【実施例】
【0049】
イオン交換により製品をコーティングする方法の非限定的実施例を、ここに説明する。
【0050】
実施例1(比較例):水は標準塗装面を濡らさない。
市販のコイルコーティングの板を、標準実験室的方法に従って作製した。使用される塗料は、ヒドロキシル官能性ポリエステル、アルキル化メラミンホルムアルデヒド、二酸化チタン顔料、酸触媒、およびその他の添加剤(PPG Industries社)から構成される溶剤型熱硬化系であった。上記塗料は、ワイヤードローダウンバーを用いて予め下塗りした鋼板上に40μmの公称厚さでコーティングし、235℃のピーク金属温度(PMT)および約20μmの最終厚さに到達するために300℃に設定したオーブン中で45秒間硬化した。上記板を、水浴中で急冷することによって、オーブンから移動して直ちに室温まで冷却した。この板から切り出した試料を水に浸漬した。塗装面と水との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、全く水が上記板上に保持されなかった。この表面と水滴の接触角は83°であった。
【0051】
実施例2(比較例):水性Ludox懸濁液は、標準塗装面を濡らさない。
実施例1の塗装板の試料を、Ludox HS-40(登録商標)コロイドシリカの5%w/w水性懸濁液に浸漬した。塗装面と上記Ludox懸濁液との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に上記水性懸濁液が上記板上に保持されなかった。
【0052】
実施例3(比較例):水性Laponite S482懸濁液は、標準塗装面を濡らさない。
実施例1の塗装板の試料を、Laponite S482合成フィロシリケートクレーの2%w/w水性懸濁液に浸漬した。塗装面と上記Laponite懸濁液との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に上記水性懸濁液が全く上記板上に保持されなかった。
【0053】
実施例4:活性塗料の調製
実施例1の塗料の液体試料(100g)を、メタノール中50%、N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含む、電気活性付着添加剤の溶液(Gelest社)(6.8g)と混合して、塗料中の上記添加剤の5%w/w混合物を形成した。上記塗料を、下塗りされた鋼板上にコーティングし、実施例1に記載したような標準的な手順に従って硬化した。
【0054】
実施例5:水は活性化塗料を濡らさない。
実施例4の塗装板の試料を水中に浸漬した。塗装面と水との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に水が全く上記板上に保持されなかった。この表面と水滴の接触角は82°であった。
【0055】
実施例6:塩溶液は活性化塗料を濡らさない。
実施例4の塗装板の試料を、1M‐NaCl溶液中に浸漬した。塗装面と上記溶液との相互作用は疎水性であった、即ち、全く濡れが観察されず、上記液体から取り出す際に水が全く上記板上に保持されなかった。これは、活性化された表面の親水性を誘導するために、湿潤溶液がアニオンを含有することだけでは十分ではないことを示す。超親水性を発揮するために、アニオン種が活性化された塗装面に不可逆的に付着することができなければならないと推測される。
【0056】
実施例7:水性Ludox(登録商標)懸濁液は、活性化された塗装板を濡らさない。
実施例4の鋼板の試料を、5%w/wのLudox HS-40(登録商標)コロイドシリカの水性懸濁液(Grace Chemical Industries)中に浸漬した。上記水性懸濁液から上記板を取り出す際に、全体の塗装面が液膜で覆われている、即ち、この面上への上記液体の濡れが超親水性であることが観察された。上記塗料の表面上の超親水性膜を乾燥させた。この変性塗装面上の水滴の接触角は、Goniometerの測定能力以下であった(即ち、10°未満)。
【0057】
実施例8:可変Ludox(登録商標)HS-40濃度の効果を確立する。
実施例4の鋼板の試料を、0.5%、0.25%、0.1%、および0.05%w/wの濃度の、Ludox HS-40(登録商標)コロイドシリカの水性懸濁液(Grace Chemical Industries)中に浸漬した。上記板を、Ludox(登録商標)懸濁液中に5秒間保持し、次いで、取り出し、表面上の懸濁液の濡れを観察した。上記板を次いで、各Ludox(登録商標)懸濁液に第2期目の5秒間浸漬し、上記表面上に懸濁液の濡れが観察された。結果を表1にまとめる。これらの条件下で、第1の浸漬時の完全な濡れのためのLudox(登録商標)の臨界濃度は0.25〜0.5%w/wである。第2の浸漬時の濡れのための臨界濃度は0.05〜0.1%w/wである。粒子は低濃度のシリカを有する懸濁液から活性化された表面上に不可逆的に付着されるが、その被覆密度が低すぎて、更なる暴露なしに超親水性の濡れを提供することができないことがこの実施例から推測される。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例9(可変添加剤濃度の効果を確立する)
実施例1の塗料に、様々な量の添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド、メタノール中50%(Gelest社)を配合した。得られた塗料を、実施例1と同様に、予め下塗りした鋼板に塗布し、硬化した。各ロットの塗料を組み込んだ上記板を、5秒間pH9の6%w/wのLudox(登録商標)懸濁液に浸漬した。上記板の濡れ性は、塗料中の添加剤濃度の増加と共に増加する。結果を表2にまとめる。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例10:別の第四級アンモニウム添加剤ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドの効果
実施例1の塗料を、5%w/wのベンジルトリメチルアンモニウムクロリドと混合し、下塗りした鋼板上にドローダウン塗布し、実施基準に従って硬化した。得られた塗膜表面は、いくらか破壊を示した。上記板試料を、表3中の仕様に従って調製したLudox(登録商標)HS-40懸濁液中に浸漬した。これらの結果は、ちょうど粒子濃度が減少した時に、pH低下により結果として(表面濡れ性の導入によって測定されるような)粒子の付着が改善されることを示した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例11:可変イオン強度の効果を確立する。
実施例1の塗料を、5%w/wのベンジルトリメチルアンモニウムクロリドと混合し、下塗りした鋼板上にドローダウン塗布し、実施基準に従って硬化した。得られた塗膜表面は、いくらか破壊を示した。上記板試料を、イオン強度を塩化ナトリウムの添加によって変化させた表3中の仕様に従って調製した6%w/wLudox(登録商標)HS-40懸濁液中に浸漬した。これらの結果は、イオン強度増大により、結果として表面濡れ性の導入によって測定されるような粒子の付着が改善されることを示した。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例12:別の添加物の効果を確立する。
実施例1の塗料に、添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを説明する構造的特徴の一部または全て、即ち、有機カチオン部分、低表面エネルギー(界面活性剤)部分、トリアルコキシシリル部分を組み込む別の添加剤を配合した。
結果を表5にまとめる。N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドによって、最適な性能を示す。カチオン中心は、加水分解されたアルコキシシランより、Ludox(登録商標)HS-40懸濁液の付着のために必要とされる。カチオンの疎水性遮蔽は、付着の効果を低減する。効果を発揮するのに低表面エネルギー基が必要である。低表面エネルギー基は、その有効性が様々である。いくつかの低表面エネルギー基は、塗装面の破壊をもたらす。
【0066】
【表5-1】
【0067】
【表5-2】
【0068】
これらの結果は、第四級アンモニウムイオンが一般的にこの方法に有用であり、より強くアルキル化したQAS(より多くの電荷遮蔽)はより低い活性を示し、アルコキシシランはこのグループ内で最も効果的であることを示唆する。
【0069】
実施例13:Laponite S482コーティングへの濃度の効果
塗料中の界面活性イオンの濃度は1、3、4、および5%w/wのレベルで変化させた。水性懸濁液中のLaponite S482の濃度は0.01、0.05、0.1、0.5、1および2%w/wのレベルで変化させた。成膜境界レベルは、水性懸濁液が塗装面の超親水性濡れを示す点として定義される。
【0070】
【表6】
【0071】
これらの結果は、基板表面の超親水性濡れが発生するために、電気活性添加剤およびLaponite S482の濃度の両方が、最適なレベルであることが必要であることを示し、超親水性濡れとは、表面改質粒子が高密度配列で基材に結合されていることを表す。
【0072】
実施例14:塗装面における添加剤の検出
グロー放電発光分光法(GDOS)によって測定される塗膜における電気活性添加剤の存在を、ケイ素と塩素の深さプロファイル個体総数に従ってモニターした。PPGオーストラリアによって配合された市販のコイルコーティングを、電気活性添加剤の活性を説明するために使用した。この塗料系の組成物を、このクラスの材料の典型的な特性により、以下のように一般的に説明する場合がある。約50体積%固体分の溶剤系塗料である。固形分の約40%は、顔料、主として二酸化チタンである。固形分の残りの60%の内、その量の約80%は、ヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂であり、20%がアルキル化メラミンホルムアルデヒド架橋樹脂である。上記混合物は、硬化のための酸触媒を含む少量の添加剤を含む。GDOS測定は、未変性対照および5%w/wの電気活性添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する変性塗料で行った。
【0073】
図2および3は、2つの例:試料SM‐13および試料SM‐20、それぞれ、電気活性添加剤を含まない塗料および電気活性添加剤を含む塗料の直接の表面における元素の個体総数を示す。GDOS微量分析は、塗料体積の上部1μmのケイ素の原子パーセントを示す。上記2つの場合に関するデータの比較により、直接の表面でのケイ素個体総数が電気活性添加剤を含有する塗料に関してより高く(4%に対して10%)、0.2μmの深さを通るシグナルの積分強度がかなり大きい。(未変性塗料中のケイ素源は、ケイ素含有界面活性剤である。)
【0074】
図4は、5%の添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する塗料の試料の元素の深さプロファイルのGDOS測定である。それにより、電気活性添加剤を含有する塗料の直接の表面領域における塩素のシグナルの存在を示す。これらの結果により、電気添加剤が、塗料の表面に移行し、直接の表面領域に局在化していることを示す。このような局在化の結果として、添加剤は、本明細書中に記載されている方法で上澄み液中のイオン性材料と静電的に相互作用するために利用可能であると推測される。
【0075】
実施例15:塗料の表面のLudox(登録商標)コロイダルシリカ層の検出および厚さの評価
電気活性添加剤(5%w/w)を含有する塗装試料板SM‐21を、Ludoxコロイドシリカ(5%w/w)の水性懸濁液に曝露した。水性懸濁液は、塗料の表面を完全に濡らした。上記板を、空気中で乾燥させた。乾燥した上記板をGDOSにより分析して、元素の深さプロファイルを明らかにした(
図5および6)。
図5は、上記処理により結果として、表面上にシリカコロイドの層を形成することを示す実測値である。
図6は、約100nmにおける、付着されたシリカ層の平均厚さの評価を可能にする、より精密な測定値である。
【0076】
図6中のGDOSの結果により、塗料の直接の表面領域が完全にケイ素と酸素から構成されることを示す。深さの増加に伴って、ケイ素濃度個体総数は、(塗料からの)炭素の濃度が増加するにつれて減少する。この挙動は、表面粗さに起因する不均一なエッチングによる異なる元素組成の層に対応するシグナルが混ざった、粗い表面上の低解像度測定値の典型的なものである。
【0077】
一般に、適度な表面光沢を有するものなどの、コイルコーティング塗料の表面は、多数のスパイクおよび欠陥を有する1μmのオーダーのRa表面粗さを有する。このような場合には、表面層の厚さを、マトリックス中では安定した濃度を有するが、表面層中ではゼロ濃度を有することが知られている元素の半分の高さに等しいものに近似する。従って、窒素シグナルの半分の高さを用いることによって、約100nmのコロイドシリカ層の厚さを概算することができる。
【0078】
この結果は、電気活性塗装面上のLudox(登録商標)懸濁液の超親水性濡れによって形成された水性層の乾燥により、結果として上澄み液膜中の材料の全てを付着させるという推論を支持する。理論に束縛されることなく、塗料中の界面活性イオンおよび水性相中に懸濁された表面改質イオン性材料の間の静電引力は、厚さで単分子層を近似する表面改質イオン性材料層により塗料の直接の表面が覆われている、電荷中和の平衡状態に到達し、および結果として、表面改質イオン性材料のいずれかを自由に懸濁したままにすると提案するのが妥当である。水性相中においては、静電的にこの表面から反発される。
【0079】
図1a〜
図1dに示すように、粒子間の距離が減少するので、互いから比較的大きい距離のナノ粒子材料間の反発力は指数関数的に増加する。しかし、粒子の非常に接近した臨界点で、粒子がここで強い引力を受けるように、吸引力が急激に増加し、かつ支配的となる。ナノ粒子が互いへの接着力を確立すると、それらを共に保持する力に対抗することが非常に困難になる。
【0080】
このように電気活性付着法は、制御された厚さおよび良好な構造的一体性を有する薄いコーティングを付着するために用いることができる。
【0081】
実施例16:塗装面上のLaponiteフィロシリケート粒子分布の検出
5%w/wの電気活性添加剤N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する塗装板を、0.05、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8および1.0%w/wのレベルでの様々な濃度のLaponite(登録商標)S482フィロシリケートの水性懸濁液中に浸漬した。上記板を、乾燥し、およびMgシグナルをマッピングする、EPMAにより分析し、その結果を
図7に示した。Mgは、この配合中のLaponiteに固有であり、従って、表面上にLaponiteが存在する兆候である。塗料試験片のマッピング領域のサイズは、512μm×512μmである。Mgの存在を、32が記録された最大値である、0(青)〜32(赤)のスケールにマッピングされる。これらの結果では、表面は、境界条件を決定するための実施例での結果に合わせて、0.4〜0.6%のLaponite濃度で(この技術の解像度の下で観察されるように)完全な被覆に近づくことは明らかである。
【0082】
実施例17:改善された接着性の証拠
SSSを含有する塗料の試料を、表7に示す仕様に従った市販のシリカ製品の懸濁液で処理した。対照試料には、SSSおよびシリカを含まない標準塗料、並びにSSS添加剤を含まない標準塗装板上にシリカコーティングを塗布した塗料を包含する。水接触角および耐炭素吸収性を、以下の方法を用いて、各試料について測定した。
【0083】
各試料に対して、「水二重摩擦(water double rub)」法を行った。この方法では、塗料の表面を、湿潤綿パッドを用いて前後両方向に10回繰り返して摩擦した。上記水摩擦試験の後、水接触角試験および耐炭素吸収性試験を上記板上で重ねて行った。水接触角の増加により、シリカが除去されたことを示す。炭素吸収による上記板のΔLの増加(即ち、暗色化)もまた、シリカ層の存在が塗装面におけるカーボンダストの吸収に対するバリアとして作用するシリカコーティングの除去を示す。
【0084】
これらの結果は、元の接触角および耐炭素吸収性の維持に反映されるように、SSSの存在が表面へのシリカの接着力を大きく改善することを示す。
【0085】
【表7】
【0086】
耐炭素吸収性方法:
使用したカーボンは、Evonik Degussa Australia社製のSpecial Black 4 Powderである。上記板の初期の「L」色データを、Hunter Labシステムを使用して記録した。水中の15w/w%カーボンスラリーを上記試料表面(直径約4cmの領域)に塗布し、上記試料を70℃で1時間乾燥した。オーブンから取り出した後、試料を冷却した。緩く付着した炭素粉末を表面から静かに除去した。上記試料を流水下に置き、柔らかい塗装用刷毛で6回ブラッシングすることによって、更なる炭素を表面から除去した。上記試料を乾燥させ、色読取「L」値を記録する。上記試料を再度流水下に置き、柔らかい塗装用刷毛で更に10回ブラッシングすることによって、更なる炭素を表面から除去した。上記試料を乾燥させ、色読取「L」値を記録する。
【0087】
実施例18:シリカコーティング厚さの変化
N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド(5%w/w)を含有する塗装試料板SM‐21を、Ludox HS40コロイドシリカ(6%w/w)の水性懸濁液に5秒間曝露した。上記混合物から取り出した後、上記板を、100℃のオーブン中で60秒間乾燥させた。EPMAにより評価したシリカコーティングの厚さは510nmであった。
【0088】
可変コーティングの厚さは、より希薄なシリカ懸濁液を使用することによって得ることができる。ドローダウンバー技術を、様々な濃度のシリカ懸濁液と共に使用した。Ludox(登録商標)HS40およびLudox(登録商標)AM30シリカ懸濁液を、#0003ドローダウンバー(Gardiner)を使用して、電気活性添加剤(5%w/w)を含有する塗装試料板SM‐21に塗布した。上記板を、100℃のオーブン中で20秒間乾燥させた。シリカコーティング厚さ評価を、EPMAにより行った(表8)。
図8および
図9によって、シリカコーティング厚さは、それぞれ、Ludox(登録商標)HS40およびLudox(登録商標)AM30に関する所定の液膜厚さに対するシリカ濃度に比例することを示す。
【0089】
【表8】
【0090】
FTIR(フーリエ変換赤外分光法)分光法を、中間赤外1200cm
−1の領域中のシリカの吸収ピークの積分強度に対する、EPMA(電子プローブ微量分析装置)厚さ測定の相関関係を確立するために使用した。EPMAに用いた試料板を、ダイヤモンド結晶を用いたPerkin Elmer Spectrum装置のATR(減衰全反射)分光法によって測定した。コーティングされていない塗装板に対するコーティングされた塗装板のシリカピークに関して、デジタル差スペクトルを得た。このピークの面積を、デジタル積分により決定し(表8)、これらの値をEPMAの厚さ相互に関連づけた(
図10)。従って、本発明の開示の方法を用いて塗布したシリカコーティングの存在を検出するために、およびこの相関関係を用いて、その厚さを評価するために、FTIRを使用することができる。
【0091】
実施例19:シリカコロイド付着層への金属/金属酸化物ナノ粒子の導入
銀/亜鉛酸化物ナノ粒子の混合物(発明の名称「Nano silver−zinc oxide composition」の、Polymer CRC社の米国特許第8,673,367号からの引用)を、シリカに対して1%、5%および10%w/wの濃度で、高速ミキサーを用いて、BYK2010高分子分散剤(BYK Additives & Instruments,Altana)を使用して、Ludox HS40シリカ懸濁液(水中6%w/w)中に懸濁させた。上記懸濁液は、沈降に対して安定でなかった。上記懸濁液を、[N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含有する]塗装試料板SM‐21上に浸漬コーティングした。上記板の表面をEPMAで分析して、シリカコーティング中に組み込まれた銀および酸化亜鉛の存在を明らかにした。銀/亜鉛酸化物ナノ粒子組成物が、約30質量%の銀および58質量%の亜鉛であり、残部が酸素である、シリカコーティング中の5%w/wの銀/亜鉛酸化物ナノ粒子の場合に関して、結果を示す。上記結果は同じ分析領域を表す。これらの方法における銀および亜鉛の唯一の供給源は、組み込まれたナノ粒子の混合物である。銀/亜鉛酸化物の混合物が抗菌性を有することが報告されている。従って、開示された方法は、シリカが効果的に表面の化学的性質を変化させる可能性を有する他の材料のためのバインダーとして機能する表面処理剤を作製するのに使用することができる。
【0092】
図11、
図12および
図13には、シリカ混合物(5%)中の銀/亜鉛酸化物ナノ粒子でコーティングされた(N‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリドを含む)試料塗装板SM‐21の表面の、それぞれ、シリカ、銀および亜鉛のEPMA分布マップを示す。マップ領域は、512μm×512μmである。各場合において、白い領域がマッピングされた元素のより高い濃度を示す[確認せよ]。
図12および
図13の比較によって、銀マップおよび亜鉛マップの間の対応関係を示し、即ち、観察されたシグナルは、銀/亜鉛酸化物混合ナノ粒子によるものである。
【0093】
実施例20:シリカコロイド付着層へのポリマーラテックスの導入
両方共Arkema社から入手できる、Kynar Aquatec(登録商標)ARCおよびKynar Aquatec(登録商標)CRXを含む、2つのPVDF(二フッ化ポリビニリデン)/アクリル樹脂ラテックスを使用した。これらは、両方とも約100nmの粒径を有するアニオン性ラテックス懸濁液である。Ludox HS40を、懸濁した固形分の総質量が混合物の2%であった、安定な懸濁液を得るために、表9に示す質量比に従って水中のKynarラテックスと混合した。塗料中に5%w/wの電気活性添加剤を有する塗装試料板SM‐21を、#0003ドローダウンバーを使用して、コロイド混合物でコーティングした。(Kynar CRX系に関する)水接触角データにより、Kynar樹脂ラテックスの割合が増加するにつれて、接触角が増加することを示す。即ち、疎水性フルオロカーボンKynarの割合が増加するにつれて、表面はより疎水性になる。このように、ラテックスを用いて表面改質を可能にするため、そのように塗料の表面にラテックス特性を発揮するため、それによって表面の物理的性質を変化させるため、シリカがバインダーとして作用する。
【0094】
【表9】
【0095】
図14は、Kynar ARC PVDFラテックスおよびLudox HS40の混合物から形成されたコーティングの面積の50,000倍の倍率のFEGSEM顕微鏡写真である。Kynar:Ludox質量比は、合計2%固形分の水性懸濁液中において0.4であった。
図14に示すように、より大きなKynar ARCラテックス粒子が、より小さいLudoxシリカコロイド粒子の塊の全体に分散されている。懸濁しながら、粒子の表面がアニオン性であるので、系中の疎水性/親水性分離が大幅に回避される。
【0096】
実施例21:水/アルコール混合物中でのシリカの懸濁液の使用
水中の3%v/vのLudox(登録商標)HS40の懸濁液(6%w/w)を、メタノールで1%v/vの混合物に希釈した。上記懸濁液は、安定であり、粒子凝集の形跡を有さないことは明らかである。様々な量の電気活性添加剤を有する試料塗装板を、この懸濁液中に浸漬した。上記懸濁液はまた、#0003ドローダウンバーを用いて、様々な量の電気活性添加剤を有する試料塗装板に塗布した。観察結果を表10に記録する。シリカコーティングの存在および厚さを、上記
図10に示す関係を用いて、FTIR分光法によって決定した。このデータは、溶媒混合物中の懸濁液が、本開示の方法によって、イオン交換により、シリカコーティングを作製するために使用され得ることを示す。溶媒混合物は、疎水性塗装面を濡らす能力を変化させる。溶媒混合物は、水分子間の水素結合の影響を受けている操作中の方法のメカニズムの多くの態様に影響を与えると考えられている。
【0097】
【表10】
【0098】
多くの特定の方法の実施形態が記載されてきたが、上記方法は他の多くの形態で実施してもよいと理解すべきである。
【0099】
以下の特許請求の範囲および前述の説明において、明細書中において言語または必要な含意を表現することによる別の方法が必要な場合を除き、「含む(comprise)」の語および「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形はそのような包括的な意味で使用される、即ち、記載された特徴の存在を特定するが、本明細書中に開示される装置および方法の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0100】
本願に基づいて、または本願から優先権を主張して、更なる特許出願をオーストラリアまたは外国に提出してもよい。なお、以下の暫定的な特許請求の範囲は、例示としてのみの使用によって提供され、このような将来の適用において特許請求の範囲を限定するものではないと解されるべきである。後日、暫定的な特許請求の範囲に特徴を追加しても、または上記特許請求の範囲から特徴を除外してもよく、それによって、更に、本発明を定義または再定義する。