(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る実施形態の例について以下に説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A〜数値B」という記載の範囲には、数値Aおよび数値Bが含まれる。
【0012】
(分離部材)
本実施形態に係る分離部材は、多孔質支持体と、多孔質支持体上に配置された分離層とを含む。当該分離部材および当該分離層をそれぞれ、以下では、「分離部材(S)」および「分離層(SL)」と称する場合がある。分離層(SL)は、アルミノケイ酸塩を含むゼオライト層を含む。分離層(SL)に含まれるアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素(共に第3周期以降)の合計の原子数Nmは、分離層(SL)に含まれる四配位の原子の原子数Ntの2.0%以下である。すなわち、原子数Nmと原子数Ntとの比であるNm/Ntは、Nm/Nt≦2.0%(0.020)を満たす。以下では、分離層(SL)に含まれる第3周期以降のアルカリ金属元素および第3周期以降のアルカリ土類金属元素をまとめて、「金属元素(M)」と称する場合がある。別の観点では、金属元素(M)は、LiおよびBe以外のアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素である。なお、Nm/Ntは、モル比と考えることも可能である。
【0013】
金属元素(M)の例には、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)、Fr(フランシウム)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、およびRa(ラジウム)が含まれる。これらの金属元素(M)は、分離層(SL)においてカチオンとして存在していると考えられる。
【0014】
分離層(SL)に含まれる四配位の原子の例には、Si、Al、Ti、P、Ga、Ge、Fe、Zr、Zn、V、Sn、Pbなどが含まれる。これらは、ゼオライト中で四配位の原子として存在しているとみなすことができる。そのため、1つの観点では、「分離層(SL)に含まれる四配位の原子の原子数(Nt)」を、「分離層(SL)中のSi、Al、Ti、P、Ga、Ge、Fe、Zr、Zn、V、Sn、およびPbの原子数の合計」と読み替えることが可能である。典型的な一例の分離層(SL)では、分離層(SL)に含まれる四配位の原子のうちシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)以外の原子は微量であるため、シリコンおよびアルミニウム以外の原子を無視することができる。そのため、本開示に係る分離部材(S)の典型的な例では、「分離層(SL)に含まれる四配位の原子」を、「分離層(SL)に含まれるシリコンおよびアルミニウム」と読み替えることが可能である。
【0015】
検討した結果、本願発明者らは、原子数Nmを原子数Ntの2.0%以下とすることによって、分離性能および耐湿性が高いゼオライト層が得られることを新たに見出した。本開示は、この新たな知見に基づくものである。
【0016】
ゼオライトの骨格は主に二酸化シリコン(SiO
2)からなるが、一部のシリコンがアルミニウムに置き換わることによって骨格の一部が負に帯電している。そのため、金属原子のカチオンを細孔内に含むことによって電荷のバランスを取っている。
【0017】
本開示の構成によって耐湿性が高い分離部材が得られる理由は明確ではないが、以下のように考えることが可能である。細孔内に含まれるカチオンの原子半径が大きいと、細孔内の空隙が小さくなるため、ガスの透過性が低下すると考えられる。また、細孔内に含まれるカチオンの量が多いと、カチオンと水蒸気との静電相互作用によって細孔内に水蒸気が吸着されやすくなる。その結果、細孔が閉塞し、細孔内におけるガスの拡散性が大きく低下すると考えられる。本開示の分離部材(S)では、原子数Nmが原子数Ntの2.0%以下である。これによって、本開示の分離部材(S)は、湿度が高いガスに対しても高い分離性能を示すと考えられる。
【0018】
原子数Nmは、原子数Ntの1.8%以下、1.4%以下、または1.0%以下であってもよい。原子数Nmは、原子数Ntの0%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.4%以上、0.6%以上、または0.8%以上であってもよい。これらの上限と下限とは任意に組み合わせることができる。例えば、原子数Nmは、原子数Ntの0〜2.0%の範囲、0〜1.8%の範囲、0〜1.4%の範囲、0〜1.0%の範囲、0.2〜2.0%の範囲、0.4〜2.0%の範囲、0.4〜1.8%の範囲、または0.4〜1.4%の範囲にあってもよい。なお、原子数Nmが原子数Ntの0%であるとは、分離層(SL)が金属元素(M)を実質的に含まないことを意味する。
【0019】
分離層(SL)に含まれるゼオライト層は、典型的には、結晶性を有するアルミノケイ酸塩で構成される。その構造は、微細な細孔を有しており、分子ふるいとして機能しうる。ゼオライト層は、ゼオライト結晶層を含む。典型的なゼオライト層は、実質的に、ゼオライト結晶層で構成される。
【0020】
分離層(SL)に含まれるSiの原子数は、分離層(SL)に含まれるAlの原子数の3倍以上で50倍未満であってもよく、5倍以上で14倍未満であってもよい。すなわち、分離層(SL)に含まれるSiの原子数と、分離層(SL)に含まれるAlの原子数との比である「Si/Al比」は、3以上で50未満であってもよく、5以上で14倍未満であってもよい。すなわち、Si/Al比(別の観点ではSi/Alモル比)は、3以上、5以上、または10以上であってもよい。Si/Al比を3以上(好ましくは5以上)とすることによって、分離層(SL)の耐熱性を高めることができる。Si/Al比は、50未満、30未満、20未満、15未満、14未満であってもよい。Si/Al比を50未満(特に好ましくは14未満)とすることによって、少ない構造規定剤で製造することが可能となる。これらの下限と上限とは任意に組み合わせることができる。
【0021】
上記の原子数Nmと原子数Ntとの比、および、上記のSi/Al比は、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法)を用いて求めることができる。具体的には、実施例に示した方法で求めることができる。
【0022】
分離層(SL)の好ましい一例は、以下の(1)および(2)を満たす。
(1)原子数Nmは、原子数Ntの2.0%以下である。この場合、原子数Nmは、原子数Ntの0%以上、0.2%以上、または0.4%以上であってもよい。
(2)分離層(SL)に含まれるSiの原子数は、分離層(SL)に含まれるAlの原子数の3倍以上で15倍未満(好ましくは5倍以上で14倍未満)である。
【0023】
ゼオライト層を構成するゼオライトの構造は、酸素8員環(酸素8員環細孔)を有する構造であってもよい。酸素8員環を有するゼオライトの構造の例には、DDR型、CHA型、LTA型、AEI型、およびAFX型などの構造が含まれる。酸素8員環を有するゼオライト層を用いることによって、天然ガスやバイオガスからの二酸化炭素の分離に適する分離部材が得られる。酸素8員環を有するゼオライト層は、例えば、実施例に記載の方法によって形成できる。
【0024】
ゼオライト層を構成するゼオライトの構造は、CHA型構造であってもよい。CHA型構造を有するゼオライト層を用いることによって、最大細孔容積が大きく、二酸化炭素の透過性能が高い分離部材が得られる。CHA型構造を有するゼオライト層は、例えば、実施例に記載の方法によって形成できる。なお、「CHA」とは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association、IZA)が定めた、ゼオライトを構造によって分類するためのコードである。
【0025】
分離層(SL)は、多孔質支持体とゼオライト層との間に配置された種結晶をさらに含んでもよい。種結晶を用いることによって、種結晶が配置された多孔質支持体上で優先的にゼオライト生成が促進し、緻密なゼオライト層が得られやすくなる。種結晶は、シリカ種結晶(SiO
2からなる種結晶)を含んでもよい。シリカ種結晶を用いることによって、ゼオライト層中の金属元素(M)の含有量を低くすることが可能であるため、Nm/Nt比を2.0%以下にしやすくなる。当該種結晶は、シリカ種結晶に加えてアルミノケイ酸塩を含むゼオライト種結晶をさらに含んでもよい。しかし、Nm/Nt比を2.0%以下にする観点から、ゼオライト種結晶の質量は、シリカ種結晶の質量以下であることが好ましい。
【0026】
シリカ種結晶の構造は、酸素8員環細孔を有する構造であってもよい。シリカ種結晶の構造は、CHA型構造であってもよい。
【0027】
分離層(SL)は、多孔質支持体側に配置されたシリカ種結晶層と、多孔質支持体側とは反対側の表面に配置された、アルミノケイ酸塩を含むゼオライト結晶層とを含むことが好ましい。この構成によれば、Nm/Nt≦2.0%(0.020)を満たす分離層(SL)を得やすくなる。この構成は、上記の種結晶を用いることによって実現することが可能である。
【0028】
分離層(SL)のゼオライト層がCHA構造を有する場合、当該ゼオライト層のX線回折ピークのピーク強度は以下の条件(1)および/または(2)を満たすことが好ましく、両方を満たしてもよい。これらを満たすことによって、得られる分離層(SL)の配向性がランダム配向となるため、配向性のある構造よりも薄膜になりやすく、それに伴いガス透過性が高くなる。なお、2θは回折角である。X線回折ピークは、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
(1)(2θ=9.6°付近
のピーク
の強度)/(2θ=20.8°
付近のピークの強度)で求められる強度比が、1.5以上で4未満である。当該強度比は、1.5以上で3未満、または1.5以上で2未満であってもよい。
(2)(2θ=17.9°付近
のピーク
の強度)/(2θ=20.8°
付近のピークの強度)で求められる強度比が、0.2以上で0.5未満である。当該強度比は、0.3以上で0.5未満、または0.4以上で0.5未満であってもよい。
【0029】
多孔質支持体に特に限定はなく、ゼオライト層を含む公知の分離部材に用いられている多孔質支持体を用いてもよい。多孔質支持体は、後述するゼオライト層を多孔質支持体上に形成できるものであればよい。多孔質支持体の例には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、シリコンカーバイド、ステンレススチールなどからなる多孔質支持体が含まれる。通常、ゼオライト層を通過した分子は、さらに多孔質支持体の孔を通過する。これによって分子ふるいが行われる。そのため、多孔質支持体は、通常、ゼオライト層の細孔よりも大きな孔を有する。
【0030】
多孔質支持体の形状およびサイズは特に限定されない。多孔質の形状の例には、管状、平板状、ハニカム状、中空糸状、ペレット状などが含まれる。例えば、管状の多孔質支持体の一例は、長さが2cm〜200cmの範囲にあり、内径が0.5cm〜2.0cmの範囲にあり、厚さが0.5mm〜4.0mmの範囲にある。
【0031】
多孔質支持体は、外周面を有する円筒状の形状を有してもよい。その場合、円筒状の多孔質支持体の外周面および/または内周面上に分離層(SL)が配置されていてもよい。例えば、外周面上に分離層(SL)が配置されていてもよい。
【0032】
円筒状の分離部材(S)を用いる分離方法の一例では、分離対象のガスを含む混合ガスを、円筒状の分離部材(S)の外側に流す。混合ガスの一部は、ゼオライト層(SL)および多孔質支持体を通過し、多孔質支持体の中空部分を流れる。このようにして、混合ガスから、分離対象のガスを分離できる。
【0033】
(分離部材の製造方法)
本開示に係る分離部材(SL)の製造方法の一例について以下に説明する。ただし、分離部材(SL)は、以下で説明する製造方法以外の方法で製造してもよい。
【0034】
なお、この明細書では、分離部材の材料の組成に関して、Si元素源とAl元素源とのモル比は、それぞれ、SiO
2とAl
2O
3に換算したモル比として表わす場合がある。分離部材の組成に関しても同様である。
【0035】
(1)多孔質支持体の準備
まず、多孔質支持体(以下では、「支持体」と称する場合がある)を準備する。多孔質支持体には、ゼオライトを用いた分離部材で利用されている多孔質支持体を用いることができる。例えば、上述した多孔質支持体を用いてもよい。
【0036】
多孔質支持体の平均細孔径等は、(a)ゼオライト層を強固に担持することができ、(b)圧損が小さく、(c)高い機械的強度を有する、という条件を満たすように選択されることが好ましい。
【0037】
多孔質支持体は、水洗や、超音波洗浄などの方法によって表面に付着した埃等の不純物を除去することが好ましい。例えば、水による1〜10分の超音波洗浄によって、支持体の表面の洗浄を行ってもよい。多孔質支持体の算術平均粗さRaは、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは1.2μm以上である。多孔質支持体に適度な凸凹があると、流体との接触面積が増加するため、単位面積当たりの処理量の増加が期待できる。一方、Raが大きすぎると、種結晶の担持が不均一になるため、製造時の歩留まり率が低下する。したがって、多孔質支持体の算術平均粗さRaは、2.4μm以下が好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。なお、Ra値は、株式会社東京精密製の表面粗さ測定機(商品名、SURFCOM1900SD)などを用いることで、JIS−‘94規格に基づいて評価できる。具体的には、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.15mm/sとし、測定長さは4.0mm程度あれば十分に評価できる。
【0038】
(2)種結晶の形成
種結晶層としては、形成するゼオライト層の構造と同じ構造を有する種結晶層を形成する。種結晶層は、例えば、後述するゼオライト層で用いられる水熱合成法と同様の方法によって形成してもよい。例えば、有機構造規定剤およびシリカ源として、後述するゼオライト層の形成で用いられるものを用いてもよい。
【0039】
種結晶として、ゼオライトからなる種結晶を用いる場合、フッ化水素酸(以下、「HF」と称する場合がある)を用いること、および、多孔質支持体を用いないこと、を除いて、ゼオライト層の形成で用いられる水熱合成法と同様の操作で種結晶を製造してもよい。
【0040】
CHA型構造を有するシリカ種結晶は、例えば、SiO
2:有機構造規定剤:HF:H
2O=1:0.5〜2.5:0.5〜2.5:2.5〜8.0のモル比で製造することが望ましい。このモル比とすることによって、分離部材の製造に好ましいCHA型構造を有するシリカ種結晶が得やすくなる。場合によってHFは、フッ化アンモニウム(NH
4F)で代用してもよい。
【0041】
アルミノケイ酸の種結晶の原料のモル比は、SiO
2:TMAdaOH(後述する有機構造規定剤):NaOH:H
2O:Al
2O
3=1:0.05〜0.5:0.1〜0.3:2.5〜8.0:5〜100としてもよい。あるいは、有機構造規定剤を低減して、SiO
2:TMAdaOH:NaOH:H
2O:Al
2O
3=1:0.05〜0.2:0.1〜0.3:2.5〜8.0:5〜30としてもよい。
【0042】
種結晶の粒子径は、10nm〜2μmの範囲(好ましくは100nm〜1μmの範囲)にあってもよい。種結晶の粒子径を2μm以下とすることによって、緻密なゼオライト層を形成しやすくなる。種結晶の粒子径が大きすぎる場合には、種結晶を粉砕してもよい。種結晶の粒子径は、例えば、動的光散乱法などによって測定することができる。例えば、得られた種結晶をイオン交換水中に任意の濃度で分散させた分散液を調製し、大塚電子株式会社製の粒子径測定器(商品名、FPAR−1000)で調製した分散液を分析することによって、種結晶の粒子径を測定できる。種結晶の水熱合成に際しては、予め調製しておいた同構造のゼオライト結晶を合成液に添加することが好ましい。それによって、ゼオライトの核発生を促進させることができ、添加量に応じて、種結晶の粒子径を制御しやすくなる。
【0043】
シリカ種結晶の合成では、原料の組成物(原料ゲル)を圧力容器(通常はオートクレーブ)に入れて、水熱合成を行う。その後、得られた反応生成物(シリカ種結晶)をイオン交換水で洗浄した後、減圧乾燥する。原料の組成物(原料ゲル)には、予め調製したおいた種結晶を添加してもよい。それによって、種結晶の結晶化を促進させ、種結晶の粒子径が制御しやすくなる。シリカ種結晶は、国際公開第2017/142056号に記載の方法に従って調製してもよい。
【0044】
(3)種結晶層を形成するステップ
次に、多孔質支持体上に種結晶層を形成する。多孔質支持体上に種結晶層を形成する方法に特に限定はない。例えば、水などの溶媒に種結晶を分散させて分散液を調製し、その分散液に支持体を浸漬することによって種結晶層を支持体に付着させてもよい(ディップ法)。あるいは、水などの溶媒と種結晶とを混合してスラリーを調製し、そのスラリーを支持体の表面に塗布することによって種結晶層を形成してもよい。種結晶の塗布量は、例えば、多孔質支持体の質量の1×10
−4〜1×10
−3%としてもよい。種結晶を塗布した支持体は、支持体と種結晶との接着性を高めるために、450℃〜700℃の範囲の温度で熱処理してもよい。
【0045】
分散液中の種結晶粉末の割合は、分散液の1質量%以下(例えば、0.5質量%以下、0.1質量%以下、または0.05質量%以下)であってもよい。また、分散液中の種結晶粉末の割合は、分散液の0.01質量%以上であってもよい。
【0046】
分離層(SL)に含まれる金属元素(M)の量は、種結晶によっても変動する。そのため、シリカ種結晶とアルミノケイ酸塩種結晶との混合比は、シリカ種結晶:アルミノケイ酸塩種結晶=1:0〜4の範囲(例えば1:0〜1の範囲)にあってもよい。好ましくは、種結晶には、シリカ種結晶のみが用いられる。これによって、シリカ種結晶層を形成できる。
【0047】
(4)ゼオライト層の形成
ゼオライト層は、シリカ種結晶が表面に配置された多孔質支持体上に形成される。具体的には、ゼオライト層を合成するための原料の組成物(ゲル)に多孔質支持体を浸漬した状態で、ゼオライト層を水熱合成する。
【0048】
ゼオライト層を合成するための原料の組成物は、シリカ源、アルミニウム源、金属元素(M)源、有機構造規定剤、HF、および水を含む。
【0049】
シリカ源の例には、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケト酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、トリメチルエトキシシランなどが含まれる。アルミナ源の例には、酸化アルミナ、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウムなどが含まれる。あるいは、シリカ源およびアルミナ源の両方として機能する材料として、ゼオライトを用いてもよい。そのようなゼオライトの例には、FAU型のゼオライトや、MOR型のゼオライトなどが含まれる。
【0050】
金属元素(M)源に特に限定はなく、例えば、金属元素(M)の水酸化物を用いてもよい。具体的には、金属元素(M)源として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどを用いてもよい。
【0051】
有機構造規定剤には、1−アダマンタンアミンから誘導されるN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンを有するものを用いてもよく、例えば、それらの水酸化物が好ましく用いられる。中でも、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(TMAdaOH)が好ましく用いられる。その他の例には、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウム水酸化物などが含まれる。
【0052】
原料組成物には、構造選択性を高めるために、塩基を加えてもよい。塩基の例には、アルカリ水酸化物(NaOH、KOHなど)などが含まれる。これらは、金属元素(M)源としても機能する。
【0053】
原料組成物中の各物質のモル比は、以下を満たすように選択されることが好ましい。
有機構造規定剤/SiO
2=0.05〜0.5、
塩基/SiO
2=0.02〜0.3、
H
2O/SiO
2=100〜300、
SiO
2/Al
2O
3=10〜100
【0054】
アルミノケイ酸塩のゼオライトを製造する場合は、シリカの含有量が極めて多いゼオライト(例えばシリカのみからなるゼオライト)よりも有機構造規定剤の使用量を少なくすることができる。そのため、有機構造規定剤とSiとのモル比は、有機構造規定剤/SiO
2=0.05〜0.2を満たすことが好ましい。さらに、ゼオライト中のアルミニウム成分を多くすることによって有機構造規定剤の必要量を低減できるため、SiとAlとのモル比SiO
2/Al
2O
3は、10以上で30未満であることが好ましい。
【0055】
原料の組成物(ゲル)は、水熱合成を行う前に、熟成させる。熟成のための温度および時間は、例えば、常温(例えば15〜25℃の温度)で1〜24時間である。具体的には、混合した原料を、加熱しながら撹拌して反応させ、生成した水およびエタノールを蒸発によって除去する。その後、残った固体にイオン交換水を加え、加熱しながら撹拌する。なお、エタノールは、シリカ源にアルコキシシラン(TEOSなど)を用いた場合に、アルコキシシランの加水分解・縮合によって生成する。
【0056】
ゼオライト層は、水熱合成によって形成される。具体的には、まず、密閉容器(例えばオートクレーブ)に、上記の原料組成物と、種結晶を塗布した多孔質支持体とを入れる。一例では、原料組成物と多孔質支持体とをポリテトラフルオロエチレン製の容器に入れ、その容器を密閉容器内に配置する。そして、多孔質支持体を原料組成物に浸漬した状態で水熱合成を行う。これによって、種結晶を塗布した多孔質支持体上にゼオライト層を形成する。
【0057】
水熱合成の温度および時間は、140〜180℃の範囲の温度で、6〜48時間の範囲の時間としてもよい。水熱合成の圧力は、加圧してもよいし自生圧であってもよい。水熱合成の圧力は、例えば、上記の温度で水熱合成を行ったときの密閉容器内の自生圧であってもよい。
【0058】
水熱合成の後に、生成したゼオライト層をイオン交換水で洗浄し、乾燥させる。その後、ゼオライト層内に残存している有機構造規定剤を除去するために焼成を行う。焼成の温度は、400〜600℃の範囲にある温度であってもよく、焼成時間は、3〜24時間の範囲にある時間であってもよい。以上の各工程を行うことによって、本開示に係る分離部材が得られる。
【0059】
原子数Nmと原子数Ntとの比である「Nm/Nt」の値、および、分離層(SL)に含まれるSiの原子数と、分離層(SL)に含まれるAlの原子数との比である「Si/Al」の値は、製造条件で制御できる。例えば、それらは、(a)種結晶の種類、(b)種結晶の量および比率、(c)ゼオライト層を合成するための原料組成物(例えば二次成長液)の組成などによって制御できる。金属元素(M)の含有率が低い種結晶を用いたり、金属元素(M)の含有率が低い原料組成物を用いたりすることによって、Nm/Ntの値を低くできる。また、Alに対するSiのモル比が低い原料組成物を用いることによって、分離層(SL)のSi/Alの値を低くすることができる。
【0060】
(分離方法)
本開示に係る分離方法は、本開示に係る分離部材(S)を用いて混合ガスを分離する分離工程を含む。分離工程は、本開示に係る分離部材(S)を用いることを除いて特に限定はなく、公知の分離工程と同様の方法で行ってもよい。
【0061】
分離部材(S)を用いることによって、分離部材(S)を透過するガスを混合ガスから分離することが可能である。上述したように、分離部材(S)は、分離性能および耐湿性が高い。そのため、従来の方法と比較して、湿度が高い混合ガスを高効率で分離できる。
【0062】
分離方法は、以下の条件(1)および/または(2)を満たしてもよい。その場合、分離方法は、以下の条件(3)をさらに満たしてもよい。
(1)混合ガスは二酸化炭素ガスを含む。分離工程において、混合ガスから二酸化炭素ガスを分離する。すなわち、分離部材(S)を透過した二酸化炭素ガスが分離される。
(2)混合ガスは水蒸気を含む。分離工程において、混合ガスから水蒸気を分離する。すなわち、分離部材(S)を透過した水蒸気が分離される。
(3)混合ガスは、炭素数が1以上の炭化水素ガス、水素ガス、窒素ガス、および硫化水素ガスからなる群より選択される少なくとも1つのガスをさらに含む。一例では、これらのうちメタンガス、エタンガス、エチレンガス、プロパンガス、プロピレンガス、水素ガス、窒素ガス、硫化水素等を、分離部材(S)によって、CO
2と共に分離することが可能である。炭素数が1以上の炭化水素ガスの例には、メタンガス、エタンガス、エチレンガス、プロパンガス、プロピレンガスなどが含まれる。
【0063】
混合ガスの露点温度は−70°以上(例えば−40℃以上)であってもよい。本開示の分離方法では、分離部材(S)を用いているため、露点温度が超低温でない混合ガスを分離する場合でも、分離効率の低下や分離部材(S)の劣化を抑制することが可能である。混合ガスの露点は、混合ガスの除湿をすることによって調整できる。
【実施例】
【0064】
本開示の実施形態について、実施例によってさらに詳細に説明する。この実施例では、複数の分離部材を製造して評価した。それらの製造方法および評価方法について以下に説明する。
【0065】
(種結晶の調製例1)
調製例1では、CHA型構造を有するシリカ種結晶を以下の方法で作製した。まず、ポリテトラフルオロエチレン製(以下では、「PTFE」と称する場合がある)の容器にTMAdaOH(「有機構造規定剤」と称する場合がある。)とコロイダルシリカ(シリカ源)とを混合して混合物とし、その混合物にフッ化水素酸を加えた。その後、混合物を撹拌しながら加熱することによって、水を完全に除去して固体を得た。
【0066】
次に、得られた固体をメノウ乳鉢で粉砕し、イオン交換水を加えた。混合ゲルの最終モル比は、SiO
2:TMAdaOH:HF:H
2O=1:1.4:1.4:6.0とした。次に、得られたゲルを、オートクレーブ内のポリテトラフルオロエチレン製の内筒に移し、150℃で24日間にわたって水熱合成を行った。その後、オートクレーブの内部を冷却した。そして、内筒内のゲルをイオン交換水で洗浄、ろ過、減圧乾燥した。このようにして、CHA型構造を有するシリカ種結晶を得た。
【0067】
(種結晶の調製例2)
調製例2では、「Separation and Purification Technology 199(2018),298-303」に記載の方法に沿ってアルミノケイ酸塩含有のCHA型構造を有するゼオライト種結晶を作製した。具体的には、まず、オートクレーブ内のPTFE製内筒にTMAdaOH、水酸化ナトリウム、FAU型ゼオライト(東ソー株式会社製、品番:HSZ−360、HSZ−390)およびイオン交換水を加えた。HSZ−360の化学組成は、SiO
2/Al
2O
3=14(モル比)である。HSZ−390の化学組成は、SiO
2/Al
2O
3=400(モル比)である。ゼオライトは、シリカ源およびアルミニウム源として機能する。材料のモル比は、SiO
2:TMAdaOH:NaOH:H
2O:Al
2O
3=1:0.2:0.2:7.0:20とした。その後、オートクレーブを密閉し、160℃で40時間にわたって水熱合成を行った。その後、オートクレーブ内の内部を冷却した。そして、内筒内のゲルをイオン交換水で洗浄し、100℃で乾燥させた。このようにして、アルミノケイ酸塩を含みCHA型構造を有するゼオライト種結晶を得た。
【0068】
上記の種結晶の製造方法は一つの例である。上記の製造方法において、材料の好ましいモル比は、例えば、SiO
2:TMAdaOH:NaOH:H
2O:Al
2O
3=1:0.05〜0.5:0.1〜0.3:2.5〜8.0:5〜100である。アルミノケイ酸塩含有のゼオライトは有機構造規定剤を調製例1よりも少なくできるため、材料のより好ましいモル比は、例えば、SiO
2:TMAdaOH:NaOH:H
2O:Al
2O
3=1:0.05〜0.2:0.1〜0.3:2.5〜8.0:10〜30である。
【0069】
[分離部材A1]
調製例1で得た種結晶と調製例2で得た種結晶とを1:1の質量比で混合し、得られた混合物にイオン交換水を加えて、種結晶の分散液を作製した。分散液中の種結晶の含有量は、0.05質量%とした。この分散液を用いて、ディップ法によってアルミナからなる多孔質支持体(円筒状)の外面に種結晶を塗布した。円筒状の多孔質支持体には、長さが1m、厚さが2mm、内径が12mm、表面粗さ(上述した算術平均粗さRa)が1.2〜2.0μmのものを用いた。
【0070】
ゼオライト結晶層を形成するための原料組成物(二次成長溶液)を下記の方法で調製した。まず、ビーカに、TMAdaOH、イオン交換水、NaOH、FAU型ゼオライト(HSZ−360、HSZ−390、共に東ソー株式会社製)を加え、3時間にわたって撹拌を行うことによって、目的とする二次成長溶液(L1)を得た。この二次成長溶液(L1)中の各物質のモル比は、TMAdaOH/SiO
2=0.1、NaOH/SiO
2=0.167、H
2O/SiO
2=150、SiO
2/Al
2O
3=50であった。
【0071】
次に、オートクレーブ内のPTFE製の内筒内に、種結晶を付着させた上記多孔質支持体を配置し、その内筒を上記二次成長溶液(L1)で満たした。そして、オートクレーブを密封し、160℃で24時間にわたって水熱合成を行った。この水熱合成によって、多孔質支持体の表面に、アルミノケイ酸塩を含みCHA型構造を有するゼオライト結晶層を形成した。多孔質支持体とゼオライト結晶層との間には、上記の種結晶が配置されている。
【0072】
次に、オートクレーブの内部を冷却した。次に、多孔質支持体を内筒から取り出し、イオン交換水で洗浄した。最後に、有機構造規定剤を除去するために、電気炉において、500℃で10時間にわたって、多孔質支持体を焼成した。このようにして、多孔質支持体の外周面にゼオライト層が形成された分離部材A1を得た。
【0073】
次に、分離部材A1を用いて以下の分離試験1を行い、分離部材A1のCO
2/CH
4ガス分離性能を測定した。
【0074】
[分離試験1]
分離部材A1を用いて、CO
2とCH
4との混合ガスについてのガス透過試験を行った。そして、分離部材A1を透過したガスの透過度を測定した。混合ガスとしては、大気圧下における露点温度が−40℃のガス、および、大気圧下における露点温度が−70°のガスを用いた。−40°の露点温度ガスは、−70°の露点温度ガスを加湿することによって調整した。試験前の前処理として、分離層にCO
2を10L/minで供給しながら、120℃で1時間にわたって乾燥させる処理を行った。試験条件は以下の通りである。
混合ガスの構成比:CO
2/CH
4:50mol%/50mol%
混合ガスの供給圧力:0.2MPaA(パスカル絶対圧)
混合ガスの透過側の圧力:0.1MPaA(パスカル絶対圧)
混合ガスの供給流量:40L/min
試験温度:40℃
混合ガスの大気圧露点温度:−40°、−70°
【0075】
なお、分離試験1では、前処理用のガスとしてCO
2を選択したが、他のガスを用いてもよい。さらに、供給圧力などの他の条件も、上記の条件に限定されず、必要に応じて変更できる。
【0076】
[元素・構造分析1]
次に、分離部材A1を切断し、分離層の断面をFE−SEM(電界放出形走査電子顕微鏡:株式会社日立ハイテク製、型式:S−5500)を用いて断面を撮影することによって層厚を測定した。FE−SEMの画像を
図1に示す。分離部材A1は、多孔質支持体11と分離層12とを含む。分離層12から3箇所(長手方向の両端および中央付近からそれぞれ1箇所ずつ)選択して、その3箇所の分離層12の厚さを測定した。このとき、
図1に示すように、多孔質支持体11の表面から分離層12の表面までの距離を、分離層12の厚さとした。そして、3箇所の厚さの平均値を、分離層12の層厚とした。分離部材A1の分離層12の層厚は約5μmであった。
【0077】
さらに、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:BRUKER製、型式:QUANTAX200、XFlash Detector 5030)によって、分離層中の元素分析を行った。SEM−EDXは、用いる加速電圧に応じて任意の深さ方向の分析が可能である。そのため、FE−SEM分析によって分離層の厚さを測定した後、分離層の厚さ方向において分離層の全体を分析できるように加速電圧を決定し、分離層の厚さ方向の全体にわたって元素分析を行った。分析は、FE−SEMによる測定と同様に計3箇所について行った。このとき、1箇所につき、任意の5点の位置を選択して分析を行った。すなわち、合計で15点の位置で元素分析を行った。そして、その測定結果の平均値を、分離層のSEM−EDX分析の結果とした。
【0078】
加速電圧は、予め求められている加速電圧と検出可能深さとの関係から決定した。用いた装置における加速電圧と検出可能深さとの関係を表す一例のグラフを
図2に示す。分離部材A1の分離層の層厚は約5μmであったため、
図2から、SEM−EDX測定時の加速電圧を20kVとした。ここで、種結晶がゼオライト以外の種結晶(例えばシリコン種結晶)であっても、種結晶の量は微量であるため、無視できる。
【0079】
また、形成されたゼオライト層がCHA型構造であるか否かの確認を、XRD分析(X線回析分析法)によって行った。分析は、株式会社リガク製の装置(型式:Ultima IV)を用いて行った。このとき、FE−SEMによる測定と同様に計3箇所につき、任意の5点の位置を選択して15箇所の分析を行った。全ての測定箇所でCHA型構造由来のX線回折ピーク(回折角2θ=9.6°付近、17.9°付近及び20.8°付近)が得られ、かつ他のゼオライト構造のX線回折ピークは確認されなかった。そのため、分離部材A1のゼオライト層はCHA型構造を有していることが確認できた。また、このとき得られたX線回折ピークのピーク強度比(9.6°/20.8°および17.9°/20.8°)は、9.6°/20.8°の強度比が1.5以上で4未満であり、17.9°/20.8°の強度比が0.2以上で0.5未満であった。
【0080】
XRD分析の条件は以下の通りとした。
X線源:CuKα線(出力:40kV、40mA)
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0-50.0°
測定モード:Continuos Scanning
発散スリット:2/3°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
【0081】
[分離部材A2、A3、C1、C2]
種結晶の比率を表1および表2に示す質量比として、分離部材A1の種結晶の分散液と同様に、種結晶の分散液を作製した。分散液における種結晶の含有量は、0.05質量%とした(以下の分離部材の製造においても同様である)。得られた分散液を種結晶の分散液として用いることを除いて、分離部材A1の作製と同様の条件で分離部材A2、A3、C1、およびC2を作製した。
【0082】
[分離部材A4、A5、A6、A7、C3]
種結晶の比率を表1および表2に示す質量比として、分離部材A1の種結晶の分散液と同様に、種結晶の分散液を作製した。その分散液を用いて分離部材A1の作製時に用いたディップ法と同様のディップ法で多孔質支持体に種結晶を塗布した。その後、以下の組成の二次成長溶液(L2)を用いた以外は分離部材A1の作製と同様の方法で分離部材A4、A5、A6、A7、およびC3を作製した。すなわち、これらの分離部材の製造方法は、種結晶の分散液のみが異なる。二次成長溶液(L2)のモル比は、TMAdaOH/SiO
2=0.1、NaOH/SiO
2=0.167、H
2O/SiO
2=150、SiO
2/Al
2O
3=100とした。
【0083】
[分離部材A8、A9、C4、C5、C6]
種結晶の比率を表1および表2に示す質量比として、分離部材A1の種結晶の分散液と同様に、種結晶の分散液を作製した。その分散液を用いて分離部材A1の作製時に用いたディップ法と同様のディップ法で多孔質支持体に種結晶を塗布した。その後、以下の組成の二次成長溶液(L3)を用いた以外は分離部材A1の作製と同様の方法で分離部材A8、A9、C4、C5、およびC6を作製した。すなわち、これらの分離部材の製造方法は、種結晶の分散液のみが異なる。二次成長溶液(L3)のモル比は、TMAdaOH/SiO
2=0.1、NaOH/SiO
2=0.167、H
2O/SiO
2=150、SiO
2/Al
2O
3=30とした。
【0084】
[分離部材A10、A11、C7、C8、C9]
種結晶の比率を表1および表2に示す質量比として、分離部材A1の種結晶の分散液と同様に、種結晶の分散液を作製した。その分散液を用いて分離部材A1の作製時に用いたディップ法と同様のディップ法で多孔質支持体に種結晶を塗布した。その後、以下の組成の二次成長溶液(L4)を用いた以外は分離部材A1の作製と同様の方法で分離部材A10、A11、C7、C8、C9を作製した。すなわち、これらの分離部材の製造方法は、種結晶の分散液のみが異なる。二次成長溶液(L4)のモル比は、TMAdaOH/SiO
2=0.1、NaOH/SiO
2=0.167、H
2O/SiO
2=150、SiO
2/Al
2O
3=20とした。
【0085】
[分離部材A12、A13、C10、C11、C12]
種結晶の比率を表1および表2に示す質量比として、分離部材A1の種結晶の分散液と同様に、種結晶の分散液を作製した。その分散液を用いて分離部材A1の作製時に用いたディップ法と同様のディップ法で多孔質支持体に種結晶を塗布した。その後、以下の組成の二次成長溶液(L5)を用いた以外は分離部材A1の作製と同様の方法で分離部材A12、A13、C10、C11、およびC12を作製した。すなわち、これらの分離部材の製造方法は、種結晶の分散液のみが異なる。二次成長溶液(L5)のモル比は、TMAdaOH/SiO
2=0.1、NaOH/SiO
2=0.167、H
2O/SiO
2=150、SiO
2/Al
2O
3=10とした。
【0086】
[分離部材C13]
種結晶の比率を表2に示す質量比として、分離部材A1の種結晶の分散液と同様に、種結晶の分散液を作製した。その分散液を用いて分離部材A1の作製時に用いたディップ法と同様のディップ法で多孔質支持体に種結晶を塗布した。その後、以下の組成の二次成長溶液(L6)を用いた以外は分離部材A1の作製と同様の方法で分離部材C13を作製した。二次成長溶液(L6)のモル比は、TMAdaOH/SiO
2=0.1、NaOH/SiO
2=0.167、H
2O/SiO
2=150、SiO
2/Al
2O
3=5とした。
【0087】
[分離部材A14、A15、A16、C14、C15]
まず、分離部材A1、A2、A3、C1、およびC2を作製した。次に、0.01M塩化カリウム水溶液に室温でそれらの分離部材を24時間浸漬することによって、NaとKとのイオン交換を行った(KCl処理)。その後、得られた分離部材を60℃で一晩乾燥させた。このようにして分離部材A14、A15、A16、C14、およびC15を得た。KCl処理前の分離部材と、得られた分離部材との対応関係については表1および表2に示す。
【0088】
[分離部材A17、A18、A19、A20、C16、C17]
まず、分離部材C2、A3、C15、A15、C1、およびC14を作製した。次に、0.01M塩化アンモニウム水溶液に室温でそれらの分離部材を24時間浸漬することによって、アルカリ金属イオン(NaおよびK)とHイオンとのイオン交換を行った(NH
4Cl処理)。その後、得られた分離部材を60℃で一晩乾燥させ、さらに、電気炉で10時間、350℃で焼成した。このようにして、分離部材A17、A18、A19、A20、C16、およびC17を得た。NH
4Cl処理前の分離部材と、得られた分離部材との対応関係については表1および表2に示す。
【0089】
以上のようにして得られた分離部材について、分離部材A1と同様に評価を行った。ただし、分離部材C13については、供給圧力を分離試験1の条件まで高めることができなかったため、評価できなかった。一般的に、分離層中のSi/Alモル比が低すぎるとゼオライト層の耐熱性が低下する場合があり、焼成時に分離層が崩壊した可能性がある。
【0090】
XRD分析の結果、分離部材A1〜A20、C1〜C17のゼオライト層は、CHA構造を有していることが分かった。また、分離部材A1のゼオライト層と同様に、分離部材A2〜A20のゼオライト層について、X線回折ピークのピーク強度比(9.6°/20.8°および17.9°/20.8°)を求めた。その結果、それらの分離部材のゼオライト層において、9.6°/20.8°の強度比は1.5以上で4未満であり、17.9°/20.8°の強度比は0.2以上で0.5未満であった。
【0091】
すべての分離部材において、分離層の厚さは約5μmであった。製造条件の一部を表1および表2に示し、評価結果の一部を表3および表4に示す。表3および表4の「E−n」(nは自然数)は、「10
−n」を意味する。表3および表4の「CO
2透過度維持率」および「CO
2/CH
4透過度比維持率」は、それぞれ以下の式で求められる。
CO
2透過度維持率(%)=100×(露点温度が−40℃の混合ガスについてのCO
2透過度)/(露点温度が−70℃の混合ガスについてのCO
2透過度)
CO
2/CH
4透過度比維持率(%)=100×(露点温度が−40℃の混合ガスについてのCO
2/CH
4透過度比)/(露点温度が−70℃の混合ガスについてのCO
2/CH
4透過度比)
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
この実施例の分離部材は、混合ガスからのCO
2の分離に用いることができる。そのため、CO
2透過度およびCO
2/CH
4透過度比が大きい方が好ましい。
【0097】
表3および表4に示した結果のうち、後処理を行わなかった分離部材の分離性能の維持率を
図3および
図4に示す。
図3は、CO
2/CH
4透過度比維持率を示す。
図4は、CO
2透過度維持率を示す。
図3および
図4では、Si/Al比の大きさに応じてデータを分類して示す。表3および表4のすべての分離部材の分離性能の維持率を
図5および
図6に示す。
図5は、CO
2/CH
4透過度比維持率を示す。
図6は、CO
2透過度維持率を示す。
【0098】
分離部材C1〜C12を用いた場合、水蒸気を多く含む混合ガス(露点温度が−40℃の混合ガス)のCO
2透過度およびCO
2/CH
4透過度比は、水蒸気が少ない混合ガス(露点温度が−70℃の混合ガス)のそれらに比べ、大きく低下した。これは分離層中の金属元素(M)の含有率が多いため(Nm/Ntの値が大きいため)であると考えられる。金属元素(M)によって、分離層に含まれるゼオライト結晶層の細孔容積が減少する。さらに、金属元素(M)のカチオンと水蒸気との静電相互作用による水蒸気吸着によって、細孔閉塞が引き起こされる。その結果、細孔内におけるCO
2の拡散性が大幅に低下したと考えられる
【0099】
また、CH
4はCHA型ゼオライトの細孔よりも大きな粒界を透過するため、水蒸気による透過阻害効果をCO
2よりも受けにくい。なお、緻密なゼオライト結晶層では、ゼオライト結晶層中の欠陥となる粒界が少ないため、分離性能に与える粒界の影響は小さい。表3および表4に示すように、CO
2/CH
4透過度比は、混合ガス中の水蒸気が増えると大きく低下した。これは、水蒸気による透過度の低下が、CH
4よりもCO
2の方が大きいためであると考えられる。
【0100】
分離部材A1〜A13は分離部材C1〜C12と比較して、CO
2透過度維持率および透過度比維持率が格段に高かった。これは、分離層中の金属元素(M)の含有率が分離部材C1〜C12よりも少ないため(Nm/Ntの値が小さいため)、上記の特性低下を抑制できたためであると考えられる。
【0101】
分離部材C14、C15および分離部材A14〜A16はいずれも、Naイオンの一部をKイオンにイオン交換した分離部材である。これらの分離部材を比較すると、金属元素(M)の含有率が低い分離部材A14〜A16の方が、水蒸気が多い混合ガスに対する分離性能が高かった。
【0102】
分離部材C16、C17および分離部材A17〜A20はいずれも、Naイオンの一部をHイオンにイオン交換した分離部材である。これらを比較すると、金属元素(M)の含有率が低い分離部材A17〜A20の方が、水蒸気が多い混合ガスに対する分離性能が高かった。
【0103】
以上の結果から、分離試験1のような水蒸気を含む混合ガスのCO
2/CH
4ガス分離試験において、Nm/Ntの値は、好ましくは2.0%以下(0.020以下)であり、より好ましくは1.8%以下であり、さらに好ましくは1.4%以下(例えば1.0%以下)であり、特に好ましくは0.6%以下(例えば0.4%以下)である。
【0104】
方法は限定されないが、Nm/Ntの値が2.0%を超えている場合は、分離部材A17〜A20のように、金属元素(M)のカチオンをHイオンにイオン交換するなどの後処理を行うことによって、Nm/Ntの値を2.0以下とすることが可能である。ただし、
図5および
図6に示すように、Nm/Ntの値が同じである場合には、一般的に、イオン交換を行わない方が特性が高い傾向がある。分離層中の金属元素(M)としては、アルカリ土類金属またはアルカリ金属が好ましく、NaおよびKが特に好ましい。
【0105】
分離層におけるSi/Alモル比は特に限定されないが、低すぎると分離層の耐熱性が脆弱になる傾向がある。そのため、Si/Alモル比は通常3以上であり、好ましくは5以上である。また、Si/Alモル比が非常に高い、または無限大である場合は、分離部材の製造時に構造規定剤が多量に必要となる。そのため、Si/Alモル比は、好ましくは50未満であり、より好ましくは30未満(例えば20未満)であり、特に好ましくは14未満である。これらの下限と上限とは任意に組み合わせることができる。
【解決手段】開示される分離部材A1は、多孔質支持体11と、多孔質支持体11上に配置された分離層12とを含む。分離層12は、アルミノケイ酸塩を含むゼオライト層を含む。分離層12に含まれる第3周期以降のアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の合計の原子数Nmは、分離層12に含まれる四配位の原子の原子数Ntの2.0%以下である。