(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986578
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】スクリーン印刷方法、スクリーン印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20211213BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20211213BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41M1/12
H05K3/34 505D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-571904(P2019-571904)
(86)(22)【出願日】2018年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2018005390
(87)【国際公開番号】WO2019159309
(87)【国際公開日】20190822
【審査請求日】2020年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 毅
【審査官】
佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−272964(JP,A)
【文献】
特開2017−071072(JP,A)
【文献】
特開昭61−168997(JP,A)
【文献】
特開2000−168040(JP,A)
【文献】
特開2002−254193(JP,A)
【文献】
特開2014−058047(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0219966(US,A1)
【文献】
特開2010−149503(JP,A)
【文献】
特開2017−164948(JP,A)
【文献】
特開2008−109159(JP,A)
【文献】
特開2010−118630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00−15/46
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスキージと、粘性流体を保持可能な2つの保持部材とを用いて、2つのレーンの各々においてそれぞれ搬送された第1回路基板と第2回路基板とに、それぞれ、前記粘性流体をスクリーンを介して印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記一対のスキージのうちの一方である第1スキージと、前記2つの保持部材のうちの一方である第1保持部材とを用いて、前記第1回路基板に前記粘性流体である第1粘性流体を印刷する第1印刷工程と、
前記一対のスキージのうちの他方である第2スキージと、前記2つの保持部材のうちの他方である第2保持部材とを用いて、前記第2回路基板に前記第1粘性流体とは異なる第2粘性流体を印刷する第2印刷工程と
を含み、
前記第1印刷工程が、
前記第1スキージを第1スタート位置から第1方向に移動させることにより、前記第1スタート位置において前記第1保持部材に保持された前記第1粘性流体を前記第1回路基板に印刷する第1スキージ移動工程と、
前記第1スタート位置から前記第1方向に隔たった第1エンド位置において、前記第1保持部材に前記第1粘性流体を保持させる第1保持工程とを含み、
前記第2印刷工程が、
前記第2スキージを第2スタート位置から前記第1方向とは逆である第2方向に移動させることにより、前記第2スタート位置において前記第2保持部材に保持された前記第2粘性流体を前記第2回路基板に印刷する第2スキージ移動工程と、
前記第2スタート位置から前記第2方向において隔たった第2エンド位置において、前記第2保持部材に前記第2粘性流体を保持させる第2保持工程とを含み、
当該スクリーン印刷方法が、前記第1印刷工程の後に、前記一対のスキージを前記第1エンド位置から前記第2スタート位置へ移動させる第2スタート位置移動工程と、その第2スタート位置移動工程と前記第2印刷工程との少なくとも一方と並行して、前記第1粘性流体が保持された前記第1保持部材を前記第1エンド位置から前記第1スタート位置へ戻す第1保持部材戻し工程とを含むスクリーン印刷方法。
【請求項2】
当該スクリーン印刷方法が、前記第2印刷工程の後に、前記一対のスキージを前記第2エンド位置から前記第1スタート位置へ移動させる第1スタート位置移動工程と、その第1スタート位置移動工程と前記第1印刷工程との少なくとも一方と並行して、前記第2粘性流体が保持された前記第2保持部材を前記第2エンド位置から前記第2スタート位置へ戻す第2保持部材戻し工程とを含む請求項1に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項3】
前記第1保持工程が、
前記第1スキージ移動工程の後に、前記第1保持部材を前記第1方向へ移動させて、前記第1スキージを追い越して、前記第1スキージの前方の前記第1エンド位置へ移動させる第1スキージ追い越し工程と、
前記第1エンド位置に位置する前記第1保持部材に向かって前記第1スキージを前記第1方向に移動させて、前記第1粘性流体を前記第1保持部材に載せる第1載置工程とを含み、
前記第2保持工程が、
前記第2スキージ移動工程の後に、前記第2保持部材を前記第2方向へ移動させて、前記第2スキージを追い越して、前記第2スキージの前方の前記第2エンド位置へ移動させる第2スキージ追い越し工程と、
前記第2エンド位置に位置する前記第2保持部材に向かって前記第2スキージを前記第2方向に移動させて、前記第2粘性流体を前記第2保持部材に載せる第2載置工程とを含む請求項1または2に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項4】
2つのレーンの各々において搬送された第1回路基板と第2回路基板とに、スクリーンを介して粘性流体を印刷するスクリーン印刷機であって、
一対のスキージを備え、前記一対のスキージの各々を、それぞれ、前記スクリーン上を移動させるスキージ装置と、
前記粘性流体を保持可能な2つの保持部材を備え、前記2つの保持部材をそれぞれ独立して移動させる粘性流体保持装置と、
前記スキージ装置と前記粘性流体保持装置とを制御することにより、前記一対のスキージの一方である第1スキージを、第1スタート位置から第1方向へ移動させることにより、前記第1スタート位置において前記2つの保持部材のうちの一方である第1保持部材に保持された前記粘性流体である第1粘性流体を前記第1回路基板に印刷し、前記一対のスキージの他方である第2スキージを、第2スタート位置から前記第1方向とは逆の第2方向へ移動させることにより、前記第2スタート位置において前記2つの保持部材のうちの他方である第2保持部材に保持された前記第1粘性流体とは異なる第2粘性流体を前記第2回路基板に印刷する印刷制御装置と
を含み、
前記印刷制御装置が、前記第1スキージによる前記第1粘性流体の前記第1回路基板への印刷が終了した後に、前記第1保持部材を前記第1方向へ移動させることにより、前記第1スキージを追い越して、前記第1スキージの前方の、前記第1スタート位置から隔たった第1エンド位置へ移動させ、前記第1エンド位置に位置する前記第1保持部材に向かって前記第1スキージを前記第1方向へ移動させることにより前記第1粘性流体を前記第1保持部材に保持させ、前記第2スキージによる前記第2粘性流体の前記第2回路基板への印刷が終了した後に、前記第2保持部材を前記第2方向へ移動させることにより、前記第2スキージを追い越し、前記第2スキージの前方の、前記第2スタート位置から隔たった第2エンド位置へ移動させ、前記第2エンド位置に位置する前記第2保持部材に向かって、前記第2スキージを前記第2方向へ移動させることにより、前記第2粘性流体を前記第2保持部材に保持させるものであるスクリーン印刷機。
【請求項5】
前記印刷制御装置が、前記第1エンド位置において前記第1粘性流体が前記第1保持部材に保持された後に、前記一対のスキージを前記第1エンド位置から前記第2スタート位置へ移動させるが、この一対のスキージの前記第1エンド位置から前記第2スタート位置への移動と前記第2スキージによる前記第2粘性流体の前記第2回路基板への印刷との少なくとも一方と並行して、前記第1保持部材を前記第1エンド位置から前記第1スタート位置へ戻し、前記第2エンド位置において前記第2粘性流体が前記第2保持部材に保持された後に、前記一対のスキージを前記第2エンド位置から前記第1スタート位置へ移動させるが、この一対のスキージの前記第2エンド位置から前記第1スタート位置への移動と前記第1スキージによる前記第1粘性流体の前記第1回路基板への印刷との少なくとも一方と並行して、前記第2保持部材を前記第2エンド位置から前記第2スタート位置へ戻すものである請求項4に記載のスクリーン印刷機。
【請求項6】
前記第1スタート位置と前記第2スタート位置とが、当該スクリーン印刷機の本体の前記2つのレーンが並ぶ方向の両側部に位置する請求項4または5に記載のスクリーン印刷機。
【請求項7】
前記粘性流体保持装置が、前記第1保持部材を、前記一対のスキージと並行して移動させ得る第1移動装置と、前記第2保持部材を、前記一対のスキージと並行して移動させ得る前記第1移動装置とは別の第2移動装置とを含み、
前記第1移動装置と前記第2移動装置とが、前記第1保持部材と前記第2保持部材との前記移動をガイドする共通の一対のガイド部材を含む請求項4ないし6のいずれか1つに記載のスクリーン印刷機。
【請求項8】
前記スクリーンが、前記第1回路基板と前記第2回路基板とに共通に1つ設けられ、
当該スクリーン印刷機が、前記1つのスクリーンを支持するスクリーン支持装置を備えた請求項4ないし7のいずれか1つに記載のスクリーン印刷機。
【請求項9】
前記粘性流体保持装置が、前記2つの保持部材をそれぞれ保持する2つの保持部材支持体を備え、前記2つの保持部材支持体を、それぞれ、独立に移動させるものであり、
前記2つの保持部材の各々が、それぞれ平板状を成す2つの保持プレートであり、
前記2つの保持プレートが、それぞれ、前記2つの保持部材支持体に着脱可能に取り付けられた請求項4ないし8のいずれか1つに記載のスクリーン印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に粘性流体を印刷するスクリーン印刷方法、スクリーン印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のスキージ、一対の保持プレートを利用して、2つのレーンの各々において搬送される第1回路基板(以下、回路基板を基板と略称する)と第2基板との一方に、スクリーンを介して粘性流体が印刷されるスクリーン印刷機が記載されている。特許文献1に記載のスクリーン印刷機においては、第1基板と第2基板との一方に、一対のスキージのうちの一方と、一対の保持プレートのうちの一方とを利用して、粘性流体の印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−71072号
【0005】
本開示の課題は、2つのレーンの各々において搬送される第1基板と第2基板とへの互いに異なる種類の粘性流体の印刷を可能とすることである。
【0006】
本開示のスクリーン印刷方法は、第1基板に、第1スキージと第1保持部材とを用いて、第1粘性流体の印刷をスクリーンを介して行う工程と、第2基板に、第2スキージと第2保持部材とを用いて、第2粘性流体の印刷をスクリーンを介して行う工程とを含む。このように、第1基板への第1粘性流体の印刷と第2基板への第2粘性流体の印刷とで、互いに異なるスキージ、保持部材が利用されるため、第1粘性流体と第2粘性流体とが混じることがない。そのため、第1基板と第2基板とへの互いに異なる種類の粘性流体の印刷を良好に行うことが可能となる。
【0007】
本開示のスクリーン印刷機は、第1スキージおよび第2スキージを備えたスキージ装置と、第1保持部材および第2保持部材を備えた粘性流体保持装置と、第1基板に、第1スキージと第1保持部材とを利用して、第1粘性流体の印刷がスクリーンを介して行われ、第2基板に、第2スキージと第2保持部材とを利用して、第2粘性流体の印刷がスクリーンを介して行われるように、これらスキージ装置と粘性流体保持装置とを制御する印刷制御装置とを含む。そのため、第1基板と第2基板とに、互いに異なる種類の粘性流体を混じることなく印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態のスクリーン印刷機の斜視図である。本スクリーン印刷機においては、本開示の一実施形態であるスクリーン印刷方法が実施され得る。
【
図3】上記スクリーン印刷機の一部の側面図である。
【
図4】上記スクリーン印刷機のはんだ回収装置の一部を示す斜視図である。
【
図5】上記はんだ回収装置の別の一部を示す斜視図である。
【
図6】上記スクリーン印刷機の制御装置の周辺を概念的に示すブロック図である。
【
図7】上記スクリーン印刷機における作動を示す図である。
【
図8】上記制御装置の記憶部に記憶されたスクリーン印刷プログラムを表すフローチャートである。
【
図9】上記スクリーン印刷プログラムの一部を表すフローチャートである。
【
図10】上記スクリーン印刷プログラムの別の一部を表すフローチャートである。
【0009】
以下、本開示の一実施形態に係るスクリーン印刷機について図面に基づいて詳細に説明する。本スクリーン印刷機においては、本開示の一実施形態に係るスクリーン印刷方法が実施され得る。また、本実施形態において、粘性流体としてクリーム状はんだ(以下、単にはんだと略称する)が用いられる。
【実施例】
【0010】
図1に示すように、スクリーン印刷機は、本体12、2つの回路基板搬送保持装置(以下、基板搬送保持装置と略称する)14,16、スクリーン支持装置18、スキージ装置20、粘性流体保持装置としてのはんだ回収装置22等を含む。
【0011】
基板搬送保持装置14,16は、それぞれ、回路基板(以下、回路基板を単に基板と略称する)を搬送して保持するものであり、第1レーン24,第2レーン26の各々に対応して、スクリーン支持装置18の下方に設けられる。基板搬送保持装置14,16は、それぞれ、一対ずつのコンベアベルト14a,14b、コンベアベルト16a,16b、基板保持機構14c、16c等を含み、第1基板Q1,第2基板Q2を、第1レーン24,第2レーン26に沿って搬送して、予め定められた位置において保持して上昇させることにより、スクリーンSの下面に当接させる。第1レーン24、第2レーン26は、それぞれ、第1基板Q1,第2基板Q2の搬送路であり、一対のコンベアベルト14a、14bの間、一対のコンベアベルト16a、16bの間の領域をいう。
【0012】
本スクリーン印刷機において、第1基板Q1,第2基板Q2の搬送方向をx方向、幅方向をy方向、厚み方向をz方向とする。y方向、z方向は、それぞれ、スクリーン印刷機の前後方向、上下方向に対応する。x方向、y方向、z方向は互いに直交する。
【0013】
スクリーン支持装置18は、スクリーンSを張設した状態で保持するものであり、スクリーンSを保持するスクリーン枠32等を含む。スクリーンSは、第1基板Q1,第2基板Q2の両方を覆う大きさを成す。スクリーンSには、第1基板Q1に対応するイメージと第2基板Q2に対応するイメージとの両方が形成されている。
【0014】
スキージ装置20は、スキージによりスクリーン上のはんだをスクリーンに沿って移動させることにより、基板にはんだを印刷するものであり、
図1ないし3に示すように、スキージヘッド36、スキージヘッド36をy方向へ移動させるスキージ移動装置38等を含む。スキージヘッド36は、スクリーンSの上方に位置する一対のスキージである第1スキージ40a,第2スキージ40b(以下、第1、第2スキージ40a、40bと略称する場合がある。他の部材についても同様とする)、第1スキージ40a,第2スキージ40bをそれぞれ別個独立に昇降させる第1スキージ昇降装置42a,第2スキージ昇降装置42b等を含む。
【0015】
スキージ移動装置38は、本体12に固定的に設けられたコンベア装置44、y方向に伸びた一対のガイドレール46a,46b、スライダ48等を含む。コンベア装置44は、コンベアベルト52、駆動プーリ53と従動プーリ54とを含む一対のプーリ、スキージ移動用モータ56等を含む。スライダ48は、x方向に伸びたものであり、両端部に設けられた、一対のガイドレール46a、46bに相対移動可能に係合する係合部58a、58bと、一端部に設けられた、コンベアベルト52に一体的に移動可能に係合する係合部58cとを有する。また、スライダ48は、上に凸となる状態で湾曲した湾曲部59a、59b等を有し、はんだ回収装置22の移動に邪魔にならない形状とされる。さらに、スライダ48には、スキージヘッド36が固定的に保持される。
【0016】
スキージ装置20において、スキージ移動用モータ56によりコンベアベルト52が移動させられ、それにより、スキージヘッド36がy方向へ移動させられる。スキージヘッド36のy方向における位置、移動量等は、スキージ移動用モータ56の制御により制御される。
【0017】
スキージヘッド36において、第1、第2スキージ40a,40bは、それぞれ、概して板状を成すものであり、
図3に示すように、互いに、対向する板面がx方向から見た場合にΛ字状に傾斜した姿勢とされる。すなわち、第1スキージ40aの板面は、上方へ行くにつれてy方向の矢印Mが示す第1方向Mに進んだ向きに傾斜し、第2スキージ40bの板面は、上方へ行くにつれてy方向の矢印Nが示す第2方向Nに進んだ向きに傾斜した姿勢とされている。
【0018】
第1スキージ昇降装置42aは、上下方向に伸びたエアシリンダを含み、ピストンに第1スキージ40aが一体的に昇降可能に保持される。第1スキージ昇降装置42aにおいて、スライダ48に固定的に設けられたシリンダ本体に対するピストンの相対位置の制御により、第1スキージ40aの高さが制御される。第2スキージ昇降装置42bについても同様であり、第2スキージ40bの高さは、第2スキージ昇降装置42におけるシリンダ本体に対するピストンの相対位置の制御により制御される。
【0019】
はんだ回収装置22は、スクリーン上のはんだを保持して回収するものであり、2つの保持部材としての保持プレートである第1保持プレート66および第2保持プレート68と、第1保持プレート66をy方向に移動させる第1移動装置70と、第2保持プレート68を、第1保持プレート66とは別個独立にy方向に移動させる第2移動装置72とを含む。第1移動装置70は、本体12に固定的に設けられた第1コンベア装置74と、スライダとしての第1保持プレート支持体78とを含む。第1コンベア装置74は、コンベアベルト82、図示しない一対のプーリ、保持プレート移動用モータ84等を含む。第2移動装置72についても同様であり、第2コンベア装置76と第2保持プレート支持体80とを含み、第2コンベア装置76は、コンベアベルト82と平行に、上下方向に隔たって設けられたコンベアベルト83、図示しない一対のプーリ、保持プレート移動用モータ85等を含む。また、第1移動装置70と第2移動装置72とは、共通に、y方向に伸びた一対のガイドレール86a、86bを含む。
【0020】
第1、第2保持プレート支持体78,80は、それぞれ、第1、第2コンベア装置72,74によりy方向に互いに別個独立に移動させられるが、第1、第2保持プレート支持体78,80の各々の位置、移動量は、それぞれ、保持プレート移動用モータ84,85の制御により制御される。
【0021】
第1保持プレート支持体78は、
図4に示すように、x方向に伸びたプレート支持部材90と、プレート支持部材90を両端部において昇降可能に保持する一対の昇降保持装置92a,92bとを含む。昇降保持装置92a、92bは、それぞれ、上下方向に伸びたエアシリンダを含み、各々のピストンに、プレート支持部材90の両端部が一体的に昇降可能に保持される。昇降保持装置92a、92bの各々におけるシリンダ本体に対するピストンの相対位置の制御により、プレート支持部材90の高さが制御される。また、昇降保持装置92a,92bの本体には、一対のガイドレール86a、86bに相対移動可能に係合する係合部94a,94bが設けられ、昇降保持装置92bの本体には、コンベアベルト82と一体的に移動可能に係合する係合部96が、係合部94bから隔たった部分に設けられる。
【0022】
第2保持プレート支持体80についても同様であり、
図5に示すように、プレート支持部材91と、昇降保持装置93a,93bとを含み、昇降保持装置93a、93bのシリンダ本体に対するピストンの相対位置の制御により、プレート支持部材91の高さが制御される。また、昇降保持装置93a,93bの本体には、一対のガイドレール86a、86bに相対移動可能に係合する係合部95a,95bが設けられ、昇降保持装置93bの本体には、コンベアベルト83と一体的に移動可能に係合する係合部97が係合部95bから隔たって設けられる。
【0023】
第1保持プレート66は、x方向に伸びた板状を成すものであり、幅方向(y方向)の両端部にそれぞれ傾斜部66a,66bが設けられる。傾斜部66a,66bにより、はんだを降ろしたり、載せたりすることが容易となる。第2保持プレート68についても同様であり、y方向の両端部には傾斜部68a,68bが設けられる。
また、第1、第2保持プレート66,68は、プレート支持部材90,91に、それぞれ、ボルト110によって着脱可能に取り付けられる。それにより、第1、第2保持プレート66,68の清掃が容易となり、はんだの保持、回収作業が容易となる。
【0024】
図6に示すように、スクリーン印刷機は制御装置150を含む。制御装置150は、実行部150c、記憶部150m、入出力部150i等を含むコンピュータを主体とするものである。制御装置150の入出力部150iには、駆動回路170を介して、基板搬送保持装置14,16、スキージ装置20、はんだ回収装置22等が接続される。
【0025】
以上のように構成されたスクリーン印刷機において、第1基板Q1,第2基板Q2に対して、互いに異なる種類のはんだのスクリーン印刷が行われる。はんだは、主として鉛と錫とを含むものであるが、その他、アンチモン,ビスマス,銀,金等を含むものもある。また、鉛と錫との比率、鉛、錫およびその他の原料の比率が異なるものがある。このように、第1基板Q1に印刷される第1はんだSo1と第2基板Q2に印刷される第2はんだSo2とは、はんだを構成する原料と複数の原料比率との少なくとも一方が互いに異なるのである。
【0026】
スクリーン印刷は、
図8のフローチャートで表されるスクリーン印刷プログラムの実行により行われる。本実施例においては、第1基板Q1,第2基板Q2のうち、作業計画情報等により予め決められた基板に対して順次スクリーン印刷(以下、単に印刷と称する場合がある)が行われる。
ステップ1(以下、単にS1と略称する。他のステップについても同様とする)、2において、次に印刷される基板が第1基板Q1であるか否か、第2基板Q2であるか否かが判定される。次に印刷される基板が第1基板Q1である場合には、S3において、第1基板Q1への印刷のための準備である第1印刷準備工程が行われ、S4において、第1基板Q1への印刷である第1印刷工程が行われる。同様に、次に印刷される基板が第2基板Q2である場合には、S5,6において、第2印刷準備工程、第2印刷工程が行われる。
【0027】
最初に、第1、第2印刷工程について説明し、次に、第1、第2印刷準備工程について説明する。
第1印刷工程の開始時には、スキージ装置20、はんだ回収装置22は、第1印刷準備工程の実行により
図7(a)に示す状態とされる。第1はんだSo1が保持された第1保持プレート66、スキージヘッド36は第1スタート位置Ps1にある。
【0028】
第1印刷工程の各工程は
図9のフローチャート(k=1)が表す順に実行される。
図7(b)に示すように、第1スキージ40aが、第1スキージ昇降装置42aにより下降させられ、第1保持プレート66に保持された第1はんだSo1に当接させられ、スキージ移動装置38により第1方向Mへ移動させられる(S11、第1スキージ移動工程)。第1保持プレート66から第1はんだSo1が降ろされて、スクリーン上を移動させられ、第1基板Q1に第1はんだSo1が印刷されるのである。
図7(c)に示すように、第1スキージ40aが、予め定められた印刷領域R1(第1基板Q1が存在する領域を含む)を越え、予め定められた位置に達した場合に、退避高さまで上昇させられる(S12)。一方、第1保持プレート66が昇降保持装置92a、92bにより上昇させられ、第1移動装置70により第1方向Mへ移動させられ、第1スキージ40aの下方を通過して第1スキージ40aを追い越して、第1スキージ40aの前方の第1エンド位置Pe1まで移動させられて、下降させられる(S13、第1スキージ追い越し工程)。
図7(d)に示すように、第1スキージ40aは、下降させられ、第1はんだSo1に接した状態で、さらに、第1方向Mに移動させられる。それにより、第1はんだSo1が第1保持プレート66の上に載せられる(S14、第1載置工程)。その後、第1スキージ40aは退避高さまで上昇させられる。以上により、第1基板Q1への第1はんだSo1の印刷が終了し、第1印刷工程が終了させられる。
【0029】
第2印刷工程の開始時には、スキージ装置20、はんだ回収装置22は、第2印刷準備工程により
図7(e)の実線が示す状態とされる。第2はんだSo2が保持された第2保持プレート68、スキージヘッド36は第2スタート位置Ps2にある。
【0030】
第2印刷工程の各工程は
図9のフローチャートが表す順(k=2)に同様に実行される。
図7(f)が示すように、第2スキージ40bが、第2スキージ昇降装置42bにより下降させられ、スキージ移動装置38により第2方向Nへ移動させられる(S11、第2スキージ移動工程)。それにより、第2保持プレート68に保持された第2はんだSo2が降ろされて、スクリーン上を移動させられ、第2基板Q2に第2はんだSo2が印刷される。
図7(g)が示すように、第2スキージ40bは、第2基板Q2が存在する領域を含む印刷領域R2を越えた場合に、退避高さまで上昇させられる(S12)。第2保持プレート68が、第2移動装置72により第2方向Nへ移動させられ、第2スキージ40bの下方において第2スキージ40bを追い越して、第2エンド位置Pe2へ位置させられる(S13、第2スキージ追い越し工程)。
図7(h)に示すように、第2スキージ40bは、下降させられ、第2はんだSo2に接した状態で、第2方向Nに移動させられ、第2はんだSo2が第2保持プレート68に載せられる(S14、第2載置工程)。その後、第2スキージ40bは退避高さまで上昇させられる。以上により、第2印刷工程が終了させられる。
【0031】
なお、第1、第2スタート位置Ps1,Ps2は、本体12の、第1レーン24、第2レーン26の外側、かつ、印刷領域R1,R2の外側の部分(本体12の第1レーン24,第2レーン26が並ぶ方向の両側部に対応する)に位置し、第1、第2エンド位置Pe1,Pe2は、第1レーン24と第2レーン26との間、かつ、印刷領域R1と印刷領域R2との間に、互いに隔たって位置するが、第1エンド位置Pe1は第2エンド位置Pe2より第1レーン24に近い側に位置する。
【0032】
次に印刷される基板が第2基板Q2である場合には、S5において、第2印刷準備工程が実行される。第2印刷準備工程の一例を、
図10のフローチャートで示す(k=2)。例えば、第1基板Q1の次に、第2基板Q2への印刷が行われる場合(S21の判定がNO)には、
図7(e)に示すように、スキージヘッド36が第1エンド位置Pe1から第2スタート位置Ps2へ移動させられる(第2スタート位置移動工程)のと並行して、第1はんだPo1が保持された第1保持プレート66が第1エンド位置Pe1から第1スタート位置Ps1へ移動させられる(S23、第1保持部材戻し工程)。それに対して、連続して第2基板Q2への印刷が行われる場合(S21の判定がYES)には、スキージヘッド36と第2はんだPo2が保持された第2保持プレート68との両方が、第2エンド位置Pe2から第2スタート位置Ps2へ並行して移動させられる(S22)。
【0033】
同様に、次に印刷される基板が第1基板Q1である場合には、S3において、第1印刷準備工程が実行される。第1印刷準備工程の一例を
図10のフローチャートで示す(k=1)。例えば、第2基板Q2の次に、第1基板Q1への印刷が行われる場合(S21の判定がNO)には、
図7(i)に示すように、スキージヘッド36が第2エンド位置Pe2から第1スタート位置Ps1に移動させられる(第1スタート位置移動工程)のと並行して、第2はんだSo2が保持された第2保持プレート68が第2エンド位置Pe2から第2スタート位置Ps2に戻される(S23、第2保持部材戻し工程)。第1基板Q1に連続して印刷が行われる場合(S21の判定がYES)には、第1保持プレート66、スキージヘッド36の両方が、第1エンド位置Pe1から第1スタート位置Ps1へ並行して移動させられる(S22)。
【0034】
このように、本実施例においては、第1基板Q1への第1はんだSo1の印刷が第1スキージ40a、第1保持プレート66を利用して行われ、第2基板Q2への第2はんだSo2の印刷が第2スキージ40b、第2保持プレート68を利用して行われるため、第1はんだSo1と第2はんだSo2とが混ざることなく、第1基板Q1,第2基板Q2に、それぞれ、第1はんだSo1,第2はんだSo2を印刷することができる。
【0035】
また、第1、第2保持プレート66,68が、それぞれ、第1、第2スキージ40a,40bを追い越すことができるため、第1、第2スキージ40a,40bの各々の一方向の移動により、第1、第2保持プレート66,68において、はんだを降ろしたり、載せたりすることができ、基板にはんだを印刷することができるのである。このように、第1、第2スキージ40a、40bの一方向の移動により第1、第2基板Q1,Q2にスクリーン印刷が行われるため印刷品質を安定化させることができる。しかも、第1、第2スキージ40a、40bを利用して第1、第2保持プレート66,68にはんだを載せることができるため、特許文献1に記載のスクリーン印刷機におけるように、保持プレートの移動によりはんだが保持プレートに載せられる場合より、はんだを良好に回収することができる。
【0036】
さらに、第1印刷準備工程、第2印刷準備工程において、第1、第2保持プレート66,68の第1、第2スタート位置への戻しと、スキージヘッド36の第1、第2スタート位置への移動とが並行して行われるため、これらが別々に行われる場合と比較して、はんだ印刷作業時間を短くすることができる。
【0037】
以上、本実施例においては、
図9のフローチャートのS13,14の実行が第1保持工程、第2保持工程に対応する。また、制御装置150のうち
図8のフローチャートで表されるスクリーン印刷プログラムを記憶する部分、実行する部分等により印刷制御装置が構成される。さらに、第1保持プレート支持体78、第2保持プレート支持体80が保持部材支持体に対応する。
【0038】
なお、本実施例においては、S23において、第1スタート位置移動工程、第2スタート位置移動工程と、第1、第2保持プレート66,68の第1、第2スタート位置への戻しとが並行して行われるようにされていたが、第1、第2保持プレート66,68の第1、第2スタート位置への戻しは、第2印刷工程、第1印刷工程と並行して行われるようにすることもできる。
【0039】
また、上記実施例においては、第1、第2スキージ40a,40bが退避高さまで上昇させられた後に、第1、第2保持プレート66,68の移動が開始されるようにされていたが、例えば、第1、第2保持プレート66,68の移動は、第1、第2スキージ40a,40bの移動の開始と同時に開始されるようにすること等もできる。
【0040】
さらに、スクリーンSを、第1基板Q1と第2基板Q2とに共通に設けることは不可欠ではなく、第1基板Q1と第2基板Q2とに個別に設けることもできる
【0041】
また、本開示は、特許文献1に記載のように、一対のガイドレールに、スキージヘッド、第1保持プレート支持体、第2保持プレート支持体が、それぞれ、個別の駆動モータにより、個別に移動可能とされているスクリーン印刷機においても実施することができる等、本発明は、当業者の知識に基づき、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
18:スクリーン支持装置 20:スキージ装置 22:はんだ回収装置 36:スキージヘッド 38:スキージ移動装置 40a:第1スキージ 40b:第2スキージ 42a:第1スキージ昇降装置 42b:スキージ昇降装置 66:第1保持プレート 68:第2保持プレート 70:第1移動装置 72:第2移動装置 78:第1保持プレート支持体 80:第2保持プレート支持体 92a、92b、93a、93b:昇降保持装置 150:制御装置