(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
曲針および縫合糸を用いて体内の組織を縫合する手技では、縫合した縫合糸を把持して引っ張り、組織同士を引き寄せる。
特許文献1に記載の持針器は、曲針を把持することのみを想定しており、縫合糸を把持することは想定されておらず、特許文献1に記載の持針器によって縫合糸を把持すると、一対の把持部材によって縫合糸にせん断力がかかる構成になっている。さらに、特許文献1に記載の持針器によって把持した縫合糸を引っ張ると、縫合糸の特定の部分に応力が集中する。縫合糸へのせん断力や応力集中によって、縫合糸はダメージを受け、意図せず切れてしまう。
このような事態を避けるために、把持鉗子等の処置具によって縫合糸を把持し、引っ張ることが考えられる。しかしながら、この場合には、軟性内視鏡のチャンネルに挿入する処置具を持針器から把持鉗子等の別の処置具に交換する必要が生じるため、縫合作業の効率が下がる。このため、軟性内視鏡用の持針器であって、曲針と縫合糸とを把持可能な持針器が強く望まれている。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、曲針を安定して把持することと、縫合糸を傷めることなく把持することとを両立した持針器およびその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、縫合糸が取り付けられた曲針を把持する内視鏡用持針器であって
、前記内視鏡のチャンネルに挿入可能な可撓管と、前記可撓管の先端に設けられた把持部と、を備え、前記把持部は、長手軸に沿って延びた溝を有する第一把持部材と、前記第一把持部材に対して開閉動作可能に連結された第二把持部材と、前記第一把持部材の先端部に設けられ、前記長手軸に交差する方向に突出した突起と、を備え
、前記突起は、前記第一把持部材の基端側に向いた受け面を有し、前記第一把持部材は、前記第二把持部
材と前記受け面との間で前記曲針を把持可能に構成され、前記第一把持部材の前記溝は、前記縫合糸を押さえ込んだときに、前記第二把持部材との間で前記縫合糸の一部を押さえ込む糸押し付け部を有し、前記突起
の外周面の基端側には、前記糸押し付け部と前記第二把持部材とによ
り把持された縫合糸が引っ張られる際の前記縫合糸の軌道に沿うように前記受け面に対して傾斜した引っ掛け面を有する。
上記第一の態様に係る持針器によれば、前記第一把持部材の前記溝は、前記第一把持部材に対して前記第二把持部材が閉じられた際に前記第二把持部材の外周面の一部である把持面と向かい合う底面と、前記底面に交差し、前記底面と前記溝の縁との間で延びる内壁面と、を有し、前記第一把持部材は、前記第一把持部材の前記溝の前記縁に設けられ、前記曲針を押さえ込んだときに、前記第二把持部材の前記外周面および前記突起とともに前記曲針を押圧する曲針押し付け部を有し、前記糸押し付け部は、前記第一把持部材の前記溝の前記底面に設けられ、前記縫合糸の前記一部を前記糸押し付け部と前記把持面とで押さえ込んだときに、前記溝の前記内壁面と前記第二把持部材の前記外周面との間に形成された隙間に前記縫合糸の前記一部の一端に連なる部分を移動自在に保持してもよい。
【0007】
上記第一の態様に係る持針器によれば、前記第一把持部材の前記
溝は、前記底面に交差し、前記内壁面に向かい合う第二内壁面を有し、前記
溝の前記第二内壁面と前記第二把持部材の前記外周面との間に形成された第二の隙間に前記縫合糸の前記一部の他端に連なる第二部分を移動自在に保持してもよい。
【0008】
上記第一の態様に係る持針器によれば、前記第一把持部材は、前記
溝の前記縁に連なって、前記内壁面に交差して延びる外縁面を有し、前記突
起は、前記外縁面の先端から前記外縁面に交差する方向に突出
し、前記曲針押し付け部は、前記外縁面と前記内壁面との境界に位置してもよい。
【0009】
上記第一の態様に係る持針器によれば、前記隙間は、前記縫合糸の直径よりも大きくてもよい。
【0010】
上記第一の態様に係る持針器によれば、前記糸押し付け部と前記把持面とにより前記縫合糸の前記一部を押さえ込んだ状態において、前記底面と前記把持面とは略平行となってもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記態様の持針器によれば、曲針を安定して把持することができ、縫合糸を傷めることなく把持することもできる。
上記態様の持針器の使用方法によれば、曲針を安定して把持することができ、縫合糸を傷めることなく把持することもできるため、縫合作業を効率良く進めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について、
図1から
図14を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る持針器20が軟性内視鏡1に挿入された状態を示す図である。軟性内視鏡1は、挿入部2と、操作部7とを備えている。
【0021】
挿入部2は、撮像部3、能動湾曲部4、および軟性部5を有する。挿入部2の先端から、撮像部3、能動湾曲部4、および軟性部5の順でそれぞれが配されている。挿入部2の内部には、本実施形態の持針器20を挿入するためのチャンネル6が設けられている。挿入部2の先端には、チャンネル6の先端開口部6aが設けられている。
【0022】
撮像部3は、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部3は、持針器20がチャンネル6の先端開口部6aから突出している状態において、後述する持針器20の把持部23を撮像することができる。能動湾曲部4は、操作者による操作部7の操作に従って能動的に湾曲することができる。軟性部5は、可撓性を有する管状の部位である。
【0023】
操作部7は、軟性部5に接続されている。操作部7は、グリップ8、入力部9、チャンネル6の基端開口部6b、およびユニバーサルコード10を有する。グリップ8は、操作者によって把持される部位である。入力部9は、能動湾曲部4を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード10は、撮像部3が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード10は、プロセッサなどの画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続することができる。
【0024】
図2は、持針器20を示す全体図である。持針器20は、可撓管部21、硬質部22、把持部23、および操作部31を有している。可撓管部21は、可撓性を有し、先端21aから基端21bまで延びる長尺な部材である。
図1に示すとおり、可撓管部21は、軟性内視鏡1のチャンネル6に挿入可能である。可撓管部21がチャンネル6に挿入された状態において、可撓管部21の先端21aは、チャンネル6の先端開口部6aから突没可能である。可撓管部21の先端21aは、軟性内視鏡1の撮像部3の撮像視野内に進入することができ、撮像部3によって撮像される。
【0025】
可撓管部21の先端21aには、硬質部22が設けられている。硬質部22は、硬質な材料によって形成されている。硬質部22には、把持部23が設けられている。可撓管部21の基端21bには、操作部31が設けられている。
【0026】
図3および
図4は、持針器20の把持部23を示す斜視図である。把持部23は、第一把持部材24、第二把持部材25、第一突起部26(突起部)および第二突起部126を有している。第一把持部材24および第二把持部材25は開閉動作可能に構成されている。
図3は第一把持部材24と第二把持部材25とが閉じられた状態を示し、
図4は第一把持部材24と第二把持部材25とが開かれた状態を示している。
第一把持部材24は、硬質部22の先端から延びて設けられている。第一把持部材24は、可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びている。本実施形態の持針器20において、第一把持部材24と硬質部22とは一体成型されている。
第二把持部材25は、第一把持部材24に対して開閉動作可能に硬質部22に連結されている。具体的には、例えば、第二把持部材25に形成された貫通孔38および硬質部22に形成された貫通孔39に対して連結軸部材37が挿入されることによって、第二把持部材25は硬質部22に回動可能に連結されている。第二把持部材25は、連結軸部材37の長手軸Y2回りに回動可能である。
第一突起部26および第二突起部126は、第一把持部材24の先端部に設けられており、長手軸Y1に交差する方向に突出している。第一突起部26と第二突起部126は、可撓管部21の長手軸Y1を挟んで一対で設けられており、第一把持部材24と第二把持部材25とが閉じられた状態において、第一突起部26と第二突起部126との間に第二把持部材25の先端部が位置している。
【0027】
図1および
図2に示すとおり、操作部31は、操作部本体32と、スライダ33と、スライダ33が操作部本体32に対して移動するのを制限する固定機構(不図示)と、固定機構による固定を解除する解除ボタン34とを有している。
操作部本体32の先端は、可撓管部21の基端21bに接続されている。スライダ33は、操作部本体32に対して進退可能に連結されており、操作部本体32の長手軸の方向に沿って進退可能である。
【0028】
図3および
図4に示すとおり、可撓管部21の内部には、可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びる操作ワイヤ35が配されている。操作ワイヤ35は、柔軟なワイヤであり、操作部31からの操作力量を伝達可能である。操作ワイヤ35の基端は、操作部31のスライダ33に接続されている。操作ワイヤ35の先端は、リンク機構36に接続されている。リンク機構36は、第一リンク部材36a、第一ジョイント部材36b、第二リンク部材36c、および第二ジョイント部材36dから構成されている。操作ワイヤ35の先端は、第一リンク部材36aに接続されている。第一リンク部材36aは、第一ジョイント部材36bによって第二リンク部材36cに連結されている。第二リンク部材36cは、第二ジョイント部材36dによって第二把持部材25に連結されている。すなわち、操作ワイヤ35の先端と第二把持部材25とは、リンク機構36を経由して互いに接続されている。このため、第一把持部材24に対する第二把持部材25の開閉動作を操作するための操作力量は、操作部31から、操作ワイヤ35およびリンク機構36を経由して第二把持部材25へと伝達される。
【0029】
操作部本体32に沿ってスライダ33を進退動作させることによって、操作ワイヤ35を可撓管部21の長手軸Y1に沿って進退させることができる。本実施形態では、スライダ33を操作部本体32に沿って基端側へ移動させることによって、操作ワイヤ35を操作部31側へと牽引することができる。スライダ33は、固定機構により所望の位置で固定される。このため、スライダ33が操作ワイヤ35を牽引している状態でスライダ33を固定すると、操作ワイヤ35が牽引された状態を維持できる。操作ワイヤ35が操作部31側へ牽引されることによって、第一把持部材24に対して第二把持部材25が閉じる方向へ移動する。また、操作ワイヤ35が把持部23側へ押し出されることによって、第一把持部材24に対して第二把持部材25が開く方向へ移動する。
【0030】
図5は、可撓管部21の長手軸Y1が延びる方向から見た持針器20の把持部23を示す図(正面視)である。
図6は、連結軸部材37の長手軸Y2が延びる方向から見た持針器20の把持部23を示す図(側視)である。
図5および
図6は、第一把持部材24と第二把持部材25とが開かれた状態を示している。
図7は、
図6のVII−VII線における断面図である。
図8は、
図5のVIII−VIII線における断面図である。
図5から
図8において、図面の見やすさの観点から、リンク機構36および連結軸部材37は省略されている。
【0031】
図5から
図8に示すとおり、第一把持部材24は、外縁面24aおよび溝部24bを有している。
外縁面24aは、可撓管部21の長手軸Y1が延びる方向と連結軸部材37の長手軸Y2が延びる方向とによって規定される平面(以降、当該平面を「基準平面」と呼ぶ。)と平行であり、かつ可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びている。
なお、本実施形態における外縁面24aの構成は、上記の構成には限定されない。例えば、外縁面は、基準平面に対して傾斜していてもよく、先端に近づくにしたがって第二把持部材側に徐々に近づく面であってもよい。
【0032】
溝部24bは、可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びている。溝部24bは、外縁面24aと交差する方向に延びる一対の第一内壁面24c(内壁面)および第二内壁面124cと、第一内壁面24cと第二内壁面124cとの間に位置する底面24dとを有している。本実施形態において、第一内壁面24cおよび第二内壁面124cのそれぞれは、外縁面24aに交差しており、かつ可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びている。第一内壁面24cと第二内壁面124cとは可撓管部21の長手軸Y1を挟んで一対で設けられており、第一把持部材24と第二把持部材25とが閉じられた状態において、第一内壁面24cと第二内壁面124cとの間に第二把持部材25が位置している。底面24dは、第一内壁面24cと、第一内壁面24cに向かい合う第二内壁面124cとの間に位置して設けられている。底面24dは、外縁面24aと平行であり、かつ可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びている。第一内壁面24c、第二内壁面124cおよび底面24dで区画される溝部24bは可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びており、外縁面24aは溝部24bをその間に挟んで一対で設けられている。外縁面24aは、溝部24bの第一内壁面24cおよび第二内壁面124cに交差しており、溝部24bの外縁に位置している。
【0033】
外縁面24aと第一内壁面24cとの境界、および外縁面24aと第二内壁面124cとの境界には、軌道案内面24eおよび縁24fが設けられている。軌道案内面24eと外縁面24aとの境界が、溝部24bの縁24fをなしている。外縁面24aは、溝部24bの縁24fに連なって、第一内壁面24c(第二内壁面124c)に交差して延びている。また、外縁面24aは、溝部24bの縁24fに連なって、軌道案内面24eに交差して延びている。
図7に示すとおり、第一把持部材24の溝部24bは、底面24dに交差し、底面24dと縁24fとの間で延びる第一内壁面24c(第二内壁面124c)を有し、第一内壁面24c(第二内壁面124c)と縁24fとの間に軌道案内面24eを有している。軌道案内面24eの詳細については後述する。
【0034】
第一突起部26および第二突起部126は、外縁面24aの先端から突出しており、外縁面24aに交差する方向に延びている。つまり、第一突起部26および第二突起部126は、外縁面24aの先端から外縁面24aに交差する方向に突出している。
第一突起部26の外周面の一部には受け面26aおよび引っ掛け面26bが設けられている(
図8および
図13参照)。
受け面26aは、第一突起部26の外周面のうち基端側に形成されている。引っ掛け面26bは、受け面26aに連なっており、受け面26aに対して傾斜した傾斜面であって、かつ、第一突起部26の外周面のうち、可撓管部21の長手軸Y1から最も離れた部分を少なくとも含んで設けられている。また、第二突起部126の外周面の一部には受け面126aおよび引っ掛け面126bが設けられている(
図6および
図13参照)。受け面126aは、第二突起部126の外周面のうち基端側に形成されている。引っ掛け面126bは、受け面126aに連なっており、受け面126aに対して傾斜した傾斜面であって、かつ、第二突起部126の外周面のうち、可撓管部21の長手軸Y1から最も離れた部分を少なくとも含んで設けられている。受け面26a、引っ掛け面26b、受け面126a、および引っ掛け面126bの詳細については後述する。
【0035】
図5から
図8に示すとおり、第二把持部材25は、把持面25a、第一側面25b、および第二側面25cを含む外周面25dを有している。第一側面25bおよび第二側面25cは、把持面25aと交差している。
把持面25aは、第一把持部材24に対して第二把持部材25が閉じられた際に第一把持部材24の溝部24bの底面24dと向かい合う面である。本実施形態において、第二把持部材25の把持面25aが第一把持部材24の外縁面24aよりも底面24d側に位置した状態において、第二把持部材25の把持面25aは第一把持部材24の底面24dと平行であり、かつ可撓管部21の長手軸Y1に沿って延びている。第一側面25bと第二側面25cとは可撓管部21の長手軸Y1を挟んで一対で設けられており、第一側面25bと第二側面25cとの間に把持面25aが位置している。第一側面25bと、把持面25aと、第二側面25cとを少なくとも含んで第二把持部材25の外周面25dが構成されている。
【0036】
次に、
図9から
図14を参照しながら、本実施形態の持針器20の構成についてさらに詳細に説明する。
図9は、
図6のVII−VII線における断面図であり、持針器20によって曲針40が把持された状態を示している。
図10は、
図5のVIII−VIII線における断面図であり、持針器20によって曲針40が把持された状態を示している。
図11は、
図6のVII−VII線における断面図であり、持針器20によって縫合糸50が把持された状態を示している。
図12は、
図5のVIII−VIII線における断面図であり、持針器20によって縫合糸50が把持された状態を示している。
図9から
図12において、図面の見やすさの観点から、リンク機構36および連結軸部材37は省略されている。
【0037】
図9および
図10に示すとおり、曲針40は、所定の曲率を有する弧状の形状を有している。曲針40は、組織に刺入可能な針先41と、縫合糸50が接続された針根元42とを有している。
【0038】
図1から
図4に示すとおり、操作ワイヤ35が操作部31側へ牽引されることによって、第一把持部材24と第二把持部材25とによる曲針40の把持力量が生じ、曲針40の一部が第一把持部材24と第二把持部材25とによって把持される。
図9および
図10に示すとおり、本実施形態の持針器20は、曲針40を、第一把持部材24と、第二把持部材25と、第一突起部26(および第二突起部126)とによって押さえ込んで把持している。
図10は
図5のVIII−VIII線における断面図であるため、第一突起部26だけが見えているが、第一突起部26と同様にして、第二突起部126によっても曲針40を押さえ込んで把持している。曲針40が把持される際には、第二把持部材25の把持面25aを含む外周面25dから曲針40に対して把持力量としてのベクトル力F1が与えられる。曲針40が把持された状態では、第二把持部材25が可撓管部21の長手軸Y1と所定の角度をなして傾いている。このため、第二把持部材25から先端側かつ外縁面24a側へと向かうベクトル力F1が曲針40に対して与えられる。
図10に示すとおり、ベクトル力F1は、可撓管部21の長手軸Y1に沿う方向のベクトル力F2と、ベクトル力F2の方向とは直交する方向のベクトル力F3とに分かれている。曲針40は、ベクトル力F2によって第一突起部26(および第二突起部126)に押し付けられ、ベクトル力F3によって第一把持部材24に押し付けられる。曲針40をベクトル力F3によって第一把持部材24に押し付けるだけでなく、ベクトル力F2によって第一突起部26(および第二突起部126)にも押し付けるため、持針器20の把持部23は、曲針40を安定して把持することができる。
【0039】
第一突起部26(および第二突起部126)は、ベクトル力F2を受けることができる。第一突起部26は、第一突起部26の外周面のうち基端側に形成された受け面26aによって、ベクトル力F2を受ける。第一突起部26の受け面26aは、持針器20が曲針40を把持した際にベクトル力F2によって曲針40がぶれてしまうことを抑制可能な程度に、第一把持部材24の外縁面24aに対して交差して設けられている。ベクトル力F2を安定して受けるために、第一突起部26の受け面26aは、外縁面24aと直交して設けられていることが好ましい。第一突起部26と同様にして、第二突起部126は、第二突起部126の外周面のうち基端側に形成された受け面126aによって、ベクトル力F2を受ける。
【0040】
第一把持部材24は、ベクトル力F3を受けることができる。第一把持部材24は、溝部24bの縁24fによって、ベクトル力F3を受ける。
図9および
図10に示すとおり、曲針40は所定の曲率を有しているため、曲針40が把持された状態では、曲針40の一部は第一把持部材24の溝部24bに進入している。曲針40の一部が溝部24bに進入した状態において、曲針40と溝部24bの縁24fとが当接し、溝部24bの縁24fによってベクトル力F3が受けられている。つまり、外縁面24aと第一内壁面24c(第二内壁面124c)との境界に位置する溝部24bの縁24fには、曲針押し付け部27が設けられており、曲針押し付け部27が曲針40を押圧すること(曲針押し付け部27がベクトル力F3を受けること)によって、曲針40が把持されている。
【0041】
本実施形態の持針器20において、曲針40を、第一把持部材24と、第二把持部材25と、第一突起部26と、第二突起部126とで支持して、把持している。より詳細には、曲針40を、第一把持部材24の溝部24bの縁24fに設けられた曲針押し付け部27と、第二把持部材25の把持面25aを含む外周面25dと、第一突起部26の受け面26aと、第二突起部126の受け面126aとで支持して、把持している。このため、曲針40は、ベクトル力F3によって曲針押し付け部27に押し付けられるだけでなく、ベクトル力F2によって受け面26aおよび受け面126aにも押し付けられるため、持針器20の把持部23に安定して把持される。つまり、本実施形態の持針器20は、安定して曲針40を把持することができる。
【0042】
図11および
図12に示すとおり、本実施形態の持針器20は、縫合糸50を、第一把持部材24の溝部24bの底面24dと、第二把持部材25の把持面25aとによって押さえ込んで把持している。第一把持部材24の溝部24bの底面24dには、糸押し付け部28が設けられている。縫合糸50を把持する際には、糸押し付け部28と、第二把持部材25の把持面25aとで縫合糸50の被把持部分を押圧して押さえ込んでいる。
【0043】
本実施形態の持針器20は、例えば消化管の組織の縫合作業に用いられる。消化管の組織の縫合に用いられる縫合糸50は曲針40よりも細径の部材であり、例えば直径0.150mmから0.199mmや、直径0.270mmから0.349mmの大きさのものである。
【0044】
図12に示すとおり、縫合糸50を把持する際には、溝部24bの底面24dに設けられた糸押し付け部28と第二把持部材25の把持面25aとによって、縫合糸50を押さえ込んでいる。底面24dと把持面25aとは、第一把持部材24と第二把持部材25とが閉じられた際に互いに向かい合う。また、縫合糸50は細径の部材である。このため、糸押し付け部28と把持面25aとによって縫合糸50の被把持部分を押さえ込んだ状態において、底面24dと把持面25aとは略平行となる。なお、このとき、溝部24bに把持面25aが僅かに入り込んでおり、把持面25aは、外縁面24aよりも底面24d側に位置する。
底面24dと把持面25aとが略平行となるため、把持面25aから縫合糸50に与えられるベクトル力(把持力量)のうち可撓管部21の長手軸Y1に沿う方向のベクトル力はほとんど働かない。このため、縫合糸50は糸押し付け部28と把持面25aとによって均一に押しつぶされて把持される。つまり、本実施形態の持針器20は、縫合糸50の特定の部分に応力を集中させることなく縫合糸50を確実に把持することができる。
【0045】
図11に示すとおり、第一把持部材24の溝部24bの第一内壁面24cと第二把持部材25の外周面25dの一部である第二側面25cとの間には第一の隙間61(隙間)が形成されている。同様にして、第一把持部材24の溝部24bの第二内壁面124cと第二把持部材25の外周面25dの一部である第一側面25bとの間には第二の隙間62が形成されている。第一の隙間61および第二の隙間62のそれぞれは、縫合糸50の直径よりも大きい。
【0046】
本実施形態の持針器20は、縫合糸50を把持する際には、縫合糸50の被把持部分を糸押し付け部28と把持面25aとで押さえ込むとともに、第一の隙間61に縫合糸50の被把持部分の一端に連なる第一部分51(部分)を移動自在に保持し、第二の隙間62に縫合糸50の被把持部分の他端に連なる第二部分52を移動自在に保持している。
図11に示すとおり、縫合糸50の第一部分51は、第一把持部材24および第二把持部材25によって押さえ込まれていないため、第一の隙間61において移動自在となっている。同時に、縫合糸50の第一部分51は、縫合糸50の被把持部分の一端と連なっているため、持針器20の把持部23によって保持されている。同様にして、縫合糸50の第二部分52は、第一把持部材24および第二把持部材25によって押さえ込まれていないため、第二の隙間62において移動自在となっている。同時に、縫合糸50の第二部分52は、縫合糸50の被把持部分の他端と連なっているため、持針器20の把持部23によって保持されている。
【0047】
本実施形態の持針器20において、第一の隙間61および第二の隙間62が形成されているため、縫合糸50を把持する際に、縫合糸50の被把持部分に連なる第一部分51および第二部分52を移動自在に保持することができる。このため、縫合糸50の第一部分51および第二部分52に第一把持部材24と第二把持部材25とによるせん断力がかかることがない。つまり、本実施形態の持針器20は、縫合糸50がせん断力によって切れてしまうことを好適に防ぐことができる。
なお、本実施形態の持針器20においては、第一の隙間61および第二の隙間62の両方が形成されているが、例えば第一の隙間61のみが形成されている場合であっても、少なくとも第一の隙間61において、縫合糸50はせん断力を受けることなく移動自在に保持される。
【0048】
図11に示すとおり、外縁面24aと第一内壁面24cとの間、および外縁面24aと第二内壁面124cとの間には、軌道案内面24eが設けられている。軌道案内面24eは、可撓管部21の長手軸Y1を挟んで一対で設けられており、一対の軌道案内面24eの間に、第一内壁面24c、底面24d、および第二内壁面124cが位置している。軌道案内面24eは、外縁面24aの端部から溝部24bに向かう傾斜面であり、溝部24bに対する縫合糸50の長手軸(軌道)を案内可能に構成されている。軌道案内面24eを設けることによって、持針器20で縫合糸50を把持する際に、縫合糸50の長手軸が溝部24bを横断する方向(可撓管部21の長手軸Y1と交差する方向)に沿いやすくなる。軌道案内面24eによって、縫合糸50の長手軸が溝部24bを横断する方向に案内されることで、持針器20の把持部23によって縫合糸50を把持しやすくなる。
【0049】
図13は、持針器20によって縫合糸50が把持された状態を、可撓管部21の長手軸Y1および連結軸部材37の長手軸Y2と直交する軸線に沿う方向から示す図である。
図14は、持針器20によって縫合糸50が引っ張られた状態を、可撓管部21の長手軸Y1および連結軸部材37の長手軸Y2と直交する軸線に沿う方向から示す図である。
図13に示すとおり、縫合糸50は、軌道案内面24eによって溝部24bを横断する方向に案内され、第一把持部材24と第二把持部材25とによって把持されている。
【0050】
第一突起部26の外周面の一部には引っ掛け面26bが設けられている。引っ掛け面26bは、受け面26aに連なっており、受け面26aに対して傾斜した傾斜面であって、かつ、第一突起部26の外周面のうち、可撓管部21の長手軸Y1から最も離れた部分を少なくとも含んで設けられている。引っ掛け面26bは、把持された縫合糸50が引っ張られる際の縫合糸50の軌道に沿って設けられている。また、第二突起部126の外周面の一部には引っ掛け面126bが設けられている。引っ掛け面126bは、受け面126aに連なっており、受け面126aに対して傾斜した傾斜面であって、かつ、第二突起部126の外周面のうち、可撓管部21の長手軸Y1から最も離れた部分を少なくとも含んで設けられている。引っ掛け面126bは、把持された縫合糸50が引っ張られる際の縫合糸50の軌道に沿って設けられている。
図14に示すとおり、底面24d(糸押し付け部28)と把持面25aとにより縫合糸50の被把持部分を押さえ込んだ状態で、溝部24b外に位置する縫合糸50の第三部分53および第四部分54を引っ掛け面26bおよび引っ掛け面126bにそれぞれ引っ掛けている。縫合糸50が引っ張られる際に、縫合糸50は被把持部分に加えて、第三部分53および第四部分54においても引張力を受ける。このため、縫合糸50は傷みにくい。さらには、縫合糸50に対して、底面24d(糸押し付け部28)と把持面25aと間の縫合糸50の被把持部分を把持する部分、引っ掛け面26b、および引っ掛け面126bから引張力を与えることができるため、縫合糸50を大きな引張力で引っ張ることもできる。
なお、持針器20によって把持した縫合糸50を引っ張る際に、縫合糸50を引っ張る方向に応じて、引っ掛け面26bにのみ縫合糸50の第三部分53を引っ掛けてもよいし、引っ掛け面126bにのみ縫合糸50の第四部分54を引っ掛けてもよい。
【0051】
以上説明したとおり、本実施形態の持針器20によれば、第一把持部材24の溝部24bの縁24fに設けられた曲針押し付け部27と、第二把持部材25の把持面25aを含む外周面25dと、第一突起部26の受け面26aと、第二突起部126の受け面126aとによって曲針40を押さえ込んでいる。従って、持針器20は、曲針40を安定して把持することができる。
また、本実施形態の持針器20によれば、溝部24bの底面24dに設けられた糸押し付け部28と第二把持部材25の把持面25aとによって縫合糸50の被把持部分を均一に押さえ込んでいる。従って、持針器20は、縫合糸50の特定の部分に応力を集中させることなく縫合糸50を把持することができる。
さらには、本実施形態の持針器20によれば、第一の隙間61および第二の隙間62が形成されているため、縫合糸50を把持する際に、縫合糸50の被把持部分に連なる第一部分51および第二部分52を移動自在に保持し、第一部分51および第二部分52に第一把持部材24と第二把持部材25とによるせん断力をかけることがない。従って、持針器20は、縫合糸50がせん断力によって切れてしまうことを好適に防ぐことができる。
本実施形態の持針器20によれば、曲針40を安定して把持することができ、縫合糸50を傷めることなく把持することもできる。
【0052】
次に、
図15および
図16を参照して、上記態様の持針器20を用いた手技(使用方法)について説明する。
図15および
図16は、持針器20の使用方法の一過程を示す図である。
患者の自然開口から消化管内に軟性内視鏡1を挿入する。
次に、
図15に示すとおり、軟性内視鏡1のチャンネル6の先端開口部6aから持針器20の第一把持部材24および第二把持部材25を突出させる。第一把持部材24および第二把持部材25を突出させた状態で、針根元42および針先41を有する曲針40を第一把持部材24と第二把持部材25との間に把持する。
持針器20によって曲針40を把持するステップでは、持針器20の第一把持部材24と、第二把持部材25と、第一突起部26と、第二突起部126とによって曲針40を把持する。このとき、
図9および
図10に示すとおり、第一把持部材24の溝部24bの縁24f(曲針押し付け部27)と、第二把持部材25の把持面25aを含む外周面25dと、第一突起部26と、第二突起部126とによって、曲針40を押さえ込んで、曲針40を安定して把持する。
【0053】
次に、
図15に示すとおり、持針器20によって曲針40を把持しながら、曲針40を消化管内の対象組織に対して複数回刺入して、縫合糸50を対象組織に掛ける。その後、持針器20から曲針40をリリースする。
【0054】
次に、
図16に示すとおり、軟性内視鏡1のチャンネル6の先端開口部6aから第一把持部材24および第二把持部材25を突出させたまま、曲針40の針根元42に接続された縫合糸50を第一把持部材24と第二把持部材25との間に把持する。
持針器20によって縫合糸50を把持するステップでは、持針器20の第一把持部材24と第二把持部材25とによって縫合糸50の被把持部分を把持する。このとき、
図11および
図12に示すとおり、第一把持部材24の溝部24bの底面24d(糸押し付け部28)と、第二把持部材25の把持面25aとによって、縫合糸50の被把持部分を押さえ込んで把持する。第一把持部材24の底面24dと第二把持部材25の把持面25aとにより縫合糸50の被把持部分を押さえ込んだ状態において、底面24dと把持面25aとを略平行にする。このため、持針器20は、縫合糸50の特定の部分に応力を集中させることなく縫合糸50を把持することができる。
【0055】
また、持針器20は、縫合糸50の被把持部分を底面24dと把持面25aとで押さえ込むとともに、第一の隙間61に縫合糸50の被把持部分の一端に連なる第一部分51を移動自在に保持し、第二の隙間62に縫合糸50の被把持部分の他端に連なる第二部分52を移動自在に保持する。このため、持針器20は、縫合糸50にせん断力をかけることなく縫合糸50を把持することができる。
【0056】
次に、
図16に示すとおり、持針器20で縫合糸50を把持した状態で、縫合糸50の被把持部分を対象組織から遠ざける方向に縫合糸50を引っ張り、縫合糸50にテンションを付与し、対象組織を締め付ける(縫縮する)。
持針器20によって縫合糸50を引っ張るステップでは、
図14に示すとおり、溝部24b外に位置する縫合糸50の第三部分53および第四部分54を引っ掛け面26bおよび引っ掛け面126bにそれぞれ引っ掛けている。縫合糸50を引っ張る力を縫合糸50の被把持部分と、第三部分53と、第四部分54とに分散させることで、縫合糸50にダメージを与えにくく、また縫合作業の状況に応じて縫合糸50を大きな力で引っ張ることもできる。
【0057】
以上説明したとおり、本実施形態の持針器20の使用方法によれば、持針器20によって曲針40を安定して把持することができ、さらには縫合糸50を傷めることなく把持することもできる。従って、例えば軟性内視鏡1を用いた消化管内の対象組織を縫合する作業を効率良く進めることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、第一把持部材24と硬質部22とは一体成型されている例を説明したが、第一把持部材と硬質部とは別体としてもよい。この場合、第一把持部材は硬質部に回動可能に連結され、第二把持部材に対して開閉動作可能に硬質部に連結されていてもよい。第二把持部材に加えて、第一把持部材も回動可能とすることで、一対の把持部材による開閉動作の範囲をより大きくすることができる。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、第一リンク部材36a、第一ジョイント部材36b、第二リンク部材36c、および第二ジョイント部材36dから構成されるリンク機構36を有する例を説明したが、リンク機構の構成は、上述の構成には限定されない。リンク機構は、操作ワイヤ35によって伝達された操作力量を第二把持部材25に伝達可能なものであれば、どのような構成であってもよい。また、操作ワイヤ35と第二把持部材25とを直接接続することによって、リンク機構を設けない構成としてもよい。この場合には、持針器の構成をより簡素にすることができる。