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特許6986563bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986563
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20211213BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K31/7105ZNA
   A61K31/711
   A61K47/24
   A61K47/26
   A61K47/28
   A61K47/02
   A61K9/51
   A61P35/00
   C12N15/113
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-541841(P2019-541841)
(86)(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公表番号】特表2019-535808(P2019-535808A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】CN2017106042
(87)【国際公開番号】WO2018072646
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】201610903392.1
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519139505
【氏名又は名称】南京▲緑▼叶制▲薬▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519139516
【氏名又は名称】南京▲愛▼▲賽▼克▲納▼米生物医▲薬▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】程光
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼文忠
(72)【発明者】
【氏名】秦利利
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−529912(JP,A)
【文献】 特表2012−509273(JP,A)
【文献】 特表2012−509258(JP,A)
【文献】 特表2015−525209(JP,A)
【文献】 特開2011−121974(JP,A)
【文献】 Journal of Biological Chemistry,1998年,Vol.273, No.25,p.15621-15627
【文献】 Advanced Drug Delivery Reviews,2016年02月18日,Vol.99,p.129-137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 48/00
A61P 1/00−43/00
A23L 33/00−33/29
C12N 15/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜材料でアンチセンスオリゴヌクレオチドセグメントを被覆して調製され、
前記ヌクレオチドの配列は5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’又は5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’であり、
前記膜材料は、カチオン性脂質、中性リン脂質、コレステロール、トウェイン(登録商標)、ポリエチレングリコール誘導体を含み、それらのモル比は、(25〜35):(40〜50):(15〜25):(1〜5):(1〜5)であり、
前記トウェイン(登録商標)は、トウェイン(登録商標)20、トウェイン(登録商標)40、トウェイン(登録商標)60、又はトウェイン(登録商標)80から選択され;
前記ポリエチレングリコール誘導体は、mPEG−DPPE、mPEG−DMPE、mPEG−DSPE、TPGS、又はmPEG−コレステロールから選択され、bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記カチオン性脂質は、DOTAP、DOTMA、DDAB、DODMAを含み;
前記中性リン脂質は、Egg PC、DOPC、DSPC、DPPC、DMPCを含む、請求項1に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコール誘導体におけるPEGは、分子量が550〜5000のモノメチルポリエチレングリコールを含む、請求項1又は2に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコール誘導体は、親水性のポリエチレングリコール鎖又はメチル化ポリエチレングリコール鎖が、リン脂質二重層に埋め込み可能な疎水性構造に連接されて形成された物質であり、
前記疎水性構造は、コレステロール、ビタミンE、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、又はジミリストイルホスファチジルエタノールアミンである、請求項3に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項5】
前記トウェイン(登録商標)がトウェイン(登録商標)80である、請求項2に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチド5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’への修飾は、その両端に位置する最初の3つのヌクレオチドを2’−O−Me修飾し、且つ鎖全体をチオリン酸化修飾するか、又はアンチセンスオリゴヌクレオチド5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’の鎖全体をチオリン酸化修飾するものである、請求項1に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項7】
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、前記脂質ナノ粒子の調製方法は、エタノールで段階希釈する方法であり、具体的には:
カチオン性脂質、中性リン脂質、コレステロール、トウェイン(登録商標)、ポリエチレングリコール誘導体を、(25〜35):(40〜50):(15〜25):(1〜5):(1〜5)のモル比で80%のエタノールに溶解して、混合エタノール溶液を得、修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドをPBS緩衝液に溶解してアンチセンスオリゴヌクレオチドのPBS緩衝液を得る工程(1)と、
得られた混合エタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチドのPBS緩衝液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、高塩濃度混合液を得る工程(4)と、
限外濾過装置又は透析装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び被覆されていない遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μm以下の濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、
を含み、
前記トウェイン(登録商標)は、トウェイン(登録商標)20、トウェイン(登録商標)40、トウェイン(登録商標)60、又はトウェイン(登録商標)80から選択され;
前記ポリエチレングリコール誘導体は、mPEG−DPPE、mPEG−DMPE、mPEG−DSPE、TPGS、又はmPEG−コレステロールから選択される、調製方法。
【請求項8】
前記PBS緩衝液は、デオキシリボヌクレアーゼ及びリボヌクレアーゼを含有せず、前記工程(1)に用いるPBS緩衝液の規格は、1xpH=7であり、前記工程(3)に用いるPBS緩衝液の規格は、1xpH=7.4である、請求項7に記載の脂質ナノ粒子の調製方法。
【請求項9】
前記高塩濃度溶液はNaCl溶液であり、工程(4)における混合液のNaCl濃度は、0.1〜1Mである、請求項7に記載の脂質ナノ粒子の調製方法。
【請求項10】
前記混合液のNaCl濃度は、0.3〜0.4Mである、請求項9に記載の脂質ナノ粒子の調製方法。
【請求項11】
前記限外濾過装置又は透析装置の分画分子量は、10,000〜100,000ダルトンである、請求項7に記載の脂質ナノ粒子の調製方法。
【請求項12】
前記膜材料は、モル比で25:45:20:5:5のDOTAP、Egg PC、コレステロール、トウェイン(登録商標)80、TPGSを含む、請求項2に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項13】
前記膜材料は、モル比で30:45:20:5:5のDOTMA、Egg PC、コレステロール、トウェイン(登録商標)80、TPGSを含む、請求項2に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項14】
前記膜材料は、モル比で30:50:20:5:5のDOTAP、DSPC、コレステロール、トウェイン(登録商標)80、TPGSを含む、請求項2に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【請求項15】
前記膜材料は、モル比で30:45:20:5:5のDOTAP、Egg PC、コレステロール、トウェイン(登録商標)80、mPEG2000−DPPEを含む、請求項2に記載のbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジー分野に関し、具体的には、bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは通常、18〜22個のヌクレオチドからなり、塩基対合則により標的メッセンジャーRNAと選択的に結合することで、特定のメッセンジャーRNAの機能を遮断又は抑制し、後続の標的遺伝子によるタンパク質の発現を調節する。
【0003】
bcl−2はアポトーシスを抑制する遺伝子で、当該遺伝子は細胞の分裂、増殖、及び分化を促進することができ、殆どの腫瘍細胞の中で比較的発現率が高いため、腫瘍は当該遺伝子への上方調節によって制限なく成長し拡散することができる。G3139は18個のヌクレチオドからなるアンチセンスオリゴヌクレオチドセグメントであり、その配列が5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’で、塩基対合則によりbcl−2をコードするメッセンジャーRNAと結合することで、bcl−2遺伝子及び下流タンパク質の発現を好適に抑制することができる。しかしながら、関連報告によると、殆どのアンチセンスオリゴヌクレオチドには適切な薬物送達システムが認められず、それ自体の機能では細胞に入って役割を果たすのが困難である。また、標的メッセンジャーRNAとの結合能が比較的弱く、長時間にわたって抑制結合作用を発揮するのが困難で、しかも殆どのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、血漿中のヌクレアーゼの作用により分解されて治療効果を失いやすいという。G3139については、長年の臨床試験を行ったところ一定の治療効果が認められたが、その効果は米国FDAの関連規格を満たさないため使用の承認を受けなかった。
【0004】
従来の技術による脂質ナノ粒子膜材料においては、トウェイン(Tween)化合物とポリエチレングリコール(PEG)誘導体(例えばTPGS)を結合させる例がない。トウェインを単独で使用する場合、トウェインは比較的短いPEG鎖を有しており、このような短鎖のPEGがナノ粒子間の反発相互作用を強めることで、粒子の凝集による安定性の低下を防止することができる。一方、このようなナノ製剤ではナノ粒子の表面に埋め込まれる長鎖PEGが存在しないため、全身循環において食細胞に呑み込まれて機能できなくなることが多い。
【0005】
また、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体(例えばTPGS)を単独で使用する場合、TPGSは比較的長いPEG鎖を有しており、食作用系により認識され、食細胞に呑み込まれて機能を喪失することをある程度で回避し、長循環時間を延長することができるものの、TPGSが多くある場合、立体障害が存在するため、ナノ粒子が標的腫瘍細胞により有効に摂取されるのが困難になる。
【0006】
G3139のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドについては、従来修飾を行う場合、殆どはチオリン酸(PS)化する。このような修飾はアンチセンスオリゴヌクレオチドの安定性をある程度で高めることができるものの、メッセンジャーRNAとの結合能、結合強度、及びマッチングの度合いはいずれも大きく低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の不備を克服すべく、ナノ粒子自体の安定性を高めることで、腫瘍組織における薬物の放出を促進し分解される可能性を軽減するとともに、アンチセンスオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼに対する耐性を高め、メッセンジャーRNAとマッチングする際の正確性及び結合能を高める薬物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために提供する発明は、以下のとおりである。
【0009】
膜材料でアンチセンスオリゴヌクレオチドセグメントを被覆して調製されるbcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子であって、前記ヌクレオチドの配列が5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’(G3139とも称する)又は5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’である。
【0010】
更に、前記膜材料は、カチオン性脂質、中性リン脂質、コレステロール、トウェイン、ポリエチレングリコール誘導体を含み、それらのモル比は、(25〜35):(40〜50):(15〜25):(1〜5):(1〜5)である。
【0011】
更に、前記カチオン性脂質は、DOTAP、DOTMA、DDAB、DODMAを含み、前記中性リン脂質は、Egg PC、DOPC、DSPC、DPPC、DMPCを含み、前記トウェインは、トウェイン20、トウェイン40、トウェイン60、トウェイン80を含み、前記ポリエチレングリコール誘導体は、mPEG−DPPE、mPEG−DMPE、mPEG−DSPE、TPGS、mPEG−コレステロールを含む。
【0012】
更に、前記ポリエチレングリコール誘導体におけるPEGの分子量は、550〜5000である。
【0013】
更に、前記ポリエチレングリコール誘導体におけるPEGの分子量は、550、750、1000、2000、3000、5000である。
【0014】
更に、前記ポリエチレングリコール(PEG)誘導体は、親水性のポリエチレングリコール(PEG)鎖又はメチル化ポリエチレングリコール鎖(mPEG)が、リン脂質二重層に埋め込み可能な疎水性構造に連接されて形成した物質であり、前記疎水性構造は、コレステロール、ビタミンE、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジミリストイルグリセリン(DMG)又はこれらの構造類似体である。
【0015】
更に、前記トウェインは、トウェイン80である。
【0016】
更に、前記アンチセンスオリゴヌクレオチド5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’への修飾は、その両端に位置する最初の3つのヌクレオチドを2’−O−メチル修飾し、且つ鎖全体をチオリン酸化修飾するか、又はアンチセンスオリゴヌクレオチド5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’の鎖全体をチオリン酸化修飾するものである。
【0017】
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、前記脂質ナノ粒子の調製方法はエタノールで段階希釈する方法とし、具体的には、
カチオン性脂質、中性リン脂質、コレステロール、トウェイン、ポリエチレングリコール誘導体を、所定のモル比で80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドをPBS緩衝液に溶解してアンチセンスオリゴヌクレオチドのPBS緩衝液を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチドのPBS緩衝液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、高塩濃度混合液を得る工程(4)と、
限外濾過装置又は透析装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び被覆されていない遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μm以下の濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0018】
更に、前記PBS緩衝液は、デオキシリボヌクレアーゼ及びリボヌクレアーゼを含有せず、前記工程(1)に用いるPBS緩衝液の規格は、1XpH=7であり、前記工程(3)に用いるPBS緩衝液の規格は、1XpH=7.4である。
【0019】
更に、前記高塩濃度溶液は、NaCl溶液であり、工程(4)における混合液のNaCl濃度は、0.1〜1Mである。
【0020】
更に、前記混合液のNaCl濃度は、0.3〜0.4Mであり、好ましくは0.3Mである。
【0021】
更に、前記限外濾過装置又は透析装置の分画分子量は、10,000〜100,000ダルトンである。
【0022】
更に、前記膜材料は、モル比で25:45:20:5:5のDOTAP、Egg PC、コレステロール、トウェイン80、及びTPGSからなる。
【0023】
更に、前記膜材料は、モル比で30:45:20:5:5のDOTMA、Egg PC、コレステロール、トウェイン80、及びTPGSからなる。
【0024】
更に、前記膜材料は、モル比で30:50:20:5:5のDOTAP、DSPC、コレステロール、トウェイン80、及びTPGSからなる。
【0025】
更に、前記膜材料は、モル比で30:45:20:5:5のDOTAP、Egg PC、コレステロール、トウェイン80、mPEG2000−DPPEからなる。
【0026】
ここで、
DOTAP:1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化塩
DOTMA:1,2−ジオキシオクタデセン−3−トリメチルアミノプロパン塩化塩
DDAB:ビスドデシルジメチル臭化アンモニウム
DODMA:1,2−ジオキシオクタデセン−3−ジメチルアミノプロパン
Egg PC:卵黄ホスファチジルコリン
DOPC:ジオレオイルホスファチジルコリン
DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン
DPPC:ジパルミトイルホスファチジルコリン
DMPC:ジミリストイルホスファチジルコリン
DPPE:ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン
DMPE:ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン
TPGS:コハク酸エステル
【0027】
前記チオリン酸化修飾とは、リン酸基における1つの未架橋状態の酸素原子が硫黄原子によって置換されることを指し、下図に示すように、オリゴヌクレオチド鎖全体の構造への影響が比較的小さく、各種ヌクレアーゼへの耐性を大幅に高めることができる。
【化1】
【発明の効果】
【0028】
従来技術に比べると、本発明は下記の利点を有する。
1.本発明に係るナノ微粒子膜材料は、初めて2種類のポリエチレングリコール化試薬(トウェイン及びポリエチレングリコール誘導体)が用いられ、ナノ粒子自体の安定性をある程度高め、腫瘍組織における薬物の放出を促進し、分解される可能性を軽減することができる。
【0029】
ポリエチレングリコール化試薬であるトウェインは、ナノ製剤の調製によく用いられる。トウェインシリーズは短鎖のPEGを有する。トウェインシリーズ(例えばトウェイン20/40/60/80)はナノ製剤においてナノ粒子間の反発相互作用を強めることで、凝集しにくくすることができるため、ナノ製剤の安定性をある程度で高めることができ、長期保存しても粒径増加の度合いが比較的小さい。
【0030】
ポリエチレングリコール誘導体、例えばTPGSは、よく用いられるもう一つのナノ製剤成分で、比較的長いPEG鎖を有するため、血液中におけるナノ粒子の循環を促進し、細網内皮系細胞又は食細胞からの摂取による機能喪失を回避することができ、免疫系の認識をある程度回避し、長循環時間を延長することができる。また、比較的長いPEG鎖が細胞からの摂取をある程度で影響する。
【0031】
本発明はトウェインとポリエチレングリコール誘導体を組み合わせ、即ち比較的長いPEG鎖と比較的短い鎖を有するトウェインを組み合わせる。本発明者らは、この2種類のポリエチレングリコール化試薬を組み合わせると、血漿中におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドが被覆されたナノ粒子の安定性、長循環時間、標的細胞への放出及び標的細胞中の遺伝子への分解効果を効果的に高めることができることを見出した。
【0032】
2.本発明において、トウェインシリーズとTPGSの組成物について安定性試験(周期27日間、温度4℃)を行う。図1に示すように、1か月の期間にナノ製剤の粒径変化が比較的小さく、トウェインが製剤の全体的安定性を維持できることが明らかになる。
【0033】
具体的な試験データは、以下のとおりである。
【0034】
トウェイン80を使用して安定性試験(周期27日間、温度4℃)を行うと、ナノ製剤の粒径が126nmから181nmに変化し、安定性が最も高く、
トウェイン20を使用して安定性試験(周期27日間、温度4℃)を行うと、ナノ製剤の粒径が99.8nmから274.2nmに変化し、安定的であり、
トウェイン40を使用して安定性試験(周期27日間、温度4℃)を行うと、ナノ製剤の粒径が138.5nmから305.9nmに変化し、安定的であり、
トウェイン60を使用して安定性試験(周期27日間、温度4℃)を行うと、ナノ製剤の粒径が76.7nmから218.6nmに変化し、安定的である。
【0035】
3.本発明において、脂質ナノ粒子の膜材料はカチオン性脂質、リン脂質、コレステロール、トウェイン、ポリエチレングリコール誘導体を含み、且つこれらを所定の割合で組み合わせることにより、調製して得られたナノ膜材料はコストが効果的に削減され、安定性に優れており、細胞受容性が高いため、優れたナノ担体である。
【0036】
4.本発明において、G3139に対して、2’−O−メチル(2’−O−Me)及びチオリン酸(PS)化という二重化学的修飾を行い、両端に位置する最初の3つのヌクレオチドを2’−O−Me修飾することにより、血漿中におけるG3139オリゴヌクレオチドの安定性をある程度で高めることができ、また鎖全体をチオリン酸化修飾する。これによりRNA/DNA/RNAという構造はRNase Hの機能を促進し、特定の標的メッセンジャーRNA配列を分解することができ、ヌクレアーゼに対する耐性をある程度高め、メッセンジャーRNAとマッチングする際の正確性及び結合能を高めることができる。
【0037】
両端で3つのヌクレオチドを2’−O−Me修飾すると、標的遺伝子に対する認識と分解に影響を与えることなく、G3139アンチセンスオリゴヌクレオチドの安定性を大幅に高めることができる。これに対し、2つ(G3139−GAP−LNPs−2)又は4つのヌクレオチド(G3139−GAP−LNPs−4)を2’−O−Me修飾した場合、上記の効果は認められない。本発明は修飾効果に優れ、目的部位へ送達しやすく、優れた遮断効果を果たすことができる。
【0038】
5.本発明に係る脂質ナノ粒子は、腫瘍細胞の成長及び特定の標的遺伝子、とりわけKB子宮頚癌細胞に対して優れた遮断効果を有する。
【0039】
6.本発明の調製方法で高塩濃度溶液を加えることにより、ナノ粒子の表面に吸着した遊離オリゴヌクレオチドを解離させ、オリゴヌクレオチドの吸着により粒径が大きくなることを軽減することができる。沈降したオリゴヌクレオチドは後続の透析工程で除去することができる。
【0040】
7.本発明に係る脂質ナノ粒子の調製方法は、エタノールで段階希釈する方法で、従来技術における非等体積でオンライン混合する方法は複雑で、2つのポンプ及び仕様の異なる液体貯蔵タンクを使用する必要があり、大量生産に適しない。反応速度論の観点からすれば、本発明は従来技術と比べて、系間の動バランスに至らせ、後に懸濁系の安定性を高める点で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係るトウェインシリーズとTPGSの組成物について行った安定性試験(周期27日間、温度4℃)の結果を示す図である。
図2】KB癌細胞における遺伝子レベル(bcl−2)のG3139調節試験の結果を示す図である。
図3】A549肺癌細胞における遺伝子レベル(bcl−2)のG3139調節試験の結果を示す図である。
図4】LNCaP前立腺癌細胞における遺伝子レベル(bcl−2)のG3139調節試験の結果を示す図である。
図5】癌抑制率試験の結果を示す図である。
図6】生存試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明及びその実施形態を例示的に説明するが、下記説明の内容に限定されるものではない。図面に示すのは本発明の実施形態の一つに過ぎず、これだけに限定されない。よって、当業者はここから示唆を受けて、本発明の趣旨から逸脱せず、鋭意工夫をすることなく作り出した当該発明に類似する構造形態及び実施例等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【実施例】
【0043】
実施例1
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、具体的には、
モル比で25:45:20:5:5のDOTAP、Egg PC、コレステロール、トウェイン80、TPGSを80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、鎖全体がチオリン酸化修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’をPBS緩衝液(1X pH=7)に溶解して、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(PBS緩衝液)を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチド溶液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液(1X pH=7.4)を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、濃度が0.1Mの混合液を得ることで、ナノ粒子の表面に結合した遊離オリゴヌクレオチドを解離する工程(4)と、
分画分子量が10,000ダルトンの限外濾過装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μmの濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0044】
実施例2
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、具体的には、
モル比で35:40:15:1:1のDOTMA、DOPC、コレステロール、トウェイン40、mPEG550−DPPEを80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、鎖全体がチオリン酸化修飾された、且つ両端が2’−O−Me修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’をPBS緩衝液(1X pH=7)に溶解して、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(PBS緩衝液)を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチド溶液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液(1X pH=7.4)を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、最終濃度が0.3Mの高塩濃度混合液を得る工程(4)と、
分画分子量が50,000ダルトンの限外濾過装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μmの濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0045】
実施例3
bcl−2を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドの脂質ナノ粒子の調製方法であって、具体的には、
モル比で30:50:25:3:3のDDAB、DSPC、コレステロール、トウェイン60、mPEG2000−DPPEを80%のエタノールに溶解して、混合したエタノール溶液を得、鎖全体がチオリン酸化修飾された、且つ両端が2’−O−Me修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド5’ UCU CCC AGC GTG CGC CAU 3’をPBS緩衝液(1X pH=7)に溶解して、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(PBS緩衝液)を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた混合したエタノール溶液とアンチセンスオリゴヌクレオチド溶液とを等体積で混合して、エタノールの最終濃度が40%の混合溶液を得る工程(2)と、
更にPBS緩衝液を用いて、工程(2)で得られたエタノールの最終濃度が40%の混合溶液を等体積で希釈し、エタノールの最終濃度が5%未満の製剤混合液を得るまでPBS緩衝液(1X pH=7.4)を用いて最終濃度のエタノールの混合溶液を等体積で繰り返し希釈する工程(3)と、
工程(3)で得られた製剤混合液に高塩濃度溶液を加え、最終濃度が1Mの高塩濃度混合液を得る工程(4)と、
分画分子量が100,000ダルトンの限外濾過装置を用いて、工程(4)で得られた混合液からエタノール及び遊離アンチセンスオリゴヌクレオチドを除去する工程(5)と、
工程(5)で得られた製品を、孔径が0.22μmの濾過膜又はフィルタエレメントにより濾過して除菌し、脂質ナノ粒子を得る工程(6)と、を含む。
【0046】
実施例4:
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:50:20:5:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:50:20:5:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=35:50:20:5:5
【0047】
【表1】
【0048】
カチオン性脂質DOTAPのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤1は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤1を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0049】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:40:20:5:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:50:20:5:5
【0050】
【表2】
【0051】
中性リン脂質Egg PCのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤2は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤2を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0052】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:15:5:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:25:5:5
【0053】
【表3】
【0054】
コレステロールのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤2は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤2を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0055】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:1:5
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:3:5
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
【0056】
【表4】
【0057】
トウェイン80のモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤3を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0058】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:1
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:3
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
【0059】
【表5】
【0060】
TPGSのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤3を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0061】
(1)DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5
(2)DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:45:20:5:5
(3)DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=35:45:20:5:5
【0062】
【表6】
【0063】
この他に、他の関係し得るリン脂質についてもスクリーニングを行った。カチオン性脂質DOTMAのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤2は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤2を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0064】
(1)DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:40:20:5:5
(2)DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:45:20:5:5
(3)DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:50:20:5:5
【0065】
【表7】
【0066】
リン脂質DSPCのモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。このため、製剤3を最良な配合として選択し、次のとおりスクリーニングを行った。
【0067】
(1)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/DPPE−mPEG2000=30:45:20:5:1
(2)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/DPPE−mPEG2000=30:45:20:5:3
(3)DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/DPPE−mPEG2000=30:45:20:5:5
【0068】
【表8】
【0069】
DPPE−mPEG2000のモル比を調整して1因子試験を行ったところ、他の成分が変わらない条件において、電位がほぼ同一でありながら、製剤3は粒径及び被覆率がいずれも他の2製剤より明らかに優れている。
【0070】
上記のとおり、各配合及びその割合についてスクリーニングすることにより、下記の結論を得ている。
(1)「DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=25:45:20:5:5」という配合と割合が、粒径が比較的小さく、被覆率が安定しており、正電位が好適である。
(2)他の配合については、「DOTMA/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:45:20:5:5」、「DOTAP/DSPC/コレステロール/トウェイン80/TPGS=30:50:20:5:5」及び「DOTAP/Egg PC/コレステロール/トウェイン80/mPEG2000−DPPE=30:45:20:5:5」という配合と割合が、粒径、電位、被覆率、及び安定性において比較的好適である。よって、更にこれらの配合と割合について試験を行い、分析した。
【0071】
以下、実施例1についての試験である。
下表では、遊離2’−O−Me修飾G3139及び2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子は、鎖全体がチオリン酸化修飾された、且つ最初の3つのヌクレオチドが2’−O−Me修飾されたG3139(5’ ―UCU CCC AGC GTG CGC CAU ―3’)を意味し、
遊離G3139及びG3139脂質ナノ粒子は、鎖全体がチオリン酸化修飾されたG3139(5’−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’)を意味し、
空白ナノ粒子は、膜材料により被覆されて形成した、内容物のない脂質ナノ粒子を意味する。
【0072】
1.A549肺癌細胞毒性試験
(1)A549細胞を96ウェルプレートに播種し、コロニー形成率が60〜70%になるように、RPMI1640培養液(ウシ胎児血清10%含有)を用いて細胞を一晩培養した。
(2)翌日、各濃度群に対してタキソール(PTX)濃度勾配(1nmol/L〜100μmol/L)と各種アンチセンスオリゴヌクレオチド(濃度が同じく10μmol/L)を用いる毒性試験を複数回行い、37℃で二酸化炭素5%の環境下で培養した。
(3)24h、48h、72hにMTS試薬(新規なテトラゾール化合物)20μLを加え、波長490nmにて検出し、結果を下表に示す。
【0073】
【表9】
【0074】
本試験で、各試験群はいずれも異なる濃度のタキソール(PTX)を用いて治療し、化学感作効果を示すように、各アンチセンスオリゴヌクレオチド群の濃度を同じく10μmol/Lとした。治療後48hに、G3139脂質ナノ粒子と2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子は癌細胞に対し一定の化学感作効果を果たしており、タキソールを併用すると癌細胞の死滅効果が大幅に高まることが確認された。当該結果には統計学的有意性が認められた。
【0075】
2.遺伝子レベル(bcl−2)のG3139調節試験
様々な試料群を設計して、各種癌細胞(A549癌細胞、KB癌細胞及びLNCaP前立腺癌細胞を含む)に対する各種G3139剤型のbcl−2レベルの調節効果について測定し、薬物の調節作用により変化しないβ−アクチンを参照遺伝子として用い、目標遺伝子bcl−2への上下調節作用について観察することで薬物が効いたか否かを確認した。
【0076】
(1)癌細胞、例えばA549癌細胞、KB癌細胞、及びLNCaP前立腺癌細胞を6ウェルプレートに播種し、コロニー形成率が80%になるように、RPMI1640培養液(ウシ胎児血清10%含有)を用いて細胞を一晩培養した。
(2)最終濃度が1μMのG3139製剤を腫瘍細胞培養液に加え、当該製剤は2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子、G3139脂質ナノ粒子、遊離G3139、遊離2’−O−Me修飾G3139、空白脂質ナノ粒子及び培養液対照群の6群に分けた。
(3)37℃で二酸化炭素5%の環境下で4h培養した後、細胞を新鮮な培養液に移し、引き続き48h培養した。標準な方法で細胞を収集し、分解させ、RNAを抽出した。
(4)Real−Time−PCR技術を用いて各群のbcl−2メッセンジャーRNAのレベルを分析し、試薬供給者から提供された標準な方法により、各群治療後のbcl−2の発現状況について測定することができる。
【0077】
1)KB癌細胞
様々な試料群を設計して、KB癌細胞中のbcl−2レベルを調節し、試験結果を下表及び図2に示す。薬物の調節作用により変化しないβ−アクチンを参照遺伝子として用い、目標遺伝子bcl−2への上下調節作用について観察することで薬物が効いたか否かを確認した。
【0078】
【表10】
【0079】
上表及び図2から分かるように、2’−O−Me修飾された脂質ナノ粒子群では、bcl−2遺伝子レベルが67.71%と他の試験群よりも大幅に下方調節され、遊離薬物群(3、4)では薬物送達システムがないため細胞に入ることができず、わずかな下方調節作用しか認められず(それぞれ4.69%及び10.96%)、空白ナノ粒子群では薬物を投与しなかったため、下方調節作用が認められなかった。
【0080】
2)A549肺癌細胞
試験結果を下表及び図3に示す。
【表11】
【0081】
上表及び図3から分かるように、2’−O−Me修飾された脂質ナノ粒子群では、bcl−2遺伝子レベルが71.87%と他の試験群よりも大幅に下方調節され、遊離薬物群(3、4)では薬物送達システムがないため細胞に入ることができず、わずかな下方調節作用しか認められず(それぞれ11.25%及び6.71%)、空白ナノ粒子群では薬物を投与しなかったため、下方調節作用が認められなかった。
【0082】
3)LNCaP前立腺癌細胞
試験結果を下表及び図4に示す。
【表12】
【0083】
上表及び図4から分かるように、2’−O−Me修飾された脂質ナノ粒子群では、bcl−2遺伝子レベルが78.78%と他の試験群よりも大幅に下方調節され、遊離薬物群(3、4)では薬物送達システムがないため細胞に入ることができず、わずかな下方調節作用しか認められず(それぞれ6.85%及び5.11%)、空白ナノ粒子群では薬物を投与しなかったため、下方調節作用が認められなかった。
【0084】
3.KB細胞異所性接種マウスin vivo腫瘍モデルの薬力学及び生存曲線試験
(1)5×10のKB癌細胞をヌードマウスの背部の右側に接種し、平均150mmの可視腫瘍になるように1〜2週間成長させた。
(2)腫瘍が所定の大きさになったら、各群の担癌マウスに、2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子、G3139脂質ナノ粒子、遊離G3139、遊離2’−O−Me修飾G3139、タキソール注射液、及び生理食塩液をそれぞれ尾静脈投与した。3日に1回投与し3週間連続投与した。治療群は6群とし、1群あたり担癌マウス10匹とした。
(3)ノギスを用いて腫瘍の長さ及び幅を測定し、下式により腫瘍の体積を求めた。
腫瘍体積=(π/6)×長さ(mm)×(幅)
(4)腫瘍の大きさが1500mmになったら、治療群から取り出し、二酸化炭素で窒息させることにより安楽死を施行した。
治療期間が終了した後の各群の腫瘍体積が、抗腫瘍活性を示すことができる。
【0085】
図5及び図6はそれぞれ、癌抑制率試験及び生存試験の結果を示す図である。
【0086】
図5及び図6から分かるように、KB癌細胞異所性接種ヌードマウスについての薬力学及び生存曲線に示すように、2’−O−Me修飾G3139脂質ナノ粒子とタキソールを併用すると優れた癌抑制効果を有し、担癌マウスが長い間生存する。これは、脂質ナノ粒子が大きな毒性と副作用を伴わないで、薬効を高めることができることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]