特許第6986567号(P6986567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986567
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】装着ヘッドおよび部品装着機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-549029(P2019-549029)
(86)(22)【出願日】2017年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2017037451
(87)【国際公開番号】WO2019077671
(87)【国際公開日】20190425
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】井村 仁哉
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−229498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正圧または負圧のエアを供給されて部品をクランプするチャックを着脱可能に保持する装着ヘッドであって、
前記チャックは、
前記部品をクランプする複数の爪片と、
互いに独立してエアを流通させる第一エア通路および第二エア通路と、
前記第一エア通路を介して供給されるエアにより移動するピストンと、
前記ピストンの位置に応じて複数の前記爪片を開閉させる開閉機構と、
大気に開放される大気圧エア通路と、
前記ピストンが規定位置まで移動した場合に、前記第二エア通路と大気圧エア通路の連通状態と遮断状態とを切り換え、前記第二エア通路に前記大気圧エア通路を連通させるバルブ装置と、を有し、
前記装着ヘッドは、
前記チャックが前記装着ヘッドに保持されることにより前記第一エア通路に連通し、前記ピストンを移動させるエアを流通させる第一供給通路と、
前記チャックが前記装着ヘッドに保持されることにより前記第二エア通路に連通し、前記第一供給通路とは異なるエアの供給系統を構成し、負圧エア供給源から供給され前記供給系統が供給する負圧エアを流通させる第二供給通路と、
前記バルブ装置の切り換えに伴って変動する前記第二供給通路におけるエアの流通状態に基づいて前記第二エア通路に前記大気圧エア通路が連通したことを検出した場合に、前記チャックが前記部品をクランプしていないと判定する判定部と、
を備え
前記装着ヘッドは、前記チャックとの境界部に形成された負圧室に前記第二供給通路を介して負圧エアを供給することにより、前記チャックを吸着して保持し、
前記バルブ装置は、前記ピストンが前記規定位置まで移動した場合に、前記負圧エア供給源から供給される負圧エアの空気圧より高く、且つ前記装着ヘッドが前記チャックを吸着して保持した状態を維持可能な空気圧まで前記負圧室が増圧するように前記第二エア通路に前記大気圧エア通路を連通させる装着ヘッド。
【請求項2】
前記装着ヘッドは、前記バルブ装置の切り換えに伴って変動する前記第二供給通路の空気圧またはエア流量をエアの前記流通状態として検出可能な検出センサをさらに備える、請求項1に記載の装着ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記装着ヘッドと、
前記装着ヘッドに保持された前記チャックによりクランプされた前記部品を基板に装着する装着処理を実行する制御装置と、
を備える部品装着機。
【請求項4】
前記制御装置は、供給された前記部品をクランプする際に前記判定部により前記チャックが前記部品をクランプしていないと判定した場合に、前記部品のクランプを再度試行するリトライ処理を実行する、請求項に記載の部品装着機。
【請求項5】
前記判定部は、前記バルブ装置の切り換えに伴って変動する前記第二供給通路におけるエアの前記流通状態の変動量が予め設定された閾値を超えた場合に、前記チャックが前記部品をクランプしていないと判定し、
前記制御装置は、前記バルブ装置の切り換えの前後におけるエアの前記流通状態に基づいて前記閾値を校正する、請求項3または4に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着ヘッドおよび部品装着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品装着機は、回路基板に部品を装着する装着処理を実行する。部品の保持に用いられるチャックは、部品装着機による装着処理において、装着の対象である部品を複数の爪片によりクランプする(特許文献1を参照)。部品装着機は、例えばチャックを撮像して取得された画像データを画像処理し、チャックが部品をクランプしているか否かの保持検査を行うことがある。特許文献2には、チャックが部品のクランプに失敗した場合に、チャックの開閉動作に用いられる負圧エアをリークさせることにより、上記の保持検査を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/140571号
【特許文献2】国際公開第2014/118820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャックが部品をクランプしているか否かの保持検査は、その検査結果が以降の装着処理に影響するため、正確に且つ迅速に行われることが望ましい。
本明細書は、チャックが部品をクランプしているか否かの保持検査をより正確に且つ迅速に行うことができる装着ヘッドおよび部品装着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、正圧または負圧のエアを供給されて部品をクランプするチャックを着脱可能に保持する装着ヘッドであって、前記チャックは、前記部品をクランプする複数の爪片と、互いに独立してエアを流通させる第一エア通路および第二エア通路と、前記第一エア通路を介して供給されるエアにより移動するピストンと、前記ピストンの位置に応じて複数の前記爪片を開閉させる開閉機構と、大気に開放される大気圧エア通路と、前記ピストンが規定位置まで移動した場合に、前記第二エア通路と大気圧エア通路の連通状態と遮断状態とを切り換え、前記第二エア通路に前記大気圧エア通路を連通させるバルブ装置と、を有し、前記装着ヘッドは、前記チャックが前記装着ヘッドに保持されることにより前記第一エア通路に連通し、前記ピストンを移動させるエアを流通させる第一供給通路と、前記チャックが前記装着ヘッドに保持されることにより前記第二エア通路に連通し、前記第一供給通路とは異なるエアの供給系統を構成し、負圧エア供給源から供給され前記供給系統が供給する負圧エアを流通させる第二供給通路と、前記バルブ装置の切り換えに伴って変動する前記第二供給通路におけるエアの流通状態に基づいて前記第二エア通路に前記大気圧エア通路が連通したことを検出した場合に、前記チャックが前記部品をクランプしていないと判定する判定部と、を備え、前記装着ヘッドは、前記チャックとの境界部に形成された負圧室に前記第二供給通路を介して負圧エアを供給することにより、前記チャックを吸着して保持し、前記バルブ装置は、前記ピストンが前記規定位置まで移動した場合に、前記負圧エア供給源から供給される負圧エアの空気圧より高く、且つ前記装着ヘッドが前記チャックを吸着して保持した状態を維持可能な空気圧まで前記負圧室が増圧するように前記第二エア通路に前記大気圧エア通路を連通させる装着ヘッドを開示する。
【0006】
本明細書は、上記の装着ヘッドと、前記装着ヘッドに保持された前記チャックによりクランプされた前記部品を基板に装着する装着処理を実行する制御装置と、を備える部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような装着ヘッドの構成によると、チャックが部品のクランプに失敗するクランプミスが発生すると、ピストンが規定位置まで移動し、バルブ機構の切り換えに伴って第二エア通路と大気エア通路の連通状態と遮断状態が切り換えられる。このとき、第二エア通路には第二供給通路が連通していることから、第二供給通路のエアの流通状態が変動する。このような構成により、装着ヘッドは、チャックが部品を保持しているか否かの保持検査を行うことができる。
【0008】
また、第二供給通路が第一供給通路とは異なる供給系統を構成することから、バルブ装置の切り換えにより一方の流通状態の変動が他方の流通状態に影響することが抑制される。これにより、バルブ装置の動作を安定させることができる。また、変動した第二供給通路の流通状態が安定するため、保持検査をより正確に行うことができる。さらに、第二エア通路と大気エア通路の連通状態と遮断状態の切り換えは、第二供給通路の流通状態を即時に変動させる。これにより、チャックが部品をクランプしているか否かを迅速に判定することが可能となる。結果として、保持検査をより正確に且つ迅速に行うことができる。
【0009】
このような部品装着機の構成によると、装着処理の実行中にクランプミスが発生したことを検出できる。これにより、例えば部品カメラの撮像により取得された画像データを用いてクランプが成功しているか失敗しているかを判断していた構成と比較して、より早いタイミングでクランプミスを検出できる。また、部品を装着するまでの間に何らかの要因により部品を落下させてしまった場合に、クランプミスを検出できるので、無駄な装着動作を省略でき、またリトライ処理やエラー処理などに迅速に移行することができる。結果として、装着処理の精度を向上できるとともに、全体の所要時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における装着ヘッドを用いて装着処理を実行する部品装着機の構成を示す平面図である。
図2図1における装着ヘッドおよびチャックを示す側面図である。
図3】装着ヘッドおよびチャックに構成されるエア供給回路を示す回路図である。
図4図2における装着ヘッドおよびチャックの断面図である。
図5A図4における装着ヘッドおよび開状態(アンクランプ状態)のチャックを拡大して示す側面図である。
図5B図4における装着ヘッドおよび閉状態(クランプ状態)のチャックを拡大して示す側面図である。
図5C図4における装着ヘッドおよびクランプミス状態のチャックを拡大して示す側面図である。
図6】部品装着機による装着処理を示すフローチャートである。
図7】装着ヘッドによる部品の保持検査を示すフローチャートである。
図8】部品装着機による保持検査に用いられる閾値の校正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
1−1.部品装着機10の構成
部品装着機10は、図1に示すように、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ14、基板カメラ15、および制御装置16を備える。基板搬送装置11は、ベルトコンベアなどにより構成され、基板90を搬送方向へと順次搬送する。基板搬送装置11は、部品装着機10の機内に基板90を搬入するとともに、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による部品の装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0012】
部品供給装置12は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、X軸方向に並んでセットされたフィーダ121を有する。フィーダ121は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、フィーダ121の先端側に位置する供給位置において部品を採取可能に供給する。
【0013】
部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131および移動台132を備える。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132を水平方向(X軸方向およびY軸方向)に移動可能に構成されている。移動台132には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド20が交換可能に固定される。装着ヘッド20は、部品供給装置12により供給される部品を採取して基板90の所定の装着位置に装着する。
【0014】
装着ヘッド20には、1または複数の保持部材が着脱可能に設けられる。上記の保持部材としては、例えば負圧エアを供給されて部品を吸着する吸着ノズルや、部品をクランプするチャックなどが採用され得る。本実施形態において、装着ヘッド20は、図2に示すように、1つのチャック30をZ軸方向に移動可能に、且つZ軸に平行なθ軸周りに回転可能に支持する。装着ヘッド20およびチャック30の詳細構成については後述する。
【0015】
部品カメラ14、および基板カメラ15は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ14、および基板カメラ15は、外部入力される制御信号に基づいて撮像を行う。部品カメラ14、および基板カメラ15は、撮像により取得した画像データを送出する。
【0016】
部品カメラ14は、図1に示すように、光軸がZ軸方向の上向きとなるように部品装着機10の基台に固定されている。部品カメラ14は、チャック30などの保持部材に保持された部品を下方から撮像可能に構成されている。基板カメラ15は、光軸がZ軸方向の下向きとなるように部品移載装置13の移動台132に設けられる。基板カメラ15は、基板90を上方から撮像可能に構成されている。
【0017】
制御装置16は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置16は、基板90に部品を装着する装着処理において、部品装着機10に複数設けられた各種センサから出力される情報、画像処理などによる認識処理の結果を入力する。そして、制御装置16は、制御プログラムや予め設定されている規定の装着条件などに基づいて、部品移載装置13へと制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド20に支持されたチャック30などの保持部材の位置および回転角度が制御される。装着処理の詳細については後述する。
【0018】
1−2.装着ヘッド20の詳細構成
装着ヘッド20は、正圧または負圧のエアを供給されて部品をクランプするチャック30を着脱可能に保持する。本実施形態において、チャック30は、負圧エアを供給されて、開状態(アンクランプ状態)から閉状態(クランプ状態)へと動作するタイプである。装着ヘッド20は、図2に示すように、ヘッド本体21、負圧エア供給源22、第一供給通路23、第二供給通路24、ヘッド制御部25、および凹部26を備える。
【0019】
ヘッド本体21は、移動台132に着脱可能にクランプされる。負圧エア供給源22は、互いに異なる供給系統(図3の第一エア供給回路Cs1および第二エア供給回路Cs2)により負圧エアを凹部26およびチャック30にそれぞれ供給する。負圧エア供給源22は、例えばヘッド本体21に設けられたエアポンプ等により構成される。
【0020】
第一供給通路23および第二供給通路24は、負圧エア供給源22により供給される負圧エアを流通させる。第一供給通路23は、チャック30の開閉動作に用いられる負圧エアを流通させる供給系統(第一エア供給回路Cs1)を構成する。第二供給通路24は、装着ヘッド20がチャック30を保持するのに用いられる負圧エアを流通させる供給系統(第二エア供給回路Cs2)を構成する。
【0021】
ヘッド制御部25は、部品装着機10の制御装置70による動作指令に応じて、チャック30のθ軸周りの角度、上下方向位置、および開閉の切り換えなどを制御する。また、ヘッド制御部25は、チャック30が部品をクランプしているか否かを判定する判定部251を有する。判定部251による部品の保持判定の詳細については後述する。
【0022】
ここで、装着ヘッド20は、チャック30を保持する保持機構を備える。上記の保持機構としては、例えば装着ヘッド20側の係止部材をチャック30の被係止部に係止させて、チャック30を保持する構成を採用し得る。本実施形態において、装着ヘッド20は、チャック30との境界部に形成された負圧室Bnに負圧エアを供給することにより、チャック30を保持する構成を採用する。装着ヘッド20の下部のうちチャック30の上面に接触する保持面には、θ軸を中心とする環状の凹部26が形成される。
【0023】
凹部26の外径は、チャック30におけるチャック本体31の上面の外径よりも小径に形成される。凹部26は、チャック本体31の上面が装着ヘッド20の保持面に接触することにより、チャック本体31の上面とともに環状の負圧室Bnを形成する。負圧室Bnには、第二供給通路24を介して、負圧エア供給源22による負圧エアが供給される。これにより、装着ヘッド20は、装着ヘッド20の下部に接触したチャック30を負圧エアにより吸着して保持する。
【0024】
1−3.チャック30の詳細構成
チャック30は、装着対象の部品に応じて種類を選択され、装着ヘッド20に取り付けられる。装着対象となる部品には、フィーダ121に装填されたキャリアテープに収容された部品や、トレイ(図示しない)などに並べて載置された状態で供給されるリード部品などの比較的大型の部品が含まれる。なお、部品供給装置12は、上記の他に、大型の部品をキャリアテープのキャビティに収納してフィーダ121により供給する構成も採用し得る。
【0025】
本実施形態において、チャック30は、装着ヘッド20の第一供給通路23を介して負圧エア供給源22による負圧エアを供給されて、開状態(アンクランプ状態)と閉状態(クランプ状態)を切り換えられる。チャック30は、図2図4に示すように、チャック本体31、複数の爪片32、第一エア通路33、第二エア通路34、空気圧装置35、開閉機構36、大気圧エア通路37、およびバルブ装置38を有する。
【0026】
チャック本体31は、装着ヘッド20に着脱可能に保持される。チャック本体31の上面は、環状の平坦部を有する。チャック本体31の上面における平坦部は、図4に示すように、装着ヘッド20の保持面に接触するとともに、装着ヘッド20の凹部26とともに負圧室Bnを形成する。チャック本体31は、装着ヘッド20の保持面に接触した状態で、圧力室Bpに負圧エアが供給されることによって装着ヘッド20に吸着される。
【0027】
複数の爪片32は、後述する開閉機構36により開閉されて、チャック30が対象とする部品を保持する。本実施形態において、チャック30は、2つの爪片32を有する2爪タイプである。なお、チャック30は、3以上の爪片を有する構成としてもよい。第一エア通路33および第二エア通路34は、チャック本体31にそれぞれ形成され、互いに独立してエアを流通させる。このように、第一エア通路33および第二エア通路34は、互いに異なる供給系統を構成する。
【0028】
第一エア通路33の一端は、チャック本体31の上面のうち中央部において開口する。第一エア通路33は、チャック30が装着ヘッド20に保持されることにより装着ヘッド20の第一供給通路23と連通する。第一エア通路33の他端は、後述する空気圧装置35と連結される。第一エア通路33は、第一供給通路23と連通することにより、負圧エア供給源22による負圧エアを空気圧装置35へと流通させる。
【0029】
第二エア通路34の一端は、チャック本体31の上面のうち装着ヘッド20の凹部26が形成された領域に対応する位置に開口する。これにより、第二エア通路34は、チャック30が装着ヘッド20に保持されることにより、負圧室Bnを介して第二供給通路24に連通する。第二エア通路34の他端は、後述するバルブ装置38に連結される。
【0030】
空気圧装置35は、第一エア通路33を介して供給される負圧エアを用いて、開閉機構36に動力を付与する。具体的には、空気圧装置35は、図4に示すように、シリンダ351、ピストン352、および圧縮ばね353を有する。シリンダ351は、第一エア通路33を連結され、負圧エアを供給される。ピストン352は、シリンダ351の内部に上下方向に摺動可能に配置され、圧力室Bpを形成する。ピストン352は、上方に開口した筒状本体を有する。
【0031】
圧縮ばね353は、ピストン352における筒状本体の底部と、シリンダ351の上壁との間に配置される。ピストン352は、圧縮ばね353の弾性力により、下壁側に付勢される。つまり、ピストン352は、シリンダ351内に形成された圧力室Bpの空気圧が所定値以上の場合には、圧力室Bpの容積が増加するように下端位置(以下、「初期位置P1」と称する)に位置する(図4および図5Aを参照)。
【0032】
開閉機構36は、空気圧装置35のピストン352から動力を付与される。開閉機構36は、ピストン352の位置に応じて複数の爪片32を開閉させる。具体的には、開閉機構36は、ピストン352の上下方向の位置に応じて一対のクランク361を互いに異なる方向に回転させる。開閉機構36は、一対のクランク361の角度に応じて水平方向に一対のブロック362を移動させる。一対のブロック362は、チャック本体31の図示しないレールにより水平方向に移動可能に支持されている。一対のブロック362には、一対の爪片32が取り付けられている。
【0033】
このような構成により、2つの爪片32は、空気圧装置35に負圧エアが供給されておらずピストン352が初期位置P1にある場合には、互いに最も離間した開状態とされる。一方で、圧力室Bpの空気圧が所定値未満となった場合に、ピストン352は、圧縮ばね353の弾性力に抗して圧力室Bpの容積が減少するように上方に移動する。2つの爪片32は、ピストン352が初期位置P1から上方に移動した場合には、互いに接近し、2つの爪片32の間の部品95をクランプ可能な閉状態とされる(図5Bを参照)。
【0034】
本実施形態において、ピストン352は、圧力室Bpの空気圧が十分に低圧であり、且つ2つの爪片32が何もクランプしていない状態、即ちチャック30が部品のクランプに失敗したクランプミス状態では、筒状本体の上部がシリンダ351の上壁に接触する。このとき、ピストン352は、上端位置(以下、「規定位置P2」と称する)に位置し、規定位置P2よりも上方への移動を規制された状態にある(図5Cを参照)。
【0035】
大気圧エア通路37は、チャック本体31に形成され、大気に開放されるエア通路である。本実施形態において、大気圧エア通路37は、シリンダ351の下部が開口することにより形成される。大気圧エア通路37は、シリンダ351の内部においてピストン352の筒状本体により圧力室Bpと隔てられた部位である。本明細書において「大気圧」とは、装着ヘッド20が配置された部品装着機10の機内の空気圧をいう。
【0036】
バルブ装置38は、ピストン352が規定位置P2まで移動した場合に、第二エア通路34と大気圧エア通路37との間を遮断状態から連通状態に切り換える。本実施形態において、バルブ装置38は、ピストン352が規定位置P2に到達する直前から第二エア通路34に大気圧エア通路37を連通させ始める。そして、バルブ装置38は、ピストン352が規定位置P2まで移動した場合に、第二エア通路34に大気圧エア通路37を連通させる。
【0037】
そして、第二エア通路34と大気圧エア通路37が連通した部位の断面積は、ピストン352が規定位置P2に到達したときに最大となる。そして、ピストン352が規定位置P2から初期位置P1側へと所定量だけ戻るように移動すると、バルブ装置38により第二エア通路34と大気圧エア通路37とが連通しない遮断状態とされる。
【0038】
ここで、上記のように機能するバルブ装置38は、ピストン352の移動に連動して第二エア通路34と大気圧エア通路37の連通状態と遮断状態とを切り換え可能であれば、種々の態様を採用し得る。本実施形態において、バルブ装置38は、第二エア通路34および空気圧装置35により構成される。具体的には、第二エア通路34は、図5A図5Cに示すように、シリンダ351の内周面における所定位置に開口するように形成される。
【0039】
そして、第二エア通路34は、図5Cに示すように、ピストン352が規定位置P2に到達したときに、ピストン352の筒状本体の下端が第二エア通路34の最下部よりも上方に位置することにより、大気圧エア通路37に連通される。つまり、ピストン352は、バルブ装置38のスプールとして機能する。ピストン352は、初期位置P1(図5Aを参照)、および部品95をクランプして移動を規制された位置(図5Bを参照)では、第二エア通路34の開口部をシールすることにより、第二エア通路34と大気圧エア通路37を遮断する。
【0040】
なお、上記のように第二エア通路34と大気圧エア通路37が連通した部位の断面積、即ち大気圧エア通路37に対する第二エア通路34の開口面積は、所定の大きさに予め設定されている。これにより、バルブ装置38は、ピストン352が規定位置P2まで移動した場合に、負圧エア供給源22から供給される負圧エアの空気圧(Vn1)より高く、且つ装着ヘッド20がチャック30を吸着して保持した状態を維持可能な空気圧(Vn2)まで負圧室Bnが増圧するように第二エア通路34に大気圧エア通路37を連通させる(Vn1<Vn2<Va (Vaは大気圧))。
【0041】
このように、バルブ装置38は、ピストン352が規定位置P2まで移動した場合に、装着ヘッド20からチャック30が脱落しない程度に負圧室Bnを増圧する。結果として、負圧室Bnを介して第二エア通路34に連通した第二供給通路24におけるエアの流通状態が変動する。また、チャック30のクランプ状態またはクランプミス状態において、圧力室Bpへの負圧エアの供給が遮断されると、ピストン352が圧縮ばね353の弾性力により初期位置P1まで戻る。
【0042】
これにより、チャック30は、再びアンクランプ状態となる。このとき、第二エア通路34は、ピストン352の移動に伴って大気圧エア通路37から遮断される。これにより、第二エア通路34および負圧室Bnは、負圧エア供給源22から供給される負圧エアの空気圧(Vn1)まで再び減圧される。結果として、負圧室Bnを介して第二エア通路34に連通した第二供給通路24におけるエアの流通状態が変動する。
【0043】
1−4.エア供給回路Cs1,Cs2の構成
装着ヘッド20およびチャック30は、図3に示すように、第一エア供給回路Cs1および第二エア供給回路Cs2を構成する。第一エア供給回路Cs1は、チャック30の開閉動作に用いられる負圧エアを流通させる供給系統である。第二エア供給回路Cs2は、装着ヘッド20がチャック30を保持するのに用いられる負圧エアを流通させる供給系統である。
【0044】
第一エア供給回路Cs1は、図3に示すように、装着ヘッド20における第一供給通路23、第一負圧バルブ41、およびチャック30における第一エア通路33により構成される。第一負圧バルブ41は、負圧エア供給源22と第一供給通路23の連通状態と遮断状態とを切り換える。第一負圧バルブ41は、本実施形態において、2位置のソレノイドバルブである。
【0045】
第一負圧バルブ41は、ソレノイドが給電により励磁されると開状態となり、負圧エア供給源22と第一供給通路23を連通状態とする。第一供給通路23が負圧エアを流通すると、チャック30の空気圧装置35に負圧エアが供給される。これにより、チャック30の複数の爪片32が閉状態へと移行する。装着ヘッド20のヘッド制御部25は、制御装置16の制御指令に応じて第一負圧バルブ41を動作させて、チャック30を開閉させる。
【0046】
第二エア供給回路Cs2は、図3に示すように、装着ヘッド20における第二供給通路24、第二負圧バルブ51、検出センサ52、およびチャック30における第二エア通路34により構成される。第二負圧バルブ51は、負圧エア供給源22と第二供給通路24の連通状態と遮断状態とを切り換える。第二負圧バルブ51は、本実施形態において、2位置のソレノイドバルブである。
【0047】
第二負圧バルブ51は、ソレノイドが給電により励磁されると開状態となり、負圧エア供給源22と第二供給通路24を連通状態とする。第二供給通路24が負圧エアを流通すると、負圧室Bnに負圧エアが供給される。これにより、装着ヘッド20がチャック30を吸着して保持した状態が維持される。装着ヘッド20のヘッド制御部25は、制御装置16の制御指令に応じて第二負圧バルブ51を動作させて、チャック30を着脱する。
【0048】
検出センサ52は、第二供給通路24におけるエアの流通状態の変動を検出する。検出センサ52としては、第二供給通路24の空気圧をエアの流通状態として検出可能な圧力センサや、第二供給通路24のエア流量をエアの流通状態として検出可能な流量センサを採用し得る。装着ヘッド20のヘッド制御部25は、検出センサ52による検出結果に基づいて、第二供給通路24が連結された負圧室Bnが適切な空気圧となっているか否かを判定する。
【0049】
より詳細には、ヘッド制御部25は、負圧室Bnに負圧エアを供給して装着ヘッド20がチャック30を吸着して保持した状態において、第二供給通路24および負圧室Bnが所定の空気圧(例えば、上記の空気圧Vn2)より低圧に維持されているか否かを監視する。このように、ヘッド制御部25は、検出センサ52による検出結果を用いて、装着ヘッド20によるチャック30の保持状態の良否を判定している。上記のように、本実施形態において、検出センサ52は、主として上記のような保持状態の良否判定に用いられることを主の目的として第二エア供給回路Cs2に設けられている。
【0050】
本実施形態において、第一エア供給回路Cs1および第二エア供給回路Cs2は、上記のように、負圧エア供給源22が供給する負圧エアをそれぞれ流通させ、例えば図略のチェックバルブやアキュムレータにより互いに異なるエアの供給系統を構成する。ここで、「互いに異なるエアの供給系統」とは、一方の供給系統におけるエアの流通状態の変動が他方の供給系統におけるエアの流通状態に与える影響が十分に小さいことをいう。
【0051】
換言すると、エアの供給系統が異なる場合には、一方の供給系統が仮に大気圧となった際に、他方の供給系統で必要とされる空気圧が維持される。このように、装着ヘッド20およびチャック30は、一方の供給系統におけるエアの流通状態の変動によっては、他方の供給系統における機能(チャック30の開閉、装着ヘッド20によるチャック30の保持)が失われないように構成される。
【0052】
さらに、上記のエア供給回路Cs1,Cs2は、チャック30のクランプミスを検出可能に構成される。具体的には、チャック30がクランプミス状態となると、複数の爪片32を閉じるように、ピストン352は、規定位置P2まで移動する(図5Cを参照)。これにより、チャック30のバルブ装置38が第二エア通路34に大気圧エア通路37を連通させる。そうすると、第二エア通路34および負圧室Bnの空気圧が増圧する。
【0053】
検出センサ52は、上記のようにバルブ装置38の切り換えに伴って変動する第二供給通路24におけるエアの流通状態の変動を検出する。ここで、ヘッド制御部25の判定部251は、検出センサ52による検出結果(エアの流通状態)に基づき第二エア通路34に大気圧エア通路37が連通したことを検出した場合に、チャック30が部品をクランプしていないクランプミス状態にあると判定する。
【0054】
本実施形態において、判定部251は、バルブ装置38の切り換えに伴って変動する第二供給通路24におけるエアの流通状態の変動量Acが予め設定された閾値Thを超えた場合に(Ac>Th)、チャック30が部品をクランプしていないと判定する。なお、クランプミスの原因は、例えば部品供給装置12により部品が適正に供給されていなかったり、チャック30が適正に動作しなかったりすることが想定される。
【0055】
また、クランプミスには、部品を正常にクランプしてから基板90上の装着位置までの搬送中に落下させた状態が含まれる。そのため、ヘッド制御部25は、装着処理の実行中において、チャック30が部品のクランプを試行してから、部品を基板90上の装着位置に装着を試行するまでの期間、判定部251の判定結果に基づいてクランプミスが発生していないか監視する。
【0056】
1−5.部品装着機10による装着処理
部品装着機10による装着処理について、図6および図7を参照して説明する。制御装置16は、装着処理において、図6に示すように、チャック30により部品の採取を試行する(ステップ11(以下、「ステップ」を「S」と表記する))。より詳細には、制御装置16は、部品供給装置12において所定種類の部品を供給するフィーダ121の上方まで装着ヘッド20を移動させる。そして、制御装置16は、チャック30を下降させて部品をクランプした後に、再びチャック30を上昇させる。
【0057】
次に、制御装置16は、チャック30に保持された部品の保持状態を認識する状態認識処理を実行する(S12)。より詳細には、制御装置16は、装着ヘッド20を部品カメラ14の上方に移動させ、部品カメラ14に撮像指令を送出する。制御装置16は、部品カメラ14の撮像により取得された画像データを画像処理して、チャック30にクランプされた部品の姿勢(位置および角度)を認識する。
【0058】
続いて、制御装置16は、チャック30により部品の装着を試行する(S13)。より詳細には、制御装置16は、基板90における所定の装着位置の上方まで装着ヘッド20を移動させるとともに、チャック30を位置決めする。このとき、制御装置16は、状態認識処理(S12)の結果に基づいて、チャック30の位置および角度を補正する。そして、制御装置16は、チャック30を下降させて部品を装着した後に、再びチャック30を上昇させる。
【0059】
そして、制御装置16は、現在の基板90に対して装着する全ての部品の装着が終了したか否かを判定し(S14)、装着が終了するまでピックアンドプレースサイクル(以下、「PPサイクル」と称する)が繰り返される。制御装置16は、全ての部品の装着が終了した場合に(S14:Yes)、現在の基板90に対する装着処理を終了する。その後に、基板搬送装置11は、現在の基板90を機外に搬出するとともに、次の基板90を機内に搬入する。そして、制御装置16は、上記のPPサイクルを繰り返すように装着処理を再び実行する。
【0060】
ここで、装着ヘッド20におけるヘッド制御部25は、装着処理の実行中において、部品の保持検査を行う。より具体的には、部品の保持検査は、例えば第一負圧バルブ41を開状態としてチャック30の空気圧装置35に負圧エアが供給されている期間、即ち部品の採取を試行してから部品の装着を試行するまで(S11−S13)の期間に継続して実行される。ヘッド制御部25は、図7に示すように、先ず検出センサ52による検出結果を取得する(S21)。
【0061】
次に、判定部251は、検出センサ52による検出結果に基づいて、第二供給通路24におけるエアの流通状態の変動量Acが予め設定された閾値Thを比較する(S22)。上記の流通状態の変動量Acは、例えば部品の保持検査の実行前の検出値と現在の検出値との差分により算出される。判定部251は、変動量Acが閾値Th未満の場合には(S22:No)、クランプミスが発生していないと判定する。
【0062】
一方で、判定部251は、変動量Acが閾値Th以上の場合には(S22:Yes)、クランプミスが発生したものと判定する。そして、ヘッド制御部25は、チャック30がクランプミス状態にあることを制御装置16に通知する(S23)。制御装置16は、クランプミスが部品の採取(S11)の実行中に発生した場合には(S24:Yes)、部品の採取が正常でないとして、部品の採取を再度試行するリトライ処理を実行する(S25)。
【0063】
なお、制御装置16は、リトライ処理において、クランプミスの原因を回避するように各装置を制御してもよい。例えば、制御装置16は、対象の部品がフィーダ121により供給されている場合には、フィーダ121に対してキャリアテープを送り移動させて、部品が確実に供給された状態としてもよい。また、制御装置16は、対象の部品がトレイにより供給されている場合には、先の部品の採取(S11)を試行したトレイの収納部とは異なる収納部の部品を採取するように指定する。
【0064】
続いて、制御装置16は、クランプミスが部品の採取(S11)の実行後に発生した場合には(S24:No)、部品の採取(S11)が正常に終了した後に、クランプした部品を落下させたものとして、エラー処理を実行する(S26)。上記のエラー処理としては、例えばクランプミスが発生したタイミングや部品種を含むエラー情報とともに、作業者にメンテナンスが必要であることを報知する。
【0065】
1−6.閾値Thの校正処理
本実施形態において、制御装置16は、ヘッド制御部25の判定部251がクランプミスの発生の有無に用いる閾値Thの校正処理を実行する。詳細には、制御装置16は、図8に示すように、先ず初期状態における検出センサ52による検出値D1を取得する(S31)。なお、上記の「初期状態」とは、装着ヘッド20がチャック30を吸着により保持し、且つ空気圧装置35に負圧エアが供給されておらずチャック30が開状態(アンクランプ状態)にある状態をいう(図5Aを参照)。
【0066】
初期状態では、空気圧装置35のピストン352が初期位置P1に位置し、ピストン352が第二エア通路34の開口部をシールする。これにより、バルブ装置38は、第二エア通路34と大気圧エア通路37とを遮断状態としている。次に、制御装置16は、第一負圧バルブ41を開状態として第一供給通路23および第一エア通路33を介して空気圧装置35に負圧エアを供給する(S32)。
【0067】
このとき、チャック30の複数の爪片32の間には部品などがない状態とされ、チャック30は、最も閉じた状態まで移行する。これにより、ピストン352は、シリンダ351の上壁に接触した規定位置P2まで移動して停止する(図5Cを参照)。つまり、バルブ装置38は、第二エア通路34と大気圧エア通路37を連通状態とする。そうすると、第二エア通路34、負圧室Bn、および第二供給通路24の順にエアが流入し、結果として第二エア通路34の空気圧が増圧する。
【0068】
制御装置16は、ピストン352が規定位置P2で停止した疑似的なクランプミス状態における検出センサ52による検出値D2を取得する(S33)。そして、制御装置16は、閾値Thを、初期状態における検出値D1よりも大きく、且つ疑似的なクランプミス状態における検出センサ52による検出値D2よりも小さくなるように設定する(D1<Th<D2)(S34)。このように、制御装置16は、バルブ装置38の切り換えの前後におけるエアの流通状態に基づいて閾値Thを校正する。
【0069】
1−7.実施形態の構成による効果
上記のような構成からなる装着ヘッド20によると、チャック30の動作に用いられる供給系統(第一エア供給回路Cs1)とは異なる供給系統(第二エア供給回路Cs2)におけるエアの流通状態に基づいて、チャック30が部品を保持しているか否かの保持検査を行うことができる。これにより、ピストン352の移動に連動するバルブ装置38の動作が安定し、保持検査をより正確に行うことができる。
【0070】
さらに、第二エア通路34と大気エア通路の連通状態と遮断状態の切り換えは、第二供給通路24の流通状態を即時に変動させる。これにより、チャック30が部品をクランプしているか否かを迅速に判定することが可能となる。結果として、保持検査をより正確に且つ迅速に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態において、第二エア供給回路Cs2は、装着ヘッド20がチャック30を吸着して保持するのに用いる負圧エアを流通させる。このような装着ヘッド20においては、チャック30を確実に保持するために、第二供給通路24におけるエアの流通状態が検出センサ52を用いて管理されている。そのため、判定部251は、検出センサ52による検出結果を流用できるので、設備コストを増大することなく保持検査を行うことが可能となる。
【0072】
上記のような構成からなる部品装着機10によると、装着処理の実行中にクランプミスが発生したことを検出できる。これにより、例えば部品カメラ14の撮像により取得された画像データを用いてクランプが成功しているか失敗しているかを判断していた構成と比較して、より早いタイミング(例えば、部位の採取(S11))でクランプミスを検出できる。
【0073】
また、部品をクランプした後に、装着するまでの間(S11−S13)に何らかの要因により部品を落下させてしまった場合、特に部品カメラ14の撮像(S12)よりも後で部品を落下させてしまった場合に、クランプミスを検出できる。これにより、無駄な装着動作を省略でき、またエラー処理(S26)などに迅速に移行することができる。結果として、装着処理の精度を向上できるとともに、全体の所要時間を短縮できる。
【0074】
一方で、制御装置16は、供給された部品をクランプする際(部品の採取(S11))に判定部251によりチャック30が部品をクランプしていないと判定した場合に(S24:Yes)、部品のクランプを再度試行するリトライ処理(S25)を実行する。これにより、部品カメラ14の撮像(S12)の後にリトライ処理を実行する構成と比較して、リトライ処理の開始を早めることができる。これにより、無駄な撮像処理を省略できるとともに、装着処理の所要時間を短縮できる。
【0075】
さらに、実施形態において、制御装置16は、バルブ装置38の切り換えの前後におけるエアの流通状態に基づいて閾値Thを校正する(S34)ものとした。また、上記のように第一供給通路23と第二供給通路24とは供給系統が異なる。これにより、バルブ装置38の切り換えにより一方の流通状態の変動が他方の流通状態に影響することが抑制される。そのため、バルブ装置38の切り換えの前後における第二供給通路24における流通状態に基づいて、適切な閾値Thを設定することができる(S34)。
【0076】
2.実施形態の変形態様
2−1.第二供給通路24および第二エア通路34について
実施形態において、第二供給通路24および第二エア通路34は、装着ヘッド20がチャック30を吸着して保持するのに用いられる負圧エアを流通させる供給系統を構成する。これに対して、第二供給通路24および第二エア通路34は、装着ヘッド20にチャック30が保持されることにより連通し、第一供給通路23とは異なる供給系統を構成するのであれば、種々の態様を採用し得る。
【0077】
例えば、第二エア供給回路Cs2は、装着ヘッド20によるチャック30の保持とは異なる他の用途に用いられるエアを流通させてもよい。また、第二エア供給回路Cs2は、クランプミス状態の検出(部品の保持検査)に専用のエアを流通させてもよい。また、第二エア供給回路Cs2を流通するエアは、正圧エアでもよいし負圧エアでもよい。
【0078】
上記のように、第二エア供給回路Cs2がチャック30の保持に用いられる負圧エア以外のエアを流通させる構成において、バルブ装置38は、チャック30にクランプミスが発生していない正常時において予め第二エア通路34を大気圧エア通路37に連通させる構成としてもよい。そして、例えばチャック30にクランプミスが発生した場合に、バルブ装置38は、第二エア通路34と大気圧エア通路37を遮断状態とする。
【0079】
このような構成によると、チャック30の正常時には、第二供給通路24は、流通する正圧エアまたは負圧エアの空気圧が大気圧側に減圧または増圧した状態にある。そして、チャック30にクランプミスが発生すると、第二供給通路24は、流通する正圧エアまたは負圧エアの空気圧まで増圧または減圧する。このように、上記のような構成によっても、バルブ装置38の切り換えによって第二供給通路24におけるエアの流通状態が変動する。これにより、判定部251は、実施形態と同様に、チャック30が部品をクランプしているか否かを判定することが可能である。
【0080】
実施形態において、バルブ装置38は、空気圧装置35のピストン352がスプールとして機能して構成されるものとした。これに対して、バルブ装置38は、ピストン352の移動に連動して第二エア通路34と大気圧エア通路37の連通状態と遮断状態を切り換え可能であれば、種々の態様を採用し得る。例えば、バルブ装置38は、ピストン352の位置に応じて給電状態を切り換えられるソレノイドバルブでもよい。その他に、バルブ装置38は、例えばピストン352に連結されたアームやリンク機構を介してスプールを移動されるメカバルブであってもよい。
【0081】
また、実施形態において、チャック30は、負圧エアを供給されて開状態(アンクランプ状態)から閉状態(クランプ状態)となるものとした。これに対して、チャック30は、正圧エアを供給されてクランプ状態となるタイプを採用してもよい。このようなタイプのチャック30を対象とする第一エア供給回路Cs1は、図示しない正圧エア供給源により供給される正圧エアをチャック30へと流通させる。このような構成においても、実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0082】
1:部品装着機、 16:制御装置、 20:装着ヘッド、 21:ヘッド本体、 22:負圧エア供給源、 23:第一供給通路、 24:第二供給通路、 25:ヘッド制御部、 251:判定部、 26:凹部、 30:チャック、 31:チャック本体、 32:(複数の)爪片、 33:第一エア通路、 34:第二エア通路、 35:空気圧装置、 352:ピストン、 36:開閉機構、 37:大気圧エア通路、 38:バルブ装置、 Cs1:第一エア供給回路(供給系統)、 Cs2:第二エア供給回路(供給系統)、 52:検出センサ、 90:基板、 Bn:負圧室、 Vn1,Vn2:負圧、 Va:大気圧、 P1:初期位置、 P2:規定位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8