(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査する工程において、前記非偏光部の形状精度、輪郭粗さおよび輪郭の急峻度から選択される少なくとも1つに関して、所定の基準を満たさない非偏光部を形成不良として検出する、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.偏光子
図1は、本発明の検査対象である偏光子の1つの具体例を示す平面図である。偏光子1は、二色性物質を含む樹脂フィルムから構成される。偏光子1には、小円形の非偏光部2が偏光子1の上端部中央部に形成されている。
【0010】
非偏光部は、任意の適切な形態であり得る。例えば、非偏光部は、部分的に脱色された脱色部である。脱色部は、例えば、レーザー照射または化学処理により形成される。別の具体例としては、非偏光部は貫通穴である。貫通穴は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、トムソン刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)または所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成される。
【0011】
図示例では、小円形の非偏光部2が偏光子1の上端部中央部に形成されているが、非偏光部の数、配置、形状、サイズ等は、適宜設計され得る。例えば、搭載される画像表示装置のカメラ部の位置、形状、サイズ等に応じて設計される。具体的には、画像表示装置のカメラ以外の部分(例えば、画像表示部)に非偏光部が対応しないように設計される。
【0012】
非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、例えば、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光子を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0013】
偏光子(非偏光部を除く他の部位)は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子(非偏光部を除く他の部位)の単体透過率は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子の偏光度(非偏光部を除く)は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0014】
偏光子の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。一方で、厚みは、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。
【0015】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくはヨウ素が用いられる。
【0016】
上記樹脂フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂が用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。
【0017】
B.検査方法
本発明の検査方法は、非偏光部を有する偏光子の非偏光部を含む範囲に光を照射し、偏光子の透過光像を撮像する工程を含む。撮像工程においては、代表的には、上記非偏光部を有する偏光子の一方の側から光を照射し、他方の側から偏光子を透過した光を撮像する。
【0018】
上記透過光像における非偏光部と他の部位とのコントラスト比(非偏光部/他の部位)は1.5以上であり、好ましくは1.8以上で、さらに好ましくは2.0以上である。このようなコントラスト比で撮像することにより、高い精度で非偏光部(例えば、非偏光部の形状および/または特性)を検査することが可能となる。
【0019】
図2は、本発明の検査方法の1つの実施形態を示す概略図である。図示するように、検査装置100は、光源部110と撮像部120と図示しないが撮像部120によって撮像した画像を処理するための画像処理部とを備える。光源部110は、偏光子1(実用的には、偏光板とされている)の非偏光部2を含む範囲に光が照射されるように配置されている。撮像部120は、偏光子1に対して光源部110が配置されている側と反対側に配置され、偏光子1の透過光像を撮像する。図示しないが、上記偏光板の構成に応じて、光源部110と撮像部120との間に偏光フィルターを配置させてもよい。
【0020】
上記光源部は、任意の適切な光源を用いて構成され得る。光源は、白色光源であってもよく、単色光源であってもよい。光源は、任意の適切な形状とすることができ、例えば、面光源、線光源、点光源またはリング型光源であり得る。光源の具体例としては、蛍光灯、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED等が挙げられる。
【0021】
偏光子に対する光の照射角度(偏光子主面に対する光の照射角度)は、好ましくは89°〜91°、さらに好ましくは89.5°〜90.5°である。このような照射角度によれば、偏光子の厚み方向の輪郭の粗さについて高精度に検査し得る。
【0022】
上記撮像部は、代表的には、レンズおよびイメージセンサを用いて構成されたカメラである。イメージセンサとしては、CCD型イメージセンサを用いてもよくCMOS型イメージセンサを用いてもよい。
【0023】
イメージセンサの画素数は、好ましくは2000dpi以上、さらに好ましくは4000dpi〜6000dpiである。このような画素数を有するイメージセンサを用いることにより、高画質な像を撮像することができるので、より高精度に検査し得る。
【0024】
上述のように、撮像に際して偏光フィルターを用いる場合、偏光フィルターの吸収軸方向が検査対象の偏光子の吸収軸方向と直交するように配置させる。ここで、「直交」とは、実質的に直交である場合も包含する。ここで、「実質的に直交」とは、90°±3.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°、さらに好ましくは90°±0.5°である。図示例において、偏光フィルターを偏光子1と撮像部120との間に配置させた場合、偏光子1の非偏光部2以外の部分を透過した光(直線偏光)が偏光フィルターに吸収される一方で、非偏光部2を透過した光の一部は偏光フィルターを透過し得ることから、偏光フィルターを透過した光を実質的に非偏光部の像として撮像することができる。なお、偏光フィルターは、光源部と検査対象となる偏光子との間に配置させてもよい。詳細は後述するが、検査対象となる偏光子(偏光板)の形態によって、偏光フィルターの使用の有無は決定され得る。
【0025】
撮像工程で得られた画像に基づいて偏光子の品質(例えば、非偏光部の形状および/または特性)を検査する。具体的には、上記画像処理部で撮像部から電気信号として送られた画像データの解析を行い、偏光子の品質を検査する。検査項目の具体例としては、非偏光部の形状精度(円形の場合は、真円度等)、輪郭の粗さ、輪郭の急峻度、透過率等が挙げられる。画像処理部は、好ましくは、所定の基準を満たさない非偏光部を形成不良として検出する。
【0026】
上記画像データの解析は、例えば、輝度情報に基づいて行われ得る。具体的には、得られる画像データ(透過光像データ)においては、非偏光部の輝度が相対的に高くなり、その他の部分の輝度が低くなることから、得られた画像データ中のコントラスト比に基づいて非偏光部と特定することができる。また、特定された非偏光部の輪郭を180等分して中心から各輪郭部までの距離を求め、得られた180個の距離データ中の最大値から最小値を引いた値を真円度の評価基準とすることができる。例えば、得られた値が所定の値以下である場合に、該非偏光部の真円度を良と評価することができる。さらにまた、非偏光部の輪郭を180等分して基準となる近似楕円を求め、180等分した各領域において近似楕円から実際の輪郭までの距離の最大値を輪郭の粗さの評価基準とすることができる。例えば、得られた最大値が所定の値以下である場合に、該非偏光部の輪郭の粗さを良と評価することができる。さらにまた、非偏光部およびその他の部分(非偏光部の周辺部分)の平均輝度を求め、非偏光部の平均輝度を0%、その他の部分の平均輝度を100%とし、10%と20%の輝度で黒と白に2値化した際の非偏光部中心から180等分した各輪郭までの距離の最大値を輪郭の急峻度の評価基準とすることができる。例えば、得られた最大値が所定の値以下である場合に、該非偏光部の輪郭の急峻度を良と評価することができる。
【0027】
非偏光部の透過率は、例えば、非偏光部の平均輝度値、最大輝度値および最小輝度値を求め、最大輝度値を平均輝度値で割った数値または最小輝度値を平均輝度値で割った数値に基づいて評価することができる。具体的には、非偏光部に偏光機能が残存しており、透過率が低い場合に、得られる値も低くなる。
【0028】
C.非偏光部を有する偏光子の製造方法
本発明の非偏光部を有する偏光子の製造方法は、偏光子に非偏光部を形成すること、および、上記検査方法により非偏光部を検査することを含む。
【0029】
C−1.非偏光部の形成
偏光子は、代表的には、上記樹脂フィルムに膨潤処理、延伸処理、上記二色性物質による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理を施すことにより得られる。各種処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。上記非偏光部の形成は、偏光子の作製工程の途中でも行い得る。
【0030】
好ましくは、非偏光部は、脱色部である。このような構成によれば、機械的に(例えば、トムソン刃打抜き、プロッター、ウォータージェット等を用いて機械的に抜き落とす方法により)、貫通穴が形成されている場合に比べて、クラック、デラミ(層間剥離)、糊はみ出し等の品質上の問題が回避される。脱色部は、好ましくは、偏光子(二色性物質を含む樹脂フィルム)の所望の位置に塩基性溶液を接触させることにより形成される。このような方法により形成される非偏光部は、他の部位(非接触部)よりも二色性物質の含有量が低い低濃度部とされ得る。低濃度部は二色性物質自体の含有量が低いので、レーザー光等により二色性物質を分解して脱色部が形成されている場合に比べて、非偏光部の透明性が良好に維持される。
【0031】
上記低濃度部の二色性物質の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。低濃度部の二色性物質の含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。上記他の部位における二色性物質の含有量と低濃度部における二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
【0032】
上記塩基性溶液に含まれる塩基性化合物としては、任意の適切な化合物が用いられ得る。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が用いられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが用いられる。二色性物質を効率良くイオン化することができ、より簡便に脱色部を形成することができる。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
塩基性溶液の溶媒としては、水、アルコールが好ましく用いられる。塩基性溶液の濃度は、例えば0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、さらに好ましくは0.1N〜2.5Nである。塩基性溶液の液温は、例えば20℃〜50℃である。塩基性溶液の接触時間は、偏光子の厚み、塩基性溶液に含まれる塩基性化合物の種類や濃度に応じて設定され得る。接触時間は、例えば5秒〜30分であり、好ましくは5秒〜5分である。
【0034】
塩基性溶液の接触方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、偏光子に対し、塩基性溶液を滴下、塗工、スプレーする方法、偏光子を塩基性溶液に浸漬する方法が挙げられる。塩基性溶液の接触に際し、所望の部位以外に塩基性溶液が接触しないように、任意の適切な保護材で偏光子を保護してもよい。このような保護材としては、例えば、保護フィルム、表面保護フィルムが用いられる。保護フィルムは、偏光子の保護フィルムとしてそのまま利用され得るものである。表面保護フィルムは、偏光子の製造時に一時的に用いられるものである。表面保護フィルムは、任意の適切なタイミングで偏光子から取り除かれるため、代表的には、偏光子に粘着剤層を介して貼り合わされる。保護材の別の具体例としては、フォトレジスト等が挙げられる。また、上記偏光子の作製工程で用いられる基材も保護材として用い得る。
【0035】
好ましくは、塩基性溶液の接触に際し、偏光子表面は、その少なくとも一部が露出するように表面保護フィルムで被覆されている。図示例の偏光子は、例えば、樹脂フィルムに小円形の貫通孔が形成された表面保護フィルムを貼り合わせ、これに塩基性溶液を接触させることで作製される。その際、偏光子のもう片側(貫通孔が形成された表面保護フィルムが配置されていない側)も保護されていることが好ましい。
【0036】
1つの実施形態においては、長尺状の偏光子(樹脂フィルム)に長尺状の表面保護フィルムを積層して得られた偏光フィルム積層体を準備し、これに塩基性溶液を接触させる。長尺状の表面保護フィルムには、例えば、その長手方向および/または幅方向に所定の間隔で貫通孔が形成されている。ここで、「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。
【0037】
上記長尺状の偏光子において吸収軸は、目的に応じて任意の適切な方向に設定され得る。吸収軸の方向は、例えば、長尺方向であってもよく幅方向であってもよい。長尺方向に吸収軸を有する偏光子は、例えば、製造効率に優れるという利点がある。幅方向に吸収軸を有する偏光子は、例えば、長尺方向に遅相軸を有する位相差フィルムとロールトゥロールで積層できるという利点がある。1つの実施形態においては、吸収軸は長尺方向または幅方向に実質的に平行であり、かつ、偏光子の幅方向両端は長尺方向に平行にスリット加工されている。このような構成によれば、偏光子の端辺を基準に裁断でき、所望の位置に非偏光部を有し、かつ適切な方向に吸収軸を有する複数の偏光子を、容易に製造することができる。なお、偏光子の吸収軸は、上記延伸処理における延伸方向に対応し得る。
【0038】
図3は、長尺状の表面保護フィルムの具体例を示す概略平面図である。表面保護フィルム20の幅は、積層する長尺状の偏光子と同一または偏光子よりも幅広とされている。表面保護フィルム20には、長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔に小円形の貫通孔21,21…が形成されている。貫通孔の配置パターンは、所望の偏光子に対応して決定され得る。例えば、貫通孔は、得られる偏光子を所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断(例えば、長尺方向および/または幅方向への切断、打ち抜き)した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応するように配置される。また、貫通孔の形状は、所望の非偏光部の形状に対応し得る。
【0039】
長尺状の偏光子と長尺状の保護材(図示例では、貫通孔が形成された表面保護フィルム)との積層は、
図4に示すように、ロールトゥロールにより行われるのが好ましい。本明細書において、「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて積層することをいう。
【0040】
図5は、本発明の1つの実施形態における偏光フィルム積層体の部分断面図である。偏光フィルム積層体10は、偏光子1と偏光子1の一方面側(図示例では上面側)に配置された第1の表面保護フィルム20と、偏光子1の他方面側(図示例では下面側)に配置された保護フィルム30および第2の表面保護フィルム40とを備える。偏光フィルム積層体10は、その一方面側(図示例では上面側)に偏光子1が露出した露出部11,11…を有する。露出部11は、第1の表面保護フィルム20に貫通孔21を形成することにより設けられている。
【0041】
上記表面保護フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。弾性率が十分に高く、例えば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいからである。表面保護フィルムの厚みは、代表的には20μm〜250μmであり、好ましくは30μm〜150μmである。
【0042】
上述のとおり、表面保護フィルムは一時的に偏光子を保護するものであることから、その形成樹脂の配向性にバラツキがあっても実用上問題ない。例えば、表面保護フィルムは、波長590nmにおける面内位相差が500nm〜3000nmの範囲を有し得る。面内位相差Reは、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。ここで、「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率であり、「d」はフィルムの厚み(nm)である。また、表面保護フィルムは、配向角が−40°〜+40°の範囲を有し得る。配向角は、表面保護フィルムを偏光子に積層させたときに、偏光子の吸収軸に対して表面保護フィルムの遅相軸がなす角度である。
【0043】
第1の表面保護フィルムは、
図3に示すように所定のパターンで配置された貫通孔を有する。貫通孔の位置は、非偏光部が形成される位置に対応する。貫通孔の形状は、所望の非偏光部の形状に対応する。貫通孔は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、トムソン刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)またはフィルムの所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成される。
【0044】
表面保護フィルムは、例えば、塩基性溶液の接触後、任意の適切なタイミングで剥離除去される。
【0045】
上記保護フィルムの形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜100μmである。
【0046】
保護フィルムの偏光子を積層させない面には、表面処理層として、ハードコート層や反射防止処理、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理が施されていてもよい。保護フィルムは、代表的には、接着剤層を介して偏光子に貼り合わされる。
【0047】
1つの実施形態においては、上記塩基性溶液は、偏光子と接触後、任意の適切な手段により偏光子から除去される。このような実施形態によれば、例えば、偏光子の使用に伴う非偏光部の透過率の低下をより確実に防止することができる。塩基性溶液の除去方法の具体例としては、洗浄、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。好ましくは、塩基性溶液は洗浄される。洗浄に用いる洗浄液としては、例えば、水(純水)、メタノール、エタノール等のアルコール、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、水が用いられる。洗浄回数は特に限定されず、複数回行ってもよい。塩基性溶液を乾燥により除去する場合、その乾燥温度は、例えば20℃〜100℃である。
【0048】
好ましくは、上記塩基性溶液との接触後、塩基性溶液を接触させた接触部において、樹脂フィルムに含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させる。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより、寸法安定性に優れた非偏光部を得ることができる。具体的には、加湿環境下においても、塩基性溶液との接触により形成された非偏光部の形状をそのまま維持することができる。
【0049】
塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が残存し得る。また、塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩(例えば、ホウ酸塩)が生成し得る。これらは水酸化物イオンを生成し得、生成した水酸化物イオンは、接触部周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、非偏光領域を広げ得る。したがって、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩を低減させることにより、経時的に非偏光領域が広がるのを抑制して、所望の非偏光部形状が維持され得ると考えられる。
【0050】
上記非偏光部は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が3.6重量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量は、例えば、蛍光X線分析により測定したX線強度から予め標準試料を用いて作成した検量線により求めることができる。
【0051】
上記低減させる方法としては、好ましくは、塩基性溶液との接触部に酸性溶液を接触させる方法が用いられる。このような方法によれば、酸性溶液にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を効率的に移行させて、その含有量を低減させることができる。酸性溶液との接触は、上記塩基性溶液の除去後に行ってもよいし、塩基性溶液を除去することなく行ってもよい。
【0052】
上記酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸性化合物は、これらの中でも、好ましくは無機酸であり、さらに好ましくは塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
酸性溶液の溶媒としては、水、アルコールが好ましく用いられる。酸性溶液の濃度は、例えば0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、さらに好ましくは0.1N〜2.5Nである。酸性溶液の液温は、例えば20℃〜50℃である。酸性溶液の接触時間は、例えば5秒〜5分である。なお、酸性溶液の接触方法は、上記塩基性溶液の接触方法と同様の方法が採用され得る。また、酸性溶液は、偏光子から除去され得る。酸性溶液の除去方法は、上記塩基性溶液の除去方法と同様の方法が採用され得る。
【0054】
C−2.非偏光部の検査
非偏光部の形成後、上記検査方法により非偏光部の検査を行う。検査を行う際、偏光子に上記表面保護フィルムが積層された状態であってもよいし、表面保護フィルムが剥離された状態であってもよい。また、検査を行う際、偏光子は少なくとも片側に保護フィルムが貼り合わされて偏光板の状態であることが好ましい。
【0055】
1つの実施形態においては、非偏光部の形成後、連続して、非偏光部の検査を行う。偏光子が長尺状である場合には、非偏光部の形成後、一旦、偏光子を巻き取ることなく、非偏光部の検査を行う。例えば、
図5に示すような偏光フィルム積層体に対して非偏光部を形成した後、そのままの状態で、非偏光部の検査工程に供する。このように、非偏光部の形成後に連続して検査を行うことにより(具体的には、形成された非偏光部のサイズが所定のサイズより大きいか小さいかを判別することにより)、例えば、上記塩基性溶液との接触工程における不具合(例えば、表面保護フィルムの貫通孔の状態、塩基性溶液の浸漬状態)を早期に検知することができる。
【0056】
検査対象となる偏光子に表面保護フィルムが積層されている場合(特に、撮像側に表面保護フィルムが積層されている場合)は、上記偏光フィルター等の他の光学部材を介さずに撮像することが好ましい。上述のとおり、表面保護フィルムはその形成樹脂の配向性にバラツキがある場合があり、偏光フィルターを介することで逆に上記コントラスト比のバラツキが大きくなり得る。したがって、偏光フィルターを介さずに撮像することで、上記コントラスト比を安定して満足させることができる。
【0057】
検査後、偏光子は、実用的には偏光板として提供され得る。1つの実施形態においては、偏光板は、他の部材に貼り合わせるための粘着剤層を有する。好ましくは、この粘着剤層表面にはセパレーターが仮着されて、実際の使用まで粘着剤層を保護するとともに、
図6に示すようにロール形成を可能としている。