(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リブは、前記キー本体の押し込み前において、前記可動接点との間に隙間を有するように前記キー本体の下方に形成されている請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【背景技術】
【0003】
従来から、メタルドームの外側からその中央頂上部位に対して押圧を加え、メタルドームの変形を利用してスイッチをオンさせる押釦スイッチ用部材が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、近年、押釦スイッチ用部材を組み込む機器の小型化に伴い、キーの小型化およびキー間の狭小化が進む中、各キーとメタルドームとの高精度の位置合わせの要求が強まっている。キーの押圧位置とメタルドームの中央頂上部位との間に位置ズレが生じると、良好なクリック感が得られない。このような問題を解決するため、キーの直下にメタルドームの中央頂上部位を接着させた形態を有する押釦スイッチ用部材も開発されている(例えば、特許文献2を参照)。キーの直下にメタルドームを接続すると、キーとメタルドームの位置が固定されるため、常に、メタルドームの中央頂上部位に対して押圧することができるので、良好なクリック感が得られるというメリットが得られる。
【0004】
特に、回路基板側に、メタルドームの中央に接触可能な第一固定接点と、メタルドームの外周囲に接触可能な第二固定接点とを形成し、メタルドームを回路基板から浮揚させた状態でキーに接続すると、キーからのメタルドームの押し下げにより第二固定接点とメタルドームの外周囲とが接触してスイッチをオンさせ、続いて、メタルドームの中央部と第一固定接点とが接触してスイッチをオンさせる二段スイッチを実現することもできる(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に開示される押釦スイッチ用部材には、メタルドーム単体を押圧する場合、押圧開始からピーク荷重に達するまでのストロークが短いという問題がある。この結果、人間工学的に自然な操作感が得られず、操作者に違和感を与えやすい。特許文献1に開示される押釦スイッチ用部材には、さらに、高荷重対応が困難であるという問題がある。この問題を解決するためにメタルドームの上方にラバースイッチを配置する方法も考えられるが、ラバースイッチの下面の押し子とメタルドーム頂部との位置ズレが生じやすくなるという問題が生じる。
【0006】
次に、特許文献2および特許文献3に開示される押釦スイッチ用部材は、ラバースイッチの直下位置にある押し子とメタルドームの頂部とを接着しているため、上述のような位置ズレの問題を生じない。しかし、接着剤の厚さのバラツキにより、押圧方向の寸法公差が大きく、良好な操作感触を保証することが難しくなる。加えて、接着剤の存在領域ではメタルドームの変形が生じにくいため、メタルドーム本来の高クリック感が得られにくい。
【0007】
本発明者は、上記の問題を解決するために、本発明に先立ち、小型で高荷重対応を可能とし、高ストロークおよび高クリック感触を実現しやすい押釦スイッチ用部材を開発した(特許文献4を参照)。
【0008】
図9Aは、本発明者が先に開発した押釦スイッチ用部材の一部透過平面図を示す。
図9Bは、本発明者が先に開発した押釦スイッチ用部材の一部透過平面図中のX−X線にて切断したときのX−X線断面図を示す。
【0009】
図9A,
図9Bの押釦スイッチ用部材130は、ドーム状の可動接点120と、可動接点120の突出側に離間して対向配置される操作キー100とを備え、操作キー100を可動接点120の方向に押圧して、可動接点120を基板上の固定接点に接触させる部材である。操作キー100は、キー本体101と、キー本体101の外周囲に接続されており、当該キー本体101の基板側への押圧によって変形可能に構成されるドーム部102と、ドーム部102の外周囲に接続され、基板上に固定される足部104と、を備える。操作キー100は、ドーム部102と足部104との間に、基板と隙間を介在して対向する2つの中間部103を備える。2つの中間部103は、操作キー100の平面視にて中央部を挟んで対向する位置に形成されており、可動接点120との接続部位となる。
【0010】
可動接点120は、平面視にて略中央部分をキー本体101側に突出させたドーム形状を有する。可動接点120は、平面視にて長方形(正方形を含む)であって、対向する2辺から帯状に径方向外側に延出する外側固定部125を備える。外側固定部125は、中間部103にて操作キー100と接続されているため、キー本体101の直下に位置する押し子106と、可動接点120の頂部121との位置ズレがほとんど生じることがない。また、押し子106と頂部121とを離間させ、両者106,121間に接着剤等を介在させていないので、押釦スイッチ用部材130は、高ストロークと良好なクリック感とを兼ね備えた部材となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図9A,
図9Bに示す押釦スイッチ用部材130は、小型で高荷重対応を可能とし、高ストロークおよび高クリック感触を実現しやすいという多くの利点を有するが、さらに高機能化の余地がある。
【0013】
図10は、
図9A,
図9Bの押釦スイッチ用部材の荷重−変位曲線を示す。横軸は、キー本体101を押し込むストロークを、縦軸は、キー本体101を押し込むときの負荷を、それぞれ意味する。
図10のグラフから明らかなように、変位量0.7mm付近(図中のPで示す部分)に、急激に荷重が変化するポイント(変曲点Pという)が存在する。この変曲点Pは、操作キー100の押し子106と可動接点120の頂部121との間に、押釦スイッチ用部材130の高ストロークを図るために形成している比較的距離の長い隙間が影響していると思われる。当該隙間によって、押し子106が頂部121に接触した時点で荷重が急激に高まり、明確な変曲点を生じると考えられる。可動接点120が大きく変形してクリック感を生じさせる前には、可能な限り変曲点を生じさせず、徐々に荷重が高くなるようにする方が好ましい。
【0014】
本発明は、上記のさらなる要求に応えるためになされたものであり、高ストロークを維持しつつ、可動接点の変形に伴うクリック感の前段階における荷重の急激な変動を生じない押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、ドーム状の可動接点と、その可動接点の突出側に対向配置される操作キーとを備え、操作キーを可動接点の方向に押圧して、可動接点を、操作キーと反対側にある基板上の固定接点に接触させる押釦スイッチ用部材であって、操作キーは、キー本体と、そのキー本体の外周囲に接続されており当該キー本体の基板側への押圧によって変形可能なドーム部と、そのドーム部の外周囲に接続され、基板上に固定される足部と、キー本体の下方から可動接点に向けて突出するリブとを備え、可動接点は、キー本体の押し込みを受けて基板上の固定接点と接触する皿部と、皿部の径方向外側にあって、操作キーのキー本体よりも径方向外側に固定される外側固定部とを備え、リブは、キー本体を可動接点に向けて押し込むと、皿部が屈曲若しくは座屈する前段階において、皿部との間でリブの長さ方向に縮むように形成されている。
【0016】
(2)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、リブは、キー本体の押し込み前において、可動接点との間に隙間を有するようにキー本体の下方に形成されている。
【0017】
(3)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、リブは、皿部の頂部よりも径方向外側の位置に対向配置されている。
【0018】
(4)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、リブは、平面視にて、皿部の頂部を中心若しくは重心とする複数の位置に対向して、キー本体の下方に複数個備えられている。
【0019】
(5)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、キー本体に、その天面側に突出する第二リブを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高ストロークを維持しつつ、可動接点の変形に伴うクリック感の前段階における荷重の急激な変動を生じない押釦スイッチ用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材を構成する操作キーの一部透過平面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材を構成する操作キーの可動接点の平面図を示す。
【
図2A】
図2Aは、
図1Aの操作キーと可動接点とを固定した状態の押釦スイッチ用部材の一部透過平面図を示す。
【
図2B】
図2Bは、
図1Aの操作キーと可動接点とを固定した状態の押釦スイッチ用部材の一部透過平面図中のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材を第1実施形態と同様のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材を第1実施形態と同様のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材を第1実施形態と同様のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【
図7A】
図7Aは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
【
図7B】
図7Bは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
【
図7C】
図7Cは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
【
図7D】
図7Dは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
【
図7E】
図7Eは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
【
図8A】
図8Aは、
図5の押釦スイッチ用部材を構成するキー本体の下面に形成されるリブの各種配置例を示す。
【
図8B】
図8Bは、
図5の押釦スイッチ用部材を構成するキー本体の下面に形成されるリブを含む操作キーの各種断面形状の例を示す。
【
図9A】
図9Aは、本発明者が先に開発した押釦スイッチ用部材の一部透過平面図を示す。
【
図9B】
図9Bは、本発明者が先に開発した押釦スイッチ用部材の一部透過平面図中のX−X線にて切断したときのX−X線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材を構成する操作キーの一部透過平面図を示す。
図1Bは、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材を構成する操作キーの可動接点の平面図を示す。
図2Aは、
図1Aの操作キーと可動接点とを固定した状態の押釦スイッチ用部材の一部透過平面図を示す。
図2Bは、
図1Aの操作キーと可動接点とを固定した状態の押釦スイッチ用部材の一部透過平面図中のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【0025】
第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材30は、
図2Bに示すように、ドーム状の可動接点20と、可動接点20の突出側に対向配置される操作キー10とを備え、操作キー10を可動接点20の方向に押圧して、可動接点20を基板40上の固定接点41,42に接触させる部材である。以下、押釦スイッチ用部材30の主な構成要素(操作キー10及び可動接点20)とその他の部材(基板40等)について説明する。
【0026】
(1)操作キー
操作キー10は、キー本体11と、キー本体11の外周囲に接続されておりキー本体11の基板40側への押圧によって変形可能なドーム部12と、ドーム部12の外周囲に接続され基板40上に固定される足部13と、を備える。操作キー10は、さらに、キー本体11の下方(「下面」あるいは「押し子」と称しても良い)15から可動接点20に向けて突出するリブ16を備える。
【0027】
キー本体11は、逆円錐台形状を有するキートップである。ドーム部12は、逆椀形状を有し、キー本体11の側面から椀弧状に拡径する薄肉部材である。足部13は、操作キー10を基板40上に固定する部位である。足部13は、平面視にてドーム部12より径方向外側の下方位置であって、キー本体11の天面を中心とする十字の先端部分に形成されている。足部13,13の間には、互いに反対方向に延出する2本の中間部14が形成されている。中間部14は、その一部を基板40に接しているか否かを問わず、可動接点20の一部を固定する部位である。
【0028】
キー本体11の下面15は、可動接点20の方向に延出する複数個のリブ16を備える。この実施形態では、リブ16は、下面15に4個形成されているが、1〜3個若しくは5個以上でも良い。リブ16は、キー本体11を可動接点20に向けて押し込むと、可動接点20の皿部21が屈曲若しくは座屈する前段階において、皿部21との間でリブ16の長さ方向に縮むように形成されている。
【0029】
リブ16は、この実施形態では、キー本体11の押し込み前において可動接点20との間に隙間を有するようにキー本体11の下方に形成されている。ただし、後述する別の実施形態のように、当該隙間が無くても良い。また、リブ16は、この実施形態では、皿部21の頂部よりも径方向外側の位置に対向配置されている。ただし、皿部21の頂部と対向配置するリブを下面15に形成することもできる。
【0030】
リブ16は、平面視にて、皿部21の頂部を中心若しくは重心とする複数の位置、具体的には4つの位置に対向して、キー本体11の下面15に備えられている。これによって、可動接点20を一方に傾斜した押圧をすることなく、皿部21の安定的な押圧が可能である。ただし、リブ16を皿部21の頂部を中心とした中心若しくは重心の位置以外に対向させて、下面15に形成することも可能である。
【0031】
中間部14は、その下面においてドーム部12の下方延長部位に、基板14に向けて突出する突部17を備える。突部17は、中間部14の下面において可動接点20と固定する部位である。ただし、突部17は、必須の構成ではなく、形成されていなくても良い。その場合、可動接点20の一部は、中間部14の下面に接触して固定可能である。
【0032】
操作キー10は、その構成材料として、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムあるいはスチレンブタジエンゴム等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系あるいはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等のゴム状弾性材料を用いるのが好ましい。上記以外の操作キー10の構成材料として、ニトリルゴム(NBR)を用いても良い。特に、温度特性、環境特性、電気特性に優れるシリコーンゴムが好適である。また、上記構成材料に、酸化チタン、カーボンブラックに代表されるフィラーを混ぜても良い。後述の別の実施形態のように、基板40上のLED(照光手段の一例)から発する光を操作キー10の外方向に透光させるには、操作キー10の少なくとも一部を透光性とするのが好ましい。操作キー10全体をシリコーンゴムなどの透光性材料から構成すれば、LEDから操作キー10の任意の場所を通じて発光可能である。
【0033】
この実施形態では、操作キー10は、その全体を上記ゴム状弾性材料にて構成している。しかし、少なくともドーム部12およびリブ16を上記ゴム状弾性材料にて構成し、キー本体11、足部13、中間部14等の他の部位を上記ゴム状弾性材料以外の材料から構成することもできる。ドーム部12は、キー本体11の可動接点20に向けて押圧とその解除によって弾性変形する必要から、上記ゴム状弾性材料にて構成されるのが好ましい。リブ16は、キー本体11の可動接点20に向けての押圧とその解除によって弾性的にその長さ方向に収縮と復元を繰り返す可能にする必要から、上記ゴム状弾性材料にて構成されるのが好ましい。
【0034】
(2)可動接点
可動接点20は、キー本体11の押し込みを受けて基板40上の固定接点42と接触する皿部21と、皿部21の径方向外側にあって操作キー10のキー本体11よりも径方向外側に固定される外側固定部25と、を備える。以下、より詳細に説明する。
【0035】
可動接点20は、平面視にて長方形(正方形を含む)であって、対向する2辺から帯状に径方向外側に延出する帯状の外側固定部25を備える。また、可動接点20は、平面視にて略中央部分をキー本体11側に突出させたドーム形状の皿部21を有する。可動接点20は、皿部21の外周囲に平面視にて円環状に形成されていて下方に急角度で曲がる段差部23と、段差部23の径方向外側に連接する裾板部24と、を備える。段差部23は、皿部21の撓み変形の支点となり得る。上述の外側固定部25は、裾板部24より径方向外側へと延出しており、皿部21より径方向外側にあって、キー本体11よりも径方向外側に固定される。外側固定部25は、操作キー10の中間部14に固定可能に、可動接点20に形成されている。このため、可動接点20と操作キー10との接続部は、可動接点20の外側固定部25のみである。皿部21は、操作キー10の下方に可動接点20を固定した際に、キー本体11の下面15(押し子に相当)と離間して配置される部位であって、キー本体11の押し込みによって固定接点42と接触することができる。
【0036】
可動接点20は、皿部21よりも可動接点20の径方向外側にあって、キー本体11の押し込みによって、固定接点42の径方向外側に配置される別の固定接点41に接触可能となるように、固定接点41と非接触状態若しくは接触状態で対向する外側接触部26を、さらに備える。外側接触部26と固定接点41との間に隙間が存在する場合、その隙間は、操作キー10の基板40の方向への押し込みの際に外側接触部26と固定接点41とが接触可能であれば、特に制約されない。この実施形態では、外側接触部26と固定接点41との隙間を0.03〜0.1mmの範囲内としている。
【0037】
外側接触部26は、裾板部24を上面から下面に向かって凹ませて形成されるカップ形状部位である。外側接触部26は、裾板部24の四つ角に1個ずつ、合計4個形成されている。このため、キー本体11の押し込み時に、可動接点20は、4箇所で固定接点41と接触できる。ただし、外側接触部26の数は、1個以上であれば、特に限定されない。可動接点20と固定接点41との接触時に、可動接点20が傾かないようにするためには、外側接触部26を可動接点20の中央を挟んで対向する位置に2個1組で、1組若しくは2組以上備えるのがより好ましい。外側接触部26には、固定接点41に対して線接触若しくは面接触可能な底部を備えるのが好ましい。また、外側接触部26の一部若しくは全部、あるいは外側接触部26とは別に設けられる接触配置型外側接触部は、キー本体11を押圧していない状態において固定接点41と接触していても良い。なお、外側接触部26を備えずに、皿部21等の他の部位を固定接点41に接触可能に構成することもできる。
【0038】
可動接点20は、その構成材料として、導電性を有する金属材料を用いることができる。例示的な金属材料としては、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金、炭素鋼、銅、銅合金(青銅、りん青銅、黄銅、白銅、洋白など)、銀あるいは上記金属から選択される2以上の合金を挙げることができる。特に好ましい金属材料はSUS301であるが、SUS301以外のオーステナイト系ステンレススチール、あるいはマルテンサイト系ステンレススチール、フェライト系ステンレススチール若しくはオーステナイト−フェライト二相系ステンレススチール等を用いても良い。また、可動接点20を樹脂ベースの材料から構成しても良い。例えば、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートあるいはポリカーボネート等の透明な樹脂の一面に、カーボン、銀あるいは銅の膜を形成して、逆椀状に成形加工を施して可動接点20を製造することもできる。
【0039】
可動接点20を金属あるいは樹脂のいずれで構成する場合であっても、可動接点20の少なくとも固定接点41,42側の表面を、耐食性、耐塵性あるいは導電性の安定化のために、メッキや蒸着等の表面処理を単層または複層で施すことができる。当該表面処理としては、金めっきが特に好ましい。金めっきの厚みは、耐食性の観点においては、理論的には厚い程望ましい。しかし、現実的にはコストの観点から制約され、0.01μm以上1.00μm以下、好ましくは0.05μm以上0.90μm以下、さらに好ましくは0.10μm以上0.80μm以下である。上記以外の例示的な表面処理としては、金めっきと封孔処理、ニッケルめっきと金めっきと封孔処理、ニッケルめっきと金めっき、ニッケルめっき、銀めっき、ニッケルめっきと銀めっき、銀めっきと封孔処理(硫化防止処理(=変色防止処理))、ニッケルめっきと銀めっきと封孔処理(硫化防止処理(=変色防止処理))、カーボン系導電インク若しくはカーボン系導電塗料の塗布を挙げることができる。また、表面処理に、金合金、銀合金、パラジウム、パラジウム合金、タングステンあるいはタングステン合金を用いても良い。
【0040】
(3)基板
基板40は、好ましくは、皿部21の頂部から略直下位置に固定接点42を、固定接点42の外周囲に固定接点41を、それぞれ備える。固定接点41は、キー本体11の押し下げによって下降する外側接触部26が接触可能な位置にある。固定接点42は、固定接点41と離間して配置され、キー本体11の押し下げによって下降する皿部21の頂部若しくは頂部周辺が接触可能な位置にある。この実施形態では、可動接点20の外側接触部26が固定接点41と接触しても、スイッチはオンにならない。可動接点20の皿部21が固定接点42と接触したときに、固定接点41と固定接点42とを可動接点20が繋ぐように回路が形成され、この結果、スイッチをオンにすることができる。ただし、固定接点41および固定接点42の形状、スイッチのオン若しくはオフの構成、さらには固定接点41,42の有無については、種々変形可能である。代表的な変形例については、後述する。固定接点41はその表面を基板40から露出した状態にて基板40に埋設され、固定接点42は基板40上に固定されている。しかし、固定接点41,42は、ともに基板40の表面に固定され、あるいは基板40内に表面を露出した状態で埋設されていても良い。
【0041】
固定接点41および固定接点42は、金属の中でも比較的導電性の高い材料、例えば、金、銀、銅、アルミニウム青銅、アルミニウム合金あるいはそれらの2以上の合金から好適に構成される。なお、固定接点41および固定接点42は、それらの表面を耐食性や導電性の安定化のために、メッキを単層若しくは複層で施しても良い。メッキとしては、金、銀、ニッケルなどのメッキ、あるいはそれらの1以上を主成分とする合金メッキを例示できる。
【0042】
図3は、
図2A,
図2Bの押釦スイッチ用部材の荷重−変位曲線を示す。
【0043】
図9A,
図9Bの従来の押釦スイッチ用部材130では、キー本体101の下面(押し子)106が可動接点120の頂部121に接触した時点で荷重が急に高まる(
図10を参照)。しかし、
図3から明らかなように、この実施形態に係る押釦スイッチ用部材30では、キー本体11の押圧開始から可動接点20の耐圧荷重が限界に達するまでの間、荷重が急に高まるような変曲点は認められない。キー本体11を押し下げていくと、リブ16が可動接点20に接触するものの、リブ16が圧縮変形するので、荷重はゆるやかに高まる。その後、可動接点20の耐圧荷重が限界に達し、可動接点20は大きく変形して、荷重が大きく低下する。このように、押釦スイッチ用部材30は、可動接点20の大きな変形に伴うクリック感の生成までの間、高ストロークの特性に加え、荷重の変曲点がなく徐々に荷重が高くなるような特性を有する。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成部については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0045】
図4は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材を第1実施形態と同様のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【0046】
押釦スイッチ用部材30aを構成する操作キー10aは、第1実施形態における操作キー10のリブ16よりも長く、キー本体11の押し込み前において可動接点20との間に隙間を有さないリブ16aを有する。リブ16aは、常に可動接点20に接触していても、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材30と同様、可動接点20の大きな変形に伴うクリック感の生成までの間、高ストロークの特性に加え、荷重の変曲点がなく徐々に荷重が高くなるような特性を発揮する。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。第3実施形態において、前記各実施形態と同じ構成部については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0048】
図5は、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材を第1実施形態と同様のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【0049】
押釦スイッチ用部材30bを構成する操作キー10bは、キー本体11に、その天面側に突出する第二リブ19を備える。この実施形態では、第二リブ19は、略半球状であって、キー本体11の天面の中心を中心とする十字の先端部位に1個ずつ合計4個備えられている。ただし、第二リブ19の数は、キー本体11の押圧時に圧縮可能な位置と数で備えられていれば、上記の位置と数に限定されない。例えば、第二リブ19は、キー本体11の天面に備えられる1個のリング状突出部でも良い。第二リブ19は、好ましくは、リブ16と同様、第1実施形態にて例示したゴム状弾性材料にて形成される。
【0050】
押釦スイッチ用部材30bのキー本体11を押圧すると、可動接点20に接触するリブ16の圧縮変形のみならず、第二リブ19の圧縮変形を生じさせ、より長いストロークと、可動接点20の大きな変形までの荷重のゆるやかな高まりとを得ることができる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。第4実施形態において、前記各実施形態と同じ構成部については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0052】
図6は、第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材を第1実施形態と同様のA−A線で切断したときのA−A線断面図を示す。
【0053】
第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材30cは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材30と以下の点で異なる。操作キー10cは、その外面を覆う遮光層60と、キー本体11の天面の一部に遮光層60を除外した透光領域61と、を備える。可動接点20cは、皿部21の平面視略中央部分に、皿部21を貫通する貫通孔55を備える。基板40は、皿部21の貫通孔55周辺と接触可能な環状の接点42と、当該環状の接点42の内側に照光手段の一例であるLED50と、を備える。押釦スイッチ用部材30cにおける上記以外の構成は、押釦スイッチ用部材30と共通する。
【0054】
この実施形態では、透光領域61、貫通孔55、LED50の発光面は、鉛直略一直線上にある。ただし、LED50の発光面を水平から傾斜させる場合には、その発光面に対して垂直なライン上に、貫通孔55と透光領域61とを配置するのが好ましい。貫通孔55は、LED50からの光を操作キー10cに向けて透光させる機能と、皿部21とLED50との接触を防止する機能とを併せ持つ。ただし、可動接点20cを透光性に優れる硬質樹脂で構成し、貫通孔55の部位以外に遮光層を形成し、LED50の発光面を皿部21と衝突しない高さまで低くする場合には、貫通孔55は、可動接点20cにとって必須の構成要素ではない。
【0055】
透光領域61は、文字、記号、絵等の如何なる表示形態を有していても良い。操作キー10c自体を透光性に優れる材料で構成していない場合には、キー本体11における貫通孔55の真上領域に第二貫通孔をあけて、その第二貫通孔を、透光性に優れる部材(ガラス、シリコーン樹脂、アクリル樹脂など)にて塞いでも良い。その場合には、操作キー10cの外面に形成している遮光層60を設けなくても良い。
【0056】
LED50は、照光手段の一例である。LED50以外の照光手段を用いても良い。例えば、フィラメントへの通電による発光を利用した電球、シート状の有機EL若しくは無機ELをLED50に代用しても良い。
【0057】
(変形例)
図7Aは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
図7Bは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
図7Cは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
図7Dは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
図7Eは、本発明の各実施形態にて採用される固定接点の変形例の平面図を示す。
【0058】
図7Aの基板40は、
図1Aを参照して説明した基板である。これ以外に、
図7Bに示すように、半割円環状の2つの固定接点41a,41aの内側に、半割円環状の2つの固定接点42a,42aを配置し、さらにその内側にLED50(不図示)を配置した基板40を用いても良い。可動接点20cの外側接触部26が固定接点41a,41aと接触した際に、固定接点41a,41aの間を可動接点20cが繋ぐように回路が形成され、この結果、一段目のスイッチをオンにすることができる。続いて、可動接点20cの皿部21が固定接点42a,42aと接触した際に、固定接点42a,42aの間を可動接点20が繋ぐように回路が形成され、二段目のスイッチをオンにすることができる。
【0059】
図7Cの基板40は、円環状の固定接点41の内側に、円環状の固定接点42bを配置する基板である。スイッチ機構は、
図7Aと同様である。
図7Dの基板40は、半割円環状の2つの固定接点41a,41aの内側に、半円形状の固定接点42c,42cを配置する基板である。スイッチ機構は、
図7Bと同様である。
図7Eの基板40は、半割円環状の2つの固定接点41a,41aの内側に、半円櫛歯状の2つの固定接点42d,42dを、互いにかみ合わせた状態で離間配置する。半円櫛歯状の固定接点42d,42dを配置すると、固定接点42d,42dをより確実に導通できる。スイッチ機構は、
図7Bと同様である。
【0060】
(その他の実施形態)
以上、本発明に係る押釦スイッチ用部材の各実施形態と固定接点の各種変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されず、種々変形を施して実施可能である。
【0061】
図8Aは、
図5の押釦スイッチ用部材を構成するキー本体の下面に形成されるリブの各種配置例を示す。
図8Bは、
図5の押釦スイッチ用部材を構成するキー本体の下面に形成されるリブを含む操作キーの各種断面形状の例を示す。
【0062】
リブ16は、
図8Aの(a)に示すような十字形状の先端(正方形の四つ角)に1個ずつ計4個を下面15に備える以外に、(b)に示すような正八角形の各角に1個ずつ計8個を下面15に備える形態、または(c)に示すような下面15の中心に1個のみを備える形態にて配置可能である。さらには、(d)に示すように、円環状にリブ16を備えることもできる。さらには、リブ16は、平面視にて、皿部21の頂部を中点とする直線の両端に接触可能に、下面15に1個ずつ合計2個設けられていても良い。また、
図8Bに示すように、リブ16の縦断面は、先端を細くした略円錐形(a)の他、矩形(b)あるいは略楕円形(c)でも良い。これは、リブ16aも同様である。
【0063】
リブ16は、好ましくは、可動接点20の皿部21における頂部と段差部23との間に接触可能に、キー本体11の下面15に形成されている。また、リブ16は、可動接点20cの貫通孔55から段差部23との間に接触可能に、キー本体11の下面15に形成できる。リブ16は、より好ましくは、皿部21の頂部(貫通孔55を有する場合であっても貫通孔55内に存在する仮想の頂部を意味する)よりも段差部23に近い位置に接触可能に、下面15に形成される。リブ16は、キー本体11の下面15以外の箇所、例えば、キー本体11の側面から下方に向けて延出するように形成されても良い。これは、リブ16aも同様である。
【0064】
ドーム部12は、外側に凸となるようにカーブする形態の他、内側に凸となるようにカーブする形態、キー本体11から足部13に向かって直線的に傾斜する形態でも良い。
【0065】
上述の各実施形態および各種変形例は、互いに組み合わせが不能な場合を除き、任意に組み合わせ可能である。例えば、リブ16aを第3または第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材30b,30cに用いても良い。また、第二リブ19は、第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材30cに用いても良い。