特許第6986520号(P6986520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986520
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】コーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/00 20060101AFI20211213BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20211213BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20211213BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20211213BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20211213BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20211213BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20211213BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 303A
   B32B37/14 Z
   C09D5/00 D
   C09D7/61
   C09D7/63
   C09D7/65
   C09D201/00
【請求項の数】48
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-560161(P2018-560161)
(86)(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公表番号】特表2019-520970(P2019-520970A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】AU2017050448
(87)【国際公開番号】WO2017197448
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】2016901812
(32)【優先日】2016年5月16日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】505132312
【氏名又は名称】ブルースコープ・スティール・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLUESCOPE STEEL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】シェイン・エイ・マクローリン
(72)【発明者】
【氏名】ビンビン・シ
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092444(JP,A)
【文献】 特開平06−313278(JP,A)
【文献】 特開2007−317632(JP,A)
【文献】 特開2004−018887(JP,A)
【文献】 特表2015−511994(JP,A)
【文献】 特表平11−509257(JP,A)
【文献】 特開2003−166079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C09D 1/00−201/10
C23C 22/00−22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)低表面エネルギー成分およびイオン成分を有する表面偏析種(SSS)を含む製品を提供する工程;および
(b)該製品の活性化表面を1つ以上のポリイオン種を含む表面変性剤を含有する液体で処理する工程
を含み、
活性化表面を形成するために該SSSを該製品の外側表面に偏析し、
該ポリイオン種を、イオン交換法により、該活性化表面に引き付け、かつ該活性化表面上に付着させることを特徴とする、イオン交換によって製品をコーティングする方法。
【請求項2】
(a)低表面エネルギー成分およびイオン成分を有する表面偏析種(SSS)を含む製品を提供する工程;
(b)該製品の活性化表面を1つ以上のポリイオン種を含む表面変性剤を含有する液体で処理する工程;および
(c)超親水性層を乾燥してコーティングを形成する工程
を含み、
活性化表面を形成するために該SSSを該製品の外側表面に偏析し、
該ポリイオン種を、イオン交換法により、該活性化表面に引き付け、かつ該活性化表面上に付着させて、その上に超親水性層を形成することを特徴とする、イオン交換による製品をコーティングする方法。
【請求項3】
前記製品が塗料層を含み、前記SSSが該塗料層中に提供される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記塗料がまだ液体である時に前記SSSを前記塗料に加え、次いで塗料層の表面に偏析させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記SSSの低表面エネルギー成分が、シロキサン誘導体、長鎖アルキル基、分岐構造体、ポリエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドオリゴマー型またはアルキレンオキシドポリマー型のノニオン性界面活性剤、フルオロカーボン或いはデンドリマーの1つ以上を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記低表面エネルギー成分が、アルコキシシランなどのオルガノシラン誘導体である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記低表面エネルギー成分が、トリアルコキシシランである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記SSSのイオン成分が、移動性添加剤対イオンに関連して、前記低表面エネルギー成分に共有結合した有機カチオンから構成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記カチオンが、アンモニウムイオンを含、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記カチオンが、第四級アンモニウムイオンである、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記SSSのイオン成分が、アニオンから構成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
前記アニオンが、低表面エネルギー基の一部分を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記低表面エネルギー基が、長鎖アルキル基である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記SSSが、有機カチオンの塩、または有機カチオンの塩の前駆体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項15】
前記有機カチオンの塩が、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムイオン、またはチオウロニウムカチオンを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記有機カチオンの塩が、低電荷遮蔽性を有する第四級アンモニウムカチオン(QAS)を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記SSSが、N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド、N‐(トリメトキシシリル)プロピル‐テトラデシルジメチル‐アンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、N‐(3‐トリメトキシシリルエチル)ベンジル‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、Silquat AO(親水性)、Silquat Di‐10(親水性)およびSilquat 3150(疎水性)の1つ以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記表面変性剤が、ラテックス、シリカなどの金属酸化物または非金属酸化物、イオン性分散剤の使用によりまたはエマルジョンとして懸濁状態で保持された材料、或いは可溶性ポリイオン性有機ポリマーのなどの静電安定化コロイド懸濁液の1つ以上を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項19】
前記表面変性剤が対応する移動相対イオンに関連して表面変性イオン性材料を含み、更に該表面変性イオン性材料が前記液体中に溶解されるか、または静電安定化により前記液体中で懸濁状態で保持される、請求項1または2記載の方法。
【請求項20】
前記表面変性剤が、官能基化シリカコロイドを含むシリカコロイド;様々なサイズのシリカの混合物;官能基化シリカとポリマーラテックスとの混合物;官能基化ポリマーラテックスおよびその混合物;層状複水酸化物;フィロシリケート、グラフェンオキシド;エレクトロステリック分散剤を使用して水中に懸濁させた粒子;導電性ポリマーおよびシクロデキストリンの1つ以上を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
前記表面変性剤が、シリカコロイドを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記表面変性剤が、官能基化シリカコロイドを含む、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
前記シリカコロイドが5nm以上および100nmより大きいサイズを有するシリカ粒子を含有する、請求項20〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記SSSが、少なくとも0.5重量%の前記塗料中の濃度を有する、請求項4記載の方法。
【請求項25】
前記SSSが、0.5〜10重量%の前記塗料中の濃度を有する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記SSSが、0.5〜5重量%の前記塗料中の濃度を有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記SSSが、2〜5重量%の前記塗料中の濃度を有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記シリカコロイドが、少なくとも0.05重量%の液体中の濃度を有する、請求項20〜23のいずれか1項記載の方法
【請求項29】
前記シリカコロイドが、少なくとも0.25重量%の液体中の濃度を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記シリカコロイドが、少なくとも0.5重量%の液体中の濃度を有する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
液体が、10以下のpHを有する、請求項20〜23または28〜30のいずれか1項記載の方法
【請求項32】
前記pHが9以下である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記pHが7以下である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記液体が、塩基性のpHを有する、請求項31または32記載の方法。
【請求項35】
工程(b)において、液体のイオン強度を調整する、請求項20〜23または28〜34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記表面変性剤が、少なくとも0.05重量%の濃度で含まれるスメクチックフィロシリケートである、請求項20記載の方法。
【請求項37】
前記表面変性剤が、少なくとも0.4重量%の濃度で含まれるスメクチックフィロシリケートである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
工程(b)を、単一パスで行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項39】
前記製品が、鋼である、請求項1または2記載の方法。
【請求項40】
前記製品が、鋼コイルである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記塗料が、ポリエステル‐メラミンベースの熱硬化塗料系である、請求項3または4記載の方法。
【請求項42】
前記表面変性剤が、合成スメクチックフィロシリケートクレーの水性懸濁液を含む、請求項20記載の方法。
【請求項43】
前記合成スメクチックフィロシリケートクレーが、少なくとも0.5重量%の濃度を有するLaponiteである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
コーティングした製品の水接触角が、30°未満である、請求項1または2記載の方法。
【請求項45】
コーティングした製品の水接触角が、25°未満である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
コーティングした製品の水接触角が、20°未満である、請求項44記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜46のいずれか1項記載の方法によって形成されたコーティングした製品。
【請求項48】
(a)低表面エネルギー成分およびイオン成分を有する表面偏析種を含む製品を提供する工程;および
(b)該製品の活性化表面を、表面変性イオン性材料を含む表面変性剤を含有する液体で処理する工程
を含み、
活性化表面を形成するために該表面偏析種を該製品の外側表面に偏析し、
該表面変性イオン性材料を、イオン交換法により、該活性化表面に引き付け、かつ該活性化表面上に付着させることを特徴とする、イオン交換によって製品をコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イオン交換法によって基材をコーティングする方法を開示する。上記方法は、基材表面を活性化するための表面偏析種の利用に基づくものであり、上記基材表面は次いで表面変性剤で処理されて、上記基材上にコーティングを成形する。上記方法は、予め塗装した製品のためのコーティング方法の形を取ってもよく、または上記表面偏析種を上記製品表面に塗布する工程を含んでもよい。本開示は、本方法によって製造されたコーティングされた製品にまで及ぶ。本開示はまた、コーティングされた製品を製造するための組成物にまで及ぶ。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、複数の官能基を提供することが可能である材料を有することが望ましい。バルク材料によって、不透明性、機械的強度、色などの一定の特性を付与する。複合材料に個々の特性を付与する材料の積層構造を提供することによって、押出ポリマーに複数の特性を付与してもよい。これらは、複雑な共押出構造であり、包装および接着積層などのポリマーフィルム用途に大きく限定される。これらの場合には、表面特性とは、最も外側のポリマー層のものである。このような多層アプローチは、コイルコーティングを含む塗料に対して、それほど実用的ではない。熱硬化性コイルコーティングには、10μm以上の厚いカラーコートによって覆われた5〜10μmの薄いプライマー層を含んでもよい。ほとんどのコーティング施設は、単1つのライン通過で2つのコーティングを塗布することができる。時には、第3の塗料層を塗布してもよいが、複数のライン通過によって機会損失費用のために法外な経済的ペナルティをもたらし、通常は実行することを回避する。共押出の場合のように、表面特性は最外層のものである。
【0003】
バルクポリマーまたは塗料マトリックス中に添加剤を組み込むことによって、更なる機能的特性を導入してもよい。これは、色、UV透過性および熱反射率などの特性を付与する顔料、またはバルクの機械的特性を変化させる充填剤の形態であってもよい。しかし、バルク添加剤のアプローチは、材料の質量に関連しない表面特性に対して効率的ではない。例えば、銀含有ガラス粒子を添加することによって抗菌性を付与することができるが、ガラスのほとんどは、バルクフィルムに埋め込まれたままであるため、銀イオンを利用しにくい。
【0004】
材料特性を変更するための1つのアプローチは、表面を変性することである。大部分または完全に表面組成の関数である望ましい特性の例としては、これらに限定されないが、硬度、靭性、耐摩耗性、耐UV性、目標レベルの表面反射率、電気特性、他の材料に対する強化された接着性、自己洗浄性、潤滑性、水濡れ性、疎水性、疎油性、耐汚れ性、抗菌作用および微生物の耐沈降性が挙げられる。
【0005】
理想的には、これらの特性は、バルク材料の表面上に薄い機能層を形成することにより導入することができる。しかしながら、これらの市販の製品の表面を変性するために使用する多くの方法があるが、それらはそれぞれ、複雑であり、多額の費用がかかり、および/または塗布に限定されるという1つ以上の問題を有する。
【0006】
ほとんどの塗料やポリマーの表面は、化学的に不活性である傾向があるため、変性することは困難である。それらは、多くの場合、水性製品で濡らすことが困難であり、他の材料に対する接着性が劣るという程度に疎水性である。溶媒の濡れはより容易であるが、ポリマーおよび塗料は、通常、有機材料を吸収し、時には既存の表面特性を損なう。加えて、溶媒の使用は、多くの場合、揮発性有機汚染物質の排出に寄与する。界面活性剤を、水性処理剤の濡れ性を向上するために使用してもよいが、必要な界面活性剤の量は高くなる傾向があり、それらは多くの場合、その特性を変更するための機能性処理剤と相互作用して、マイクロメートルスケールでの表面の均一な濡れは、いつも最初には達成されないか、または乾燥工程、特に粗い表面での乾燥工程によって維持される。概して、ピーク部はコーティングされるとしてもあまり十分にはコーティングされない限り、処理化学物質は低い個所に蓄積する。これは、膜の厚さの良好な制御によるナノスケールでの完全な被覆を必要とする特性のために許容できない。
【0007】
疎水性物質の低い表面エネルギーおよびそれによる他の材料と相互作用する能力が劣るにより、結果として、他の材料との接着相互作用が劣る。これらの問題の結果として、簡単な方法でポリマーおよび塗料の表面を変性すること、および現在の表面特性を維持することが困難であることもある。
【0008】
これらの問題は、界面化学を変更して表面に極性官能基を導入することによって解消してもよい。コロナ処理、火炎処理、プラズマエッチングおよびクロム酸酸化は、例えば、印刷およびラミネーションの目的のために、表面の接着性を向上させるために有効であることもあるが、それらの使用はこれらの領域に大きく限定される。これらの処理は、以下の欠点がある:
・変性を実施するために更なる工程が必要であること。
・環境に応じて界面エネルギーを最小化するために、表面上のポリマー/塗料の再配向および再配置する能力により、処理剤の寿命を妥協することができる。
・これらの酸化処理によって導入された官能基の性質は、フリーラジカル連鎖分解工程の開始位置として作用することにより、ポリマー/塗料の耐久性を低下させることができる。例えば、上記酸化工程の結果として導入されるケトンなどの発色団は、UV光を吸収し、別の安定性ポリマー炭化水素系におけるフリーラジカル分解工程を開始することが知られている。
【0009】
クロム酸エッチングの更なる欠点は、クロム酸の毒性並びに表面との相互作用の攻撃的性質および制御されていない性質である。
【0010】
潜在的な代替法としては、「交互積層(layer‐by‐layer)」コーティングまたは「LbL」コーティングとして知られている、表面へのポリマーまたは粒子の静電引力によって操作されるコーティング法である。LbL法の利点は、使用することができる材料の種類および基材上に付与することができる表面特性に関して汎用性の高いものであり、そして上記コーティングは、ナノメートルスケールで精密かつ制御可能である。LbLコーティング法は、少なくとも3つ、しかしながら典型的には、20以上もの多くの工程で進行し、上記方法の各段階での濯ぎ工程および乾燥工程を必要とする。従って、非常に遅く、複雑であるため、高い速度の、広い表面積の市販の材料の製造とは明らかに適合しない。
【0011】
表面に静電引力を提供する薬剤は、通常、ポリエチレンイミンなどの後塗り(post‐applied)ポリマーである。このような方法は、後塗り材料で表面を均一にコーティングする能力に依存するので、コーティングの寿命は、この吸収した層の接着性によって制限される。潜在的な代替法としては、バルク添加剤としての活性化剤を上記ポリマーに組み込むことである。しかしながら、これは、薬剤がポリマーのバルク全体にわたって分配されるような材料の非効率的で多額の費用のかかる使用である。また、材料の主要な構成要素になることによって、現場性能の要件に不可欠である物理的特性および耐久性を含む、製品の特性を変更する。
【0012】
従って、克服し、あるいは少なくとも、従来技術の1つ以上の不都合を克服または少なくとも軽減するコーティング方法が必要とされている。所望の特性を付与し、これらの材料の価値を高めるために、市販の塗料およびポリマーの表面を変性するための簡単な、一般的な方法もまた必要とされている。全体的な生産コストに追加される更なる工程の導入を必要としないような方法も必要とされている。
【0013】
背景技術の上記記載は、当技術分野の当業者の技術常識の一部を形成することを承認するものではない。上記記載は、本明細書中に開示した装置および方法の適用を限定しようとするものでもない。
【発明の概要】
【0014】
第1の態様において、
(a)低表面エネルギー成分およびイオン成分を有する表面偏析種を含む製品を提供する工程;および
(b)該製品の活性化表面を、表面変性イオン性材料を組み込む表面変性剤を含有する液体で処理する工程
を含み、
活性化表面を形成するために該表面偏析種を該製品の外側表面に偏析し、
該表面変性イオン性材料を、イオン交換法により、該活性化表面に引き付け、かつ該活性化表面上に付着させることを特徴とする、イオン交換によって製品をコーティングする方法が開示されている。
【0015】
[用語の定義]
本明細書中で使用する場合、以下の用語は以下に記載のように定義される。
「表面偏析種(本明細書中では「SSS」とも示す)」
表面偏析(低表面エネルギー)成分およびイオン成分を組み込む化学種。上記イオン成分は、界面活性イオンおよび移動性添加剤対イオンを含む。基材上に設けられた場合、SSSの界面活性イオン成分は、電極位置/逆荷電した材料のイオン交換へ基材を活性化させる。
【0016】
「界面活性イオン」
基材の表面上に保持され、かつ、逆に荷電した粒子を引き付ける表面偏析種の一部。上記を分離表面。界面活性イオンは、正または負の電荷のいずれかを有してもよい。
【0017】
「移動性添加剤対イオン」
処理剤懸濁液/処理剤溶液に暴露された時に溶液中に分散可能である表面偏析種の一部。上記移動性添加剤対イオンは、正または負の電荷のいずれかを有してもよい。
【0018】
「処理剤懸濁液/溶液」
表面変性剤の溶液または懸濁液。
【0019】
「表面変性剤」
表面変性イオン性材料および移動相対イオンから構成されるイオン性化学種。
【0020】
「表面変性イオン性材料」
イオン交換付着時に逆荷電され、界面活性イオンに引き付けられる表面変性剤の一部。上記表面変性イオン性材料は、正または負の電荷のいずれかを有してもよい。典型的な例としては、それらに限定されないが、ラテックスなどの静電的に安定化されたコロイド懸濁液、シリカなどの金属酸化物または非金属の酸化物、イオン性分散剤の使用により、またはエマルジョンとして懸濁状態で保持された材料、或いは可溶性ポリイオン性有機ポリマーが挙げられる。これらの材料は、典型的にポリイオン性であり、即ち、それらはイオン化されると、複数の電荷を運ぶ。
【0021】
「移動相対イオン」
表面変性のイオン性材料の電荷と逆の電荷を有する表面変性剤の一部。移動相対イオンは、正または負の電荷を有してもよく、後述のようにイオン交換付着後に溶液中に分散可能である。
【0022】
「移動性カチオン/アニオン対」
移動性添加剤対イオンおよび移動相対イオンの組み合わせから得られる推定溶解イオン性塩。
【0023】
「電気活性付着」または「イオン交換付着」
(水などの)液状媒体中で懸濁状態の表面変性イオン性材料を、逆荷電した界面活性イオンを含む表面に静電的に引き付け、上記表面上に付着させる、本明細書中に記載される方法。
【0024】
上記製品は、単一構造を有していてもよく、および表面偏析種(または「SSS」)を、単一製品の外側表面に設けてもよい。例えば、上記製品は、製造時にSSSを添加した押出ポリマーを含んでもよい。
【0025】
また、上記製品は、それに塗布された、その中にSSSを提供した外層を有する物品を含んでもよい。例えば、上記製品は塗料を塗布した物品を含んでもよく、SSSが上記塗料層中に提供されている。上記塗料がまだ液体である時に上記SSSを上記塗料にタイミングよく加えてもよい。塗布/乾燥工程時に、それを表面に偏析させる。上記塗料は溶剤系であってもよい。また、塗料は水性であってもよい。
【0026】
実施形態において、上記製品は、塗料を塗布された鋼、例えば鋼コイルなどの金属基材を含む。
【0027】
上記SSSは、低表面エネルギー成分、または表面偏析成分およびイオン成分を有する。理論に束縛されることは望まないが、これら2つの成分がSSSに2つの機能:低表面エネルギー部が表面にSSSをもたらし、そして後に塗布される試薬を用いてイオン交換反応が生じることを可能にするように、イオン性部が正と負の電荷の分離を可能にする:を付与すると考えられている。
【0028】
上記SSSの低表面エネルギー成分は、以下:シロキサン誘導体、長鎖アルキル基、分岐構造体、ポリエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドオリゴマー型またはアルキレンオキシドポリマー型のノニオン性界面活性剤、フルオロカーボン或いはデンドリマーの1つ以上を含んでもよい。1つの実施形態では、低表面エネルギー基は、アルコキシシランなどのオルガノシラン誘導体である。1つの実施形態では、低表面エネルギー基がトリアルコキシシランである。
【0029】
上記SSSのイオン成分は、移動性添加剤対イオンに関連して、低表面エネルギー成分に共有結合した有機カチオン(界面活性イオン)から構成されてもよい。特に、界面活性イオンは、カチオン中心を含んでもよい。特に、界面活性イオンは、上記SSSを溶剤系塗料に添加するカチオンを含んでもよい。カチオンは、有機カチオンであってもよい。
【0030】
1つの実施形態では、界面活性イオンは、アンモニウムイオンを含んでもよい。1つの実施形態では、界面活性イオンは、第四級アンモニウムイオンを含んでもよい。
【0031】
別の実施形態では、上記SSSの界面活性イオンは、アニオンを含んでもよい。特に、イオン成分は、上記SSSを水性塗料に添加する、または添加したアニオンを含んでもよい。上記アニオンは、低表面エネルギー基の一部を含む、即ち低表面エネルギー基がアニオン性であってもよい。低表面エネルギー基が、長鎖アルキル基であってもよい。
【0032】
表面偏析種は、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムイオン、またはチオウロニウムカチオン等の有機カチオンの塩を含んでもよい。また、水分への暴露時にアンモニウムイオンを形成するアミノ化合物などの有機カチオンの塩の前駆体から構成されてもよい。熱硬化性塗料配合物において、上記SSSは、好ましくは、第四級アンモニウム塩(「QAS」)である。好ましくは、QASには、最小の長さのアルキル鎖、好ましくはメチル基の導入に起因するものなどの低電荷遮蔽を生じる。1つの実施形態では、上記SSSは、N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドである。別の実施形態において、上記SSSは、N‐(トリメトキシシリル)プロピル‐テトラデシルジメチルアンモニウムクロリドである。別の実施形態において、上記SSSは、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドである。別の実施形態において、上記SSSは、N‐(3‐トリメトキシシリルエチル)ベンジル‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドである。別の実施形態において、上記SSSはCTABである。別の実施形態において、上記SSSはSilquat AO(親水性)である。別の実施形態において、上記SSSはSilquat Di‐10(親水性)である。別の実施形態において、上記SSSはSilquat 3150(疎水性)である。
【0033】
上記表面偏析種を、上記製品の外側表面に偏析して、活性化された表面を形成する。そのような偏析は、製品中に予め存在するSSSの偏析によるものであってもよい。また、上記製品は、活性化された表面を形成するために、SSSで処理してもよい。活性化された表面は、上記表面偏析種のイオン成分を上記製品の外部の試薬とのイオン交換反応に関与させることを可能にする。
【0034】
上記製品の活性化された表面は、その後、表面変性剤を含む液体で処理され、それらの対応する移動相対イオンに関連して、1つ以上の表面変性イオン性材料を含有する処理剤溶液/懸濁液を含んでもよい。1つの実施形態では、表面変性イオン性材料を液体中に溶解してもよい。別の実施形態では、表面変性イオン性材料は、静電的安定化により、液体中に懸濁状態で保持されてもよい。活性化された表面に塗布した後、イオン交換法により、表面変性イオン性材料を、活性化表面に引き付け、かつ上記活性化表面上に付着させる。上記SSSと表面変性イオン性材料は、逆の電荷を有する。従って、上記SSSイオン性材料が負に荷電している場合、表面変性イオン性材料は正に荷電されている。反対に、上記SSSイオン性材料が正に荷電している場合、表面変性イオン性材料は負に荷電されている。上記SSSおよび表面変性イオン性材料の両方は、逆の電荷を有するそれぞれの移動性添加剤対イオンおよび移動相対イオン(即ち、移動性カチオンおよび移動性アニオン)に関連している。表面変性イオン性材料が移動性カチオン/アニオン対を放出するSSSに結合されるように、表面変性イオン性材料はSSSに関連する移動性添加剤対イオンとのイオン交換を受ける。
【0035】
表面変性ポリイオン性材料の例としては、
・官能基化シリカコロイドを含むシリカコロイド(官能基化シリカコロイドの例は、商品名Bindzilで市販されている生物抵抗性材料である。別の例では、活性材料(例えば、抗菌性化合物またはUV吸収剤)の浸出可能なまたは固定されたパッケージを担持するメソ多孔性シリカである。)
・様々なサイズのシリカの混合物(超疎水性挙動並びに汚れや微生物の低減された付着に寄与するための、粒径を有する混合物の付着から得られる微細形態が、特定の場合において見出されている。)
・シリカおよびポリマーラテックスの混合物(これは、更に詳細に検査することができるようにする、例えば、接着力、摩擦などを減少/増加させるために、表面の性質を変更することができる。)
・他の金属酸化物粒子とシリカコロイドの混合物(シリカコロイドを含むこの混合物および他の混合物において、シリカは、表面の化学的特性を変化させることができる他の材料のためのバインダーとして有効に機能してもよい。)
・官能基化アクリルラテックスなどの官能基化ポリマーラテックス(例としては、N‐イソプロピルアクリルアミドまたはNipaamがある。Nipaamは、任意の被着材料に対する悲惨な結果と共に、劇的な表面再編成を生じる35℃での構造変化を起こす。その結果として、抗菌用途に非常に有効である。)
・機能性ポリマーラテックスの混合物(例えば、疎水性領域および親水性領域に挟むことから構成される表面が良好な抗菌性を示すことが知られているが、それらは以前から作製することが困難であった。ラテックス粒子の粒径は変化してもよいが、典型的には、シリカマトリックス中に結合されることができる粒径を有する。)
・層状複水酸化物またはフィロシリケート(これらは、酸素および水のバリア性能、活性種(例えば、UV吸収剤、抗菌剤)のインターカレーション、帯電防止性、導電性、超親水性を含む広範囲の興味深い特性を有する。)
・グラフェンオキシド(帯電防止性、導電性、および非常に良好な酸素および水のバリア性能の可能性。)
・(塗料およびインクの製造に使用されるものなどの)エレクトロステリック分散剤を用いて水中に懸濁させたナノメートルスケール(<100nm)またはマイクロメートルスケール(100nm〜10μm)の粒子(これらの粒子は、一般的または特殊顔料、ナノ粒子金属および金属酸化物或いは量子ドットを含む非常に多数の材料を包含する。)
・ポリイオン性ポリマー
・導電性ポリマー
・シクロデキストリン
・上記のいずれかの互いとの混合物
が挙げられる。
【0036】
上記製品の活性化された表面を、1つ以上の表面変性剤を含有する液体で処理してもよい。表面変性イオン性材料は、表面変性剤を含有する液体(例えば水相)との活性化された表面(例えば、塗装面)の最初の接触後に短時間で、移動性添加剤対イオンとのイオン交換を受けると考えられている。イオン交換法の達成は、典型的には、上記表面を覆う均一な薄い水膜(「超親水性」膜)の形成によって示される。この膜を形成する能力は、SSSの同一性および濃度、表面変性イオン性材料の濃度、水相のpH、水相のイオン強度などの変数の数の関数である。親水性膜形成の速度は、SSSの濃度の増加、表面変性イオン性材料の濃度の増加、水相のpHの低下、および水相のイオン強度の増加:の1つ以上に伴って増加する。
【0037】
表面変性イオン性材料は、シリカコロイドを含んでもよい。Ludox(登録商標)(W.R. Grace)、Bindzil(登録商標)(Akzo Nobel)、およびSnowtex(登録商標)(Nissan Chemical)など、広範囲の使用可能な市販品がある。これらの材料は、粒子の表面上の表面Si‐OH官能基のイオン化に起因する相互静電反発力によって、懸濁状態で安定化されてもよい。ほとんどの場合、懸濁液はアルカリ、典型的には、水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムの添加によって塩基性にされている。これらの材料は、5nmから100nmより大きいサイズの範囲を有する。いくつかの場合において、粒子の表面を、例えば、加水分解された3‐グリシドキシプロピルトリアルコキシシランで部分的に表面変性されたAkzo Nobel社からの製品のBindzil(登録商標)シリーズのいくつかとしての、加水分解された有機官能基化アルコキシシランで変性する。
【0038】
これらの材料は、すべて基本的に同様に機能し、14nmの粒径を有するLudox(登録商標)HS‐40の場合が典型的である。この材料は、pH 9の水性懸濁液中40%w/wの濃度で供給される。0.25%w/wを超える濃度、pH≧7で、この材料は、好ましいSSSを含有して超親水性膜を形成する塗装面に、容易にコーティングされる。0.25%w/wの濃度とpH 7で、膜の形成が抑制されるが、pHを低下させるか、またはイオン強度を増加させることによって改善することができる。
【0039】
製品への塗布物のSSSの濃度および/またはpHは、多数の要因に依存して変化する。薄いコーティングは、低いSSS濃度および低pHを必要とするかもしれないのに対して、例えば厚いコーティングは、比較的高いSSS濃度およびpHで塗布してもよい。基材に塗布する前に、上記SSSを塗料に添加するいくつかの条件下で、塗料中のSSSの濃度は、0.5重量%より大きい、例えば2重量%より大きくてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、2重量%未満のSSS濃度で付着物を形成することが困難であることが見出された。塗料中のSSSの濃度は、10重量%以下、例えば5重量%以下であってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、5重量%より高いSSS濃度は、5質量%以下、コストが非常に高くて、不要であることが見出された。
【0040】
表面変性イオン性材料の濃度はまた、多くの要因に依存する。表面変性イオン性材料がシリカコロイドを含む1つの実施形態では、少なくとも0.5重量%の液体中の濃度を有してもよい。1つの実施形態では、pHは10以下、好ましくは9以下である。別の実施形態では、上記液体のpHは、中性または酸性、例えば7未満、好ましくは6未満であってもよい。液体を含有する表面変性イオン性材料は、0.5モル/Lを超えるイオン強度を有してもよい。所望であれば、イオン性塩、例えば、NaClの液体への添加などにより、イオン強度を調整してもよい。
【0041】
別の実施形態において、表面変性イオン性材料は、例えば、商品名「Laponite」(BYK‐Gardner社)、好ましく「Laponite S482」で入手可能なものなどの合成スメクチックフィロシリケートクレーである。活性化された表面を水中のフィロシリケートの懸濁液で処理してもよい。上記フィロシリケートは、0.5重量%以上の濃度で存在してもよい。上記フィロシリケートは、2重量%以下の濃度で存在してもよい。
【0042】
理論によって限定されることは望まないが、本発明の方法は、以下の物理モデルに基づいて説明することができると考えられる。逆の電荷を有する溶解または懸濁した表面変性イオン性材料を引き付ける方法は、濃度勾配を形成するように活性化された表面との近接に、および上記表面との近接から、表面変性イオン性材料が移動している準平衡状態とみなすことができ、静電引力により表面との近接において幾分より密である。そのイオンの性質のため、表面変性イオン性材料は、水和球によって包囲されている。溶解状態の表面変性イオン性材料がその水和球を維持する限り、それらは近接の内外へ自由に移動することができる。引力および接近の結果として、いくつかのポリイオン種は、表面からそれらを分離し、親密に接触し、イオン交換法を行うことを可能にする一部の水和球を失い、移動性カチオン/アニオン対を解放し、結果として、活性化された表面に不可逆的に結合する。この方法は、バルク液体中への移動性対イオンパートナーの分散によって、エントロピー的に有利である。
【0043】
活性化された表面は疎水性であり、水(表面上の水のビーズ)による濡れに抵抗する。表面変性イオン性材料が不可逆的に吸収する場合、それは水性相に近接して水和層を保持し、表面変性イオン性材料の直接の領域における表面の一部は、ここで、親水性となる。吸収された表面変性イオン性材料の密度が十分に高い場合、吸収粒子の水和球体は、連続水層を維持することができる。この時点で、表面が超親水性になる。図1a〜図1c参照。超親水性層を適切に乾燥する場合、溶解して懸濁された材料はまた、表面上に付着される(図1d)。表面変性イオン性材料の静電駆動結合により、単純な沈降によって可能であるものを超えて良好な接着力のレベルを提供する。これにより、非静電駆動コーティングの制御されていない乾燥と比較して、表面被覆の均一性において優位な改善を可能にする。
【0044】
上記SSSのペンダント基によるイオン成分の疎水性遮蔽または電荷遮蔽によって、表面変性イオン性材料の付着の有効性を低減することができる。従って、QASの荷電窒素中心に結合した低表面エネルギー拡張アルキル鎖の数を最小限にすることが望ましい。しかしながら、同時に、塗料の表面へのSSSの移行を可能にして、表面変性イオン性材料の付着および接着性を高めるために十分な個体総数を提供するために、低表面エネルギー基が必要である。低表面エネルギー基は、表面外観の自然破壊などの諸問題に対する表面偏析に関する、その有効性を変化する。従って、効果的なSSSは、種々の特性のバランスを有する。
【0045】
同じ原理は、イオン性材料の混合物或いは乾燥時に超親水性膜中に運ばれ、共析出される非イオン性パッセンジャー粒子または分子との混合物を組み込む膜を提供するために使用することができる。特殊なケースは、層状複水酸化物およびスメクチッククレーにおける中性分子のインターカレーションである。
【0046】
従って、
(a)低表面エネルギー成分およびイオン成分を有する表面偏析種を含む製品を提供する工程;
(b)該製品の活性化表面を1つ以上のポリイオン種を含む表面変性剤を含有する液体で処理する工程;および
(c)超親水性層を乾燥してコーティングを形成する工程
を含み、
活性化表面を形成するために該表面偏析種を該製品の外側表面に偏析し、
該表面変性剤種を、イオン交換法により、該活性化表面に引き付け、かつ該活性化表面上に付着させて、その上に超親水性層を形成することを特徴とする、イオン交換による製品をコーティングする方法も提供される。
【0047】
本発明の方法の利点は次のとおりである。
・表面特性を変えるための塗料層における(またはポリマーバルク材料における)表面偏析種の使用は、更なる処理工程を必要としないことを意味する。この方法は、表面変性技術に対して本質的に透過的である。
・変性は基材表面に非常に局在化されているので、比較的少量の表面偏析種が必要である。これにより、コストを最小限に抑え、カスタマイズされたシロキサン、フルオロカーボンおよびデンドリマーなどの比較的高価な材料を使用することを可能にする。
・表面偏析種の局在化は、基材のバルク機械的特性の変化を最小限に抑える。
・上記方法は、添加剤の表面個体総数が所望の特性を誘導するのに十分であるという条件であれば、低表面エネルギーおよび官能部分の多数の組み合わせの潜在的な応用を可能にする、汎用性の高いものである。
・本発明の方法は、例えば噴霧または洗浄によって達成することができる硬化後の単純な粒子付着工程の導入を除いて、それらが現在構成されているような材料および方法と一致する方法で、コイルコーティング塗料の表面の変性を可能にする。従って、本発明の方法は、容易に既存のコイルコーティング作業に組み込んでもよい。
・本発明の方法は、従来の非静電駆動方法に比べて、基材の微視的またはナノスコピックな完全かつ均一な被覆を提供することができる。
・従来技術のLbL法とは異なり、本発明の方法は簡単で、迅速であり、複数の工程を必要とせず、および結果として改善された塗膜接着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
発明の概要に記載された装置および方法の範囲内である任意の他の形態であっても、特定の実施形態を、添付の図面を参照して、例示のためだけに説明する。
[図1a〜図1d]本発明の方法のための提案された物理モデルを示す。
図1a】活性化された表面(20)への懸濁コロイド(10)の初期の引き付け、および発現する準平衡状態を示す。
図1b】活性化された表面に近接したコロイドが、水和球体の一部を失い、不可逆的に基材表面に結合する場合を示す。この工程は、結合水の放出により、および水層への移動性対イオンの分散によってエントロピー駆動される。
図1c】吸収された粒子(10)の密度が臨界限界に達する時の、基材の表面上への超親水性層の形成を示す。超親水性表面上に位置する水層(30)は、水層の乾燥によってすぐに付着させることができる更なる材料を含有する。
図1d】水膜中に懸濁された材料が表面上にランダムに付着される超親水性表面上の水膜の乾燥の結果を示す。これは、塗布量を変化させる手段として、およびコーティング中の複雑な混合物を提供する手段として役立つ。
図2】グロー放電発光分光分析法(GDOS)によって測定される(電気活性添加剤なしの塗料を有する)試料SM‐13の直接の表面における元素の深さプロファイル個体総数を示す。
図3】グロー放電発光分光分析法(GDOS)によって測定される(電気活性添加剤を含む塗料を有する)試料SM‐20の直接の表面における元素の深さプロファイル個体総数を示す。図2との比較により、直接の表面領域におけるケイ素の個体総数は、おそらく塗料の表面へのSSSを含有するケイ素の偏析により増加することを示す。
図4】電気活性添加剤を含有する塗料の直接の表面領域における塩素のシグナルの存在を示す試料SM‐20のGDOS微量分析である。
図5】試料SM‐21:pH8で6%のLudox懸濁液で処理した後の、5%のN‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムを含有する塗料の、GDOSによって測定された元素の深さプロファイルを示す。
図6】GDOSによって測定された(電気活性添加剤を含む塗料を有する)試料SM‐21の直接の表面における元素の、深さプロファイル個体総数を示す。
図7】実施例16に記載したように、Laponite懸濁液の種々の濃度でのMgシグナルのEPMAマップを示す。上記Mgシグナルを、Laponiteの濃度の代わりに用いる。
図8】Ludox(登録商標)AM30シリカ懸濁液の濃度およびシリカコーティング厚さの関係を示すグラフ図である。
図9】Ludox(登録商標)HS40シリカ懸濁液の濃度およびシリカコーティング厚さの関係を示すグラフ図である。
図10】1200cm−1でのSiOのIR吸収ピーク面積に対する、EPMAにより測定されたシリカ厚さの相関関係を示すグラフ図である。
図11】シリカ混合物(5%)中の銀/亜鉛酸化物ナノ粒子でコーティングされた試料塗装板SM‐21の表面のEPMA分析である。
図12】シリカ混合物(5%)中の銀/亜鉛酸化物ナノ粒子でコーティングされた試料塗装板SM‐21の表面のEPMA銀分布マップである。
図13】シリカ混合物(5%)中の銀/亜鉛酸化物ナノ粒子でコーティングされた試料塗装板SM‐21の表面のEPMA亜鉛分布マップである。
図14】Kynar ARC PVDFラテックスおよびLudox HS40混合物から形成されたコーティングの領域の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0049】
イオン交換により製品をコーティングする方法の非限定的実施例を、ここに説明する。
【0050】
実施例1(比較例):水は標準塗装面を濡らさない。
市販のコイルコーティングの板を、標準実験室的方法に従って作製した。使用される塗料は、ヒドロキシル官能性ポリエステル、アルキル化メラミンホルムアルデヒド、二酸化チタン顔料、酸触媒、およびその他の添加剤(PPG Industries社)から構成される溶剤型熱硬化系であった。上記塗料は、ワイヤードローダウンバーを用いて予め下塗りした鋼板上に40μmの公称厚さでコーティングし、235℃のピーク金属温度(PMT)および約20μmの最終厚さに到達するために300℃に設定したオーブン中で45秒間硬化した。上記板を、水浴中で急冷することによって、オーブンから移動して直ちに室温まで冷却した。この板から切り出した試料を水に浸漬した。塗装面と水との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、全く水が上記板上に保持されなかった。この表面と水滴の接触角は83°であった。
【0051】
実施例2(比較例):水性Ludox懸濁液は、標準塗装面を濡らさない。
実施例1の塗装板の試料を、Ludox HS-40(登録商標)コロイドシリカの5%w/w水性懸濁液に浸漬した。塗装面と上記Ludox懸濁液との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に上記水性懸濁液が上記板上に保持されなかった。
【0052】
実施例3(比較例):水性Laponite S482懸濁液は、標準塗装面を濡らさない。
実施例1の塗装板の試料を、Laponite S482合成フィロシリケートクレーの2%w/w水性懸濁液に浸漬した。塗装面と上記Laponite懸濁液との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に上記水性懸濁液が全く上記板上に保持されなかった。
【0053】
実施例4:活性塗料の調製
実施例1の塗料の液体試料(100g)を、メタノール中50%、N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含む、電気活性付着添加剤の溶液(Gelest社)(6.8g)と混合して、塗料中の上記添加剤の5%w/w混合物を形成した。上記塗料を、下塗りされた鋼板上にコーティングし、実施例1に記載したような標準的な手順に従って硬化した。
【0054】
実施例5:水は活性化塗料を濡らさない。
実施例4の塗装板の試料を水中に浸漬した。塗装面と水との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に水が全く上記板上に保持されなかった。この表面と水滴の接触角は82°であった。
【0055】
実施例6:塩溶液は活性化塗料を濡らさない。
実施例4の塗装板の試料を、1M‐NaCl溶液中に浸漬した。塗装面と上記溶液との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に水が全く上記板上に保持されなかった。これは、活性化された表面の親水性を誘導するために、湿潤溶液がアニオンを含有することだけでは十分ではないことを示す。超親水性を発揮するために、アニオン種が活性化された塗装面に不可逆的に付着することができなければならないと推測される。
【0056】
実施例7:水性Ludox(登録商標)懸濁液は、活性化された塗装板を濡らさない。
実施例4の鋼板の試料を、5%w/wのLudox HS-40(登録商標)コロイドシリカの水性懸濁液(Grace Chemical Industries)中に浸漬した。上記水性懸濁液から上記板を取り出す際に、全体の塗装面が液膜で覆われている、即ち、この面上への上記液体の濡れが超親水性であることが観察された。上記塗料の表面上の超親水性膜を乾燥させた。この変性塗装面上の水滴の接触角は、Goniometerの測定能力以下であった(即ち、10°未満)。
【0057】
実施例8:可変Ludox(登録商標)HS-40濃度の効果を確立する。
実施例4の鋼板の試料を、0.5%、0.25%、0.1%、および0.05%w/wの濃度の、Ludox HS-40(登録商標)コロイドシリカの水性懸濁液(Grace Chemical Industries)中に浸漬した。上記板を、Ludox(登録商標)懸濁液中に5秒間保持し、次いで、取り出し、表面上の懸濁液の濡れを観察した。上記板を次いで、各Ludox(登録商標)懸濁液に第2期目の5秒間浸漬し、上記表面上に懸濁液の濡れが観察された。結果を表1にまとめる。これらの条件下で、第1の浸漬時の完全な濡れのためのLudox(登録商標)の臨界濃度は0.25〜0.5%w/wである。第2の浸漬時の濡れのための臨界濃度は0.05〜0.1%w/wである。粒子は低濃度のシリカを有する懸濁液から活性化された表面上に不可逆的に付着されるが、その被覆密度が低すぎて、更なる暴露なしに超親水性の濡れを提供することができないことがこの実施例から推測される。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例9(可変添加剤濃度の効果を確立する)
実施例1の塗料に、様々な量の添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド、メタノール中50%(Gelest社)を配合した。得られた塗料を、実施例1と同様に、予め下塗りした鋼板に塗布し、硬化した。各ロットの塗料を組み込んだ上記板を、5秒間pH9の6%w/wのLudox(登録商標)懸濁液に浸漬した。上記板の濡れ性は、塗料中の添加剤濃度の増加と共に増加する。結果を表2にまとめる。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例10:別の第四級アンモニウム添加剤ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドの効果
実施例1の塗料を、5%w/wのベンジルトリメチルアンモニウムクロリドと混合し、下塗りした鋼板上にドローダウン塗布し、実施基準に従って硬化した。得られた塗膜表面は、いくらか破壊を示した。上記板試料を、表3中の仕様に従って調製したLudox(登録商標)HS-40懸濁液中に浸漬した。これらの結果は、ちょうど粒子濃度が減少した時に、pH低下により結果として(表面濡れ性の導入によって測定されるような)粒子の付着が改善されることを示した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例11:可変イオン強度の効果を確立する。
実施例1の塗料を、5%w/wのベンジルトリメチルアンモニウムクロリドと混合し、下塗りした鋼板上にドローダウン塗布し、実施基準に従って硬化した。得られた塗膜表面は、いくらか破壊を示した。上記板試料を、イオン強度を塩化ナトリウムの添加によって変化させた表3中の仕様に従って調製した6%w/wLudox(登録商標)HS-40懸濁液中に浸漬した。これらの結果は、イオン強度増大により、結果として表面濡れ性の導入によって測定されるような粒子の付着が改善されることを示した。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例12:別の添加物の効果を確立する。
実施例1の塗料に、添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを説明する構造的特徴の一部または全て、即ち、有機カチオン部分、低表面エネルギー(界面活性剤)部分、トリアルコキシシリル部分を組み込む別の添加剤を配合した。
結果を表5にまとめる。N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドによって、最適な性能を示す。カチオン中心は、加水分解されたアルコキシシランより、Ludox(登録商標)HS-40懸濁液の付着のために必要とされる。カチオンの疎水性遮蔽は、付着の効果を低減する。効果を発揮するのに低表面エネルギー基が必要である。低表面エネルギー基は、その有効性が様々である。いくつかの低表面エネルギー基は、塗装面の破壊をもたらす。
【0066】
【表5-1】
【0067】
【表5-2】
【0068】
これらの結果は、第四級アンモニウムイオンが一般的にこの方法に有用であり、より強くアルキル化したQAS(より多くの電荷遮蔽)はより低い活性を示し、アルコキシシランはこのグループ内で最も効果的であることを示唆する。
【0069】
実施例13:Laponite S482コーティングへの濃度の効果
塗料中の界面活性イオンの濃度は1、3、4、および5%w/wのレベルで変化させた。水性懸濁液中のLaponite S482の濃度は0.01、0.05、0.1、0.5、1および2%w/wのレベルで変化させた。成膜境界レベルは、水性懸濁液が塗装面の超親水性濡れを示す点として定義される。
【0070】
【表6】
【0071】
これらの結果は、基板表面の超親水性濡れが発生するために、電気活性添加剤およびLaponite S482の濃度の両方が、最適なレベルであることが必要であることを示し、超親水性濡れとは、表面改質粒子が高密度配列で基材に結合されていることを表す。
【0072】
実施例14:塗装面における添加剤の検出
グロー放電発光分光法(GDOS)によって測定される塗膜における電気活性添加剤の存在を、ケイ素と塩素の深さプロファイル個体総数に従ってモニターした。PPGオーストラリアによって配合された市販のコイルコーティングを、電気活性添加剤の活性を説明するために使用した。この塗料系の組成物を、このクラスの材料の典型的な特性により、以下のように一般的に説明する場合がある。約50体積%固体分の溶剤系塗料である。固形分の約40%は、顔料、主として二酸化チタンである。固形分の残りの60%の内、その量の約80%は、ヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂であり、20%がアルキル化メラミンホルムアルデヒド架橋樹脂である。上記混合物は、硬化のための酸触媒を含む少量の添加剤を含む。GDOS測定は、未変性対照および5%w/wの電気活性添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する変性塗料で行った。
【0073】
図2および3は、2つの例:試料SM‐13および試料SM‐20、それぞれ、電気活性添加剤を含まない塗料および電気活性添加剤を含む塗料の直接の表面における元素の個体総数を示す。GDOS微量分析は、塗料体積の上部1μmのケイ素の原子パーセントを示す。上記2つの場合に関するデータの比較により、直接の表面でのケイ素個体総数が電気活性添加剤を含有する塗料に関してより高く(4%に対して10%)、0.2μmの深さを通るシグナルの積分強度がかなり大きい。(未変性塗料中のケイ素源は、ケイ素含有界面活性剤である。)
【0074】
図4は、5%の添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する塗料の試料の元素の深さプロファイルのGDOS測定である。それにより、電気活性添加剤を含有する塗料の直接の表面領域における塩素のシグナルの存在を示す。これらの結果により、電気添加剤が、塗料の表面に移行し、直接の表面領域に局在化していることを示す。このような局在化の結果として、添加剤は、本明細書中に記載されている方法で上澄み液中のイオン性材料と静電的に相互作用するために利用可能であると推測される。
【0075】
実施例15:塗料の表面のLudox(登録商標)コロイダルシリカ層の検出および厚さの評価
電気活性添加剤(5%w/w)を含有する塗装試料板SM‐21を、Ludoxコロイドシリカ(5%w/w)の水性懸濁液に曝露した。水性懸濁液は、塗料の表面を完全に濡らした。上記板を、空気中で乾燥させた。乾燥した上記板をGDOSにより分析して、元素の深さプロファイルを明らかにした(図5および6)。図5は、上記処理により結果として、表面上にシリカコロイドの層を形成することを示す実測値である。図6は、約100nmにおける、付着されたシリカ層の平均厚さの評価を可能にする、より精密な測定値である。
【0076】
図6中のGDOSの結果により、塗料の直接の表面領域が完全にケイ素と酸素から構成されることを示す。深さの増加に伴って、ケイ素濃度個体総数は、(塗料からの)炭素の濃度が増加するにつれて減少する。この挙動は、表面粗さに起因する不均一なエッチングによる異なる元素組成の層に対応するシグナルが混ざった、粗い表面上の低解像度測定値の典型的なものである。
【0077】
一般に、適度な表面光沢を有するものなどの、コイルコーティング塗料の表面は、多数のスパイクおよび欠陥を有する1μmのオーダーのRa表面粗さを有する。このような場合には、表面層の厚さを、マトリックス中では安定した濃度を有するが、表面層中ではゼロ濃度を有することが知られている元素の半分の高さに等しいものに近似する。従って、窒素シグナルの半分の高さを用いることによって、約100nmのコロイドシリカ層の厚さを概算することができる。
【0078】
この結果は、電気活性塗装面上のLudox(登録商標)懸濁液の超親水性濡れによって形成された水性層の乾燥により、結果として上澄み液膜中の材料の全てを付着させるという推論を支持する。理論に束縛されることなく、塗料中の界面活性イオンおよび水性相中に懸濁された表面改質イオン性材料の間の静電引力は、厚さで単分子層を近似する表面改質イオン性材料層により塗料の直接の表面が覆われている、電荷中和の平衡状態に到達し、および結果として、表面改質イオン性材料のいずれかを自由に懸濁したままにすると提案するのが妥当である。水性相中においては、静電的にこの表面から反発される。
【0079】
図1a〜図1dに示すように、粒子間の距離が減少するので、互いから比較的大きい距離のナノ粒子材料間の反発力は指数関数的に増加する。しかし、粒子の非常に接近した臨界点で、粒子がここで強い引力を受けるように、吸引力が急激に増加し、かつ支配的となる。ナノ粒子が互いへの接着力を確立すると、それらを共に保持する力に対抗することが非常に困難になる。
【0080】
このように電気活性付着法は、制御された厚さおよび良好な構造的一体性を有する薄いコーティングを付着するために用いることができる。
【0081】
実施例16:塗装面上のLaponiteフィロシリケート粒子分布の検出
5%w/wの電気活性添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する塗装板を、0.05、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8および1.0%w/wのレベルでの様々な濃度のLaponite(登録商標)S482フィロシリケートの水性懸濁液中に浸漬した。上記板を、乾燥し、およびMgシグナルをマッピングする、EPMAにより分析し、その結果を図7に示した。Mgは、この配合中のLaponiteに固有であり、従って、表面上にLaponiteが存在する兆候である。塗料試験片のマッピング領域のサイズは、512μm×512μmである。Mgの存在を、32が記録された最大値である、0(青)〜32(赤)のスケールにマッピングされる。これらの結果では、表面は、境界条件を決定するための実施例での結果に合わせて、0.4〜0.6%のLaponite濃度で(この技術の解像度の下で観察されるように)完全な被覆に近づくことは明らかである。
【0082】
実施例17:改善された接着性の証拠
SSSを含有する塗料の試料を、表7に示す仕様に従った市販のシリカ製品の懸濁液で処理した。対照試料には、SSSおよびシリカを含まない標準塗料、並びにSSS添加剤を含まない標準塗装板上にシリカコーティングを塗布した塗料を包含する。水接触角および耐炭素吸収性を、以下の方法を用いて、各試料について測定した。
【0083】
各試料に対して、「水二重摩擦(water double rub)」法を行った。この方法では、塗料の表面を、湿潤綿パッドを用いて前後両方向に10回繰り返して摩擦した。上記水摩擦試験の後、水接触角試験および耐炭素吸収性試験を上記板上で重ねて行った。水接触角の増加により、シリカが除去されたことを示す。炭素吸収による上記板のΔLの増加(即ち、暗色化)もまた、シリカ層の存在が塗装面におけるカーボンダストの吸収に対するバリアとして作用するシリカコーティングの除去を示す。
【0084】
これらの結果は、元の接触角および耐炭素吸収性の維持に反映されるように、SSSの存在が表面へのシリカの接着力を大きく改善することを示す。
【0085】
【表7】
【0086】
耐炭素吸収性方法:
使用したカーボンは、Evonik Degussa Australia社製のSpecial Black 4 Powderである。上記板の初期の「L」色データを、Hunter Labシステムを使用して記録した。水中の15w/w%カーボンスラリーを上記試料表面(直径約4cmの領域)に塗布し、上記試料を70℃で1時間乾燥した。オーブンから取り出した後、試料を冷却した。緩く付着した炭素粉末を表面から静かに除去した。上記試料を流水下に置き、柔らかい塗装用刷毛で6回ブラッシングすることによって、更なる炭素を表面から除去した。上記試料を乾燥させ、色読取「L」値を記録する。上記試料を再度流水下に置き、柔らかい塗装用刷毛で更に10回ブラッシングすることによって、更なる炭素を表面から除去した。上記試料を乾燥させ、色読取「L」値を記録する。
【0087】
実施例18:シリカコーティング厚さの変化
N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド(5%w/w)を含有する塗装試料板SM‐21を、Ludox HS40コロイドシリカ(6%w/w)の水性懸濁液に5秒間曝露した。上記混合物から取り出した後、上記板を、100℃のオーブン中で60秒間乾燥させた。EPMAにより評価したシリカコーティングの厚さは510nmであった。
【0088】
可変コーティングの厚さは、より希薄なシリカ懸濁液を使用することによって得ることができる。ドローダウンバー技術を、様々な濃度のシリカ懸濁液と共に使用した。Ludox(登録商標)HS40およびLudox(登録商標)AM30シリカ懸濁液を、#0003ドローダウンバー(Gardiner)を使用して、電気活性添加剤(5%w/w)を含有する塗装試料板SM‐21に塗布した。上記板を、100℃のオーブン中で20秒間乾燥させた。シリカコーティング厚さ評価を、EPMAにより行った(表8)。図8および図9によって、シリカコーティング厚さは、それぞれ、Ludox(登録商標)HS40およびLudox(登録商標)AM30に関する所定の液膜厚さに対するシリカ濃度に比例することを示す。
【0089】
【表8】
【0090】
FTIR(フーリエ変換赤外分光法)分光法を、中間赤外1200cm−1の領域中のシリカの吸収ピークの積分強度に対する、EPMA(電子プローブ微量分析装置)厚さ測定の相関関係を確立するために使用した。EPMAに用いた試料板を、ダイヤモンド結晶を用いたPerkin Elmer Spectrum装置のATR(減衰全反射)分光法によって測定した。コーティングされていない塗装板に対するコーティングされた塗装板のシリカピークに関して、デジタル差スペクトルを得た。このピークの面積を、デジタル積分により決定し(表8)、これらの値をEPMAの厚さ相互に関連づけた(図10)。従って、本発明の開示の方法を用いて塗布したシリカコーティングの存在を検出するために、およびこの相関関係を用いて、その厚さを評価するために、FTIRを使用することができる。
【0091】
実施例19:シリカコロイド付着層への金属/金属酸化物ナノ粒子の導入
銀/亜鉛酸化物ナノ粒子の混合物(発明の名称「Nano silver−zinc oxide composition」の、Polymer CRC社の米国特許第8,673,367号からの引用)を、シリカに対して1%、5%および10%w/wの濃度で、高速ミキサーを用いて、BYK2010高分子分散剤(BYK Additives & Instruments,Altana)を使用して、Ludox HS40シリカ懸濁液(水中6%w/w)中に懸濁させた。上記懸濁液は、沈降に対して安定でなかった。上記懸濁液を、[N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する]塗装試料板SM‐21上に浸漬コーティングした。上記板の表面をEPMAで分析して、シリカコーティング中に組み込まれた銀および酸化亜鉛の存在を明らかにした。銀/亜鉛酸化物ナノ粒子組成物が、約30質量%の銀および58質量%の亜鉛であり、残部が酸素である、シリカコーティング中の5%w/wの銀/亜鉛酸化物ナノ粒子の場合に関して、結果を示す。上記結果は同じ分析領域を表す。これらの方法における銀および亜鉛の唯一の供給源は、組み込まれたナノ粒子の混合物である。銀/亜鉛酸化物の混合物が抗菌性を有することが報告されている。従って、開示された方法は、シリカが効果的に表面の化学的性質を変化させる可能性を有する他の材料のためのバインダーとして機能する表面処理剤を作製するのに使用することができる。
【0092】
図11図12および図13には、シリカ混合物(5%)中の銀/亜鉛酸化物ナノ粒子でコーティングされた(N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含む)試料塗装板SM‐21の表面の、それぞれ、シリカ、銀および亜鉛のEPMA分布マップを示す。マップ領域は、512μm×512μmである。各場合において、白い領域がマッピングされた元素のより高い濃度を示す[確認せよ]。図12および図13の比較によって、銀マップおよび亜鉛マップの間の対応関係を示し、即ち、観察されたシグナルは、銀/亜鉛酸化物混合ナノ粒子によるものである。
【0093】
実施例20:シリカコロイド付着層へのポリマーラテックスの導入
両方共Arkema社から入手できる、Kynar Aquatec(登録商標)ARCおよびKynar Aquatec(登録商標)CRXを含む、2つのPVDF(二フッ化ポリビニリデン)/アクリル樹脂ラテックスを使用した。これらは、両方とも約100nmの粒径を有するアニオン性ラテックス懸濁液である。Ludox HS40を、懸濁した固形分の総質量が混合物の2%であった、安定な懸濁液を得るために、表9に示す質量比に従って水中のKynarラテックスと混合した。塗料中に5%w/wの電気活性添加剤を有する塗装試料板SM‐21を、#0003ドローダウンバーを使用して、コロイド混合物でコーティングした。(Kynar CRX系に関する)水接触角データにより、Kynar樹脂ラテックスの割合が増加するにつれて、接触角が増加することを示す。即ち、疎水性フルオロカーボンKynarの割合が増加するにつれて、表面はより疎水性になる。このように、ラテックスを用いて表面改質を可能にするため、そのように塗料の表面にラテックス特性を発揮するため、それによって表面の物理的性質を変化させるため、シリカがバインダーとして作用する。
【0094】
【表9】
【0095】
図14は、Kynar ARC PVDFラテックスおよびLudox HS40の混合物から形成されたコーティングの面積の50,000倍の倍率のFEGSEM顕微鏡写真である。Kynar:Ludox質量比は、合計2%固形分の水性懸濁液中において0.4であった。図14に示すように、より大きなKynar ARCラテックス粒子が、より小さいLudoxシリカコロイド粒子の塊の全体に分散されている。懸濁しながら、粒子の表面がアニオン性であるので、系中の疎水性/親水性分離が大幅に回避される。
【0096】
実施例21:水/アルコール混合物中でのシリカの懸濁液の使用
水中の3%v/vのLudox(登録商標)HS40の懸濁液(6%w/w)を、メタノールで1%v/vの混合物に希釈した。上記懸濁液は、安定であり、粒子凝集の形跡を有さないことは明らかである。様々な量の電気活性添加剤を有する試料塗装板を、この懸濁液中に浸漬した。上記懸濁液はまた、#0003ドローダウンバーを用いて、様々な量の電気活性添加剤を有する試料塗装板に塗布した。観察結果を表10に記録する。シリカコーティングの存在および厚さを、上記図10に示す関係を用いて、FTIR分光法によって決定した。このデータは、溶媒混合物中の懸濁液が、本開示の方法によって、イオン交換により、シリカコーティングを作製するために使用され得ることを示す。溶媒混合物は、疎水性塗装面を濡らす能力を変化させる。溶媒混合物は、水分子間の水素結合の影響を受けている操作中の方法のメカニズムの多くの態様に影響を与えると考えられている。
【0097】
【表10】
【0098】
多くの特定の方法の実施形態が記載されてきたが、上記方法は他の多くの形態で実施してもよいと理解すべきである。
【0099】
以下の特許請求の範囲および前述の説明において、明細書中において言語または必要な含意を表現することによる別の方法が必要な場合を除き、「含む(comprise)」の語および「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形はそのような包括的な意味で使用される、即ち、記載された特徴の存在を特定するが、本明細書中に開示される装置および方法の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0100】
本願に基づいて、または本願から優先権を主張して、更なる特許出願をオーストラリアまたは外国に提出してもよい。なお、以下の暫定的な特許請求の範囲は、例示としてのみの使用によって提供され、このような将来の適用において特許請求の範囲を限定するものではないと解されるべきである。後日、暫定的な特許請求の範囲に特徴を追加しても、または上記特許請求の範囲から特徴を除外してもよく、それによって、更に、本発明を定義または再定義する。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14