(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
剥離角度180°、剥離速度10m/分の条件で、前記フィルム基材から前記保護フィルムを剥離する際の剥離力が、1.5N/50mm以下である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
前記第二搬送工程において、前記フィルム基材の第一主面の幅方向の両端部に、少なくとも1回はフィルム押さえ機構が接触し、かつ、前記フィルム押さえ機構は、前記フィルム基材の第一主面の幅方向の中央部には接触しない、請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[工程の概要]
本発明では、長尺のフィルム基材の一主面上に溶液を塗布してコーティング層を形成する。
図1は、フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング層3が設けられた光学フィルム9の断面図である。
図2は、フィルム基材1の第一主面1A上に保護フィルム2が剥離可能に貼着された積層体8の断面図である。
【0014】
図3は、フィルム基材1上にコーティング層3を形成する製膜装置および製膜工程の概要を示す概念図である。
図3では、巻き出しロール81に、積層体8の長尺フィルムがロール状に巻回された巻回体80が巻き掛けられている。巻回体80から巻き出された積層体8は、搬送ロール83,85,87に沿って形成される搬送経路の下流側に連続的に移動して、剥離部10に搬送される(第一搬送工程)。
【0015】
剥離部10で、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する(剥離工程)。保護フィルム2を剥離することにより、フィルム基材1の第一主面1Aが露出する。保護フィルムを剥離後のフィルム基材1は、剥離部10から塗布部30へと搬送される(第二搬送工程)。塗布部30では、フィルム基材1の第一主面1A上に、コーティング液が塗布される(塗布工程)。
【0016】
フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング層3が形成された積層体9(光学フィルム)を、巻取りロール91で巻き取ることにより、長尺の光学フィルムの巻回体90が得られる。塗布部30と巻取りロール91との間には、加熱部50で加熱が行われてもよい。コーティング液が光重合性液晶化合物等の光重合性の成分を含む場合は、硬化部60で光硬化を実施してもよい。
【0017】
ロール・トゥー・ロールでフィルム基材を搬送しながら溶液を塗布する場合は、搬送ロールとの接触および擦れに起因して、フィルム基材に、長手方向に沿った傷が発生しやすい。フィルム基材に傷が存在すると、その上にコーティング層を形成した際に、フィルム基材の傷がコーティング層に転写して、光学的な欠点の原因となり得る。また、フィルム基材上に液晶組成物を塗布した場合は、液晶分子が傷の延在方向に沿って配向しやすく、配向不良欠陥の原因となり得る。
【0018】
本発明の実施形態では、フィルム基材1の第一主面1Aに、保護フィルム2が剥離可能に貼着されている。巻き出しロール81から剥離部10に到達するまでの間(第一搬送工程)、フィルム基材1の第一主面1Aに保護フィルム2が貼着されているため、第一搬送工程では、フィルム基材1の第一主面1Aは、搬送ロール87と直接接することがない。フィルム基材1から保護フィルム2を剥離した直後に、フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング液が塗布されるため、搬送ロール87との接触に起因するフィルム基材の第一主面への傷の発生を防止し、コーティング層3への傷の転写や液晶分子の配向不良を抑制できる。
【0019】
本実施形態では、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離した直後にコーティングを実施するため、剥離部10と塗布部30が近接して配置されており、第二搬送工程におけるフィルム基材の搬送経路が短い。そのため、フィルム基材と保護フィルムとの貼り合わせ状態や、剥離部10でフィルム基材から保護フィルムを剥離する際の静電気等の物理的な作用が、塗布部30でのコーティング液の塗布に影響する場合がある。具体的には、幅方向に延在するスジ状に、コーティング層の厚みが小さい領域が形成され、光学フィルムを画像表示装置に適用した際に、スジ状のムラとなって視認される場合がある。
【0020】
本発明の一実施形態では、保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗が1×10
11Ω/sq以下である。保護フィルム2の表面抵抗が小さいことにより、上述の幅方向に延在するスジ状のムラの発生が抑制される。
【0021】
保護フィルムを剥離した直後のフィルム基材にコーティング液を塗布した際に、コーティング層にスジ状のムラが生じた試料について解析を行ったところ、コーティング層を剥離後のフィルム基材には厚みムラや物理的な変形は認められなかった。そのため、フィルム基材上に形成されたコーティング層におけるスジ状の厚みムラは、フィルム基材の表面にコーティング液を塗布する際のハジキに起因すると考えられる。
【0022】
保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗が小さいことにより、フィルム基材1と保護フィルム2との貼り合わせ時の内部帯電が低減される。そのため、保護フィルム2を剥離後も、フィルム基材1の帯電が少なく、フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング液を塗布する際のハジキが抑制され、コーティング不良に起因するスジ状の厚みムラの発生を防止できると考えられる。
【0023】
保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗が小さいほど、フィルム基材1上に形成されるコーティング層3へのスジ状のムラの発生が抑制される傾向がある。保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗は、1×10
10Ω/sq以下が好ましく、5×10
9Ω/sq以下がより好ましく、1×10
9Ω/sq以下がさらに好ましく、5×10
8Ω/sq以下であってもよい。表面抵抗は、一般には1×10
3Ω/sq以上であり、1×10
4Ω/sq以上、または1×10
5Ω/sq以上であってもよい。
【0024】
フィルム基材1の第一主面1Aから保護フィルム2を剥離する際の剥離力が、表面性に影響を与える場合がある。フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する際の剥離力は、1.5N/50mm以下が好ましく、1.0N/50mm以下がより好ましく、0.8N/50mm以下がさらに好ましい。剥離力は、剥離角度180°、引張速度10m/分の条件で、フィルム基材から保護フィルムを剥離する剥離試験での測定値である。
【0025】
コーティング不良低減の観点からは、剥離力は小さいほど好ましい。また、フィルム基材から保護フィルムを剥離する際のジッピングを抑制する観点からも、剥離力は小さい方が好ましい。一方、剥離力が過度に小さいと、フィルム基材と保護フィルムとの積層体をロール搬送する際に、意図せず、フィルム基材から保護フィルムが剥離して、搬送不良の原因となる場合がある。そのため、フィルム基材から保護フィルムを剥離する際の剥離力は、0.05N/50mm以上が好ましく、0.1N/50mm以上がより好ましく、0.15N/50mm以上がさらに好ましく、0.2N/50mm以上であってもよい。
【0026】
保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗Rが小さく、かつ、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する際の剥離力Fが小さいほど、フィルム基材に起因するコーティング不良が抑制される傾向がある。表面抵抗R(Ω/sq)と剥離力F(N/50mm)は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
log
10R+2.3F≦11.5 …(1)
【0027】
表面抵抗Rおよび剥離力Fが小さいほどlog
10R+2.3Fの値が小さくなり、コーティング不良が抑制される傾向がある。log
10R+2.3Fの値は、11.0以下が好ましく、10.5以下がより好ましく、10.3以下であってもよい。
【0028】
[材料]
以下では、本実施形態に用いられる各材料について説明する。
【0029】
<コーティング液>
フィルム基材1上に塗布されるコーティング液は、コーティング層3を構成する固形分(溶質)と、固形分を溶解・分散させる溶媒を含む溶液である。固形分としては、各種の樹脂材料や液晶材料が用いられる。
【0030】
コーティング層の樹脂材料としては、アセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂等が挙げられる。
【0031】
フィルム基材1上に、液晶化合物を含む液晶組成物を塗布し、液晶化合物を所定方向に配向させた後、配向状態を固定することにより、液晶分子が所定方向に配向したコーティング層(液晶層)形成される。
【0032】
液晶化合物としては、棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物等が挙げられる。フィルム基材の配向規制力によりホモジニアス配向しやすいことから、液晶化合物としては棒状液晶化合物が好ましい。棒状液晶化合物は、主鎖型液晶でも側鎖型液晶でもよい。棒状液晶化合物は、液晶ポリマーでもよく、重合性液晶化合物の重合物でもよい。重合前の液晶化合物(モノマー)が液晶性を示すものであれば、重合後は液晶性を示さないものであってもよい。
【0033】
液晶化合物は、加熱により液晶性を発現するサーモトロピック液晶であることが好ましい。サーモトロピック液晶は、温度変化に伴って、結晶相、液晶相、等方相の相転移を生じる。液晶組成物に含まれる液晶化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、およびコレステリック液晶のいずれでもよい。ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック配向性を持たせてもよい。
【0034】
サーモトロピック性を示す棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。
【0035】
重合性液晶化合物としては、例えば、ポリマーバインダーを用いて棒状液晶化合物の配向状態を固定可能とした重合性液晶化合物、重合により液晶化合物の配向状態を固定可能とした重合性官能基を有する重合性液晶化合物等が挙げられる。この中でも、光硬化性官能基を有する光硬化性液晶化合物が好ましい。
【0036】
光硬化性液晶化合物(液晶モノマー)は、1分子中にメソゲン基と少なくとも1つの光硬化性官能基とを有する。液晶モノマーが液晶性を示す温度(液晶相転移温度)は、40〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましく、55〜100℃がさらに好ましい。
【0037】
液晶モノマーのメソゲン基としては、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基、フェニルシクロヘキサン基、アゾキシベンゼン基、アゾメチン基、アゾベンゼン基、フェニルピリミジン基、ジフェニルアセチレン基、ジフェニルベンゾエート基、ビシクロヘキサン基、シクロヘキシルベンゼン基、ターフェニル基等の環状構造が挙げられる。これらの環状単位の末端は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0038】
光硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。光硬化性液晶モノマーは、1分子中に2以上の光硬化性官能基を有するものが好ましい。2以上の光硬化性官能基を含む液晶モノマーを用いることにより、光硬化後の液晶層に架橋構造が導入されるため、光学フィルムの耐久性が向上する傾向がある。
【0039】
光硬化性液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、国際公開第00/37585号、米国特許第5211877号、米国特許第4388453号、国際公開第93/22397号、欧州特許第0261712号、独国特許第19504224号、独国特許第4408171号、英国特許第2280445号、特開2017−206460号公報、国際公開第2014/126113号、国際公開第2016/114348号、国際公開第2014/010325号、特開2015−200877号公報、特開2010−31223号公報、国際公開第2011/050896号、特開2011−207765号公報、特開2010−31223号公報、特開2010−270108号公報、国際公開第2008/119427号、特開2008−107767号公報、特開2008−273925号公報、国際公開第2016/125839号、特開2008−273925号公報等に記載の化合物が挙げられる。液晶モノマーの選択により、複屈折の発現性や、レターデーションの波長分散を調整することもできる。
【0040】
液晶組成物には、液晶モノマーに加えて、液晶モノマーの所定方向への配向を制御する化合物が含まれていてもよい。例えば、液晶組成物に側鎖型液晶ポリマーを含めることより、液晶化合物(モノマー)をホメオトロピック配向させることができる。また、液晶組成物によりカイラル剤を添加することにより、液晶化合物をコレステリック配向させることができる。
【0041】
液晶組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。紫外線照射により液晶モノマーを硬化する場合は、光硬化を促進するために、液晶組成物は、光照射によりラジカルを生成する光重合開始剤(光ラジカル発生剤)を含んでいることが好ましい。液晶モノマーの種類
(光硬化性官能基の種類)に応じて、光カチオン発生剤や光アニオン発生剤を用いてもよい。光重合開始剤の使用量は、液晶モノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部程度である。光重合開始剤の他に増感剤等を用いてもよい。
【0042】
液晶モノマーと、必要に応じて各種の配向制御剤、重合開始剤等を溶媒と混合することにより、液晶組成物を調製できる。
【0043】
(溶媒)
コーティング液の溶媒は、溶質を溶解可能であり、かつ基板を侵食しない(または侵食性が低い)ものであれば特に限定されず、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。2種以上の溶媒の混合溶媒を用いてもよい。
【0044】
コーティング液の固形分濃度は、通常5〜60重量%程度である。コーティング液は、界面活性剤やレベリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
<フィルム基材>
基板として長尺のフィルム基材1を用いることにより、コーティング液の塗布から乾燥までの一連の工程を、ロール・トゥー・ロールにより実施できる。コーティング液が液晶組成物である場合は、コーティング後の液晶分子の配向処理や光硬化等の操作も、フィルム基材1上で一連の工程として実施可能である。また、フィルム基材1上に形成されたコーティング層3を、他の基材に貼り合わせる工程もロール・トゥー・ロールにより実施できるため、光学フィルムの生産性を向上できる。
【0046】
フィルム基材1の幅は、30cm以上が好ましく、50cm以上、80cm以上、100cm以上または120cm以上であってもよい。光学フィルムの生産性の観点からは、フィルム基材1の幅は大きいほど好ましいが、一般には500cm以下であり、400cm以下または300cm以下であってもよい。フィルム基材の長さは、100m以上が好ましく、300m以上、500m以上、800m以上、1000m以上または1200m以上であってもよい。フィルム基材1の長さの上限は特に限定されないが、一般には10000m以下であり、7000m以下または5000m以下であってもよい。フィルム基材1の厚みは、10〜200μm程度が好ましい。
【0047】
フィルム基材1を構成する樹脂材料は、コーティング液の溶媒に溶解せず、かつ乾燥、配向処理、硬化等の処理に耐えうるものであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;アクリル系ポリマー;スチレン系ポリマー;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0048】
ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリル系ポリマー等の疎水性の樹脂材料からなるフィルムは、保護フィルム2との貼り合わせ時に内部帯電が生じやすく、保護フィルムを剥離後にコーティング液を塗布した際のコーティング不良の原因となり得る。前述のように、背面2A(フィルム基材1との貼り合わせ面と反対側の面)の表面抵抗が小さい保護フィルム2を用いることにより、内部帯電が抑制されるため、フィルム基材1として疎水性の樹脂フィルムを用いた場合でも、コーティング不良を防止できる。
【0049】
フィルム基材1は、液晶分子を所定方向に配向させるための配向規制力を有していてもよい。例えば、フィルム基材1は、第一主面に配向膜を備えるものでもよい。配向膜は、液晶化合物の種類や基板の材質等によって、適宜、適切なものを選択すればよい。液晶分子を所定方向にホモジニアス配向させるための配向膜としては、ポリイミド系やポリビニルアルコール系の配向膜をラビング処理したものが挙げられる。また、光配向膜を用いてもよい。配向膜を設けずに、樹脂フィルムにラビング処理を施してもよい。
【0050】
フィルム基材1は、液晶分子をホメオトロピック配向させるための配向膜を備えていてもよい。ホメオトロピック配向性の配向膜(垂直配向膜)を形成するための配向剤としては、レシチン、ステアリン酸、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルアミンハイドロクロライド、一塩基性カルボン酸クロム錯体、シランカップリング剤やシロキサン化合物等の有機シラン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、テトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0051】
フィルム基材1として延伸フィルムを用いてもよい。延伸フィルムでは、延伸方向にフィルムを構成する樹脂材料(ポリマー)が配向しており、延伸方向に沿って液晶分子を配向させる作用を有する。延伸フィルムを用いることにより、フィルム基材に配向膜を形成しない場合であっても、液晶分子を所定方向に配向させるための配向規制力を持たせることができる。配向膜の形成を必要としないため、光学フィルムの製造コストを低減できる。また、配向膜を設けないことにより、ラビングカスによる汚染や配向不良を防止できる。
【0052】
延伸フィルムの延伸方向(ポリマーの配向方向)は特に限定されず、フィルム基材の長手方向と平行でもよく、非平行でもよい。長手方向と非平行に分子が配向している延伸フィルムを用いることにより、コーティング層3として、長手方向と非平行に液晶分子が配向した液晶層を形成できる。
【0053】
延伸フィルムの延伸倍率は、配向規制力を発揮し得る程度であればよく、例えば、1.1倍〜5倍程度である。延伸フィルムは二軸延伸フィルムであってもよい。二軸延伸フィルムであっても、縦方向と横方向の延伸倍率が異なるものを用いれば、延伸倍率の大きい方向に沿って液晶分子を配向させることができる。
【0054】
延伸フィルムは斜め延伸フィルムであってもよい。斜め延伸フィルムは、長手方向と平行でも直交でもない方向(例えば、長手方向に対して10〜80°の方向)に配向軸を有するため、フィルム基材1として斜め延伸フィルムを用いることにより、長手方向と平行でも直交でもない方向に液晶分子が配向した液晶層を形成できる。
【0055】
<保護フィルム>
フィルム基材1の第一主面1Aに仮着される保護フィルム2は、
図2に示すように、コア材291の一方の面に粘着剤層292を備えるものが好ましい。保護フィルム2は、コア材291の背面(粘着剤層形成面と反対側の面)に帯電防止層295を備えていてもよい。
【0056】
(コア材)
保護フィルム2のコア材291は、可撓性を有していればその材料は特に限定されず、金属箔や樹脂フィルム等が用いられる。材料が安価であり、加工性に優れることから、樹脂フィルムが好ましい。コア材291を構成する樹脂材料の具体例としては、フィルム基材1の樹脂材料として上述したものが挙げられる。コア材291は、延伸フィルムであってもよい。コア材291の厚みは特に限定されない。自己支持性と可撓性とを両立させる観点から、コア材291の厚みは、10〜100μm程度が好ましい。
【0057】
(粘着剤層)
粘着剤層292は、フィルム基材1に貼着可能であり、かつフィルム基材1から剥離可能であればよく、一般の粘着テープ等に使用されている粘着剤で構成することができる。保護フィルム2として、コア材291を構成する樹脂材料と粘着剤層292の樹脂材料とを多層押出により一体成型した自己粘着性フィルムを用いてもよい。
【0058】
粘着剤層292を構成する粘着剤の組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、接着力(剥離力)の調整が容易であり、被着体としてのフィルム基材1への糊残りが少ないことから、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0059】
アクリル系ベースポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。アクリル系ポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。
【0060】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するモノマー成分を含有することが好ましい。架橋可能な官能基を有するモノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。中でも、ベースポリマーの共重合成分として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。ベースポリマーのヒロドキシ基やカルボキシ基は、架橋剤との反応点となる。ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、粘着剤の凝集力が向上し、被着体としてのフィルム基材に対する適度の接着力を示すとともに、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する際の剥離力が低下する傾向がある。
【0061】
ベースポリマーの分子量は、粘着剤層292が所期の接着力を有するように適宜に調整されるが、例えば、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5万〜200万程度、好ましくは7万〜180万程度、より好ましくは10万〜150万程度、さらに好ましくは20万〜100万程度である。なお、ベースポリマーに架橋構造が導入される場合、架橋構造導入前のベースポリマーの分子量が上記範囲であることが好ましい。
【0062】
粘着剤層292の接着力の調整等を目的として、ベースポリマーに架橋構造を導入してもよい。例えば、ベースポリマーを重合後の溶液に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱を行うことにより、架橋構造が導入される。
【0063】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。中でも、ベースポリマーのヒドロキシ基やカルボキシ基との反応性が高く、架橋構造の導入が容易であることから、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が好ましい。架橋剤の使用量は、ベースポリマーの組成や分子量、目的とする接着特性等に応じて適宜に調整すればよい。粘着剤に適度の凝集力を持たせ、被着体から保護フィルムを剥離する際の剥離力を適切な範囲に調整するためには、架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上がさらに好ましい。被着体に対する適度の接着性を持たせるためには、架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0064】
ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、粘着剤のゲル分率が上昇し、粘性挙動の減少に伴って、被着体から保護フィルムを剥離する際の剥離力が小さくなる傾向がある。粘着剤層292のゲル分率は、70.0%以上が好ましく、80.0%以上がより好ましく、90.0%以上がさらに好ましい。粘着剤層292のゲル分率が過度に大きいと、被着体に対する濡れ性が低下し、接着力が不十分となる場合がある。そのため、粘着剤層292のゲル分率は、99%以下が好ましく、98%以下がより好ましい。ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができ、具体的には、粘着剤層を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。
【0065】
粘着剤層292は、シランカップリング剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
粘着剤層292の厚みは特に限定されないが、被着体に対する接着力と、被着体からの剥離性とを両立する観点から、粘着剤層292の厚みは1〜50μmが好ましく、2〜40μmがより好ましく、3〜35μmがさらに好ましい。粘着剤層292の厚みが小さいほど、被着体からの剥離性が向上する傾向がある。
【0067】
(帯電防止層)
保護フィルム2は、コア材291の背面に帯電防止層295を備えることが好ましい。帯電防止層を備えることにより、保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗が小さくなるため、フィルム基材1と保護フィルム2との積層体における内部帯電を抑制できる。また、保護フィルム2が帯電防止層295を備えることにより、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する際のフィルム基材1への帯電を防止し、静電気に起因するフィルム基材1への塵埃の付着や、コーティング不良を抑制できる。
【0068】
帯電防止層としては、例えば、バインダー樹脂に帯電防止成分を含有させて形成された層が挙げられる。バインダー樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂等の、各種のタイプの樹脂を採用し得る。帯電防止成分としては、有機または無機の導電性物質、各種の帯電防止剤等が挙げられる。有機導電性物質としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等の導電性ポリマーが挙げられる。無機導電性物質としては、各種の金属、合金、導電性金属酸化物が挙げられる。無機導電性物質は、粒子径が0.1μm以下(典型的には0.01μm〜0.1μm)の微粒子として帯電防止層に含まれていることが好ましい。帯電防止成分は、カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤、ノニオン型帯電防止剤等でもよい。
【0069】
<積層体>
フィルム基材1の一方の面に、保護フィルム2の粘着剤層292を貼り合わせることにより、積層体8が形成される。フィルム基材1上への保護フィルム2の積層方法は特に限定されない。例えば、フィルム基材1の製造工程において、フィルム基材1をロール状に巻き取る前に、ロール・トゥー・ロールで、フィルム基材1上に保護フィルム2を貼り合わせればよい。フィルム基材1の製造工程と連続して保護フィルム2の貼り合わせを実施することにより、フィルム基材1の第一主面1Aへのロールの接触回数を低減し、傷の発生を抑制できる。
【0070】
フィルム基材1が延伸フィルムである場合は、延伸直後に保護フィルム2を貼り合わせることが好ましい。例えば、フィルムの両端を把持するテンター方式により延伸を実施した後、フィルム基材1の第一主面1Aが搬送ロールと接する前に保護フィルム2を貼り合わせることにより、フィルム基材1の第一主面1Aへの傷の発生を防止できる。
【0071】
前述のように、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する際の剥離力は、1.5N/50mm以下が好ましく、1.0N/50mm以下がより好ましく、0.8N/50mm以下がさらに好ましい。粘着剤層292の組成、厚み等を調整することにより、剥離力を上記範囲内とすることができる。具体的には、粘着剤層292の厚みが小さいほど、剥離力が小さくなる傾向がある。また、粘着剤層292を構成するベースポリマーへの架橋構造の導入量を増加させることにより、ゲル分率が上昇し、剥離力が小さくなる傾向がある。
【0072】
前述のように、保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗は、1×10
10Ω/sq以下が好ましく、5×10
9Ω/sq以下がより好ましく、1×10
9Ω/sq以下がさらに好ましく、5×10
8Ω/sq以下であってもよい。コア材291の背面に帯電防止層を設けることにより、表面抵抗を低減できる。
【0073】
[光学フィルムの作製]
積層体8のフィルム基材1から保護フィルム2を剥離し、フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング層3を形成することにより、フィルム基材1上にコーティング層3を備える積層体(光学フィルム)9が得られる。以下では、コーティング液として液晶化合物を含む液晶組成物を用い、コーティング層3として配向液晶層を形成する場合を中心に、各工程について説明する。
【0074】
<第一搬送工程>
フィルム基材1の第一主面1Aに保護フィルム2が貼り合わせられた積層体8は、一旦ロール状の巻回体80として巻き取られ、巻き出しロール81にセットされる。巻き出しロール81にセットされた巻回体80から巻き出された積層体8は、搬送ロール83,85,87に沿って形成される搬送経路の下流側に連続的に移動して、剥離部10に搬送される。
【0075】
フィルム基材1と保護フィルム2とを貼り合わせて積層体8を形成する工程と、第一搬送工程は連続して実施してもよい。例えば、フィルム基材1と保護フィルム2とを貼り合わせた後、積層体8を巻き取ることなく、そのまま剥離部10まで搬送してもよい。
【0076】
<剥離工程>
剥離工程では、剥離部10に搬送された積層体8から保護フィルム2を剥離し、フィルム基材1の第一主面1Aを露出させる。保護フィルムの剥離方法は特に限定されないが、剥離ロール11上で剥離を行う方法が一般的である。保護フィルム2の剥離ロール11に対する抱き角が、フィルム基材1の剥離ロール11に対する抱き角よりも大きくなるように、剥離ロール11の下流の搬送ロール13,23が配置されていれば、剥離ロール11上で、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離できる。剥離ロールは、積層体8を上下で挟む一対のニップロールであってもよい。フィルム基材1の第一主面から剥離された保護フィルム2は、搬送ロール23,25による搬送経路に沿って搬送され、巻取りロール21で巻回体20として巻き取られる。
【0077】
前述のように、フィルム基材1から保護フィルム2を剥離する際の剥離力を調整することにより、剥離時のジッピング等に起因するフィルム基材1の変形を抑制できる。また、保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗が小さいことにより、フィルム基材1の剥離帯電を抑制できる。
【0078】
<第二搬送工程>
第二搬送工程では、保護フィルム2を剥離後のフィルム基材1を、塗布部30まで搬送する。剥離部10で保護フィルム2を剥離した後のフィルム基材1を、剥離部10から塗布部30に搬送するまでの間、フィルム基材1の第一主面1Aは露出している。本実施形態では、第二搬送工程でのフィルム基材1の搬送経路が短く、フィルム基材1の第一主面1Aと搬送ロールとの接触機会が少ないため、第二搬送工程でのフィルム基材への傷の発生頻度はわずかである。
【0079】
剥離部10(剥離ロール11)から塗布部30(バックアップロール31)までフィルム基材1を搬送する間に、フィルム基材1の第一主面1Aには搬送ロールが接触しないようにすれば、第二搬送工程でのフィルム基材1の第一主面1Aへの傷の発生を防止できる。
【0080】
図3の破線に示すように、第二搬送工程において、フィルム基材1の第一主面1Aにロール15が接触してもよい。フィルム基材1の第一主面1Aにロール15が接触することにより、フィルム基材1には、第一主面側(図の下側)から図の上側に押さえる力が作用する。そのため、保護フィルム2の剥離力によるフィルム基材1の振動が低減され、コーティング液の塗布ムラを抑制できる。
【0081】
剥離部10で保護フィルム2を剥離後、塗布部30でコーティング液を塗布するまでの間のフィルム基材1の搬送経路(第二搬送工程)において、フィルム基材1の第一主面1Aに接するロール15は、フィルム基材1に対する「押さえロール」として作用し得る。
【0082】
押さえロールは、剥離部10での保護フィルム2の剥離によるフィルム基材1の振動を抑制可能であれば、フィルム基材1の幅方向の全体に接する必要はない。押さえロールは、フィルム基材1の幅方向の両端部のみに接触し、幅方向の中央部には接触しないものであってもよい。例えば、フィルム基材1の第一主面1Aに接触する押さえロール15として、
図4に模式的に示すバーベル形状のロール151を用いることができる。
【0083】
ロール151は、両端に円筒形状のロール15R,15Lを備え、これらのロールよりも径の小さい連結軸15Cを介して、両端のロール15R,15Lが連結されている。このロール151を用いれば、フィルム基材の幅方向の両端部のみにロール151が接触し、フィルム基材の幅方向の中央にはロールが接触しない。
【0084】
第二搬送工程において、フィルム基材の幅方向の両端部(ロール15R,15Lが接触する領域)には、ロール15との接触に起因してフィルム基材の第一主面に傷が形成される場合があるが、この領域を非製品領域とし、ロール15と接触しない幅方向の中央のみを製品領域とすれば、フィルム基材1の傷に起因する欠点の少ない光学フィルム(コーティング層3)が得られる。例えば、フィルム基材1の幅方向の中央のみにコーティング液を塗布し、フィルム基材の幅方向の両端部にはコーティング層を形成しなければ、幅方向の中央のみが製品領域となる。また、コーティング層を形成後の適切な段階で、フィルムの打ち抜きや、端部のスリット等の方法により、両端部の領域を製品から切断除去して、フィルム基材の幅方向の中央部のみを製品領域としてもよい。
【0085】
このように、第二搬送工程において、フィルム基材1の第一主面1Aにロールが接触する場合は、幅方向の両端部において第一主面1Aに押さえロールが接触し、幅方向の中央部では対一主面にロールが接触しないことが好ましい。この形態では、保護フィルム2の剥離に起因するフィルム基材1の振動を抑制し、コーティング層3の塗布ムラを低減できるとともに、フィルム基材1の傷に起因する欠点の少ないコーティング層3が得られる。
【0086】
フィルム基材1の両端部のそれぞれにおいて、フィルム基材と押さえロールが接触する部分の幅は、例えば、1〜50cmである。フィルム基材と押さえロールが接触する部分の幅が過度に小さい場合は、フィルム基材の振動抑制作用が不十分となったり、フィルム基材の走行性が低下する場合がある。フィルム基材と押さえロールが接触する部分の幅が過度に大きい場合は、光学フィルムの非製品領域の幅が大きく、生産効率や歩留まり低下の原因となる。フィルム基材と押さえロールが接触する部分の幅は、2cm以上、3cm以上または5cm以上であってもよく、30cm以下、25cm以下、20cm以下、15cm以下または10cm以下であってもよい。
【0087】
押さえロールは、フィルム基材1の幅方向の両端から外側にはみ出すように配置されていてもよく、幅方向の両端よりも内側に配置されていてもよい。押さえロールがフィルム基材1の幅方向の両端よりも内側に配置されている場合、フィルム基材の幅方向の端から押さえロールまでの距離は、30cm以内、20cm以内、15cm以内、10cm以内、5cm以内、3cm以内または1cm以内であってもよい。
【0088】
剥離部10で保護フィルム2を剥離後、塗布部30でコーティング液を塗布するまでの間に、フィルム基材1の第一主面1Aに接する押さえロールは、フィルム基材の両端部を押さえてフィルム基材の振動を抑制できるものであればよく、その形状は、
図4に示すバーベル形状に限定されない。例えば、幅方向の両端に分離して2個のロールが配置されていてもよい。フィルム基材1の第一主面1Aに接する押さえロールは、フィルム基材1の第二主面1Bに接するロールと対になって、フィルム基材1を挟持するニップロールであってもよい。剥離部10と塗布部30の間には、フィルム基材1の第一主面1Aに接する押さえロールが2本以上設けられていてもよい。
【0089】
第二搬送工程において、フィルム基材1の第一主面1A側からフィルム基材を押さえてフィルム基材の振動を抑制する手段は、必ずしも回転体である必要はない。例えば、剥離部10と塗布部30の間に、フィルム押さえ機構として、フィルム基材を第一主面側(図の下側)から第二主面側に向けて押さえるピン等を配置してもよい。
【0090】
第二搬送工程において、フィルム基材の両端部をテンタークリップで把持してもよい。この場合も、フィルム基材の幅方向中央部にロール等を接触させることなく、フィルム基材の幅方向両端部の領域を、第一主面および第二主面の両面から押さえて、保護フィルム2の剥離に起因するフィルム基材1の振動を抑制できる。この場合、フィルム基材の第一主面側に接する下クリップが、フィルム押さえ機構として作用する。
【0091】
図3に示すように、剥離部10と塗布部30の間の第二搬送工程において、フィルム基材1の第二主面1Bにロール13を接触させることにより、フィルム基材1が第二主面1B側からも押さえられるため、保護フィルム2の剥離力に起因するフィルム基材1の振動をより効果的に抑制できる。
【0092】
フィルム基材1の第二主面1Bに接するロール13は、フィルム基材の両端部のみに接していてもよく、フィルム基材の幅方向全体に接していてもよい。フィルム基材の搬送性等の観点から、ロール13はフィルム基材の第二主面の幅方向全体に接することが好ましい。
【0093】
<塗布工程>
塗布部30に搬送されたフィルム基材1の第一主面1A上に、コーティング液が塗布される。
図3に示す形態では、バックアップロール31にフィルム基材1の第二主面1Bが接している状態で、フィルム基材1の第一主面1A上に、ダイス33から吐出されたコーティング液が塗布される。
【0094】
フィルム基材1上にコーティング液を塗布する方法は特に限定されない。塗布方法としては、ダイコートの他に、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、マイヤーバーコート、ナイフロールコート、エアーナイフコート等が挙げられる。コーティング液の塗布厚みは、溶媒を乾燥後のコーティング層3の厚みが、0.1〜20μm程度となるように調整することが好ましい。
【0095】
本実施形態では、塗布工程の直前まで、フィルム基材1の第一主面1Aに保護フィルム2が仮着され保護されているため、ロール搬送に起因するフィルム基材1の第一主面1Aへの傷の発生が抑制される。また、フィルム基材1に仮着された保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗、およびフィルム基材1と保護フィルム2との接着力(剥離力)が所定範囲に調整されているため、保護フィルム2を剥離後のフィルム基材1の第一主面1Aの帯電等に起因するコーティング不良の発生が抑制される。そのため、フィルム基材1に起因する傷やスジ等の欠点の少ないコーティング層3を形成できる。
【0096】
<塗布後の工程>
コーティング液を塗布後のフィルム基材1を、加熱部50で加熱してもよい。加熱部50は、例えば加熱炉55を含み、フィルム基材1が加熱炉55内を搬送される間に、フィルム基材1、およびその上に塗布されたコーティング液が加熱される。例えば、加熱により、コーティング液の溶媒を除去できる。
【0097】
コーティング液が液晶組成物であり、液晶組成物に含まれる液晶化合物がサーモトロピック液晶である場合は、液晶組成物層を加熱して液晶相とすることにより、液晶化合物が所定方向に配向する。具体的には、フィルム基材上に塗布した液晶組成物を、N(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度以上に加熱して、等方性液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してネマチック相を発現させる。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを成長させてモノドメインとすることが望ましい。あるいは、液晶組成物を塗布後、ネマチック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保持して液晶分子を所定方向に配向させてもよい。
【0098】
液晶化合物を所定方向に配向させる際の加熱温度は、液晶組成物の種類に応じて適宜選択すればよく、通常40〜200℃程度である。加熱温度が過度に低いと液晶相への転移が不十分となる傾向があり、加熱温度が過度に高いと配向欠陥が増加する場合がある。加熱時間は液晶相ドメインが十分に成長するように調整すればよく、通常30秒〜30分程度である。
【0099】
加熱により液晶化合物を配向させた後、ガラス転移温度以下の温度に冷却することが好ましい。冷却方法は特に限定されず、例えば、加熱雰囲気から室温に取り出せばよい。空冷、水冷等の強制冷却を行ってもよい。
【0100】
液晶化合物が硬化性を有している場合は、硬化部60で硬化を行うことが好ましい。例えば、液晶化合物が光硬化性を有している場合は、光硬化性液晶化合物(液晶モノマー)が液晶規則性を有した状態で光硬化が行われる。光源61からの照射光は、光硬化性液晶化合物を重合せさることが可能であればよく、通常は、波長250〜450nmの紫外または可視光が用いられる。液晶組成物が光重合開始剤を含む場合は、光重合開始剤が感度を有する波長の光を選択すればよい。照射光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED、ブラックライト、ケミカルランプ等が用いられる。光硬化反応を促進するために、光照射は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0101】
光硬化の際に、所定方向の偏光を利用することにより、液晶化合物を所定方向に配向させることもできる。上記のように、フィルム基材1の配向規制力により液晶化合物を配向させる場合は、照射光は非偏光(自然光)でもよい。
【0102】
照射強度は、液晶組成物の組成や光重合開始剤の添加量等に応じて適宜調整すればよい。照射エネルギー(積算照射光量)は、通常20〜10000mJ/cm
2程度であり、50〜5000mJ/cm
2が好ましく、100〜800mJ/cm
2がより好ましい。光硬化反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0103】
液晶モノマーを光硬化した後の重合物は非液晶性であり、温度変化による、液晶相、ガラス相、結晶相の転移が生じない。そのため、液晶モノマーを所定方向に配向させた状態で光硬化した液晶層は、温度変化による分子配向の変化が生じ難い。また、液晶層は、非液晶材料からなるフィルムに比べて複屈折が格段に大きいため、所望のレターデーションを有する光学異方性素子の厚みを格段に小さくできる。
【0104】
コーティング層(液晶層)3の光学特性は特に限定されない。コーティング層3の正面レターデーションおよび厚み方向レターデーションは、用途等に応じて適宜設定すればよい。液晶分子がホモジニアス配向している場合、コーティング層3の正面レターデーションは、例えば、20〜1000nm程度である。コーティング層3が1/4波長板である場合、正面レターデーションは、100〜180nmが好ましく、120〜150nmがより好ましい。コーティング層3が1/2波長板である場合、正面レターデーションは、200〜340nmが好ましく、240〜300nmがより好ましい。液晶がホメオトロピック配向している場合は、コーティング層3の面内レターデーションは略0(例えば5nm以下、好ましくは3nm以下)であり、厚み方向レターデーションの絶対値は、30〜500nm程度である。
【0105】
液晶層等のコーティング層3のレターデーションは、厚みに比例する。コーティング液を塗布する際に、フィルム基材の表面のハジキ等に起因して局所的に厚みが小さい部分が形成されると、その部分のレターデーションが小さくなるため、表示装置において光学的なムラとなる。前述のように、本実施形態では、保護フィルム2の背面2Aの表面抵抗、およびフィルム基材1と保護フィルム2との接着力(剥離力)が所定範囲に調整されており、コーティング不良に起因するスジ状の厚みムラの発生が抑制されている。そのため、光学フィルム(コーティング層)の厚みムラに起因するレターデーションのムラが生じ難く、光学的な均一性に優れている。
【0106】
コーティング層(液晶層)3における液晶分子の配向方向は、フィルム基材1の長手方向(ロール・トゥー・ロールの搬送方向)と平行であってもよく、非平行であってもよい。前述のように、斜め延伸フィルム等の配向規制力を利用することにより、長手方向と非平行に液晶分子が配向している液晶層を形成できる。長手方向と非平行に液晶分子が配向している場合、フィルム基材に長手方向に沿った傷が存在すると、その上に形成される液晶層は液晶分子が傷に沿って長手方向に配向するため、配向不良の原因となる。上述のように、フィルム基材1に仮着した保護フィルム2を剥離した直後に、フィルム基材1上に液晶組成物を塗布することにより、フィルム基材への傷の発生を抑制し、液晶層の配向不良を低減できる
【0107】
<光学フィルムの加工>
フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング層3が形成された積層体9(光学フィルム)を、巻取りロール91で巻き取ることにより、長尺の光学フィルムの巻回体90が得られる。この積層体9は、そのまま光学フィルムとして用いることができる。フィルム基材1の幅方向の両端部の領域は、非製品領域であるため、コーティング層3を形成後、巻取りロール91で巻き取るまでの間、または巻取りロール91で巻き取り後の適切な段階で、スリットにより切断除去してもよい。また、幅方向の両端部の領域が含まれないように、フィルムを打ち抜いて枚葉の製品を切り出してもよい。
【0108】
フィルム基材1の第一主面1A上にコーティング層3が形成された積層体9は、そのまま光学フィルムとして用いてもよく、フィルム基材1を剥離除去してコーティング層3のみを光学フィルムとして用いてもよい。コーティング層3が樹脂層である場合は、フィルム基材1とコーティング層3との積層体を延伸して、コーティング層3に光学異方性を付与してもよい。
【0109】
コーティング層3上には、他の層を積層してもよい。例えば、コーティング層3上に、接着剤層5を介して光学層4を貼り合わせることにより、
図5に示す積層体96が得られる。
【0110】
コーティング層3上に積層される光学層4は特に限定されず、光学フィルムとして一般的に用いられる光学等方性または光学異方性のフィルムを特に制限なく使用できる。光学層4の具体例としては、位相差フィルムや偏光子保護フィルム等の透明フィルム、偏光子、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等の機能性フィルムが挙げられる。光学層4は、単層でもよく積層体でもよい。光学層4は、液晶層であってもよい。光学層4は、偏光子の一方の面または両面に透明保護フィルムが貼り合わせられた偏光板であってもよい。偏光板が一方の面に透明保護フィルムを備える場合、偏光子とコーティング層とを貼り合わせてもよく、透明保護フィルムとコーティング層とを貼り合わせてもよい。
【0111】
接着剤層5を構成する接着剤は、光学的に透明であればその材料は特に制限されず、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。接着剤層5の厚みは、被着体の種類や接着剤の材料等に応じて適宜に設定される。塗布後の架橋反応により接着性を示す硬化型の接着剤を用いる場合、接着剤層5の厚みは0.01〜5μmが好ましく、0.03〜3μmがより好ましい。
【0112】
接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤系、活性エネルギー線硬化型接着剤等の各種形態のものが用いられる。これらの中でも、接着剤層の厚みを小さくできることから、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。
【0113】
コーティング層3の表面および光学層4の表面のいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、硬化することにより、接着剤層5を介して、コーティング層3と光学層4が積層される。接着剤の硬化は、接着剤の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、水系接着剤は、加熱により硬化できる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化できる。
【0114】
フィルム基材1上のコーティング層3に接着剤層5を介して光学層4が貼り合わせられた積層体96は、そのまま光学フィルムとして用いてもよい。この場合、フィルム基材1が光学フィルムの一部を構成する。
図6に示す様に、コーティング層3からフィルム基材を剥離除去してもよい。フィルム基材の剥離により露出したコーティング層3の表面には、
図7に示す様に、適宜の粘着剤層6を積層してもよい。
【0115】
粘着剤層6を構成する粘着剤は特に制限されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤等の、透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れる粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚みは、被着体の種類等に応じて適宜設定され、一般には5〜500μm程度である。
【0116】
コーティング層3上への粘着剤層6の積層は、例えば、予めシート状に形成された粘着剤を、コーティング層3の表面に貼り合わせることにより行われる。コーティング層3上に粘着剤組成物を塗布した後、溶媒の乾燥、架橋、光硬化等を行って粘着剤層6を形成してもよい。コーティング層3と粘着剤層6との接着力(投錨力)を高めるために、コーティング層3の表面にコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理や易接着層を形成した後に、粘着剤層6を積層してもよい。
【0117】
粘着剤層6の表面には、セパレーター7が仮着されていることが好ましい。セパレーター7は、光学フィルムを他の部材と貼り合わせるまでの間、粘着剤層6の表面を保護する。セパレーターの構成材料としては、アクリル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等のプラスチックフィルムが好適に用いられる。セパレーターの厚みは、通常5〜200μm程度である。セパレーターの表面には、離型処理が施されていることが好ましい。離型剤としては、シリコーン系材料、フッ素系材料、長鎖アルキル系材料、脂肪酸アミド系材料等が挙げられる。
【0118】
フィルム基材1を剥離後のコーティング層3の露出面には、適宜の接着剤層または粘着剤層を介して他の光学層を積層してもよい。例えば、コーティング層3上に、適宜の接着剤層を介して、他の光学層を積層してもよく、その上にさらに粘着剤層を積層してもよい。
【0119】
コーティング層を備える光学フィルムは、例えば画像表示装置用の光学フィルムとして利用可能である。コーティング層3上に他の光学層4が貼り合わせられた光学フィルムの一例として、コーティング層3としての配向液晶層と偏光板とを積層した円偏光板が挙げられる。
【0120】
偏光板は、1層の偏光子のみからなるものでもよく、前述のように、偏光子の一方の面または両面に透明保護フィルムが貼り合わせられていてもよい。偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0121】
中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成し、積層体の状態でヨウ素染色および延伸を行ってもよい。
【0122】
偏光板と液晶層とが積層された円偏光板においては、少なくとも1層の液晶層は液晶分子がホモジニアス配向していることが好ましい。円偏光板では、液晶分子がホモジニアス配向している液晶層における液晶分子の配向方向と、偏光子の吸収軸方向とが平行でも直交でもないように配置される。
【0123】
例えば、円偏光板が液晶層を1層のみ有する場合、コーティング層3としての液晶層は1/4波長板であり、偏光子の吸収軸方向と液晶分子の配向方向(一般には遅相軸方向)とのなす角は45°に設定される。偏光子の吸収軸方向と液晶分子の配向方向とのなす角は、35〜55°であってもよく、40〜50°であってもよく、43〜47°であってもよい。
【0124】
偏光板4と1/4波長板としてのコーティング層3とが、両者の光学軸のなす角が45°となるように積層された構成においては、さらに、液晶分子が基板面に対して垂直配向(ホメオトロピック配向)している液晶層を備えていてもよい。偏光板上に、1/4波長板としてのコーティング層3とポジティブCプレートとして機能するホメオトロピック液晶層とが順に積層されることにより、斜め方向からの外光に対しても反射光を遮蔽可能な円偏光板を形成できる。偏光板上に、ホメオトロピック配向液晶層(ポジティブCプレート)とホモジニアス配向液晶層(ポジティブAプレートである1/4波長板)とが順に積層されていてもよい。
【0125】
偏光板に複数の液晶層が積層された円偏光板において、液晶層は、いずれもホモジニアス配向液晶層であってもよい。この場合、偏光板4に近い側に配置される液晶層が1/2波長板であり、偏光板から遠い側に配置される液晶層が1/4波長板であることが好ましい。この積層構成では、1/2波長板の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角が75°±5°、1/4波長板の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角が15°±5°となるように配置することが好ましい。このような積層構成の円偏光板は、可視光の広い波長範囲にわたって円偏光板として機能するため、反射光の色付きを低減できる。
【0126】
上記のように、本発明の実施形態では、コーティング液を塗布する直前までフィルム基材の表面に保護フィルム仮着されているため、フィルム基材のへの傷の発生が抑制されており、フィルム基材の傷に起因するコーティング層の欠陥が少ない。また、コーティング層が配向液晶層であり、液晶分子がフィルム基材の長手方向と非平行に配向している場合でも、配向不良欠陥が少ない。さらに、フィルム基材と保護フィルムとの貼り合わせに起因するコーティング不良が抑制されているため、コーティング層の面内均一性が高く、良好な表示特性を実現し得る。
【実施例】
【0127】
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0128】
<コーティング液の調製>
ネマチック液晶相を示す光重合性液晶化合物(BASF製「Paliocolor LC242」)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度30重量%の溶液を調製した。この溶液に、界面活性剤(ビック・ケミー製「BYK−360」)および光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad907」)を添加して、液晶組成物溶液を調製した。レベリング剤および重合開始剤の添加量は、光重合性液晶化合物100重量部に対して、それぞれ、0.01重量部および3重量部とした。
【0129】
<保護フィルム付きフィルム基材の作製>
環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン製「ゼオノア 1420R」)のペレットを用い、溶融押出法により膜状に成形した後、二軸延伸を行い、厚み33μm、面内レターデーション135nmの延伸フィルムを得た。延伸フィルム基材の片面に保護フィルムを貼り合わせた後、この積層体をロール状に巻き取った。
【0130】
保護フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルムの片面にアクリル系粘着剤層を備えるものを用いた。粘着剤層の組成および厚み、ならびに背面に設けられた帯電防止層の種類を変更することにより、保護フィルムの背面の表面抵抗、およびフィルム基材からの剥離力を調整した。
【0131】
<配向液晶層の作製>
図3に示すコーティング装置の巻き出しロールに上記の積層体をセットし、積層体をロール・トゥー・ロール搬送しながら、フィルム基材から保護フィルムを剥離し、フィルム基材の表面に、上記の液晶組成物を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、100℃で3分間加熱して液晶を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量400mJ/cm
2の紫外線を照射して光硬化を行い、フィルム基材上にホモジニアス配向液晶層が形成された積層体を得た。
【0132】
[評価]
<剥離力>
フィルム基材と保護フィルムとの積層体を、幅50mm、長さ100mmのサイズに切り出し、剥離角度180°、引張速度10m/分の条件で、フィルム基材から保護フィルムを剥離した際の剥離力を測定した。
【0133】
<表面抵抗>
温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、抵抗率計(TREK製「Model 152−1」を用い、保護フィルムの背面(粘着剤層非形成面)にプローブ(日東精工アナリテック製「ハイレスタ−UX MCP−HT800」)を接触させ、印加電圧10V、電圧印加時間30秒の条件で表面抵抗を測定した。帯電防止層を形成していない保護フィルム(比較例1,2)の表面抵抗は、測定上限(1×10
13Ω/sq)を超えていた。
【0134】
<スジムラ>
ガラス基板上に透明アクリル系粘着シートを貼り合わせ、その上に、配向液晶層を貼り合わせた後、配向液晶層からフィルム基材を剥離した。この試料を、クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に配置し、トレース台の上で目視にて観察した。幅方向に延在するスジ状のムラがみられたものをNG、スジ状のムラが確認されなかったものをOKとした。
【0135】
[評価結果]
実施例および比較例で用いた保護フィルムの背面の表面抵抗Rおよびフィルム基材からの剥離力F、ならびに配向液晶層のスジムラの評価結果を表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
いずれの実施例および比較例においても、液晶の配向欠陥は確認されなかった。これは、液晶組成物を塗布する直前まで、フィルム基材の表面に保護フィルムが仮着されており、フィルム基材への傷の発生が抑制されたためであると考えられる。
【0138】
背面に帯電防止層を備える保護フィルムを用いた実施例1〜9では、スジムラが確認されなかったのに対して、帯電防止層を備えていない保護フィルムを用いた比較例1,2では、幅方向に延在するスジ状のムラが配向液晶層の全面で発生していた。剥離力Fが大きい保護フィルムを用いた比較例3でも、比較例1,2と同様にスジ状のムラが発生していた。
【0139】
上記の結果から、背面の表面抵抗が小さく剥離力が小さい保護フィルムを、フィルム基材に仮着しておき、フィルム基材から保護フィルムを剥離した直後に液晶組成物を塗布することにより、配向欠陥がなく、かつ面内の均一性に優れる配向液晶層が得られることが分かる。
【0140】
実施例および比較例で得られた配向液晶層の膜厚および面内レターデーションの分布を測定したところ、比較例1〜3の配向液晶層は、スジムラの発生箇所の厚みが他の箇所に比べて30〜40nm小さくなっており、厚みが小さい箇所で面内レターデーションが小さくなっていた。一方、配向液晶層を剥離した後のフィルム基材には、スジ状の厚みムラは確認されなかった。
【0141】
上記の結果から、比較例1〜3では、保護フィルムを剥離後のフィルム基材の局所的な帯電等に起因して、液晶組成物を塗布した際のハジキによるコーティング不良が生じたものと推定される。これに対して、実施例では、保護フィルムの表面抵抗および/または剥離力が小さいために、保護フィルムを剥離後のフィルム基材への帯電等の影響が小さく、コーティング不良が抑制され、面内均一性の高い配向液晶層が形成されたと考えられる。
【解決手段】長尺のフィルム基材(1)の第一主面上に保護フィルム(2)が剥離可能に貼着された積層体(8)を、長手方向に沿って剥離部(10)までロール搬送し、剥離部において、フィルム基材の第一主面から保護フィルムを剥離した後、フィルム基材の第一主面にコーティング液を塗布する。保護フィルムの背面の表面抵抗は、1×10