特許第6986599号(P6986599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986599
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20211213BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20211213BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211213BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20211213BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/12 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   G09F9/30 365
   G09F9/30 349C
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-108563(P2020-108563)
(22)【出願日】2020年6月24日
(62)【分割の表示】特願2018-502461(P2018-502461)の分割
【原出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2020-167173(P2020-167173A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健見
(72)【発明者】
【氏名】吉田 綾子
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−154213(JP,A)
【文献】 特開2013−073821(JP,A)
【文献】 特開2015−152658(JP,A)
【文献】 特表2009−505331(JP,A)
【文献】 特開2013−131470(JP,A)
【文献】 国際公開第03/096758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−33/28
H01L 51/50
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置であって、
透光性の基板と、
前記基板に形成され、それぞれが透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記複数の発光部及び前記透光性領域を覆う絶縁層と、
前記絶縁層を介して、前記基板に形成された構造物及び前記基板の少なくとも一方に固定された封止板と、
を備え、
前記封止板は、前記発光部に向けて配置された第1面と、前記第1面とは逆側の面である第2面と、を有し、
前記発光装置のヘイズ値は2.0%以下であり、
前記封止板の前記第1面のうち前記基板に垂直な方向に前記複数の発光部及び前記透光性領域と重なる領域の表面粗さは、前記封止板の前記第2面のうち前記基板に垂直な方向に前記複数の発光部及び前記透光性領域と重なる領域の表面粗さより大き発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記封止板の前記第1面は、樹脂層を有している発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置において、
前記樹脂層は粒子を含んでいる発光装置。
【請求項4】
透光性の基板と、
前記基板に形成され、それぞれが透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記複数の発光部及び前記透光性領域を覆う絶縁層と、
前記絶縁層を介して、前記基板に形成された構造物及び前記基板の少なくとも一方に固定された第1面と、前記第1面の逆側の面である第2面と、を有する封止部材と、
を備え、
前記封止部材の前記第1面のうち前記基板に垂直な方向に前記複数の発光部及び前記透光性領域と重なる領域は、無機粒子を含む樹脂層を有しており、
前記封止部材の前記第1面のうち前記基板に垂直な方向に前記複数の発光部及び前記透光性領域と重なる領域の表面粗さは、前記封止部材の前記第2面のうち前記基板に垂直な方向に前記複数の発光部及び前記透光性領域と重なる領域の表面粗さより大きい発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置の一つに、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1の技術は、有機EL素子に光透過性(シースルー)を持たせるために、第2電極を基板の一部にのみ設けている。このような構造において、複数の第2電極の間に位置する領域は光を透過させるため、有機EL素子は光透過性を有することができる。特許文献1において、有機EL素子の封止構造は中空封止構造である。
【0004】
また、特許文献2には、光透過性を有する有機EL表示装置において、封止膜で有機EL素子を覆い、かつ、封止板を用いて有機EL素子を封止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−154404号公報
【特許文献2】特開2011−23336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光透過性を有する発光装置において、発光部が発光した光を表面(光出射側の面)からのみ出射させたい場合がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、光透過性を有する発光装置において、裏面側に放射される光の量を少なくすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、発光装置であって、
透光性の基板と、
前記基板に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記複数の発光部と前記透光性領域を覆う封止部材と、
を備え、
前記封止部材は、直接又は絶縁層を介して、前記基板に形成された構造物及び前記基板の少なくとも一方に固定されており、
前記発光装置のヘイズ値は2.0%以下である発光装置である。
【0009】
第2の発明は、透光性の基板と、
前記基板に形成され、それぞれが透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記発光部と前記透光性領域を覆う封止部材と、
を備え、
前記封止部材の第1面は、絶縁層を介して、前記基板に形成された構造物及び前記基板の少なくとも一方に固定されており、
前記封止部材の前記第1面は、無機粒子を含む樹脂層を有しており、
前記第1面の表面粗さは、前記風刺部材の前記第1面とは逆側の面である第2面の表面粗さより大きい発光装置である。
【0010】
第3の発明は、
空間を外部から仕切る透光性の仕切部材と、
前記仕切部材に固定されている発光装置と、
を備え、
前記発光装置は、
透光性の基板と、
前記基板に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記複数の発光部と前記透光性領域を覆う封止部材と、
を有し、
前記封止部材は、直接又は絶縁層を介して、前記基板に形成された構造物及び前記基板の少なくとも一方に固定されており、
前記発光装置のヘイズ値は2.0%以下である発光システムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0012】
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図2の点線αを拡大した図である。
図4】発光装置のヘイズ値を示す表である。
図5】変形例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図6】変形例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図7】変形例3に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図8】変形例4に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図9】変形例5に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図10】実施例1に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図11】実施例2に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図12】実施例3に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図13図12の変形例を示す断面図である。
図14】実施例4に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図15】実施例5に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図16】実施例6に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。なお、発光装置10の構造をわかりやすくするために、図1において封止部材170は図示されていない。本実施形態に係る発光装置10は、透光性の基板100、複数の発光部140、透光性領域(第2領域104及び第3領域106)、及び封止部材170を備えている。複数の発光部140は、いずれも第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。第1電極110は透光性を有しており、第2電極130は光反射性を有している。有機層120は、第1電極110と第2電極130の間に位置している。透光性領域(第2領域104及び第3領域106)は、複数の発光部140の間に位置している。封止部材170は複数の発光部140並びに透光性領域(第2領域104及び第3領域106)を覆っている。封止部材170は、直接又は絶縁層174を介して、基板100に形成された構造物(例えば第2電極130)、及び基板100の少なくとも一方に固定されている。そして、発光装置10のヘイズ値は2.0%以下、好ましくは1.4%以下である。なお、発光装置10のヘイズ値、及び封止部材170の封止板171のヘイズ値は、例えばISO 14782に準拠した方法、又はJIS K7136に準拠した方法により測定される。以下、詳細に説明する。
【0015】
基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透光性を有する基板である。基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。基板100は、例えば矩形などの多角形や円形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されているのが好ましい。この無機バリア膜は、例えばスパッタリング法、CVD法、又はALD法を用いて形成される。なお、基板100を樹脂基板で形成する場合は、樹脂基板に直接後述する第1電極110や有機層120を成膜する方法と、ガラス基板の上に第1電極110以降の層を形成した後に、第1電極110とガラス基板を剥離し、さらに、剥離した積層体を樹脂基板に配置する方法などがある。
【0016】
基板100の第2面100bには、発光部140が形成されている。発光部140は、第1電極110、発光層を含む有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。そして基板100の第1面100aは、光が出射する面となっている。
【0017】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。また、第1電極110は複数の膜を積層した積層構造を有していてもよい。本図において、基板100の上には、複数の長方形状(ストライプ状)の第1電極110が互いに平行に形成されている。このため、後述する第2領域104及び第3領域106には第1電極110は位置していない。
【0018】
有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。なお、有機層120の代わりに他の発光層(例えば無機発光層)を有していてもよい。また、発光層の発光する発光色(又は有機層120から放射される光の色)は、隣の発光部140の発光層の発光色(又は有機層120から放射される光の色)と異なっていてもよいし、同じでも良い。
【0019】
第2電極130は、光反射性を有しており、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。本図に示す例において、発光装置10は複数の線状の第2電極130を有している。第2電極130は、第1電極110のそれぞれに対して設けられており、かつ第1電極110よりも幅が広くなっている。このため、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第1電極110の全体が第2電極130によって重なっており、また覆われている。このような構成にすることで、有機層120の発光層で発光した光の取出し方向を調整することができる。具体的には、発光装置10の第1面100aとは逆側への光の放射を抑えることができる。
【0020】
第1電極110の縁は、絶縁膜150によって覆われている。絶縁膜150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。
【0021】
基板100に垂直な方向から見た場合、複数の発光部140は、互いに平行に延在している。図1に示す例では、複数の発光部140はいずれも長方形状(ストライプ状)に延在している。ただし、発光部140は途中で曲がっていてもよい。
【0022】
そして、基板100に垂直な方向から見た場合において、基板100は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106を有している。第1領域102は第2電極130と重なっている領域である。第2電極130が遮光性を有している場合、第1領域102は、発光装置10または基板100の表面から裏面、及び裏面から表面のそれぞれにおいて光を通さない領域である。第2領域104は、絶縁膜150に重なるが第2電極130には重ならない領域である。第3領域106は、第2電極130及び絶縁膜150と重ならない領域である。そして、第2領域104の幅は第3領域106の幅よりも狭いため、発光装置10は、十分な光透過性を有している。
【0023】
本図に示す例において、有機層120は第2領域104及び第3領域106にも形成されている。言い換えると、複数の発光部140の有機層120は連続的に形成されている。ただし、有機層120は第3領域106に形成されていなくてもよい。また、有機層120は、第2領域104に形成されていなくてもよい。
【0024】
第2領域104の幅は、第3領域106の幅よりも狭い。また第3領域106の幅は第1領域102の幅よりも広くてもよいし、狭くてもよい。第1領域102の幅を1とした場合、第2領域104の幅は例えば0以上(又は0超若しくは0.1以上)0.2以下であり、第3領域106の幅は例えば0.3以上2以下である。また第1領域102の幅は、例えば50μm以上500μm以下であり、第2領域104の幅は例えば0μm以上(又は0μm超)100μm以下であり、第3領域106の幅は例えば15μm以上1000μm以下である。
【0025】
発光装置10は、封止部材170を有している。封止部材170は、封止板171及びバリア膜172を有している。封止板171は、例えば樹脂からなる板状の部材である。封止板171を構成する樹脂は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドである。バリア膜172は、例えば無機膜であり、封止板171の少なくとも一方の面(好ましくは両面)に形成されている。バリア膜172は、例えばSiN又はSiONであり、例えばスパッタリング法、CVD法、又はALD法を用いて形成されている。封止部材170は、例えば絶縁層174(例えば接着層又は粘着層)を用いて基板100の第2面100b及び基板100上の構造物(例えば第2電極130)に固定されている。なお、絶縁層174の少なくとも一部は、第2電極130に接していてもよい。
【0026】
図3は、図2の点線αを拡大した図である。本図に示すように、封止板171のうち絶縁層174側の面の表面粗さは、その面とは逆側の面の表面粗さよりも大きくなっている。言い換えると、封止板171は、表面粗さが相対的に大きい面を絶縁層174に対向させている。
【0027】
図3に示す例において、封止板171は一面に中間層176を有している。中間層176は、例えば絶縁材料を用いて形成されており、粒子177を含有している。粒子177は、例えば絶縁材料を用いて形成されている。粒子177を構成する絶縁材料は易滑材とも呼ばれ、例えばSiOなどの無機材料又は樹脂である。中間層176の厚さは、例えば100nm以上3000nm以下である。中間層176は、封止板171に張り付けられた保護シートを封止板171から剥がしやすくするため、あるいはロール状に巻き取りやすくするために設けられている。中間層176の表面は、粒子177に起因した凹凸を有している。この凹凸の高さは、例えば100nm以下である。このため、封止板171のうち中間層176を有する面(第1面)の表面粗さは、封止板171の逆側の面(第2面)の表面粗さよりも大きい。
【0028】
なお、封止板171のうち絶縁層174とは逆側の面に平滑層を設けてもよい。この場合、封止板171は中間層176を有していなくても、封止板171のうち絶縁層174側の面の表面粗さは、その面とは逆側の面の表面粗さよりも大きくなる。この際、封止板171のうち絶縁層174側の面の表面粗さの差を大きくするために、封止板171の本体を構成する樹脂に粒子を混ぜてもよい。
【0029】
なお、封止部材170のヘイズ値は、例えば1.0未満、例えば0.8以下である。
【0030】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100の第2面100bに、第1電極110を形成する。次いで、絶縁膜150を形成し、さらに、有機層120及び第2電極130を形成する。これにより、発光部140が形成される。
【0031】
また、封止板171を準備する。この際、封止板171の一方の面には中間層176が形成されている。次いで、封止板171にバリア膜172を形成する。封止板171のうち中間層176を有する面にバリア膜172を形成した場合、バリア膜172は中間層176の上に位置する。
【0032】
次いで、絶縁層174を用いて、基板100のうち発光部140が形成されている面に封止部材170を固定する。この際、封止部材170のうち中間層176を有している面を基板100側に向けるのが好ましい。このようにして、発光装置10が形成される。
【0033】
図4は発光装置10のヘイズ値を示す表である。実施形態に係る試料1及び試料2において、封止部材170の封止板171のヘイズ値は0.7である。また、試料1において、封止板171のうち中間層176を有している面は基板100とは逆側を向いており、試料2において、封止板171のうち中間層176を有している面は基板100に対向している。また、比較例に係る発光装置10において、封止板171のヘイズ値は1.0である。
【0034】
試料1において、発光装置10のヘイズ値は2.0であった。そして、発光装置10のうち基板100とは逆側(裏面側)に漏れた光の量は、少なく、視認できたとしても気にならない程度であった。
【0035】
試料2において、発光装置10のヘイズ値は1.3であった。そして、発光装置10のうち発光装置10の裏面側に漏れた光の量は、さらに少なかった。なお、試料2における発光装置10のヘイズ値が試料1における発光装置10のヘイズ値よりも小さくなった理由は、以下の通りと考えられる。上記したように、中間層176の表面は凹凸を有しているため、中間層176の表面で光の反射が生じると、この反射の前後で光の進行方向(基板100に対する角度)が変化する。この変化によって、今まである界面の臨界角未満だった光の一部がその界面における臨界角よりも多くなり、その結果、発光装置10の裏面側に漏れる光の量は増加する。このため、発光装置10の裏面側に漏れる光の量を減らすためには、中間層176の表面における光の反射を抑制する必要がある。これに対して試料2において、中間層176は絶縁層174に接している。絶縁層174の屈折率は1より大きいため、絶縁層174と中間層176の屈折率の差は、中間層176と空気の屈折率の差よりも小さい。このため、試料2において、中間層176の表面における光の反射は、試料1と比較して抑制される。
【0036】
一方、比較例の発光装置10のヘイズ値は2.4であった。発光装置10のうち基板100とは逆側に漏れた光の量は、人が認識できる量であった。図4から、発光装置10のヘイズ値を2.0以下にすると、発光装置10の裏面側に漏れる光の量を十分少なくすることができる。
【0037】
(変形例1)
図5は、変形例1に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、無機膜190を有している点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0038】
無機膜190は発光部140を覆っており、封止膜として機能する。詳細には、無機膜190は、基板100のうち、少なくとも発光部140が形成されている面に形成されており、発光部140を覆っている。そして、絶縁層174は無機膜190に接している。言い換えると、無機膜190は発光部140と絶縁層174の間に位置している。
【0039】
無機膜190は、例えば酸化アルミニウムや酸化チタンなどの無機材料によって形成されている。また、無機膜190の厚さは、好ましくは300nm以下である。また無機膜190の厚さは、例えば50nm以上である。無機膜190は、第2電極130を形成した後、封止部材170を基板100に取り付ける前に形成される。
【0040】
無機膜190は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成されている。無機膜190は、複数の層を積層した多層構造を有していてもよい。この場合、無機膜190は、第1の材料(例えば酸化アルミニウム)からなる第1封止層と、第2の材料(例えば酸化チタン)からなる第2封止層とを繰り返し積層した構造を有していてもよい。最下層は第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、最上層も第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、無機膜190は第1の材料と第2の材料の混在する単層であってもよい。
【0041】
ただし、無機膜190は、他の成膜法、例えばCVD法やスパッタリング法を用いて形成されていてもよい。この場合、無機膜190は、SiO又はSiNなどによって形成されており、その膜厚は、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0042】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10のヘイズ値を2.0以下にすると、発光装置10の裏面側に漏れる光の量を十分少なくすることができる。
【0043】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106のすべてに第1電極110が形成されている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。言い換えると、複数の発光部140それぞれの第1電極110は、互いに繋がっている。
【0044】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、変形例1に係る発光装置10において、第1電極110は本変形例と同様の構成を有していてもよい。
【0045】
(変形例3)
図7は、変形例3に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、隣り合う発光部140の間で有機層120が分断している点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。有機層120は、例えば第3領域106の一部または全部に形成されていない。有機層120は、第2領域104のうち第3領域106側の領域にも形成されていなくてもよい。ただし、有機層120は、第2領域104、及び第3領域106のうち第2領域104側の領域に形成されていてもよい。
【0046】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、変形例1又は変形例2に係る発光装置10において、有機層120は本変形例と同様の構成を有していてもよい。
【0047】
(変形例4)
図8は、変形例4に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第1電極110が導電層180を有している点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。導電層180は第1電極110の補助電極であり、例えばMo合金層、Al合金層、及びMo合金層をこの順に積層した構成を有している。導電層180は、Ag合金を用いて形成されていてもよい。導電層180は、第1電極110のうち絶縁膜150に覆われた部分の上に形成されている。ただし、導電層180は第1電極110と基板100の間(又は第1電極110と光機能層160の間)に形成されていてもよい。
【0048】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、変形例1〜3のいずれかに係る発光装置10において、導電層180が設けられていてもよい。
【0049】
(変形例5)
図9は、変形例5に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本実施形態に係る発光装置10は、発光部140の封止構造として、無機膜190及び樹脂層173を有している点を除いて、変形例1に係る発光装置10と同様の構成である。樹脂層173は、例えば光硬化性のアクリル樹脂であり、ディスペンサーやスリットコーティング、スピンコーティングなどの塗布法を用いて形成されている。
【0050】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0051】
(実施例1)
図10は、実施例1に係る発光システムの構成を示す断面図である。この発光システムは、発光装置10及び仕切部材20を有している。仕切部材20は透光性を有しており、空間を外部から仕切っている。この空間は、例えば人が滞在する空間、又は商品等のものが配置されている空間である。発光装置10は、上記した実施形態及び変形例のいずれかと同様の構成を有している。本図に示す例において、基板100のうち発光部140が設けられている側の面(第2面100b)は、人が滞在する空間を向いている。
【0052】
仕切部材20は、例えば人が移動するための移動体30の窓、又はショーケースの窓であり、ガラス又は透光性の樹脂を用いて形成されている。移動体30は、例えば自動車、列車、又は飛行機である。移動体30が自動車の場合、仕切部材20はフロントガラス、リアガラス、又は座席の横に取り付けられた窓ガラス(例えばドアガラス)である。仕切部材20がリアガラスの場合、複数の発光部140は例えばブレーキランプとして機能する。また、仕切部材20がフロントガラス又はリアガラスの場合、複数の発光部140はターンランプであってもよい。また、仕切部材20は、会議室などの部屋の内部と外部を仕切る窓であってもよい。発光部140の点灯/非点灯により、会議室を利用しているか否かを識別できる発光システムでも良い。仕切部材20は、水平面に対して角度θ(例えば45°<θ<90°)で傾いていてもよいし、水平面に対して垂直(θ=90°)であってもよい。
【0053】
そして、発光装置10の第1面100a、すなわち光取出側の面は、接着層200を介して仕切部材20の内面(第1面22)に固定されている。このため、発光装置10の発光部140から放射された光は、仕切部材20を介して上記した空間(例えば移動体30)の外部に放射される。一方、発光装置10は光透過性を有している。このため、人は、仕切部材20を介して空間の外部や内部を視認することができる。例えば移動体30の内側に位置する人は、仕切部材20を介して移動体30の外部を視認することができる。なお、基板100の第1面100aの全面が接着層200を介して仕切部材20の第1面22に固定されていてもよいし、第1面100aの一部(例えば互いに対向する2辺)が仕切部材20の第1面22に固定されていてもよい。
【0054】
接着層200は発光装置10を仕切部材20に固定している。このような機能を果たす材料であれば、接着層200の材料はとくに限定はされない。また、例えば仕切部材20と基板100がともにガラスで形成された場合など、仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率がほぼ同じ場合は、接着層200には、両者と同じか近い屈折率を有する材料を用いる。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、接着層200の屈折率は仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率の間の数値が好ましい。このようにすると、有機層120が発光した光を、仕切部材20を介して外部へ効率よく取り出せる。また、発光装置10と仕切部材20とは隙間なく接着されるのが好ましい。隙間があると発光装置10からの発光が仕切部材20で反射され、その反射光が発光装置10の第2領域104、第3領域106を介して内部に伝わるからである。
【0055】
発光装置10は、実施形態及び各変形例のいずれかに示した構成を有している。従って、発光装置10の裏面側(図10においては右側)に光が漏れる可能性を低くできる。
【0056】
(実施例2)
図11は、実施例2に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光装置10が仕切部材20のうち移動体30の外側の面(第2面24)に取り付けられている点を除いて、実施例に係る発光システムと同様の構成である。
【0057】
本実施例に係る発光装置10は、上記した実施形態及び各変形例のいずれかと同じ構成を有している。ただし、発光装置10は、仕切部材20とは逆側の面が光取出面となっている。このようにするためには、発光装置10の第2面100bを仕切部材20に対向させればよい。
【0058】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0059】
また、発光装置10からの光は仕切部材20を介さずに直接移動体30の外部に放射される。このため、実施形態と比較して、移動体30の外部にいる人は発光装置10からの光を認識しやすい。また、移動体30の外部すなわち仕切部材の20の第2面24側に発光装置10を取り付けているので、発光装置10の発光が仕切部材20で反射して移動体30の内部へ入ることを抑制できる。
【0060】
(実施例3)
図12は、実施例3に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、固定部材210を用いて発光装置10を仕切部材20に固定している点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0061】
固定部材210は枠状の部材であり、下面が接着層200を用いて仕切部材20に固定されている。固定部材210の上部は固定部材210の内側に向けて折れ曲がっており、この折れ曲がっている部分で発光装置10の縁を押さえている。ただし、固定部材210の形状は本図に示す例に限定されない。
【0062】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0063】
また、図13に示すように、移動体30の外側に向けて凸になる方向に仕切部材20が湾曲している場合がある。このような場合において、平板上の発光装置10を仕切部材20の内面(第1面22)に直接固定することは難しい。しかし、固定部材210を用いると、このような場合でも発光装置10を仕切部材20の第1面22に固定することができる。
【0064】
このような方法で湾曲する仕切部材20と平板上の発光装置10とを固定した場合、仕切部材20と発光装置10との間の隙間に充填剤を充填してもよい。前述の通り、隙間があると発光装置10からの発光が仕切部材20で反射され、その反射光が発光装置10の透光領域である第2領域104及び第3領域106を介して内部に伝わるからである。仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率とが互いにほぼ同じ場合(例えば両者ともにガラスで形成されている場合)は、充填部材の屈折率は、これらの屈折率と同じか近い値であることが好ましい。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、充填剤の屈折率は仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率の間の数値が好ましい。
【0065】
(実施例4)
図14は、実施例4に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光部140、絶縁層174、及び封止部材170が仕切部材20の第1面22又は第2面24に形成されている点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。言い換えると、本実施例において、仕切部材20は実施例1における基板100を兼ねている。
【0066】
なお、本実施例において、仕切部材20のうち発光部140が形成される面に凹部を形成し、この凹部内に発光部140を形成してもよい。例えば、複数の発光部140が形成される領域に一つの凹部を形成し、この凹部の底面に複数の発光部140を形成してもよいし、複数の発光部140のそれぞれに個別に凹部を形成してもよい。この場合、発光部140の封止は透過性の高い構成、例えば膜封止などによって、複数の凹部を一度に封止する構成であってもよい。凹部が発光部140に対して個別、または複数のいずれの場合においても、仕切部材20から発光部140が突出することを抑制できる。なお、仕切部材20の凹部に発光部140を形成する場合において、発光部140の上部は仕切部材20の第1面22(又は第2面24)から突出していてもよいし、発光部140の全体が第1面22(又は第2面24)の下方に位置していてもよい。
【0067】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0068】
(実施例5)
図15は、実施例5に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20に複数の発光装置10が取り付けられている点を除いて、上記した実施形態及び各変形例並びに実施例1〜4のいずれかと同様の構成である。複数の発光装置10は、互いに同一の制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよいし、互いに異なる制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよい。
【0069】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0070】
(実施例6)
図16は、実施例6に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20の構成及び発光装置10の位置を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0071】
本実施例において、仕切部材20は、複数枚の透光部材21(例えばガラス板や樹脂板)を重ねた構成を有している。そして、発光装置10は、隣り合う透光部材21の間に挟まれることにより、仕切部材20に取り付けられている。
【0072】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0073】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16