(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)酸化防止剤と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(B)酸化防止剤が、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を含有し、
前記(C)光重合開始剤が、オキシムエステル系光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
前記(B)酸化防止剤を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.40質量部以上12.0質量以下含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
前記(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2.0質量部以上6.0質量部以下含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、紫外線に対する高い感度を損なうことなく、アルカリ現像性、金めっき性等のめっき性に優れた光硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)酸化防止剤と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(B)酸化防止剤が、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(B)酸化防止剤が、前記(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(B)酸化防止剤を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.40質量部以上12.0質量以下含有する[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2.0質量部以上6.0質量部以下含有する[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(B)酸化防止剤が、前記(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を含有し、前記(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部以上1.5質量部以下含有する[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物が、下記式(1)
【化1】
の化合物である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物が、下記式(2)
【化2】
の化合物である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(C)光重合開始剤が、オキシムエステル系光重合開始剤を含有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9][1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[10][1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を有するドライフィルム。
[11][1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化物を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、(B)酸化防止剤が、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含有することにより、紫外線に対する高い感度を損なうことなく、金めっき性等のめっき性に優れた光硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の態様によれば、(B)酸化防止剤が、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含有することにより、優れたアルカリ現像性が得られるので、感光性樹脂組成物の塗膜の非露光部位を確実にアルカリ現像することができ、小径のビア開口部でも確実に塗膜をアルカリ現像で除去することができる。
【0011】
本発明の態様によれば、(B)酸化防止剤が(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を含有することにより、アルカリ現像性がさらに向上し、感光性樹脂組成物の塗膜の非露光部位をより確実にアルカリ現像することができる。
【0012】
本発明の態様によれば、(B)酸化防止剤を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.40質量部以上12.0質量以下含有することにより、紫外線に対する感度が確実に向上しつつ、アルカリ現像性、金めっき性等のめっき性がさらに向上する。
【0013】
本発明の態様によれば、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して2.0質量部以上6.0質量部以下含有することにより、感度と金めっき性等のめっき性がバランスよく向上する。
【0014】
本発明の態様によれば、(B)酸化防止剤が、(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を含有し、(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して0.50質量部以上1.5質量部以下含有することにより、アルカリ現像性と金めっき性等のめっき性がバランスよく向上する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)酸化防止剤と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(B)酸化防止剤が、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含有する。
【0016】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
(A)成分であるカルボキシル基含有感光性樹脂の化学構造は、特に限定されず、例えば、1個以上の感光性の不飽和二重結合と遊離のカルボキシル基を有する樹脂が挙げられる。前記カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させることで得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0017】
前記多官能エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であれば、化学構造は、特に限定されない。また、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、エポキシ当量の上限値は、3000g/eqが好ましく、2000g/eqがより好ましく、1500g/eqが特に好ましい。一方で、エポキシ当量の下限値は、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。
【0018】
多官能エポキシ樹脂の樹脂種としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、オルト−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらのエポキシ樹脂に、さらにBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものを使用してもよい。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸等を挙げることができる。これらのうち、入手と取り扱い性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを反応させる方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを有機溶媒等の非反応性希釈剤中で溶解させて加熱する方法等が挙げられる。
【0021】
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応により生成した水酸基に付加反応することで、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に遊離のカルボキシル基が導入される。多塩基酸及び多塩基酸無水物の化学構造は、いずれも特に限定されず、飽和、不飽和のいずれでも使用可能である。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した各種多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを反応させる方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを有機溶媒等の非反応性希釈剤中で溶解させて加熱する方法等が挙げられる。
【0023】
上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂がカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できる。また、上記のようにして得られた多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を付加反応させて得られる、ラジカル重合性不飽和基をさらに付加した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を、カルボキシル基含有感光性樹脂として使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基をさらに付加した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂は、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有している。従って、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、感光性がさらに向上したカルボキシル基含有感光性樹脂である。
【0024】
1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル化合物を挙げることができる。グリシジル化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジル化合物のグリシジル基は、1分子中に1つ有していてもよく、複数有していてもよい。また、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と、グリシジル化合物等の1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物と、を反応させる方法は、特に限定されず、例えば、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物とを、有機溶媒等の非反応性希釈剤中で溶解させて加熱する方法等が挙げられる。
【0026】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、その下限値は、アルカリによる現像の点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、例えば、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の耐湿性と絶縁信頼性の低下を確実に防止する点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0027】
カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、光硬化物の強靭性及び指触乾燥性の点から6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、例えば、アルカリによる現像の点から200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出される質量平均分子量を意味する。
【0028】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各成分を用いて上記反応工程にて調製してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、「KAYARAD ZAR−2000」、「KAYARAD ZFR−1122」、「KAYARAD FLX−2089」、「KAYARAD ZCR−1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z−250」(ダイセル・オルネクス株式会社)、「SP−4621」(昭和電工株式会社)等を挙げることができる。また、これらのカルボキシル基含有感光性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(B)酸化防止剤
(B)成分である酸化防止剤として、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物が使用される。(B)成分の酸化防止剤として、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物が使用されることにより、紫外線等の活性エネルギー線に対する高い感度を損なうことなく、金めっき性等のめっき性に優れた光硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができ、また、ハレーションを十分に防止して優れたアルカリ現像性が得られるので、感光性樹脂組成物の塗膜の非露光部位を確実にアルカリ現像にて除去することができ、例えば、小径のビア開口部や微細パット部でも確実に塗膜をアルカリ現像にて除去することができる。
【0030】
(B1)成分であるフェノール性水酸基とリンとを有する化合物としては、例えば、フェノール性水酸基とP(OR
1)(OR
2)(OR
3)(R
1、R
2、R
3は、有機基)で表される亜燐酸エステル(ホスファイト)構造とを骨格中に備えた化合物が挙げられる。フェノール性水酸基とP(OR
1)(OR
2)(OR
3)で表される亜燐酸エステル構造とを骨格中に備えた化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0031】
また、上記式(1)のブチル基に代えて、水素、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数5〜10アルキル基であるフェノール性水酸基とリンとを有する化合物でもよく、上記式(1)のメチル基に代えて、水素、炭素数2〜10のアルキル基であるフェノール性水酸基とリンとを有する化合物でもよい。上記式(1)で表される化合物として、「SumilizerGP」(住友化学株式会社)を挙げることができる。
【0032】
(B2)成分であるフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物としては、例えば、フェノールが、−R
4−S−R
5(式中、R
4は炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3の炭化水素、R
5は炭素数5〜20、好ましくは炭素数10〜15の炭化水素を表す。)の置換基で置換された化合物を挙げることができる。置換基−R
4−S−R
5の数は、少なくとも1つであり、2つが好ましい。
【0033】
フェノールが−R
4−S−R
5で置換された化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0034】
上記式(2)で表される化合物として、「Irganox1726」(BASF社)を挙げることができる。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物では、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物とフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を併用してもよく、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物とフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物のいずれか一方を使用してもよい。このうち、アルカリ現像性がさらに向上して感光性樹脂組成物の塗膜の非露光部位をより確実にアルカリ現像にて除去することができる点から、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物が好ましい。
【0036】
フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及びフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、金めっき性等のめっき性がさらに向上する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部(固形分、以下同じ)に対して、0.40質量部が好ましく、0.50質量部がより好ましく、1.0質量部がさらに好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及びフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物の配合量の上限値は、紫外線に対する感度が確実に向上しつつ、優れたアルカリ現像性を得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、12.0質量が好ましく、10.0質量部がより好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
【0037】
また、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を配合し、フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を配合しない場合には、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物の配合量の下限値は、金めっき性等のめっき性がさらに向上する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して1.0質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を配合し、フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を配合しない場合の、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物の配合量の上限値は、感度をさらに向上させる点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して10.0質量部が好ましく、7.5質量部がより好ましく、6.0質量部がさらに好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
【0038】
また、フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を配合し、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を配合しない場合には、フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物の下限値は、金めっき性等のめっき性がさらに向上する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して0.50質量部が好ましく、0.75質量部が特に好ましい。一方で、フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を配合し、フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を配合しない場合の、フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物の上限値は、アルカリ現像性がさらに向上する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して2.5質量部が好ましく、2.0質量部がより好ましく、1.5質量部が特に好ましい。
【0039】
また、(B)酸化防止剤として、必要に応じて、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び/または(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物と、(B1)成分及び(B2)成分以外の酸化防止剤(以下、「他の酸化防止剤」ということがある。)と、を併用してもよい。併用される他の酸化防止剤としては、例えば、リンも硫黄も含まないフェノール系酸化防止剤(以下、「フェノール系酸化防止剤」ということがある。)、フェノール性水酸基を有さないリン系酸化防止剤(以下、「リン系酸化防止剤」ということがある。)、フェノール性水酸基を有さない硫黄系酸化防止剤(以下、「硫黄系酸化防止剤」ということがある。)等を挙げることができる。
【0040】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス{2−[3−(3−iso−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ]1,1′−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス{2−[3−(4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ]1,1′−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]1,1′−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。上市されているヒンダードフェノール系酸化防止剤として、例えば、「Irganox 1010」(BASF社)を挙げることができる。
【0041】
リン系酸化防止剤としては、例えば、「Irgafos 168」(BASF社)として上市されているトリス(2,4−di−tert−ブチルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0042】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、下記一般式(I)で表わされる有機硫黄系化合物が挙げられる。
(R
6-S-CH
2CH
2COOCH
2)
4C・・・・(I)
(式(I)中、R
6は、炭素数10〜20のアルキル基を示し、4個のR
6は、同一でも異なっていてもよい。)R
6である炭素数10〜20のアルキル基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、基、ステアリル基などが挙げられる。上市されている硫黄系酸化防止剤としては、例えば、「Sumilizer TP−D」(住友化学株式会社)が挙げられる。
【0043】
他の酸化防止剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、ハレーションの抑制に確実に寄与する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して0.05質量部が好ましく、0.10質量部が特に好ましい。一方で、他の酸化防止剤の配合量の上限値は、高い感度を確実に維持する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して2.0質量部が好ましく、1.0質量部が特に好ましい。
【0044】
(C)光重合開始剤
(C)成分である光重合開始剤は、特に限定されず、いずれも使用することができる。光重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)-9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、1,8−オクタンジオン,1,8−ビス[9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,1,8−ビス(O−アセチルオキシム)、1,8−オクタンジオン,1,8−ビス[9−(2−エチルヘキシル)−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,1,8−ビス(O−アセチルオキシム)、(Z) −(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)(4−((1−メトキシプロパン−2−イル)オキシ) −2−メチルフェニル)メタノン O−アセチルオキシム等のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。オキシムエステル系光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に紫外線等の活性エネルギー線に対する高い感度を付与することができる。
【0045】
本発明では、オキシムエステル系光重合開始剤が配合されても、(B)酸化防止剤が、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物及び(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含有することで、光硬化反応時のハレーションを防止でき、アルカリ現像性、金めっき性等のめっき性に優れた光硬化膜を形成できる。
【0046】
また、オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を使用してもよく、例えば、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ベンジル−1−(ジメチルアミノ)プロピル−4−モルフォリノフェニル−ケトン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.10〜10質量部が好ましく、0.50〜5.0質量部が特に好ましい。
【0048】
(D)反応性希釈剤
(D)成分である反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にして、光硬化物の耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性等の向上に寄与する。
【0049】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。単官能の(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレートが挙げられる。また、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0〜100質量部が好ましく、10〜30質量部が特に好ましい。
【0051】
(E)エポキシ化合物
(E)成分であるエポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の光硬化物の架橋密度を上げて、十分な機械的強度を有する光硬化膜を得るためのものである。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、ポットライフをさらに向上させる点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されず、十分な機械的強度の光硬化物を確実に得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0〜100質量部が好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)〜(E)成分の他に、必要に応じて、他の成分、例えば、体質顔料、難燃剤、硬化促進剤、添加剤、着色剤、非反応性希釈剤等を、適宜、配合してもよい。
【0054】
体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、疎水性シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ等を挙げることができる。難燃剤は、本発明の感光性樹脂組成物の光硬化物に難燃性を付与するためのものであり、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。このうち、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。
【0055】
硬化促進剤としては、メルカプトベンゾオキサザール及びその誘導体、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等が挙げられる。添加剤としては、シリコーン系、炭化水素系及びアクリル系等の消泡剤、ポリカルボン酸アマイド等のチキソ剤等が挙げられる。
【0056】
着色剤は、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、黒色着色剤、橙色着色剤等、いずれの色彩の着色剤も使用可能である。上記着色剤には、例えば、白色着色剤である酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、黒色着色剤であるカーボンブラック、アセチレンブラック等の無機系着色剤や、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、アントラキノン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤などを挙げることができる。
【0057】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の塗工性や乾燥性を調節するためのものである。非反応性希釈剤として、例えば、有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(常温)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、室温(常温)にて、予備混練または予備混合を行ってもよい。
【0059】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、まず、導体箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、本発明の感光性樹脂組成物を塗工したドライフィルムを用いて、ソルダーレジスト膜を形成する方法について説明する。
【0060】
ドライフィルムは、支持フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルム)と、該支持フィルムに塗工されたソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層を保護するカバーフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)と、を有する積層構造となっている。支持フィルム上に本発明の感光性樹脂組成物を、ローラコート法、バーコータ法等の公知の方法で塗工して塗膜を形成後、該塗膜を乾燥処理することで、支持フィルム上にソルダーレジスト層を形成する。その後、形成したソルダーレジスト層上にカバーフィルムを積層することで、本発明の感光性樹脂組成物の塗膜を有するドライフィルムを作製できる。
【0061】
上記ドライフィルムのカバーフィルムを剥がしながらソルダーレジスト層とプリント配線板をはり合わせることで、プリント配線板上にソルダーレジスト膜を形成する。その後、必要に応じて、感光性樹脂組成物中の非反応性希釈剤(有機溶剤)を揮散させるために70〜120℃程度の温度で1〜20分間程度加熱する予備乾燥を行い、感光性樹脂組成物から非反応性希釈剤(有機溶剤)を揮発させてソルダーレジスト膜の表面をタックフリーの状態にする。形成したソルダーレジスト膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300〜400nmの範囲)を照射させる。その後、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することによりソルダーレジスト膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。現像後、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、プリント配線板上に、目的とするパターンを有するソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0062】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例として、感光性樹脂組成物をプリント配線板に塗工して絶縁保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜)を形成する方法について説明する。上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷法、スプレー塗工、バーコータ法、アプリケータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法等、他の公知の塗工方法にて、所望の厚さで塗布して塗膜を形成する。次に、必要に応じて、非反応性希釈剤を揮散させるために、60〜100℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行って、タックフリーの塗膜を形成する。次に、塗膜上に回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300〜400nmの範囲)を照射させて塗膜を光硬化させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用する希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、プリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1〜9、比較例1〜3
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温(25℃)にて混合分散させて、実施例1〜9、比較例1〜3にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0065】
なお、下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・KAYARAD ZAR−2000:固形分(樹脂分)65質量%、日本化薬株式会社
KAYARAD ZAR−2000は、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸を反応させて、エポキシアクリレートを得、エポキシアクリレートの生成した水酸基に多塩基酸を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシアクリレート樹脂である。
(B)酸化防止剤
・SumilizerGP:式(1)化合物、住友化学株式会社
・Irganox1726:式(2)化合物、BASF社
・Irganox 1010:フェノール系酸化防止剤、BASF社
・Irgafos 168:リン系酸化防止剤、BASF社
(C)光重合開始剤
・NCI−831:オキシムエステル系光重合開始剤、ADEKA社
・OXE−02:オキシムエステル系光重合開始剤、BASF社
(D)反応性希釈剤
・EBERCRYL8405:ダイセル・サイテック株式会社
(E)エポキシ化合物
・EPICRON 850−S:DIC社
【0066】
体質顔料
・ハイジライト H42M:昭和電工株式会社
難燃剤
・エクソリット OP−935:クラリアントジャパン社
硬化促進剤
・メラミン:日産化学工業株式会社
・DICY−7:三菱化学株式会社
添加剤
・X−50−1095C:消泡剤、信越化学工業株式会社
着色剤
・クロモフタルDPPオレンジTR:チバスペシャルティケミカルズ社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0067】
試験体作製工程
調製した感光性樹脂組成物を用いて以下のように試験体を作製した。
基板:ガラスエポキシ基板、「FR4」、銅箔厚み25μm
基板表面処理:5質量%硫酸処理
塗工:スクリーン印刷
予備乾燥:BOX炉にて、80℃、20分
露光:直描露光機(Nuvogo 800、Orbotech社)を用いて、露光条件100〜300mJ/cm
2にて露光処理
アルカリ現像:1質量%のNa
2CO
3水溶液、液温30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
ポストキュア(本硬化の加熱処理):150℃、60分
【0068】
上記のようにして得られた試験体の光硬化膜の厚さは、20〜23μmであった。
【0069】
評価項目
(1)感度
上記試験体作製工程にて、80℃、20分の予備乾燥を行った後の塗工基板について、感度測定用ステップタブレット(コダック社、21段)を設置し、ステップタブレットを通して100mJ/cm
2露光したものをテストピ−スとした。露光後、1質量%のNa
2CO
3水溶液を用い、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒にて現像を行った後の露光部分の除去されない部分を、数字(ステップ数)で表した。ステップ数が大きいほど感光特性が良好であることを示す。
【0070】
(2)アルカリ現像性
試験体作製工程において、スクリーン印刷に代えてスプレー塗工法にて感光性樹脂組成物を塗布後、80℃にて、20分〜80分間、10分間隔で予備乾燥したものを試験体とした。予備乾燥炉から試験体を取り出し、上記試験体作製工程のアルカリ現像条件にて現像を行い、現像後の塗膜の除去状態を目視により観察し、塗膜が除去された試験体の最長の予備乾燥時間を計測した。
【0071】
(3)金めっき性
市販(奥野製薬工業株式会社)の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行った。金めっきの状態を目視にて観察し、金めっき性を以下の4段階で評価した。
○:金めっき表面に異常なし。
△:若干金めっきムラあり。
×:全体的に金めっきムラあり。
××:金めっき未着発生
【0072】
上記評価の結果を下記表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
上記表1に示すように、酸化防止剤として、(B1)成分であるフェノール性水酸基とリンとを有する化合物または(B2)成分であるフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を配合した実施例1〜9では、優れた感度を有しつつ、アルカリ現像性と金めっき性に優れた光硬化物を得ることができた。なお、実施例4、7から、フェノール系酸化防止剤を併用しても、優れた感度を有しつつ、アルカリ現像性と金めっき性に優れた光硬化物を得ることができた。特に、実施例1〜4、8と実施例5〜7、9の比較から、(B1)成分であるフェノール性水酸基とリンとを有する化合物は(B2)成分であるフェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物と比較して、予備乾燥時間を長くしても塗膜の除去が可能であり、アルカリ現像性がさらに向上した。
【0075】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を約2質量部配合した実施例2は、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を約5質量部配合した実施例1、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を約10質量部配合した実施例8と比較して、感度がさらに向上した。また、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を約2質量部配合した実施例2は、(B1)フェノール性水酸基とリンとを有する化合物を約1質量部配合した実施例4と比較して、300mJ/cm
2での金めっき性がさらに向上した。
【0076】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を約1質量部配合した実施例5は、(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を約2質量部配合した実施例9と比較して、アルカリ現像性がさらに向上した。また、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を約1質量部配合した実施例5は、(B2)フェノール性水酸基と硫黄とを有する化合物を約0.5質量部配合した実施例6と比較して、300mJ/cm
2での金めっき性がさらに向上した。
【0077】
一方で、酸化防止剤を配合しなかった比較例1では金めっき性が得られず、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を使用した比較例2、リン系酸化防止剤を使用した比較例3では、200mJ/cm
2、300mJ/cm
2での金めっき性が得られなかった。