【文献】
小嶌隆史,医薬品開発における結晶性選択の効率化を目指して,薬剤学,2008年09月01日,Vol.68, No.5,p.344-349
【文献】
芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol.18, No.10,pp.81-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
14.1、14.8、16.0、22.2、または24.3の1つまたは複数の追加の2θ反射(±0.2°2θ)を有するX線回折パターンによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶。
前記状態が、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、またはB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、およびバーキットリンパ腫からなる群から選択される、請求項45に記載の組成物。
前記自己免疫疾患または炎症性疾患が、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、シェーグレン病、組織移植片拒絶および移植器官の超急性拒絶、ぜんそく、全身性エリテマトーデス(および関連糸球体腎炎)、皮膚筋炎、多発性硬化症、強皮症、血管炎(ANCA関連血管炎および他の血管炎)、自己免疫性溶血性状態および血小板減少性状態、グッドパスチャー症候群(および関連糸球体腎炎および肺出血)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、アジソン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、敗血症性ショックおよび重症筋無力症;皮膚日焼け、炎症性骨盤疾患、炎症性腸疾患、尿道炎、ブドウ膜炎、副鼻腔炎、肺炎、脳炎、髄膜炎、心筋炎、腎炎、骨髄炎、筋炎、肝炎、胃炎、腸炎、皮膚炎、歯肉炎、虫垂炎、膵炎、および胆嚢炎を含むがこれらに限定されない急性炎症反応;多発性嚢胞腎疾患から選択される、請求項52に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
以下の例は、本開示の実施形態を例示するために含めるものであり、本開示の範囲を限定しようとするものではない。当業者は、本明細書で開示される技術は、本開示の実践において適用される技術を表すことを理解すべきである。当業者は、本開示に照らして、本明細書での例において、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更を加えることができることを理解するはずである。
【0059】
以下の用語および句は、本明細書で使用される場合、それらが使用されている文脈によって別段示されている場合を除いて、一般に下記の意味を有することを意図する。
【0060】
単数形で使用されている用語は、複数も含む。例えば「a」は、別段の指定がない限り、1つまたは複数を意味する。
【0061】
「約(about)」という用語の使用は、値またはパラメーター自体を含みかつそれを記載する。例えば、「約x」は、「x」自体を含みかつそれを記載する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定の関連で使用されるか、または、値、単位、定数もしくは値の範囲を修飾するために使用される場合、±10%の変動を指す。例えば、一部の実施形態では、「約2:8」は1.8〜2.2:7.2〜8.8を含む。
【0062】
用語「添加する」の使用は、別段の指定がない限り、添加される材料が組み合わされる順序、方法またはやり方を制限しない。例えば、「AをBに添加する」は、「BをAに添加する」を説明することもできる。さらに、「AおよびBをCに添加する」は、「AをBおよびCに添加する」、「AおよびCをBに添加する」、「BをAおよびCに添加する」、「BおよびCをAに添加する」、ならびに「CをAおよびBに添加する」などの様々な他の組合せを説明することもできる。
【0063】
式Iの化合物:
【化3】
の薬学的に許容される塩またはその水和物が提供される。一部の態様では、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、多形形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される、ビスメシル酸塩またはその溶媒和物/水和物の多形体である。一変形形態では、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、多形形態XIVを有する非溶媒和ビスメシル酸塩である。
【0064】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物/溶媒和物の多形形態が提供される。「ビスメシル酸塩」は、「ビスMSA塩」と本明細書で呼ばれ得ることも理解されるべきである。
【0065】
式Iの化合物のビスメシル酸塩は、様々な仕方で本明細書において表すことができる。例えば、一変形形態では、ビスメシル酸塩は、式IAによって、また別の場合には式IBによって、表すことができる:
【化4】
【0066】
一部の実施形態では、式IAまたはIBによって表されるビスメシル酸塩は、その水和物であってもよい。例えば、一実施形態では、式IAまたはIBによって表されるビスメシル酸塩は、ビスメシル酸塩水和物であってもよい。いかなる理論にも拘泥するものではないが、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物は、式ICによって表すこともできる:
【化5】
【0067】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、他の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物は、式IDによって表すことができ、
【化6】
式中、yは、少なくとも0.5である。一部の変形形態では、yは、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3もしくは少なくとも4、または0.5〜5、0.5〜4、0.5〜2、0.5〜1.5、または約0.5、約1、約1.5、約2、約3、もしくは約4もしくは約5、もしくは約6、もしくは約7もしくは約7もしくは約8である。ある特定の変形形態では、yは、整数である。例えば、yが1である場合、式IDの化合物は、ビスメシル酸塩一水和物である。yが2である場合、式IDの化合物は、ビスメシル酸塩二水和物である。ある特定の実施形態では、多形体は、多形体が式Iの化合物の2個の分子当たり結晶水の3個の分子を含有するセスキ水和物である。したがって、式ID中の変数「y」は、ビスメシル酸塩の水和物における水分含量の変動を表している。
【0068】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、別の変形形態では、ビスメシル酸塩の水和物は式IE:
【化7】
で表すことができ、式中、yは少なくとも0.5である。一部の変形形態では、yは少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3もしくは少なくとも4、または0.5〜5、0.5〜4、0.5〜2、0.5〜1.5または約0.5、約1、約1.5、約2、約3、もしくは約4、もしくは約5もしくは約6もしくは約7もしくは約8である。ある特定の変形形態では、yは整数である。例えば、yが2である場合、式IEの化合物はビスメシル酸塩二水和物である。他の変形形態では、yは非整数である。
【0069】
さらに他の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物は、様々な量の水を有することができる。
【0070】
本明細書では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体またはその水和物が提供される。本明細書に記載の多形体は、例えばX線粉末回折パターン(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、および熱重量分析(TGA)を含む、様々な固体状態の分析データによって特徴付けることができる。
【0071】
形態I:式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、6.6、14.1、14.8、16.0、17.1、21.3、22.2、および24.3°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態Iである。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、
図1Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態Iである。式Iの化合物の多形形態Iに関するDSC曲線は、
図1Bに示され、78、208、222、および254℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図1Cに示され、重量損失(室温から175℃まで3.3%)を表しており、これは、その損失がKFに基づき(3.12%)水と同定された溶媒和物を示す。形態Iに関する動的水蒸気収着曲線は
図1Dに示され、データは、その形態が、95%RHまで、25℃で約30wt%の水を吸収することを示す。形態I(水和物)を、形態VIを150℃で2時間加熱し、その後、室温に冷却することによって、または形態IIIを175℃で加熱し、その後、室温に冷却することによって単離した。
【0072】
形態II:式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、5.9、7.9、13.6、14.8、17.4、20.1、20.6、および26.5°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態IIである。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、
図2Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態IIである。DSC曲線は、
図2Bに示され、75、204、221、および254℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図2Cに示され、重量損失(室温から175℃まで3.5%)を表しており、これは、その損失がKFに基づき(3.08%)水と同定された溶媒和物を示す。形態IIに関する動的水蒸気収着曲線は
図2Dに示され、データは、その形態が、95%RHまで、25℃で約30wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。形態II(水和物)を、形態VIを真空下、120℃で一晩加熱することによって単離した。形態II水和物は、形態VIをイソプロピルアルコール中、室温で約1週間、スラリー化することによっても単離した。
【0073】
形態XIII:式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、6.0、11.6、15.4、17.4、19.5、21.8、および26.8°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態XIIIである。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、
図3Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態XIIIである。DSC曲線は、
図3Bに示され、67および162℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図3Cに示され、重量損失(室温から150℃まで2.5%)を表しており、これは、この損失がおそらくは水である溶媒和物を示す(形態XIIIは周囲条件で不安定であり、試料は、KFが実行され得る前に形態VIIに部分的に転換される)。形態XIIIに関する動的水蒸気収着曲線は
図3Dに示され、データは、その形態が、95%RHまで、25℃で約25wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。形態XIII(水和物)を、真空下で40℃に加熱されたP
2O
5チャンバー内で形態VIIを約0%の相対湿度に曝露することによって、単離した。形態VII(形態7)を調製するための方法は、米国特許公開第2016/0168155号(Fung, Peter Chee-Chu et. al.)および第2015/0038505号(Elford T. G. et. al.)に記載されている。
【0074】
形態XIV:式Iの化合物の非溶媒和ビスメシル酸塩の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体は、6.5、15.0、16.1、18.7、22.9、24.2、25.4、および26.4°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態XIVである。一部の実施形態では、式Iの化合物の非溶媒和ビスメシル酸塩の多形体は、
図4Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態XIVである。DSC曲線は、
図4Bに示され、265℃で吸熱を示す。TGA曲線は、
図4Cに示され、目に見える重量損失がないことを表しており、これは、非溶媒和材料を示す。形態XIVに関する動的水蒸気収着曲線は
図4Dに示され、データは、その形態が、95%RHまで、25℃で約35wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。形態XIV(非溶媒和物)を、形態I、形態II、形態III、または形態XVIを約250℃にDSC上で加熱することによって単離した。形態III(形態3)を調製するための方法は、公開米国特許出願第2016/0168155号(Fung, Peter Chee-Chu et. al.)および第2015/0038505号(Elford T. G. et. al.)に記載されている。
【0075】
形態XV:式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、7.0、13.2、15.3、19.6、20.6、22.0、25.7、および26.7°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態XVである。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、
図5Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態XVである。DSC曲線は、
図5Bに示され、63、122、146、および168℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図5Cに示され、重量損失(室温から175℃まで4.3%)を表しており、これは、その損失がKFに基づき(4.2%)水と同定された溶媒和物を示す。225℃よりも高い温度での重量損失は、分解に起因する。形態XVに関する動的水蒸気収着曲線は
図5Dに示され、データは、その形態が、95%RHまで、25℃で約23wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。形態XI(水和物)は、形態VIIをアセトン中4%の水で、室温で数日間、スラリー化することによって単離した。
【0076】
形態XVI:式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、5.0、7.8、14.8、17.3、17.8、19.8、22.2、および26.0°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態XVIである。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、
図6Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態XVIである。DSC曲線は、
図6Bに示され、20、111、160、195、および259℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図6Cに示され、重量損失(室温から175℃まで2.9%)を表しており、これは、その損失がTGA−MSに基づき水と同定された溶媒和物を示す。形態XVIに関する動的水蒸気収着曲線は
図6Dに示され、データは、その形態が、95%RHまで、25℃で約28wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。形態XVIは、形態VIIまたはXIXを、アセトン、アセトン中1%の水、またはアセトン中2%の水中でスラリー化することによって初めに単離した。
【0077】
形態XVIII:式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、4.5、8.9、13.3、18.0、22.1、24.7、27.2、および31.6°の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態XVIIIである。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体は、
図7Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態XVIIIである。DSC曲線は、
図7Bに示され、72および81℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図7Cに示され、重量損失(室温から200℃まで14.7%)を表しており、これはその損失がTGA−質量分光法に基づき水と同定された溶媒和物を示す。形態XVに関する動的水蒸気収着曲線は、DVS実験後の試料のXRPD分析に示され、材料が形態VIIに転換されたことを示す。形態XVIIIは、80℃のオーブン内で、アセトン中20%の水からの湿性材料を乾燥したときに単離された。
【0078】
形態VI:式Iの化合物のビスメシル酸塩のギ酸溶媒和物の多形形態。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩のギ酸溶媒和物の多形体は、13.9、16.6、20.5、および25.2°2θ、±0.2°2θでシャープな反射を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する、多形形態VIである。それは6.3、14.6、17.8、および21.2°2θ±0.2°2θでのピークによってさらに特徴付けることができる。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩のギ酸溶媒和物の多形体は、
図8Aで実質的に示されるX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する多形形態VIである。DSC曲線は、
図8Bに示され、71、184、206、および255℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、
図8Cに示され、重量損失(室温から175℃まで6.7%)を表しており、これは、その損失がイオンクロマトグラフィーによりギ酸と同定された溶媒和物を示す。225℃よりも高い温度での重量損失は、分解に起因する。形態VIは、反応器Aにギ酸(3V、3.6X)および酢酸エチル(2V、1.8X)を投入し、反応器の内容物を摂氏22度(摂氏19〜25度)に調整したときに単離された。式Iの化合物の遊離塩基非メシル化形態(free base non-mesylated form)(1.0X)を、反応器温度を摂氏22度(摂氏19〜25度)に維持しつつ、撹拌しながら少量ずつ添加し、内容物を、すべての固体が溶解するまで(約1時間)撹拌した。反応器A内の溶液を反応器Bに移し、ギ酸(0.08V、0.1X)を、酢酸エチル(2V、1.8X)およびスルホン酸メチル(医薬品グレード、2.0mol当量、0.47X)と共に反応器Aに添加した。反応器A内の溶液を、ポット温度を摂氏22度(摂氏19〜25度)に維持しながら、研磨フィルターを介して反応器Bに30分かけて移した。酢酸エチル(5V、4.5X)を反応器Aに、次いで反応器Bに、最短で1時間かけて添加した。反応器Bの内容物を、16時間、摂氏22度(摂氏19〜25度)で撹拌し、次いで濾過し、酢酸エチル(4V、3.6X)ですすぎ、真空下、摂氏60度で乾燥させた。
【0079】
一部の変形形態では、多形形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXは、それぞれ
図1A、2A、3A、4A、5A、6A、7A、8A、および9Aで実質的に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。しかし、図に表される多形形態のピークの相対強度および帰属は、試料の調製、マウント、ならびにスペクトルを得るために使用される機器および分析手順および設定を含むいくつかの因子に応じて変動し得ることを理解すべきである。したがって、図において観察されるピークおよび本明細書で挙げる帰属は、±0.2°2θの変動を包含するものとする。
【0080】
結晶性
用語「結晶性」は、材料が、分子レベルで規則正しい秩序ある内部構造を有し、規定されたピークで特徴的なX線回折パターンをもたらす固相を指す。またこのような材料は、十分に加熱されると、液体の特性を呈するが、固体から液体への変化は、相変化、一般に一次(融点)によって特徴付けられる。
【0081】
例えば、一実施形態では、多形形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIIIおよびXIXは、実質的に結晶性である。一部の実施形態では、実質的に結晶性である化合物(例えば多形形態I)は、組成物中に存在する化合物の50%超、または55%超、または60%超、または65%超、または70%超、または75%超、または80%超、または85%超、または90%超、または95%超、または99%超を結晶形態で有する。他の実施形態では、実質的に結晶性(例えば、多形形態I)の化合物は、約20%以下、または約10%以下、または約5%以下、または約2%以下を非晶質形態で有する。さらに他の実施形態では、実質的に結晶性(例えば、多形形態I)の化合物は、約20%以下、または約10%以下、または約5%以下、または約2%以下を非結晶形態で有する。
【0082】
多形形態を調製する方法
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態Iを調製する方法であって、形態VIを、約130〜170℃でもしくは約150℃で約1〜3時間、適切な容器内で加熱することを含む、または形態IIIを、約155〜195℃でもしくは約175℃で約1〜3時間、適切な容器内で加熱することによる、方法が提供される。形態VIから形態Iへの所望量の転換が完了したら、多形体を室温に冷却することができる。
【0083】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態IIを調製する方法であって、形態VIを、約100〜130℃でまたは約120℃で、真空下、適切な容器内で加熱することを含む方法が提供される。形態VIから形態IIへの所望量の転換が完了したら、多形体を室温に冷却することができる。一部の実施形態では、イソプロピルアルコールなどの溶媒中で形態VIのスラリーを室温で形成し、約1週間撹拌することによって、多形形態IIを調製する方法が提供される。一部の実施形態では、多形形態IIを調製する方法であって、ある量の多形形態IIの種(例えば、上記のまたは本明細書の他の箇所に記載された方法によって得られる)および少なくとも1種の溶媒、例えばイソプロピルアルコールを、多形形態VIに添加して、混合物を形成させ、多形形態IIを単離することを含む方法が提供される。上記の方法の一部の実施形態では、種の量は、核形成を惹起するのに十分な量である。一部の実施形態では、多形形態VIに添加される形態IIの種の量は、多形形態VIの約0.001〜約0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態VIに添加される形態IIの種の量は、多形形態VIの約0.01〜約0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態VIに添加される形態IIの種の量は、多形形態VIの約0.01〜約0.08重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態VIに添加される形態IIの種の量は、多形形態VIの約0.015重量パーセントである。しかし一実施形態では、多形形態VIから多形形態IIを調製する方法のステップの1つまたは複数は、省略することができ、またはステップの順序は変わり得る。例えば、代替の実施形態では、形態IIを作製する方法は、形態IIの種を形態VIに添加することを必要としない。一部の実施形態では、方法は、混合物を加熱および冷却するステップを含む。一部の実施形態では、多形形態VIは反応混合物から単離されず、インサイチュで生成し、形態IIに転換される。
【0084】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態XIIIを調製する方法であって、多形形態VIIを、P
2O
5チャンバー内などで、真空下、約30〜60℃で、約ゼロパーセンテージの湿度に曝露させることを含む方法が提供される。一部の実施形態では、真空チャンバー内の温度は約40℃である。CaSO
4(Drierite)、シリカゲル、MgSO
4、およびP
2O
5などの乾燥剤を使用して、低湿度を維持することができる。
【0085】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の非溶媒和多形体である多形形態XIVを調製する方法であって、多形形態I、形態II、形態III、または形態XVIを約250℃に加熱することを含む方法が提供される。
【0086】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態XVを調製する方法であって、形態IIIおよび形態XVの混合物を、アセトン中約1.5〜5%の水中で、室温でスラリー化することを含む方法が提供される。一実施形態では、アセトン中約2.5%の水を使用することができる。一部の実施形態では、多形形態XVを調製する方法であって、形態VIIを、アセトン中約2〜7%の水中で、室温でスラリー化することを含み、または必要に応じてアセトン中約4%の水を使用することができる、方法が提供される。
【0087】
一部の実施形態では、多形形態XVを調製する方法であって、ある量の多形形態XVの種を、アセトン中4%の水中のスラリー混合物に、室温で数日間添加することを含む方法が提供される。上記の方法の一部の実施形態では、種の量は、核形成を惹起するのに十分な量である。一部の実施形態では、スラリーに添加される形態XVの種の量は、多形形態IIIまたはVIIの約0.001〜約0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態IIIまたはVIIに添加される形態XVの種の量は、出発多形形態の約0.01〜約0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態IIIまたはVIIは反応混合物から単離されず、インサイチュで生成し、形態XVに転換される。
【0088】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態XVIを調製する方法であって、形態VIIもしくはXIXを、アセトン、アセトン中1%の水、もしくはアセトン中2%の水中で、または形態VIIをアセトン中で、室温、約1日間スラリー化することを含む方法が提供される。形態XVIは、非晶質材料を、アセトン中約0.5〜3%の水中で、室温で約1〜5日間スラリー化することによって、調製することもできる。溶媒は、アセトン中約1〜2%の水とすることができる。一部の実施形態では、多形形態XVIを調製する方法であって、ある量の多形形態XVIの種を、スラリー混合物に添加することを含む方法が提供される。上記の方法の一部の実施形態では、種の量は、核形成を惹起するのに十分な量である。一部の実施形態では、スラリーに添加される形態XVIの種の量は、多形形態VIIの約0.001〜約0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態VIIに添加される形態XVIの種の量は、出発多形形態の約0.01〜約0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態VIIは反応混合物から単離されず、インサイチュで生成し、形態XVIに転換される。
【0089】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態XVIIIを調製する方法であって、式Iの化合物を、アセトン中約20%の水の溶媒中でスラリー化し、真空下、約80℃の温度で乾燥させることを含む方法が提供される。
【0090】
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態XIXを調製する方法であって、形態IIIを水に溶解し、溶液を噴霧乾燥させることを含む方法が提供される。
【0091】
該方法の一部の実施形態では、混合物が形成される。一部の実施形態では、混合物は、均質な溶液である。他の実施形態では、混合物は、不均一であり、2つ以上の相、例えば固相および液相を含む。一部の実施形態では、混合物は、スラリーである。一部の実施形態では、混合物の内容物の一部は、経時的に相変化を受ける場合がある。例えば、均質な溶液混合物は、経時的に固体を形成させ、固相と液相を含む不均一な混合物になる場合がある。あるいは、不均一な混合物は、例えば固体材料が溶媒に溶解する場合には、均質な溶液混合物になる場合がある。一部の実施形態では、相変化は、反応事象時に生じる。例えば、均質な溶液混合物は、反応事象時に不均一な混合物になることがあり、逆の場合も同じである。反応事象は、反応混合物の状態の変化、例えば冷却もしくは加熱、特定の溶媒の添加、固体の添加、または蒸発であり得る。
【0092】
一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒が、混合物に添加される。溶媒の非限定的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、n−ヘプタン、ヘキサン、水、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。一部の実施形態では、溶媒は、アセトンである。他の実施形態では、溶媒は、アセトンおよび水である。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、有機溶媒である。一部の実施形態では、溶媒は、0.1〜8%の水を含む混合物である。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、水をさらに含む有機溶媒である。有機溶媒の非限定的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、n−ヘプタン、ヘキサン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、プロトン性溶媒をさらに含む。プロトン性溶媒の非限定的な例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、およびブタノールが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、水をさらに含むアセトンである。
【0093】
重水素化化合物
式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩(例えばモノメシル酸塩およびビスメシル酸塩を含む)またはその水和物を含む本明細書で与えられる任意の式または構造は、化合物またはその塩または水和物の同位体標識した形態としても意図される。したがって、標識をしていない形態の化合物が提供されるが、このような同位体が明示されていなくても、本開示は、同位体標識した化合物も意図することが理解される。同位体標識した化合物またはその塩または水和物は、1個または複数の原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子で置き換えられていること以外は、本明細書で与えられる式で表される構造を有する。本開示の化合物中に取り込むことができる同位体の例には、これらに限定されないが、
2H(重水素、D)、
3H(三重水素)、
11C、
13C、
14C、
15N、
18F、
31P、
32P、
35S、
36Clおよび
125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が含まれる。例えば、これらに限定されないが、
2H(重水素、D)、
3H(三重水素)、
11C、
13C、
14C、
15Nおよび
35Sなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体を、式Iの化合物の塩(例えば、メシル酸塩)またはその水和物を含む式Iの化合物中に取り込むことができる。本開示の種々の同位体標識した化合物またはその塩または水和物は、例えば
3H、
13Cおよび
14Cなどの放射性同位体を取り込んだものである。このような同位体標識した化合物またはその塩は、薬物または基質の組織分布アッセイまたは被験体の放射線処置を含む、代謝研究、反応動力学的研究、検出または画像化技術、例えばポジトロン放出断層撮影(PET)または単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)において有用であり得る。
【0094】
本開示は、炭素原子と結合している1〜n個の水素が重水素で置き換えられている(ここでnは分子中の水素の数である)式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩(例えば、モノメシル酸塩およびビスメシル酸塩を含む)またはその水和物も含む。このような化合物は、代謝に対して高い耐性を示すことができ、したがって、哺乳動物に投与した場合、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩またはその水和物の半減期を増加させるのに有用である。例えばFoster、「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」、Trends Pharmacol. Sci.5巻(12号):524〜527頁(1984年)を参照されたい。このような化合物は、当技術分野で周知の手段によって、例えば、1つまたは複数の水素が重水素で置き換えられている出発原料を用いることによって合成される。
【0095】
本開示の重水素標識または置換された治療化合物(その塩または水和物を含む)は、吸収、分布、代謝および排出(ADME)に関して改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態学的)特性をもつことができる。重水素などのより重い同位体での置換は、より高い代謝安定性によりもたらされるある特定の治療上の利点、例えばin vivoでの半減期の増加、必要投与量の減少および/または治療指数の改善を提供することができる。
18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識した化合物およびそのプロドラッグは、一般に、非同位体標識試薬を、容易に入手できる同位体標識試薬に置換することにより、以下に記載するスキームまたは実施例および調製で開示される手順を実施することによって調製することができる。この関連で、重水素は、式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩(例えば、モノメシル酸塩およびビスメシル酸塩を含む)またはその水和物において、置換基と見なされることが理解される。
【0096】
このようなより重い同位体、具体的には重水素の濃度は、同位体濃縮係数で定義することができる。本開示の化合物において、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すものとする。別段の言及のない限り、位置が具体的に「H」または「水素」と指定されている場合、その位置は、その天然に豊富にある同位体組成で水素を有すると理解される。したがって、本開示の化合物またはその塩において、重水素(D)と具体的に指定されている任意の原子は、重水素を表すものとする。
【0097】
医薬組成物
本明細書に記載のビスメシル酸塩および本明細書に記載のその任意の多形形態は、適正な化学物質として投与することができるが、化合物またはその塩もしくは水和物を、医薬組成物または製剤の形態で投与することが典型的である。(i)式Iの化合物の形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択されるビスメシル酸塩多形体、(ii)薬学的担体、賦形剤、アジュバント、またはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。薬学的担体、賦形剤、アジュバント、またはビヒクルは、本明細書では、薬学的に許容される担体 賦形剤、アジュバント、もしくはビヒクル、または生体適合性のある薬学的担体、賦形剤、アジュバント、もしくはビヒクルと称することもできる。組成物は、本明細書に記載の多形形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形形態を、ただ1つの活性薬剤として含むことができ、あるいは他の薬剤、例えば、1種または複数の薬学的に許容される担体または賦形剤と混合されたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、オリゴペプチドもしくはポリペプチド、薬物、またはホルモンと組み合わせて含むことができる。担体、賦形剤、および他の成分は、それらが製剤の他の成分と適合性がありかつそのレシピエントに有害でない限り、薬学的に許容されるとみなすことができる。
【0098】
「担体」という用語は、賦形剤、崩壊剤、析出抑制剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、滑沢剤、ならびにそれと一緒に化合物を投与する他の添加剤およびビヒクルを指す。担体は本明細書で概略的に記載され、また、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」においても記載されている。
【0099】
医薬組成物は、適切な薬学的に許容される担体を含有するように製剤化することができ、任意選択で、本明細書に記載の多形形態を薬学的に使用され得る調製物に加工するのを容易にする添加剤および助剤を含むことができる。投与機序によって、一般に担体の性質が決定される。例えば、非経口投与のための製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含むことができる。非経口投与に適した担体は、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、および他の生理的に適合性のある溶液の中から選択することができる。非経口投与に例示的な担体は、生理的に適合性のある緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理緩衝食塩水である。組織または細胞への投与では、特定の障壁が浸透されるようにするのに適した浸透剤が、製剤に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般に公知である。タンパク質を含む調製物では、製剤は、安定化材料、例えばポリオール(例えばスクロース)および/または界面活性剤(例えば非イオン性界面活性剤)等を含み得る。
【0100】
あるいは、非経口使用のための製剤は、適した油性注射懸濁液として調製された、本明細書に記載の多形形態の分散液または懸濁液を含み得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えばゴマ油、および合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストラン、およびこれらの混合物を含有することができる。また任意選択で、懸濁液は、適切な安定剤、または化合物の溶解性を増大して、高度濃縮溶液を調製することができる薬剤を含有することができる。また、pHに感応して活性薬剤を可溶化および/または徐放する水性ポリマー、例えばメタクリルポリマー、例えばRohm America Inc.(Piscataway、N.J.)から利用可能なEUDRAGIT(商標)シリーズを、コーティングまたはマトリクス構造として使用することができる。また、乳化剤または分散剤(表面活性材料、界面活性剤)によって任意選択で安定化されたエマルジョン、例えば水中油および油中水分散液を使用することができる。懸濁液は、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン(polyoxyethlyene)ソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカントガム、ならびにこれらの混合物を含有することができる。
【0101】
また、本明細書に記載の多形形態を含有するリポソームは、非経口投与のために用いることができる。リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から導出される。また、リポソーム形態の組成物は、安定剤、保存剤、賦形剤などの他の成分を含有することができる。例示的な脂質には、天然および合成両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)が含まれる。リポソームを形成させる方法は、当技術分野で公知である。例えば、Prescott(編)、Methods in Cell Biology、第XIV巻、33頁、Academic Press、New York(1976年)参照。
【0102】
一部の実施形態では、本明細書に開示の多形体またはその組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を使用して、経口投与に合わせて製剤化される。経口投与に合わせて製剤化された調製物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、糖衣錠、ロゼンジ剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、エリキシル剤、懸濁液剤、または散剤の形態であり得る。例えば、経口使用するための医薬品調製物は、活性化合物を固体添加剤と組み合わせ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、所望に応じて適切な助剤を添加した後に顆粒混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得ることができる。経口製剤では、非経口使用について記載されているものに類似のタイプの液体担体、例えば緩衝水溶液、懸濁液等を用いることができる。
【0103】
例示的な経口製剤には、錠剤、糖衣錠、およびゼラチンカプセル剤が含まれる。これらの調製物は、1つまたは複数の添加剤を含有することができ、これらには、a)賦形剤、例えば微結晶性セルロースおよびラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含めた糖、b)結合剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トウモロコシ、コムギ、コメ、バレイショ等に由来するデンプン、c)セルロース材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ガム、例えばアラビアゴムおよびトラガカントガム、ならびにタンパク質、例えばゼラチンおよびコラーゲン、d)崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム、または発泡性組成物、e)滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸もしくはそのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、およびポリエチレングリコール、f)香味剤および甘味剤、g)例えば作製物を同定するか、または活性化合物の量(投薬量)を特徴付けるための着色剤または顔料、ならびにh)他の成分、例えば保存剤、安定剤、膨張剤、乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
担体の例には、これらに限定されないが、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、イソステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシステアリン酸ヒドロキシオクタコサニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、微結晶性セルロース、ポロクサマー124、ポロクサマー181、ポロクサマー182、ポロクサマー188、ポロクサマー237、ポロクサマー407、ポビドン、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、シリコーン、シリコーン接着剤4102およびシリコーンエマルジョンが含まれる。しかし、本開示において提供される医薬組成物のために選択された担体、および組成物中でのこのような担体の量は、製剤化および処理(例えば、乾式造粒製剤、固体分散製剤)の方法に応じて変動し得ることを理解すべきである。
【0105】
ある特定の変形形態では、医薬組成物は、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される多形体、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、クロスポビドン、ポロクサマー、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。別の変形形態では、医薬組成物は、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される多形体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにマンニトール、クロスポビドン、ポロクサマー、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の薬学的に許容される担体を含む。
【0106】
上記した薬学的に許容される担体は、所与の製剤において1つまたは複数の異なる機能を遂行することができ、担体の1つまたは複数の機能の部類(例えば、崩壊剤、滑沢剤、賦形剤)の範囲に入り得ることも理解すべきである。
【0107】
他の実施形態では、医薬組成物は、流動、圧縮、硬度、味覚および錠剤性能を改善するために、1つまたは複数の追加の担体を含むことができることをさらに理解すべきである。
【0108】
一部の実施形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの式Iの化合物のメシル酸塩(例えば、モノメシル酸塩またはビスメシル酸塩を含む)、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。一変形形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。別の変形形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。さらに別の変形形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの多形形態3、多形形態7、またはそれらの組合せ、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。
【0109】
使用方法
治療的または予防的に、Syk活性を選択的または特異的に阻害するための、本開示に記載する医薬組成物の使用も提供される。この方法は、阻害を必要とする個体に、Syk活性を阻害するのに十分な量で医薬組成物を投与するステップを含む。この方法は、その症状または病状がSykの発現または活性によって媒介される状態に苦しむ、またはそれにかかり易い被験体(例えば、ヒト)を処置するために用いることができる。一態様では、処置を必要とするヒトを処置する方法であって、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩多形体をヒトに投与することを含む方法が提供される。
【0110】
「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチである。有益なまたは望ましい臨床結果は以下の:
a)疾患または状態を阻害すること(例えば、疾患または状態からもたらされる1つまたは複数の症状を減少させること、および/または疾患または状態の程度を低下させること);
b)疾患または状態に関連する1つまたは複数の臨床症状の発症を遅延させるもしくは停止させること(例えば、疾患または状態を安定化させること、疾患または状態の悪化または進行を防止するもしくは遅延させること、および/または、疾患または状態の伝播(例えば、転移)を防止するもしくは遅延させること);および/または
c)疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の後退を引き起こさせること(例えば、疾患状態を改善すること、疾患または状態の部分または完全寛解をもたらすこと、別の薬物療法の効果を増強すること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を向上させること、および/または生存を延長させることの1つまたは複数を含むことができる。
【0111】
「防止(prevention)」または「防止すること(preventing)」は、疾患または状態の臨床症状を発症させないようにする、疾患または状態の任意の処置を意味する。一部の実施形態では、化合物を、疾患または状態のリスクがあるまたはその家族歴を有する被験体(ヒトを含む)に投与することができる。
【0112】
「被験体」は、処置、観察または実験の対象である、または対象となる哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載する方法は、ヒトの治療および/または獣医学的適用において有用であり得る。一部の実施形態では、被験体は哺乳動物である。一実施形態では、被験体はヒトである。
【0113】
医薬組成物の「治療有効量」という用語は、被験体に投与した場合、処置をもたらして、症状の改善または疾患進行の遅延などの治療利益を提供するのに十分な量を意味する。例えば、治療有効量は、Syk活性の阻害に応答性の疾患または状態の症状を減少させるのに十分な量であってよい。治療有効量は、被験体、処置される疾患または状態、被験体の体重および年齢、疾患または状態の重症度ならびに投与の仕方に応じて変動し得、当業者が容易に決定することができる。
【0114】
「阻害」という用語は、生物学的活性または過程のベースライン活性の低下を示す。「Syk活性の活性の阻害」は、このような医薬組成物の非存在下でのSykの活性に対する、該医薬組成物の存在への直接的または間接的な応答としてのSykの活性の低下を指す。一部の実施形態では、Syk活性の阻害は、処置前の同じ被験体と、またはその処置を受けていない他の被験体と比較することができる。
【0115】
ある特定の態様では、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩多形体、および本明細書に記載のその組成物は、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を有する被験体を処置するために使用される。
【0116】
一態様では、本開示で提供される医薬組成物は、がんの処置に使用することができる。一部の実施形態では、多形体および本明細書に記載のその組成物は、造血由来のがん細胞の成長または増殖を阻害する方法において用いることができる。一部の実施形態では、がん細胞は、リンパ系由来であり、特定の実施形態では、がん細胞は、Bリンパ球またはBリンパ球前駆体に関係し、またはそれらに由来する。
【0117】
本開示で開示される方法を使用する処置に敏感に反応するがんには、これらに限定されないが、リンパ腫(例えば、リンパ系および細網内皮系組織の悪性新生物、例えばバーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ球性リンパ腫);多発性骨髄腫;白血病(例えば、リンパ性白血病、慢性骨髄性(骨髄性の)白血病)が含まれる。造血起源の、あるいは別段、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)を発現する他のがん細胞も、本明細書に記載する多形体およびその組成物の投与によって処置することができる。
【0118】
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、がんは白血病またはリンパ腫である。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)である。ある特定の変形形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。一実施形態では、がんは、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)またはB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)である。非ホジキンリンパ腫は、例えば濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症および辺縁帯リンパ腫を含む無症候性B細胞疾患、ならびに例えばバーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)を含む侵襲性リンパ腫を包含する。一実施形態では、がんは、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)である。さらに別の実施形態では、がんは、非FL iNHLである。
【0119】
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、がんは、血液系悪性疾患である。ある特定の実施形態では、血液系悪性疾患は白血病(例えば、慢性リンパ性白血病)またはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)である。一部の変形形態では、がんは、MCL、DLBCL、iNHL、FL、MZL、LPL、SLLまたはWMである。他の変形形態では、がんは、CLL、MCL、DLBCL、iNHL(例えば、非FL iNHLを含む)またはFLである。
【0120】
他の実施形態では、がんは、固形腫瘍がん(または固形がん腫瘍)である。ある特定の実施形態では、がんは固形腫瘍であり、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)活性を発現する。他の実施形態では、固形腫瘍がんは、膵臓がん、肺がん、結腸がん、結腸直腸がん、乳がん、食道がん、腺癌、肝細胞がんからなる群から選択される。一実施形態では、固形腫瘍がんは、膵臓がん、肺がん、結腸直腸がん、卵巣がんおよび肝細胞がんからなる群から選択される。
【0121】
本明細書で提供される処置方法のいずれかを、進行期のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかを、局所的に進行期のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかを、初期段階のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかを、寛解期のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかの実施形態の一部では、がんは、寛解後に再発している。本明細書で提供される処置方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは進行がんである。
【0122】
一部の実施形態では、本明細書に記載する化合物および組成物を使用して影響を及ぼすことができる状態および疾患には、これらに限定されないが、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、気管支ぜんそく、じんましん(urticaria)(じんましん(hives))および食品アレルギーならびに他のアトピー性状態を含むアレルギー性障害;これらに限定されないが、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、シェーグレン病、組織移植片拒絶および移植器官の超急性拒絶、ぜんそく、全身性エリテマトーデス(および関連糸球体腎炎)、皮膚筋炎、多発性硬化症、強皮症、血管炎(ANCA関連血管炎および他の血管炎)、自己免疫性溶血性状態および血小板減少性状態、グッドパスチャー症候群(および関連糸球体腎炎および肺出血)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、アジソン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、敗血症性ショックおよび重症筋無力症を含む自己免疫疾患および/または炎症性疾患;これらに限定されないが、皮膚日焼け(skin sunburn)、炎症性骨盤疾患、炎症性腸疾患、尿道炎、ブドウ膜炎(uvitis)、副鼻腔炎、肺炎、脳炎、髄膜炎、心筋炎、腎炎、骨髄炎、筋炎、肝炎、胃炎、腸炎、皮膚炎、歯肉炎、虫垂炎、膵炎および胆嚢炎(cholocystitis)を含む急性炎症反応;多発性嚢胞腎疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
一部の実施形態では、自己免疫疾患の処置における本明細書に記載する化合物および組成物の使用も提供される。自己免疫疾患のある特定の実施形態には、ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症およびループスが含まれる。
【0124】
さらに別の態様では、本開示で提供される医薬組成物のいずれかを個体に投与することによって、Syk媒介性障害を有する個体を処置する方法が提供される。また、本開示で提供される医薬組成物のいずれかを個体に投与することによって、個体のSykを調節する方法が提供される。
【0125】
一部の実施形態では、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩多形体を含む医薬組成物は、フルダラビン、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アルキル化剤、アレムツズマブ、および他の化学療法処置、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン);R CHOP(リツキシマブ CHOP);hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキセート、シタラビン);R−hyperCVAD(リツキシマブ−hyperCVAD);FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);R−FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);ボルテゾミブ、およびリツキシマブ;テムシロリムスおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびVelcade(登録商標);ヨウ素−131 トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびCHOP;CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);FR(フルダラビン、リツキシマブ);ならびにD.T.PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、Adriamycin(登録商標)、シクロホスファミド、エトポシド)から選択される、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、または少なくとも4種の抗がん療法(例えば、標準的または実験的な化学療法を含む)を受けている患者に投与される。化学療法処置(標準的または実験的な化学療法を含む)の他の例は、以下に記載される。さらに、ある特定のリンパ腫の処置は、Cheson, B.D., Leonard, J.P., "Monoclonal Antibody Therapy for B-Cell Non-Hodgkin's Lymphoma" The New England Journal of Medicine 2008, 359(6), p.613-626;およびWierda, W.G., "Current and Investigational Therapies for Patients with CLL" Hematology 2006, p.285-294に概説されている。米国におけるリンパ腫の発生パターンは、Morton, L.M. et al. "Lymphoma Incidence Patterns by WHO Subtype in the United States, 1992-2001" Blood 2006, 107(1), p.265-276に概説されている。一部の実施形態では、患者は、上記抗がん療法の少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、または少なくとも4種に対して難治性である。
【0126】
一部の実施形態では、患者は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、特にB細胞起源のものの処置を受けており、この処置は、モノクローナル抗体、標準的な化学療法アプローチ(例えば、CHOP、CVP、FCM、MCPなど)、放射免疫療法、またはこれらの組合せ、特に抗体療法を化学療法と統合したものの使用を含む。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための非コンジュゲート型モノクローナル抗体の例には、リツキシマブ、アレムツズマブ、ヒトまたはヒト化抗CD20抗体、ルミリキシマブ、抗TRAIL、ベバシズマブ、ガリキシマブ、エプラツズマブ、SGN−40、および抗CD74が含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんの処置において使用される実験的抗体剤の例には、オファツムマブ、ha20、PRO131921、アレムツズマブ、ガリキシマブ、SGN−40、CHIR−12.12、エプラツズマブ、ルミリキシマブ、アポリズマブ、ミラツズマブ、およびベバシズマブが含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための化学療法の標準的なレジメンの例には、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)、CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、MCP(ミトキサントロン、クロラムブシル、およびプレドニゾロン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)、R−FCM(リツキシマブ+FCM)、R−CVP(リツキシマブ+CVP)、およびR MCP(R MCP)が含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための放射免疫療法の例には、イットリウム−90標識イブリツモマブチウキセタンおよびヨウ素−131標識トシツモマブが含まれる。
【0127】
別の例では、患者は、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキセート、シタラビン)、およびFCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)などの併用化学療法を含む、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための治療的処置を受けている。さらに、これらのレジメンを、モノクローナル抗体リツキシマブ(Rituxan)で補充して、併用療法R−CHOP、hyperCVAD−R、およびR−FCMを形成させることができる。他のアプローチには、上記療法のいずれかと、幹細胞移植またはICE(イホスファミド、カルボプラチン、およびエトポシド)での処置を組み合わせることが含まれる。マントル細胞リンパ腫を処置するための他のアプローチには、リツキシマブ(Rituxan)のようなモノクローナル抗体を使用するなどの免疫療法が含まれる。リツキシマブは、辺縁帯リンパ腫、WM、CLL、および小リンパ球性リンパ腫を含む無症候性B細胞がんを処置するために使用することができる。修正されたアプローチは、モノクローナル抗体を、ヨウ素−131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびイットリウム−90イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))などの放射性同位体粒子と組み合わせる放射免疫療法である。別の例では、Bexxar(登録商標)は、CHOPでの逐次的処置において使用される。別の免疫治療の例には、個々の患者の腫瘍の遺伝子構成をもとにしたがんワクチンの使用が含まれる。リンパ腫ワクチンの例はGTOP−99(MyVax(登録商標))である。マントル細胞リンパ腫を処置するためのさらに他のアプローチは、高用量化学療法とあわせて自家幹細胞移植を含み、あるいは、マントル細胞リンパ腫の処置は、プロテアソーム阻害剤、例えばVelcade(登録商標)(ボルテゾミブまたはPS−341)、または抗血管新生剤、例えばサリドマイド、特にRituxanと組み合わせたものを投与することを含む。別の処置アプローチは、他の化学療法剤と組み合わせた、オブリメルセン(Genasense)などの、Bcl−2タンパク質の分解をもたらしかつ化学療法へのがん細胞の感受性を高める薬物を投与することである。別の処置アプローチには、細胞成長の阻害、さらには細胞死をもたらすことができるmTOR阻害剤を投与することが含まれ;非限定的な例は、テムシロリムス(CCI−779)、およびRituxan(登録商標)、Velcade(登録商標)、または他の化学療法剤と組み合わせたテムシロリムスである。MCLのための他の最近の療法が開示されている(Nature Reviews;Jares, P.2007)。そのような例には、フラボピリドール、PD0332991、R−ロスコビチン(セリシリブ、CYC202)、スチリルスルホン、オバトクラックス(GX15−070)、TRAIL、抗TRAIL DR4抗体およびDR5抗体、テムシロリムス(CCl−779)、エベロリムス(RAD001)、BMS−345541、クルクミン、ボリノスタット(SAHA)、サリドマイド、レナリドミド(Revlimid(登録商標)、CC−5013)、およびゲルダナマイシン(17AAG)が含まれる。
【0128】
一部の実施形態では、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩多形体を含む医薬組成物は、ワルデンストレームマクログロブリン血症の処置を受けている患者に投与される。ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を処置するのに使用される他の治療剤の例には、ペリホシン、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、リツキシマブ、クエン酸シルデナフィル(Viagra(登録商標))、CC−5103、サリドマイド、エプラツズマブ(hLL2−抗CD22ヒト化抗体)、シンバスタチン、エンザスタウリン、campath−1H、デキサメタゾン、DT PACE、オブリメルセン、アンチネオプラストンA10、アンチネオプラストンAS2−1、アレムツズマブ、ベータアレチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン塩酸塩、プレドニゾン、硫酸ビンクリスチン、フルダラビン、フィルグラスチム、メルファラン、組換えインターフェロンアルファ、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、エトポシド、メルファラン、ドラスタチン10、インジウムIn 111モノクローナル抗体MN−14、イットリウムY90ヒト化エプラツズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、ブスルファン、シクロスポリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、治療用同種異系リンパ球、イットリウムY90イブリツモマブチウキセタン、シロリムス、タクロリムス、カルボプラチン、チオテパ、パクリタキセル、アルデスロイキン、組換えインターフェロンアルファ、ドセタキセル、イホスファミド、メスナ、組換えインターロイキン−12、組換えインターロイキン−11、Bcl−2ファミリータンパク質阻害剤ABT−263、デニロイキンジフチトクス、タネスピマイシン、エベロリムス、ペグフィルグラスチム、ボリノスタット、アルボシジブ、組換えflt3リガンド、組換えヒトトロンボポエチン、リンフォカイン活性化キラー細胞、アミホスチン三水和物、アミノカンプトテシン、イリノテカン塩酸塩、カスポファンギン酢酸塩、クロファラビン、エポエチンアルファ、ネララビン、ペントスタチン、サルグラモスチム、ビノレルビン二酒石酸塩、WT−1アナログペプチドワクチン、WT1 126−134ペプチドワクチン、フェンレチニド、イクサベピロン、オキサリプラチン、モノクローナル抗体CD19、モノクローナル抗体CD20、オメガ−3脂肪酸、ミトキサントロン塩酸塩、酢酸オクトレオチド、トシツモマブおよびヨウ素I−131トシツモマブ、モテキサフィンガドリニウム、三酸化ヒ素、ティピファーニブ、自家ヒト腫瘍由来HSPPC−96、ベルツズマブ、ブリオスタチン1およびペグ化リポソームドキソルビシン塩酸塩ならびにこれらの任意の組合せが含まれる。
【0129】
WMを処置するのに使用される治療手順の例には、末梢血幹細胞移植、臍帯幹細胞移植、自家造血幹細胞移植、自家骨髄移植、抗体療法、生物学的療法、酵素阻害剤療法、全身照射、幹細胞の注入、幹細胞サポートでの骨髄除去、in vitro処置末梢血幹細胞移植、臍帯血移植、免疫酵素技術、薬理学的研究、低LETコバルト−60ガンマ線療法、ブレオマイシン、従来型の外科処置、放射線療法、および骨髄非破壊同種造血幹細胞移植が含まれる。
【0130】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を処置する薬物療法に使用される他の治療剤の例には(Blood 2005 Abramson, J.)、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、抗CD20モノクローナル抗体、エトポシド、ブレオマイシン、ワルデンストレームマクログロブリン血症(Waldenstrom’s)について挙げた薬剤の多数、ならびにそれらの任意の組合せ、例えばICEおよびR ICEが含まれる。
【0131】
慢性リンパ性白血病(CLL)を処置するために使用される他の治療剤の例には(Spectrum、2006年、Fernandes, D.)、クロラムブシル(Leukeran)、シクロホスファミド(Cyloxan、Endoxan、Endoxana、Cyclostin)、フルダラビン(Fludara)、ペントスタチン(Pentstatin)(Nipent)、クラドリビン(Leustarin)、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、Adriblastine)、ビンクリスチン(Oncovin)、プレドニゾン、プレドニゾロン、アレムツズマブ(Campath、MabCampath)、ワルデンストレームマクログロブリン血症のために挙げた薬剤の多数、ならびに一般的な併用レジメン:CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);およびFR(フルダラビン、リツキシマブ)を含む併用化学療法および化学免疫療法が含まれる。
【0132】
被験体
提供される処置方法のいずれかを、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫疾患および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応と診断されている、またはそれを有していると疑われる被験体を処置するために使用することができる。
【0133】
本明細書で提供される方法のいずれかの実施形態の一部では、被験体は、がんを発症するリスクがあるヒト(例えば、遺伝的にまたはそのほかで、がんを発症しやすいヒト)、およびがんと診断されているまたは診断されていないヒトである。本明細書で使用する、「リスクのある」被験体は、がん(例えば、血液系悪性疾患)を発症するリスクがある被験体である。被験体は、検出可能な疾患を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載する処置方法の前に、検出可能な疾患を示していてもいなくてもよい。リスクのある被験体は、本明細書に記載するものなどのがんの発症と相関する測定可能なパラメーターである、1つまたは複数のいわゆる危険因子を有し得る。これらの危険因子の1つまたは複数を有する被験体は、これらの危険因子(複数可)を有していない個体より、がんを発症する確率が高い。
【0134】
これらの危険因子には、例えば、年齢、性別、人種、食事、既往症の履歴、前駆疾患の存在、遺伝的(例えば、遺伝性の)考慮事項および環境曝露が含まれ得る。一部の実施形態では、がんのリスクのある被験体には、例えば、その親類がこの疾患を経験している被験体、および遺伝子マーカーまたは生化学マーカーの分析でそのリスクが決定されている被験体が含まれる。がんを有していたという前歴も、例えば、がんの再発の場合の危険因子であり得る。
【0135】
本明細書では、がん(例えば、血液系悪性疾患)に関連する1つまたは複数の症状を示す被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法も提供される。一部の実施形態では、被験体は、がんの初期段階にある。他の実施形態では、被験体は、がんの進行期にある。
【0136】
一部の実施形態では、被験体(例えば、ヒト)は、Syk活性に応答性のがんを有する。別の実施形態では、ヒトは、Sykを発現する固形がん腫瘍を有する。一部の実施形態では、ヒトは、17p欠失、TP53変異、NOTCH1、SF3B1変異、11q欠失またはそれらの任意の組合せを有する。一実施形態では、ヒトは、17p欠失、TP53変異またはそれらの組合せを有する。別の実施形態では、ヒトは、NOTCH1、SF3B1変異、11q欠失またはそれらの任意の組合せを有する。
【0137】
また本明細書では、がん(例えば血液系悪性疾患)を処置するための1つまたは複数の標準療法、例えば化学療法、放射線療法、免疫療法および/または外科処置を受けている被験体(例えばヒト)を処置するための方法が提供される。したがって、上記一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、および本明細書に記載の組成物は、化学療法、放射線療法、免疫療法および/または外科処置を施す前、最中または後に投与される。
【0138】
別の態様では、がん処置に対して「難治性」である、または、がん(例えば、血液系悪性疾患)の処置後に「再発」している被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法が本明細書で提供される。抗がん療法に対して「難治性」である被験体は、彼らが特定の処置に応答しないことを意味し、これは耐性とも称される。がんは、処置の開始から処置に耐性である可能性がある、または、処置の過程の間、例えば処置がそのがんに対してある効果を示したが、寛解または部分寛解と考えるのには十分でなかったその後に、耐性になる可能性がある。「再発」している被験体は、ある改善期間の後、例えば、被験体が寛解または部分寛解した後などの、処置が、がんの有効な減少を示した後、がんが再発している、またはがんの兆候および症状が生じていることを意味する。
【0139】
一部の実施形態では、被験体は、(i)少なくとも1つの抗がん療法に対して難治性である、または、(ii)少なくとも1つの抗がん療法で処置した後に再発している、あるいは(i)と(ii)の両方であるヒトであってよい。実施形態の一部では、被験体は、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの抗がん療法(例えば、標準的または実験的な化学療法を含む)に対して難治性である。
【0140】
ある特定の実施形態では、被験体は、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、または非FL無症候性非ホジキンリンパ腫(例えば、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレーム(Waldestrom)マクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、および辺縁帯リンパ腫(MZL)を含む)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発しているヒトである。
【0141】
一部の変形形態では、被験体は、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。ある特定の実施形態では、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫は、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、または辺縁帯リンパ腫(MZL))である。別の変形形態では、被験体は、濾胞性リンパ腫(FL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。別の変形形態では、被験体は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。別の変形形態では、被験体は、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。さらに別の変形形態では、被験体は、慢性リンパ性白血病(CLL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。さらに別の変形形態では、被験体は、慢性リンパ性白血病(CLL)のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、またはB細胞受容体(BCR)による処置に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。
【0142】
一部の実施形態では、被験体は、フルダラビン、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アルキル化剤、アレムツズマブおよび他の化学療法処置、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CHOP(リツキシマブ−CHOP);hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン);R−hyperCVAD(リツキシマブ−hyperCVAD);FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);R−FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);ボルテゾミブおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびVelcade(登録商標);ヨウ素−131 トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびCHOP;CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);FR(フルダラビン、リツキシマブ);ならびにD.T.PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、Adriamycin(登録商標)、シクロホスファミド、エトポシド)から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの抗がん療法(例えば、標準的または実験的化学療法を含む)に対して難治性である。
【0143】
化学療法処置(標準的または実験的化学療法を含む)の他の例は、以下に記載されている。さらに、ある特定のリンパ腫の処置は、Cheson, B.D.、Leonard, J.P.、「Monoclonal Antibody Therapy for B−Cell Non−Hodgkin’s Lymphoma」The New England Journal of Medicine 2008年、359巻(6号)、613〜626頁;およびWierda, W.G.、「Current and Investigational Therapies for Patients with CLL」Hematology 2006年、285〜294頁に概説されている。米国におけるリンパ腫の発生パターンは、Morton, L.M.ら「Lymphoma Incidence Patterns by WHO Subtype in the United States, 1992−2001」Blood 2006年、107巻(1号)、265〜276頁に概説(profile)されている。
【0144】
例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、特にB細胞起源のものの処置は、モノクローナル抗体、標準的な化学療法アプローチ(例えば、CHOP、CVP、FCM、MCPなど)、放射免疫療法およびそれらの組合せ、特に抗体療法を化学療法と統合したものの使用を含む。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための非コンジュゲート型モノクローナル抗体の例には、リツキシマブ、アレムツズマブ、ヒトまたはヒト化抗CD20抗体、ルミリキシマブ、抗TRAIL、ベバシズマブ、ガリキシマブ、エプラツズマブ、SGN−40および抗CD74が含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんの処置において使用される実験的抗体剤の例には、オファツムマブ、ha20、PRO131921、アレムツズマブ、ガリキシマブ、SGN−40、CHIR−12.12、エプラツズマブ、ルミリキシマブ、アポリズマブ、ミラツズマブおよびベバシズマブが含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための化学療法の標準的なレジメンの例には、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)、CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、MCP(ミトキサントロン、クロラムブシルおよびプレドニゾロン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)、R−FCM(リツキシマブ+FCM)、R−CVP(リツキシマブ+CVP)およびR−MCP(R−MCP)が含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための放射免疫療法の例には、イットリウム−90標識イブリツモマブチウキセタンおよびヨウ素−131標識トシツモマブが含まれる。
【0145】
別の例では、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための治療的処置には、併用化学療法、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン)およびFCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)が含まれる。さらに、これらのレジメンを、モノクローナル抗体リツキシマブ(Rituxan)で補充して、併用療法R−CHOP、hyperCVAD−RおよびR−FCMを形成させることができる。他のアプローチには、上記療法のいずれかと、幹細胞移植またはICE(イホスファミド、カルボプラチンおよびエトポシド)での処置を組み合わせることが含まれる。マントル細胞リンパ腫を処置するための他のアプローチには、リツキシマブ(Rituxan)のようなモノクローナル抗体を使用するなどの免疫療法が含まれる。リツキシマブは、辺縁帯リンパ腫、WM、CLLおよび小リンパ球性リンパ腫を含む無症候性B細胞がんを処置するために使用することができる。修正されたアプローチは、モノクローナル抗体を、ヨウ素−131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびイットリウム−90 イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))などの放射性同位体粒子と組み合わせる放射免疫療法である。別の例では、Bexxar(登録商標)は、CHOPでの逐次的処置において使用される。別の免疫治療の例には、個々の被験体の腫瘍の遺伝子構成をもとにしたがんワクチンの使用が含まれる。リンパ腫ワクチンの例はGTOP−99(MyVax(登録商標))である。マントル細胞リンパ腫を処置するためのさらに他のアプローチは、高用量化学療法を加えた自家幹細胞移植を含む、あるいは、マントル細胞リンパ腫の処置は、プロテアソーム阻害剤、例えばVelcade(登録商標)(ボルテゾミブまたはPS−341)、または抗血管新生剤、例えばサリドマイド(特にRituxanと組み合わせて)を投与することを含む。別の処置アプローチは、他の化学療法剤と組み合わせた、オブリメルセン(Genasense)などの、Bcl−2タンパク質の分解をもたらし、化学療法へのがん細胞感受性を高める薬物を投与することである。別の処置アプローチには、細胞増殖の阻害、さらには細胞死をもたらすことができるmTOR阻害剤を投与することが含まれる;非限定的な例は、テムシロリムス(CCI−779)、およびRituxan(登録商標)、Velcade(登録商標)または他の化学療法剤と組み合わせたテムシロリムスである。
【0146】
MCLのための他の最近の療法が開示されている(Nature Reviews;Jares, P.2007年)。このような例には、フラボピリドール、PD0332991、R−ロスコビチン(セリシクリブ(Selicilib)、CYC202)、スチリルスルホン、オバトクラックス(GX15−070)、TRAIL、抗TRAIL DR4抗体およびDR5抗体、テムシロリムス(CCl−779)、エベロリムス(RAD001)、BMS−345541、クルクミン、ボリノスタット(SAHA)、サリドマイド、レナリドミド(Revlimid(登録商標)、CC−5013)およびゲルダナマイシン(17−AAG)が含まれる。
【0147】
ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を処置するために使用される他の治療剤の例には、ペリホシン、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、リツキシマブ、クエン酸シルデナフィル(Viagra(登録商標))、CC−5103、サリドマイド、エプラツズマブ(hLL2−抗CD22ヒト化抗体)、シンバスタチン、エンザスタウリン、campath−1H、デキサメタゾン、DT PACE、オブリメルセン、アンチネオプラストン(antineoplaston)A10、アンチネオプラストンAS2−1、アレムツズマブ、βアレチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン塩酸塩、プレドニゾン、硫酸ビンクリスチン、フルダラビン、フィルグラスチム、メルファラン、組換えインターフェロンアルファ、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、エトポシド、メルファラン、ドラスタチン10、インジウムIn 111モノクローナル抗体MN−14、イットリウムY90ヒト化エプラツズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、ブスルファン、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、治療用同種異系リンパ球、イットリウムY90イブリツモマブチウキセタン、シロリムス、タクロリムス、カルボプラチン、チオテパ、パクリタキセル、アルデスロイキン、組換えインターフェロンアルファ、ドセタキセル、イホスファミド、メスナ、組換えインターロイキン−12、組換えインターロイキン−11、Bcl−2ファミリータンパク質阻害剤ABT−263、デニロイキンジフチトクス、タネスピマイシン、エベロリムス、ペグフィルグラスチム、ボリノスタット、アルボシジブ(alvocidib)、組換えflt3リガンド、組換えヒトトロンボポエチン、リンフォカイン活性化キラー細胞、アミホスチン三水和物、アミノカンプトテシン、イリノテカン塩酸塩、カスポファンギン酢酸塩、クロファラビン、エポエチンアルファ、ネララビン、ペントスタチン、サルグラモスチム、ビノレルビン二酒石酸塩、WT−1アナログペプチドワクチン、WT1 126−134ペプチドワクチン、フェンレチニド、イクサベピロン、オキサリプラチン、モノクローナル抗体CD19、モノクローナル抗体CD20、オメガ−3脂肪酸、ミトキサントロン塩酸塩、酢酸オクトレオチド、トシツモマブおよびヨウ素I−131トシツモマブ、モテクサフィンガドリニウム、三酸化ヒ素、ティピファニブ、自家ヒト腫瘍由来HSPPC−96、ベルツズマブ、ブリオスタチン1およびペグ化リポソームドキソルビシン塩酸塩ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。
【0148】
WMを処置するために使用される治療手順の例には、末梢血幹細胞移植、自家造血幹細胞移植、自家骨髄移植、抗体療法、生物学的療法、酵素阻害剤療法、全身照射、幹細胞の注入、幹細胞サポートでの骨髄除去、in vitro処置末梢血幹細胞移植、臍帯血移植、免疫酵素技術、薬理学的研究、低LETコバルト−60ガンマ線療法、ブレオマイシン、従来型の外科処置、放射線療法および骨髄非破壊同種造血幹細胞移植が含まれる。
【0149】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)薬物療法を処置するために使用される他の治療剤の例には(Blood 2005年、Abramson, J.)、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、抗CD20モノクローナル抗体、エトポシド、ブレオマイシン、ワルデンストレームマクログロブリン血症(Waldenstrom’s)について挙げた薬剤の多数、ならびにそれらの任意の組合せ、例えばICEおよびR−ICEが含まれる。
【0150】
慢性リンパ性白血病(CLL)を処置するために使用される他の治療剤の例には(Spectrum, 2006, Fernandes, D.)、クロラムブシル(Leukeran)、シクロホスファミド(Cyloxan、Endoxan、Endoxana、Cyclostin)、フルダラビン(Fludara)、ペントスタチン(Pentstatin)(Nipent)、クラドリビン(Leustarin)、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、Adriblastine)、ビンクリスチン(Oncovin)、プレドニゾン、プレドニゾロン、アレムツズマブ(Campath、MabCampath)、ワルデンストレームマクログロブリン血症のために挙げた薬剤の多数、ならびに一般的な併用レジメン:CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);およびFR(フルダラビン、リツキシマブ)を含む併用化学療法および化学免疫療法が含まれる。
【0151】
別の態様では、(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して難治性である、または(ii)化学療法で処置した後に再発している、または(i)および(ii)の両方である被験体(例えばヒト)を感受性にする方法が提供され、該方法は、式Iの化合物の多形体ビスメシル酸塩、またはそれらの医薬組成物を被験体に投与するステップを含む。感受性にする被験体は、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物および本明細書に記載のその組成物の投与を含む処置に応答する被験体、またはこのような処置に耐性を生じなかった被験体である。
【0152】
別の態様では、併存症を有するがんについて被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法であって、処置が、併存症を処置するのにも有効である方法が本明細書で提供される。がんとの「併存症」は、がんと同時に起こる疾患である。
【0153】
一部の実施形態では、併存症を有する慢性リンパ性白血病(CLL)について被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法であって、処置が、併存症を処置するのにも有効である方法が本明細書で提供される。CLLを有する多くの被験体は、1つまたは複数の他の疾患、例えば血圧系、血管および心臓系、内分泌および代謝系、泌尿生殖器系、筋骨格系、呼吸器系、神経系、上部および下部胃腸系、精神医学的系、耳、鼻および咽喉系、腎臓系または肝臓系に影響を及ぼす疾患を有する。CLLの具体的な病的状態には、これらに限定されないが、1つまたは複数の他のがん(例えば、乳がん、頭頸部がん、肺がん、黒色腫、非ホジキンT細胞リンパ腫、前立腺がん、結腸がん、小腸がん、婦人科のがんおよび尿路がん)、高血圧症、高脂血症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心筋症、心臓弁膜症(vulvular heart disease)、心房細動、脳血管疾患(例えば、一過性脳虚血発作、脳卒中)、慢性閉塞性肺疾患、関節疾患、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、精神病(psychiatric illness)、甲状腺疾患、良性前立腺肥大、真性糖尿病および変形性関節症が含まれる(Satram−Hoangら、Journal of Cancer Therapy、2013年;4巻:1321〜1329頁;Thurmesら、Leukemia & Lymphoma、2008年;49巻(1号):49〜56頁)。
【0154】
一部の実施形態では、被験体(例えば、ヒト)におけるCLLの併存症を処置する方法であって、その方法は、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物、または薬学的に許容される塩、あるいはそれらの医薬組成物を被験体に投与するステップを含む。一部の実施形態では、併存症は、1つまたは複数の他のがん(例えば、乳がん、頭頸部がん、肺がん、黒色腫、非ホジキンT細胞リンパ腫、前立腺がん、結腸がん、小腸がん、婦人科のがんおよび尿路がん)、高血圧症、高脂血症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心筋症、心臓弁膜症、心房細動、脳血管疾患(例えば、一過性脳虚血発作、脳卒中)、慢性閉塞性肺疾患、関節疾患、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、精神病、甲状腺疾患、良性前立腺肥大、真性糖尿病および変形性関節症からなる群から選択される。
【0155】
単剤療法および併用療法
本開示で提供される医薬組成物が、被験体(例えばヒト)に投与され、したがって形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体が、被験体に投与される唯一の治療剤になるような処置方法が提供される。被験体(例えばヒト)に投与される本開示で提供される医薬組成物が、1つまたは複数の追加の治療剤または他の療法と組み合わせて被験体(例えばヒト)に与えられる処置方法も提供される。単剤療法および併用療法の両方は、本明細書で詳述されている方法、例えば本明細書に詳述されている疾患または状態のいずれかを処置する方法において使用するため、および本明細書に詳述されている任意の被験体で使用するために意図され、説明されている。
【0156】
単剤療法
一部の実施形態では、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置する方法は、処置を必要とする被験体に、有効量の形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体を投与するステップを含み、ここで被験体は、その疾患または状態のための、別の薬剤または手順を用いた療法を受けていない。
【0157】
上記の多形体のうちの1つが、がんであると診断されているか、またはがんを有していると疑われる被験体に単剤療法として投与される一部の実施形態では、被験体は、(i)少なくとも1つの抗がん療法に対して難治性である、または(ii)少なくとも1つの抗がん療法で処置した後に再発している、または(i)および(ii)の両方であるヒトであり得る。実施形態の一部において、被験体は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの抗がん療法(例えば標準的または実験的な化学療法を含む)に難治性である。例えば、一部の実施形態では、被験体は、(i)抗CD20抗体、アルキル化剤(例えばベンダムスチン)、プリン類似体(例えばフルダラビン)、アントラサイクリン、またはそれらの任意の組合せを使用する療法に対して難治性であるか、(ii)抗CD20抗体、アルキル化剤(例えばベンダムスチン)、プリン類似体(例えばフルダラビン)、アントラサイクリンもしくはそれらの任意の組合せで処置した後に再発しているか、または(i)および(ii)の両方であるヒトであり得る。
【0158】
前述の通り、少なくとも1つの抗がん療法に対して難治性である、かつ/または少なくとも1つの抗がん療法で処置した後に再発しているヒト被験体は、過去に1つまたは複数の療法を受けていてもよい。一部の実施形態では、このような被験体は、本明細書に記載の方法を使用する処置の前に、1つ、2つ、3つもしくは4つ、または少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つもしくは少なくとも5つ、または1〜10、1〜9つ、1〜8つ、1〜7つ、1〜6つ、1〜5つもしくは1〜4つの抗がん療法を受けている。
【0159】
被験体(例えばヒト)が、単剤療法としての式Iの化合物で処置される場合、被験体は、抗がん療法ではない1つまたは複数の他の療法を受けることもできると理解すべきである。
【0160】
併用療法
一部の実施形態では、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置する方法は、処置を必要とする被験体(例えばヒト)に、本明細書に記載の有効量の医薬組成物を、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置するのに有用であり得る1つまたは複数の追加の療法(例えば、1つまたは複数の追加の治療剤)と一緒に投与するステップを含む。
【0161】
一部の実施形態では、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置する方法は、処置を必要とする被験体に、有効量の形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体を、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置するのに有用であり得る第2の活性薬剤と一緒に投与するステップを含む。例えば、第2の薬剤は、抗炎症剤であり得る。第2の活性薬剤を用いる処置は、上記多形形態の1種の前、それと同時であってもよい。
【0162】
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)の阻害剤、または例えば、ヒトLOXL2に向けられる免疫グロブリンIgG4アイソタイプを有するヒト化モノクローナル抗体(mAb)を含むLOXL2と結合する物質であってよい。さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK−1)の阻害剤、またはASK−1と結合する物質であってよい。さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、JAK1もしくはJAK2などのヤヌスキナーゼの阻害剤、またはJAK1もしくはJAK2などのヤヌスキナーゼと結合する物質であってよい。一実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤はモメロチニブである。他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、ブルトンのチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であってよい。さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤はB細胞リンパ腫(BCL)阻害剤であってよい。一部の変形形態では、BCL阻害剤はBCL−2阻害剤である。一変形形態では、BCL阻害剤はABT−199である。
【0163】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、フルダラビン、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アルキル化剤、アレムツズマブおよび他の化学療法処置、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CHOP(リツキシマブ−CHOP);hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン);R−hyperCVAD(リツキシマブ−hyperCVAD);FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);R−FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);ボルテゾミブおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびVelcade(登録商標);ヨウ素−131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびCHOP;CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);FR(フルダラビン、リツキシマブ);ならびにD.T.PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、Adriamycin(登録商標)、シクロホスファミド、エトポシド)であってよい。
【0164】
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、ビンカアルカロイドであってよい。一変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、デスオキシビンカミノール、ビンカミノール、ビンブルニン、ビンカマジンおよびビネリジンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。ある特定の変形形態では、少なくとも1つのビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、デスオキシビンカミノール、ビンカミノール、ビンブルニン、ビンカマジンおよびビネリジンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。一部の変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。他の変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチンおよびビンブラスチンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。一変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチンおよび薬学的に許容されるその塩である。別の変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンブラスチンおよび薬学的に許容されるその塩である。したがって、一態様では、ヒトに、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体、およびビンカアルカロイド、または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置するための方法が提供される。
【0165】
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の療法は、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)および/または急性骨髄性白血病(AML)を含む白血病を処置するのに適した任意の単剤療法または併用療法であってよい。
【0166】
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、抗炎症剤であってよい。1つまたは複数の追加の治療剤での処置は、本明細書に記載する医薬組成物での処置の前、それと同時またはその後であってよい。一部の実施形態では、本明細書に記載する医薬組成物を、単一剤形において別の治療剤と組み合わせる。本明細書に記載する少なくとも1つの化学的実体と組み合わせて使用できる適切な抗腫瘍治療薬には、これらに限定されないが、化学療法剤、例えばマイトマイシンC、カルボプラチン、タキソール、シスプラチン、パクリタキセル、エトポシド、ドキソルビシンまたは上記化学療法剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。放射線療法抗腫瘍剤もやはり、単独か、または、化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0167】
本明細書に記載する医薬組成物は、化学感作剤として有用であり得、したがって、他の化学療法薬、特にアポトーシスを誘導する薬物と組み合わせると有用であり得る。
【0168】
化学療法を受けている被験体(例えば、ヒト)に、化学療法剤に対するがん細胞の感受性を増加させるのに十分な量で、化学療法剤を、本明細書に記載する医薬組成物と一緒に投与するステップを含む、化学療法に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法も、本明細書で提供される。本明細書に記載する化学的実体と組み合わせて使用できる他の化学療法薬の例には、トポイソメラーゼI阻害剤(カンプトテシン(camptothesin)またはトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ダウノマイシンおよびエトポシド)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファランおよびBCNU)、チューブリン指向性薬剤(例えば、タキソールおよびビンブラスチン)、ならびに生物学的薬剤(例えば、抗体、例えば抗CD20抗体、IDEC8、免疫毒素およびサイトカイン)が含まれる。
【0169】
一部の実施形態では、本明細書に記載する医薬組成物を、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、またはCD20+B細胞を選択的に枯渇させることによって機能する他の薬剤と組み合わせて使用する。
【0170】
本明細書では、本明細書に記載する医薬組成物を、抗炎症剤と組み合わせて投与する処置方法が含まれる。抗炎症剤には、これらに限定されないが、NSAID、非特異的およびCOX−2特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤、金化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、腫瘍壊死因子受容体(TNF)受容体アンタゴニスト、免疫抑制剤およびメトトレキサートが含まれる。NSAIDの例には、これらに限定されないが、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセンおよびナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストールの組合せ、スリンダク、オキサプロジン、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、ケトプロフェン、ナブメトンナトリウム、スルファサラジン、トルメチンナトリウムおよびヒドロキシクロロキンが含まれる。NSAIDの例には、COX−2特異的阻害剤(すなわち、COX−1についてのIC50より少なくとも50倍小さいIC50でCOX−2を阻害する化合物)、例えばセレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよび/またはロフェコキシブも含まれる。
【0171】
さらなる実施形態では、抗炎症剤はサリチレートである。サリチレートには、これらに限定されないが、アセチルサリチル酸すなわちアスピリン、サリチル酸ナトリウム、およびサリチル酸コリンおよびサリチル酸マグネシウムが含まれる。抗炎症剤は、コルチコステロイドであってもよい。例えば、コルチコステロイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびプレドニゾンから選択することができる。一部の実施形態では、抗炎症治療剤は、金チオリンゴ酸ナトリウムまたはオーラノフィンなどの金化合物である。一部の実施形態では、抗炎症剤は、代謝阻害剤、例えば、メトトレキサートなどのジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、またはレフルノミドなどのジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ阻害剤である。
【0172】
一部の実施形態では、少なくとも1つの抗炎症性化合物が、抗C5モノクローナル抗体(エクリズマブまたはパキセリズマブなど)、エタネルセプト(entanercept)または抗TNFアルファモノクローナル抗体であるインフリキシマブなどのTNFアンタゴニストである組合せを使用する。
【0173】
一部の実施形態では、少なくとも1つの治療剤がメトトレキサート、レフルノミド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤化合物である組合せを使用する。
【0174】
上記の追加の治療剤の任意の組合せを、ありとあらゆる組合せが個別に挙げられているかの如く、使用できることを理解すべきである。例えば、ある特定の実施形態では、追加の治療剤には、PI3K阻害剤およびLOXL2阻害剤が含まれる。
【0175】
キット
形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体、および少なくとも1種の薬学的担体、賦形剤、アジュバント、またはビヒクル(例えば、少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマー)を含む医薬組成物を含むキットも提供される。
【0176】
一態様では、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体;および薬学的担体、賦形剤、アジュバント、またはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。
【0177】
一態様では、キットは、がんまたは炎症状態の処置での使用のための指示を含む。特定の変形形態では、指示は、例えば白血病またはリンパ腫を含むがんの処置のための医薬組成物の使用を対象とする。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)である。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。一実施形態では、がんは、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)またはB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)である。一部の実施形態では、がんは、MCL、DLBCL、iNHL、FL、MZL、LPL、SLLまたはWMである。他の実施形態では、がんは、CLL、MCL、DLBCL、iNHL(例えば、非FL iNHLを含む)またはFLである。
【0178】
非ホジキンリンパ腫は、例えば濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症および辺縁帯リンパ腫を含む無症候性B細胞疾患、ならびに、例えばバーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)を含む侵襲性リンパ腫を包含する。一実施形態では、がんは、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)である。別の実施形態では、がんは、非FL iNHLである。
【0179】
特定の変形形態では、指示は、自己免疫疾患の処置のための医薬組成物の使用を対象とする。自己免疫疾患のある特定の実施形態は、ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症およびループスを含む。
【0180】
本開示で提供される任意の医薬組成物は、ありとあらゆる組成物がキットの使用のために具体的かつ個別に挙げられている場合と同様に、キットにおいて使用することができる。例えば、一実施形態では、キットは:a)約34%w/wの形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。別の実施形態では、キットは:a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、キットは:a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、キットは:a)約34%w/wの多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せ;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。
【0181】
製造品
形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体および少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマーを含む医薬組成物が収容されている容器を含む製造品が提供される。製造品は、本開示で提供される医薬組成物を含む瓶、バイアル、アンプル、単回使用の使い捨て可能なアプリケーターなどであってよい。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料で形成されていてよく、一態様では、がんまたは炎症状態の処置において使用するための使用法を示す、容器上のラベルまたは容器と関連したラベルも含む。
【0182】
形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体、および少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーを含む医薬組成物の単位剤形も提供される。
【0183】
一部の実施形態では、単位剤形は、約10mg〜約1800mgまたは約10mg〜約1500mg、または約10mg〜約1300mg、または約10mg〜約1000mg、または約10mg〜約800mg、または約10mg〜約600mg、または約10mg〜約300mg、または約10mg〜約200mg、または約10mg〜約100mg、または約100mg〜約800mg、または約100mg〜約600mg、または約100mg〜約300mg、または約100mg〜約200mg、または約200mg〜約350mg、または約250mg〜約300mg、または約200mg〜約400mg、または約400mg〜約600mg、または約400mg〜約800mg、または約600mg〜約800mg、または約800mg〜約1200mg、または約1200mg〜約1600の形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体を含む。
【0184】
上記実施形態の一部では、単位剤形は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0185】
上記の経口投与のための投薬量を、毎日1回(QD)または毎日2回(BID)投与することができる。一部の実施形態では、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体、上記のいずれかの医薬組成物は、約1mgQD、約2mgQD、約5mgQD、約10mgQD、約15mgQD、約20mgQD、約25mgQD、約30mgQD、約35mgQD、約40mgQD、約45mgQD、約50mgQD、約75mgQD、約100mgQD、約125mgQD、約150mgQD、約175mgQD、約200mgQD、約225mgQD、約250mgQD、約300mgQD、約350mgQD、約400mgQD、約450mgQD、約500mgQD、約550mgQD、約600mgQD、約650mgQD、約700mgQD、約750mgQD、約800mgQD、約850mgQD、約900mgQD、約950mgQD、または約1000mgQDの単位投薬量で経口投与される。一部の実施形態では、形態I、II、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体、または上記のいずれかの医薬組成物は、約1mgBID、約2mgBID、約5mgBID、約10mgBID、約15mgBID、約20mgBID、約25mgBID、約30mgBID、約35mgBID、約40mgBID、約45mgBID、約50mgBID、約75mgBID、約100mgBID、約125mgBID、約150mgBID、約175mgBID、約200mgBID、約225mgBID、約250mgBID、約300mgBID、約350mgBID、約400mgBID、約450mgBID、約500mgBID、約550mgBID、約600mgBID、約650mgBID、約700mgBID、約750mgBID、約800mgBID、約850mgBID、約900mgBID、約950mgBID、または約1000mgBIDの単位投薬量で経口投与される。
【0186】
上記の一変形形態では、ヒトは、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)および慢性リンパ性白血病(CLL)またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される状態を有している。上記のいずれかの別の変形形態では、ヒトは、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。ある特定の実施形態では、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫は、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または辺縁帯リンパ腫(MZL))である。別の変形形態では、ヒトは、濾胞性リンパ腫(FL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。別の変形形態では、ヒトは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。別の変形形態では、ヒトは、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。さらに別の変形形態では、ヒトは、慢性リンパ性白血病(CLL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。さらに別の変形形態では、ヒトは、慢性リンパ性白血病(CLL)のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはB細胞受容体(BCR)処置に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。
【0187】
劇症移植片対宿主病としても公知の急性移植片対宿主病(aGVHD)は、一般に、同種(allogenic)造血幹細胞移植から最初の100日以内に症状を提示し、一般に、皮膚、肝臓、粘膜、および胃腸管に対する選択的損傷によって特徴付けられる。慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、同種(allogeneic)造血幹細胞移植(HSCT)のレシピエントにおいて生じる。GVHDは、移植後、>100日で生じるときに慢性であるとみなされるが、cGVHDの態様は、100日の時点よりも前に顕在化し、aGVHDの要素と重なる可能性がある。本開示は、急性移植片対宿主病(aGVHD)および慢性移植片対宿主病(cGVHD)を含む、ヒトの移植片対宿主病(GVHD)を処置するための、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体を提供し、その方法は、その処置を必要とするヒトに、形態I、II、VI、XIII、XIV、XV、XVI、XVIII、およびXIXから選択される式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形体の化合物の薬学的に有効な量を投与することを含む。
【実施例】
【0188】
以下の実施例は、本開示のある特定の実施形態を例示するために含まれる。本明細書で開示されている技術は、本開示の実践に適用される技術であることを当業者は理解すべきである。当業者は、本開示に照らして、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく変更を加えることができ、しかも同様または類似の結果を得ることができると理解すべきである。
【0189】
本明細書に記載の多形体は、当技術分野で公知の様々な方法、例えばX線粉末回折パターン(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量測定分析(TGA)および動的水蒸気収着(DVS)によって特徴付けることができる。
【0190】
以下の実施例において、「X」という用語は、相当重量(weight equivalent)を指し、「V」は相当体積を指す。「RH」は相対湿度を指す。
【0191】
実施例:多形形態I、II、VI、XIII、XV、XVI、XVIII、およびXIXの合成
式Iの化合物の様々な形態を一般的に作製するための方法は、米国特許第8,450,321号および第8,455,493号に見出すことができる。下記は、米国特許公開第20150038505号に記載されている多形形態3を作製するための方法である。
【化8】
【0192】
多形形態3(本明細書では、形態IIIと呼ぶ)および7(本明細書では、形態VIIと呼ぶ)は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0038505号に開示されている。
【0193】
形態7の調製:式Iの化合物(1.0X)を、反応容器Aに添加した。メタンスルホン酸(0.56X、2.40当量)、水(4X、4V)、およびアセトン(3.2X、4V)を、反応容器Bに添加した。反応容器A内の温度を35℃未満に維持しながら、反応容器Bの内容物を反応容器Aに添加した。固体を溶解させた後、得られた反応容器Bの溶液を19〜25℃に調整した。高撹拌下で、アセトン(11.9X、15V)を反応容器Bに添加し、反応容器Bのスラリーをもたらす内容物の温度を0〜6℃に調整し、反応容器Bの内容物を5h混合した。スラリーを濾過し、アセトン(4.0X、5V)ですすいで、多形形態7を得た。形態7を、真空下、60℃で乾燥させた。
【0194】
単離された多形形態7、アセトン(15.4X、19.5V)、および水(0.5X、0.5V)を合わせ、多形形態3の種(0.01X、1mol%)に添加した。アセトン(15.4X、19.5V)および水(0.5X、0.5V)を反応容器Bに添加し、得られたスラリーを20〜40℃で、多形形態7が形態3に転換されるまで撹拌した。転換を、XRPDまたはDSCで監視した。スラリーを19〜25℃に調整し、濾過し、アセトン(2.4X、3V)ですすいだ。湿潤ケーキを、真空下、60℃で一定重量が達成されるまで乾燥させた。
【0195】
形態3:下記は、多形形態3、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物を作製するための方法である(以下の反応スキームに示される式IAの化合物の水和物の多形体と記載されてもよい)。
【化9】
【0196】
多形形態7を、上記実施例に記載されるように得た。
【0197】
単離された多形形態7を、反応容器B内の式IAの化合物の多形形態3の種(0,01X、1mol%)に添加した。アセトン(15.0X、19.0V)および水(1.0X、1.0V)を反応容器Bに添加した。混合物を、多形形態7が形態3に転換されるまで加熱還流した(約55℃)。転換を、XRPDまたはDSCで監視した。反応容器Bの内容物はスラリーであり、19〜25℃に冷却し、次いで濾過し、アセトン(2.4X、3V)ですすぎ、真空下、60℃で一定重量が達成されるまで乾燥させ、多形形態3を得た。
【0198】
多形形態VIの合成:形態VIは、反応容器Aにギ酸(3V、3.6X)および酢酸エチル(2V、1.8X)を投入し、反応容器の内容物を22℃(19〜25℃)に調整したときに単離された。式Iの化合物の遊離塩基(1.0X)を、反応容器の温度を22℃(19〜25℃)で維持しつつ、撹拌しながら少量ずつ添加し、内容物を、すべての固体が溶解するまで(約1時間)撹拌した。反応容器A内の溶液を反応容器Bに移し、ギ酸(0.08V、0.1X)を、酢酸エチル(2V、1.8X)およびスルホン酸メチル(医薬品グレード、2.0mol当量、0.47X)と共に反応容器Aに添加した。反応容器A内の溶液を、研磨フィルターを介して反応容器Bに、ポット温度を22℃(19〜25℃)で維持しながら30分かけて移した。酢酸エチル(5V、4.5X)を反応容器Aに、次いで反応溶液Bに、最短でも1時間かけて添加した。反応容器Bの内容物を、22℃(19〜25℃)で16時間撹拌し、次いで、濾過し、酢酸エチル(4V、3.6X)ですすぎ、真空下、60℃で乾燥させた。そのXRPDパターンは、
図8Aに示され、結晶性を示すシャープな反射によって特徴付けられる。熱データを
図2および3に示す。DSC曲線は、71、184、206、および255℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、重量損失(室温から175℃まで、6.7%)を示しており、これは、その損失がイオンクロマトグラフィーによりギ酸であると同定された溶媒和物を示す。225℃より高い温度での重量損失は、分解に起因する。形態VIに関する動的水蒸気収着曲線は
図8Dに示され、そのデータは、その形態が95%の相対湿度(RH)まで、25℃で約17wt%の水を吸収することを示している。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。
【0199】
多形形態Iの合成:形態Iは、開放反応容器内で、約150℃で約2時間、形態VIを加熱し、その後、室温に冷却することによって、または形態IIIを約175℃で約2時間、開放反応容器内で加熱し、その後、室温に冷却することによって、単離した。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。
【0200】
多形形態IIの合成:形態IIは、形態VIを真空下、約120℃で一晩加熱し、ならびに形態VIをイソプロピルアルコール中、室温で、約1週間スラリー化することによって、単離した。
【0201】
多形形態XIIIの合成:形態XIIIは、約4日間にわたり真空下、約40℃に加熱されたP
2O
5チャンバー内で約0%RHに、形態VIIを曝露することによって単離した。
【0202】
多形形態XIVの合成:形態XIVは、形態I、形態II、形態III、または形態XVIを、DSCで、約250℃に加熱することによって単離した。
【0203】
多形形態XVの合成:形態XVは、形態IIIおよび形態XVの混合物を、アセトン中2.5%の水で、室温で約5日間スラリー化することによって調製した。それは形態VIIを、アセトン中4%の水で、室温で約3日間スラリー化することによって作製することもできる。
【0204】
多形形態XVIの合成:形態XVIは、形態VIIをアセトン中で、室温で約1日間スラリー化することによって、または形態XIXをアセトン中1%の水でもしくはアセトン中2%の水で約1〜5日間、室温でスラリー化することによって調製した。
【0205】
多形形態XVIIIの合成:形態XVIIIは、アセトン中20%の水から、式Iの化合物の溶媒湿潤出発材料から単離され、これを真空下、約80℃のオーブン内で乾燥した。
【0206】
多形形態XIXの合成:形態XIXは、約20グラムの形態IIIが約180mLの水に溶解したときに単離された。次いで、次いでこの溶液を、約82℃の出口温度、約150℃の入口温度、約10℃のコンデンサー温度、および4.0〜6.0mL/分の供給速度を有するBuchi実験室規模の噴霧乾燥器で、適切なAPIとして噴霧乾燥させた。そのXRPDパターンは
図9Aに示され、6.3および26.3°2θで2つのブロードな反射を有している。熱データを
図9Bおよび9Cに示す。DSC曲線は、18、145、および222℃で複数の吸熱転移を示す。TGA曲線は、室温から150℃まで、9.8%の重量損失を示す。形態XIXに関する動的水蒸気収着曲線は、
図9Dに示され、そのデータは、その形態が約95%の相対湿度(RH)まで、25℃で約28wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。
【0207】
非晶質形態の合成:式1の化合物のビスメシル酸塩の非晶質形態は、形態XIXが、3サイクルにわたり約60から200℃までDSCで熱サイクルされたときに単離された。そのXRPDパターンは
図10Aに示され、非晶質ハローによって特徴付けられる。熱データは、
図10Bおよび10Cに示される。DSC曲線は、140℃付近のガラス転移および222℃での吸熱を示す。TGA曲線は、室温から150℃まで8.6%の重量損失を示す。非晶質相に関する動的水蒸気収着曲線は
図10Dに示され、そのデータは、その形態が、約95%の相対湿度(RH)まで、25℃で約38wt%の水を吸収することを示す。DVS実験後の試料のXRPD分析は、材料が形態VIIに転換されたことを示す。
【0208】
測定
X線粉末回折(XRPD)分析を、銅放射線(CuKα、λ=1.541874)を使用する回折計(PANalytical XPERT−PRO、PANalytical B. V.、Almelo、Netherlands)で、実施した。試料を、ゼロバックグラウンド試料プレート上に均等に拡げた。ジェネレータを、電圧45kVおよびアンペア数40mAで動作させた。スリットはSoller 0.02 rad、散乱除去1.0°、および発散であった。スキャンを2から40°2θまで、0.0167ステップサイズで行った。データ分析を、X’Pert Data Viewer V1.2d(PANalytical B.V.、Almelo、Netherlands)を使用して行った。
【0209】
示差走査熱量測定(DSC)は、1〜5mgの材料を、圧着されたTzero標準アルミニウムパンに載せ、試料を10℃/分で20から300℃またはそれよりも高く加熱することにより、実行した。試料および参照パンは、50mL/分の窒素パージ下にあった。データ分析を、Universal Analysis 2000 Version 4.7A (TA Instruments、New Castle、DE)を使用して完了した。
【0210】
熱重量分析(TGA)を用いて、材料1〜10mgをアルミニウム秤量パン(TA Instruments、New Castle、DE)に載せ、試料を200℃またはそれよりも高く、10℃/分の速度で加熱することにより、温度の関数として試料の重量損失を評価した。試料および参照パンは、それぞれ、60mL/分および40mL/分の窒素パージ下にあった。データ分析は、Universal Analysis 2000 Version 4.7A(TA Instruments、New Castle、DE)を使用して完了した。
【0211】
吸湿性を、動的水蒸気収着(DVS、TA Q5000 SA、TA Instruments、New Castle、DEまたはDVS、DVS Intrinsic、Surface Measurement Systems、London、UK)を使用して研究した。試料(2〜20mg)をアルミニウムDVSパンに置き、上皿天秤(twin pan balance)の試料側に載せた。水の収着および脱着を、25℃での相対湿度(RH)の関数として研究した。10%RH増分で、相対湿度を5%RHから95%RHまで増大させ、次いで元の5%まで減少させた。各相対湿度の増分は、重量変化%が30分で0.002%未満でない限り、180分の平衡時間を有していた。データ分析は、TA DVS実行に関してはUniversal Analysis 2000 Version 4.7A(TA Instruments、New Castle、DE)を使用して、SMS DVS実行に関してはMicrosoft Excelを使用して行った。
【0212】
本明細書を通して、様々な特許、特許出願および他の種類の出版物(例えば、学術論文)が参照されている。本明細書で引用するすべての特許、特許出願および出版物の開示は、すべての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。