(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
赤外分光分析による測定スペクトルにおいて、ウレトンイミン基及びウレタン基由来の吸光度に対するカルボジイミド基由来の吸光度の比が0以上1.5未満である、請求項1に記載の化合物。
前記単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル又はそれらのコポリマーである、請求項1又は2に記載の化合物。
前記カルボジイミド化合物が脂肪族ジイソシアネートに由来するカルボジイミド化合物であって、前記イソシアネート化合物が脂肪族イソシアネート化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
前記ウレトンイミン基に結合する、前記イソシアネート化合物から前記イソシアネート基を除いた残基の炭素原子と、前記ウレトンイミン基に結合する、前記カルボジイミド化合物から前記カルボジイミド基を除いた残基の炭素原子と、において、
一方の炭素原子が第1級炭素原子若しくは電子求引性基が結合した第1級炭素原子であり、且つ他方の炭素原子が第2級炭素原子である、又は
一方の炭素原子が電子求引性基が結合した第1級炭素原子であり、且つ他方の炭素原子が電子求引性基が結合していない第1級炭素原子である、請求項8に記載の化合物。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の本実施形態に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0082】
≪ウレトンイミン含有化合物≫
本実施形態の化合物は、ウレトンイミン基を有する。また、本実施形態の化合物は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかに由来するカルボジイミド化合物を構成単位として含み、且つ、イソシアネート化合物を構成単位として含むウレトンイミン基を有する化合物である。また、前記イソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基と、前記カルボジイミド化合物からカルボジイミド基を除いた残基とが異なる。
【0083】
本実施形態の化合物において、前記イソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基と、前記カルボジイミド化合物からカルボジイミド基を除いた残基との立体障害の度合いを適宜調整することで、前記イソシアネート化合物と前記カルボジイミド化合物との結合及び解離のバランスを調整することができ、優れた貯蔵安定性及び80℃等の低温での硬化性を達成することができる。また、上記立体障害の度合いの制御により、本実施形態の化合物の生産性を向上させることができる。具体的には、例えば、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基に隣り合う炭素原子及び前記カルボジイミド基のカルボジイミド基に隣り合う炭素原子のうち少なくともいずれかの炭素原子が、電気求引性基が結合した第1級炭素原子又は第2級炭素原子である場合には、イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物との解離性をより高めることができ、80℃等の低温における硬化性をより向上させることができる。一方で、例えば、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基に隣り合う炭素原子及び前記カルボジイミド基のカルボジイミド基に隣り合う炭素原子のうち少なくともいずれかの炭素原子が、電気求引性基が結合した第1級炭素原子である場合には、イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物との結合性をより高めることができ、貯蔵安定性をより向上させることができる。
【0084】
このようなウレトンイミン基を有する化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0086】
一般式(1)中、X
1は下記一般式(1−1)で表される基を1個以上含む基である。前記X
1において、下記一般式(1−1)で表される基を2個以上含む場合、複数存在する下記一般式(1−1)で表される基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、X
1は下記一般式(1−1)で表される基を1個以上100個以下含んでもよい。Y
1は下記一般式(1−2)で表される基である。Q
1及びQ
2はそれぞれ独立に、水素原子、下下記一般式(1−3)で表される基、下記一般式(1−4)で表される基又は下記一般式(1−5)で表される基である。
【0088】
一般式(1−1)〜一般式(1−5)中、アスタリスクは結合部位を表す。X
2及びY
2はそれぞれ独立に、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。Q
3は水素原子又は1価の炭素数1以上15以下の有機基である。Z
1は、下記一般式(1−a)で表される基又は下記一般式(1−b)で表される基である。Z
2は、下記一般式(1−a)で表される基、下記一般式(1−b)で表される基、下記一般式(1−c)で表される基又は下記一般式(1−d)で表される基である。前記X
2は下記一般式(1−b)で表される基を1つ以上含む。R
1は単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基から水素原子を除いた残基である。
【0090】
一般式(1−a)、一般式(1−b)、一般式(1−c)及び一般式(1−d)中、アスタリスクは結合部位を表す。Y
11はイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基である。
【0091】
[X
2及びY
2]
X
2及びY
2はそれぞれ独立に、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。中でも、X
2及びY
2としては、炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、例えば、直鎖炭化水素基、無置換の脂環式炭化水素由来の基、アルキル置換シクロヘキサン由来の基、ジアルキル置換シクロヘキサン由来の基、トリアルキル置換シクロヘキサン由来の基、モノアルキル置換ベンゼン、ジアルキル置換ベンゼン、芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。
【0092】
直鎖炭化水素基としては、例えば、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等が挙げられる。
【0093】
2価の基の由来となる無置換の脂環式炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等が挙げられる。
【0094】
2価の基の由来となるアルキル置換シクロヘキサンとしては、例えば、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等が挙げられる。
【0095】
2価の基の由来となるジアルキル置換シクロヘキサンとしては、例えば、ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等が挙げられる。
【0096】
2価の基の由来となるトリアルキル置換シクロヘキサンとしては、例えば、1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等が挙げられる。
【0097】
2価の基の由来となるモノアルキル置換ベンゼンとしては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等が挙げられる。
【0098】
2価の基の由来となるジアルキル置換ベンゼンとしては、例えば、キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0099】
2価の基の由来となる芳香族炭化水素としては、例えば、ジフェニルアルカン、ベンゼン等が挙げられる。
【0100】
このようなX
2及びY
2としては、下記式(III−1)で表される基、下記式(III−2)で表される基、下記式(III−3)で表される基、下記式(III−5)で表される基、下記式(III−6)で表される基、下記式(VI−1)で表される基、下記式(VI−2)で表される基又は下記式(VI−3)で表される基がより好ましい。
【0101】
すなわち、X
1としては、下記一般式(III−1−1)で表される基、下記一般式(III−2−1)で表される基、下記一般式(III−2−2)で表される基、下記一般式(III−3−1)で表される基、下記一般式(III−5−1)で表される基、下記一般式(III−6−1)で表される基、下記一般式(VI−1−1)で表される基、、下記一般式(VI−2−1)で表される基及び下記一般式(VI−3−1)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を1個以上含む基が好ましい。
【0103】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。n62は1以上10以下の整数である。Z
3は前記一般式(1−a)で表される基又は前記一般式(1−b)で表される基である。)
【0104】
また、Y
1としては、下記式(III−1)で表される基、下記式(III−2)で表される基、下記式(III−3)で表される基、下記式(III−5)で表される基、下記式(III−6)で表される基、下記式(VI−1)で表される基、下記式(VI−2)で表される基又は下記式(VI−3)で表される基で表される基が好ましい。
【0106】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。n61は1以上10以下の整数である。)
【0107】
[Q
3]
一般式(1−4)中、Q
3は水素原子又は1価の炭素数1以上15以下の有機基である。中でも、Q
3としては、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0108】
好ましい脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0109】
好ましい芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ブチルフェニル基、ジフェニル基、フェニルメチルフェニル基等が挙げられる。
【0110】
<好ましいウレトンイミン基含有化合物>
中でも、本実施形態の化合物(1)の構成単位として含まれるカルボジイミド化合物としては、脂肪族ジイソシアネートに由来するカルボジイミド化合物が好ましい。
また、本実施形態の化合物の構成単位として含まれるイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート化合物が好ましい。
【0111】
さらに、本実施形態の化合物(1)において、ウレトンイミン基に結合する、イソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基の炭素原子と、ウレトンイミン基に結合する、カルボジイミド化合物からカルボジイミド基を除いた残基の炭素原子と、において、一方の炭素原子が第1級炭素原子若しくは電子求引性基が結合した第1級炭素原子であり、且つ他方の炭素原子が第2級炭素原子であることが好ましい。又は、一方の炭素原子が電気求引性基が結合した第1級炭素原子であり、且つ他方の炭素原子が電気求引性基が結合していない第1級炭素原子であることが好ましい。
電気求引性基が結合した第1級炭素原子又は第2級炭素原子である場合には、イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物との解離性をより高めることができ、80℃等の低温における硬化性をより向上させることができる。一方で、電気求引性基が結合した第1級炭素原子である場合には、イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物との結合性をより高めることができ、貯蔵安定性をより向上させることができる。よって、上記組み合わせであることで、イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物との結合及び解離を制御することができ、貯蔵安定性と80℃等の低温における硬化性を両立することができる。
【0112】
なお、ここでいう「電子求引性基」とは、反応中心から電子を求引する(電子密度を下げる効果を有する)置換基を意味し、具体的には、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基(−NO
2)、シアノ基(−CN)、カルボシキ基(−COOH)、アルコキシカルボニル基(−COOR’;Rは任意のアルキル基)、アミド基(−C(=O)−N<)、ケトン基(>C=O)等が挙げられる。
【0113】
好ましい化合物(1)としては、例えば、下記一般式(1α)で表される化合物(以下、「化合物(1α)」と称する場合がある)等が挙げられる。化合物(1α)は、ウレトンイミン基を少なくとも1つ有する化合物である。
【0115】
(一般式(1α)中、n11は1以上100以下の整数である。X
11及びX
12はそれぞれ独立に、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基から水素原子を除いた残基である。Q
11は下記式(1−a)で表される基(以下、「基(1−a)」と称する場合がある)又は下記一般式(1−b)で表される基(以下、「基(1−b)」と称する場合がある)である。n11が1のとき、Q
11は下記一般式(1−b)で表される基であり、n11が2以上であるとき、複数存在するQ
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R
11及びR
12はそれぞれ独立に、ジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。)
【0117】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(1−b)中、Y
11はイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基である。なお、前記ジイソシアネートと前記イソシアネート化合物とは異なる化合物である。)
【0118】
また、化合物(1α)は、赤外分光分析による測定スペクトルにおいて、ウレトンイミン基及びウレタン基由来の吸光度に対するカルボジイミド基由来の吸光度の比が0以上1.5未満であり、0以上1.4以下が好ましく、0以上1.0以下がより好ましく、0以上0.5以下がさらに好ましい。
ウレトンイミン基及びウレタン基由来の吸光度に対するカルボジイミド基由来の吸光度の比が上記範囲であることで、化合物(1α)中においてより十分量のウレトンイミン基が形成されており、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性がより良好なものとなる。
なお、一般に、赤外分光分析による測定スペクトルにおいて、ウレトンイミン基及びウレタン基の伸縮振動由来の吸光度は1720cm
−1付近に現れ、カルボジイミド基の伸縮振動由来の吸光度は2120cm
−1付近に現れることが知られている。
【0119】
化合物(1α)の構造について下記に詳細を説明する。
【0120】
[n11]
n11は、構成単位「−R
11−Q
11−」の繰り返し数を表し、1以上100以下の整数である。
【0121】
[X
11及びX
12]
X
11及びX
12はそれぞれ独立に、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基から水素原子を除いた残基である。化合物(1α)は、X
11及びX
12を有することで、水系溶媒中において優れた水分散性を有する。X
11及びX
12は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造しやすいことから、同一であることが好ましい。
【0122】
(単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール)
X
11及びX
12の形成に用いられる単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、下記一般式(IV)で表される化合物である。
【0124】
(一般式(IV)中、R
41はカルボニル基を含んでもよい炭素数1以上30以下のアルキル基又は炭素数6以上30以下のアリール基である。R
42は炭素数1以上5以下のアルキレン基である。n41は1以上60以下の整数である。)
【0125】
・R
41
R
41におけるカルボニル基を含んでもよいアルキル基の炭素数としては、1以上30以下であり、ポリイソシアネートの親水性を向上させる観点から、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上12以下がさらに好ましい。
R
41におけるカルボニル基を含んでもよいアリール基の炭素数としては、6以上30以下であり、ポリイソシアネートの親水性を向上させる観点から、6以上20以下が好ましく、6以上15以下がより好ましく、6以上12以下がさらに好ましい。
R
41におけるアルキル基としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。鎖状アルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
R
41におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基等が挙げられる。
また、アリール基は、アルキル基、アルケニル基及びアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を置換基として有してもよい。置換基を有するアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、スチリル基、スチリルフェニル基等が挙げられる。
【0126】
また、カルボニル基を含むアルキル基及びアリール基は、例えば、下記一般式(IV−1)で表される基(以下、「基(IVa)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0128】
(一般式(IVa)中、R
43は炭素数1以上29以下のアルキル基又は炭素数6以上29以下のアリール基である。アスタリスクは結合部位を表す。)
【0129】
R
43におけるアルキル基及びアリール基としては、上記R
41において例示されたもののうち、炭素数1以上29以下のアルキル基及び炭素数6以上29以下のアリール基が挙げられる。
【0130】
中でも、R
41としては、カルボニル基を含んでもよい鎖状アルキル基が好ましく、カルボニル基を含んでもよい直鎖状アルキル基がより好ましく、カルボニル基を含んでもよい炭素数1以上12以下の直鎖状アルキル基がさらに好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0131】
・R
42
R
42における炭素数1以上5以下のアルキレン基としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、1−メチルエチレン基(プロピレン基)、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基等が挙げられる。環状アルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基等が挙げられる。
中でも、R
42としては、鎖状アルキレン基が好ましく、直鎖状アルキレン基がより好ましく、炭素数1以上3以下の直鎖状アルキレン基がさらに好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。
【0132】
・n41
n41は、アルキレンオキシド繰り返し単位の平均数であり、1以上60以下の整数である。n41の下限値は、1であり、2が好ましく、5がより好ましい。一方で、n11の上限値は、60であり、40が好ましく、30がより好ましい。
すなわち、n41は1以上60以下であり、2以上40以下が好ましく、5以上30以下がより好ましい。
n41が上記範囲であることで、化合物(1α)の水分散性がより良好となる。
n41は、例えば、化合物(1α)を試料として、プロトン核磁気共鳴(NMR)により算出することができる。具体的には、アルキレン基に対応する相対強度の積分値とアルキル基に対応する相対強度の積分値とを対応させることにより、化合物(1α)中のアルキレンオキシド繰り返し単位の平均数を算出することができる。
【0133】
このような単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、例えば、ポリメチレングリコ−ルモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコ−ルモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールフェニルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールフェニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールスチリルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールナフチルエーテル、ポリプロピレングリコ−ルモノアルキルエーテル、及び、これらのコポリマー等が挙げられる。ポリエチレングリコ−ルモノアルキルエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコ−ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコ−ルモノエチルエーテル、ポリエチレングリコ−ルモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ポリエチレングリコ−ルモノラウリルエーテル等が挙げられる。ポリプロピレングリコ−ルモノアルキルエーテルとしては、例えば、ポリプロピレングリコ−ルモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコ−ルモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコ−ルモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコ−ルモノブチルエーテル等が挙げられる。
コポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン(ランダム及びブロックのうち少なくともいずれかの重合様式の)グリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン(ランダム及びブロックのうち少なくともいずれかの重合様式の)グリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシテトラメチレン(ランダム及びブロックのうち少なくともいずれかの重合様式の)グリコールポリブチレングリコ−ルモノメチルエーテル等が挙げられる。また、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、(モノ、ジ、トリ、テトラ又はペンタ)スチレン化フェニル基、モノ(又はジ若しくはトリ)スチリル−メチル−フェニル基、トリベンジルフェニル基、β−ナフチル基等の芳香環を2つ以上含有する基を有するノニオン型界面活性剤等を用いてもよい。これら単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
中でも、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、ポリエチレングリコ−ルモノメチルエーテル、ポリプロピレンレングリコ−ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ポリプロピレンレングリコ−ルモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン(ランダム及びブロックのうち少なくともいずれかの重合様式の)グリコールモノメチルエーテル、又は、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン(ランダム及びブロックのうち少なくともいずれかの重合様式の)グリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0134】
単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの分子量の下限値は、50が好ましく、100がより好ましく、150がさらに好ましく、200が特に好ましい。一方で、分子量の上限値は、3000が好ましく、2500がより好ましく、2000がさらに好ましく、1500が特に好ましい。
すなわち、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの分子量は、50以上3000以下が好ましく、100以上2500以下がより好ましく、150以上2000以下がさらに好ましく、200以上1500以下が特に好ましい。
分子量が上記範囲であることで、化合物(1α)の水分散性がより良好となる。
【0135】
すなわち、好ましいX
11及びX
12としては、例えば、下記一般式(II−1)で表される基(以下、「基(II−1)」と称する場合がある)、下記一般式(II−2)で表される基(以下、「基(II−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。基(II−1)又は基(II−2)を有することで、化合物(1α)は、疎水性であるウレトンイミン基を有する主骨格、弱親水性であるプロピレンオキシド繰り返し単位、及び、強親水性であるエチレンオキシド繰り返し単位が中心から末端にかけてこの順に結合する構造となり、より安定的に水分散させることができ、水系溶媒中においてカルボン酸やアルコールのウレトンイミン基への侵入をより効果的に抑制することができる。また、基(II−1)又は基(II−2)において、エチレンオキシド繰り返し単位及びプロピレンオキシド繰り返し単位は、ブロック重合されていてもよく、ランダム重合されていてもよい。
【0137】
(一般式(II−1)中、n21及びn22はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。R
21はカルボニル基を含んでもよい炭素数1以上12以下のアルキル基である。
一般式(II−2)中、n23及びn24はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。R
22はカルボニル基を含んでもよい炭素数1以上12以下のアルキル基である。
アスタリスクは結合部位を表す。)
【0138】
・n21、n22、n23及びn24
n21及びn24はそれぞれ独立に、プロピレンオキシド繰り返し単位の数を表し、n22及びn23はそれぞれ独立に、エチレンオキシド繰り返し単位の数を表す。n21、n22、n23及びn24はそれぞれ独立に、1以上30以下であり、1以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましく、5以上10以下がさらに好ましい。n21、n22、n23及びn24が上記範囲であることで、水系溶媒中においてカルボン酸やアルコールのウレトンイミン基への侵入をより効果的に抑制することができる。
また、n22に対するn21の比(n21/n22)は、例えば、0.8以上1.2以下とすることができ、1.0が好ましい。
また、n23に対するn24の比(n24/n23)は、例えば、0.8以上1.2以下とすることができ、1.0が好ましい。
n21/n22及びn24/n23が上記範囲であることで、水系溶媒中においてカルボン酸やアルコールのウレトンイミン基への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0139】
・R
21及びR
22
R
21及びR
22におけるカルボニル基を含んでもよいアルキル基としては、上記R
41において例示されたもののうち炭素数が1以上12以下であるものと同様のものが挙げられる。中でも、R
21としては、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上6以下の鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖状アルキル基がさらに好ましい。
【0140】
より好ましいX
11及びX
12としては、例えば、下記一般式(II−1−1)で表される基(以下、「基(II−1−1)」と称する場合がある)、下記一般式(II−1−2)で表される基(以下、「基(II−1−2)」と称する場合がある)、下記一般式(II−2−1)で表される基(以下、「基(II−2−1)」と称する場合がある)、下記一般式(II−2−2)で表される基(以下、「基(II−2−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0142】
(一般式(II−1−1)中、n211及びn212はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。
一般式(II−1−2)中、n213及びn214はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。
一般式(II−2−1)中、n221及びn222はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。
一般式(II−2−2)中、n223及びn224はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。)
【0143】
[R
11及びR
12]
R
11及びR
12はそれぞれ独立に、ジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基、すなわち、2価の炭化水素基である。R
11及びR
12は互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造しやすいことから、同一であることが好ましい。
【0144】
2価の炭化水素基としては、炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、例えば、直鎖炭化水素基、無置換の脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基)、アルキル置換脂環式炭化水素基、ジアルキル置換脂環式炭化水素基、トリアルキル置換脂環式炭化水素基、直鎖炭化水素基とトリアルキル置換脂環式炭化水素基とが結合してなる基、無置換の芳香族炭化水素基、モノアルキル置換アリーレン基、ジアルキル置換アリーレン基等が挙げられる。
直鎖炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
無置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、アルキレンビス(シクロヘキシレン)基等が挙げられる。アルキレンビス(シクロヘキシレン)基としては、例えば、メチレンビス(シクロヘキシレン)基、エチレンビス(シクロヘキシレン)基等が挙げられる。
アルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、メチルシクロペンチレン基、エチルシクロペンチレン基、メチルシクロヘキシレン基(各異性体)、エチルシクロヘキシレン基(各異性体)、プロピルシクロヘキシレン基(各異性体)、ブチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ペンチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ヘキシルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
ジアルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、ジメチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ジエチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ジブチルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
トリアルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、1,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基、1,5,5−トリエチルシクロヘキシレン基、1,5,5−トリプロピルシクロヘキシレン基(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
直鎖炭化水素基とトリアルキル置換脂環式炭化水素基とが結合してなる基としては、例えば、下記式(III−2)で表される基(以下、「基(III−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0146】
無置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニルアルカン−ジイル基等が挙げられる。
モノアルキル置換アリーレン基としては、例えば、トルエン−ジイル基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基等が挙げられる。
ジアルキル置換アリーレン基としては、例えば、キシレン−ジイル基、ジエチルフェニレン基、ジプロピルフェニレン基、テトラメチルキシリレン基等が挙げられる。
【0147】
中でも、R
11及びR
12としては、アルキレンビス(シクロヘキシレン)基、基(III−2)、ジフェニルアルカン−ジイル基、トルエン−ジイル基又はテトラメチルキシリレン基が好ましく、下記式(III−1)で表される基(以下、「基(III−1)」と称する場合がある)、基(III−2)、下記式(III−3)で表される基(以下、「基(III−3)」と称する場合がある)、下記式(III−4)で表される基(以下、「基(III−4)」と称する場合がある)、下記式(III−5)で表される基(以下、「基(III−5)」と称する場合がある)又は下記式(III−6)で表される基(以下、「基(III−6)」と称する場合がある)がより好ましい。
【0149】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0150】
また、中でも、R
11及びR
12としては、基(VI)であることが好ましい。
【0152】
(一般式(VI)中、R
61は、炭素数1以上18以下のアルキレン基又は炭素数6以上18以下のアリーレン基である。前記アルキレン基及び前記アリーレン基は、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ビウレット基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよい。アスタリスクは結合部位を表す。)
【0153】
(R
61)
R
61における炭素数1以上18以下のアルキレン基としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、1−メチルエチレン基(プロピレン基)、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基等が挙げられる。環状アルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等が挙げられる。
【0154】
R
61における炭素数6以上18以下のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレン−ジイル基が挙げられる。
【0155】
中でも、R
61としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、シクロヘキシレン基又はフェニレン基が好ましい。
【0156】
好ましい基(VI)としては、例えば、下記一般式(VI−1)で表される基(以下、「基(VI−1)」と称する場合がある)、下記式(VI−2)で表される基(以下、「基(VI−2)」と称する場合がある)、下記式(VI−3)で表される基(以下、「基(VI−3)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0158】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(VI−1)中、n61は3以上10以下の整数である。)
【0159】
好ましい基(VI−1)としては、例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、中でも、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基が好ましい。
【0160】
また、R
11及びR
12がイソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ビウレット基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する前記アルキレン基及び前記アリーレン基である場合、R
11及びR
12は、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。中でも、該ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであることが好ましい。
【0161】
なお、「イソシアヌレート基」とは、3つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(VII−1)で示される基である。
「アロファネート基」とは、アルコールの水酸基とイソシアネート基とを反応させてなる官能基であり、下記式(VII−2)で示される基である。
一般に、「ビウレット基」とは、3つのイソシアネート基とビウレット化剤とを反応させてなる官能基であり、下記式(VII−3)で表される基である。
一般に、「ウレトジオン基」とは、2つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(VII−4)で表される基である。
一般に、「イミノオキサジアジンジオン基」とは、3つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(VII−5)で表される基である。
一般に、「ウレタン基」とは、1つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させてなる官能基であり、下記式(VII−6)で表される基である。
【0163】
[Q
11]
Q
11は基(1−a)又は基(1−b)である。基(1−a)は、カルボジイミド基である。基(1−b)は、カルボジイミド基とイソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応して形成されたウレトンイミン基である。
n11が1のとき、Q
11は基(1−b)であり、n11が2以上であるとき、複数存在するQ
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性の観点から、赤外分光分析による測定スペクトルにおいて、ウレトンイミン基及びウレタン基由来の吸光度に対するカルボジイミド基由来の吸光度の比が上記範囲となるように、基(1−b)及び基(1−a)が存在することが好ましい。
【0165】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(1−b)中、Y
11はイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基である。なお、前記ジイソシアネートと前記イソシアネート化合物とは異なる化合物である。)
【0166】
(Y
11)
Y
11はイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基である。
Y
11を含むウレトンイミン基の形成に用いられるイソシアネート化合物としては、1つ以上のイソシアネート基を有する化合物であって、上記R
11及び上記R
12の形成に用いられるジイソシアネートと異なるものであればよい。
【0167】
また、Y
11は、アミノ酸に由来する基を有するイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基であって、前記アミノ酸に由来する基を有するイソシアネート化合物が下記式(5)で表される基を有するイソシアネート化合物であってもよい。
【0169】
(一般式(5)中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0170】
Y
11を含むウレトンイミン基の形成に用いられるイソシアネート化合物としては、アミノ酸に由来するイソシアネート及び3官能以上のイソシアネートのうち少なくともいずれかのイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0171】
すなわち、Y
11はアミノ酸に由来する基を有するイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基及び3官能以上のイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基のうち少なくともいずれかの基であることが好ましい。3官能以上のイソシアネートとしては、3官能のイソシアネートが好ましい。
【0172】
Y
11を含むウレトンイミン基の形成に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、下記一般式(I−B)で表される化合物(以下、「化合物(I−B)」と称する場合がある)、ジイソシアネートモノマー又はトリイソシアネートモノマーを重合させてなるポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する場合がある)系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する場合がある)系ポリイソシアネート等が挙げられる。HDI系ポリイソシアネートとしては、例えば、ビウレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0174】
(一般式(I−B)中、n11bは1以上の整数である。R
11bは「n11b」価の有機基である。)
【0175】
[化合物(I−B)]
(n11b)
一般式(I−B)中、製造の容易性や取り扱いの容易性を考慮すると、n11bは、1以上5以下の整数が好ましく、1以上3以下の整数がより好ましい。
【0176】
(R
11b)
一般式(I−B)中、R
11bとしては、炭素数3以上85以下の有機基が好ましく、炭素数3以上30以下の有機基がより好ましい。R
11bにおける有機基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合してなる基である。具体的なR
31としては、例えば、環式炭化水素基、非環式炭化水素基、非環式炭化水素基と1種以上の環式基とが結合してなる基、及び、これらの基が特定の非金属原子と共有結合してなる基等が挙げられる。前記環式基としては、例えば、環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基等が挙げられる。前記環式炭化水素基としては、例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基等が挙げられる。前記非金属原子としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素等が挙げられる。
【0177】
1.1官能のイソシアネート化合物
化合物(I−B)において、n11bが1である1官能のイソシアネート化合物(すなわち、一分子中に1個のイソシアネート基を有する化合物)である場合、好ましい化合物(I−B)としては、例えば、下記一般式(I−B)−1aで表される化合物(以下、「化合物(I−B)−1a」と称する場合がある)、下記一般式(I−B)−1bで表される化合物(以下、「化合物(I−B)−1b」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、これらの化合物は、好ましい化合物(I−B)の一例に過ぎず、好ましい化合物(I−B)はこれに限定されない。
【0179】
(一般式(I−B)−1a中、R
111bは炭素数3以上85以下の炭化水素基である。
一般式(I−B)−1b中、R
113bは、酸素原子又は第2級アミノ基(−NH−)である。R
112bは水素原子、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基である。R
112bにおける前記炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び前記炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基は、硫黄原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。R
114bは炭素数1以上10以下の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の1価の芳香族炭化水素基である。)
【0180】
なお、上記化合物(I−B)−1bは、α−アミノ酸骨格を有する化合物である。
α−アミノ酸では、α炭素へのアミノ基やカルボキシル基等の結合様式が立体的に2通り可能で、それぞれ、D型、L型の光学異性体として区別される。上記化合物(I−B)−1bの製造に使用されるアミノ酸(及びアミノ酸骨核を有する化合物)は、D型でもよく、L型でもよく、その混合物やラセミ体であってもよい。工業的に安価に入手できる多くのアミノ酸は、発酵で生産されるアミノ酸で、L型であることがほとんどであるが、それらは好ましく使用できる。本明細書中では、立体配置を示していないが、D型及びL型のいずれかを示している。
【0181】
(R
111b)
R
111bは炭素数3以上85以下の炭化水素基である。R
111bにおける炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。R
111bにおける炭化水素基としては、上記R
11bにおいて例示された炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0182】
(R
112b及びR
114b)
R
112b及びR
114bにおける炭素数1以上10以下の1価の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等が挙げられる。R
112b及びR
114bにおける炭素数6以上10以下の1価の芳香族炭化水素基として具体的には、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基等が挙げられる。また、R
112bにおける炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基は、硫黄原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。なお、硫黄原子又は酸素原子を含む場合には、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基を構成する炭素原子が硫黄原子又は酸素原子に置換されている。
【0183】
(R
113b)
R
113bは酸素原子(−O−)又は第2級アミノ基(−NH−)である。R
113bが酸素原子である場合、隣り合うカルボニル基とエステル結合を形成する。また、R
113bが第2級アミノ基(−NH−)である場合、隣り合うカルボニル基とアミド結合を形成する。
【0184】
好ましい化合物(I−B)−1aとしては、例えば、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート等が挙げられる。
好ましい化合物(I−B)−1bとしては、例えば、下記式(I−B)−1b−1で表される化合物(以下、「化合物(I−B)−1b−1」と略記する場合がある)、下記式(I−B)−1b−2で表される化合物(以下、「化合物(I−B)−1b−2」と略記する場合がある)、下記式(I−B)−1b−3で表される化合物(以下、「化合物(I−B)−1b−3」と略記する場合がある)、下記式(I−B)−1b−4で表される化合物(以下、「化合物(I−B)−1b−4」と略記する場合がある)等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましい化合物(I−B)の一例に過ぎず、好ましい化合物(I−B)はこれに限定されない。
【0186】
2.2官能のイソシアネート化合物
化合物(I−B)において、n11bが2である2官能のイソシアネート化合物(すなわち、一分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物)である場合、好ましい化合物(I−B)としては、例えば、下記一般式(I−B)−2aで表される化合物(以下、「化合物(I−B)−2a」と称する場合がある)、下記一般式(I−B)−2bで表される化合物(以下、「化合物(I−B)−2b」と称する場合がある)、下記一般式(I−B)−2cで表される化合物(以下、「化合物(I−B)−2c」と称する場合がある)、下記一般式(I−B)−2dで表される化合物(以下、「化合物(I−B)−2d」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、これらの化合物は、好ましい化合物(I−B)の一例に過ぎず、好ましい化合物(I−B)はこれに限定されない。
【0188】
(一般式(I−B)−2a中、R
121bは上記R
111bと同じである。
一般式(I−B)−2b中、R
122bは上記R
112bと同じである。R
123bは上記R
113bと同じである。R
124bは炭素数1以上10以下の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の2価の芳香族炭化水素基である。
一般式(I−B)−2c中、R
125bは炭素数1以上5以下のアルキレン基である。R
126bは上記R
113bと同じである。R
127bは上記R
114bと同じである。
一般式(I−B)−2d中、R
128bは上記R
112bと同じである。R
129bは上記R
113bと同じである。R
130bは上記R
125bと同じである。)
【0189】
(R
124b)
R
124bにおける炭素数1以上10以下の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。R
124bにおける炭素数6以上10以下の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレン−ジイル基等が挙げられる。
【0190】
(R
125b及びR
130b)
R
125b及びR
130bはそれぞれ独立に、炭素数1以上5以下のポリアルキレン鎖である。すなわち、R
125b及びR
130bは、下記一般式(V)で表される2価の基である。
【0192】
一般式(V)中、n51は1以上5以下の整数である。
【0193】
炭素数1以上5以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0194】
好ましい化合物(I−B)−2a、化合物(I−B)−2b、化合物(I−B)−2c及び化合物(I−B)−2dとして具体的には、例えば、炭素数4以上30以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数8以上30以下の脂環族ジイソシアネート、炭素数8以上30以下の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらジイソシアネートとして具体的には、後述する「カルボジイミド化合物」で例示されるものと同様のものが挙げられる。
また、好ましい化合物(I−B)−2dとしては、例えば、下記式(I−B)−2c−1で表される化合物(以下、「化合物(I−B)−2c−1」と略記する場合がある)等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましい化合物(I−B)の一例に過ぎず、好ましい化合物(I−B)はこれに限定されない。
【0196】
3.3官能のイソシアネート化合物
化合物(I−B)において、n31が3である3官能のイソシアネート化合物(すなわち、一分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物)である場合、好ましい化合物(I−B)としては、例えば、下記一般式(1−B)−3aで表される化合物(以下、「化合物(1−B)−3a」と称する場合がある)、下記一般式(1−B)−3bで表される化合物(以下、「化合物(1−B)−3b」と称する場合がある)、下記一般式(1−B)−3cで表される化合物(以下、「化合物(1−B)−3c」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、これらの化合物は、好ましい化合物(I−B)の一例に過ぎず、好ましい化合物(I−B)はこれらに限定されない。
【0198】
(一般式(1−B)−3a中、R
131bは上記R
112bと同じである。R
132bは上記R
113bと同じである。R
133bは炭素数1以上10以下の3価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の3価の芳香族炭化水素基である。
一般式(1−B)−3b中、n131b、n132b及びn133bはそれぞれ独立に、1以上4以下の整数である。n134b、n135b及びn136bはそれぞれ独立に、0以上5以下の整数である。m131b、m132b及びm133bはそれぞれ独立に、0又は1である。
一般式(1−B)−3c中、複数存在するR
134bはそれぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。R
135bは、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基及び炭素数1以上20以下の炭化水素基は置換基を有してもよい。)
【0199】
(R
133b)
R
133bは炭素数1以上10以下の3価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の3価の芳香族炭化水素基である。
R
133bにおける炭素数1以上10以下の3価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メタントリイル基、エタントリイル、プロパントリイル基等が挙げられる。R
133bにおける炭素数6以上10以下の3価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。
【0200】
(R
134b)
好ましいR
134bとしては、例えば、炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基、炭素数2以上20以下であって脂肪族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数2以上20以下であって脂肪族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基、炭素数7以上20以下であって脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数7以上20以下であって脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基、炭素数14以上20以下であって芳香族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数14以上20以下であって芳香族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基が挙げられる。
【0201】
(R
135b)
R
135bとしては、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基が好ましい。R
135bにおける炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基としては、上記R
112b及び上記R
114bにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0202】
好ましい化合物(I−B)−3bとしては、例えば、下記一般式(I−B)−3b1で表される化合物(以下、「化合物(I−B)−3b1」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0204】
(一般式(I−B)−3b1中、n137bは2以上4以下の整数である。)
【0205】
好ましい化合物(I−B)−3b1としては、例えば、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
好ましい化合物(1−B)−3cとしては、例えば、ノナントリイソシアネート(以下、「NTI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましい化合物(I−B)の一例に過ぎず、好ましい化合物(I−B)はこれに限定されない。
等が挙げられる。
【0206】
中でも、化合物(I−B)としては、3官能のイソシアネート化合物が好ましく、化合物(I−B)−3cがより好ましい。
【0207】
好ましい化合物(1)としてより具体的には、例えば、下記一般式(1β)で表される基を有する化合物、下記一般式(1γ)で表される基を有する化合物、下記一般式(1δ)で表される化合物、下記一般式(1ε)で表される化合物、下記一般式(1ζ)で表される化合物、下記一般式(1η)で表される化合物、下記一般式(1θ)で表される化合物、下記一般式(1ι)で表される化合物、一般式(1κ)で表される化合物等が挙げられる。
【0209】
一般式(1β)において、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に、1以上12以下の整数である。m1及びm2はそれぞれ独立に、0以上10以下の整数であり、同時に0とはならない。m1+m2の合計は1以上20以下である。m1及びm2はそれぞれのユニット組成数を表し、ランダムであってもよく、ブロック状に含まれていてもよく、そのユニット合計値がそれぞれ、m1、m2である。Y
11は上記Y
11と同じである。アスタリスクは末端基との結合部位を表す。
【0211】
一般式(1γ)において、n4は1以上20以下の整数である。Y
11は上記Y
11と同じである。アスタリスクは末端基との結合部位を表す。
【0213】
一般式(1δ)において、n5及びn6はそれぞれ独立に、1以上12以下の整数である。m3、m4及びm5は0以上20以下の整数を表し、同時に0とならない。m3+m4+m5の合計は1以上20以下の整数である。m3、m4及びm5はそれぞれのユニット組成数を表し、ランダムであってもよく、ブロック状に含まれていてもよく、そのユニット合計値がそれぞれ、m3、m4及びm5である。Y
11は上記Y
11と同じである。Q
5及びQ
6は、1価の有機基を表し、下記式(1δ−1)で表される基又は式(1δ−2)で表される基である。
【0215】
式中、n7は1以上12以下の整数である。アスタリスクは結合部位を表す。
【0217】
一般式(1ε)〜一般式(1κ)において、m6、m7、m8、m9、m10及びm11はそれぞれ独立に、1以上12以下の整数である。Y
11は上記Y
11と同じである。
【0218】
≪ウレトンイミン基含有化合物の製造方法≫
本実施形態の化合物は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソアネートに由来するカルボジイミド基と、イソシアネート化合物に由来するイソシアネート基とを反応させて製造される。
【0219】
具体的には、下記一般式(2)で表されるカルボジイミド化合物(以下、「カルボジイミド化合物(2)」と称する場合がある)と、下記一般式(3)で表されるイソシアネート化合物(以下、「イソシアネート化合物(3)」と称する場合がある)とを反応させて製造される。
【0221】
(一般式(2)中、X
21は下記一般式(2−1)で表される基を1個以上含む基である。前記X
21において、下記一般式(2−1)で表される基を2個以上含む場合、複数存在する下記一般式(2−1)で表される基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。Y
21は下記一般式(1−2)で表される基である。Q
21及びQ
22はそれぞれ独立に、水素原子、下記一般式(1−3)で表される基、下記一般式(1−4)で表される基又は下記一般式(1−5)で表される基である。)
【0223】
(一般式(2−1)中、X
22は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。)
【0225】
(一般式(1−2)〜一般式(1−5)中、アスタリスクは結合部位を表す。Y
2は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。Q
3は水素原子又は1価の炭素数1以上15以下の有機基である。Z
2は、下記一般式(1−a)で表される基、下記一般式(1−c)で表される基又は下記一般式(1−d)で表される基である。R
1は単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基から水素原子を除いた残基である。)
【0227】
(一般式(1−a)、一般式(1−c)及び一般式(1−d)中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0229】
(一般式(3)中、R
3はイソシアネート化合物から1つのイソシアネート基を除いた残基である。)
【0230】
カルボジイミド化合物(2)の詳細については、後述する。また、イソシアネート化合物(3)は、上記Y
11で例示されたイソシアネート化合物(化合物(I−B))と同様のものが挙げられる。
【0231】
<化合物(1α)の製造方法1>
本実施形態のウレトンイミン基含有化合物の具体的な製造方法として、上記化合物(1α)の製造方法を下記に例示する。
化合物(1α)は、例えば、カルボジイミド化合物と、イソシアネート化合物とを反応させて、ウレトンイミン基を有する化合物を得る工程(以下、「ウレトンイミン基含有化合物製造工程」と称する場合がある)と、得られたウレトンイミン基含有化合物と単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとを反応させて、化合物(1α)を得る工程(以下、「化合物(1α)製造工程」と称する場合がある)とを有する製造方法により、製造することができる。
【0232】
[ウレトンイミン基含有化合物製造工程]
ウレトンイミン基含有化合物製造工程では、カルボジイミド化合物と、イソシアネート化合物とを反応させて、ウレトンイミン基を有する化合物を得る。ウレトンイミン基を有する化合物を得る反応は、公知の反応である。
反応温度は、例えば、15℃以上70℃以下とすることができ、20℃以上60℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては特に限定されないが、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、スルホキシド、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0233】
イソシアネート化合物の使用量は、イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル量がカルボジイミド化合物のカルボジイミド基のモル量に対して、0.8倍以上1.5倍以下となる量とすることができる。
ウレトンイミン基含有化合物製造工程において、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、ウレトンイミン基含有化合物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、ウレトンイミン基含有化合物を取り出せばよい。また、取り出したウレトンイミン基含有化合物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
ウレトンイミン基含有化合物製造工程においては、反応終了後、ウレトンイミン基含有化合物を取り出さずに、次工程で用いてもよいが、目的物である化合物(1α)の収率が向上する点から、ウレトンイミン基含有化合物を上述の方法で取り出すことが好ましい。
【0234】
(カルボジイミド化合物)
本実施形態の化合物の製造に用いられるカルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式(I−A)で表される化合物等が挙げられる。
【0236】
(一般式(I−A)中、R
11a及びR
12aはそれぞれ上記R
11及びR
12と同じである。n11aは上記n11と同じである。)
【0237】
カルボジイミド化合物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、ジイソシアネートを、溶媒存在下又は溶媒非存在下で、ホスホレンオキサイド等を触媒として使用し、100℃以上200℃以下で加熱することで製造できる。溶媒としては、上記「ウレトンイミン基含有化合物製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド等が挙げられる。
このようにして製造されたカルボジイミド化合物は、反応終了後に、ウレトンイミン基含有化合物製造工程の場合と同様の方法で、カルボジイミド化合物を取り出すことができ、取り出したカルボジイミド化合物をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0238】
・ジイソシアネート
カルボジイミド化合物の製造に用いられるジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、IPDI、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、ジメチルシクロへキサンジイソシアネート(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(以下、「TDIs」と略記する場合がある)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する場合がある)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(以下、「NDI」と略記する場合がある)、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニレンジイソシアネート(以下、「TODI」と略記する場合がある)、粗製TDIs、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する場合がある)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、「TMXDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
中でも、ジイソシアネートとしては、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが好ましく、IPDI、水添MDI、MDI又はTMXDIがより好ましい。
【0239】
・ポリイソシアネート
カルボジイミド化合物の製造に用いられるポリイソシアネートとしては、上記「R
11及びR
12」で例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが好ましい。
カルボジイミド化合物の製造において、ポリイソシアネートを用いる場合、ジイソシアネートと組み合わせて用いることが好ましい。このとき、ジイソシアネートに対するポリイソシアネートの使用量(ポリイソシアネート/ジイソシアネート)は、質量比で、例えば、20/80以上1/99以下とすることができ、15/85以上5/95以下とすることができる。
【0240】
(イソシアネート化合物)
上記一般式(1α)中のY
11の説明において例示されたものと同様のものが挙げられる。好ましいイソシアネート化合物としては、例えば、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、化合物(I−B)−1b−1、化合物(I−B)−1b−2、化合物(I−B)−1b−3、化合物(I−B)−1b−4、ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、化合物(I−B)−2c−1、NTI、LTI、HDI系ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0241】
[化合物(1α)製造工程]
化合物(1α)製造工程においては、ウレトンイミン基含有化合物と、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとを反応させて、化合物(1α)を得る。
具体的には、ウレトンイミン基含有化合物の末端のイソシアネート基と、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基とが反応し、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基の水素原子を除く残基が、ウレトンイミン基含有化合物の末端に導入されることで、化合物(1α)が生成される。
反応温度は、例えば、80℃以上200℃以下とすることができ、100℃以上150℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「ウレトンイミン基含有化合物製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、上記「化合物(1α)」の説明において例示されたものと同様のものが挙げられる。好ましい単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及び、それらのコポリマー等が挙げられる。
【0242】
化合物(1α)製造工程において、反応終了後は、ウレトンイミン基含有化合物製造工程の場合と同様の方法で、化合物(1α)を取り出すことができ、取り出した化合物(1α)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0243】
化合物(1α)、ウレトンイミン基含有化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物等の各化合物は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0244】
<化合物(1α)の製造方法2>
また、化合物(1α)は、カルボジイミド化合物と、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとを反応させて、親水性カルボジイミド化合物を得る工程(以下、「親水性カルボジイミド化合物製造工程」と称する場合がある)と、得られた親水性カルボジイミド化合物とイソシアネート化合物とを反応させて、化合物(1α)を得る工程(以下、「化合物(1α)製造工程」と称する場合がある)とを有する製造方法により、製造することができる。
なお、化合物(1α)の製造に用いられるカルボジイミド化合物、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール及びイソシアネート化合物は、上述した「化合物(1α)の製造方法1」で例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0245】
[親水性カルボジイミド化合物製造工程]
親水性カルボジイミド化合物製造工程では、カルボジイミド化合物と、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとを反応させて、親水性カルボジイミド化合物を得る。具体的には、カルボジイミド化合物の末端のイソシアネート基と、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基とが反応し、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基の水素原子を除く残基が、カルボジイミド化合物の末端に導入されることで、親水性カルボジイミド化合物が生成される。
親水性カルボジイミド化合物を得る反応は、公知の反応である。
【0246】
反応温度は、例えば、80℃以上200℃以下とすることができ、100℃以上180℃以下とすることができる。
単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、上記「化合物(1α)」の説明において例示されたものと同様のものが挙げられる。好ましい単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及び、それらのコポリマー等が挙げられる。
【0247】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては特に限定されないが、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、スルホキシド、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0248】
親水性カルボジイミド化合物製造工程において、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、親水性カルボジイミド化合物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、親水性カルボジイミド化合物を取り出せばよい。また、取り出した親水性カルボジイミド化合物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
親水性カルボジイミド化合物製造工程においては、反応終了後、親水性カルボジイミド化合物を取り出さずに、次工程で用いてもよいが、目的物である化合物(1α)の収率が向上する点から、親水性カルボジイミド化合物を上述の方法で取り出すことが好ましい。
【0249】
[化合物(1α)製造工程]
化合物(1α)製造工程においては、得られた親水性カルボジイミド化合物とイソシアネート化合物とを反応させて、化合物(1α)を得る。
具体的には、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基と、イソシアネート化合物の末端のイソシアネート基とが反応し、ウレトンイミン基が形成されることで、化合物(1α)が生成される。化合物(1α)を得る反応は、公知の反応である。
反応温度は、例えば、50℃以上100℃以下とすることができ、60℃以上90℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「親水性カルボジイミド化合物製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0250】
化合物(1α)製造工程において、反応終了後は、親水性カルボジイミド化合物製造工程の場合と同様の方法で、化合物(1α)を取り出すことができ、取り出した化合物(1α)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0251】
化合物(1α)、親水性カルボジイミド化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物等の各化合物は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0252】
≪カルボジイミド化合物≫
本実施形態のカルボジイミド化合物は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0254】
(一般式(2)中、X
21は下記一般式(2−1)で表される基を1個以上含む基である。前記X
21において、下記一般式(2−1)で表される基を2個以上含む場合、複数存在する下記一般式(2−1)で表される基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。Y
21は下記一般式(1−2)で表される基である。Q
21及びQ
22はそれぞれ独立に、水素原子、下記一般式(1−3)で表される基、下記一般式(1−4)で表される基又は下記一般式(1−5)で表される基である。)
【0256】
(一般式(2−1)中、X
22は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。)
【0258】
(一般式(1−2)〜一般式(1−5)中、アスタリスクは結合部位を表す。Y
2は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。Q
3は水素原子又は1価の炭素数1以上15以下の有機基である。Z
2は、下記一般式(1−a)で表される基、下記一般式(1−c)で表される基又は下記一般式(1−d)で表される基である。R
1は単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの末端の水酸基から水素原子を除いた残基である。)
【0260】
(一般式(1−a)、一般式(1−c)及び一般式(1−d)中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0261】
X
22及びY
2は、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートのうち少なくともいずれかのジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。X
22及びY
2としては、炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基であることが好ましい。具体的には、上記X
2及び上記Y
2において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0262】
このようなX
22及びY
2としては、前記式(III−1)で表される基、前記式(III−2)で表される基、前記式(III−3)で表される基、前記式(III−5)で表される基、前記式(III−6)で表される基、前記式(VI−1)で表される基、前記式(VI−2)で表される基又は前記式(VI−3)で表される基が好ましい。
【0263】
すなわち、X
21としては、下記一般式(III−1−2)で表される基、下記一般式(III−2−3)で表される基、下記一般式(III−2−4)で表される基、下記一般式(III−3−2)で表される基、下記一般式(III−5−2)で表される基、下記一般式(III−6−2)で表される基、下記一般式(VI−1−2)で表される基、下記一般式(VI−2−2)で表される基及び下記一般式(VI−3−2)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を1個以上含む基が好ましい。
【0265】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。n63は1以上10以下の整数である。)
【0266】
また、Y
21としては、前記式(III−1)で表される基、前記式(III−2)で表される基、前記式(III−3)で表される基、前記式(III−5)で表される基、前記式(III−6)で表される基、前記式(VI−1)で表される基、前記式(VI−2)で表される基又は前記式(VI−3)で表される基が好ましい。
【0267】
<好ましい化合物(2)>
好ましい化合物(2)としては、例えば、下記一般式(2α)で表される化合物(以下、「化合物(2α)」と称する場合がある)等が挙げられる。化合物(2α)は、カルボジイミド基を少なくとも1つ有する化合物である。
【0269】
(一般式(2α)中、n12は1以上100以下の整数である。X
13及びX
14はそれぞれ独立に、下記一般式(II−1)で表される基(以下、「基(II−1)」と称する場合がある)又は下記一般式(II−2)で表される基(以下、「基(II−2)」と称する場合がある)である。R
13及びR
14はそれぞれ独立に、ジイソシアネート又はジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。)
【0271】
(一般式(II−1)中、n21及びn22はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。R
21はカルボニル基を含んでもよい炭素数1以上12以下のアルキル基である。
一般式(II−2)中、n23及びn24はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。R
22はカルボニル基を含んでもよい炭素数1以上12以下のアルキル基である。
アスタリスクは結合部位を表す。)
【0272】
化合物(2α)は、上記基(II−1)又は上記基(II−2)を末端に有することで、樹脂組成物に用いたときの貯蔵安定性に優れる。
【0273】
化合物(2α)の構造について下記に詳細を説明する。
【0274】
[n12]
n12は、カルボジイミド基の繰り返し数を表し、1以上100以下の整数である。
【0275】
[X
13及びX
14]
X
13及びX
14はそれぞれ独立に、上記基(II−1)又は上記基(II−2)である。X
13及びX
14は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造しやすいことから、同一であることが好ましい。
化合物(2α)は、疎水性であるカルボジイミド基を有する主骨格、弱親水性であるプロピレンオキシド繰り返し単位、及び、強親水性であるエチレンオキシド繰り返し単位が中心から末端にかけてこの順に結合する構造を有するため、安定的に水分散させることができ、水系溶媒中においてカルボン酸やアルコールのカルボジイミド基への侵入をより効果的に抑制することができる。また、上記基(II−1)又は上記基(II−2)において、エチレンオキシド繰り返し単位及びプロピレンオキシド繰り返し単位は、ブロック重合されていてもよく、ランダム重合されていてもよい。
【0276】
(n21、n22、n23及びn24)
n21及びn24はそれぞれ独立に、プロピレンオキシド繰り返し単位の数を表し、n22及びn23はそれぞれ独立に、エチレンオキシド繰り返し単位の数を表す。n21、n22、n23及びn24はそれぞれ独立に、1以上30以下であり、1以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましく、5以上10以下がさらに好ましい。n21、n22、n23及びn24が上記範囲であることで、水系溶媒中においてカルボン酸やアルコールのウレトンイミン基への侵入をより効果的に抑制することができる。
また、n22に対するn21の比(n21/n22)は、例えば、0.8以上1.2以下とすることができ、1.0が好ましい。
また、n23に対するn24の比(n24/n23)は、例えば、0.8以上1.2以下とすることができ、1.0が好ましい。
n21/n22及びn24/n23が上記範囲であることで、水系溶媒中においてカルボン酸やアルコールのウレトンイミン基への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0277】
(R
21及びR
22)
R
21及びR
22におけるアルキル基としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。鎖状アルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0278】
R
21及びR
22におけるカルボニル基を含んでもよいアルキル基としては、例えば、下記一般式(IIa)で表される基(以下、「基(IIa)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0280】
(一般式(IIa)中、R
23は炭素数1以上11以下のアルキル基である。アスタリスクは結合部位を表す。)
【0281】
R
23におけるアルキル基としては、上記R
21及びR
22において例示されたもののうち、炭素数1以上11以下のアルキル基が挙げられる。
【0282】
中でも、R
21としては、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上6以下の鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖状アルキル基がさらに好ましい。
【0283】
より好ましいX
11及びX
12としては、例えば、下記一般式(II−1−1)で表される基(以下、「基(II−1−1)」と称する場合がある)、下記一般式(II−1−2)で表される基(以下、「基(II−1−2)」と称する場合がある)、下記一般式(II−2−1)で表される基(以下、「基(II−2−1)」と称する場合がある)、下記一般式(II−2−2)で表される基(以下、「基(II−2−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0285】
(一般式(II−1−1)中、n211及びn212はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。
一般式(II−1−2)中、n213及びn214はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。
一般式(II−2−1)中、n221及びn222はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。
一般式(II−2−2)中、n223及びn224はそれぞれ独立に、1以上30以下の整数である。)
【0286】
[R
13及びR
14]
R
13及びR
14はそれぞれ独立に、ジイソシアネート又はジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。R
13及びR
14は互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造しやすいことから、同一であることが好ましい。
R
13及びR
14が、ジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である場合、R
13及びR
14は、2価の炭化水素基である。
【0287】
2価の炭化水素基としては、炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、例えば、直鎖炭化水素基、無置換の脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基)、アルキル置換脂環式炭化水素基、ジアルキル置換脂環式炭化水素基、トリアルキル置換脂環式炭化水素基、直鎖炭化水素基とトリアルキル置換脂環式炭化水素基とが結合してなる基、無置換の芳香族炭化水素基、モノアルキル置換アリーレン基、ジアルキル置換アリーレン基等が挙げられる。
【0288】
直鎖炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
【0289】
無置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、アルキレンビス(シクロヘキシレン)基等が挙げられる。アルキレンビス(シクロヘキシレン)基としては、例えば、メチレンビス(シクロヘキシレン)基、エチレンビス(シクロヘキシレン)基等が挙げられる。
【0290】
アルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、メチルシクロペンチレン基、エチルシクロペンチレン基、メチルシクロヘキシレン基(各異性体)、エチルシクロヘキシレン基(各異性体)、プロピルシクロヘキシレン基(各異性体)、ブチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ペンチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ヘキシルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
【0291】
ジアルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、ジメチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ジエチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ジブチルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
【0292】
トリアルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、1,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基、1,5,5−トリエチルシクロヘキシレン基、1,5,5−トリプロピルシクロヘキシレン基(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
【0293】
直鎖炭化水素基とトリアルキル置換脂環式炭化水素基とが結合してなる基としては、例えば、下記式(III−2)で表される基(以下、「基(III−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0295】
無置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニルアルカン−ジイル基等が挙げられる。
モノアルキル置換アリーレン基としては、例えば、トルエン−ジイル基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基等が挙げられる。
ジアルキル置換アリーレン基としては、例えば、キシレン−ジイル基、ジエチルフェニレン基、ジプロピルフェニレン基、テトラメチルキシリレン基等が挙げられる。
【0296】
中でも、R
13及びR
14としては、アルキレンビス(シクロヘキシレン)基、基(III−2)、ジフェニルアルカン−ジイル基、トルエン−ジイル基、テトラメチルキシリレン基又は下記一般式(VI)で表される基(以下、「基(VI)」と称する場合がある)が好ましく、下記式(III−1)で表される基(以下、「基(III−1)」と称する場合がある)、基(III−2)、下記式(III−3)で表される基(以下、「基(III−3)」と称する場合がある)、下記式(III−4)で表される基(以下、「基(III−4)」と称する場合がある)、下記式(III−5)で表される基(以下、「基(III−5)」と称する場合がある)、下記式(III−6)で表される基(以下、「基(III−6)」と称する場合がある)又は基(VI)がより好ましく、基(VI)がさらに好ましい。
【0298】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(VI)中、R
61は、炭素数1以上18以下のアルキレン基又は炭素数6以上18以下のアリーレン基である。)
【0299】
(R
61)
R
61における炭素数1以上18以下のアルキレン基としては、上記「R
11及びR
12」における炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基として例示されたもののうち、炭素数1以上18以下のものが挙げられる。
R
61における炭素数6以上18以下のアリーレン基としては、上記「R
11及びR
12」における炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基として例示されたもののうち、炭素数1以上18以下のものが挙げられる。
中でも、R
61としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、シクロヘキシレン基又はフェニレン基が挙げられる。
【0300】
好ましい基(VI)としては、例えば、下記一般式(VI−1)で表される基(以下、「基(VI−1)」と称する場合がある)、下記式(VI−2)で表される基(以下、「基(VI−2)」と称する場合がある)、下記式(VI−3)で表される基(以下、「基(VI−3)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0302】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(VI−1)中、n61は3以上10以下の整数である。)
【0303】
好ましい基(VI−1)としては、例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、中でも、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基が好ましい。
【0304】
R
13及びR
14が、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である場合、R
11及びR
12の由来となるポリイソシアネートは、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ビウレット基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する。中でも、ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を有することが好ましい。
【0305】
また、好ましい化合物(2)としては、例えば、下記一般式(2β)で表される化合物(以下、「化合物(2β)」と称する場合がある)等が挙げられる。化合物(2β)は、カルボジイミド基を少なくとも1つ有する化合物である。
【0307】
(一般式(2β)中、n13は1以上100以下の整数である。X
15及びX
16はそれぞれ独立に、下記一般式(VIII)で表される基(以下、「基(VIII)」と称する場合がある)である。R
15及びR
16はそれぞれ独立に、ジイソシアネート又はジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。)
【0309】
(一般式(VIII)中、Y
81はカルボジイミド基、尿素基又はウレタン基である。R
81はカルボニル基又はエステル結合を含んでもよい炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。アスタリスクは結合部位を表す。)
【0310】
化合物(2β)は、上記基(VIII)を末端に有することで、特に、疎水性溶媒を含む樹脂組成物に用いたときの貯蔵安定性に優れる。
【0311】
化合物(2β)の構造について下記に詳細を説明する。
【0312】
[n13]
n13は、カルボジイミド基の繰り返し数を表し、1以上100以下の整数である。
【0313】
[R
15及びR
16]
R
15及びR
16はそれぞれ独立に、ジイソシアネート又はジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。R
15及びR
16は互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造しやすいことから、同一であることが好ましい。
R
15及びR
16が、ジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である場合、R
15及びR
16は、2価の炭化水素基である。
【0314】
2価の炭化水素基としては、炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、例えば、直鎖炭化水素基、無置換の脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基)、アルキル置換脂環式炭化水素基、ジアルキル置換脂環式炭化水素基、トリアルキル置換脂環式炭化水素基、直鎖炭化水素基とトリアルキル置換脂環式炭化水素基とが結合してなる基、無置換の芳香族炭化水素基、モノアルキル置換アリーレン基、ジアルキル置換アリーレン基等が挙げられる。
【0315】
直鎖炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
【0316】
無置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、アルキレンビス(シクロヘキシレン)基等が挙げられる。アルキレンビス(シクロヘキシレン)基としては、例えば、メチレンビス(シクロヘキシレン)基、エチレンビス(シクロヘキシレン)基等が挙げられる。
【0317】
アルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、メチルシクロペンチレン基、エチルシクロペンチレン基、メチルシクロヘキシレン基(各異性体)、エチルシクロヘキシレン基(各異性体)、プロピルシクロヘキシレン基(各異性体)、ブチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ペンチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ヘキシルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
【0318】
ジアルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、ジメチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ジエチルシクロヘキシレン基(各異性体)、ジブチルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
【0319】
トリアルキル置換脂環式炭化水素基としては、例えば、1,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基、1,5,5−トリエチルシクロヘキシレン基、1,5,5−トリプロピルシクロヘキシレン基(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキシレン基(各異性体)等が挙げられる。
【0320】
直鎖炭化水素基とトリアルキル置換脂環式炭化水素基とが結合してなる基としては、例えば、下記式(III−2)で表される基(以下、「基(III−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0322】
無置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニルアルカン−ジイル基等が挙げられる。
モノアルキル置換アリーレン基としては、例えば、トルエン−ジイル基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基等が挙げられる。
ジアルキル置換アリーレン基としては、例えば、キシレン−ジイル基、ジエチルフェニレン基、ジプロピルフェニレン基、テトラメチルキシリレン基等が挙げられる。
【0323】
中でも、R
15及びR
16としては、アルキレンビス(シクロヘキシレン)基、基(III−2)、ジフェニルアルカン−ジイル基、トルエン−ジイル基、テトラメチルキシリレン基又は下記一般式(VI)で表される基(以下、「基(VI)」と称する場合がある)が好ましく、下記式(III−1)で表される基(以下、「基(III−1)」と称する場合がある)、基(III−2)、下記式(III−3)で表される基(以下、「基(III−3)」と称する場合がある)、下記式(III−4)で表される基(以下、「基(III−4)」と称する場合がある)、下記式(III−5)で表される基(以下、「基(III−5)」と称する場合がある)、下記式(III−6)で表される基(以下、「基(III−6)」と称する場合がある)又は基(VI)がより好ましく、基(VI)がさらに好ましい。
【0325】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(VI)中、R
61は、炭素数1以上18以下のアルキレン基又は炭素数6以上18以下のアリーレン基である。)
【0326】
(R
61)
R
61における炭素数1以上18以下のアルキレン基としては、上記「R
11及びR
12」における炭素数1以上22以下の脂肪族炭化水素基として例示されたもののうち、炭素数1以上18以下のものが挙げられる。
R
61における炭素数6以上18以下のアリーレン基としては、上記「R
11及びR
12」における炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基として例示されたもののうち、炭素数1以上18以下のものが挙げられる。
中でも、R
61としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、シクロヘキシレン基又はフェニレン基が挙げられる。
【0327】
好ましい基(VI)としては、例えば、下記一般式(VI−1)で表される基(以下、「基(VI−1)」と称する場合がある)、下記式(VI−2)で表される基(以下、「基(VI−2)」と称する場合がある)、下記式(VI−3)で表される基(以下、「基(VI−3)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0329】
(式中、アスタリスクは結合部位を表す。一般式(VI−1)中、n61は3以上10以下の整数である。)
【0330】
好ましい基(VI−1)としては、例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、中でも、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基が好ましい。
【0331】
R
15及びR
16が、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である場合、R
11及びR
12の由来となるポリイソシアネートは、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ビウレット基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する。中でも、ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を有することが好ましい。
【0332】
[X
15及びX
16]
X
15及びX
16はそれぞれ独立に、基(VIII)である。X
15及びX
16は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造しやすいことから、同一であることが好ましい。
化合物(2β)は、疎水性であるカルボジイミド基を有する主骨格、両末端に疎水性である基(VIII)を有する構造であるため、安定的に疎水性溶媒に分散させることができる。
【0333】
(Y
81)
Y
81はカルボジイミド基(−N=C=N−)、尿素基(−NHC(=O)NH−)又はウレタン基(−NHC(=O)O−)である。
【0334】
(R
81)
R
81における1価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0335】
1価の脂肪族炭化水素基(アルキル基)としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。鎖状脂肪族炭化水素基(鎖状アルキル基)としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0336】
脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0337】
置換基を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0338】
1価の芳香族炭化水基(アリール基)としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0339】
芳香族炭化水素基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0340】
置換基を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0341】
R
81におけるカルボニル基又はエステル結合を含んでもよい炭化水素基としては、例えば、下記一般式(VIIIa)で表される基(以下、「基(VIIIa)」と称する場合がある)、下記一般式(VIIIb)で表される基(以下、「基(VIIIb)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0343】
(一般式(VIIIa)及び一般式(VIIIb)中、R
82及びR
84はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1以上10以下の2価の炭化水素基である。R
83及びR
85はそれぞれ独立に、炭素数1以上11以下の1価の炭化水素基である。R
82の炭素数x1及びR
83の炭素数y1について、0<y1、1≦x1+y1≦11の関係を満たす。R
84の炭素数x2及びR
85の炭素数y2について、0<y2、1≦x2+y2≦11の関係を満たす。アスタリスクは結合部位を表す。)
【0344】
R
82及びR
84における2価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0345】
2価の脂肪族炭化水素基(アルキレン基)としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。鎖状脂肪族炭化水素基(鎖状アルキレン基)としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、1−メチルメタン−1,1−ジイル基、1,2−ジメチルエチレン基、1−メチルエタン−1,1−ジイル基等が挙げられる。環状アルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。
【0346】
2価の芳香族炭化水基(アリーレン基)としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0347】
中でも、R
82及びR
84における2価の炭化水素基としては、アルキレン基が好ましく、鎖状アルキレン基がより好ましく、炭素数1以上3以下の鎖状アルキレン基がさらに好ましい。
【0348】
R
83及びR
85における1価の炭化水素基としては、上記R
81において例示されたもののうち、炭素数1以上11以下の1価の炭化水素基が挙げられる。
中でも、R
83及びR
85としては、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上6以下の鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖状アルキル基がさらに好ましい。
【0349】
中でも、R
81としては、カルボニル基又はエステル結合を含んでもよい炭素数1以上10以下の1価の炭化水素基が好ましく、エステル結合を含んでもよい炭素数1以上9以下の1価の炭化水素基がより好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1以上6以下の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0350】
基(VIII)は、下記一般式(VIII−1)で表される基(以下、「基(VIII−1)」と称する場合がある)、下記一般式(VIII−2)で表される基(以下、「基(VIII−2)」と称する場合がある)、又は、下記一般式(VIII−3)で表される基(以下、「基(VIII−3)」と称する場合がある)である。
【0352】
(一般式(VIII−1)、一般式(VIII−2)及び一般式(VIII−3)中、R
811、R
821及びR
831は、それぞれ独立に上記R
81と同じである。)
【0353】
好ましい基(VIII−1)としては、例えば、下記式(VIII−1−1)で表される基(以下、「基(VIII−1−1)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−2)で表される基(以下、「基(VIII−1−2)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−3)で表される基(以下、「基(VIII−1−3)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−4)で表される基(以下、「基(VIII−1−4)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−5)で表される基(以下、「基(VIII−1−5)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−6)で表される基(以下、「基(VIII−1−6)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−7)で表される基(以下、「基(VIII−1−7)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−8)で表される基(以下、「基(VIII−1−8)」と称する場合がある)、下記式(VIII−1−9)で表される基(以下、「基(VIII−1−9)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0355】
(上記式中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0356】
好ましい基(VIII−2)としては、例えば、下記式(VIII−2−1)で表される基(以下、「基(VIII−2−1)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−2)で表される基(以下、「基(VIII−2−2)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−3)で表される基(以下、「基(VIII−2−3)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−4)で表される基(以下、「基(VIII−2−4)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−5)で表される基(以下、「基(VIII−2−5)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−6)で表される基(以下、「基(VIII−2−6)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−7)で表される基(以下、「基(VIII−2−7)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−8)で表される基(以下、「基(VIII−2−8)」と称する場合がある)、下記式(VIII−2−9)で表される基(以下、「基(VIII−2−9)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0358】
(上記式中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0359】
好ましい基(VIII−3)としては、例えば、下記式(VIII−3−1)で表される基(以下、「基(VIII−3−1)」と称する場合がある)、下記式(VIII−3−2)で表される基(以下、「基(VIII−3−2)」と称する場合がある)、下記式(VIII−3−3)で表される基(以下、「基(VIII−3−3)」と称する場合がある)、下記式(VIII−3−4)で表される基(以下、「基(VIII−3−4)」と称する場合がある)、下記式(VIII−3−5)で表される基(以下、「基(VIII−3−5)」と称する場合がある)、下記式(VIII−3−6)で表される基(以下、「基(VIII−3−6)」と称する場合がある)、下記式(VIII−3−7)で表される基(以下、「基(VIII−3−7)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0361】
(上記式中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0362】
≪カルボジイミド化合物の製造方法≫
本実施形態のカルボジイミド化合物は、例えば、以下の方法で製造することができる。
例えば、上記化合物(2α)は、ジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせを触媒存在下で脱炭酸縮合反応させて、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(以下、「カルボジイミド化合物A」と称する場合がある)を得る工程(以下、「カルボジイミド化合物A製造工程」と称する場合がある)と、得られたカルボジイミド化合物Aと下記一般式(IV)で表される化合物(以下、「化合物(IV)」と称する場合がある)又は下記一般式(IV’)で表される化合物(以下、「化合物(IV’)」と称する場合がある)とを反応させて、化合物(2α)を得る工程(以下、「化合物(2α)製造工程1」と称する場合がある)とを有する第1の製造方法により、製造することができる。
【0364】
(一般式(IV)中、n41及びn42は、上記n21及びn22と同じである。R
41は上記R
21と同じである。
一般式(IV’)中、n43及びn44は、上記n21及びn22と同じである。R
42は上記R
21と同じである。)
【0365】
又は、例えば、ジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせと、化合物(IV)又は化合物(IV’)とを反応させて、親水性イソシアネート化合物を得る工程(以下、「親水性イソシアネート化合物製造工程」と称する場合がある)と、得られた親水性イソシアネート化合物を触媒存在下で脱炭酸縮合反応させて、化合物(2α)を得る工程(以下、「化合物(2α)製造工程2」と称する場合がある)と、を有する第2の製造方法により、製造することができる。
【0366】
第1の製造方法では、カルボジイミド基の形成反応を行った後に、親水性基の導入反応を行い、化合物(2α)を得ている。一方、第2の製造方法では、親水性基の導入反応を行った後、カルボジイミド基の形成反応を行い、化合物(2α)を得ている。すなわち、反応の順番が異なっているが、各反応条件及び用いられる原料は共通する。
【0367】
<第1の製造方法>
[カルボジイミド化合物A製造工程]
カルボジイミド化合物A製造工程では、ジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせを触媒存在下で脱炭酸縮合反応させて、カルボジイミド化合物Aを得る。カルボジイミド化合物Aを得る脱炭酸縮合反応は、公知の反応である。
【0368】
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
【0369】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、スルホキシド、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0370】
触媒としては、例えば、ホスホレンオキサイド等が挙げられる。ホスホレンオキサイドとしては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド等が挙げられる。
【0371】
カルボジイミド化合物A製造工程において、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、カルボジイミド化合物Aを取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、カルボジイミド化合物Aを取り出せばよい。また、取り出したカルボジイミド化合物Aは、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
【0372】
カルボジイミド化合物A製造工程においては、反応終了後、カルボジイミド化合物Aを取り出さずに、次工程で用いてもよいが、目的物である化合物(2α)の収率が向上する点から、カルボジイミド化合物Aを上述の方法で取り出すことが好ましい。
【0373】
(ジイソシアネート)
カルボジイミド化合物A製造工程で用いられるジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、IPDI、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、ジメチルシクロへキサンジイソシアネート(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(以下、「TDIs」と略記する場合がある)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する場合がある)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(以下、「NDI」と略記する場合がある)、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニレンジイソシアネート(以下、「TODI」と略記する場合がある)、粗製TDIs、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する場合がある)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、「TMXDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
中でも、ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、IPDI、水添MDI、水添XDI、MDI、XDI又はTMXDIが好ましい。
【0374】
(ポリイソシアネート)
カルボジイミド化合物A製造工程で用いられるポリイソシアネートとしては、上記「R
13及びR
14」で例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが好ましい。
カルボジイミド化合物A製造工程において、ポリイソシアネートを用いる場合、ジイソシアネートと組み合わせて用いることが好ましい。このとき、ジイソシアネートに対するポリイソシアネートの使用量(ポリイソシアネート/ジイソシアネート)は、質量比で、例えば、20/80以上1/99以下とすることができ、15/85以上5/95以下とすることができる。
【0375】
[化合物(2α)製造工程1]
化合物(2α)製造工程1では、得られたカルボジイミド化合物Aと化合物(IV)又は化合物(IV’)とを反応させて、化合物(2α)を得る。
具体的には、カルボジイミド化合物Aの末端のイソシアネート基と、化合物(IV)又は化合物(IV’)の末端の水酸基とが反応し、化合物(IV)又は化合物(IV’)の末端の水酸基の水素原子を除く残基が、カルボジイミド化合物Aの末端に導入されることで、化合物(2α)が生成される。
【0376】
反応温度は、例えば、80℃以上200℃以下とすることができ、100℃以上150℃以下とすることができる。
【0377】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「カルボジイミド化合物A製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0378】
(化合物(IV)及び化合物(IV’))
化合物(IV)は、下記一般式(IV)で表される化合物であり、化合物(IV’)は、下記一般式(IV’)で表される化合物であり、それぞれポリオキシエチレン−オキシプロピレン(ランダム及びブロックのうち少なくともいずれかの重合様式の)グリコールモノアルキルエーテルである。
【0380】
(一般式(IV)中、n41及びn42は、上記n21及びn22と同じである。R
41は上記R
21と同じである。
一般式(IV’)中、n43及びn44は、上記n21及びn22と同じである。R
42は上記R
21と同じである。)
【0381】
好ましい化合物(IV)としては、例えば、下記一般式(IV−1)で表される化合物(以下、「化合物(IV−1)」と称する場合がある)、下記一般式(IV−2)で表される化合物(以下、「化合物(IV−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0383】
(一般式(IV−1)及び一般式(IV−2)中、n411、n412、n421及びn422は、上記n21及びn22と同じである。)
【0384】
また、好ましい化合物(IV’)としては、例えば、下記一般式(IV’−1)で表される化合物(以下、「化合物(IV’−1)」と称する場合がある)、下記一般式(IV−2)で表される化合物(以下、「化合物(IV’−2)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0386】
(一般式(IV’−1)及び一般式(IV’−2)中、n413、n414、n423及びn424は、上記n21及びn22と同じである。)
【0387】
化合物(IV)及び化合物(IV’)の分子量の下限値は、50が好ましく、100がより好ましく、150がさらに好ましく、200が特に好ましい。一方で、分子量の上限値は、3000が好ましく、2500がより好ましく、2000がさらに好ましく、1500が特に好ましい。
すなわち、化合物(IV)及び化合物(IV’)の分子量は、50以上3000以下が好ましく、100以上2500以下がより好ましく、150以上2000以下がさらに好ましく、200以上1500以下が特に好ましい。
化合物(IV)及び化合物(IV’)の分子量が上記範囲であることで、化合物(2α)の水分散性がより良好となる。
【0388】
化合物(2α)製造工程1において、反応終了後は、カルボジイミド化合物A製造工程の場合と同様の方法で、化合物(2α)を取り出すことができ、取り出した化合物(2α)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0389】
化合物(2α)、化合物(IV)、化合物(IV’)、カルボジイミド化合物A、ジイソシアネート、ポリイソシアネート等の各化合物は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0390】
<第2の製造方法>
[親水性イソシアネート化合物製造工程]
親水性イソシアネート化合物製造工程では、ジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせと、化合物(IV)又は化合物(IV’)とを反応させて、親水性イソシアネート化合物を得る。
具体的には、ジイソシアネート又はポリイソシアネートの末端のイソシアネート基と、化合物(IV)又は化合物(IV’)の末端の水酸基とが反応し、化合物(IV)又は化合物(IV’)の末端の水酸基の水素原子を除く残基が、ジイソシアネート又はポリイソシアネートの末端に導入されることで、親水性イソシアネート化合物が生成される。
【0391】
反応温度は、例えば、80℃以上200℃以下とすることができ、100℃以上150℃以下とすることができる。
【0392】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「カルボジイミド化合物A製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0393】
親水性イソシアネート化合物製造工程においては、反応終了後、親水性イソシアネート化合物を取り出さずに、次工程で用いてもよいが、目的物である化合物(2α)の収率が向上する点から、親水性イソシアネート化合物を上述の方法で取り出すことが好ましい。
【0394】
[化合物(2α)製造工程2]
化合物(2α)製造工程2では、得られた親水性イソシアネート化合物を触媒存在下で脱炭酸縮合反応させて、化合物(2α)を得る。このとき、親水性基が導入されていないジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせをさらに添加してもよい。添加されるジイソシアネート又はポリイソシアネートは、上記「親水性イソシアネート化合物製造工程」で用いられたものと同一のものであってもよく、異なっていてもよい。
触媒としては上記「カルボジイミド化合物A製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「カルボジイミド化合物A製造工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0395】
化合物(2α)製造工程2において、反応終了後は、カルボジイミド化合物A製造工程の場合と同様の方法で、化合物(2α)を取り出すことができ、取り出した化合物(2α)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0396】
化合物(2α)、化合物(IV)、化合物(IV’)、親水性イソシアネート化合物、ジイソシアネート、ポリイソシアネート等の各化合物は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0397】
また、例えば、上記化合物(2β)は、ジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせと、疎水性基含有化合物と、を触媒存在下で反応させて、末端に疎水性基を有するカルボジイミド化合物、すなわち、化合物(2β)を得る工程(以下、「化合物(2β)製造工程」と称する場合がある)を有する製造方法により、製造することができる。
【0398】
<化合物(2β)製造工程>
化合物(2β)製造工程において、ジイソシアネート、ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート又はそれらの組み合わせを触媒存在下で脱炭酸縮合反応させてカルボジイミド基を形成させ、また、同時に、ジイソシアネート又はジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートの末端のイソシアネート基と疎水性基含有化合物と反応させて、末端に疎水性基を導入し、化合物(2β)を得る。化合物(2β)を得る脱炭酸縮合反応及び末端に疎水性基を導入する反応は公知の反応である。
【0399】
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
【0400】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、スルホキシド、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0401】
触媒としては、例えば、ホスホレンオキサイド等が挙げられる。ホスホレンオキサイドとしては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド等が挙げられる。
【0402】
化合物(2β)製造工程において、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(2β)を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(2β)を取り出せばよい。また、取り出した化合物(2β)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
【0403】
(ジイソシアネート)
化合物(2β)製造工程で用いられるジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する場合がある)、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、ジメチルシクロへキサンジイソシアネート(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(以下、「TDIs」と略記する場合がある)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する場合がある)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(以下、「NDI」と略記する場合がある)、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニレンジイソシアネート(以下、「TODI」と略記する場合がある)、粗製TDIs、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する場合がある)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、「TMXDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
中でも、ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、IPDI、水添MDI、水添XDI、MDI、XDI又はTMXDIが好ましい。
【0404】
(ポリイソシアネート)
化合物(2β)製造工程で用いられるポリイソシアネートとしては、上記「R
15及びR
16」で例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが好ましい。
化合物(I)製造工程において、ポリイソシアネートを用いる場合、ジイソシアネートと組み合わせて用いることが好ましい。このとき、ジイソシアネートに対するポリイソシアネートの使用量(ポリイソシアネート/ジイソシアネート)は、質量比で、例えば、20/80以上1/99以下とすることができ、15/85以上5/95以下とすることができる。
【0405】
(疎水性基含有化合物)
疎水性基含有化合物とは疎水性基を有する化合物である。疎水性基としては、例えば、炭化水素基等が挙げられる。疎水性基含有化合物は疎水性基に加えて、ジイソシアネート又はジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートの末端イソシアネート基と反応し得る官能基を1つ有することが好ましい。当該官能基としては、例えば、イソシアネート基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。疎水性基含有化合物として具体的には、例えば、単官能イソシアネート、第1級アミン化合物、1価のアルコール化合物等が挙げられる。単官能イソシアネートとして具体的には、例えば、下記一般式(IX−1)で表される化合物等が挙げられる。第1級アミン化合物として具体的には、例えば、下記一般式(IX−2)で表される化合物等が挙げられる。1価のアルコール化合物として具体的には、例えば、下記一般式(IX−3)で表される化合物等が挙げられる。
【0407】
(一般式(IX−1)中、R
911はR
811と同じである。一般式(IX−2)中、R
921はR
821と同じである。一般式(IX−3)中、R
931はR
831と同じである。)
【0408】
好ましい化合物(IX−1)としては、例えば、tert−ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1−ヘキシルイソシアネート、α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、(S)−1−フェニルエチルイソシアナート、イソシアン酸ベンジル、フェニルイソシアネート、(S)−(−)−2−イソシアナトプロピオン酸メチル、(S)−(−)−2−イソシアナトアセチル酸メチル等が挙げられる。
【0409】
好ましい化合物(IX−2)としては、例えば、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N−ヘキシルアミン、α,α−ジメチルベンジルアミン、(S)−1−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、フェニルアミン、アラニンメチル、グリシンメチル等が挙げられる。
【0410】
好ましい化合物(IX−3)としては、例えば、tert−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、1−ヘキサノール、2−フェニル−2−プロパノール、1−フェニルエタノール、ベンジルアルコール、フェノール等が挙げられる。
【0411】
化合物(2β)、化合物(IX−1)、化合物(IX−2)、化合物(IX−3)、ジイソシアネート、ポリイソシアネート等の各化合物は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0412】
≪使用用途≫
本実施形態のウレトンイミン基含有化合物又はカルボジイミド化合物は、末端に親水性基を有するため、水分散性が良好であり、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性に優れる。そのため、本実施形態の化合物は、例えば、電着塗料等の塗料組成物の硬化剤、水分散組成物等に好適に用いられる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記ウレトンイミン基含有化合物又はカルボジイミド化合物を含む、硬化剤組成物を提供する。
【0413】
(その他の架橋剤)
硬化剤組成物は、上記ウレトンイミン基含有化合物又はカルボジイミド化合物に加えて、その他の架橋剤を含んでもよい。その他の架橋剤としては、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、ヒドラジン化合物、セミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0414】
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を側鎖に少なくとも2個有する重合体状の化合物、1分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個有する単量体の化合物等が挙げられる。オキサゾリン化合物の市販品としては、例えば、エポクロスWS−500(日本触媒製、標品名)等が挙げられる。
【0415】
エポキシ化合物としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する樹脂であればよい。エポキシ基含有化合物として具体的には、例えば、ビスフェノールにエポクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ基含有化合物、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ基含有化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基含有化合物は、必要に応じて水分散化した状態のものであってもよい。
【0416】
メラミン化合物としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分又は完全メチロール化メラミン樹脂等が挙げられる。
前記アルデヒドとしは、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
また、前記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものであってもよい。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
メラミン化合物の市販品としては、例えば、サイメル303、サイメル323、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル380、サイメル385、サイメル212、サイメル251、サイメル254、マイコート776(いずれもオルネクス社製、商品名)等が挙げられる。
【0417】
イソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族若しくは芳香族に属する炭化水素基と、イソシアネート基とを有するジイソシアネート、又はポリイソシアネートである。前記ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(1,3−H6−XDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチル−シクロヘキシルイソアネート(IMCI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチル)−ノルボルナン(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2)ベンゼン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等が挙げられる。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIが好ましい。
前記ポリイソシアネートとは、触媒を用いて、又は加熱をすることにより、前記ジイソシアネートを重合したものであり、分子中にイソシアヌレート構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、イミノジオキサジアジンジオン構造、ウレタン構造、ビウレット構造等が含まれる。中でも、耐候性の観点から、ポリイソシアネートは、イソシアヌレート構造を有するものが好ましい。
また、他のイソシアネート化合物として、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(NTI)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート(HTI)、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート(GTI)、リジントリイソシアネート(LTI)等のトリイソシアネートが挙げられる。
これらイソシアネート化合物は2種以上を併用しても構わない。
さらに、前記イソシアネート化合物を公知の活性メチレン系ブロック剤、公知のオキシム系ブロック剤、公知のアミン系ブロック剤及び公知のピラゾール系ブロック剤からなる群より選ばれる1種以上のブロック剤を用いてブロック化されたブロックイソシアネート化合物を用いることができる。
【0418】
中でも、その他の架橋剤としては、工業的入手の容易さ、低温硬化性、塗料の貯蔵性の観点で、メラミン化合物、又は(ブロック)イソシアネート化合物が好ましい。
【0419】
≪樹脂組成物≫
上記硬化剤組成物は、主剤成分としてカルボキシ基を有する化合物と併用することで、樹脂組成物とすることができる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記硬化剤組成物と、カルボキシ基を有する化合物と、を含む樹脂組成物を提供する。
本実施形態の樹脂組成物は、上記化合物を硬化剤成分として含むため、貯蔵安定性が良好である。
【0420】
前記カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、カルボキシ基を有するポリエステル、カルボキシ基を有するポリアミド、カルボキシ基を有するポリウレタン、カルボキシ基を有するアクリル、カルボキシ基を有するポリオレフィン等が挙げられる。カルボキシ基を有するポリオレフィンを構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他の繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン等が挙げられる。
これらカルボキシ基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0421】
また、本実施形態の樹脂組成物において、カルボキシ基を有する化合物は、その他成分と混合した主剤組成物の形態で用いてもよい。
【0422】
本実施形態の樹脂組成物において、前記カルボキシ基を有する化合物のカルボキシ基に対する、上記化合物のカルボジイミド基のモル当量比(カルボジイミド基/カルボキシ基)の下限値は、例えば0.1であり、0.2が好ましく、0.5がより好ましい。一方、カルボジイミド基/カルボキシ基の上限値は、例えば5.0であり、2.0が好ましく、1.5がより好ましい。
すなわち、カルボジイミド基/カルボキシ基は、0.1以上5.0以下であり、0.2以上2.0以下が好ましく、0.5以上1.5以下がより好ましい。
カルボジイミド基/カルボキシ基が上記範囲内であることで、得られる樹脂硬化物の耐水性がより優れ、且つ、架橋密度がより高くなる傾向にある。
【0423】
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、エポキシ樹脂、触媒、塗工改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機又は無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤等の添加剤を更に含んでもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的及び用途により適宜決定される。
【0424】
<使用用途>
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、コーティング材料、接着材料(接着剤)、粘着材料(粘着材)、インキ、シーラント、成形材料、フォーム、光学材料、さらには、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミド等の樹脂を改質する樹脂改質剤等の各種分野において、好適に用いられる。
【0425】
コーティング材料としては、例えば、プラスチック用塗料、自動車外装用塗料、自動車内装用塗料、電気及び電子材料用塗料、光学材料用塗料、建材用塗料、ガラスコート塗料、木工塗料、フィルムコーティング塗料、インキ用樹脂、人工及び合成皮革用塗料(コート剤)、缶用塗料(コート剤)、紙コート塗料等が挙げられる。光学材料としては、例えば、レンズ等が挙げられる。
【0426】
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記樹脂組成物を含む、塗料組成物を提供する。
【0427】
プラスチック塗料としては、例えば、プラスチック材料が用いられる成形品用塗料、具体的には、筐体用塗料、自動車部品用塗料、家庭用電化製品用塗料、ロボット材料用塗料、家具用塗料、文具用塗料、柔軟な素材からなる成形品用の塗料、アイウエア材料用塗料、電子機器の光学レンズ用塗料(表面コート剤)等が挙げられる。プラスチック材料としては、例えば、ポリオレフィン類、ABS、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエステル類、及びこれらの複合体等の各種高分子材料が挙げられる。筐体としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット等が挙げられる。自動車部品としては、例えば、自動車内装材、ヘッドランプ等が挙げられる。柔軟な素材としては、例えば、ゴム、エラストマー、ゲル等が挙げられる。アイウエア材料としては、例えば、レンズ等が挙げられる。
【0428】
また、自動車外装用塗料としては、例えば、新車向け塗料、自動車補修用塗料、外装部品用塗料等が挙げられる。新車向け塗料及び自動車補修用塗料としては、例えば、中塗り塗料、ベース塗料、トップ塗料等が挙げられる。外装部品としては、例えば、アルミニウムホイール、バンパー等が挙げられる。上記樹脂組成物を自動車外装用塗料として使用する場合、主剤としては、カルボキシ基を有する水系樹脂又はカルボキシ基を有する油系樹脂を使用することができるが、カルボキシ基を有する水系樹脂を用いることが好ましい。
好ましいカルボキシ基を有する水系樹脂としては、例えば、カルボキシ基を有する親水性アクリル樹脂、カルボキシ基を有する親水性ポリウレタン樹脂、カルボキシ基を有する親水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、カルボキシ基を有する親水性アクリル樹脂又はカルボキシ基を有する親水性ポリエステル樹脂が好ましい。これらカルボキシ基を有する水系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0429】
フィルムコーティング塗料としては、例えば、光学用部材用塗料、光学用コーティング材料、繊維用塗料、電子電機材料用塗料、食品パッケージ用塗料、医療フィルム用塗料、化粧品パッケージ用塗料、加飾フィルム用塗料、離形フィルム用塗料等が挙げられる。光学用部材としては、例えば、光学フィルム、光学シート等が挙げられる。
【0430】
インキ用樹脂としては、版インキ、スクリーンインキ、フレキソインキ、グラビアインキ、ジェットインキ等の各種インキのビヒクルが挙げられる。
【0431】
接着剤としては、例えば、包材用接着剤、電気機器用接着剤、液晶ディスプレイ(LCD)用接着剤、有機ELディスプレイ用接着剤、有機EL照明用接着剤、表示装置用接着剤、LED用接着剤、自動車用内外装向け接着剤、家電用接着剤、太陽電池バックシート用接着剤、各種電池用接着剤等が挙げられる。表示装置としては、例えば、電子ペーパー、プラズマディスプレイ等が挙げられる。各種電池としては、例えば、アルカリマンガン乾電池、リチウムイオン電池等が挙げられる。
【0432】
なお、樹脂組成物の用途は、上記に限定されず、例えば、固体として、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸に添加してもよい。或いは、例えば、液状として、ポリエステルポリオール等の耐加水分解防止剤として用いてもよい。或いは、例えば、マレイン酸変性ポリオレフィン等の酸変性ポリオレフィンと複合化させてもよく、酸変性ポリオレフィンを水分散したポリオレフィン系エマルションに添加してもよい。或いは、酸部位を含有するアクリルエマルションと複合化させてもよく、前記アクリルエマルションの硬化剤と用いてもよい。或いは、カーボンファイバーやガラス繊維等の各種繊維の収束材として用いてもよく、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics;CFRP)等の繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics;FRP)の強化材やサイジング剤、硬化剤等として用いてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、これらの用途に好適である。
【0433】
≪樹脂硬化物≫
上記樹脂組成物(又は、上記塗料組成物)を硬化させることで、樹脂硬化物を得ることができる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記樹脂組成物(又は、上記塗料組成物)を硬化させてなる樹脂硬化物を提供する。本実施形態の樹脂硬化物は、耐候性及び耐水性が良好である。
【0434】
樹脂硬化物を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記樹脂組成物が一液タイプの場合は樹脂組成物をそのまま、被塗物又は被着物に塗布する方法が挙げられる。また、樹脂組成物が二液タイプの場合は上記硬化剤組成物及びカルボキシ基を有する化合物と、必要に応じて添加剤等とを混合して、得られた樹脂組成物を、被塗物又は被着物に塗布する方法が挙げられる。次いで、被塗物又は被着物に塗布された樹脂組成物を加熱硬化させることにより、樹脂硬化物が得られる。
【0435】
樹脂組成物の硬化温度の上限値は、例えば140℃であり、100℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、硬化温度の下限値は、例えば20℃であり、30℃が好ましく、40℃がより好ましい。
すなわち、樹脂組成物の硬化温度は、20℃以上140℃以下であり、30℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。
【0436】
樹脂組成物の塗装方法としては、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等が挙げられる。
【実施例】
【0437】
以下、具体的な実施例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例1−1、1−2、及び5−1〜5−71は参考例である。
【0438】
≪参考例1−1、実施例1−1〜1−4≫
[参考例1−1]
内容積1LのSUS316製撹拌槽に、キシレン300g、イソシアネート化合物500gを投入し140℃に加熱した。ここに、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド1gを投入し5時間撹拌した。キシレン、余剰のヘキサメチレンジイソシアネートを留去し、ポリカルボジイミドを得た。
【0439】
[実施例1−1]
イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用して、参考例1−1と同様の方法でカルボジイミド化合物を製造した。次いで、得られたカルボジイミド化合物とフェニルイソシアネートとを、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対してフェニルイソシアネートのイソシアネート基が化学量論比で1.05倍となるように混合し80℃で5時間加熱した。反応物を分析したところ、下記式(E−1)で表される化合物が生成していた。
【0440】
【化87】
【0441】
式(E−1)中、平均重合度E1は10であった。
【0442】
[実施例1−2]
イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネートを使用して、参考例1−1と同様の方法でカルボジイミド化合物を製造した。得られたカルボジイミド化合物と、シクロヘキシルイソシアネートとを、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対してシクロヘキシルイソシアネートのイソシアネート基が化学量論比で1.05倍となるように混合し80℃で5時間加熱した。反応物を分析したところ、下記式(E−2)で表される化合物が生成していた。
【0443】
【化88】
【0444】
式(E−2)中、平均重合度E2は3であった。
【0445】
[実施例1−3]
イソシアネート化合物として、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用して、参考例1−1と同様の方法でカルボジイミド化合物を製造した。得られたカルボジイミド化合物と、2−イソシアナト−4−メチル吉草酸メチルとを、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対して2−イソシアナト−4−メチル吉草酸メチルのイソシアネート基が化学量論比で1.05倍となるように混合し80℃で5時間加熱した。反応物を分析したところ、下記式(E−3)で表される化合物が生成していた。
【0446】
【化89】
【0447】
式(E−3)中、平均重合度E3は8であった。
【0448】
[実施例1−4]
イソシアネート化合物として、水添キシリレンジイソシアネートを使用して、参考例1と同様の方法でカルボジイミド化合物を製造した。得られたカルボジイミド化合物と、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタンとを、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対して1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタンのイソシアネート基が化学量論比で3.15倍となるように混合し、さらにトルエンを加えて基質濃度が5重量%とし、80℃で5時間加熱した。反応物を分析したところ、下記一般式(E−4)で表される化合物が生成していた。
【0449】
【化90】
【0450】
一般式(E−4)中、R
eは1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタンからイソシアネート基を1つ除いた残基(下記式(E−4−1)で表される基、下記式(E−4−2)で表される基又は下記式(E−4−3)で表される基)であり、平均重合度E4は4であった。
【0451】
【化91】
【0452】
(式(E−4−1)〜(E−4−3)中、アスタリスクは結合部位を表す。)
【0453】
≪実施例2−1〜2−45及び比較例2−1≫
<評価方法>
[評価2−1]樹脂組成物の貯蔵安定性
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物の評価を行った。
具体的には、まず、実施例及び比較例で得られた化合物:1gを水:10gに分散し、アクリルポリオール(オルネクス社製SETAQUA6515):15gを加えて撹拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を40℃で10日間保持した後、内容物を目視観察した。以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0454】
(評価基準)
良好:ゲルが生じていない
不良:ゲルが生じている
【0455】
<ウレトンイミン基含有化合物の製造>
[実施例2−1]
(工程1)
カルボジイミド化合物を製造するためのジイソシアネート(以下、「ジイソシアネートA」と称する場合がある)として、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用した。内容積1LのSUS316製撹拌槽に、キシレン:300g、及び、ジイソシアネートA:500gを投入し、140℃に加熱した。ここに、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド:1gを投入し5時間撹拌した。得られた反応液を、予め180℃に加熱し内部を0.1kPa(絶対圧)に減圧した薄膜蒸留装置に供給し、キシレン、余剰のイソシアネート化合物を留去し、カルボジイミド化合物を得た。得られたカルボジイミド化合物の平均重合度は5であった。次いで、カルボジイミド化合物と反応させるイソシアネート化合物(以下、「イソシアネート化合物B」と称する場合がある)として、フェニルイソシアネートと使用して、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対してイソシアネート化合物Bのイソシアネート基が化学量論比で1.05倍となるように混合し、80℃で5時間加熱した。反応物を赤外分光計で分析したところ、ウレトンイミン基及びウレタン基の伸縮振動由来の1720cm
−1付近に吸光が確認された。
【0456】
(工程2)
上記工程1で得られた反応物に、親水性基を有する化合物(以下、「親水性基含有化合物」と称する場合がある)として、ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:300、下記式(IV−2)で表される化合物(以下、「化合物(IV−2)」と称する場合がある):700gを加え、120℃で2時間、撹拌しながら加熱した。得られた化合物は、赤外分光スペクトルにおいて、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2020cm
−1付近の吸光度xと、ウレトンイミン基およびウレタン基の伸縮振動由来の1720cm
−1付近の吸光度yについて、x/yで表される値が0.5である化合物であった。また、得られた化合物について、上記評価方法により樹脂組成物の貯蔵安定性について評価した結果、良好であった。
【0457】
【化92】
【0458】
(一般式(IV−2)中、n422に対するn421の比は、1である。)
【0459】
[実施例2−2〜2−45及び比較例2−1]
ジイソシアネートA、イソシアネート化合物B及び親水性基含有化合物の種類を以下の表1〜4に示すとおりとした以外は、実施例2−1と同様の方法を用いて、化合物を製造し、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性について評価した。結果を以下の表1〜4に示す。なお、表1〜4において、親水性基含有化合物の略称は、以下の化合物を表す。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量が300、510及び1800と異なるもの(重合度が異なるもの)を適宜用いた。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量300及び500のランダム共重合体であるものも適宜用いた。
【0460】
(親水性基含有化合物)
MPEG220:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:220)
MPEG400:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:400)
MPEG550:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550)
【0461】
【表1】
【0462】
【表2】
【0463】
【表3】
【0464】
【表4】
【0465】
表1〜4から、実施例2−1〜2−45で製造された化合物はいずれも樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であったのに対して、比較例2−1で製造された化合物は樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が不良であった。
【0466】
≪実施例3−1〜3−45及び比較例3−1≫
<評価方法>
[評価3−1]樹脂組成物の貯蔵安定性
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物の評価を行った。
具体的には、まず、実施例及び比較例で得られた化合物:1gを水:10gに分散し、アクリルポリオール(オルネクス社製SETAQUA6515):15gを加えて撹拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を40℃で10日間保持した後、内容物を目視観察した。以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0467】
(評価基準)
良好:ゲルが生じていない
不良:ゲルが生じている
【0468】
<ウレトンイミン基含有化合物の製造>
[実施例3−1]
(工程1)
内容積1LのSUS316製撹拌槽に、キシレン:300g、及び、ヘキサメチレンジイソシアネート:500gを投入し、140℃に加熱した。ここに、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド:1gを投入し5時間撹拌した。得られた反応液を、予め180℃に加熱し内部を0.1kPa(絶対圧)に減圧した薄膜蒸留装置に供給し、キシレン、余剰のイソシアネート化合物を留去し、化合物を得た。得られた化合物を赤外分光計で分析したところ、ウレトンイミン基及びカルボジイミド基に由来する吸光ピークが確認された。
【0469】
(工程2)
上記工程1で得られた化合物に、親水性基を有する化合物(以下、「親水性基含有化合物」と称する場合がある)として、ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:300、下記式(IV−2)で表される化合物(以下、「化合物(IV−2)」と称する場合がある):890gを加え、150℃で8時間、撹拌しながら加熱した。得られた化合物について
13C−NMR分析を行ったところ、ウレトンイミン基に対応するケミカルシフトにピークは観測されなかった。
【0470】
【化93】
【0471】
(一般式(IV−2)中、n422に対するn421の比は、1である。)
【0472】
(工程3)
上記工程2で得られた化合物に、カルボジイミド基と反応させるイソシアネート化合物(以下、「イソシアネート化合物B」と称する場合がある)として、フェニルイソシアネートと使用して、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対してイソシアネート化合物Bのイソシアネート基が化学量論比で1.05倍となるように混合し、80℃で5時間加熱した。得られた化合物は、赤外分光スペクトルにおいて、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2020cm
−1付近の吸光度xと、ウレトンイミン基およびウレタン基の伸縮振動由来の1720cm
−1付近の吸光度yについて、x/yで表される値は0.3であった。また、得られた化合物について、上記評価方法により樹脂組成物の貯蔵安定性について評価した結果、良好であった。
【0473】
[実施例3−2〜3−45及び比較例3−1]
ジイソシアネートA、イソシアネート化合物B及び親水性基含有化合物の種類を以下の表1〜4に示すとおりとした以外は、実施例3−1と同様の方法を用いて、化合物を製造し、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性について評価した。結果を以下の表5〜8に示す。なお、表5〜8において、親水性基含有化合物の略称は、以下の化合物を表す。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量が300、510及び1800と異なるもの(重合度が異なるもの)を適宜用いた。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量300及び500のランダム共重合体であるものも適宜用いた。
【0474】
(親水性基含有化合物)
MPEG220:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:220)
MPEG400:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:400)
MPEG550:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550)
【0475】
【表5】
【0476】
【表6】
【0477】
【表7】
【0478】
【表8】
【0479】
表5〜8から、実施例3−1〜3−45で製造された化合物はいずれも樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であったのに対して、比較例3−1で製造された化合物は樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が不良であった。
【0480】
≪実施例4−1〜4−24及び比較例4−1≫
<評価方法>
[評価4−1]樹脂組成物の貯蔵安定性
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物の評価を行った。
具体的には、まず、実施例及び比較例で得られた化合物:1gを水:10gに分散し、アクリルポリオール(オルネクス社製SETAQUA6515):15gを加えて撹拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を40℃で10日間保持した後、内容物を目視観察した。以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0481】
(評価基準)
良好:ゲルが生じていない
不良:ゲルが生じている
【0482】
<カルボジイミド化合物の製造>
[実施例4−1]
(工程1)
内容積1LのSUS316製撹拌槽に、キシレン:300g、及び、ヘキサメチレンジイソシアネート:500gを投入し、140℃に加熱した。ここに、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド:1gを投入し5時間撹拌した。得られた反応液を、予め180℃に加熱し内部を0.1kPa(絶対圧)に減圧した薄膜蒸留装置に供給し、キシレン、余剰のイソシアネート化合物を留去し、化合物を得た。得られた化合物を赤外分光計で分析したところ、ウレトンイミン基及びカルボジイミド基に由来する吸光ピークが確認された。
【0483】
(工程2)
上記工程1で得られた化合物に、親水性基を有する化合物(以下、「親水性基含有化合物」と称する場合がある)として、ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:300、下記式(IV−2)で表される化合物(以下、「化合物(IV−2)」と称する場合がある):890gを加え、150℃で8時間、撹拌しながら加熱した。得られた化合物について
13C−NMR分析を行ったところ、ウレトンイミン基に対応するケミカルシフトにピークは観測されなかった。
【0484】
【化94】
【0485】
(一般式(IV−2)中、n422に対するn421の比は、1である。)
【0486】
[実施例4−2〜4−23及び比較例4−1]
ジイソシアネート及び親水性基含有化合物の種類を以下の表9〜10に示すとおりとした以外は、実施例4−1と同様の方法を用いて、化合物を製造し、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性について評価した。結果を以下の表9〜10に示す。なお、表9〜10において、親水性基含有化合物の略称は、以下の化合物を表す。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量が300、510及び1800と異なるもの(重合度が異なるもの)を適宜用いた。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量300及び500のランダム共重合体であるものも適宜用いた。
【0487】
(親水性基含有化合物)
MPEG400:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:400)
【0488】
[実施例4−24]
内容積1LのSUS316製撹拌槽に、水添XDI(化合物(VI−2)−1):84.1gと、化合物(IV−2)(数平均分子量:300、一般式(IV−2)中、n422に対するn421の比は、1):82.5gとを投入し、120℃で1時間撹拌し、さらに、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(化合物(III−6)−1):13.1gと、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド:1.94gとを加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌して、化合物を得た。赤外分光計で反応液を分析したところ、2200cm
−1以上2300cm
−1以下のイソシアネート基の吸収が消滅していた。
また、得られた化合物について、
13C−NMR分析を行ったところ、ウレトンイミン基に対応するケミカルシフトにピークは観測されなかった。
【0489】
【表9】
【0490】
【表10】
【0491】
表9〜10から、実施例4−1〜4−24で製造された化合物はいずれも樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であったのに対して、比較例4−1で製造された化合物は樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が不良であった。
【0492】
≪実施例5−1〜5−71≫
<評価方法>
[評価5−1]樹脂組成物の貯蔵安定性
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物の評価を行った。
具体的には、まず、実施例及び比較例で得られた化合物:1gを酢酸ブチル:10gに分散し、アクリルポリオール(オルネクス社製SETALAX1152):15gを加えて撹拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を40℃で10日間保持した後、内容物を目視観察した。以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0493】
(評価基準)
良好:製造直後の粘度に対する40℃10日間保存後の粘度が1.5倍未満
不良:製造直後の粘度に対する40℃10日間保存後の粘度が1.5倍以上
【0494】
<カルボジイミド基含有化合物の製造>
[実施例5−1]
還流管を具備する内容積2LのSUS316製撹拌槽に、キシレン:600g、ヘキサメチレンジイソシアネート:500g、及び、tert−ブチルイソシアネート:118gを投入し、140℃に加熱した。ここに、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド:1gを投入し30時間撹拌した。得られた反応液を、予め180℃に加熱し内部を0.1kPa(絶対圧)に減圧した薄膜蒸留装置に供給し、キシレンを留去し、化合物を得た。得られた化合物を赤外分光計で分析したところカルボジイミド基に由来する吸光ピークが確認された。
得られた化合物について、上記評価方法により樹脂組成物の貯蔵安定性について評価した結果、良好であった。
【0495】
[実施例5−2〜5−71]
ジイソシアネート及び疎水性基含有化合物の種類を以下の表11〜18に示すとおりとした以外は、実施例5−1と同様の方法を用いて、実施例5−1と同様の方法を用いて、化合物を製造し、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性について評価した。
【0496】
【表11】
【0497】
【表12】
【0498】
【表13】
【0499】
【表14】
【0500】
【表15】
【0501】
【表16】
【0502】
【表17】
【0503】
【表18】
【0504】
表11〜18から、実施例5−1〜5−71で製造された化合物はいずれも樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であった。
【0505】
≪実施例6−1〜6−21、比較例6−1〜6−2≫
<評価方法>
[評価6−1]貯蔵安定性評価(樹脂組成物の評価1)
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物を用いた樹脂組成物のゲル化時間を測定することで貯蔵安定性の評価を行った。
具体的には、まず、実施例及び比較例で得られた化合物:2gを水:5gに分散し、ポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):20gに添加した後攪拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を40℃に加温し、内容物を5時間おきに目視観察してゲル化の有無を確認し、ゲル化が確認されるまでの時間を求め、ゲル化時間とした。次いで、得られたゲル化時間から、以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0506】
(評価基準)
良好: ゲル化時間が10時間以上
不良: ゲル化時間が10時間未満
【0507】
[評価6−2]主剤との反応性評価(樹脂組成物の評価2)
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物を用いた樹脂組成物のゲル分率増加率を測定することで主剤との反応性の評価を行った。
具体的には、まず、水:5gをポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):20gに添加した後攪拌し、均一溶液とした。この均一溶液を、ポリプロピレン板(以下、「PP板」と略記する場合がある)上に塗布し、100℃の乾燥機内で硬化させた。その後、PP板から塗膜を切り出し平織金網に入れアセトン溶液に16時間浸漬した後、平織金網ごと塗膜を取り出し、乾燥機で乾燥した。そしてアセトン溶液浸漬前後の塗膜の変化質量を測定し、塗膜の変化質量を浸漬前の塗膜の質量で割り返した値をもって参照ゲル分率とした。
次に、実施例及び比較例で得られた化合物:2gを水:5gに分散し、ポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):20gに添加した後攪拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を上記と同様にPP板上に塗布し硬化させた後、上記と同様の方法を用いてゲル分率を測定し、参照ゲル分率との差からゲル分率増加率を求めた。次いで、得られたゲル分率増加率から、以下の評価基準に従い、主剤との反応性を評価した。
【0508】
(評価基準)
良好: ゲル分率増加率が10%以上
不良: ゲル分率増加率が10%未満
【0509】
[評価6−3]塗膜の耐水性(塗膜の評価1)
以下に示す方法により実施例及び比較例で得られた化合物を用いた塗膜の耐水性の評価を行った。具体的には、まず、水:5gをポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):20gに添加した後攪拌し、均一溶液とした。この均一溶液(樹脂組成物)をPP板上に塗布し100℃の乾燥機内で硬化させた。その後、塗膜上にОリング(内径:1.78mm、線径:1.78mm)を置き、Оリング中にイオン交換水を1mL滴下した。その後、5時間室温で静置し塗膜の白化の程度を目視で確認し参照とした。
次に、実施例及び比較例で得られた化合物:2gを水:5gに分散し、ポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):20gに添加した後攪拌し、均一溶液(樹脂組成物)とした。この均一溶液(樹脂組成物)を上記と同様にPP板上に塗布し硬化させた後、上記と同様の方法を用いて塗膜の白化の程度を目視で確認し、参照と比較した。得られた目視の結果から、以下の評価基準に従い、塗膜の耐水性を評価した。
【0510】
(評価基準)
良好:白化の程度が参照未満で耐水性が高い
不良:白化の程度が参照以上で耐水性が低い
【0511】
[比較例6−1]
(工程1)
カルボジイミド化合物を製造するためのジイソシアネート(以下、「ジイソシアネートA」と称する場合がある)として、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用した。内容積1LのSUS316製攪拌槽に、キシレン:300g、及び、ジイソシアネートA:500gを投入し140℃に加熱した。ここに、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド:1gを投入し5時間攪拌した。得られた反応液から薄膜蒸留装置によって、キシレン、余剰のイソシアネート化合物を留去し、化合物を得た。得られた化合物を赤外分光計で分析したとところ、ウレトンイミン基及びカルボジイミド基に由来する吸光ピークが確認された。
【0512】
(工程2)
上記工程1で得られた化合物に、親水性基を有する化合物(以下、「親水性基含有化合物」と称する場合がある)として、ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:970、下記式(IV−2)で表される化合物(以下、「化合物(IV−2)」と称する場合がある):890gを加え、150℃で8時間、撹拌しながら加熱した。得られた化合物について
13C−NMR分析を行ったところ、ウレトンイミン基に対応するケミカルシフトにピークは観測されなかった。
【0513】
【化95】
【0514】
(一般式(IV−2)中、n422に対するn421の比は、1である。)
【0515】
(工程3)
上記工程2で得られた化合物に、カルボジイミド基と反応させるイソシアネート化合物(以下、「イソシアネート化合物B」と称する場合がある)として、フェニルイソシアネートを使用して、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基に対してイソシアネート化合物Bのイソシアネート基が化学量論比で1.05倍となるように混合し80℃で5時間加熱した。得られた化合物は、赤外分光スペクトルにおいて、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2020cm
−1付近の吸光度xと、ウレトンイミン基およびウレタン基の伸縮振動由来の1720cm
−1付近の吸光度yについて、x/yで表される値は0.3であった。
【0516】
[比較例6−2、実施例6−1〜6−20]
ジイソシアネートA、イソシアネート化合物B及び親水性基含有化合物の種類を以下の表19〜20に示すとおりとした以外は、比較例6−1と同様の方法を用いて、化合物を製造し、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性、主剤との反応性及び塗膜としたときの耐水性について評価した。なお、表19〜20において、イソシアネート化合物Bのうち化合物Xは以下に示すものである。また、親水性基含有化合物の略称は、以下の化合物を表す。また、化合物(IV−2)については、数平均分子量が300、510、970及び1800と異なるもの(重合度が異なるもの)を適宜用いた。
【0517】
(イソシアネート化合物B)
化合物Xは、公知の手法で得られるヘキサメチレンジイソシアネートの片端のイソシアネート基を単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールで変性した以下の式(X)で表される化合物である。
【0518】
【化96】
【0519】
(式(X)中、R
101は以下の式(X−1)で表される基である。)
【0520】
【化97】
【0521】
(一般式(X−1)中、n112に対するn111の比は、1である。)
【0522】
(親水性基含有化合物)
MPEG220:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:220)
MPEG550:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550)
【0523】
【表19】
【0524】
【表20】
【0525】
表19〜20から、実施例6−1〜6−20で製造された化合物はいずれも樹脂組成物としたときの貯蔵安定性、主剤との反応性、及び塗膜としたときの耐水性が全て良好であった。一方、比較例6−1で製造された化合物は主剤との反応性、及び塗膜としたときの耐水性が良好であるものの、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が不良であった。また、比較例6−2で製造された化合物は樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であるものの、主剤との反応性、及び塗膜としたときの耐水性が不良であった。