(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態のはんだ組成物は、以下説明するフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
【0011】
[フラックス組成物]
まず、本実施形態に用いるフラックス組成物について説明する。本実施形態に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)チクソ剤を含有するものである。
【0012】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ここで、水素添加ロジンとしては、完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう)などが挙げられる。また、不飽和有機酸としては、(メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸などが挙げられる。
また、例えば、はんだ付け性の観点から、水添酸変性ロジンと、ロジンエステルとを併用してもよい。ロジンエステルとしては、ロジン類およびロジン系変性樹脂をエステル化したものが挙げられる。
【0013】
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上65質量%以下であることが好ましく、25質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。また、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。
【0014】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤は、(B1)水酸基含有臭素系活性剤と、(B2)アミンアダクト化合物とを含有することが必要である。
(B1)成分としては、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、および、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、およびトリブロモネオペンチルアルコールなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、ぬれ性および保存安定性の観点から、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、または、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールが好ましく、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールがより好ましい。
【0015】
(B1)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限以上であれば、ぬれ性を更に向上できる。また、配合量が前記上限以下であれば、はんだ組成物の保存安定性を確保できる。
【0016】
(B2)成分としては、アミン化合物(例えば、ポリアミン、尿素など)と、アミンと反応性のある官能基を有する成分(例えば、エポキシ樹脂など)とのアダクト体が挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂などの硬化剤として使用されるエポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤などが使用できる。
(B2)成分としては、より具体的には、「フジキュアーFXE−1000」、「フジキュアーFXR−1020」、「フジキュアーFXR−1081」(T&K TOKA社製)、「アミキュアPN−23」(味の素ファインテクノ社製)、および「EH−4346S」(ADEKA社製)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
(B2)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.01質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限以上であれば、ぬれ性を更に向上できる。また、配合量が前記上限以下であれば、絶縁信頼性を確保できる。
また、(B2)成分の(B1)成分に対する質量比((B2)/(B1))は、ぬれ性と保存安定性とのバランスの観点から、1/10以上1/2以下であることが好ましく、1/7以上1/3以下であることがより好ましく、1/5以上1/3以下であることが特に好ましい。
【0018】
本実施形態において、(B)成分としては、(B1)成分および(B2)成分以外の公知の活性剤((B3)成分)を使用してもよい。このような(B3)成分としては、有機酸、およびアミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、およびグリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、およびジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、トリマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、およびピコリン酸などが挙げられる。
【0020】
アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(アミン(シクロヘキシルアミンおよびジエチルアミンなど)やアミノアルコール(トリメチロールアミンなど)などの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、および臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびバリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、およびセバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、並びに、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0021】
(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限以上であれば、はんだボールがより確実に抑制できる。また、配合量が前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁信頼性を確保できる。
【0022】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような溶剤としては、沸点170℃以上の溶剤を用いることが好ましい。
このような溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEH)、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(MTEM)、およびジブチルマレイン酸などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。溶剤の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
【0024】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)チクソ剤としては、硬化ひまし油、ポリアマイド類、アマイド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、およびガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
(D)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限以上であれば、十分なチクソ性が得られ、ダレを十分に抑制できる。また、配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎて、印刷不良となることはない。
【0026】
[他の成分]
本発明に用いるフラックス組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、消泡剤、酸化防止剤、改質剤、つや消し剤、および発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0027】
[はんだ組成物]
次に、本実施形態のはんだ組成物について説明する。本実施形態のはんだ組成物は、前記本実施形態のフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0028】
[(E)成分]
本実施形態に用いる(E)はんだ粉末は、鉛フリーはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズ(Sn)を主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)およびアンチモン(Sb)などが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、およびアルミニウム(Al)などが挙げられる。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
【0029】
鉛フリーはんだ粉末におけるはんだ合金としては、具体的には、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Cu、Sn−Ag−Bi、Sn−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、Sn−Sb、Sn−Zn−Bi、Sn−Zn、Sn−Zn−Al、Sn−Ag−Bi−In、Sn−Ag−Cu−Bi−In−Sb、In−Agなどが挙げられる。これらの中でも、はんだ接合の強度の観点から、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金が好ましく用いられている。そして、Sn−Ag−Cu系のはんだの融点は、通常200℃以上250℃以下である。なお、Sn−Ag−Cu系のはんだの中でも、銀含有量が低い系のはんだの融点は、210℃以上250℃以下(より好ましくは、220℃以上240℃以下)である。
【0030】
(E)成分の平均粒子径は、通常1μm以上40μm以下であるが、はんだ付けパッドのピッチが狭い電子基板にも対応するという観点から、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、2μm以上30μm以下であることがさらにより好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0031】
[はんだ組成物の製造方法]
本実施形態のはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0032】
[電子基板]
次に、本実施形態の電子基板について説明する。本実施形態の電子基板は、以上説明したはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とするものである。本実施形態の電子基板は、前記はんだ組成物を用いて電子部品を電子基板(プリント配線基板など)に実装することで製造できる。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、およびジェットディスペンサーなどが挙げられる。
また、前記塗布装置にて塗布したはんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品をプリント配線基板に実装するリフロー工程により、電子部品を電子基板に実装できる。
【0033】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品およびプリント配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記プリント配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒート温度を150〜200℃に設定し、プリヒート時間を60〜120秒間に設定し、ピーク温度を230〜270℃に設定すればよい。
【0034】
[変形例]
また、本発明のはんだ組成物および電子基板は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記電子基板では、リフロー工程により、プリント配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、プリント配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、およびInGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、並びに、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO
2、およびエキシマーなど)が挙げられる。
【0035】
本実施形態のはんだ組成物の変形例として、例えば、次のようなはんだ組成物が挙げられる。
本実施形態の別のはんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤および(C)溶剤を含有するフラックス組成物と、(
E)はんだ粉末とを含有し、前記(B)成分が、(B1)2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールを含有することを特徴とするものである。
このはんだ組成物は、前述の本実施形態のはんだ組成物と、(i)(B2)成分を必須
成分としない点、(ii)(B1)成分を、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールに限定している点で相違している。
すなわち、(B1)成分は、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールであることが必要である。これにより、(B2)成分を用いずとも、ある程度のぬれ上がりを確保できる。
なお、(B1)成分以外の各成分は、前述の本実施形態のはんだ組成物における各成分と同様である。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(酸価:240mgKOH/g)、商品名「パインクリスタルKE−604」、荒川化学工業社製
ロジン系樹脂B:ロジンエステル、酸価は4〜12mgKOH/g、商品名「ハリタックF85」、ハリマ化成社製
((B1)成分)
水酸基含有臭素系活性剤A:トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール
水酸基含有臭素系活性剤B:2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、東京化成工業社製
((B2)成分)
アミンアダクト化合物:商品名「フジキュアーFXR−1020」、T&K TOKA社製
((B3)成分)
有機酸:スベリン酸、東京化成工業社製
((C)成分)
溶剤A:テトラエチレングリコールジメチルエーテル(MTEM)、東邦化学工業社製
溶剤B:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEH)、日本乳化剤社製
溶剤C:2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、日信化学社製
((D)成分)
チクソ剤:硬化ひまし油、商品名「ヒマコウ」、KFトレーディング社製
((E)成分)
はんだ粉末:合金組成はSn−3.0Ag−0.5Cu、粒子径分布は20〜38μm、はんだ融点は217〜220℃
(他の成分)
酸化防止剤:商品名「イルガノックス245」、BASF社製
【0037】
[実施例1]
ロジン系樹脂A34.5質量%、ロジン系樹脂B15質量%、水酸基含有臭素系活性剤2質量%、アミンアダクト化合物0.5質量%、有機酸1質量%、溶剤A21質量%、溶剤B16質量%、溶剤C5質量%、チクソ剤1質量%および酸化防止剤4質量%を容器に投入し、プラネタリーミキサーを用いて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物11質量%、およびはんだ粉末89質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、プラネタリーミキサーにて混合することではんだ組成物を調製した。
【0038】
[実施例2〜5]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例1〜3]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
【0039】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(ぬれ上がり、保存安定性、絶縁抵抗値、ボイド、印刷性、微小ランド溶融性、粘着性)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)ぬれ上がり
QFN(Quad Flatpack No Lead)部品(ピッチ:0.5mm)を搭載できる評価用基板に、120μm厚のメタルマスクを使用して、はんだ組成物を印刷し、QFN部品(下面電極はSnメッキ)を搭載し、リフロー炉(大気リフロー、タムラ製作所社製)ではんだ組成物を溶解させて、はんだ付けを行ったものを試験基板とする。ここでのリフロー条件は、大気下で、プリヒート温度が150〜180℃(80秒間)で、温度220℃以上の時間が40秒間で、ピーク温度が240℃である。得られた試験基板を拡大鏡にて観察し、QFN部品のCu端面へのぬれ上がり面積を測定し、以下の基準に従って、ぬれ上がりを評価した。
◎:ぬれ上がり面積が60%以上である。
〇:ぬれ上がり面積が50%以上60%未満である。
△:ぬれ上がり面積が40%以上50%未満である。
×:ぬれ上がり面積が40%未満である。
(2)保存安定性
まず、はんだ組成物を試料として、粘度を測定する。その後、試料を密封容器に入れ、温度30℃の恒温槽に投入し、30日間保管し、保管した試料の粘度を測定する。そして、保管前の粘度値(η1)に対する、温度30℃にて30日間保管後の粘度値(η2)の変化率[{(η2−η1)/η1}×100](単位:%)を求める。なお、粘度測定は、JIS Z3284に記載の方法に準拠し、スパイラル方式の粘度測定(測定温度:25℃、回転速度:10rpm)によりを行う。
そして、粘度変化率の結果に基づいて下記の基準に従って、保存安定性を評価した。
○:粘度変化率が、−10%以上10%以下である。
△:粘度変化率が、−20%以上−10%未満、または、10%超20%以下である。
×:粘度変化率が、−20%未満、または、20%超である。
(3)絶縁抵抗値
規格番号IEC 61189−5/10.1に記載の方法に準拠して、絶縁抵抗値を測定した。すなわち、櫛形電極基板(導体幅:0.318mm、導体間隔:0.318mm、大きさ:50mm×50mm)に、メタルマスク(櫛形電極パターンに合わせてスリット状に加工したもの、厚み:100μm)を用いてはんだ組成物を印刷した。その後、(1)ぬれ上がりの試験と同様のリフロー条件にて、リフローを行い、試験基板を作製した。
この試験基板を、温度85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿試験機に投入し、絶縁抵抗値を測定した。そして、以下の基準に従って、絶縁抵抗値を評価した。
○:絶縁抵抗値が、1×10
9Ω以上である。
△:絶縁抵抗値が、1×10
8Ω以上1×10
9Ω未満である。
×:絶縁抵抗値が、1×10
8Ω未満である。
(4)ボイド
パワートランジスタ(大きさ:5.5mm×6.5mm、厚み:2.3mm、ランド:スズめっき、ランドの面積:30mm
2)およびQFN(大きさ:6mm×6mm、ランド:スズめっき、ランドの面積:36mm
2)を実装できる電極を有する基板上に、対応するパターンを有するメタルマスク(厚み:0.13mm)を用い、はんだ組成物を印刷した。その後、はんだ組成物上にパワートランジスタおよびQFNを搭載して、(1)ぬれ上がりの試験と同様のリフロー条件にて、リフローを行い、試験基板を作製した。得られた試験基板におけるはんだ接合部を、X線検査装置(「NLX−5000」、NAGOYA ELECTRIC WORKS社製)を用いて観察した。そして、リフロー後のパワートランジスタおよびQFNでのボイド率[(ボイド面積/ランド面積)×100]を測定した。
そして、以下の基準に従って、ボイドを評価した。
○:ボイド面積率が、15%以下である。
×:ボイド面積率が、15%超である。
(5)印刷性
印刷機MK−878SV(ミナミ社製)と厚み0.1mmのメタルマスクとメタルスキージを使用し、印刷速度50mm/sでSP−TDC基板(100点のドットパターンを有する基板、ドットの直径:0.2mmφ〜0.5mmφ)にはんだ組成物を印刷する。20枚のSP−TDC基板に印刷した後、温度25℃、相対湿度50%の条件で1時間放置する。放置後、印刷を再開し、SP−TDC基板10枚にはんだ組成物を印刷する。その後、三次元形状解析装置にて、転写率(100ドット分の体積率の平均値)の測定を行う。
○:放置後の平均転写率(基板10枚の転写率の平均値)が放置前と同じ値になるのが3枚目以内である。
△:放置後の平均転写率が放置前と同じ値になるのが4枚目または5枚目である。
×:放置後の平均転写率が放置前と同じ値になるのが6枚目以降である。
(6)微小ランド溶融性
直径0.2mmφの開穴が97個設けられ、厚みが100μmのメタルマスクを用い、はんだ組成物を基板上に、印刷速度50mm/sec、印圧0.2Nの条件で印刷した。その後、(1)ぬれ上がりの試験と同様のリフロー条件にて、リフローを行い、試験基板を作製した。試験基板の印刷箇所(97個)のうち、はんだが溶融した溶融箇所を測定し、以下の基準に従って、溶融性を評価した。
○:溶融箇所が、90個以上である。
△:溶融箇所が、50個以上90個未満である。
×:溶融箇所が、50個未満である。
(7)粘着性
(1)ぬれ上がりの試験で用いた試験基板について、フラックス残さを指触して、その粘着性を以下の基準で評価した。
〇:指触の貼り付き跡がない。
△:指触の貼り付き跡が生じる。
×:指に樹脂成分が付着する。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1〜4)を用いた場合には、ぬれ上がり、保存安定性、絶縁抵抗値、ボイド、印刷性、微小ランド溶融性、および粘着性の評価結果が全て良好であることが確認された。従って、本発明のはんだ組成物は、ぬれ性が優れ、かつ十分な保存安定性を有することが確認された。
これに対し、(B1)成分および(B2)成分のいずれかを含有しないはんだ組成物(比較例1〜3)を用いた場合には、ぬれ上がり、および保存安定性の少なくともいずれかが劣ることが分かった。
ただし、(B2)成分を含有しない場合でも、(B1)成分として、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールを用いた場合(実施例5)には、ある程度のぬれ上がりを確保できることが分かった。