特許第6986540号(P6986540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986540
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】星糸を製造するためのノズルおよび方法
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/00 20060101AFI20211213BHJP
   D02G 3/34 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   D02J1/00 L
   D02G3/34
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-232705(P2019-232705)
(22)【出願日】2019年12月24日
(62)【分割の表示】特願2016-541283(P2016-541283)の分割
【原出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2020-73742(P2020-73742A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】13198527.7
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316008905
【氏名又は名称】ヘーベルライン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HEBERLEIN AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッフミュラー,パトリック
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−533324(JP,A)
【文献】 特開2013−227711(JP,A)
【文献】 特開2001−248031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00− 3/48
D02J 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
星糸(11)を製造するためのノズル(1)であって、前記ノズルは、糸道ダクト(2)を有し、前記糸道ダクトの中で、空気交絡を利用して結び目を作ることができ、前記ノズルは、長手方向軸(A)を有する少なくとも1つの空気ボア(3)を有し、前記空気ボアは、合流開口部(4)において前記糸道ダクト(2)と合流し、空気を前記空気ボアを通して前記糸道ダクト(2)に導入することができ、
前記空気ボア(3)の前記長手方向軸(A)は、前記星糸(11)の搬送方向(B)に対して90°の角度で配置され、前記糸道ダクト(2)の入口開口部(6)の領域が、前記空気ボア(3)の前記合流開口部(4)の領域における前記糸道ダクト(2)の断面と比較してくびれており、前記糸道ダクト(2)内において、前記空気ボア(3)の前記合流開口部(4)の反対側に、バッフル面(5)が構成されており、そのため、前記入口開口部(6)を介して放出される空気の正味量よりも、前記糸道ダクト(2)の出口開口部(7)を介して放出される空気の正味量の方が多く、前記バッフル面(5)は、前記空気ボア(3)の前記長手方向軸(A)に対して実質的に垂直になるように構成されている、ノズル(1)。
【請求項2】
前記糸道ダクト(2)は、ノズルプレート(9)およびカバープレート(8)という2つの部品で構成され、前記ノズルプレートと前記カバープレートは、離すことが可能な状態で互いに接続可能である、請求項に記載のノズル(1)。
【請求項3】
前記搬送方向(B)における前記バッフル面(5)の長さは、前記空気ボア(3)の直径の2〜4倍である、請求項1または2に記載のノズル(1)。
【請求項4】
前記入口開口部(6)の領域におけるくびれおよび/または前記出口開口部(7)における広がりは、前記糸道ダクト(2)のカバープレート(8)の表面の輪郭によって形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のノズル(1)。
【請求項5】
前記入口開口部(6)の領域におけるくびれおよび/または前記出口開口部(7)における広がりは、カバープレート(8)の表面の輪郭とノズルプレート(9)の表面の輪郭によって形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のノズル(1)。
【請求項6】
前記糸道ダクト(2)の前記入口開口部(6)と前記空気ボア(3)の合流開口部(4)との間において、前記空気ボア(3)の反対側にある前記糸道ダクト(2)の側面に、段差(12)が構成され、
前記段差(12)は、搬送方向(B)における前記合流開口部(4)から離れるように延びており、そのため、糸を前記段差(12)の端部(14)の周りで偏向させることができる、請求項1〜のいずれか一項に記載のノズル(1)。
【請求項7】
前記星糸(11)の搬送方向(B)において、前記段差(12)の終端部における、前記糸道ダクト(2)の断面は、前記段差(12)が始まる部分における、前記糸道ダクト(2)の断面よりも大きい、請求項に記載のノズル(1)。
【請求項8】
前記段差(12)は、前記糸道ダクト(2)の前記入口開口部(6)において構成されている、請求項またはに記載のノズル(1)。
【請求項9】
前記糸道ダクト(2)は、非対称の断面を示す、請求項1〜のいずれか一項に記載のノズル(1)。
【請求項10】
ノズル(1)の糸道ダクト(2)内で、空気交絡を利用して星糸(11)を製造する方法であって、
前記糸道ダクト(2)と合流する、長手方向軸(A)を有する少なくとも1つの空気ボア(3)を通して、前記星糸(11)の搬送方向(B)に対する角度が90°である前記長手方向軸(A)の方向に、空気を導入することにより、前記空気をバッフル面(5)に対して導き、
前記糸道ダクト(2)の入口開口部(6)の領域が、前記空気ボア(3)の合流開口部(4)の領域における前記糸道ダクト(2)の断面と比較してくびれており、そのため、前記入口開口部(6)を介して放出される空気の正味量よりも、前記糸道ダクト(2)の出口開口部(7)を介して放出される空気の正味量の方が多く、前記空気ボア(3)の前記長手方向軸(A)に対して実質的に垂直になるように配置されたバッフル面(5)に対して空気が導かれる、方法。
【請求項11】
前記糸道ダクト(2)の前記入口開口部(6)と前記空気ボア(3)の合流開口部(4)との間において、前記空気ボア(3)の反対側にある、前記糸道ダクト(2)の段差(12)を利用し、
前記段差(12)は、搬送方向(B)における前記合流開口部(4)から離れるように延びており、そのため、糸は、前記空気ボアからの空気によって、前記段差(12)の端部(14)の周りで偏向する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載の、星糸(11)を製造するためのノズル(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立特許請求項のプリアンブルの特徴を有する、糸道ダクトを有するノズル、糸道ダクトにおいて星糸(knotted yarn)を製造する方法、および、星糸を製造するためのノズルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
平坦なまたはかさ高加工(texturized)フィラメント糸の個々のフィラメントに、空気交絡(air entanglement)を利用して結び目(knot)を作ることにより、星糸を形成する。ここで、空気交絡プロセスは、ノズルの中で行なわれることが好ましい。ノズルの糸道ダクト内で、空気を、フィラメントに対し、フィラメントの走行方向を横断する方向に与える。部分的な気流の乱れによって、糸道ダクト内のフィラメントが、逆方向に回転する。ここで、星糸は、結び目と呼ばれる絡み合わされたフィラメントによって作られる。
【0003】
DE4113927には、交絡空気の導入のためのメインダクトと、メインダクトの反対側にある2つのサポートダクトとを有するノズルが記載されている。サポートダクトは、糸を包む空気をノズルに導入する。サポートダクトの空気を利用することで、適度な絡みが得られることになる。しかしながら、3つの空気ダクトを有する構造は、複雑/高価である。加えて、DE4113927の構造を用いた場合、均一性が向上するだけで、結び目の数は増加しない。加えて、3つの空気ダクトを用いて星糸を形成するには、比較的大量の圧縮空気、したがってエネルギが必要である。
【0004】
WO03/029539には、一次空気が、垂直方向に糸道ダクトに導入され、二次空気が、搬送効果を有する補助ボアを介して導入されるノズルが記載されている。2つの空気ボアを有する構造は複雑である。加えて、2つの空気ダクトを用いて星糸を形成するには、比較的大量の圧縮空気、したがってエネルギが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、周知の短所を回避すること、特に、単純な構造を用いて結び目を効率的かつ確実に形成する、ノズル、方法、および使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、独立請求項に記載のノズル、方法、および使用によって達成される。
以下において、本発明を、空気を導入するためのボアを有するノズルを用いて説明する。交絡のために、空気の代わりに他のガス状流体を使用してもよい。
【0007】
また、フィラメントという用語が使用される。この用語は、個々のフィラメントにも、一本の糸にも使用され、縫い糸または紡ぎ糸と呼ばれるフィラメントの集合にも使用される。ここでのフィラメントは、かさ高加工されたものであってもよく、または、かさ高加工されていない、すなわち扁平なものであってもよい。扁平フィラメントから作られた糸は、扁平糸と記載される。
【0008】
本発明に従うと、星糸を製造するためのノズルは糸道ダクトを有し、糸道ダクト内で、空気交絡を利用して結び目を作ることができる。長手方向軸を有する少なくとも1つの空気ボアが、合流開口部内で糸道ダクトに合流する。空気は、空気ボアを通して糸道ダクトに導入することができる。空気ボアの長手方向軸は、星糸の搬送方向に対して90°未満の角度で配置されている。この、長手方向軸と搬送方向との間の90°未満という角度は
、上流側の角度である。空気ボアの合流開口部の反対側に、バッフル面が配置されている。本発明に従うと、バッフル面は、空気ボアの長手方向軸に対して実質的に垂直方向になるように構成されている。
【0009】
紡糸プロセスでは、個々のフィラメントを、ノズルを通して、疑似撚糸プロセスではおよそ2000〜6000m/分のプロセス速度で、ドローイング(drawing)プロセスで
は好ましくはおよそ300〜1200m/分のプロセス速度で、搬送することが好ましい。空気ボアからの空気は、およそ1〜6bar、特に4barでフィラメントに与えることが好ましい。
【0010】
上記長手方向軸が搬送方向に対して90°未満傾いているので、空気は斜め方向に糸道ダクトに導入される。このため、搬送方向において空気の塊の正の流れが生じる。フィラメントは、搬送方向の空気の塊の流れによって搬送される。加えて、たとえばパッケージの変更の場合等の、プロセスにおける変則が生じた場合の、ノズル内における糸の張力の低下が防止される。
【0011】
空気は、バッフル面に対して実質的に垂直に衝突する。空気は、この衝突によって、相反する2つの乱流を形成するように構成される。乱流が相反しているので、フィラメントの一部分はある方向に移動し、フィラメントの他の部分はその逆方向に移動する。バッフル面に対して垂直に衝突する結果、均一的で強力な交絡が得られることが証明されている。この均一的で強力な交絡の結果、糸の結び目の間隔についても、結び目の厚みについても、1メートル当たりの結び目の数についても、ばらつきのない結び目を有する星糸が得られる。ばらつきのない結び目、または、最大開放長さすなわち結び目と結び目との間の非交絡糸の最大長さは、星糸の品質特徴である。
【0012】
この場合の、空気ボアの長手方向軸に対して実質的に垂直とは、合流開口部の反対側にある領域内の、バッフル面が、少なくとも一部、上記長手方向軸に対して約85°〜95°の角度になるように構成されていることを意味する。全体的に平坦ではなく、たとえば、この文脈ではわずかな起伏またはこぶを有するように構成されたバッフル面も、バッフル面の基本的な向きが空気ボアの長手方向軸に対して実質的に垂直になるように構成されているという条件において、空気ボアの長手方向軸に対して実質的に垂直であると記載される。
【0013】
空気ボアを1つだけ備えるように実装されているので、同じ品質の結び目形成に対する空気の消費量は、複数の空気ボアを有するノズルと比較して、少なくなる。空気消費量が減少するので、エネルギ消費量が減少し、結果としてランニングコストが減少する。
【0014】
これに代えて、複数の空気ボアを与えることも可能である。この場合、複数の空気ボアは、たとえば、糸道ダクトを中心とする1つの面に配置してもよい。
【0015】
好ましくは、入口開口部の領域内の糸道ダクトは、空気ボアの合流開口部の領域内の糸道ダクトの断面と比較して、くびれている。このくびれは、入口開口部における糸道ダクトの高さが、合流開口部の領域内の糸道ダクトの高さの10%と70%の間、好ましくは40%となるように構成されていることが、好ましい。このくびれは、入口開口部に直接形成されていてもよい。
【0016】
これに代わるものとして、入口開口部の領域内で、糸道ダクトは、最初に、空気ボアの合流開口部の領域内の糸道ダクトの高さよりも広くなり、その後に、上記のくびれが形成されている。上記最初に広くなっている部分は、広くなっている部分の領域における糸道ダクトの高さが、合流開口部とバッフル面との間の高さよりも、好ましくは5〜55%、
特に好ましくは30%広がるように構成されている。
【0017】
このくびれ部分において、フィラメントは、くびれ部分の端部の周りで、合流開口部を介して導入された空気によって偏向し得る。この偏向により、フィラメントは、丸い形状から、テープ形状に変化する。テープ形状は交絡を容易にする。なぜなら、前者は空気の乱流との接触面がより大きいからである。この偏向とフィラメントの変形に関する詳細は、本発明の以下の実施形態から得られるであろう。
【0018】
上記入口開口部の領域内のくびれに加えてまたは代えて、糸道ダクトの出口開口部は、空気ボアの合流開口部の領域内の糸道ダクトの断面よりも広がっている。この種の構成により、入口開口部を介して放出される空気の正味量よりも多くの空気の正味量が出口開口部を介して放出される。
【0019】
入口開口部の領域内のくびれおよび/または出口開口部の広がった部分を備えた実施形態では、出口開口部の直径が入口開口部の直径よりも大きい。その結果、入口開口部の近傍では背圧が生じ得る。出口開口部を介して空気の正味の流出が発生する。出口の方向に空気が流れるので、糸の搬送がさらにサポートされる。このため、搬送と糸の張力の維持がさらに改善される。このため、フィラメントの張力は、プロセスにおける変則が生じた場合でも実質的に一定の割合に保たれる。
【0020】
好ましくは空気ボアの合流開口部の反対側にある、入口開口部の領域内のくびれはさらに、フィラメントを安定させる効果を有する。これは、フィラメントの横方向の振動が少なくなるので、フィラメントが糸道ダクトの中央部で一貫してより均一的に搬送されることを意味する。これにより、結び目の均一的な品質が保証され、したがって、時間が経過しても星糸の均一的な品質が保証される。
【0021】
さらに、交絡空気の乱流は、空気源の合流開口部からの距離が増すのに伴なって、その強度を失う。加えて、反対方向の乱流のうちの一方が他方よりも交互に強くまたは弱くなるように構成されている。この場合、脈動する乱流を参考にする。出口開口部が広がっているので、乱流はさらに力を失いフィラメントから離れるように導かれる。出口領域におけるこれらの放出された乱流は、フィラメントに実質的に影響しない。したがって、フィラメントは、糸道ダクトの中央部において安定し抑制された状態を保つ。このため、星糸の変則とその結果生じる劣化した品質が防止される。
【0022】
これに代えて、入口および/または出口開口部は、合流開口部の領域内の糸道ダクトの直径と比較して、くびれが形成されていない、または、広がっていない。
【0023】
本発明の他の局面に従うと、星糸を製造するためのノズルは、糸道ダクトを有し、この糸道ダクト内で、空気交絡を利用して結び目を作ることができる。長手方向軸を有する少なくとも1つの空気ボアは、合流開口部において糸道ダクトと合流する。この空気ボアを通して空気を糸道ダクトに導入することができる。空気ボアの長手方向軸は、星糸の搬送方向に対して90°の角度で配置されている。入口開口部の領域において、糸道ダクトは、空気ボアの合流開口部の領域における糸道ダクトの断面と比較してくびれている。これに加えてまたは代えて、糸道ダクトの出口開口部は、空気ボアの合流開口部の領域における糸道ダクトの断面と比較して広がっている。この種の構成では、入口開口部を介して放出される空気よりも、出口開口部を介して放出される空気の方が多い。
【0024】
結果として得られる、このノズル内の、入口開口部の領域におけるくびれの利点および/または広がった出口開口部の利点は、入口開口部の領域におけるくびれおよび/または広がった出口開口部を有する上記ノズルの利点と同一である。
【0025】
ここで、バッフル面を、空気ボアの長手方向軸に対して実質的に垂直になるように構成することが好ましい。そうすると、空気は、バッフル面に、実質的に垂直に衝突する。空気ボアの長手方向軸に対してバッフル面が垂直な位置にあることで、垂直なバッフル面を有する先の実施形態の場合と同一の利点が得られる。
【0026】
さらに、垂直な位置の評価について、上述の基準が適用される。これに代えて、バッフル面を、長手方向軸に対して傾斜するように構成してもよい。
【0027】
本明細書に記載の実施形態のノズルは、ノズルプレートおよびカバープレートという2つの部品で構成されることが好ましい。これらのノズルプレートおよびカバープレートは、離すことが可能な状態で互いに接続可能である。
【0028】
空気ボアの合流開口部を示すプレートを、ノズルプレートと記載する。結果として、カバープレートは、糸道ダクトの反対側にあるプレートであり、好ましくはバッフル面を示す。
【0029】
ノズルプレートおよびカバープレートは、相互に離すことができる。相互に離されているプレートの場合、たとえば複雑化を回避するためにまたは洗浄作業を実施するために、糸道ダクトに容易にアクセスできる。
【0030】
これらのプレートは、たとえばねじ等の周知の接続要素を用いて互いに接続される。これらのプレートは、出願WO99/45185に記載の接続装置を用いて結合することが好ましい。
【0031】
これに代わるものとして、ノズルを一体的に構成してもよい。簡単にするために、ここでは、カバーとノズルプレートを引用しているが、厳密に説明すると、これらは、糸道ダクトの側面であって、個別のプレートではない。
【0032】
搬送方向におけるバッフル面の長さは、好ましくは空気ボアの直径の2〜4倍、好ましくは4〜6mmである。
【0033】
空気ボアの直径は、断面の直径であり、したがって、空気ボアの長手方向軸に対して垂直に測定されるものである。
【0034】
搬送方向におけるバッフル面の長さが空気ボアの直径の2〜4倍であることによって、空気交絡の均一性が保証される。バッフル面の長さはできる限り短く保たれる。バッフル面は、カバープレートの表面に対して角度をなしていてもよい。一方では、ここにおけるバッフル面自体がフィラメントの搬送を損なうかもしれず、他方では、フィラメントの搬送を損なう他の乱流が発生するかもしれない。バッフル面の長さが、好ましくは4〜6mmに対応する、空気ボアの直径の2〜4倍である構成によって、均一的な空気交絡が保証され、同時に、フィラメントの搬送が損なわれる程度はできる限り小さくなる。
【0035】
当然ながら、バッフル面をできる限り短くまたは長くなるように構成することも考えられる。しかしながら、この場合は、星糸の品質または搬送いずれかが損なわれることになるので、上記直径の2〜4倍の長さが好ましい。
【0036】
入口開口部の領域におけるくびれおよび/または出口開口部における広がりを示す実施形態の場合、入口開口部の領域におけるくびれおよび/または出口開口部における広がりを、糸道ダクトのカバープレートの表面の輪郭によって形成することが好ましい。
【0037】
したがって、カバープレートの表面は、少なくとも、2つの開口部のうちの一方において、搬送方向に対して角度をなすように構成される。
【0038】
ここでのくびれは、上記表面を、糸道ダクトの内部に対してある距離にわたって傾斜させることによって形成してもよい。ここで、傾斜は、一様である、したがって、傾斜の長さにわたって角度が同一であることが、好ましい。この角度は、好ましくは1°〜7°であり、特に好ましくは4°である。
【0039】
これに代わるものとして、くびれを、入口開口部の表面によって形成してもよい。この入口開口部の表面は、搬送方向に対して実質的に垂直に延びることにより、入口開口部自体のみが、くびれることになる。ここでの糸道ダクトはすでに、合流開口部の領域における直径に概ね対応する直径を、入口開口部の直後において有している。
【0040】
ここでのこのくびれは同時に、以下でさらに説明する機能モードとして、糸を偏向させるための段差の役割を果たし得る。
【0041】
上記広がりは、カバープレートを、糸道ダクトの内部よりも上昇させることによって得られる。この上昇を、均一にすることによって、この上昇する部分の長さにわたって角度が同一になるようにすることが、好ましい。1つの角度ではなく、表面を、糸道ダクトの内部に対して凸状に湾曲するように構成してもよい。そうすると、コアンダ効果が得られる。この効果によって、空気の流れが、表面に沿って、糸から離れるように導かれる。ここでの湾曲は、出来る限り長く空気が表面に沿って導かれるように構成される。
【0042】
しかしながら、入口開口部の領域および出口開口部の領域において、ノズルプレートの表面は、実質的に直線状に延びて搬送方向に平行である、すなわち、実質的に角度をなしていないことが好ましい。ノズルプレートの表面は、わずかな湾曲を示していてもよい。
【0043】
角度をなしている表面がないプレートは、表面が角度をなしているプレートよりも、簡単にかつ高い費用対効果を生むように製造することができる。したがって、カバープレートの表面の輪郭のみが上記くびれおよび/または上記広がりを形成するノズルは、両方のプレートの表面の輪郭がくびれおよび/または広がりを形成するノズルよりも、高い費用対効果を生むように製造することができる。
【0044】
入口開口部の領域におけるくびれおよび/または出口開口部の広がりを示すノズルの代替の好ましい実施形態の場合、上記くびれおよび/または広がりは、入口開口部の領域/出口開口部における、カバープレートの表面の輪郭とノズルプレートの表面の輪郭によって形成される。
【0045】
ここで、これら2つのプレートそれぞれの表面は、少なくとも、2つの開口部のうちの一方において、ある角度を示す。
【0046】
上記くびれは、2つのプレートの、糸道ダクトの内部に対する傾斜によって、または、2つのプレートの、入口開口部における、搬送方向に対する垂直な輪郭によって、構成してもよい。糸道ダクトの内部に対してこれらのプレートが傾斜している場合、これらの傾斜を均一になるように構成することで、傾斜の長さにわたって角度が同一になるようにすることが、好ましい。
【0047】
上記広がりは、ノズルプレートおよびカバープレートを、糸道ダクトの内部に対して上昇させることによって得られる。この上昇は、均一であることによって、上昇している部
分の長さにわたって角度が同一であることが好ましい。
【0048】
この解決策の利点は、くびれおよび/または広がりが、より均一的に構成されることによって、乱流が、フィラメントから離れるように、より好適に導かれる点にある。フィラメントの種類、搬送速度、および、たとえば糸道ダクトの内圧等の他のパラメータによっては、ノズルプレートの直線状の表面輪郭の構成の実施形態が好ましい。
【0049】
直線状の表面輪郭、または、糸道ダクトの内部に沿って凸状に湾曲した表面が好ましい。ここでの表面は、コアンダ効果を有するので、空気の不規則な/脈動する乱流がこの表面に沿って生じる。このため、出てゆく糸は、糸道ダクトの中央から外れて移動することはない。
【0050】
本発明のさらに他の局面は、星糸を製造するためのノズルに関する。このノズルは、その中で空気交絡を利用して結び目を作ることができる糸道ダクトを有する。長手方向軸を有する少なくとも1つの空気ボアが、合流開口部において糸道ダクトと合流する。空気は、空気ボアを通して糸道ダクトに導入することができる。糸道ダクトの入口開口部と、空気ボアの合流開口部との間の、空気ボアの反対側にある糸道ダクトの側面に、斜めの段差が構成されていることが好ましい。この段差は、搬送方向における合流開口部から離れるように延びているので、糸はこの段差の端部を中止として偏向する。
【0051】
段差を有するノズルの構成を、上記ノズルのさまざまな実施形態と組合わせることができる。
【0052】
段差の高さまたは高さの増加が糸に対して垂直ではなく斜めになっており、したがって0°と90°の間の角度がある、段差を、斜めの段差と記載する。
【0053】
空気ボアの空気により、フィラメントはカバープレートに実質的に沿って延びる。段差で、フィラメントは、空気によって偏向するので、フィラメントは、搬送方向において、少なくとも一部が合流開口部から離れるように導かれる。段差における偏向によって、好ましくは段差の端部で、フィラメントは、丸い形状から、テープ形状またはテープの形状に類似する形状に変化する。この平坦な形状によって、フィラメントの、交絡空気との接触面が、大きくなる。このため、フィラメントはより均一的に交絡し、それによって、結び目の数と均一性が増し、したがって星糸の品質が高くなる。
【0054】
好ましくは、星糸の搬送方向において、段差の終端部における、糸道ダクトの断面は、段差が始まる部分における、糸道ダクトの断面よりも大きい。
【0055】
これは、段差が斜めの段差として構成される場合である。ここで、糸道ダクトの断面は、均一的に拡大していることが好ましい。均一的に拡大していることで、フィラメントの搬送に悪影響を及ぼす望ましくない乱流、たとえば上昇する乱流は、概ね防止される。
【0056】
これに代わるものとしては、段差を、径方向内側への突起として構成する。ここでのフィラメントは、この突起上で偏向することで、平坦になる。
【0057】
この段差は、糸道ダクトの入口開口部の領域において構成されることが好ましい。
斜めの段差の場合、入口開口部がこの段差の始まる部分を示していてもよい。これに代わるものとして、段差を、搬送方向においてオフセットされるように配置してもよい。
【0058】
この突起は、入口開口部に直に構成してもよい。ここでの入口開口部は、合流開口部における糸道ダクトの直径と比較してくびれている。これには、フィラメントを平坦するこ
とに加えて、入口開口部のくびれが有する上記利点がある。
【0059】
これに代わるものとして、糸道ダクト、したがって、糸道ダクトにおける糸の搬送方向が、糸の挿入方向に対して角度をなすようにしてもよい。ここで、好ましくは、挿入方向に対して少なくともカバープレートを、180°未満の角度をなすように配置する。このカバープレートの外壁の角度および挿入方向の角度を測定する。ここでのノズルプレートは、カバープレートに対して平行になるように構成することが好ましい。しかしながら、カバープレートはまた、挿入方向に対して平行であってもよく、または、挿入方向に対して別の角度をなしていてもよい。挿入方向に対してカバープレートが角度をなしていることにより、フィラメントは、糸道ダクトに入ったときに、入口開口部の端部の周りで偏向する。ここで、フィラメントが丸い形状から平坦な形状に変化することには、上記の利点がある。
【0060】
ここでの斜めの段差は、搬送方向に対して好ましくは2°〜6°、特に好ましくは4°となるように構成することが好ましい。
【0061】
上記ノズルは、好ましくは非対称の断面を示す。実質的にU字形、半球状、T字形、またはV字形の断面が、特に好ましい。
【0062】
ここで、ノズルプレートは、尖ってまたは丸く収束する部分を形成し、カバープレートは、搬送方向に対して実質的に直線状の部分を形成する。
【0063】
これに代わるものとして、たとえば、円形、矩形、または正方形の断面等の対称形の断面も考えられる。
【0064】
星糸の最高品質は、紡糸プロセスにおけるV字形の断面によって得られることが証明されている。
【0065】
交絡したかさ高加工糸の場合、最高品質は、U字形の断面を有する糸道ダクトによって得られる。
【0066】
本発明はさらに、ノズルの糸道ダクト内で空気交絡を利用して星糸を製造する方法に関する。搬送方向に対して90°未満の角度をなす長手方向を有し、合流開口部において糸道ダクトと合流する、空気ボアを通して、空気が導入される。ここでの空気は、バッフル面に対して導かれる。バッフル面は、糸道ダクト内の空気ボアの合流開口部の反対側にあり、空気ボアの長手方向軸に対して垂直になるように構成されている。
【0067】
上記方法は、好ましくは、搬送方向に対して斜めの長手方向軸を有する空気ボアを備えた、上記のようなノズルにおいて、実施される。
【0068】
好ましい方法では、糸道ダクトの入口開口部の領域における、空気ボアの合流開口部の領域における糸道ダクトの断面と比較してくびれた部分により、および/または、糸道ダクトの出口開口部が、空気ボアの合流開口部の領域における糸道ダクトの断面よりも広がっていることにより、入口開口部を介して放出される空気よりも多くの空気が出口開口部を介して放出される。
【0069】
ノズルの糸道ダクト内で空気交絡を利用して星糸を製造するための代替の方法において、空気は、長手方向を有し合流開口部において糸道ダクトと合流する少なくとも1つの空気ボアを通して、星糸の搬送方向に対して90°の角度をなす長手方向軸の方向に導入されることで、バッフル面に向けて導かれる。空気ボアの合流開口部の領域における糸道ダ
クトの断面よりも、糸道ダクトの入口開口部の領域においてくびれている部分によって、および/または、空気ボアの合流開口部の領域における糸道ダクトの断面よりも、糸道ダクトの出口開口部が広がっていることによって、入口開口部を介して放出される空気よりも多くの空気が出口開口部を介して放出される。
【0070】
この方法は、好ましくは、搬送方向に対して垂直な長手方向軸を有する空気ボアを備えた上記のようなノズルにおいて実施される。
【0071】
空気ボアの長手方向軸に対して実質的に垂直になるように配置されたバッフル面に向けて空気が導かれる方法が好ましい。
【0072】
ノズルの糸道ダクト内で空気交絡を利用して星糸を製造するための他の代替の方法において、空気は、長手方向を有し合流開口部において糸道ダクトと合流する少なくとも1つの空気ボアを通して導入される。段差、好ましくは斜めの段差を利用して、糸を、空気ボアから出た空気を用いて、段差の端部の周りで偏向させる。この段差は、糸道ダクトの入口開口部と空気ボアの合流開口部との間において、糸道ダクト内の、空気ボアの反対側にあり、この段差は、搬送方向における合流開口部から離れるように延びている。
【0073】
この方法は、段差を有する上記ノズルにおいて実施されることが好ましい。
本発明はさらに、本明細書および請求項1〜12に記載の星糸を製造するためのノズルの使用に関する。
【0074】
本発明のさらに他の好都合な側面を、以下、代表的な実施形態および図面を用いて説明する。図面には下記のものが概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明に従うノズルの第1の実施形態の断面図を示す。
図2】本発明に従うノズルの他の実施形態の断面図を示す。
図3図2のノズルの別の図を示す。
図4】本発明に従うノズルの代替の実施形態の断面図を示す。
図5図4のノズルの正面図を示す。
図6】バッフル面に対する空気の流れを空気ボアの断面図において示す。
図7】本発明に従うさまざまなノズルをまとめて示す。
図8】本発明に従うノズルと先行技術のノズルとの比較測定を示す。
図9】本発明に従うノズルと先行技術のノズルとの比較測定を示す。
図10】本発明に従うノズルと先行技術のノズルとの比較測定を示す。
図11】本発明に従うノズルと先行技術のノズルとの比較測定を示す。
図12】先行技術のノズルとの比較における図7のノズルからの星糸の特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、本発明に従う、糸道ダクト2と空気ボア3とを有するノズル1の断面図を示す。糸道ダクト2は、互いに接続されたプレート8、9によって形成されている。空気ボア3は、長手方向軸Aを有し、合流開口部4で糸道ダクト2と合流する。糸道ダクト2内で、フィラメント10(図示せず、たとえば図3参照)は、搬送方向Bに搬送される。搬送方向Bにおいて、合流開口部4は、ノズル1のほぼ中心に位置し、搬送方向Bに対して約85°の角度で配置される。交絡空気13(図示せず、図5参照)が、空気ボア3を通して合流開口部4を介して長手方向軸Aの方向に糸道ダクト2に導入される。交絡空気は、バッフル面5に対して垂直に衝突する。バッフル面5に交絡空気13が衝突することにより、2つの部分乱流13’、13’’が形成される(図示せず、図5参照)。交絡空気1
3が垂直方向に衝突することにより、均一で反対方向に流れる2つの部分乱流13’、13’’の構成が得られる。この均一性によって、フィラメントの一部が反時計回り方向に移動し、残りのフィラメントが時計回り方向に移動する。部分乱流13’、13’’によってフィラメントが移動することにより、入ってくる交絡空気13の前後で、合流開口部の領域において結び目が形成される。このため、交絡したフィラメントからなる星糸11(図示せず、たとえば図3参照)が、フィラメント10(交絡していない糸)から作製される。連続糸と呼ばれるものがフィラメントとして特に適している。
【0077】
糸道ダクト2は入口開口部6の領域でくびれている。糸道ダクト2の出口開口部7は広げられている。このくびれと広がりは、カバープレート8の表面の輪郭によって作られている。
【0078】
空気ボア3の長手方向軸Aは、フィラメントが延びている方向Bに対して斜め位置にあるので、糸道ダクト2の出口開口部7を介して正味の放出が発生する。この正味の放出は、糸道ダクト2を通したフィラメント10または星糸11の搬送をサポートする。出口開口部7が広がっていることで、さらに、乱流が、中央部から遠ざかるように、すなわち糸から遠ざかるように導かれる。それによって乱流の強度も減少する。このため、糸11は糸道ダクト2の中央部から離れて搬送されることはない。
【0079】
図2は、本発明に従う、糸道ダクト2と、搬送方向Bに対して90°の長手方向軸Aを有する空気ボア3とを有するノズル1を示す。糸道ダクト2は、カバープレート8とノズルプレート9によって形成されている。糸道ダクト2は入口開口部6の領域でくびれており、糸道ダクト2の出口開口部7は広げられている。このくびれと広がりは、カバープレート8の表面の輪郭によって形成されている。ここでのくびれは、斜めの段差12として構成されている。ここでの斜めの段差は、入口開口部6の領域から遠ざかるように延び、搬送方向Bにおける空気ボア3の合流開口部から離れるように、したがって、ノズルプレート9から離れるように延びている。入口開口部6におけるくびれと、出口開口部7における広がりにより、入口開口部6を介して放出される空気よりも多くの空気が出口開口部7を介して放出される。この広がりも斜めの段差として構成され、この段差は、搬送方向Bのノズルプレート9から遠ざかるように延びている。交絡空気13が空気ボア3を通して糸道ダクト2に導入されバッフル面5に垂直方向に衝突する。バッフル面の長さは5mmであり、これは空気ボア3の直径の3倍の長さである。フィラメント10は、入口開口部6を通してノズルの糸道ダクト2に導入される。交絡空気13により、フィラメント10は概ねカバープレート8の表面に沿って導かれる。段差12において、フィラメント10は、段差12が始まる場所の端部14の周りで偏向する。この偏向により、フィラメント10は平坦になって、丸い形状からテープ形状に変化する。テープ形状によって、交絡空気13または部分乱流13’、13’’との接触面が増す。その結果、フィラメント10は、一貫して均一的に交絡され、このため、一貫して均一の結び目が形成される。それによって、より均一的にかつより強力に構成された、1メートル当たりの数がより多い結び目が得られる。
【0080】
図3は、図2の、入口開口部6の領域にくびれがあり出口開口部7が広がっているノズル1を示す。概略的に、小さな矢印が、糸道ダクト2に入った後の交絡空気13の分布を示す。くびれと広がりによって、出口開口部7を介して空気の正味の放出が生じる。
【0081】
加えて、入口開口部6の領域のくびれには、フィラメント10を安定にする効果が発生するという利点がある。このため、フィラメント10の振動が少なくなり、それによって、フィラメント10は、抑制された状態でかつ一貫して均一的に、糸道ダクト2を通して搬送される。この低振動タイプの搬送により、交絡中に発生する偏向が少なくなり、フィラメント10に、一貫して均一的に結び目が形成され、1メートル当たりの結び目の数が
増す。
【0082】
出口開口部7の広がりを通して、空気の乱流が、星糸11によって、出口開口部7から離れるように導かれる。このため、乱流が糸11に対して悪影響を及ぼすことはなく、糸11がノズルの中央から外れて搬送されることはない。
【0083】
図4は、広がった出口開口部7を有するノズル1の代替の実施形態を示す。この広がりは、カバープレート8とノズルプレート9双方によって形成されている。ここで、2つのプレート8、9における広がりは、斜めの段差として構成されるのではなく、糸道ダクトに対して凸状に湾曲したプレート8、9の表面として構成されている。湾曲面によって、長手方向の断面におけるノズルの出口は、図3に示されるようにトランペットの先端部と同様に見える。凸状の湾曲によって、コアンダ効果が発生する、すなわち、空気は、表面に沿って導かれ、糸道ダクト2の中央にあるフィラメント10と影響し合うことはない。
【0084】
図5は、図4のノズル1の、出口開口部7の方向を見たときの正面図を示す。糸道ダクト2は、カバープレート8とノズルプレート9によって形成されている。ここで、糸道ダクト2はU字形の断面を示す。ノズルプレート9は、ここでは収束して実質的に尖端をなすように構成されており、カバープレート8は、実質的に直線状の面を有するように構成されている。このため、非対称のV字形の断面が形成される。U字形、V字形、またはT字形等の非対称の断面は、本発明に従う他のノズル1の場合にも適用できる。かさ高加工糸は、図5のようなU字形の断面を利用すると最も上手く交絡される。
【0085】
図6は、バッフル面5における糸道ダクト2の詳細を示す。交絡空気13はバッフル面5に対して垂直に衝突する。このため、2つの均一的な部分乱流13’、13’’が発生する。ここで、一方の部分乱流13’は時計回り方向に回転し、第2の部分乱流13’’は反時計回り方向に回転する。この部分乱流はフィラメント10を搬送し、このため、フィラメント10はまた、それぞれの相対方向に撚られる。このため、フィラメント10に結び目が形成されて、星糸11が形成される。部分乱流13’、13’’が均一的に構成されているので、フィラメント10にも一貫して均一的に結び目が形成される。
【0086】
図7は、本発明に従う4つのノズル1(V1/V2、V2/V3、V9/V9、V11/V10)の、入口開口部6の長手方向の詳細な断面を模式的に示す。ノズル1において4つの領域a)、b)、c)、d)が特定されている。領域a)は空気ボア3の領域に関連し、b)は入口開口部6の領域に関連し、c)は出口開口部7の領域に関連し、d)は、長手方向の断面における特徴b)の領域の詳細図に関連する。各ノズルは、V字形に構成された非対称の断面を有する1つの糸道ダクト2を有する。
【0087】
V1/V2は以下の特徴を示す。
a)空気ボア3は、バッフル面5に対して垂直(90°+/−3°)であり、フィラメント10の搬送方向に対して垂直である。
【0088】
b) 入口開口部6における高さは、バッフル面5を基準とする、空気ボア3の合流開口部4における糸道ダクト2の総高さよりも、30%+/−25%高い。
【0089】
入口開口部6における高さは、バッフル面5を基準とする、空気ボア3の合流開口部4におけるカバープレート8の糸道ダクト2の高さよりも、60%+/−30%高い。入口開口部6における高さのくびれは、空気ボア3の合流開口部4における糸道ダクト2の総高さとの比較で、40%+/−30%である。
【0090】
c)ノズル1の出口開口部7が2つの角度をなしているので、空気は素早く放出される
。第1の角度は5〜10°の範囲にあり、第2の角度は20〜35°の範囲にある。
【0091】
d)特徴b)の最高点にセンタリング要素を設けることにより、糸は糸道ダクト2の中央部に保持される。センタリング要素は、入口開口部6のくびれの領域の隙間をなくすように構成されている。この隙間は、カバープレート上で、U字形、V字形、または台形(不等辺四辺形)をなすように構成されることが好ましい。センタリング要素によって、糸は、糸道ダクト2の中央部で、カバープレートから間隔を置いて保持される。しかしながら、カバープレートとの間に空間があるので、フィラメント10は、端部の周りで偏向する程度が少なくまたは全く偏向せず、したがって、テープ形状になる。
【0092】
ノズルV2/V3は、ノズルV1/V2と同じ特徴a)、b)、およびc)を有する。ノズルV2/V3に対し、糸は、隙間として構成されるセンタリング要素がないので、特徴d)の半径に対して押圧される。このため、フィラメント10は平坦になる(そしてテープ形状になる)。
【0093】
ノズルV9/V9は、ノズルV2/V3と同じ特徴a)、b)、d)を有する。ノズルV2/V3と異なり、ノズルV9/V9は、領域c)において、糸道ダクト2の出口開口部7に2つの接線半径を有する。この半径によって、空気は素早く放出される。加えて、コアンダ効果により、空気はカバープレート8またはノズルプレート9の表面に沿って導かれる。このため、糸道ダクト2の中央部における糸11の抑制された輪郭が保証される。
【0094】
ノズルV11/V10は、ノズルV2/V3と同じ特徴b)、c)、d)を有する。ノズルV2/V3(およびV1/V、V9/V9)と異なり、ノズルV11/V10は、フィラメント10の搬送方向に対しておよそ78°傾いている空気ボア3を有する。バッフル面5は、空気ボア3に対して垂直で、空気ダクト2に対して斜めになるように、配置されている。この配置により、一方では、糸は、傾いた空気ボア3の空気13によって搬送され、他方では、フィラメント10が、空気ボア3に対して垂直なバッフル面5によって最適に交絡される。
【0095】
図8図11は、先行技術から周知である出願人のポリジェットノズル(HN133、RPE)と比較した、本発明に従うノズル1から得られたテスト結果を示す。本発明に従うノズル1と異なり、ポリジェットノズルは、交絡空気を導入するための少なくとも1つのダクトと、搬送空気を導入するための少なくとも1つのダクトとを示す。本発明に従うノズルでは、これらのダクトの機能はいずれも、同一のダクト、すなわち空気ボア3が有する、および/または、搬送が、入口開口部6の領域内のくびれおよび/または出口開口部の広がりによってなされる。しかしながら、いずれの場合でも、存在する空気ボアは1つのみである。
【0096】
図8は、FP/s(1秒当たりの固定されたポイント/1秒当たりの結び目の数)を、dpf(1フィラメント当たりのデニール/長さ当たりの重量)に対して測定した比較測定を示す。以下の場合では、同一密度のポリエステルのフィラメントを使用した。フィラメントの密度が同一の場合、dpfは、フィラメントの直径に等しいと想定することができる。図8に示されるように、本発明に従うノズルを用いた場合、先行技術から周知である標準ノズルと比較して、単位時間当たりより多くの結び目が得られる。ここで、斜めに配置された空気ボアを有するノズルV11/V10から、最良の結果が得られた。
【0097】
図9図11に示される比較テストでは、交絡空気の圧力(bar)によって決まる、1メートル当たりの結び目の数(FP/m)を比較した。ここでは、同一の、すなわち、均一したdpfを有するポリエステルフィラメント(PESフィラメント)を使用した。
ノズル内の空気ボアの直径が均一の場合、圧力が高いほど、多くの結び目(結び目/m)が構成される。
【0098】
図9では、34本のフィラメントで構成され10,000m当たりの重さが68グラムであるDtex68f34が使用された。テストにおいて、本発明に従うノズルV9/V9およびV11/V10を、標準ノズルHN133およびRPEと比較した。ここでは、交絡空気の圧力(bar)によって決まる、1メートル当たりの結び目の数(FP/m)を比較した。この図において、各ノズルの領域の下側の境界線は固い結び目の数を示す。上側の境界線は結び目の総数、すなわち、固い結び目と緩い結び目の総数を示す。
【0099】
結び目の固さを、星糸1に0.3cN/dtex、0.5cN/dtex、および0.7cN/dtexの応力を加えることによって測定した。各応力サイクル後に、応力を加えていない星糸11と比較して、失われた結び目を、百分率で表わす。0.3N/dtexまでで開く結び目は緩いとみなされる。少なくとも0.5N/dtexの応力サイクル後に糸に残っている結び目は固いとみなされる。加えて、結び目を光学的に判断する。結び目が長いほど、安定している、すなわちより固いと判断される。
【0100】
このようにして、たとえば、3barで、ノズルV9/V9は、18個の固い結び目を得て、1メートル当たり合計21個の結び目を得る。上記領域の下側の境界線と上側の境界線の間の距離が小さいほど、結び目はより均一的でありかつより固い。本発明に従うノズルは、1メートル当たりの結び目の個数が多いだけでなく、圧力が高い場合にも、より均一的でより固い結び目を得る。本発明に従うノズルの均一的で固い結び目の構成は、先行技術のノズルよりも、特定の圧力に対する依存の程度が低い。このため、本発明に従うノズルを、さまざまな交絡プロセスに使用することができる。圧力、したがって空気消費量を、結び目の数を大幅に減らすことなく、減じることができる。
【0101】
図10および図11は、図9と同じ測定を示すが、図9とは別の糸(および異なるノズル)を使用した。
【0102】
図10では、ノズルV1/V2およびV9/V9を、図9の2つの標準ノズルと比較した。100,000m当たりの重量が136gである68本のポリエステルフィラメントからなる糸(FDY PES 136f68)を使用した。本発明に従うノズルを使用すると、先行技術からのノズルと比較して、ほとんどの圧力の場合に、より多くの、とりわけ固い結び目が、より規則的に得られる。
【0103】
図11では、ノズルV11/V10を、先行技術からのノズルHN133と比較した。100,000m当たりの重量が82gである144本のポリエステルフィラメントからなる糸(FDY PES 82f144)を使用した。本発明に従うノズルV11/V10を使用すると、周知のノズルと比較して、より多くの結び目が得られる。
【0104】
図9図11に示されるテストは、本発明に従うノズルが、先行技術からのノズルよりも、最も変動が大きい糸の場合に、良好な結果を示すことを、証明している。
【0105】
図12は、先行技術からの標準ノズル(HN133A/CN14)を用いて製造した星糸と比較した、本発明に従うさまざまなノズル1(V1/V2、V2/V3、V9/V9、V11/V10)を用いて製造した星糸を示す。
【0106】
標準ノズルを用いて製造した星糸は、開いたスポットと弱い(短い)結び目を示す。加えて、結び目と結び目の間の間隔が不均一である。これに対し、本発明に従うノズル1は、均一して長い結び目を示す。ここで、ノズルV11/V19の星糸11は、結び目の数
が非常に多くかつ結び目が最も硬いことを示している。糸の特性を以下の表に示す。
【0107】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12