(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線反射性材料として、ポリテトラフルオロエチレン、シリコン樹脂、内部に0.05μm以上10μm以下の気泡を含む石英ガラス、内部に0.05μm以上10μm以下の結晶粒を含む部分結晶化石英ガラス、0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のアルミナ焼結体、0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のムライト焼結体のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項3に記載の紫外線照射装置。
前記発光素子は、前記筒状部の一方の端部の開口部に面して設けられ、前記処理流路を通過する前記対象物に向けて前記長手方向に沿って紫外光を照射する請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
前記ケース部は、当該ケース部の外側から当該ケース部に向けて光を照射したときに、当該ケース部の内周面に付着したバイオフィルムの影を当該ケース部の外側から視認可能に形成されている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1は、本発明に係る紫外線照射装置を適用した流体殺菌モジュールの一例を示す正面図である。また、
図2(a)は
図1の縦断面図、
図2(b)は
図1のA−A′線端面図である。
流体殺菌モジュール1は、
図1に示すように、殺菌処理部2と、発光部3と、流入部4と、流出部5と、を備える。
【0011】
殺菌処理部2は、
図2(a)に示すように、内筒(筒状部)21と、内筒21を収容するケース部22と、内筒21の一端側の開口部に固定され、内筒21内に流入される流体を整流するための円盤状の板23と、内筒21とケース部22との間に配置され、内筒21とケース部22との間の隙間を区画する部材24とを備える。
【0012】
内筒21は、両端が開口された筒状に形成され、肉厚が1mm以上20mm以下であることが好ましい。また、内筒21は、紫外線反射性材料で形成され、この紫外線反射性材料は、拡散透過率が1%/1mm以上20%/1mm以下であり、且つ紫外線領域における全反射率が80%/1mm以上99%/1mm以下である。拡散透過率と紫外線領域における全反射率との和は90%/1mm以上であることが好ましい。内筒21に適用される紫外線反射性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene PTFE)、シリコン樹脂、内部に0.05μm以上10μm以下の気泡を含む石英ガラス、内部に0.05μm以上10μm以下の結晶粒を含む部分結晶化石英ガラス、0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のアルミナ焼結体、及び0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のムライト焼結体等のうちの少なくともいずれか一つを含むものを挙げることができる。
【0013】
ここで、内筒21として、拡散反射性の材料を用いる場合、材料自体での紫外線の吸収は無いと仮定すると、内筒21の一端側に設けられた発光部3による照射光の少なくとも一部は、内筒21の他端側まで透過するように設定している。このときの透過率が、20%/1mmより大きいと、有効な紫外線反射量を増やすために内筒21の肉厚として非常に厚い素材が必要になる。そのため、流体殺菌モジュール1全体が大きくなったり、適切な流路設計が困難になったりするばかりでなく、深層から反射を制御しなくてはならなくなり、光学的な設計も困難になる。散乱体の光学密度が高く、透過率が低いことは一般的に望ましいが、非多孔質の場合は、結晶部と非晶部等、材料内部の粗密差が散乱体となるため、透過率が1%/1mmを下回る構造とすることは困難である。多孔質の場合には透過率が1%/1mmを下回る構造とすることは可能であるが、後述の処理流路21dが殺菌対象物(以下、単に対象物ともいう。)に接触するため、菌類の温床となる微細な穴構造を提供してしまうことになり、内筒21の構成部材としてふさわしくない。
【0014】
また、紫外線領域における全反射率は80%/mm以下では有効な紫外光線の多重反射効果を得ることが出来ない。全反射率は高ければ高いほど望ましいが、非多孔質の場合は、結晶部と非晶部等、材料内部の粗密差が散乱体となるため、全反射率が99%/1mmを上回る構造とすることは困難である。多孔質の場合には99%/1mmを上回る構造とすることは可能であるが、処理流路21dが対象物に接触するため、菌類の温床となる微細な穴構造を提供してしまうことになり、内筒21の構成部材としてふさわしくない。
【0015】
さらに、拡散透過率と紫外線領域における全反射率との和が90%/1mm以下、すなわち、内部で吸収されるエネルギーが10%以上である素材は、有効な紫外光線の多重反射効果を得ることが出来ないため、処理流路21dの構成部材としてふさわしくない。
【0016】
なお、拡散透過率は、紫外線反射性材料をスライスした板状サンプルを用いて測定する。具体的には、例えば紫外線反射性材料としてPTFEの拡散透過率を測定する場合には、以下の手順で行う。
【0017】
すなわち、PTFEは、拡散性を有する材料であるため、通常の直線光を用いた透過率測定では適切に測定することが困難である。そのため、積分球を用いた拡散透過率の測定を行う。この積分球を用いた拡散透過率の測定は、例えば
図3に示すように、懸濁性物質の拡散透過率を測定する際に一般的に用いられる分光光度計等を用いて行えばよい。
なお、
図3において、101は板状サンプル、102は検出器、103は測定光、104は対照光、105は標準白板である。
【0018】
図2に戻って、内筒21は、その外周面の静止摩擦係数が、ケース部22の内周面の静止摩擦係数よりも小さい材料で形成されることが好ましい。つまり、内筒21とケース部22との間の隙間からなる後述の第一室26において、第一室26の内周側の壁面を形成する内筒21の外周面の静止摩擦係数が、第一室26の外周側の壁面を形成するケース部22の内周面の静止摩擦係数よりも小さいことが好ましい。このような構成であれば、バイオフィルムが発生する状況では、第一室26の外周側の壁面の方が第一室26の内周側の壁面よりも先にバイオフィルムが発生する。ケース部22の厚さや色を調整することにより、第一室26の外周側の壁面、つまりケース部22の内周面に付着したバイオフィルムはケース部22の外側から懐中電灯等を当てると影ができることから、影の有無を視認することによってその存在を確認することができる。そのため、第一室26内におけるバイオフィルムの発生を容易に検出することができると共に、第一室26内全体にバイオフィルムが発生する前の、第一室26の外周側の壁面、つまりケース部22の内周面側にバイオフィルムが発生した段階で、バイオフィルムの発生を検出することができる。そのため、バイオフィルムによるリスクの発生を抑制することができる。
なお、バイオフィルムにおるリスクをより低減するため、内筒21の外周面の静止摩擦係数はケース部22の内周面の静止摩擦係数の1/2以下であることが好ましい。また、内筒21の外周面の静止摩擦係数は、ケース部22の内周面の静止摩擦係数の1/10以下であることがより好ましい。
【0019】
表1、表2に、樹脂の摩擦係数を示す。表1は、代表的な樹脂の摩擦係数を示したものである。表2は、フッ素樹脂の静止摩擦係数及び動摩擦係数を示したものである。
【0022】
図2(a)に戻って、内筒21の、発光部3側の端部寄りの位置には、周方向の例えば60度離れた6箇所に、径方向を向き、内筒21を貫通する連通口21aが形成されている。なお、連通口21aの配置位置及び配置数はこれに限るものではない。
連通口21aの形状は、機械加工の観点から、断面が円形であることが望ましい。連通口21aの形状は断面が円形である場合に限るものではなく、任意の形状とすることができる。また、連通口21aの直径は処理流路21dの直径の1/100以上1/4以下であることが望ましく、1/20以上1/5以下であることがさらに望ましい。
【0023】
連通口21aの配置位置は、発光部3そのものから少し遠ざかる位置であり、連通口21aの開口部における中心位置と処理流路21dの発光部3側の端部との間の距離が、処理流路21dの直径の1/20以上直径以下となる処理流路21dの発光部3とは逆側の端部寄りとなる位置であることが望ましく、より好ましくは処理流路21dの直径の1/10以上1/4以下となる処理流路21dの逆側の端部寄りとなる位置である。
内筒21の、内筒21が延びる方向の中央部分の外周面には、部材24と嵌合する溝21bが形成されている。溝21bの断面は例えば矩形状である。
【0024】
内筒21の発光部3とは逆側の端部の内周面には板23と嵌合する段差部21cが形成されている。そして、内筒21の中空部が処理流路21dを形成している。
なお、処理流路21dは、処理流路21d内で対象物の流速のむらを抑制するという観点から、処理流路21dの最上流部、つまり、内筒21の内周面の板23側の端部から内筒21の内周面の発光部3側の端部までの間の、主たる断面積の変化量は5%以下であることが好ましい。また、処理流路21dは円筒でなくともよい。
【0025】
ケース部22は、例えば、ポリオレフィン、具体的にはポリプロピレン又はポリエチレンで形成され、一端が閉じ、他端が開放された、断面が円形の筒状を有する。ケース部22の開放端の外周面にはフランジ部22aが形成される。また、ケース部22の開放端の内周面には段差部22bが形成されている。
【0026】
ケース部22の開放端とは逆側の閉端には、ケース部22の内側に向いて突出する凸部22αが形成されている。凸部22αは、周方向の例えば120度離れた3箇所に設けられている。なお、凸部22αの配置位置また配置数はこれに限るものではなく、要は、後述のように板23を固定することができればよい。
【0027】
ケース部22の閉端寄りの外周面には、円筒状の中空部を内部に有する流入部4がケース部22と一体に形成され、ケース部22の開放端寄りの外周面には、円筒状の中空部を内部に有する流出部5がケース部22と一体に形成されている。流入部4の中空部の開口部が流入口4aとなり、流出部5の中空部の開口部が流出口5aとなる。
【0028】
流入部4及び流出部5は、それぞれの中空部を対象物が流れる方向と、ケース部22の長手方向とが直交するように形成されることが好ましい。
流入部4は、内筒21の、段差部21c側の外周面の端部との間の距離が、流入口4aの流入口相当半径以上、処理流路21dの処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の連通口21a側の端部寄りとなる位置に形成される。
流出部5は、連通口21aからの距離が、流出口5aの流出口相当半径以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の、段差部21c側の端部寄りとなる位置に形成される。
【0029】
流入部4及び流出部5をそれぞれこのような範囲内に形成することによって、処理流路21dにおいて、流速が極端に速い部分の発生を抑制することができる。
なお、流入部4の配置位置は、内筒21の、段差部21c側の外周面の端部との間の距離が、処理流路21dの相当内径(以下、処理流路相当内径ともいう。)の1/2以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の、連通口21a側の端部寄りとなる位置がより好ましく、処理流路相当内径の3/4以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の、連通口21a側の端部寄りとなる位置がさらにより好ましい。
【0030】
同様に、流出部5の配置位置は、連通口21aからの距離が、処理流路相当内径の1/2以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、段差部21c側の端部寄りとなる位置がより好ましく、処理流路相当内径の3/4以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、段差部21c側の端部寄りの位置がさらにより好ましい。
なお、流入部4及び流出部5の配置位置が、処理流路長の2/3を上回る位置となると、流入部4及び流出部5を配置する設計自由度が低くなるため、処理流路長の2/3以下の範囲が好ましい。
【0031】
板23は、PTFE等の紫外線反射性材料で形成される。板23は、
図4の平面図に示すように、表裏間を通じる開口孔23aを複数有し、開口率は、5%以上80%以下に設定される。また、各開口孔23aの相当直径は、0.5mm以上、処理流路21dの処理流路相当内径の1/3以下に設定される。
【0032】
開口率を5%以上80%以下とすることによって、第一室26及び後述の第二室27を設けない場合に比較して、より整流効果を得ることができる。つまり処理流路21dにおける対象物の流速のばらつきを抑制することができる。開口率は、5%以上60%以下であることが好ましく、5%以上35%以下であることがより好ましい。なお、開口率が5%を下回ると、処理流路21dの大きさに対して最大処理流量が少なくなるため、開口率は5%以上であることが好ましい。
【0033】
なお、ここでは、第一室26から処理流路21dに流入される対象物の流れを制御する目的で板23を設けているが、整流用の板23に限るものではなく、整流することの可能な整流機構を設ければよい。また、要求される殺菌効果を得ることができるのであれば、整流用の板23つまり整流機構を必ずしも設けなくともよい。
【0034】
図2に戻って、部材24は、例えば、バイトン(登録商標)等のフッ素ゴムで形成される。部材24は、円環状に形成され、内周面側には、内筒21に形成された溝21bと嵌合する凸部24aが形成されている。部材24の外周面側には断面が半円の環状の凸部24bが幅方向に複数(例えば3つ)形成されている。
【0035】
また、部材24は、径方向の肉厚によって、内筒21とケース部22と密着し、且つこれらの間に予め設定した一定の隙間を形成する形状を有する。
そして、内筒21とケース部22との間の隙間において、部材24で区分けされた区画のうちの、ケース部22の閉端側の領域が、流入部4と処理流路21dとの間に設けられ、内筒21の、段差部21c側の開口部と連通する、流入側の整流室となる第一室26を形成している。また、部材24で区分けされた区画のうちの、ケース部22の開放端側の領域が、流出部5と処理流路21dとの間に設けられ、連通口21aを介して処理流路21dと連通する、流出側の整流室となる第二室27を形成している。
【0036】
このとき、第一室26の内容積は、処理流路21dの処理流路相当内径の三乗の2/3(約67%)以上、処理流路21dの処理流路内容積の3倍以下に設定される。第一室26の内容積を、このような範囲とすることによって、第一室26及び第二室27を設けない場合に比較して、より整流効果を得ることができる。なお、第一室26の内容積は、処理流路相当内径の三乗の75%以上、処理流路内容積の2倍以下とすることがより好ましく、処理流路相当内径の三乗の85%以上、処理流路内容積以下であることがより好ましい。第一室26の内容積を大きくしすぎると、流体殺菌モジュール1全体のサイズが処理流量に対して大きくなり過ぎるため、第一室26の内容積は処理流路内容積の3倍以下であることが好ましい。
【0037】
また、
図2(b)に示す第一室26の断面積A26は、処理流路21dの断面積A21の1/10以上1以下であることが好ましく、より好ましくは、断面積A21の、1/10以上1/2以下に設定される。第一室26の断面積A26が、処理流路21dの断面積A21の1/10よりも小さい場合には圧力損失が大きくなるため流体殺菌モジュール1として機能させることが困難であり、断面積A26が断面積A21よりも大きいとバイオフィルムの発生を十分に抑制することが困難となる。
【0038】
つまり、流体殺菌モジュール1における殺菌処理の処理流量が2L/minであるときに殺菌に必要な断面積つまり処理流路21dの断面積A21がA21>3.14cm
2であり、バイオフィルムの発生防止に必要な第一室26の断面積A26がA26<1.53cm
2であるとする。これらの相対値が流量に比例すると考えられるため、処理流量がXL/minであるときには、殺菌に必要な処理流路21dの断面積A21は、A21>1.57×Xcm
2であり、バイオフィルムの発生防止に必要な第一室26の断面積A26は、A26<0.76×Xcm
2と表すことができる。したがって、「殺菌に必要な断面積A21÷バイオフィルム発生防止に必要な断面積A26」が2.06よりも大きい((A21/A26)>2.06)ことが好ましい。なお、処理流路21dの長さは対象物の透過率によって決まり、目的処理流量には因らない。
【0039】
図5は、殺菌エリアの長さ、つまり、処理流路21dの長さと、流体に吸収され殺菌に利用される紫外線のドーズ量(積算照射量)との関係を示す特性図である。
図5において横軸は殺菌エリアの長さ(mm)、縦軸は紫外線のドーズ量(積算照射量)(mJ/cm
2)を示す。各特性線は、処理流路21dの内径及び処理流路21dの反射率が異なる。処理流路21dの内径と、処理流路21dの反射率とが決まれば、
図5から処理流路21dの長さ及び紫外線のドーズ量(積算照射量)を決定することができる。つまり、バイオフィルムの発生を防止する流速と、一定の殺菌能力を担保するドーズ量とを両立することで、長期的に安定した殺菌能力を提供することができる。
【0040】
なお、部材24は、フッ素ゴムに限るものではなく、内筒21とケース部22との間の隙間において、ケース部22の閉端側と開放端側との間を対象物が行き来しないように区画することができ、耐久性があればどのような材料で形成されていてもよい。
また、部材24に設けられた凸部24bは3つでなくともよく複数備えていればよい。凸部24bを複数備えることによって、内筒21とケース部22とを安定して固定することができる。凸部24bは、幅方向に例えば等間隔で配置されていればよく、要は、凸部24bの配置位置が偏ること等により、内筒21とケース部22との間隔が不均一となることがなく、均等となる位置に配置すればよい。
【0041】
なお、ここでいう、相当内径又は相当直径とは、「流路断面積の四倍/流路断面周長」のことをいう。
また、相当半径とは、「流路断面積の二倍/流路断面周長」のことをいう。
また、整流室とは、処理流路と外部装置との間に配置され、流体殺菌モジュール1と外部装置との間で対象物の授受を行うための流入口及び流出口を有し、処理流路相当内径に対して、1.1倍以上、好ましくは1.5倍以上の相当内径を有する空間のことをいう。
図2(a)に戻って、発光部3は、窓部31と、素子部32とを備える。
【0042】
窓部31は、例えばステンレス等で形成され、ケース部22のフランジ部22aの外径と同一の外径を有する円環状に形成される。窓部31の内周面には、第一段差部31aと、第一段差部31aよりも直径の大きい第二段差部31bとが形成され、第二段差部31bに、例えば石英ガラス等の紫外線透過性素材からなる円盤状の窓33が窓部31の素子部32側の表面と面一となるように嵌め込まれている。
【0043】
素子部32は、例えばステンレス等で形成され、窓部31の外径と同一の外径を有する円環状に形成される。素子部32の窓部31と対向する面には、平面視で円形の凹部32aが形成されている。UVC−LED(深紫外LED)等の発光素子34aとこの発光素子34aが実装された基板34bとを含む光源34は、発光面が窓33と対向するように凹部32aに固定される。光源34は、光源34からの照射光の光軸と、処理流路21dの長手方向の中心軸とが一致するように配置される。
【0044】
素子部32の窓部31とは逆側の面には、図示しない制御装置等が搭載された制御基板を固定するための凹部32bが形成されている。
殺菌処理部2と発光部3とは、ケース部22のフランジ部22aの部分で、貫通ボルト25により一体に固定されている。
【0045】
このとき、段差部22bには、ゴム等の弾性部材からなるOリング22cが設けられると共に、内筒21の連通口21a側の端部と窓部31との間に弾性部材からなる円環状の弾性シート22dが設けられ、対象物が窓部31とケース部22との接触部分から外部に漏れだすことを防止している。弾性シート22dとなる弾性部材としては、シリコン樹脂エラストマー、フッ素樹脂エラストマー等のエラストマーを適用することが好ましい。
【0046】
また、内筒21の連通口21a側の端部と窓部31との間に弾性シート22dを介在させた状態で貫通ボルト25で固定することにより、内筒21の段差部21cに設けられた板23を凸部22αによって押圧し、凸部22αと段差部21cとで挟み込むことによって板23を段差部21cに固定するようになっている。
【0047】
また、窓部31の第一段差部31aと窓33との間にゴム等の弾性部材からなるOリング31cが設けられ、対象物が窓部31と窓33との接触部分から外部に漏れだすことを防止している。
内筒21の端部と、窓部31の、弾性シート22dを介して内筒21の端部と対向する領域との間の隙間は、機械加工の精度等の観点から、25μm以下に設定できる。さらに10μm以下であれば、対象物としての水等の表面張力によって、実質的に漏洩することがなくなる。
【0048】
〔効果〕
(1)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、第一室26の断面積A26が処理流路21dの断面積A21の1/10以上1以下、より好ましくは1/10以上1/2以下となるようにしている。そのため、処理流路21dにおける殺菌効果を得ることができると共に、第一室26におけるバイオフィルムの発生を防止することができる。
【0049】
また、内筒21は、その外周面の静止摩擦係数が、ケース部22の内周面の静止摩擦係数よりも小さい材料で形成している。そのため、バイオフィルムの発生を容易に検出することができ、且つ、第一室26内全体にバイオフィルムが発生するよりも前の、ケース部22の内周面側にバイオフィルムが生じた段階でバイオフィルムの発生を検出することができる。そのため、バイオフィルムによるリスク発生の低減に寄与することができる。
ここで、ケース部22側に付着したバイオフィルムは、流体殺菌モジュール1に対する定期的なメンテナンス時に、懐中電灯等の光源をケース部22の外周面に近接させ、ケース部22の内側の反射から汚れ状態を視認することで、発生状況を確認することができる。
【0050】
これに対し、内筒21側は、内筒21とケース部22との間に、流入側の整流室となる第一室26及び流出側の整流室となる第二室27が設けられており、すなわち、屈折率の異なる流体層が存在する。そのため、内筒21側に付着したバイオフィルムは、ケース部22の外側からは視認することはできない。つまり、内筒21側にバイオフィルムが付着していたとしても視認することは困難である。そのため、内筒21側は、ケース部22側よりもバイオフィルムの発生が遅くなる工夫が実用上から非常に重要となる。つまり、ケース部22側にバイオフィルムが付着したことを検出した時点で内筒21側にはバイオフィルムは発生していないと予測されることから、ケース部22側にバイオフィルムが付着したことを検出するタイミングで内筒21についてもバイオフィルムに対する対処を行えばよい。
【0051】
このように本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、第一室26におけるバイオフィルムの発生を抑制することができる。したがって、第一室26を設けることによる殺菌効果の低下を、より小さくすることができる。
【0052】
(2)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、内筒21の肉厚を1mm以上20mm以下とし、さらに、内筒21を、拡散透過率が1%/1mm以上、20%/1mm以下であり、且つ紫外線領域における全反射率が80%/1mm以上、99%/1mm以下である紫外線反射性材料で形成している。
【0053】
そのため、発光部3から処理流路21dに向けて照射された紫外光を処理流路21d内に高密度に紫外光を閉じ込めることができ、強い殺菌力を発揮させることができる。また、内筒21は紫外光の一部は透過させるため、処理流路21d内に照射された紫外光は、
図6中に符号Zで示すように、内筒21を透過して第一室26及び第二室27内に向けて照射される。つまり、第一室26及び第二室27内の流体に対しても紫外光照射が行われることになるため、これら第一室26や第二室27に溜まっている対象物に雑菌が増殖することを防止することができる。このため、第一室26や第二室27内に対象物が溜まっていたとしても、雑菌の生成を抑えることができ、流動開始時に菌の増殖した対象物が流出されることを抑制することができ、流体殺菌モジュール1の信頼性をより向上させることができる。なお、
図6は、
図2(a)に示す流体殺菌モジュール1を簡易的に示している。
【0054】
(3)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、内筒21とケース部22との間の隙間を、部材24によって流入部4側と流出部5側とに分割している。そのため、組み付け精度が低い場合であっても、第一室26や第二室27等、流路から対象物が漏れることを低減することができる。また、内筒21とケース部22との間に部材24を介在させることで実現することができるため、製造工程の大幅な増加を伴うことなく実現することができる。また、部材24は、弾性部材で構成されるため、例えば稼動時におけるロバストネスにも優れた流体殺菌モジュールを実現することができる。
【0055】
(4)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、処理流路21dを通過した対象物を、内筒21の発光部3側の端部寄りに設けた連通口21aを介してのみ第二室27に流入させて流出部5から流出させるようにしている。処理流路21dを通過した対象物は全て連通口21aのみを通じて流出されることになる。そのため、流量が変動した場合であっても、この流量の変動に起因して処理流路21d内における流速分布が変動することを抑制することができる。そのため、流速分布が変動することにより殺菌不良が生じることを防止することができる。
【0056】
(5)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、処理流路21dの上流に、一定以上の容積を有する第一室26を設けている。そのため、例えば組み付け精度にばらつきが生じる場合であっても、対象物を、第一室26を介して処理流路21dに流入させることによって、組み付け精度によるばらつきの影響を緩和させることができ、結果的に、処理流路21dにおける対象物の流速のばらつきを抑制することができる。そのため、組み付け精度による個体間のばらつきが抑制された流体殺菌モジュール1を実現することができる。
【0057】
〔変形例〕
上記実施形態においては、流体の殺菌を行う流体殺菌モジュールに適用した場合について説明したが、殺菌対象は、水、水溶液、コロイド分散液等の流体であってもよく、また、空気等の気体や、氷や固体の微粉末等であってもよい。
また、上記実施形態においては、部材24の内周面側には凸部24aを設け、外周面側には複数の凸部24bを設けた場合について説明したが、これに限るものではない。要は、内筒21の外周面に設けた溝21bと嵌合することで、内筒21の延びる方向への部材24の移動を制限することができ、且つ、部材24と内筒21との接触面及び部材24とケース部22との接触面を通して、部材24で区画される一方の側から他方の側へ対象物が移動することを阻止することが可能であって、十分な耐久性を有していれば部材24はどのような形状であってもよい。
【0058】
例えば、
図2(a)に示す内筒21に代えて
図7に示す内筒21αを用いてもよい。内筒21αは、
図7に示すように、内筒21αの延びる方向の中央部の外周面に環状の溝21αaが形成されると共に、溝21αaの両側に環状の凸部21αb、21αcが形成されている。凸部21αb、21αcは、凸部21αb、21αcの外周面とケース部22の内周面とが接するように形成される。また、溝21αaにはゴム等の弾性部材からなるOリング21αdが嵌められている。この内筒21αを、ケース部22に収容することによって、凸部21αb及び21αcの外周面とOリング21αdとがケース部22の内周面と接触し、凸部21αbの流入部4側及び凸部21αcの流出部5側の、ケース部22と内筒21αとの間に隙間が形成される。この凸部21αbの流入部4側の隙間が第一室26を形成し、凸部21αcの流出部5側の隙間が第二室27を形成する。
【0059】
このような構成を有する内筒21αを用いることによっても、上記と同等の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態においては、
図2(a)に示すように、第一室26と第二室27とを備える場合について説明したが、第一室26のみを備えている場合であっても適用することができる。
【0060】
また、上記実施形態においては、発光素子34aを、処理流路21dの板23とは逆側の端部に設けた場合について説明したが、板23側に設けることも可能であり、板23側及び板23とは逆側の両方に設けることも可能である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0061】
図8は、本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1のシミュレーション結果を示したものである。流体殺菌モジュール1において、
図2(b)に示す第一室26の断面積A26と処理流路21dの断面積A21との関係を説明するためのシミュレーションを行った。
図8(a)〜(c)に示すように、内筒21の外径φD1の異なる3つの流体殺菌モジュール1−1〜1−3を用いて、流入部4と第一室26との連通部分における流速を測定した。
【0062】
各流体殺菌モジュール1−1〜1−3において、内筒21の内径φd1はφ20mm、ケース部22の内径φd2はφ34mmとした。また、流体殺菌モジュール1−1の内筒21の外径φD1はφ31mm、第一室26の断面積A26と処理流路21dの断面積A21との比(A26/A21)は48.8%とした。流体殺菌モジュール1−2の内筒21の外径φD1はφ28mm、第一室26の断面積A26と処理流路21dの断面積A21との比(A26/A21)は93%とした。流体殺菌モジュール1−3の内筒21の外径φD1はφ26mm、第一室26の断面積A26と処理流路21dの断面積A21との比(A26/A21)は120%とした。
【0063】
各流体殺菌モジュール1−1〜1−3について、流路における流速分布を
図8(a)〜(c)に示す。なお、
図8は、
図2(a)に示す流体殺菌モジュール1を簡易的に示している。
断面積の比A26/A21が「1」より小さい流体殺菌モジュール1−1及び1−2の場合、流入部4と第一室26との連通部分Kにおける流速の最小値は1m/secより大きく、バイオフィルムの発生を良好に抑制できることが確認された。
【0064】
一方、断面積の比A26/A21が「1」より大きい流体殺菌モジュール1−3の場合、流入部4と第一室26との連通部分における流速の最小値は1m/secより小さく、バイオフィルムの発生を抑制することができない可能性があることが確認された。
【0065】
以上から、バイオフィルムの発生を抑制するためには、第一室26の断面積A26と処理流路21dの断面積A21との比(A26/A21)が「1」より小さいことが好ましいことがわかる。
【0066】
1 流体殺菌モジュール
2 殺菌処理部
3 発光部
4 流入部
5 流出部
21 内筒
21d 処理流路
22 ケース部
23 板(整流用の板)
24 部材(環状の部材)
26 第一室
27 第二室
34 光源
34a 発光素子