンマ線検出部11〜14のそれぞれにおいて、入射されたガンマ線の入射位置、入射エネルギー、及び入射時刻を検出する(ステップS102a〜S102d)。続いて、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれにおいて検出されたガンマ線の入射エネルギーと入射時刻とを補正する(ステップS103a〜S103d)。続いて、検出器信号処理部SPは、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれの入射時刻が同時であるか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104における「入射時刻が同時」とは、完全な同時に限られなくてもよい。例えば、1×10
−10秒程度の時間幅が存在してもよい。
【0049】
続いて、各入射時刻が同時であると判定された場合(ステップS104:YES)、ガンマ線検出部11〜14にて生成される信号を用いて第1コンプトンコーンCCAを算出する(ステップS105)。各入射時刻が同時であると判定されるイベントは、ガンマ線検出部11〜14に跨がるコンプトン散乱であり、例えば2個のイベントが取得される。また、ステップS105では、ステップS104で同時判定されたそれぞれのイベントのエネルギー情報から、エネルギーの総和を算出する。加えて、コンプトンコーン推定部SP4は、ガンマ線検出部11〜14から受信したガンマ線の入射位置情報及びエネルギー情報から、FIP(First Interaction Point)を算出する。この算出されたFIPと、散乱されたガンマ線が光電吸収された場所との情報に基づいて、放射線位置検出器10Aに入射されたガンマ線の入射方向の推定結果を第1コンプトンコーンCCAとして算出する。
【0050】
続いて、放射線位置検出器10Aで取得されたエネルギーが有効か否かを判定する(ステップS106)。ステップS106では、算出されたエネルギーの総和がエネルギーウィンドウに基づいて有効か否かを判定する。次に、FIP、エネルギー総和情報、入射時刻情報および推定された第1コンプトンコーンCCA等の情報は、デジタルデータに変換される(ステップS107)。ステップS107では、上記情報は、例えばバッファ及びシリアルデータ変換回路に送られる。そして、変換されたデータは、データ処理部3に送信され記録される(ステップS108)。
【0051】
これに対して、各入射時刻が同時ではないと判定された場合(ステップS104:NO)、ステップS105を実施せずにステップS106を実施する。このときステップS106では、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれから取得されたエネルギーが、エネルギーウィンドウに基づいて有効か否かを判定する。同時でないと判定されたイベントは、例えば、ガンマ線検出部11〜14のいずれかひとつで光電吸収されたイベントである。ステップS106にてエネルギーが有効であると判定される場合、上記ステップS107,S108が実施される。これにより、有効とされたエネルギーのデータが、入射位置情報及び入射時刻情報と共にデータ処理部3に送信され記録される。
【0052】
放射線位置検出器10Bにおいても、
図7に示されるフローチャートに沿って、算出されたFIP、入射位置情報、エネルギーの総和、入射時刻情報並びに推定された第2コンプトンコーンCCB等の情報は、データとして記録される。
【0053】
図4〜
図6に戻って、上記ステップS1後、放射線位置検出器10A,10Bにて検出されるガンマ線の同時計数情報を取得する(ステップS2)。ステップS2では、同時計数取得部31が、放射線位置検出器10A,10Bから送信された電気信号から、放射線位置検出器10A,10Bによるガンマ線の検出が、同時計数を構成するか否かを判定する。同時計数情報が取得される場合、当該同時計数情報に基づいて同時計数の計測ラインLOR1を算出する。また、放射線位置検出器10A,10Bの入射時刻の差分であるガンマ線のTOF情報も取得する。同時計数情報が取得されない場合、放射線位置検出器10A,10Bにて検出されるガンマ線は、同一のガンマ線発生位置から発生した放射線ではないと判定される。この場合、以下にて説明するステップS3〜S9を実施しなくてもよい。
【0054】
次に、同時計数が取得された放射線位置検出器10A,10Bの情報に、第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBの存在の有無を判定する(ステップS3)。第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBが存在する場合(ステップS3:YES)、後述するステップS4を実施する。第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBの少なくともいずれかが存在しない場合(ステップS3:NO)、放射線位置検出器10A,10Bに入射されたガンマ線は、通常のPET装置で取得される偶発および散乱同時計数を含んだ同時計数と判定される(ステップE1)。この場合、偶発同時計数、散乱同時計数の識別はなされずに終了するので、後述するステップS4〜S9は実施されない。
【0055】
次に、同時計数の計測ラインLOR1および放射線位置検出器10A,10Bが取得したエネルギーから、ガンマ線の散乱面SSを推定する(ステップS4)。ステップS4では、放射線位置検出器10Aから取得されるエネルギーと、放射線位置検出器10Bから取得されるエネルギーとから、散乱角度を算出する。そして、放射線位置検出器10A,10Bにおける入射位置に沿って上記散乱角度が成立する全ての位置を描くことによって、長尺楕円体表面である散乱面SS(
図4における破線で示される部分に相当)を推定する。
【0056】
上記ステップS4とは別に、推定された第1コンプトンコーンCCA及び第2コンプトンコーンCCBの表面同士の重なる第1交線CL1の有無を判定する(ステップS5)。ステップS5にて第1交線CL1が存在すると判定される場合(ステップS5:YES)、後述するステップS6を実施する。一方、ステップS5にて第1交線CL1が存在しないと判定される場合(ステップS5:NO)、放射線位置検出器10A,10Bに入射されたガンマ線は、偶発同時計数と判定される(ステップE2)。この場合、ガンマ線発生位置の取得はなされずに終了するので、後述するステップS6〜S9は実施されない。なお、ステップS4,S5は、同一のタイミングにて実施されてもよいし、異なるタイミングにて実施されてもよい。例えば、ステップS4は、ステップS5の実施後に実施されてもよい。
【0057】
次に、第1コンプトンコーンCCAおよび第2コンプトンコーンCCBの少なくとも一方が同時計数の計測ラインLOR1に重なるか否かを判定する(ステップS6)。第1コンプトンコーンCCAおよび第2コンプトンコーンCCBの少なくとも一方が、同時計数の計測ラインLOR1に重なると判定される場合(ステップS6:YES)、ステップS2にて算出された同時計数を真の同時計数として取得する(ステップE3)。ステップE3後、ガンマ線発生位置取得部36は、放射線位置検出器10A,10BのTOF情報と、同時計数の計測ラインLOR1とからガンマ線発生位置を取得する。このため、後述するステップS7〜S9は実施されない。
【0058】
第1コンプトンコーンCCAおよび第2コンプトンコーンCCBのいずれも同時計数の計測ラインLOR1に重ならない場合(ステップS6:NO)、第1交線CL1および散乱面SSが重なる第2交点CP2の有無を判定する(ステップS7)。第2交点CP2が存在しないと判定される場合(ステップS7:NO)、ガンマ線のいずれかは複数回散乱したと判定される。この場合、データ処理部3は、散乱同時計数をノイズと判定し(ステップE4)、後述するステップS8,S9は実施されない。なお、ガンマ線が被写体内で複数回散乱して放射線位置検出器10に到達するイベントの多くは、複数回の散乱により入射ガンマ線のエネルギーが低くなっている。エネルギーの低い入射ガンマ線はエネルギーウインドウ判定(上記ステップS106)で無効とされるため、ガンマ線が1回散乱して放射線位置検出器10に到達するイベントと比較してその割合は低い。このため、ステップS7にて第2交点CP2が存在しないと判定される事象もまたその割合は低い。したがって、後述するステップS8,S9を含むステップS1〜S9は、ガンマ線発生位置APを推定する方法として有用と言える。
【0059】
第2交点CP2が存在すると判定される場合(ステップS7:YES)、第2交点CP2をガンマ線の一方が散乱した位置(散乱位置)と判定する(ステップS8)。ステップS8では、ガンマ線のいずれかが1回のみ散乱したと判定される。また、同時計数ライン算出部35は、第2交点CP2から散乱同時計数の計測ラインLOR2を算出する。
【0060】
次に、散乱同時計数の計測ラインLOR2およびガンマ線のTOF情報から散乱同時計数のガンマ線発生位置APを取得する(ステップS9)。ステップS9では、ガンマ線発生位置取得部36が、散乱同時計数の計測ラインLOR2と、ガンマ線のTOF情報とからガンマ線発生位置APを取得する。以上のステップを複数の放射線位置検出器10のそれぞれに実施することによって、画像処理部4は、取得されたガンマ線発生位置の情報から断層画像を形成できる。画像処理部4は、データ処理部3にて有効とされた散乱同時計数と、ステップE3にて得られた真の同時計数と、ステップE1にて得られた散乱および偶発同時計数を含んだ同時計数とに基づいて画像再構成を実施することによって、断層画像を取得する。
【0061】
以上に説明した本実施形態に係るPET装置1における散乱同時計数のガンマ線発生位置の取得方法による作用効果について説明する。本実施形態では、単に第1コンプトンコーンCCAと第2コンプトンコーンCCBとの表面同士が重なる第1交線CL1を取得するだけではなく、ガンマ線の散乱面SSと第1交線CL1との交点である第2交点CP2を取得する。そして、この第2交点CP2をガンマ線のコンプトン散乱点としている。このため、第2交点CP2が存在する場合、散乱同時計数が、線源発生位置APを取得するためのデータとして利用できる。これにより、全ての散乱同時計数を単にノイズとして除去する場合と比較して、放射線位置検出器10の感度が実質的に向上する。加えて、例えば被検体の形状、及び線源分布等の複雑な条件を加味したモンテカルロシミュレーション等による計算を要することなく、直接計測された散乱同時計数の情報を用いてガンマ線発生位置APを推定できる。したがって本実施形態によれば、短時間で高精細な画像撮影が可能になる。
【0062】
本実施形態では、第1交線CL1が存在し、且つ、第1交線CL1および同時計数の計測ラインLOR1が重なる場合、TOF情報と同時計数の計測ラインLOR1とからガンマ線発生位置を取得してもよい。
【0063】
本実施形態では、第1交線CL1が存在しないと判定された場合、第2交点CP2の有無の判定と、散乱同時計数の計測ラインLOR2の算出と、散乱同時計数の計測ラインLOR2およびTOF情報からのガンマ線発生位置APの取得とは、実施されなくてもよい。この場合、不要な偶発同時計数及び推定できない散乱同時計数をノイズとして除去できるので、高精細な画像撮影が可能になる。
【0064】
本実施形態では、第2交点CP2が存在しないと判定された場合、散乱同時計数の計測ラインLOR2の算出と、散乱同時計数の計測ラインLOR2およびTOF情報からのガンマ線発生位置APの取得とは、実施されなくてもよい。この場合、不要な散乱同時計数をノイズとして除去できるので、高精細な画像撮影が可能になる。
【0065】
本実施形態では、複数の放射線位置検出器10のそれぞれは、ガンマ線の入射方向において積層されるガンマ線検出部11〜14を有し、ガンマ線検出部11〜14のそれぞれは、シンチレータ21a〜21d及び光センサアレイ22a〜22dを有してもよい。この場合、各放射線位置検出器10におけるガンマ線の検出性能を向上できる。
【0066】
本実施形態では、ガンマ線検出部11〜14に含まれるシンチレータ21a〜21dの厚さは、被検体Tに近いほど薄くてもよい。この場合、高時間分解能性能を有する放射線位置検出器10が実現可能になる。加えて、コンプトンコーン推定部SP4によって推定されるコンプトンコーンの分解能を向上できる。
【0067】
本実施形態では、シンチレータ21a〜21dのそれぞれは、同一の材料から構成され、当該材料はLSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶を含んでもよい。この場合、製造コストを低減しつつ、シンチレータにおけるガンマ線の感度を向上できる。
【0068】
本実施形態では、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータのコンプトン散乱比率は、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータのコンプトン散乱比率よりも高くてもよい。また、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータはLaBr
3:Ce結晶を含み、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータはLSO:Ce結晶もしくはLYSO:Ce結晶を含んでもよい。この場合、ガンマ線発生位置に近い側に位置するシンチレータにてコンプトン散乱比率を向上させ、且つ、ガンマ線発生位置から遠い側に位置するシンチレータにおけるガンマ線の感度を向上できる。
【0069】
本実施形態では、シンチレータ21a〜21dの厚さは、2mm以上5mm以下であってもよい。この場合、十分な同時計数タイミング分解能を得ることができる。加えて、ガンマ線の感度を確保すると共に第1及び第2コンプトンコーンCCA,CCBを良好に推定できる。
【0070】
以上、本発明の一側面を上記実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明の一側面は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。例えば上記実施形態において、第1及び第2コンプトンコーンの重なりが1点の交点である場合、当該交点を散乱点と推定できる。この場合、第2交点を求めなくてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、ガンマ線のコンプトン散乱点である第2交点が1点に定められているが、これに限られない。第1交線及び散乱面の第2交点(すなわち、コンプトン散乱点)は、数点(例えば2点等)存在してもよい。この場合、例えば得られた各第2交点を候補とした、上記非特許文献1に示されるようなモンテカルロシミュレーションを実施し、ガンマ線発生位置を推定してもよい。これにより、ガンマ線発生位置の候補を予め小数に絞った上で、上記モンテカルロシミュレーションを実施できる。このため、例えば上記モンテカルロシミュレーション等を単に実施し、多数の候補からガンマ線発生位置を推定する場合と比較して低負荷かつ短時間にてガンマ線発生位置を推定できる。したがって、第2交点が数点存在する場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。なお、第2交点が数点存在する場合、例えば上記ステップS8にて各第2交点の散乱同時計数の計測ラインを算出する。続いて、上記ステップS9にて、ガンマ線発生位置取得部36が、例えば各第2交点の散乱同時計数の計測ラインと、上記TOF情報とを用いたモンテカルロシミュレーション等によって、ガンマ線発生位置を推定してもよい。
【0072】
また、上記実施形態にて、ステップS4は必ず実施されなくてもよい。例えば、ステップS5後にステップE2が実施される場合、及び、ステップS6後にステップE3が実施される場合、ステップS4は実施されなくてもよい。
【0073】
本実施形態では、放射線位置検出器は、4つのガンマ線検出部を備えるが、これに限られない。ガンマ線の感度向上の観点から、放射線位置検出器は、ガンマ線検出部を5つ以上有してもよい。また、コストの観点から、放射線位置検出器は、3つ以下のガンマ線検出部を有してもよい。