(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
封止アセンブリ(25)は、スペーサ要素(31)が伸長状態にあり、その結果、スペーサ要素(31)が注射針(17)の遠位端(19)を完全に取り囲む収納構成と、スペーサ要素(31)が後退状態にあり、その結果、注射針(17)の遠位端(19)がスペーサ要素(31)を越えて延びる使用構成との間で可動である、請求項1に記載の注射針アセンブリ(16、116、216、316)。
注射針アセンブリ(16、116、216、316、416)は、薬剤のためのカートリッジ(15)を含む薬剤送達デバイス(10)に連結するように構成され、封止膜(32)は、注射針アセンブリ(16、116、216、316、416)が薬剤送達デバイス(10)に連結される前に注射針(17)の遠位端(19)を封止するように構成される、請求項1または2に記載の注射針アセンブリ(16、116、216、316、416)。
注射針シールド(26)は、注射針シールド(26)が伸長状態にあり、その結果、注射針シールド(26)が注射針(17)の近位端(18)を完全に取り囲む遮蔽位置と、注射針シールド(26)が後退状態にあり、その結果、注射針(17)の近位端(18)が注射針シールド(26)を越えて延びる後退位置との間で変形可能である、請求項10に記載の注射針アセンブリ(316)。
注射針ホルダ(27)は、注射針アセンブリ(16、116)を薬剤送達デバイス(10)に連結するために、薬剤送達デバイス(10)の対応する係合要素に係合するように構成された係合要素(39)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注射針アセンブリ(16、116)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
少なくとも特定の実施形態では、本発明は、上述した問題の少なくともいくつかを克服または改良することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、薬剤送達デバイスで使用するためのニードルアセンブリに関する。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤送達デバイスで使用するための注射針アセンブリが提供され、この注射針アセンブリは、注射針ホルダと、注射針ホルダに固定され、近位端および遠位端を有する注射針と、注射針の遠位端を封止するための封止アセンブリとを含み、ここで、封止アセンブリは、注射針の遠位端を取り囲むスペーサ要素と、注射針の遠位端を封止するための封止膜とを含む。
【0008】
スペーサ要素は、変形可能とすることができる。スペーサ要素は、弾性材料から作ることができる。封止アセンブリは、スペーサ要素が伸長状態にあり、その結果、スペーサ要素が注射針の遠位端を完全に取り囲む収納構成と、スペーサ要素が後退状態にあり、その結果、注射針の遠位端がスペーサ要素を越えて延びる使用構成との間で可動とすることができる。これにより、有利には、使用前の注射針の保護を可能にするが、スペーサ要素を変形させるのに十分な力を印加したときは注射針の露出を可能にすることができる。
【0009】
一実施形態では、注射針アセンブリは、薬剤のためのカートリッジを含む薬剤送達デバイスに連結するように構成され、封止膜は、注射針アセンブリが薬剤送達デバイスに連結される前に注射針の遠位端を封止するように構成される。
【0010】
スペーサ要素は、中央通路を含むことができ、中央通路を通って注射針が延びる。中央通路は、注射針がスペーサ要素に接触しないように構成することができる。これにより、有利には、組立て中の針の簡単な挿入、および/または使用中の針の露出を容易にすることができる。
【0011】
スペーサ要素は、注射針ホルダに固定することができる。これにより、有利には、注射針アセンブリの簡単な製造/組立てを容易にし、および/または使用中のスペーサ要素の動きを回避することができる。
【0012】
収納構成で、スペーサ要素は、封止膜内に封止することができる。これにより、有利には、使用前に針を滅菌状態で維持するのを助けることができる。
【0013】
注射針の遠位端は、封止アセンブリが収納構成から使用構成へ動くとき、封止膜を穿孔するように構成することができる。これにより、有利には、注射が行われる直前まで針が滅菌状態のままであることを確実にするのを助けることができる。
【0014】
注射針アセンブリは、注射針の近位端を遮蔽する変形可能な注射針シールドを含むことができる。注射針シールドは、注射針シールドが伸長状態にあり、その結果、注射針シールドが注射針の近位端を完全に取り囲む遮蔽位置と、注射針シールドが後退状態にあり、その結果、注射針の近位端が注射針シールドを越えて延びる後退位置との間で変形可能とすることができる。これにより、有利には、使用前の針の近位端の簡単な露出を有効にし、および/または使用前にニードルシールドを取り外す必要を回避することができる。
【0015】
注射針ホルダは、注射針アセンブリを薬剤送達デバイスに連結するために、薬剤送達デバイスの対応する係合要素に係合するように構成された係合要素を含むことができる。これにより、有利には、薬剤送達デバイスへの注射針ホルダの簡単な取付けを容易にすることができる。
【0016】
一実施形態では、封止膜は、変形可能なカバーを含む。
【0017】
本発明のさらなる態様は、上述した注射針アセンブリと、薬剤のためのカートリッジを含む薬剤送達デバイスとを含む薬剤送達デバイスアセンブリを提供する。薬剤送達デバイスアセンブリは、注射デバイス、たとえば自動注射器の形態とすることができる。
【0018】
注射針アセンブリは、薬剤送達デバイスに解放可能に連結することができる。
【0019】
一実施形態では、カートリッジは、薬剤を収容する。
【0020】
一実施形態では、薬剤送達デバイスに連結する注射針アセンブリが提供され、薬剤送達デバイスは、薬剤のためのカートリッジを含み、注射針アセンブリは:注射針ホルダと;注射針ホルダに固定され、近位端および遠位端を有する注射針と;注射針の遠位端を封止するための封止アセンブリとを含み;ここで、封止アセンブリは、注射針の遠位端を取り囲むスペーサ要素と、注射針アセンブリが薬剤送達デバイスに連結される前に注射針の遠位端を封止するための封止膜とを含む。
【0021】
本発明のさらなる態様は、薬剤送達デバイスアセンブリを組み立てる方法を提供し、この方法は:カートリッジを含む薬剤送達デバイスを提供することと;注射針アセンブリを提供することであり、注射針アセンブリが、注射針ホルダと、注射針ホルダに固定され、近位端および遠位端を有する注射針と、封止アセンブリとを含み、封止アセンブリが、注射針の遠位端を取り囲むスペーサ要素と、注射針アセンブリが薬剤送達デバイスに連結される前に注射針の遠位端を封止するための封止膜とを有する、提供することと;注射針アセンブリを薬剤送達デバイスに連結することとを含む。
【0022】
本発明の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態は、薬剤送達デバイスで使用するための注射針アセンブリを提供し、注射針アセンブリは、注射針と、封止アセンブリとを有し、封止アセンブリは、注射針の遠位端を取り囲むスペーサ要素と、注射針の遠位端を封止するための封止膜とを含む。そのような封止アセンブリを提供することで、薬剤送達デバイスで使用する前の収納および/または輸送中に注射針が滅菌および保護されたままであることが可能になる。本発明によるニードルアセンブリは、デバイスのより快適かつ効率的な使用を可能にする。実際には、本発明の実施形態において、使用者は、針の遠位端を開封する工程、薬剤カートリッジ内へ針を挿入する工程、および薬剤の注射を作動させる工程中、針に接触する必要がない。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本明細書では単に「デバイス10」と呼ぶ薬物送達デバイス10を含む例示的な薬剤送達デバイスアセンブリが、
図1Aおよび
図1Bに示されている。
【0026】
本明細書では、「近位」および「遠位」という用語はそれぞれ、患者に比較的近いことおよび患者から比較的遠いことを指す。
【0027】
本明細書に記載するデバイス10は、薬剤を患者に注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスは、患者または看護師もしくは医師などの医療従事者によって動作させることができ、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml〜約2mlの範囲に及ぶことができる。さらに別のデバイスは、一定期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に付着して「大」容量の薬剤(典型的には、約2ml〜約10ml)を送達するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0028】
特有の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされる仕様の範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、特定の期間(たとえば、自動注射器の場合は約3〜約20秒、LVDの場合は約10分〜約60分)内に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小の不快レベル、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば、約3cP〜約50cPの範囲に及ぶ薬物の粘性などの様々な要因に起因する可能性がある。したがって、薬物送達デバイスは、サイズが約25〜約31ゲージの範囲に及ぶ中空の針を含むことが多い。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
【0029】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気エネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、レバー、エラストマ、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、弁、または他の機構をさらに含むことができる。
【0030】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能は各々、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1つの工程または複数の工程からなるプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があることがある。たとえば、1つの工程からなるプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを押し下げて自身の体に押し付けて、薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能の複数の工程からなる起動を必要とする。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げ、ニードルシールドを後退させる必要がある。
【0031】
加えて、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の次の自動機能を起動することができ、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特有の工程シーケンスを必要とする。他のデバイスは、独立した工程のシーケンスによって動作することができる。
【0032】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には、自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的には、ペン注射器に見られる)とを含むことができる。
【0033】
デバイス10は、上述したように、薬剤、たとえば液体薬剤を患者の体内へ注射するように構成される。デバイス10は、本体またはハウジング11を含み、ハウジング11は、典型的には、注射予定の薬剤を収容するリザーバ(たとえば、カートリッジ)と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要とされる構成要素とを収容する。デバイス10はまた、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップアセンブリ12を含むことができる。典型的には、使用者は、デバイス10を動作させる前に、ハウジング11からキャップアセンブリ12を取り外さなければならない。
【0034】
デバイス10は、液体薬剤で事前充填されたカートリッジ15を含む。薬剤送達デバイスアセンブリは、デバイス10と、ペン針またはニードルアセンブリ16(
図2に示す)とを含み、ニードルアセンブリ16は、カートリッジ15から患者の体内へ薬剤を注射するための注射針17を含む。注射針17は、中空の針17の形態であり、近位端18と、遠位端19と、近位端18と遠位端19との間に延びる中間セクション24とを含む。近位端18は、患者の体内に挿入されることが意図される。遠位端19は、カートリッジ15内に挿入されることが意図される。ハウジング11は、窓11aを含み、窓11aを通してカートリッジ15の内容物を見ることができる。
図2に示すように、ニードルアセンブリ16はまた、注射針17の遠位端19を封止するための封止アセンブリ25または滅菌した包装25と、注射針17の近位端18を遮蔽する注射針シールド26とを含む。
【0035】
図示のように、ハウジング11は、実質上円筒形であり、長手方向軸Xに沿って実質上一定の直径を有する。ハウジング11は、近位領域20および遠位領域21を有する。「近位」という用語は、注射部位に比較的近い位置を指し、「遠位」という用語は、注射部位から比較的遠い位置を指す。
【0036】
デバイス10はまた、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ13を含むことができ、ニードルスリーブ13は、ハウジング11に対するスリーブ13の動きを許容する。スリーブ13は、ハウジング11内に引き込み可能に取り付けられる。たとえば、スリーブ13は、長手方向軸Xに平行して長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ13が遠位方向に動くことで、針17がハウジング11の近位領域20から延びることを許容することができる。
【0037】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定することができ、最初は延ばされたニードルスリーブ13内に位置することができる。スリーブ13の近位端18を患者の体に押し付け、ハウジング11を近位方向に動かすことによって、スリーブ13が遠位に動くことで、針17の近位端18が露出される。そのような相対的な動きにより、針17の近位端18が患者の体内へ延びることが可能になる。そのような挿入は、患者がハウジング11をスリーブ13に対して手動で動かすことを介して針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0038】
別の形態の挿入は、「自動」であり、それによって針17がハウジング11に対して動く。そのような挿入は、スリーブ13の動きによって、またはたとえばボタン22などの別の形態の起動によってトリガすることができる。
図1Aおよび
図1Bに示すように、ボタン22は、ハウジング11の遠位端19に位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン22は、ハウジング11側に位置することもできる。
【0039】
他の手動または自動の機能は、薬物の注射もしくは針の後退、またはその両方を含むことができる。注射とは、栓またはピストン23をカートリッジ15内の遠位位置からカートリッジ15内のより近位の位置へ動かし、針17を通ってカートリッジ15から薬剤を押し出すプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前に駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。駆動ばねの遠位端19は、ハウジング11の遠位領域21内に固定することができ、駆動ばねの近位端18は、ピストン23の遠位面に圧縮力を印加するように構成することができる。起動後、駆動ばね内に貯蔵されているエネルギーの少なくとも一部をピストン23の遠位面に印加することができる。この圧縮力は、ピストン23に作用してピストン23を近位方向に動かすことができる。そのような近位への動きは、カートリッジ15内の液体薬剤を圧縮して針17から液体薬剤を押し出すように作用する。
【0040】
注射後、スリーブ13またはハウジング11内で針17を後退させることができる。後退は、使用者がデバイス10を患者の体から取り外すとともにスリーブ13が近位に動くときに行うことができる。これは、針17がハウジング11に対して固定されたままであるために行うことができる。スリーブ13の近位端18が針17の近位端18を越え、針17が覆われた後、スリーブ13をロックすることができる。そのようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ13のあらゆる遠位への動きをロックすることを含むことができる。
【0041】
別の形態の針の後退は、針17がハウジング11に対して動かされる場合に行うことができる。そのような動きは、ハウジング11内のカートリッジ15がハウジング11に対して遠位方向に動かされる場合に行うことができる。この遠位への動きは、近位領域20内に位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されると、カートリッジ15を遠位方向に動かすのに十分な力をカートリッジ15に供給することができる。十分な後退後、ロッキング機構によって、針17とハウジング11との間のあらゆる相対的な動きをロックすることができる。加えて、必要とされる場合、デバイス10のボタン22または他の構成要素をロックすることができる。
【0042】
本発明によるニードルアセンブリの第1の実施形態16が、
図2、
図3A、および
図3Bに示されている。ニードルアセンブリ16は、注射針ホルダまたは保持体27を含み、注射針ホルダ27に注射針17が固定される。
図2に見ることができるように、ニードルホルダ27は、実質上円筒形の外形を有する。ニードルホルダ27は、ニードルハブ29を有する針支持部分28を含み、針支持部分28に針17の中間セクション24が固定される。ニードルホルダ27は、針支持部分28から近位に延びるフランジ30を含む。針支持部分28は、ニードルアセンブリ16がデバイス10内に固定されているとき、長手方向軸Xに実質上平行する位置で針17を支持する。針支持部分28は、フランジ30が針17の中間セクション24を取り囲むように、針17を支持する。針支持部分28は、近位端18がフランジ30を越えて近位に延び、かつ遠位端19がニードルホルダ27を越えて遠位に延びるように、針17を支持する。
【0043】
封止アセンブリ25は、針保護として働く。封止アセンブリ25は、デバイス10内で針17の使用前に遠位端19が滅菌および保護されたままになるように、注射針17の遠位端19を封止するように配置される。封止アセンブリ25は、遠位端19を保護するために遠位端19を取り囲む変形可能なスペーサ要素31と、遠位端19を封止するための封止膜32とを含む。封止アセンブリ25は、収納構成、または組立て状態と、使用構成、または起動状態との間で可動である。収納構成で、スペーサ要素31は伸長状態にあり、スペーサ要素31が遠位端19を完全に取り囲む。使用構成で、スペーサ要素31は後退状態にあり、遠位端19がスペーサ要素31を越えて遠位に延びる。
【0044】
スペーサ要素31は、注射針ホルダ27に固定され、遠位端19に沿って長手方向に延びる。スペーサ要素31は、中央通路33を含み、中央通路33を通って遠位端19が延びる。中央通路33は、実質上管状である。中央通路33の直径は、針17がスペーサ要素31に接触しないようになっている。言い換えれば、中央通路33は、スペーサ要素31と遠位端19との間のあらゆる接触を防止するように設計される。それによって中央通路33は、粒子が針17に入って薬物を汚染するのを防止するのを助ける。スペーサ要素31は、スペーサ要素31が収納構成にあるか、それとも使用構成にあるかにかかわらず、スペーサ要素31が針17、したがって薬物に接触することが防止されるように設計される。スペーサ要素31は、弾性材料から作られ、たとえば発泡体から作られる。別法として、スペーサ要素31は、ばねを含むことができる。
【0045】
スペーサ要素31は、デバイス10内で使用する前の輸送および/または保管中に針17が可変温度範囲に耐えることができるように、針17を保護する。加えて、スペーサ要素31は、輸送および/または保管および/または組立てプロセス中に針17が偶発的に曲がるのを防止する。さらに、針17を保護するためにスペーサ要素31を提供することで、製造中により低レベルのクリーンルームまたはグレールームクラスの取扱いが有効になる。さらに、スペーサ要素31を提供することで、ニードルアセンブリ16は、針17が封止箔によってのみ保護されるニードルアセンブリなどの現況技術から知られているニードルアセンブリより耐性が強くなり、影響を受けにくくなることが可能である。
【0046】
封止膜32は、変形可能なカバーの形態である。封止膜32は、たとえば、箔から作られる。封止膜32は、ニードルホルダ27に固定され、したがって収納構成で、封止膜32およびニードルホルダ27は、滅菌体積34を形成し、スペーサ要素31および針17の遠位端19は、滅菌体積34内に延びる。封止膜32は、たとえば接着、溶接、または収縮によって、ニードルホルダ27に固定される。
【0047】
封止アセンブリ25が収納構成にあるとき、スペーサ要素31は、針17の遠位端19を越えて延びる。したがって、封止アセンブリ25が収納構成にあるとき、スペーサ要素31は、針17の遠位端19が封止膜32を損傷または穿孔するのを防止する。封止膜32は、封止アセンブリ25が収納構成から使用構成へ動くとき、遠位端19が封止膜32を穿孔するように、針17の遠位端19に対して配置される。
【0048】
キャップアセンブリ12は、
図1Aおよび
図1Bに示す外側キャップ35と、
図2、
図3A、および
図3Bに示す内側ニードルシールド26とを含む。内側ニードルシールド26は、外側キャップ35内に位置する。ニードルシールド26は、デバイス10が使用されていないときに近位端18を保護するために、針17の近位端18を密閉する。ニードルシールド26は、近位端18を環境条件から封止し、近位端18の汚染を防止する。ニードルシールド26は、実質上管状である。ニードルシールド26は、剛性材料から作られる。ニードルシールド26は、たとえば、プラスチックキャップの形態である。ニードルシールド26の直径は、針17のキャップの内面がニードルハブ29にしっかりと当接し、ニードルハブ29上でニードルシールド26を確実に位置決めするようになっている。
【0049】
ニードルアセンブリ16は、デバイス10に解放可能に連結されるように構成される。この目的で、注射針ホルダ27は、デバイス10の本体内の対応する案内要素(図示せず)に係合するように構成された案内要素36を含む。
図2、
図3A、および
図3Bに見ることができるように、案内要素36は、案内溝36の形態であり、ニードルホルダ27の外周に沿って延びる。案内溝36は、デバイス10内の対応する案内突出部(図示せず)に係合し、デバイス10内でニードルホルダ27を案内するように構成される。
図2に示すように、ニードルホルダ27の外壁38には、位置決め凹部37が設けられ、位置決め凹部37は、デバイス10内の対応する位置決め突出部(図示せず)に係合して、ニードルアセンブリ16をデバイス10に固定する。
【0050】
本発明による注射針アセンブリ16の動作について、次に説明する。
【0051】
最初に、デバイス10内にカートリッジ15が挿入され、キャップアセンブリ12がハウジング11に取り付けられる。ニードルアセンブリ16は、別個の構成要素として設けられ、収納構成にあり、すなわちスペーサ要素31は伸長状態にあり、針17の遠位端19を完全に取り囲み、スペーサ要素31と遠位端19はどちらも、封止膜32内に封止される。針17の近位端18は、ニードルシールド26内に密閉され、ニードルシールド26は、ニードルハブ29に当接する。
【0052】
次いで、ニードルアセンブリ16はハウジング11内に配置され、ニードルホルダ27上の溝がハウジング11内の突出部に係合する。次いで、挿入されたカートリッジ15は、ニードルアセンブリ16の方へ近位に押される。スペーサ要素31は、カートリッジ15によって圧縮され、封止膜32は、カートリッジ15によって針17の遠位端19の方へ変形され、したがって遠位端19が封止膜32およびカートリッジ15を穿孔する。これで、デバイス10は、注射を実行するために使用することができる状態になる。
【0053】
注射を実行するために、外側キャップ35がハウジング11から取り外される。外側キャップ35が取り外されるとき、外側キャップ35は、ニードルシールド26をニードルホルダ27から取り去り、それによって針17の近位端18を露出させる。スリーブ13は、ハウジング11内へ後退し、その結果、針17の近位端18が、デバイス10の外へ突出する。次いで、よく知られている方法で、薬剤が患者に注射される。注射後、スリーブ13は、再び展開位置に延び、その結果、スリーブ13は、デバイス10の安全な処分のために針17の近位端18を覆う。
【0054】
本発明の第2の実施形態の注射針アセンブリ116が、
図4Aおよび
図4Bに示されており、第1の実施形態の注射針アセンブリに類似しており、したがって同様の機能は同じ参照番号を保持し、それらの詳細な説明はここで繰り返さない。
【0055】
第2の実施形態のニードルアセンブリ116と第1の実施形態のニードルアセンブリとの違いは、第2の実施形態のニードルアセンブリ116が、デバイス10の対応する係合要素(図示せず)に係合するように構成された係合要素39を含むことである。係合要素39は、1対のフック39の形態である。フック39は、ニードルホルダ27から遠位に延びる。フック39は、互いに実質上平行して延びる。
【0056】
本発明は、図面に示すニードルアセンブリとデバイスとの間の特定のタイプの連結に限定されることを意図するものではない。デバイス内でニードルアセンブリを案内および固定するように構成されたニードルホルダ27のあらゆる他の形状寸法が可能であることが理解されよう。
【0057】
上述した実施形態では、ニードルアセンブリ16、116は、デバイスに解放可能に連結されるように構成されていると説明した。しかし、本発明は、そのようなニードルアセンブリに限定されるものではなく、本発明によるニードルアセンブリは、使用前にデバイス内に事前に組み立てることもできる。本発明によるニードルアセンブリは、たとえば、デバイスおよび/またはカートリッジに恒久的に取り付けることができる。
【0058】
本発明の第3の実施形態の注射針アセンブリ216が、
図5Aおよび
図5Bに示されており、第1の実施形態の注射針アセンブリに類似しており、したがって同様の機能は同じ参照番号を保持し、それらの詳細な説明はここで繰り返さない。
【0059】
第3の実施形態のニードルアセンブリ216と第1の実施形態のニードルアセンブリとの違いは、第3の実施形態のニードルアセンブリ216内で、ニードルシールド26が、ニードルホルダ27のフランジ30に固定されていることである。ニードルシールド26は、近位部分40および遠位部分41を含む。近位部分40は、略円錐形であり、針17の近位端18を密閉する。遠位部分41は、フランジ30の上に位置する。遠位部分41は、略円筒形の形状を有する。遠位部分41は、遠位部分41の内面42がニードルホルダ27のフランジ30にしっかりと当接し、ニードルホルダ27上でニードルシールド26を確実に位置決めするようになっている。
【0060】
図6Bに表す第3の実施形態の代替実施形態では、フランジ30の外面が円錐形であり、遠位部分41は、対応する円錐形の形状を有し、外面にしっかりと当接する。遠位部分41は、たとえば、熱可塑性ポリマーまたはゴムなどの弾性材料から作られる。変形形態では、遠位部分41をフランジ30に連結するために、ねじ連結またはルアーロック連結を提供することができる。
図6Cに表す代替実施形態では、ニードルホルダ27上でニードルシールド26を封止するために、フランジ30とニードルシールド26の遠位部分41との間にOリング43などの追加の封止構成要素43が設けられる。Oリング43は、2kまたは2ショットの射出成形プロセスによって、ニードルホルダ27上に組み立てることができる。Oリング43は、たとえば、熱可塑性ポリマーまたはプラスチックから作られる。
図6Dに表すさらなる代替実施形態では、ニードルシールド26の遠位部分41がニードルホルダ27のフランジ30に当接してニードルホルダ27上でニードルシールド26を位置決めし、封止ニスなどの封止化合物44によってフランジ30に封止される。
図6Eに示すさらなる代替実施形態では、ニードルシールド26の遠位部分41は、ニードルホルダ27のフランジ30に当接してニードルホルダ27上でニードルシールド26を位置決めし、たとえば収縮性チューブから作られた封止フィルムまたはコーティング45によってフランジ30に封止される。刻み目または小さいまっすぐな切れ目またはプルリンク部(pull linkage)46が、コーティング45の端部47からコーティング45の長手方向にわずかな距離だけ延びる。刻み目46は、使用者がニードルアセンブリからコーティング45を容易に取り外すのを助けるために、コーティング45上に設けられる。
【0061】
本発明の第4の実施形態の注射針アセンブリ316が、
図7Aおよび
図7Bに示されており、第1の実施形態の注射針アセンブリに類似しており、したがって同様の機能は同じ参照番号を保持し、それらの詳細な説明はここで繰り返さない。
【0062】
第4の実施形態のニードルアセンブリ316と第1の実施形態のニードルアセンブリとの違いは、スペーサ要素31とニードルシールド26がどちらも、可撓性チューブから作られていることである。ニードルシールド26を形成する可撓性の遮蔽チューブ48は、一方の端部で針支持部分28に固定され、反対側の端部で封止フィルム50によって封止される。遮蔽チューブ48は、遮蔽位置と後退位置との間で変形可能である。遮蔽位置で、遮蔽チューブ48は伸長状態にあり、遮蔽チューブ48が針17の近位端18を完全に取り囲む。後退位置で、遮蔽チューブ48は後退状態または圧縮状態にあり、針17の近位端18が遮蔽チューブ48を越えて延びる。遮蔽チューブ48は、遮蔽チューブ48が遮蔽位置から後退位置へ動くとき、近位端18が遮蔽チューブ48の封止フィルム50を穿孔するように、針17に対して配置される。第4の実施形態のニードルアセンブリ316と第1の実施形態のニードルアセンブリとの別の違いは、封止膜32がニードルアセンブリ316全体の上に延びることである。封止膜32は、保護体積51を形成し、ニードルアセンブリ316が収納構成にあるとき、ニードルアセンブリ316全体が体積51内に密閉される。封止膜32は、たとえば接着、溶接、または収縮によって、ニードルホルダ27に固定することができる。封止膜32は、封止アセンブリ25が収納構成から使用構成へ動くとき、遠位端19が封止膜32を穿孔するように、針17の遠位端19に対して配置される。同様に、封止膜32は、遮蔽チューブ48が遮蔽位置から後退位置へ動くとき、近位端18が封止膜32を穿孔するように、針17の近位端18に対して配置される。
【0063】
本発明の第5の実施形態の注射針アセンブリ416が、
図8に示されており、第3の実施形態の注射針アセンブリに類似しており、したがって同様の機能は同じ参照番号を保持し、それらの詳細な説明はここで繰り返さない。
【0064】
第5の実施形態のニードルアセンブリ416と第3の実施形態のニードルアセンブリとの違いは、スペーサ要素31がニードルホルダ27と一体形成されていることである。スペーサ要素31は、剛性材料から作られており、したがって、上述したニードルアセンブリ内のスペーサ要素とは異なり、変形可能でない。スペーサ要素31は、針17の遠位端19を覆う。封止膜32は、スペーサ要素31上へ封止され、遠位端19の保護を確実にする。近位端18は、剛性ニードルシールド26によって保護される。しかし、近位端18は、上記の第4の実施形態に記載した圧縮性チューブによって保護することもできる。
【0065】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0066】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0067】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスまたは薬剤送達デバイスアセンブリは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0068】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0069】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0070】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0071】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0072】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N−テトラデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ω−カルボキシヘプタデカノイル−γ−L−グルタミル−des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0073】
GLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン−4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン(Eligen)、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034、MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド−XTENおよびグルカゴン−Xtenがある。
【0074】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0075】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0076】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0077】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG−F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0078】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)
2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0079】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)
2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0080】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0081】
抗体の例としては、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0082】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0083】
本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。