特許第6986585号(P6986585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986585筒状部品成形装置および筒状成形部品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986585
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】筒状部品成形装置および筒状成形部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/48 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B29C49/48
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-29431(P2020-29431)
(22)【出願日】2020年2月25日
(65)【公開番号】特開2021-133540(P2021-133540A)
(43)【公開日】2021年9月13日
【審査請求日】2020年5月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月14日に刊行された「化学工業日報」第2面に公開、令和2年1月14日に刊行された「繊維ニュース」第15面に公開、令和2年1月15日東京ビックサイトにおいて開催された「第10回クルマの軽量化技術展」で発表、令和2年1月20日に刊行された「石油化学新聞」第4面に公開、令和2年1月24日に刊行された「繊維ニュース」第5面に公開
(73)【特許権者】
【識別番号】516011486
【氏名又は名称】扶桑産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 憲吾
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−042585(JP,A)
【文献】 特表2002−507498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の成形部品をサクションブロー法によって製造する筒状部品成形装置であって、
前記成形部品の型となるキャビティが設けられた金型ユニットと、
前記成形部品のためのパリソンを前記金型ユニットに供給するパリソン供給部と、
前記キャビティに供給された前記パリソンを膨張させることにより、前記パリソンを前記成形部品に成形するブロー部と、を備え、
前記金型ユニットは、第1金型と第2金型とを有し、
前記第1金型および前記第2金型は、
前記キャビティを形成するキャビティ部と、
前記成形部品の内周面に形成されるらせん状の凸構造を形成するために、前記キャビティ部の内周面から突出するように、らせん状に設けられた凸型部と、
前記第1金型と前記第2金型の合わせ目に対応する位置において、前記凸型部に設けられる凹型部と、をそれぞれ含む、筒状部品成形装置。
【請求項2】
筒状部品成形装置を用いて、筒形状でありその内周面にはらせん状の凸構造が形成された筒状成形部品を製造する方法であって、
第1金型および第2金型を有する金型ユニットを準備する工程と、
前記第1金型に前記第2金型を突き合わせて前記筒状部品のためのキャビティを形成する工程と、
前記キャビティに前記成形部品の材料であるパリソンを配置する工程と、
前記キャビティに供給された前記パリソンを膨張させることにより、前記パリソンを前記成形部品に成形する工程と、を有し、
前記第1金型および前記第2金型は、
前記キャビティを形成するキャビティ部と、
前記成形部品の内周面に形成されるらせん状の凸構造を形成するために、前記キャビティ部の内周面から突出するように、らせん状に設けられた凸型部と、
前記第1金型と前記第2金型の合わせ目に対応する位置において、前記凸型部に設けられる凹型部と、をそれぞれ含む、筒状成形部品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクションブロー成形法による筒状部品成形装置および筒状成形部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、サクションブロー成形法に関する技術を開示する。樹脂材料であるパリソンを金型に配置したのちに、当該パリソンの内部に空気を吹き込む。そうすると、パリソンが膨張して、金型に設けられたキャビティの形状に成形される。サクションブロー成形法によれば、中空であって2次元あるいは3次元的な形状を有する筒状部品を容易に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−245443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形部品は、成形部品と金型とを分離させる際に注意を要する。例えば、金型から成形部品を容易に分離させるために、金型にいわゆる抜き勾配を設けることがある。しかし、外表面に凹凸構造を有する成形部品の場合には、抜き勾配だけでは十分でない場合もあり得る。その場合には、複数の部品によって金型を構成し、部品ごとに抜きやすい方向へ移動させることがある。また、金型を所定の方向へ移動させたのちに、所定の方向とは異なる別の方向へ移動させることもある。しかし、金型を複数の部品によって構成する場合であっても、金型を複数の方向へ移動させながら分離する場合であっても、金型コストの増加や成形機械の複雑化が伴ってしまう。したがって、当該技術分野にあっては、外表面に凹凸構造を有する成形部品であっても、成形部品と金型とを容易に分離できる技術が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、外表面に凹凸構造を有する成形部品であっても、成形部品と金型とを容易に分離できる筒状部品成形装置および筒状成形部品を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、筒状の成形部品をサクションブロー法によって製造する筒状部品成形装置であって、成形部品の型となるキャビティが設けられた金型ユニットと、成形部品のためのパリソンを金型ユニットに供給するパリソン供給部と、キャビティに供給されたパリソンを膨張させることにより、パリソンを成形部品に成形するブロー部と、を備え、金型ユニットは、第1金型と第2金型とを有し、第1金型および第2金型は、成形部品を形成するキャビティ部と、成形部品の内周面に形成されるらせん状の凸構造を形成するために、キャビティ部の内周面から突出するように、らせん状に設けられた凸型部と、第1金型と第2金型の合わせ目に対応する位置において、凸型部に設けられる凹型部と、をそれぞれ含む。
【0007】
この装置では、金型ユニットを構成する第1金型および第2金型が、らせん状に設けられた凸型部を有する。その結果、外周面にらせん状の溝が形成された成形部品を成形することができる。さらに、凸型部には、第1金型と第2金型の合わせ目に対応する位置において、凹型部が設けられている。この凹型部によれば、凸型部においてらせん状の溝に引っかかる一部が削られることになる。その結果、第1金型および第2金型を一方向に移動させるだけで、成形部品に有意なダメージを与えることなく、成形部品を第1金型および第2金型から取り外すことができる。つまり、この装置は、外表面に凹凸構造を有する成形部品であっても、成形部品と金型とを容易に分離できる。
【0008】
一形態において、キャビティ部の軸線の方向において、凸型部の幅は、凸型部のピッチよりも短くてもよい。この構成によれば、成形部品と金型とをより良好に分離することができる。
【0009】
一形態において、凹型部は、キャビティ部の径方向において、キャビティ部の内周面と凸型部の稜線までの間に位置してもよい。この構成によっても、成形部品と金型とをより良好に分離することができる。
【0010】
一形態において、凸型部の断面形状は、底辺が高さよりも長い三角形であってもよい。この構成によっても、成形部品と金型とをより良好に分離することができる。
【0011】
本発明の別の形態は、筒状部品成形装置を用いて、筒形状でありその内周面にはらせん状の凸構造が形成された筒状成形部品を製造する方法であって、第1金型および第2金型を有する金型ユニットを準備する工程と、第1金型に第2金型を突き合わせて筒状部品のためのキャビティを形成する工程と、キャビティに成形部品の材料であるパリソンを配置する工程と、キャビティに供給されたパリソンを膨張させることにより、パリソンを成形部品に成形する工程と、を有し、第1金型および第2金型は、成形部品を形成するキャビティ部と、成形部品の内周面に形成されるらせん状の凸構造を形成するために、キャビティ部の内周面から突出するように、らせん状に設けられた凸型部と、第1金型と第2金型の合わせ目に対応する位置において、凸型部に設けられる凹型部と、をそれぞれ含む。この製造方法によれば、内周面および外周面にらせん状の凹凸構造を有する成形部品を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外表面に凹凸構造を有する成形部品であっても、成形部品と金型とを容易に分離できる筒状部品成形装置および筒状成形部品を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のサクションブロー成形装置の主要な構成を概略的に示す図である。
図2図2は、図1のサクションブロー成形装置によって製造される成形部品を示す斜視図である。
図3図3は、図2の成形部品の主要部を拡大して示す平面図である。
図4図4は、図2の成形部品の内周面を拡大して示す斜視図である。
図5図5は、図2の成形部品と金型ユニットとを示す分解斜視図である。
図6図6は、図5の金型ユニットの主要部を拡大して示す斜視図である。
図7図7は、筒状成形部品を製造する方法の主要な工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
<サクションブロー成形装置>
図1は、実施形態に係るサクションブロー成形装置1(筒状部品成形装置)の主要な構成を概略的に示す。サクションブロー成形装置1は、サクションブロー法によって筒状成形部品を成形する。サクションブロー成形装置1は、パリソン供給部2と、ブロー部3と、金型ユニット10と、を有する。
【0016】
パリソン供給部2は、筒形状の成形部品100(図2参照)の原料であるパリソン200を金型ユニット10に供給する。パリソン供給部2は、ホッパに収容された樹脂材料を溶融させる。そして、溶融させた樹脂材料を、例えば筒状にしながら吐出する。吐出されたパリソン200は、金型ユニット10の受け入れ口10aからキャビティ10Cに落とし込まれる。このとき、サクション部2aによって、受け入れ口10aとは逆側の吸引口10bからキャビティ10Cの内部の空気を吸い出す(サクション)。この吸出しによって、パリソン200は、金型ユニット10の受け入れ口10aから吸引口10bまで導かれる。
【0017】
成形部品100の材料としては、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA6(ポリアミド6)、PA66(ポリアミド66)、PA610(ポリアミド610)、PA12(ポリアミド12)、PA612(ポリアミド612)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、TPEE(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)などを用いてよい。また、これらの材料は、ガラス等の添加剤や強化剤を含んでもよい。
【0018】
ブロー部3は、キャビティ10Cに配置されたパリソン200の内部に圧縮空気を供給する。ブロー部3は、圧縮空気を供給するエア供給部3aと、パリソン200の両端を閉塞する閉塞部3b、3cと、を有する。両端が閉塞されたパリソン200に圧縮空気を供給(ブロー)すると、パリソン200は膨張し、キャビティ10Cを形成する内面に押圧される。その結果、パリソン200にキャビティ10Cを形成する内面の形状が転写される。
【0019】
金型ユニット10は、成形部品100の外形形状の型となるキャビティ10Cを形成する。実施形態の金型ユニット10は、パイプといった成形部品100を製造するためのものである。金型ユニット10は、第1金型10Aと第2金型10Bとを有する。第1金型10Aの第1接触面10Aaと第2金型10Bの第2接触面10Baとが互いに接触・押圧されることによって、キャビティ10Cが形成される。第1金型10Aおよび第2金型10Bは、駆動機構4によって第1接触面10Aaおよび/または第2接触面10Baの法線方向に往復移動する。駆動機構4は、パリソン200の供給時およびブロー成形時に、第1金型10Aと第2金型10Bとを互いに密着させる。また、駆動機構4は、成形部品100を取り出すときに第1金型10Aと第2金型10Bを互いに離間させる。実施形態の駆動機構4は、基本的に一方向に往復移動可能であれば足りる。しかし、駆動機構4は、別の方向に第1金型10Aおよび第2金型10Bを移動させる機能を有していてもよい。
【0020】
<成形部品>
ここで、金型ユニット10によって成形される成形部品100について詳細に説明する。図2は、成形部品100の斜視図である。成形部品100は、例えば、車両に搭載される配管である。配管は、2次元的あるいは3次元的な複雑な形状を有する。図2に示す成形部品100は、4か所の曲げ部101a、101bを有する。そして、成形部品100は、一対の曲げ部101aの間に直管部102が形成されており、当該直管部102には、らせん状の構造が形成されている。
【0021】
図3を参照しながら、直管部102の外周面の構造について説明する。外周面には、外周面から窪むらせん状の溝が形成されている。また、詳細は後に説明するが、直管部102の内周面には、内周面から突き出るらせん状の凸部が形成されている。溝と凸部とは対応しており、溝によって凹んでいる分だけ、内周面に凸部が突き出ている。なお、以下の説明において、外周面に設けられた溝を「らせん凹構造110」と呼ぶ。一方、内周面に設けられた凸部を「らせん凸構造120」と呼ぶ。
【0022】
らせん凹構造110は、後述する金型ユニット10の凸型部12によって形成される。らせん凹構造110の断面は、図3の二点鎖線で示すような三角形である。この三角形の底辺が外周面に対応し、一対の斜辺が直管部102の軸線Aに向かって延びている。例えば、三角形は、二等辺三角形であってもよい。そして、三角形の頂点がらせん凹構造110の底を構成する。この底は、らせん形状である。さらに、底辺の幅110Wは、三角形の高さ110H(つまり、溝の深さ)よりも長い。換言すると、底辺と斜辺とのなす角度は、鋭角である。また、三角形の長角は、鈍角である。このような断面形状によれば、らせん凹構造110にはまる金型ユニット10の一部を容易に離間させることができる。
【0023】
らせん凹構造110は、溝の断面形状だけでなく、そのピッチ110Pも重要である。ピッチ110Pとは、例えば、らせん凹構造110が360度回転して延びたときに、直管部102の軸線Aの方向に移動する距離である。このピッチ110Pは、例えば、直管部102の内径よりも大きい。また、ピッチ110Pは、らせん凹構造110の幅110Wよりも同程度であるか、幅110Wよりも大きい。
【0024】
ここで、ブロー成形直後には、らせん凹構造110には、金型ユニット10の一部がはまっている。ここで、らせん凹構造110は、直管部102の軸線Aに対して傾いている。そうすると、金型ユニット10を成形部品100から外すとき、基本的には、金型ユニット10は、らせん凹構造110の延びる方向(矢印B1参照)に移動させるべきである。なぜならば、例えば、軸線Aに対して傾いているらせん凹構造110にはまっている金型ユニット10を、軸線Aと直交する方向(矢印B2参照)に移動させると、らせん凹構造110にはまっている金型ユニット10の一部は、らせん凹構造110の壁面に押し当てられるからである。この場合には、金型ユニット10の一部は、らせん凹構造110の壁面を押圧して、壁面を変形させながら移動する。そうすると、らせん凹構造110は、変形したり、押圧力が大きい場合には破損する可能性が生じる。
【0025】
上記の現象は、逃げ凸部111によって回避できる。つまり、金型ユニット10を軸線Aと直交する方向(矢印B2)に移動させたときに、らせん凹構造110にダメージを与える程度の押圧力を発生させる金型ユニット10の一部を削除すればよい。このような部分は、金型ユニット10を構成する第1金型10Aと第2金型10Bの合わせ目10S(図1参照)の近傍に位置する。金型ユニット10の一部を削除するということは、成形部品100の側から見れば、金型ユニット10の削られた位置に応じて凸部が形成されることになる。この凸部が、逃げ凸部111である。したがって、逃げ凸部111には、パーティングラインが形成される。なお、図2などでは、パーティングラインの図示は省略している。
【0026】
<内側形状>
図4を参照しながら、成形部品100の内周面の構造を説明する。内周面には、らせん状の凸部が形成されている。この凸部は、上述したようにらせん凸構造120である。らせん凸構造120は、直管部102の内周面に設けられている。このらせん凸構造120は、直管部102を流れる液体の流速を高めるためのものである。らせん凸構造120の流速増加効果については、後に流体数値解析の結果を示しながら述べる。らせん凸構造120の断面形状は、三角形である。つまり、らせん凸構造120の断面形状は、らせん凹構造110の断面形状におおむね対応している。らせん凸構造120の断面形状は、一例として二等辺三角形である。三角形の底辺に相当する部分は、らせん凸構造120と直管部102との境界である。なお、らせん凸構造120と直管部102とは、一体として成形されるものであるから、目視できるような境界線は存在しない。また、三角形の高さ120H(らせん凸構造120の高さ)は、底辺よりも低い。らせん凸構造120の高さ120Hは、一例として、直管部102の内径の20%程度としてもよい。したがって、底辺と斜辺とのなす角度は、鋭角であり、頂角は鈍角である。さらに、一対の斜面122と内周面との間には、角アール123が形成されている。また、らせん凸構造120のピッチ120Pおよび底辺の関係は、おおむねらせん凹構造110のピッチ110Pおよび底辺の関係に対応する。例えば、らせん凸構造120のピッチ120Pは、らせん凹構造110のピッチ110Pと同じであるとしてよい。
【0027】
外周面には、金型ユニット10を良好に取り外すための逃げ凸部111が設けられている。内周面において、逃げ凸部111に対応する位置には、この逃げ凸部111に対応する内周凹部124が形成されてもよい。なお、逃げ凸部111は、金型ユニット10に応じて積極的に形成されるものであるが、内周凹部124は逃げ凸部111の形成に付随して生じ得るものである。したがって、逃げ凸部111の形状や直管部102の肉厚によっては、内周凹部124はわずかしか形成されなかったり、目視できる程度の大きさに形成されないこともあり得る。
【0028】
<金型ユニット>
次に、図5を参照しながら、金型ユニット10について詳細に説明する。金型ユニット10は、主要な部品として、第1金型10Aと第2金型10Bとを有する。第1金型10Aおよび第2金型10Bは、成形部品100のためのキャビティ10Cを形成する。第1金型10Aは、第1接触面10Aaと、第1接触面10Aaから掘り込まれた第1キャビティ部10Acと、を有する。第2金型10Bも同様に、第2接触面10Baと第2キャビティ部10Bcとを有する。第1金型10Aの第1接触面10Aaが第2金型10Bの第2接触面10Baに押し当てられることにより、キャビティ10Cが形成される。
【0029】
図6は、第1金型10Aおよび第2金型10Bにおいて、成形部品100の直管部102を形成する部分を拡大して示す。この部分には、成形部品100の外周面を形成するための内周型面11と、らせん凹構造110およびらせん凸構造120を形成するための凸型部12と、が設けられている。凸型部12は、内周型面11から突出している。凸型部12は、らせん凹構造110およびらせん凸構造120のためのものである。したがって、その断面形状や配置は、らせん凹構造110およびらせん凸構造120に対応する。特に、凸型部12は、らせん凹構造110の表面に直接に接触するから、凸型部12の断面形状や配置は、らせん凹構造110の断面形状や配置と一致する。
【0030】
ブロー成形後に第1金型10Aおよび第2金型10Bを容易に取り外すために、第1金型10Aおよび第2金型10Bの一部が削られていることはすでに説明した。この削られた部分を、凹型部13と呼ぶ。凸型部12は、第1金型10Aの内周面と第2金型10Bの内周面とにわたって、連続的に形成されている。凹型部13は、凸型部12の一部に設けられている。より詳細には、凹型部13は、第1金型10Aの第1接触面10Aaと第2金型10Bの第2接触面10Baとの境界を挟んで設けられている。また、第1接触面10Aaと第2接触面10Baとの境界は、2つ存在するので、凸型部12が一周する間に、凹型部13は2か所にそれぞれ設けられている。
【0031】
凹型部13は、凸型部12の一部が削られていることにより形成されている。本実施形態では、凸型部12の断面は、一例として三角形(二等辺三角形)として図示している。凸型部12の断面は、これに限定されずその他の形状であってもよい。例えば、凸型部12の断面は、四角形といった多角形でもよいし、角部を有しない半円状(曲面状)であってもよい。また、多角形である場合には、その角部に角アール部といった形状が形成されてもよい。そして、凸型部12の頂部の一部が削られることによって、凹型部13が形成されている。つまり、内周型面11を基準にすると、凸型部12の頂部12aが最もキャビティ10Cの内周側に位置している。そして、凹型部13は、内周型面11と凸型部12の頂部12aとの間に位置する。例えば、凹型部13は、凸型部12における頂部12aと斜面122とを削って設けられており、角アール部14には達してない。なお、凹型部13は、角アール部14にまで達し、内周型面11と面一であってもよい。
【0032】
<製造工程>
次に、図7を参照しながら、サクションブロー成形装置1を用いたサクションブロー成形方法について説明する。まず、金型ユニット10を準備する(行程S10)。次に、第1金型10Aと第2金型10Bとを合わせて、キャビティ10Cを形成する(行程S20)。なお、この工程S10と行程S20との間に、追加の工程S15を行ってもよい。追加の行程S15とは、埋め込み部品を配置する工程である。つまり、成形部品100に一部または全体が埋め込まれる成形部品100とは別体の部品である。要するに、工程S15は、いわゆるインサート成形のための作業工程である。次に、パリソン供給部2によってパリソン200を充填する(行程S30)。そして、ブロー部3によってブロー成形する(行程S40)。その後、駆動機構4は、第1金型10Aおよび第2金型10Bを互いに離間させることにより(行程S50)、成形部品100を取り出す。このとき、逃げ凸部111の効果によって、成形部品100を取り出すための第1金型10Aおよび第2金型10Bの移動は、一方向への移動で足りる。
【0033】
<作用効果>
サクションブロー成形装置1では、金型ユニット10を構成する第1金型10Aおよび第2金型10Bが、らせん状に設けられた凸型部12を有する。その結果、外周面にらせん状の溝が形成された成形部品を成形することができる。さらに、凸型部12には、第1金型10Aと第2金型10Bの合わせ目に対応する位置において、凹型部13が設けられている。この凹型部13によれば、凸型部12においてらせん状の溝に引っかかる一部が削られることになる。その結果、第1金型10Aおよび第2金型10Bを一方向に移動させるだけで、成形部品100に有意なダメージを与えることなく、成形部品100を第1金型10Aおよび第2金型10Bから取り外すことができる。つまり、サクションブロー成形装置1は、外表面に凹凸構造を有する成形部品100であっても、成形部品100から金型ユニット10を容易に分離できる。
【0034】
<実施例:らせんつきパイプの流速について>
らせん凸構造の効果を確認するために、実施例1、2、3として流体数値解析を行った。また、比較例1としてらせん凸構造を備えない場合についても流体数値解析を行った。数値流体解析では、実施例1、2、3および比較例1の解析モデルを準備し、それぞれの解析モデルに対して水を流す場合をシミュレートした。そして、供給する水の流量を大流量(60L/min)とした場合の流速と、供給する水の流量を小流量(20L/min)とした場合の流速と、を算出した。また、実施例1、2、3および比較例1の解析モデルにおける主要パラメータは以下のとおりである。
実施例1:内径 9mm、らせん凸構造のピッチ 13.3mm。
実施例2:内径 9mm、らせん凸構造のピッチ 26.6mm。
実施例3:内径 9mm、らせん凸構造のピッチ 39.9mm。
比較例1:内径 9mm、らせん凸構造は備えない。
【0035】
そして、実施例1、2、3および比較例1の解析結果(流速)は、以下のとおりであった。
実施例1:大流量 28m/sec、小流量 9m/sec。
実施例2:大流量 24m/sec、小流量 8m/sec。
実施例3:大流量 19m/sec、小流量 8m/sec。
比較例1:大流量 16m/sec、小流量 5m/sec。
【0036】
上記のとおり、いずれの実施例1、2、3においても、らせん凸構造を備えない比較例1と比較して流速が高まることが確認できた。また、らせん凸構造のピッチが狭いほど、効果が高いことも確認できた。
【符号の説明】
【0037】
1…サクションブロー成形装置(筒状部品成形装置)、2…パリソン供給部、3…ブロー部、10…金型ユニット、10A…第1金型、10Aa…第1接触面、10Ac…第1キャビティ部、10B…第2金型、10Ba…第2接触面、10Bc…第2キャビティ部、10C…キャビティ、10S…合わせ目、11…内周型面、12…凸型部、12a…頂部、13…凹型部、14…角アール部、100…成形部品、102…直管部、110…らせん凹構造、111…逃げ凸部、120…らせん凸構造、124…内周凹部、200…パリソン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7