【実施例】
【0043】
実施例1
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、具体的には、
モル比で25:45:20:5:5のDOTAP、Egg PC、コレステロール、トウェイン80、TPGSを80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、鎖全体がチオリン酸化修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’をPBS緩衝液(1X pH=7)に溶解して、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(PBS緩衝液)を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチド溶液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液(1X pH=7.4)を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、濃度が0.1Mの混合液を得ることで、ナノ粒子の表面に結合した遊離オリゴヌクレオチドを解離する工程(4)と、
分画分子量が10,000ダルトンの限外濾過装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μmの濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0044】
実施例2
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、具体的には、
モル比で35:40:15:1:1のDOTMA、DOPC、コレステロール、トウェイン40、mPEG550−DPPEを80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、鎖全体がチオリン酸化修飾された、且つ両端が2’−O−Me修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’をPBS緩衝液(1X pH=7)に溶解して、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(PBS緩衝液)を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチド溶液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液(1X pH=7.4)を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、最終濃度が0.3Mの高塩濃度混合液を得る工程(4)と、
分画分子量が50,000ダルトンの限外濾過装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μmの濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0045】
実施例3
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、具体的には、
モル比で30:50:25:3:3のDDAB、DSPC、コレステロール、トウェイン60、mPEG2000−DPPEを80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、鎖全体がチオリン酸化修飾された、且つ両端が2’−O−Me修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’をPBS緩衝液(1X pH=7)に溶解して、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(PBS緩衝液)を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチド溶液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液(1X pH=7.4)を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、最終濃度が1Mの高塩濃度混合液を得る工程(4)と、
分画分子量が100,000ダルトンの限外濾過装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μmの濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0046】
実施例4:
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:50:20:5:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:50:20:5:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=35:50:20:5:5
【0047】
【表1】
【0048】
カチオン性脂質DOTAPのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤1は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤1を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0049】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:40:20:5:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:50:20:5:5
【0050】
【表2】
【0051】
中性リン脂質Egg PCのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤2は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤2を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0052】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:15:5:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:25:5:5
【0053】
【表3】
【0054】
コレステロールのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤2は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤2を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0055】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:1:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:3:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
【0056】
【表4】
【0057】
トウェイン80のモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤3を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0058】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:1
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:3
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
【0059】
【表5】
【0060】
TPGSのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤3を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0061】
(1)DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
(2)DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:45:20:5:5
(3)DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=35:45:20:5:5
【0062】
【表6】
【0063】
この他に、他の関係し得るリン脂質についてもスクリーニングを行った。カチオン性脂質DOTMAのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤2は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤2を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0064】
(1)DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:40:20:5:5
(2)DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:45:20:5:5
(3)DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:50:20:5:5
【0065】
【表7】
【0066】
リン脂質DSPCのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤3を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0067】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/DPPE−mPEG2000=30:45:20:5:1
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/DPPE−mPEG2000=30:45:20:5:3
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/DPPE−mPEG2000=30:45:20:5:5
【0068】
【表8】
【0069】
DPPE−mPEG2000のモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。
【0070】
上記のとおり、各配合及びその割合についてスクリーニングすることにより、下記の結論を得ている。
(1)「DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5」という配合と割合が、粒径が比較的小さく、被覆率が安定しており、正電位が好適である。
(2)他の配合については、「DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:45:20:5:5」、「DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:50:20:5:5」及び「DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/mPEG2000−DPPE=30:45:20:5:5」という配合と割合が、粒径、電位、被覆率、及び安定性において比較的好適である。よって、更にこれらの配合と割合について試験を行い、分析した。
【0071】
以下、実施例1についての試験である。
下表では、遊離2’−O−Me修飾G3139及び2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子は、鎖全体がチオリン酸化修飾された、且つ最初の3つのヌクレオチドが2’−O−Me修飾されたG3139(5’ ―UCU CCC AGC GTG CGC CAU ―3’)を意味し、
遊離G3139及びG3139脂質ナノ粒子は、鎖全体がチオリン酸化修飾されたG3139(5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’)を意味し、
空白ナノ粒子は、膜材料により被覆されて形成した、内容物のない脂質ナノ粒子を意味する。
【0072】
1.A549肺癌細胞毒性試験
(1)A549細胞を96ウェルプレートに播種し、コロニー形成率が60〜70%になるように、RPMI1640培養液(ウシ胎児血清10%含有)を用いて細胞を一晩培養した。
(2)翌日、各濃度群に対してタキソール(PTX)濃度勾配(1nmol/L〜100μmol/L)と各種アンチセンスオリゴヌクレオチド(濃度が同じく10μmol/L)を用いる毒性試験を複数回行い、37℃で二酸化炭素5%の環境下で培養した。
(3)24h、48h、72hにMTS試薬(新規なテトラゾール化合物)20μLを加え、波長490nmにて検出し、結果を下表に示す。
【0073】
【表9】
【0074】
本試験で、各試験群はいずれも異なる濃度のタキソール(PTX)を用いて治療し、化学感作効果を示すように、各アンチセンスオリゴヌクレオチド群の濃度を同じく10μmol/Lとした。治療後48hに、G3139脂質ナノ粒子と2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子は癌細胞に対し一定の化学感作効果を果たしており、タキソールを併用すると癌細胞の死滅効果が大幅に高まることが確認された。当該結果には統計学的有意性が認められた。
【0075】
2.遺伝子レベル(bcl−2)のG3139調節試験
様々な試料群を設計して、各種癌細胞(A549癌細胞、KB癌細胞及びLNCaP前立腺癌細胞を含む)に対する各種G3139剤型のbcl−2レベルの調節効果について測定し、薬物の調節作用により変化しないβ−アクチンを参照遺伝子として用い、目標遺伝子bcl−2への上下調節作用について観察することで薬物が効いたか否かを確認した。
【0076】
(1)癌細胞、例えばA549癌細胞、KB癌細胞、及びLNCaP前立腺癌細胞を6ウェルプレートに播種し、コロニー形成率が80%になるように、RPMI1640培養液(ウシ胎児血清10%含有)を用いて細胞を一晩培養した。
(2)最終濃度が1μMのG3139製剤を腫瘍細胞培養液に加え、当該製剤は2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子、G3139脂質ナノ粒子、遊離G3139、遊離2’−O−Me修飾G3139、空白脂質ナノ粒子及び培養液対照群の6群に分けた。
(3)37℃で二酸化炭素5%の環境下で4h培養した後、細胞を新鮮な培養液に移し、引き続き48h培養した。標準な方法で細胞を収集し、分解させ、RNAを抽出した。
(4)Real−Time−PCR技術を用いて各群のbcl−2メッセンジャーRNAのレベルを分析し、試薬供給者から提供された標準な方法により、各群治療後のbcl−2の発現状況について測定することができる。
【0077】
1)KB癌細胞
様々な試料群を設計して、KB癌細胞中のbcl−2レベルを調節し、試験結果を下表及び
図2に示す。薬物の調節作用により変化しないβ−アクチンを参照遺伝子として用い、目標遺伝子bcl−2への上下調節作用について観察することで薬物が効いたか否かを確認した。
【0078】
【表10】
【0079】
上表及び
図2から分かるように、2’−O−Me修飾された脂質ナノ粒子群では、bcl−2遺伝子レベルが67.71%と他の試験群よりも大幅に下方調節され、遊離薬物群(3、4)では薬物送達システムがないため細胞に入ることができず、わずかな下方調節作用しか認められず(それぞれ4.69%及び10.96%)、空白ナノ粒子群では薬物を投与しなかったため、下方調節作用が認められなかった。
【0080】
2)A549肺癌細胞
試験結果を下表及び
図3に示す。
【表11】
【0081】
上表及び
図3から分かるように、2’−O−Me修飾された脂質ナノ粒子群では、bcl−2遺伝子レベルが71.87%と他の試験群よりも大幅に下方調節され、遊離薬物群(3、4)では薬物送達システムがないため細胞に入ることができず、わずかな下方調節作用しか認められず(それぞれ11.25%及び6.71%)、空白ナノ粒子群では薬物を投与しなかったため、下方調節作用が認められなかった。
【0082】
3)LNCaP前立腺癌細胞
試験結果を下表及び
図4に示す。
【表12】
【0083】
上表及び
図4から分かるように、2’−O−Me修飾された脂質ナノ粒子群では、bcl−2遺伝子レベルが78.78%と他の試験群よりも大幅に下方調節され、遊離薬物群(3、4)では薬物送達システムがないため細胞に入ることができず、わずかな下方調節作用しか認められず(それぞれ6.85%及び5.11%)、空白ナノ粒子群では薬物を投与しなかったため、下方調節作用が認められなかった。
【0084】
3.KB細胞異所性接種マウスin vivo腫瘍モデルの薬力学及び生存曲線試験
(1)5×10
6のKB癌細胞をヌードマウスの背部の右側に接種し、平均150mm
3の可視腫瘍になるように1〜2週間成長させた。
(2)腫瘍が所定の大きさになったら、各群の担癌マウスに、2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子、G3139脂質ナノ粒子、遊離G3139、遊離2’−O−Me修飾G3139、タキソール注射液、及び生理食塩液をそれぞれ尾静脈投与した。3日に1回投与し3週間連続投与した。治療群は6群とし、1群あたり担癌マウス10匹とした。
(3)ノギスを用いて腫瘍の長さ及び幅を測定し、下式により腫瘍の体積を求めた。
腫瘍体積=(π/6)×長さ(mm)×(幅)
2
(4)腫瘍の大きさが1500mm
3になったら、治療群から取り出し、二酸化炭素で窒息させることにより安楽死を施行した。
治療期間が終了した後の各群の腫瘍体積が、抗腫瘍活性を示すことができる。
【0085】
図5及び
図6はそれぞれ、癌抑制率試験及び生存試験の結果を示す図である。
【0086】
図5及び
図6から分かるように、KB癌細胞異所性接種ヌードマウスについての薬力学及び生存曲線に示すように、2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子とタキソールを併用すると優れた癌抑制効果を有し、担癌マウスが長い間生存する。これは、脂質ナノ粒子が大きな毒性と副作用を伴わないで、薬効を高めることができることを示している。