(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1減衰極は、前記有効帯域よりも高周波側の帯域に含まれ、前記第2減衰極は、前記非相反性線路の特性により前記第1減衰極が移動したものである請求項1から3の何れか一項に記載の非相反性フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の非相反性フィルタについて詳細を説明する前に、比較のため従来技術に係るファラデー効果を利用したアイソレータ100について、
図22を参照して説明する。アイソレータ100は、例えば、赤外線領域の直線偏光光源を用いる光通信用途に用いられる。
【0009】
図13に示すアイソレータ100は、ファラデー旋光子101を2枚の偏光子102及び103の間に配置して構成される。ファラデー旋光子101、偏光子102、103は何れも板状の部材であり、互いの面を対向させ平行に配置される。以下の
図13に関する説明において、x方向及びy方向は、ファラデー旋光子101、偏光子102、103の面に沿う方向とする。z方向は、x方向およびy方向に垂直な方向とする。x方向及びy方向は互いに直交するものとする。磁場Hをz方向に印加した状態で、ファラデー旋光子101は、ファラデー効果によりz方向に進行する直線偏光の偏光面を45度回転させる。偏光子102は、y方向に透過軸を有する。偏光子103は、y方向に対してファラデー旋光子101による旋光方向に45度傾けた方向に透過軸を有する。
【0010】
光通信用途などで光源として多くの場合に用いられる半導体レーザーは、直線偏光を有する。アイソレータ100の偏光子102側からy方向に偏光した直線偏光を入射させると、入射光は、y方向に透過軸を有する偏光子102を透過する。偏光子102を透過した入射光は、磁場Hが印加されたファラデー旋光子101により偏光方向を45度回転される。更に、ファラデー旋光子101を透過した入射光は、透過軸がy軸に対して45度傾けられた偏光子103を透過する。
【0011】
一方、偏光子103側からは戻り光が入射しうる。戻り光は通常ランダムな偏光方向を有しうるが、偏光子103により、y軸方向に45度傾いた直線偏光成分のみが透過する。偏光子103を透過した戻り光は、ファラデー旋光子101により、偏光方向が45度回転し、y方向に垂直なx方向となる。このため、ファラデー旋光子101を透過した戻り光は、偏光子102を通過できない。
【0012】
このように、ファラデー旋光子101により45度の旋光角を得られることが、アイソレータ100が戻り光を遮断しアイソレータとして機能するために必須の要件である。赤外線領域では、このファラデー旋光子101には、磁性ガーネットが用いられている。
【0013】
一方、可視光領域では、磁性ガーネットは不透過である。このため、可視光領域で用いられるアイソレータでは、磁性ガラスを用いて、赤外光の場合と同様の効果を持たせている。しかし、磁性ガーネットに比べると磁性ガラスは、ヴェルデ定数が小さいため、45度の旋光角を得るためにアイソレータのサイズが大型化し、高価になる。入射光の偏光性に依存しない偏光無依存アイソレータも市販されているが、これは、ファラデー旋光子に加え2枚の複屈折結晶を用いて、往路と復路との光の経路が変化するように構成され、非常に高価である。
【0014】
マイクロ波領域では、特許文献1に記載されるように、非相反性効果を得る為に磁性フェライトを用いることが一般的である。
【0015】
いずれの場合も、アイソレータは、挿入損失を低減する為に、透過率が高く、かつ、非相反性効果が得られる素材を利用して構成することが必要とされる。
【0016】
本開示におけるアイソレータは、非相反性フィルタの一形態である。本開示の非相反性フィルタは、45度の旋光角を必要とせず、且つ、磁性体材料の透過率が直接非相反性フィルタの透過特性を決定しない。このため、本開示の非相反性フィルタは、非相反性効果を得るための磁性体材料の選択肢が拡大し、小型且つ安価に製造することが可能となる。また、基板実装可能な素材より非相反性材料を選択できるようになるため、導波路構造が容易に作製可能になる。
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0018】
(等価回路の基本構成)
図1に示すように、本開示のアイソレータに係る等価回路10は、第1点11と第2点12との間に並列に接続されたフィルタ20と非相反性線路30とを含む。等価回路10は、第1分岐点13と第2分岐点14との間で2つの並行する線路に分岐し、分岐した一方の線路にフィルタが接続され、他方の線路に非相反性線路30が接続されている。以下では、第1点11から第2点12に向けかう信号の経路を往路、第2点12から第1点11に向かう信号の経路を復路と呼ぶ。本開示のアイソレータは、等価回路10に従い製作することが可能である。
【0019】
フィルタ20は多段の共振器よりなり、フィルタ20全体としては、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、又は、ハイパスフィルタなどを形成している。フィルタ20に対して、並列線路を設けることで、等価回路10の通過特性に減衰極が形成される。このとき、並列線路を非相反性線路30とすることで、非相反性線路30の特性に応じて、往路で現れる減衰極(以下、「第1減衰極」とする)の周波数と、復路で現れる減衰極(以下、「第2減衰極」とする)の周波数とを異ならせることができる。したがって、等価回路10は、往路を進む信号と復路を進む信号とで異なるフィルタ特性を有しうる。往路を進む信号に関するフィルタ特性を第1フィルタ特性とし、復路を進む信号に関するフィルタ特性を第2フィルタ特性とする。
【0020】
往路ではフィルタ20の通過帯域に含まれ第1減衰極の影響を受けずに信号が透過する帯域であって、復路では第2減衰極により信号が減衰する帯域を有効帯域とする。第1フィルタ特性では、等価回路10が形成する通過帯域に有効帯域が含まれ、通過帯域外に第1減衰極が現れる。第2フィルタ特性では、第1フィルタ特性の通過帯域内に第2減衰極が現れる。これにより、有効帯域において、第2フィルタ特性における透過率が、第1フィルタ特性における透過率よりも低くなる。第2フィルタ特性における透過率が十分低いとき、有効帯域で、等価回路10に対応する非相反性フィルタは、アイソレータとして機能することになる。
【0021】
等価回路10において、非相反性線路30は、フィルタ20の通過特性に減衰極を形成するためにのみ利用される。このため、第1点11と第2点12との間を通る信号を主としてフィルタ20の接続された線路を通し、非相反性線路30を通る信号を少なくすることができる。このことは、等価回路10に対応するアイソレータにおいて、電磁波のエネルギーの大部分をフィルタ20側に分配し、非相反性線路30での損失の影響を小さくすることができることを意味する。
【0022】
等価回路10に対応するアイソレータにおいて、入射する電磁波が円偏波であれば、等価回路10の非相反性線路30が有する非相反性は、往路と復路との屈折率の違いとして具現化されうる。入射する電磁波が直線偏波であれば、非相反性はファラデー回転角の違いとして具現化されうる。これらの特性を利用することで、上述の往路と復路の差異を発生させることが可能となる。
【0023】
(等価回路の第1例)
図2は、非相反性線路30に損失が無いものとした第1例に係るアイソレータの等価回路10aである。等価回路10aのフィルタ20は、複数段のLC共振器21a〜21l(以下、適宜LC共振器21とする)がキャパシタ22a〜22k(以下、適宜キャパシタ22とする)を挟んで並列に配置されたバンドパスフィルタである。
図3に示すように、各LC共振器21は、キャパシタ23及びインダクタ24が並列に接続され、隣り合うLC共振器21とキャパシタ22により電気的に結合されている。また、非相反性線路30として、無損失位相回路31がフィルタ20に対して並列に配置されている。
【0024】
等価回路10aでは、入出力インピーダンスを50Ω、無損失位相回路31のインピーダンスを220Ω、往路での移相を98°、復路での移相を125°と設定した。LC共振器21は、所望の共振周波数になるように設計した。キャパシタ22のキャパシタンスは、LC共振器21間の結合量が所望の数値になるように設計した。これらの数値の求め方は、一般的にフィルタ理論から導出できることが知られている(例えば、小西良弘著、「マイクロ波技術講座」、ケイラボ出版、2001年を参照)。本実施例の場合には、LC共振器21の共振周波数を1.01GHz、帯域幅を0.71GHzと設定して各素子値を求めた。各LC共振器21間のキャパシタ22のキャパシタンスは種々の設定が可能であるが、例えば、全てのキャパシタ22のキャパシタンスを、2.26pFと設定できる。
【0025】
上記設計例が示すように、等価回路10aの特性インピーダンス50Ωに対して、無損失位相回路31の特性インピーダンスを220Ωとしてよい。このため、等価回路10aに基づくアイソレータを通る電磁波のエネルギーの大部分は、フィルタ20側を通ることが分かる。
【0026】
図4は、より一般的な設計例として、シミュレーションにより得られた規格化周波数におけるフィルタ特性を示す。
図4において、破線は、往路の規格化周波数に対する挿入損失を示す。
図4において、実線は、復路の規格化周波数に対する挿入損失を示す。すなわち、破線は、等価回路10aの往路における第1フィルタ特性を示している。また、実線は等価回路10aの復路における第2フィルタ特性を示している。往路では、破線で示す挿入損失が小さい通過帯域Bpを有する。往路における第1減衰極A1は、通過帯域Bp外の周波数を有する。
図4に示すように、往路と復路とでは形成される減衰極の周波数が異なる。復路における第2減衰極A2は、往路のフィルタ特性における第1減衰極A1の通過帯域Bp側に位置する。このときのアイソレータとして使用できる有効帯域Beは、一点鎖線で示されるように、規格化周波数軸において0.87から0.94の範囲となる。
【0027】
規格化周波数とは、フィルタ設計において一般的に使用されているものであり、フィルタの通過帯域幅を−1から1とし、フィルタの中心周波数を0としたものである。このようなフィルタから、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタなどを、周波数変換することで自由に設計することができる。例えば、バンドパスフィルタの場合には、次式により周波数変換することで規格化周波数Fから任意の実周波数fへ変換できることが知られている。
【0028】
F=A(f/f0−f0/f) (1)
ただし、f0は任意のフィルタの中心周波数、fは実周波数、Aは比帯域幅である。規格化周波数Fから任意の実周波数fへの変換は、数式(1)を実周波数fについて解いて求めることで行うことができる。
【0029】
なお、誘電体中での移相量[°]は、比誘電率ε、比透磁率μ、及び誘電体の長さdを用いて、
√ε√μ×d/λ×360°
で定義される。θ=98°及び125°という移相量の差は例えばフェライトなどを用いることで容易に生成することができる。特許文献1の
図1によれば、バイアス磁場を39.5kA/m(500Oe)、フェライトの飽和磁化を85mT(850G)、磁気共鳴半値幅を158A/m(2Oe)としたとき、周波数およそ0.5GHzにおいて透磁率の最大値と最小値との間に透磁率の最大値の60%の差を設けることができることが知られている。上述の透磁率の差は、移相量に直せば25%強の差となる。つまり、適当な長さの上記フェライトを用いれば、98°及び125°という移相量の差を設けることができる。
【0030】
図5は、有効帯域Beを含む
図4の一部を横軸方向に拡大した図である。
図6は、
図5の横軸を波長に変換した図である。一点鎖線で示す波長領域は、有効帯域Beに対応する。
図6において、有効帯域Beの波長範囲は、約0.215mから約0.22mである。この領域で、破線で示す往路の挿入損失は、−1dB以下である。また、この領域で、実線で示す復路での挿入損失は、−20dB以上となっている。往路と復路とで27°分の位相変化量を与える非相反性線路30を形成することで、有効帯域Beにおいて、一般的な光アイソレータの要求仕様である、往路での挿入損失を−1dB以下に抑え、復路での損失を−20dB以上確保できることが分かる。
【0031】
(等価回路の第2例)
第1例の非相反性線路30に用いられる素材は、例えば、鉄(Fe)及びコバルト(Co)などの磁性体金属を含む素材から選択してよい。しかし、赤外領域で使用可能な磁性体材料は、磁性ガーネットを除けば、材料による赤外光の吸収が大きい。そこで、
図7に示す第2例の等価回路10bでは、
図3に示した等価回路10aにおいて、非相反性線路30に損失があると想定し、無損失位相回路31に代えて損失を有する損失位相回路32を設けた。なお、等価回路10bの素子値は
図3の対応する構成要素の素子値と同じである。このときtanδの値に対する損失を計算した。tanδは、誘電体内でのエネルギーの吸収量に対応するパラメータである。例えば、損失位相回路32でtanδ=0.0125としたときの規格化周波数に対する挿入損失を
図8に示す。
図4と同様に、往路の第1フィルタ特性において、通過帯域Bp外の高周波数側に第1減衰極A1が現れ、復路の第2フィルタ特性において、第2減衰極A2が第1フィルタ特性における第1減衰極A1の通過帯域Bp側に現れる。これにより、通過帯域Bp内に、往路において挿入損失が−1dB以下であり、復路において挿入損失が−20dB以上となる有効帯域Beが存在する。
【0032】
図9は
図8の有効帯域Beを含む周波数帯域を横方向に拡大した図となっている。
図5に示した無損失位相回路31を用いた場合と比較して、損失位相回路32を用いたときは、復路で同等の周波数帯域幅の有効帯域Beにおいて−20dB以上の十分な挿入損失が得られる。したがって、等価回路10bに対応するアイソレータは、実用上問題が無く使用できるものと考えられる。
【0033】
図10は、tanδの変化に対する、有効帯域Be内で損失が最大となる周波数(
図9においてfm)での損失量の変化を示すグラフである。
図10に示されるように、tanδが0.01まで損失量はほとんど変化せず、約−1を維持する。tanδが0.1の場合でも、損失は−2dB未満である。したがって、非相反性線路30に用いられる素材に吸収がある場合も、十分な透過特性を持つアイソレータを実現することができる。
【0034】
(等価回路の第3例)
なお、
図2では、フィルタ20を含む線路と無損失位相回路31を含む線路とは結線されているが、キャパシタ又はインダクタを介在して接続してよい。さらに、フィルタ20への入出力もキャパシタ又はインダクタが介在してよい。例えば、
図11に示す第3例の等価回路10cでは、フィルタ20と無損失位相回路31とは、インダクタ33a及び33bを介して接続される。フィルタ20と無損失位相回路31との間のインダクタ33a、33bのインダクタンスは、L=0.1nHである。この第3例の設計によれば、等価回路10cの入出力インピーダンス50Ωに対して非相反性線路30の特性インピーダンスは210Ωでよい。このため、電磁波のエネルギーの大部分は、フィルタ20側を通る。また、往路及び復路の移相量は、θ=95°、及び125°とした。より一般的な設計として規格化周波数におけるフィルタ特性を
図12に示す。
図12においても、往路の第1フィルタ特性が第1減衰極A1を有し、復路の第2フィルタ特性が第1減衰極A1と異なる周波数に第2減衰極A2を有する。これにより、アイソレータとして機能する有効帯域Beが生成される。
図12の一部の横軸方向の拡大図を
図13に示す。
【0035】
(等価回路の第4例)
一般に、減衰極を形成するには、フィルタの途中の共振器間の飛び越し結合でも可能であることが知られており、非相反性線路30をフィルタ20の両端以外のLC共振器21から分岐させてもよい。
図14に示す第4例の等価回路10dでは、非相反性線路30は、フィルタ20の両端から2番目のLC共振器21(21b,21k)から分岐している。非相反性線路30としては、無損失位相回路31が用いられる。この等価回路10dのフィルタ20と非相反性線路30との間のインダクタ33a、33bは、L=0.1nHである。この第4例の設計によれば、等価回路10dの入出力インピーダンス50Ωに対して非相反性線路30の特性インピーダンスは350Ωでよいため、電磁波のエネルギーの大部分がフィルタ20側を通る。また、往路及び復路の移相量は、θ=80°、及び140°とした。より一般的な設計として、規格化周波数におけるフィルタ特性を
図15に示す。また、
図15の一部の横軸方向の拡大図を
図16に示す。
【0036】
同等の減衰極を生成するための、飛び越し結合の大きさは、結合されるLC共振器21の間が離れているほど、小さく済むことが知られている。第4例の等価回路10dは、第1例から第3例の等価回路10a〜10cと比べ、往路と復路との移相量の差を大きくして、第1例から第3例の等価回路10a〜10cと同等の減衰極を生成している。等価回路10dに対応するアイソレータで、移相量の差を大きくするためには、非相反性素子の厚さを厚くしなくてはならない。これは、素子の大型化、高価格化につながる。したがって、非相反性線路30は、フィルタ20の入力側端部及び出力側端部と接続して、フィルタ20の全体に対して並列に接続することが好ましい。飛び越し結合の大きさが小さくてよいということは、少ない位相差で必要とされる減衰極を実現可能であることを意味する。
【0037】
また、フィルタ20の入力側端部と出力側端部との間に非相反性線路30を設けるとともに、フィルタ20を構成する一部のLC共振器21にのみ並列に、他の非相反性線路を接続することも可能である。この場合、減衰極が同時に2つ発生することが知られている。
【0038】
(等価回路の第5例)
図17は、LC共振器21間の結合をキャパシタ22a〜22kからインダクタ25a〜25kへ変更した第5例の等価回路10eを示す。無損失位相回路31とフィルタ20とは、キャパシタ34a及び34bを介して接続される。第5例の等価回路10eのフィルタ20と無損失位相回路31間のキャパシタンスは、C=0.2pFである。この設計例によれば、等価回路10eの入出力インピーダンス50Ωに対して、非相反性線路30の特性インピーダンスは520Ωでよい。このため、等価回路10eに対応するアイソレータの電磁波のエネルギーの大部分はフィルタ20側を通る。また、移相量は、往路θ=45°、復路θ=59°とした。
図18は、より一般的な設計として規格化周波数におけるフィルタ特性を示す。
図19は、
図18の一部の横軸方向への拡大図を示す。前述の第1例から第4例と比較すると、往路と復路とでの移相量の差が小さくなっている。より少ない非相反性線路30で、有効帯域Beを生成可能であることが分かる。
【0039】
上記等価回路10、10a〜10eにおいて、フィルタ20と非相反性線路30とを通るエネルギー分配として、大部分のエネルギーがフィルタ20側を通る。これにより、非相反性線路30は、フィルタ20の減衰極の形成のためにのみ利用され、等価回路10に対する非相反性線路30の損失の影響が小さくなる。異なるインピーダンスZ1、Z2を有する二つの線路を接続したときの反射率は、次式で表せることが知られている。
【0041】
従って、等価回路10の入出力インピーダンスをZ0、フィルタ20のインピーダンスZf、非相反性線路30のインピーダンスをZrとすると、次式が成立することが好適である。
【0043】
(等価回路に対応するアイソレータ)
図20は、
図1に示す等価回路10に対応するアイソレータ50の概略構成例を示す。等価回路10は、等価回路中の信号により電磁波の挙動を表すものである。アイソレータ50は、第1伝搬路51、第2伝搬路52、フィルタ53を含む第1分岐路54、非相反性材料55を含む第2分岐路56を含む。第1伝搬路51は、第1分合波部57で、第1分岐路54及び第2分岐路56と接続される。第1分岐路54及び第2分岐路56は、第2分合波部58で第2伝搬路52に接続される。第1伝搬路51の第1分合波部57の反対側の端部は、第1端部59となっている。第2伝搬路52の第2分合波部58の反対側の端部は、第2端部60となっている。
【0044】
第1伝搬路51、第2伝搬路52、第1分岐路54及び第2分岐路56は、種々の波長の電磁波が通る経路である。電磁波には、マイクロ波、赤外線、可視光を含む。フィルタ53、非相反性材料55、第1端部59及び第2端部60は、それぞれ、
図1の等価回路10の、フィルタ20、非相反性線路30、第1点11及び第2点12に対応する。
【0045】
アイソレータ50は、フィルタ特性について所定の要件を充足する
図1に示した等価回路10で表される限り、種々の構成をとることが可能である。
【0046】
例えば、第1伝搬路51、第2伝搬路52、第1分岐路54及び第2分岐路56は、マイクロ波を伝搬する導波管、誘電体線路、赤外線及び可視光を伝搬する光導波路、光学結晶内の光路、並びに、自由空間、等を含む。導波管は、方形導波管、円形導波管等の中空導波管を含む。光導波路は、光ファイバ、平板光導波路、基板上に設けた導波路を含む。フィルタ53としては、伝搬する電磁波の波長に応じ、ストリップラインなどの平面フィルタ、導波管フィルタ、誘電体共振器フィルタ、メタルメッシュフィルタ、金属薄膜フィルタ、誘電体多層膜フィルタ、光学ガラスフィルタ、フォトニック結晶共振器を用いて構成したフィルタ等を含む。低周波数帯においては、集中定数フィルタを使用しうる。また、SAWフィルタなど表面波フィルタも使用しうる。非相反性材料55は、電磁波を往路と復路とで特性を異ならせるものならば種々の材料を使用することができる。例えば、非相反性材料55は、磁性ガーネット、フェライト、鉄、コバルト等の磁性体を含む。第1分合波部57及び第2分合波部58としては、伝搬する電磁波の波長に応じ、種々の分波器及び合波器を採用しうる。第1分合波部57及び第2分合波部58には、T分岐導波管、Y分岐導波管、光ファイバカプラ、ビームスプリッタ、ハーフミラー等を含む。アイソレータ50を伝搬される電磁波は、シングルモード及びマルチモードの電磁波(光)を含みうる。アイソレータ50を伝搬される電磁波は、赤外線及び可視光の場合、コヒーレント光及びインコヒーレント光を含む。
【0047】
上述の非相反性材料55についてさらに具体的に説明する。従来のアイソレータには、概ね磁性ガーネットやフェライトが用いられているが、本発明は、例えば以下のような材料を用いても実現可能である。学術論文(Kobayashi, N. et al. Optically Transparent Ferromagnetic Nanogranular Films with Tunable Transmittance. Sci. Rep. 6, 34227; doi: 10.1038/srep34227 (2016).)では、ナノグラニュラー材料と呼ばれる鉄、コバルトの合金微粒子により、強磁性体を発現することが知られている。上記論文によると、RFスパッタリング装置による蒸着により、成膜できるため、本発明において、導波路を形成する場合、良く知られた手法により、容易に非相反性線路を形成する事ができる。また学術雑誌(PHYSICAL REVIEW APPLIED 7, 024006 (2017))では、チタン酸ストロンチウムの一部をFeで置換した薄膜において、強磁性を発現する事が報告されている。この薄膜は、PLD(pulsed laser deposition)法により作製され、単位吸収量辺りのファラデー回転角は大きく、本発明において非相反性線路に用いた場合、非相反性線路部における吸収を考慮せずに実現可能である。
【0048】
アイソレータ50は、等価回路10により表すことができる。上述のように、等価回路10は、第1点11から第2点12に向けて進む信号に関する第1フィルタ特性と、第2点12から第1点11に向けて進む信号に関する第2フィルタ特性とを有する。第1フィルタ特性は、所定の有効帯域が含まれる通過帯域を形成し、この通過帯域外に第1減衰極を有する。第2フィルタ特性は、第1フィルタ特性における第1減衰極の通過帯域側に、第2減衰極を有し、有効帯域において、第1フィルタ特性における透過率よりも低い透過率で前記信号を透過させる。このため、等価回路10により表されるアイソレータ50は、第1端部59から第2端部60に向かう電磁波を透過させる。また、アイソレータ50は、第2端部60から第1端部59に向かう電磁波を減衰させる。
【0049】
さらに、上記ではアイソレータ50は、電磁波を対象とするものとしたが、
図1の等価回路10で表せる限り、電気回路に適用することも可能である。
【0050】
本開示の特徴は、減衰極の周波数を往路と復路との間で移動させ、復路においてフィルタの通過特性の少なくとも一部を機能させなくすることにある。減衰極は、原理的には、往路におけるフィルタの通過帯域の低周波数側及び高周波数側の何れにも設けることができる。ただし、好適には、高周波域における減衰極を利用した方が、フィルタ特性に影響を与えやすい。
図21は、シミュレーションにより計算された往路(上図)と復路(下図)との透過及び反射を表す図である。
図21において、実線は透過を示し、破線は反射を示している。1.5GHz付近の高周波数側では、透過特性が大きく変化している。一方、0.7GHz付近の低周波数側では、透過特性の変化が少ない。したがって、通過帯域の高周波数側に含まれる減衰極を、非相反性線路30の特性により移動させる方が、低周波数側の減衰極を移動させるよりも、フィルタの特性を変化させ透過率を低下させる効果が大きい。フィルタは、周波数変換の数式(1)からも分かるように、周波数に対してログスケールに変換されうる。このため、フィルタの中心周波数に対して高周波側の帯域の方が引き伸ばされる形となる。よって、減衰極の動きに対しても低周波側よりも高周波側で影響度が大きく、高周波側を使用した方が、少ない位相差で済むこととなる。
【0051】
以上説明したように、本開示のアイソレータ50によれば、45度の旋光角を必要とせず、且つ、非相反性材料55の透過率が直接アイソレータ50の透過特性を決定しない。このため、本開示のアイソレータ50は、非相反性効果を得るための非相反性材料55の選択肢が拡大し、安価に製造することが可能となる。また、基板実装可能な素材より非相反性材料55を選択できるようになるため、導波路構造も容易に作製可能になる。さらに、損失の大きい非相反性材料55ではなく、フィルタ53側を電磁波の大部分が通るので、アイソレータ50の往路での損失を抑制し透過率を高くすることができる。
【0052】
図1の等価回路10によって表される本開示のアイソレータ50の構成は、復路の電磁波を遮断するのではなく、設計により往路よりも低い所定の透過率で透過させるようにすることもできる。すなわち、本開示は、往路と復路とのフィルタ特性が異なる非相反性フィルタとして実施することが可能である。本開示のアイソレータ50は、本開示の非相反性フィルタの一形態とみなしうる。
【0053】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態及び実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形及び変更が可能である。例えば、実施形態及び実施例に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。