(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搭乗者(18)が操作する操作部(26R、100、102)と、前記搭乗者による前記操作部の操作に基づき空中での飛行を制御する制御部(80)とを有する飛行体(10)において、
前記操作部は、
前記搭乗者によって、中立位置を中心として、第1の操作方向、又は、前記第1の操作方向とは逆方向の第2の操作方向に操作され、
前記中立位置を中心とした前記第1の操作方向及び前記第2の操作方向への所定範囲が中立領域に設定され、
前記制御部は、
前記中立位置から前記第1の操作方向への前記操作部の操作量に応じて、前記飛行体を前進方向である第1の移動方向に移動させ、一方で、前記中立位置から前記第2の操作方向への前記操作部の操作量に応じて、前記飛行体を後退方向である第2の移動方向に移動させ、
前記第1の操作方向又は前記第2の操作方向に操作された前記操作部の位置が前記中立領域に変位した場合、前記飛行体を減速させ、
前記飛行体が前記第1の移動方向に前進状態で移動している場合に、前記搭乗者が前記操作部を前記第1の操作方向から前記中立領域を通って前記第2の操作方向に操作したときに、前記飛行体の状態を、前記前進状態から、前記飛行体の速度を急激に0に移行させる緊急停止状態に遷移させる、飛行体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る飛行体及びその制御方法について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
[1.本実施形態の構成]
本実施形態に係る飛行体10は、
図1に示すように、前後方向に長い長方体形状の本体フレーム12を有するマルチコプタである。本体フレーム12は、複数のパイプ材等の棒状部材を直方体状に組み合わせた骨格体14と、骨格体14の各面を塞ぐように該骨格体14に取り付けられた8枚の外装パネル16とを含み構成される。なお、骨格体14の一部は、外装パネル16から外部に露出している。
【0013】
本体フレーム12の上部には、搭乗者18が着座する搭乗用の座席20が設けられている。以下の説明では、座席20に着座した搭乗者18から見て、前後、左右及び上下の方向を説明する。また、以下の説明では、左右に配置された構成要素について、参照数字の後に、左を示す「L」、又は、右を示す「R」の文字を付けて説明する場合がある。
【0014】
座席20の前方には操縦装置22が設けられている。操縦装置22は、搭乗者18が操舵可能な操向ハンドル24を有し、操向ハンドル24の左右の両端部には、搭乗者18が左右の手25L、25Rで把持するグリップハンドル(操作部)26L、26Rが設けられている。
【0015】
本体フレーム12の左右両側には、座席20に着座した搭乗者18の足置き場であるステップ28が取り付けられている。本体フレーム12の操縦装置22の前方には透明アクリル板等による風よけフード30が取り付けられている。本体フレーム12の下部における前後左右の四箇所には、脚片状のランディングギヤ32が取り付けられている。
【0016】
骨格体14の前部には、パイプ材等の棒状部材による左右一対の前部支持アーム34L、34Rが取り付けられている。左側の前部支持アーム34Lは、骨格体14から前方左側に延びるアーム部材であって、骨格体14の上部左隅から前方左側に延出する上側アーム36Lと、骨格体14の下部左隅から上側アーム36Lと平行に前方左側に延出する下側アーム38Lと、上側アーム36Lの先端部と下側アーム38Lの先端部とを連結する連結ロッド40Lとを有する。
【0017】
右側の前部支持アーム34Rは、骨格体14から前方右側に延びるアーム部材であって、骨格体14の上部右隅から前方右側に延出する上側アーム36Rと、骨格体14の下部右隅から上側アーム36Rと平行に前方右側に延出する下側アーム38Rと、上側アーム36Rの先端部と下側アーム38Rの先端部とを連結する連結ロッド40Rとを有する。
【0018】
左右の上側アーム36L、36Rの中間部分には、マウント部材42L、42Rを介して、電動モータ44L、44Rが下向きに取り付けられている。下方に延びる各電動モータ44L、44Rの出力軸には、該出力軸を回転中心とする二翼の回転翼46L、46Rが水平に取り付けられている。
【0019】
一方、左右の下側アーム38L、38Rの中間部分には、マウント部材48L、48Rを介して、電動モータ50L、50Rが上向きに取り付けられている。この場合、上方に延びる各電動モータ50L、50Rの出力軸には、該出力軸を回転中心とする二翼の回転翼52L、52Rが水平に取り付けられている。
【0020】
本体フレーム12の前部には、前部ガード部材54が取り付けられている。前部ガード部材54は、両端が本体フレーム12に固定され、4つの回転翼46L、46R、52L、52Rを取り囲むように、左右方向に延びる長円形状を有する板状部材である。この場合、前部ガード部材54の前方部分の左右両側には、連結ロッド40L、40Rが結合されている。
【0021】
一方、骨格体14の後部には、左右一対の後部支持アーム56L、56R、4つの回転翼58L、58R、60L、60R、及び、後部ガード部材62が設けられている。左右一対の後部支持アーム56L、56R、4つの回転翼58L、58R、60L、60R、及び、後部ガード部材62は、それぞれ、左右一対の前部支持アーム34L、34R、前方の4つの回転翼46L、46R、52L、52R、及び、前部ガード部材54と同様の構成を備える。
【0022】
すなわち、左側の後部支持アーム56Lは、骨格体14から後方左側に延びるパイプ材等の棒状部材によるアーム部材であって、骨格体14の上部左隅から後方左側に延出する上側アーム64Lと、骨格体14の下部左隅から上側アーム64Lと平行に後方左側に延出する下側アーム66Lと、上側アーム64Lの先端部と下側アーム66Lの先端部とを連結する連結ロッド68Lとを有する。
【0023】
右側の後部支持アーム56Rは、骨格体14から後方右側に延びるパイプ材等の棒状部材によるアーム部材であって、骨格体14の上部右隅から後方右側に延出する上側アーム64Rと、骨格体14の下部右隅から上側アーム64Rと平行に後方右側に延出する下側アーム66Rと、上側アーム64Rの先端部と下側アーム66Rの先端部とを連結する連結ロッド68Rとを有する。
【0024】
左右の上側アーム64L、64Rの中間部分には、マウント部材70L、70Rを介して、電動モータ72L、72Rが下向きに取り付けられている。下方に延びる各電動モータ72L、72Rの出力軸には、該出力軸を回転中心とする二翼の回転翼58L、58Rが水平に取り付けられている。一方、左右の下側アーム66L、66Rの中間部分には、マウント部材74L、74Rを介して、電動モータ76L、76Rが上向きに取り付けられている。上方に延びる各電動モータ76L、76Rの出力軸には、該出力軸を回転中心とする二翼の回転翼60L、60Rが水平に取り付けられている。
【0025】
本体フレーム12の後部には、後部ガード部材62が取り付けられている。後部ガード部材62は、両端が本体フレーム12に固定され、4つの回転翼58L、58R、60L、60Rを取り囲むように、左右方向に延びる長円形状を有する板状部材である。この場合、後部ガード部材62の後方部分の左右両側には、連結ロッド68L、68Rが結合されている。
【0026】
そして、前方及び後方の各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rは、出力軸に連結された回転翼46L、46R、52L、52R、58L、58R、60L、60Rを個別に回転駆動させる。具体的に、上下方向で互いに向かい合うように配置された2つの回転翼46L、46R、52L、52R、58L、58R、60L、60Rは、互いに相反する方向に回転駆動される。なお、左側の回転翼46L、52L、58L、60Lと右側の回転翼46R、52R、58R、60Rとは、本体フレーム12の前後方向に延びる中心線に対して左右対称に配置されている。つまり、飛行体10は、左右一対且つ左右対称配置の二重反転の回転翼46L、46R、52L、52R、58L、58R、60L、60Rを有する。
【0027】
本体フレーム12には、フライトコントローラ(制御部)80、ロードセル82L、82R、ジャイロセンサを含む慣性
計測装置(IMU)84、下方距離センサ86、各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rを個別に制御する複数のESC(Electronic Speed Controller)88、バッテリ90、及び、接続プラグ92付きのバッテリ充電器94が取り付けられている。なお、フライトコントローラ80は、不図示のメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する飛行体10の各部に対する制御を行う。
【0028】
図2A及び
図2Bは、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作を図示した説明図である。本実施形態では、搭乗者18が操向ハンドル24又はグリップハンドル26Rを操作した場合、フライトコントローラ80(
図1参照)が操向ハンドル24又はグリップハンドル26Rの操作量に応じて各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rを制御することにより、飛行体10の飛行を制御する。
【0029】
具体的に、搭乗者18が左右の手25L、25Rでグリップハンドル26L、26Rを把持した状態で、操向ハンドル24(
図1参照)を上下方向の軸回り(ヨー方向)に操舵すると、飛行体10を旋回させることができる。また、例えば、搭乗者18が手25R(以下、右手25Rともいう。)で右側のグリップハンドル26Rを中立位置(中立点)から手前側、すなわち、P1方向(第1の操作方向)に回動させると、飛行体10を前方(前進方向、第1の移動方向)に飛行させることができる。さらに、搭乗者18が右側のグリップハンドル26Rを中立位置から奥側、すなわち、P2方向(第2の操作方向)に回動させると、飛行体10を後方(後退方向、第2の移動方向)に飛行させることができる。
【0030】
つまり、本実施形態に係る飛行体10では、後退を除き、搭乗者18と飛行体10との親和性を高めるため、二輪車の操向ハンドル及びスロットルグリップと同様の操作が行えるように、操縦装置22が構成されている。
【0031】
操縦装置22には、トルクセンサ又は回転角度センサで構成される操作量検出センサ98が内蔵されている。操作量検出センサ98は、中立位置に対するグリップハンドル26Rの回動角度を、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作量(位置)として検出する。また、操作量検出センサ98は、搭乗者18が操向ハンドル24を上下方向の軸回りを操舵した際に、操向ハンドル24の中立位置に対する操舵角度を検出する。従って、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98が検出した操作量及び操舵角度に基づいて、飛行体10の飛行を制御可能である。
【0032】
なお、搭乗者18がP1方向又はP2方向に右側のグリップハンドル26Rを回動させた状態で、例えば、搭乗者18が該グリップハンドル26Rから右手25Rを離すことで、搭乗者18とグリップハンドル26Rとが非接触状態となった場合、グリップハンドル26Rは、右手25Rによる把持力から解放されるので、不図示のバネ等によって中立位置側に戻される。
【0033】
図3は、搭乗者18(
図1及び
図2B参照)によるグリップハンドル26Rの操作量(位置)の説明図である。ここでは、中立位置を0[%]、中立位置に対してグリップハンドル26RをP1方向に所定角度(例えば、
図2Bでは時計方向に+90[°])回動させたときの操作量を+100[%]、中立位置に対してグリップハンドル26RをP2方向に所定角度(例えば、
図2Bでは反時計方向に−90[°])回動させたときの操作量を−100[%]とする。なお、
図2A〜
図3では、説明の便宜上、飛行体10の前進方向に対応するグリップハンドル26Rの操作方向であるP1方向を正方向(+)、飛行体10の後退方向に対応するグリップハンドル26Rの操作方向であるP2方向を負方向(−)として説明する。
【0034】
本実施形態では、中立位置を中心として、P1方向に+NP1[%]、P2方向に−NP2[%]の範囲を中立領域(−NP2[%]〜+NP1[%])に設定している。前述のように、搭乗者18がグリップハンドル26RをP1方向又はP2方向に回動させた後、グリップハンドル26Rから右手25Rを離すと、グリップハンドル26Rは、バネの力で中立位置側に戻される。
【0035】
ここで、飛行体10が前進方向に飛行している場合、グリップハンドル26Rの位置が中立領域のP1方向側(0[%]〜+NP1[%]の範囲)にまで変位すると、フライトコントローラ80は、飛行体10の速度が0となるように、飛行体10に後退方向への減速力を作用させる。一方、飛行体10が後退方向に飛行している場合、グリップハンドル26Rの位置が中立領域のP2方向側(−NP2[%]〜0[%]の範囲)にまで変位すると、フライトコントローラ80は、速度が0となるように、前進方向への減速力を作用させる。本実施形態では、空気抵抗値以上の減速力を飛行体10に作用させることで、飛行体10の速度を0にする。
【0036】
この場合、フライトコントローラ80は、中立領域でのグリップハンドル26Rの操作量(位置)や、中立領域へのグリップハンドル26Rの戻り量、戻り速度又は戻り加速度に応じて、飛行体10の減速度を決定すればよい。例えば、搭乗者18が右手25Rでグリップハンドル26Rの位置を中立領域に大きく戻した場合、フライトコントローラ80は、搭乗者18に減速の意思があると判断し、その戻り量、戻り速度又は戻り加速度が大きい程、減速度を大きく設定すればよい。また、フライトコントローラ80は、中立領域でのグリップハンドル26Rの操作量が小さい程、又は、中立領域でのグリップハンドル26Rの位置が中立位置に近い程、減速度を大きくしてもよい。これにより、グリップハンドル26Rが中立位置側に戻されたときに、速度を速やかに0にすることができる。なお、速度が0の状態とは、飛行体10が所定の高度で空中に停止しているホバリング状態をいう。
【0037】
操作量検出センサ98は、ノイズ成分によって、0[%]の操作量(位置)を厳密に検出することが困難な場合がある。そこで、中立領域において、0[%]近傍の−NP4[%]〜+NP3[%]の範囲を、操作量検出センサ98の不感帯に設定してもよい。従って、不感帯の範囲で検出される操作量(位置)は、0[%]とみなすことができる。
【0038】
また、本実施形態に係る飛行体10において、操縦装置22は、
図1〜
図2Bに示す操向ハンドル24に限定されることはなく、例えば、
図4A及び
図4Bの構成に代替してもよい。
【0039】
図4Aでは、飛行機のフライトスティックを模したレバー(操作部)100で操縦装置22が構成されている。この場合、例えば、上下方向の軸を中立位置とし、搭乗者18は、レバー100を掴んだ状態で、中立位置を中心に前方(P1方向)にレバー100を倒すか、又は、後方(P2方向)にレバー100を倒せばよい。
【0040】
一方、
図4Bでは、小型のレバー(操作部)102で操縦装置22が構成されている。この場合、例えば、斜め上後方に延びる軸を中立位置とし、搭乗者18は、レバー102を摘んだ状態で、中立位置を中心に上側(P1方向)にレバー102を操作するか、又は、下側(P2方向)にレバー102を操作すればよい。
【0041】
図4A及び
図4Bのいずれの場合でも、中立位置に対するレバー100、102の操作量(位置)に従って、飛行体10(
図1参照)を前進又は後退させることができる。また、不図示のバネの力によってレバー100、102が中立領域に戻された場合、前進又は後退している飛行体10に減速力を作用させることができる。
【0042】
図5は、本実施形態に係る飛行体10のブロック図である。なお、
図5において、実線は信号線を、破線は電力線を各々示している。
【0043】
フライトコントローラ80は、ロードセル82L、82R、IMU84、下方距離センサ86及び操作量検出センサ98からの各検出信号に基づいて、各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76RのESC88に個別の指令信号を出力する。この場合、ロードセル82L、82Rは、座席20(
図1参照)の直下の左右両側に配設され、搭乗者18を含む機体の体重移動量(飛行体10の前後方向の軸回り(ロール方向)の回転量、重心移動量)を検出する。IMU84は、ジャイロセンサを含み構成され、3軸方向の角速度や加速度(機体の姿勢)を検出する。下方距離センサ86は、飛行体10の地表からの高度を検出する。操作量検出センサ98は、前述のように、グリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)の操作量や操向ハンドル24の操舵角度を検出する。
【0044】
なお、フライトコントローラ80は、後述のように、IMU84の検出結果に基づき、飛行体10のピッチ角度(左右方向の軸回りの回転角度)や速度を算出可能である。そのため、本実施形態では、IMU84に代えて、又は、IMU84に加え、風速センサ、GPS(Global Positioning System、Global Positioning Satellite)センサ、赤外線カメラ、RGBカメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等を飛行体10に搭載し、これらの検出手段の検出結果に基づき、ピッチ角度や速度を求めてもよい。以下の説明では、IMU84を飛行体10に搭載した場合について説明する。
【0045】
各ESC88が指令信号に基づき電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rを個別に駆動させることで、各回転翼46L、46R、52L、52R、58L、58R、60L、60Rは、個別の回転方向及び回転速度で回転駆動される。この結果、飛行体10を所望の方向及び速度で飛行させることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、飛行体10を減速させる場合には、前方及び後方の電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rのうち、一方のモータの回転数を、他方のモータの回転数よりも低くする。例えば、飛行体10が前進方向に飛行している場合、該飛行体10を減速させる際には、後方のモータの回転数を前方のモータの回転数よりも低くすればよい。
【0047】
[2.本実施形態の動作]
以上のように構成される本実施形態に係る飛行体10の動作(飛行体10の制御方法)について、
図6〜
図11を参照しながら説明する。なお、以下の動作説明では、必要に応じて、
図1〜
図5も参照しながら説明する。
【0048】
<2.1 飛行体10の一連の動作の概略説明>
先ず、本実施形態に係る飛行体10の動作について、
図6の状態遷移図を参照しながら説明する。
図6は、飛行体10(
図1及び
図5参照)の動作開始、離陸、飛行中、着陸、動作終了等の一連の動作状態の遷移を図示したものである。なお、
図6の説明では、主として、飛行体10の動作状態の遷移について説明し、飛行体10を構成する個々の構成要素の動作については、説明を簡略化又は省略する場合がある。
【0049】
先ず、「開始」の状態(以下、開始状態ともいう。)では、飛行体10は、地表に着地している。この場合、飛行体10の座席20に搭乗者18が着座し、不図示のボタンを操作すると、遷移線ST1のように、飛行体10は、地表から離陸して上昇し、「離陸」の状態(以下、離陸状態ともいう。)に遷移する。その後、飛行体10は、遷移線ST2のように、目標高度まで自動的に上昇する。
【0050】
次に、飛行体10が目標高度に到達すると、飛行体10は、遷移線ST3のように、「ホバリング」の状態(以下、ホバリング状態ともいう。)に遷移する。
【0051】
ホバリング状態を維持する場合、遷移線ST4のように、フライトコントローラ80は、速度を0に維持するように、飛行体10内の各部を制御する。この場合、遷移線ST4は、グリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)の操作量(位置)が、例えば、中立領域内であることを条件に実行される。
【0052】
すなわち、フライトコントローラ80は、ロードセル82L、82Rが検出した体重移動量に基づいて、搭乗者18の体重移動による機体の重心移動量を把握し、重心移動量に対応して飛行体10のロール角度(前後方向の軸回りの回転角度)を制御する。また、フライトコントローラ80は、IMU84の検出結果に基づいて、速度が0になるように、ピッチ角度を制御する。さらに、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98が検出した操向ハンドル24の操舵角度に応じて、ヨーレートを制御する。さらにまた、フライトコントローラ80は、下方距離センサ86が検出した飛行体10の高度や、搭乗者18による不図示のボタンの操作に応じて、飛行体10の高度を制御する。
【0053】
従って、フライトコントローラ80は、制御量であるロール角度、ピッチ角度、ヨーレート及び高度に応じた指令信号を各ESC88に出力することで、各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rの駆動を制御し、遷移線ST4に示すように、飛行体10をホバリング状態に維持する。
【0054】
次に、搭乗者18が右側のグリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)をP1方向に中立領域(
図3参照)以上の操作量で回動させた場合(操作量≧+NP1[%])、フライトコントローラ80は、遷移線ST5のように、ホバリング状態から「前進(加速)」の状態(以下、前進加速状態ともいう。)に遷移させる。これにより、飛行体10は、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作量(位置)に応じて、前進方向に加速しながら飛行する。
【0055】
その後、グリップハンドル26RのP1方向への操作量が+NP1[%]以上である場合(操作量≧+NP1[%])、フライトコントローラ80は、遷移線ST6のように、前進加速状態を維持する。この場合も、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98が検出したグリップハンドル26Rの操作量(位置)に基づいてピッチ角度を制御する。また、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98が検出した操向ハンドル24の操舵角度やロードセル82L、82Rが検出した体重移動量に基づいてロール角度及びヨーレートを制御する。さらに、フライトコントローラ80は、下方距離センサ86が検出した高度や搭乗者18によるボタンの操作に基づいて高度を制御する。
【0056】
次に、グリップハンドル26RのP1方向への操作量(位置)が中立領域のP1方向側(0[%]〜+NP1[%])に戻された場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST7のように、飛行体10を前進加速状態から「前進(減速)」の状態(以下、前進減速状態ともいう。)に遷移させる。前進減速状態は、飛行体10を前進方向に飛行させつつ減速させる状態をいう。
【0057】
その後、グリップハンドル26RのP1方向への操作量(位置)が中立領域のP1方向側にある場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST8のように、前進減速状態を維持する。この場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST6と同様に、グリップハンドル26Rの操作量に基づきピッチ角度を制御する。また、フライトコントローラ80は、操向ハンドル24の操舵角度や体重移動量に基づきロール角度及びヨーレートを制御する。さらに、フライトコントローラ80は、下方距離センサ86が検出した高度や搭乗者18によるボタンの操作に基づき高度を制御する。
【0058】
但し、遷移線ST8の場合、フライトコントローラ80は、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が小さい程(0[%]に近い程)、P2方向に対応する後退方向への減速度(減速力)が大きくなるように設定する。これにより、搭乗者18が右手25Rをグリップハンドル26Rから離しても、飛行体10は、自動的に速度0に近づくように制御される。なお、ピッチ角度が正である場合(機体が後方に傾いている場合)、飛行体10は後退方向に飛行し、一方で、ピッチ角度が負である場合(機体が前方に傾いている場合)、飛行体10は前進方向に飛行することに留意する。
【0059】
次に、前進減速状態において、グリップハンドル26RのP1方向への操作量(位置)が+NP1[%]以上となった場合(操作量≧+NP1[%])、フライトコントローラ80は、遷移線ST9のように、飛行体10を前進加速状態に遷移させる。
【0060】
一方、前進減速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−NP2[%]〜+NP1[%]の範囲、すなわち、中立領域の範囲にあって、且つ、速度の絶対値が0近傍の閾値以下である場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST10のように、飛行体10をホバリング状態に遷移させる。すなわち、IMU84のノイズ成分に起因して、速度0を厳密に検出することができない可能性も考慮し、中立領域内での速度の絶対値が閾値以下であれば、0に近い速度とみなした上で、ホバリング状態に移行させる。
【0061】
また、前進加速状態又は前進減速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]の範囲にある場合、フライトコントローラ80は、搭乗者18が飛行体10を緊急に減速させたい意思があると判断し、遷移線ST11又はST12のように、「緊急停止」の状態(以下、緊急停止状態ともいう。)に遷移させる。つまり、緊急停止状態とは、二輪車等の車両の急ブレーキ状態に対応するものであり、速度を急激に0に移行させる状態をいう。
【0062】
緊急停止状態において、搭乗者18がグリップハンドル26RをP1方向側に回動させ、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が+NP1[%]〜+100[%]の範囲にある場合、すなわち、グリップハンドル26Rの操作量が中立領域からP1方向側に外れた場合、フライトコントローラ80は、搭乗者18が飛行体10を前進させたい意思があると判断し、遷移線ST13のように、飛行体10を前進加速状態に遷移させる。
【0063】
また、緊急停止状態において、速度の絶対値が閾値以上であり、且つ、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]の範囲にある場合、フライトコントローラ80は、搭乗者18が飛行体10を停止させたい意思があると判断し、遷移線ST14のように、緊急停止状態を維持する。これにより、速度が速やかに0となるように、飛行体10を減速させることができる。
【0064】
さらに、緊急停止状態において、速度の絶対値が閾値以下、且つ、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−NP4[%]〜+NP3[%]の不感帯にある場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST15のように、ホバリング状態に遷移させる。すなわち、緊急停止状態において、搭乗者18がグリップハンドル26Rから右手25Rを離すことで、該グリップハンドル26Rが中立領域となり、且つ、速度の絶対値が0近傍になったときに、ホバリング状態に遷移する。
【0065】
ホバリング状態において、搭乗者18がグリップハンドル26RをP2方向に回動させ、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域から外れた場合(−NP2[%]よりもP2方向側となった場合)、フライトコントローラ80は、遷移線ST16のように、「後退(加速)」の状態(以下、後退加速状態ともいう。)に遷移させる。後退加速状態は、飛行体10を後退方向に加速させつつ飛行させる状態をいう。従って、ホバリング状態の飛行体10を前進(遷移線ST5)又は後退(遷移線ST16)させる場合、搭乗者18は、グリップハンドル26Rを中立領域からP1方向又はP2方向に操作する必要がある。
【0066】
その後、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−NP2[%]よりもP2方向側である場合、フライトコントローラ80は、搭乗者18が飛行体10を後退させたい意思があると判断し、遷移線ST17のように、後退加速状態を維持する。この場合も、フライトコントローラ80は、遷移線ST6、ST8と同様に、グリップハンドル26Rの操作量に基づきピッチ角度を制御する。また、フライトコントローラ80は、操向ハンドル24の操舵角度や体重移動量に基づきロール角度及びヨーレートを制御する。さらに、フライトコントローラ80は、下方距離センサ86が検出した高度や搭乗者18によるボタンの操作に基づき高度を制御する。なお、フライトコントローラ80は、後退方向への速度が、所定の制限速度に達した場合、制限速度に対する空気抵抗力と釣り合うようなピッチ角度に制限することも可能である。
【0067】
後退加速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−NP2[%]〜+NP1[%]の中立領域となった場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST18のように、飛行体10を「後退(減速)」の状態(以下、後退減速状態ともいう。)に遷移させる。後退減速状態は、後退方向に飛行する飛行体10を減速させる状態をいう。
【0068】
その後、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−NP2[%]よりもP1方向側である場合、すなわち、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域に維持されている場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST19のように、後退減速状態を維持する。この場合も、フライトコントローラ80は、遷移線ST6、ST8、ST17と同様に、グリップハンドル26Rの操作量に基づきピッチ角度を制御する。また、フライトコントローラ80は、操向ハンドル24の操舵角度や体重移動量に基づきロール角度及びヨーレートを制御する。さらに、フライトコントローラ80は、下方距離センサ86が検出した高度や搭乗者18によるボタンの操作に基づいて高度を制御する。この場合、グリップハンドル26Rの操作量に応じて後退方向の加速度が小さくなる。すなわち、ピッチ角度は、負の範囲で制御される。
【0069】
後退減速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域よりもP2方向側である場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST20のように、後退加速状態に遷移する。また、後退減速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−NP2[%]〜+NP1[%]の中立領域にあり、且つ、速度の絶対値が閾値未満である場合、フライトコントローラ80は、前進減速状態からホバリング
状態への移行(遷移線ST10)と同様に、遷移線ST21のように、ホバリング状態に遷移する。
【0070】
さらに、フライトコントローラ80は、後退減速状態又は後退加速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域よりもP1方向側である場合、遷移線ST22又はST23のように、飛行体10を前進加速状態に遷移させる。
【0071】
さらにまた、前進加速状態、前進減速状態、後退加速状態、後退減速状態又は離陸状態において、搭乗者18が不図示のスイッチを操作し、飛行体10の着陸を指示すると、フライトコントローラ80は、遷移線ST24〜ST28に示すように、飛行体10を「着陸」の状態(以下、着陸状態ともいう。)に遷移させる。但し、遷移線ST28は、目標高度に到達する前に搭乗者18がスイッチを操作した場合であることに留意する。
【0072】
着陸状態において、搭乗者18が不図示のスイッチを操作した場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST29に示すように、飛行体10を着陸させるように制御する。
【0073】
また、着陸状態において、搭乗者18が不図示のスイッチを操作し、且つ、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域よりもP1方向側である場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST30に示すように、飛行体10を前進加速状態に遷移させる。さらに、着陸状態において、搭乗者18が不図示のスイッチを操作し、且つ、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域のP1方向側である場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST31に示すように、飛行体10を前進減速状態に遷移させる。
【0074】
さらにまた、着陸状態において、飛行体10の高度が0になった場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST32に示すように、飛行体10を開始状態に遷移させる。なお、下方距離センサ86のノイズ成分に起因して、検出される高度が厳密に0にならない可能性もある。この場合、下方距離センサ86の所定の検出範囲を不感帯に設定し、該不感帯では高度を0とみなしてもよい。
【0075】
また、ホバリング状態、緊急停止状態又は着陸状態において、搭乗者18が不図示のスイッチを操作し、飛行体10の着陸を指示すると、フライトコントローラ80は、遷移線ST33〜ST35に示すように、飛行体10を着陸状態に遷移させる。但し、遷移線ST35の場合、着陸状態を維持することに留意する。
【0076】
着陸状態において、飛行体10の高度が0になった場合、フライトコントローラ80は、遷移線ST36に示すように、飛行体10を開始状態に遷移させる。また、着陸状態において、搭乗者18が不図示のスイッチを操作し、飛行体10の離陸を指示すると、フライトコントローラ80は、遷移線ST37に示すように、飛行体10を離陸状態に遷移させる。
【0077】
次に、
図6の遷移線ST1〜ST37のうち、代表的な状態遷移の詳細な動作について、
図7〜
図10を参照しながら説明する。なお、
図7〜
図10の動作の主体は、フライトコントローラ80である。
【0078】
<2.2 前進加速状態と前進減速状態との間の遷移動作>
図7は、
図6の遷移線ST7又はST9の状態遷移の詳細を示すフローチャートである。
【0079】
先ず、ステップS1において、フライトコントローラ80(
図1及び
図5参照)は、飛行体10の現在の飛行状態が前進加速状態であるかどうかを判定する。前進加速状態であれば(ステップS1:YES)、次のステップS2に進む。
【0080】
ステップS2において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98の検出結果に基づき、グリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)の操作量(位置)が中立領域(
図3参照)にあるかどうかを判定する。中立領域であれば(ステップS2:YES)、次のステップS3に進む。
【0081】
ステップS3において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98等の各種センサの検出結果に基づいて、前進加速状態から前進減速状態への遷移を許可するためのフラグ(状態遷移許可フラグ)を設定する。なお、フライトコントローラ80は、状態遷移を許可する場合、フラグを「オン(1)」に設定し、一方で、状態遷移を不許可とする場合、フラグを「オフ(0)」に設定する。
【0082】
前進加速状態から前進減速状態への遷移を不許可にする場合としては、例えば、(1)法規等で速度の絶対値の下限値が決まっており、下限値以下の速度では減速が禁止されている場合や、(2)飛行体10の前方に障害物があり、減速をすると障害物に衝突することが予測される場合、がある。
【0083】
ステップS4において、フライトコントローラ80は、ステップS3で設定したフラグが立っているかどうか、すなわち、フラグが「オン」であるかどうかを判定する。フラグが立っている場合、ステップS5に進む。ステップS5において、フライトコントローラ80は、飛行体10を前進加速状態から前進減速状態に遷移させるように、飛行体10の各部を制御する。すなわち、遷移線ST7の状態遷移が行われる。
【0084】
その後、フライトコントローラ80は、ステップS1に戻り、ステップS1の判定処理を再度実行する。すなわち、
図7の処理は、飛行体10の飛行中、繰り返し実行される。
【0085】
一方、ステップS4において、ステップS3で設定したフラグが立っていない場合(ステップS4:NO)、フライトコントローラ80は、前進加速状態から前進減速状態への遷移が不可能と判断する。これにより、フライトコントローラ80は、前進加速状態を維持しつつ、ステップS1に戻る。
【0086】
また、ステップS2において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域にない場合、すなわち、グリップハンドル26Rの操作量が+NP1[%]以上のP1方向側にある場合(操作量≧+NP1[%]、ステップS2:NO)、ステップS6に進む。ステップS6において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98が検出した操作量に基づいて、ピッチ角度の目標値(ピッチ目標角度)を算出する。
【0087】
次のステップS7において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98を含む各種センサの検出結果に基づいて、ピッチ目標角度に対する補正量を算出する。ステップS8において、フライトコントローラ80は、ピッチ目標角度を補正量で補正することで、該ピッチ目標角度を、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作量通りのピッチ角度に調整する。これにより、フライトコントローラ80は、補正後のピッチ目標角度に基づく指令信号を各ESC88に出力し、各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rを制御させることで、飛行体10の前進加速状態の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS1に戻る。
【0088】
一方、ステップS1において、飛行体10の現在の飛行状態が前進加速状態でない場合(ステップS1:NO)、ステップS9に進む。ステップS9において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態であるかどうかを判定する。前進減速状態であれば(ステップS9:YES)、次のステップS10に進む。
【0089】
ステップS10において、フライトコントローラ80は、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域よりもP1方向側(操作量≧+NP1[%])であるかどうかを判定する。グリップハンドル26Rの操作量が+NP1[%]以上である場合(ステップS10:YES)、ステップS11に進む。ステップS11において、フライトコントローラ80は、搭乗者18が加速の意図でP1方向にグリップハンドル26Rを操作したものと判断し、前進減速状態から前進加速状態への遷移を許可するためのフラグ(状態遷移許可フラグ)を設定する。この場合でも、フライトコントローラ80は、状態遷移を許可する場合には、フラグを「オン(1)」に設定し、一方で、状態遷移を不許可とする場合には、フラグを「オフ(0)」に設定する。
【0090】
なお、前進減速状態から前進加速状態への遷移を不許可にする場合としては、例えば、(1)法規等で速度の絶対値の上限値が決まっており、上限値以上の速度では加速が禁止されている場合や、(2)飛行体10の前方に障害物があり、加速すると障害物に衝突することが予測される場合、がある。
【0091】
ステップS12において、フライトコントローラ80は、ステップS11で設定したフラグが立っているかどうか、すなわち、フラグが「オン」であるかどうかを判定する。フラグが立っている場合(ステップS12:YES)、ステップS13に進む。ステップS13において、フライトコントローラ80は、飛行体10を前進減速状態から前進加速状態に遷移させるように、飛行体10の各部を制御する。すなわち、遷移線ST9の状態遷移が行われる。その後、フライトコントローラ80は、ステップS1に戻る。
【0092】
一方、ステップS12において、フラグが立っていない場合(ステップS12:NO)、フライトコントローラ80は、前進減速状態から前進加速状態への遷移が不可能と判断し、前進減速状態を維持しつつステップS1に戻る。
【0093】
また、ステップS10において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域よりもP1方向側でない場合、例えば、グリップハンドル26Rの操作量が中立領域にある場合(ステップS10:NO)、ステップS6〜S8の処理が順に行われる。これにより、フライトコントローラ80は、前進減速状態での飛行制御を継続して行うことができる。
【0094】
さらに、ステップS9において、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態でない場合(ステップS9:NO)、ステップS14に進む。ステップS14において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が前進以外の状態、すなわち、ホバリング状態又は後退の状態等であると判断し、現在の状態で飛行体10の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS1に戻る。
【0095】
<2.3 前進加速状態と緊急停止状態との間の遷移動作>
図8は、
図6の遷移線ST11又はST13の状態遷移の詳細を示すフローチャートである。
【0096】
先ず、ステップS21において、フライトコントローラ80(
図1及び
図5参照)は、飛行体10の現在の飛行状態が前進加速状態であるかどうかを判定する。前進加速状態であれば(ステップS21:YES)、次のステップS22に進む。
【0097】
ステップS22において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98の検出結果に基づき、搭乗者18がグリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)をP2方向に操作して、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]の範囲にある場合(ステップS22:YES)、次のステップS23に進む。
【0098】
ステップS23において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98等の各種センサの検出結果に基づいて、前進加速状態から緊急停止状態への遷移を許可するためのフラグ(状態遷移許可フラグ)を設定する。この場合でも、フライトコントローラ80は、状態遷移を許可する場合、フラグを「オン(1)」に設定し、一方で、状態遷移を不許可とする場合、フラグを「オフ(0)」に設定する。
【0099】
なお、前進加速状態から緊急停止状態への遷移を許可する場合としては、例えば、飛行体10の前方に障害物があり、加速をすると障害物に衝突することが予測されるので、飛行体10を緊急停止させる必要がある場合、がある。
【0100】
ステップS24において、フライトコントローラ80は、ステップS23で設定したフラグが立っているかどうか、すなわち、フラグが「オン」であるかどうかを判定する。フラグが立っている場合、ステップS25に進む。ステップS25において、フライトコントローラ80は、飛行体10を前進加速状態から緊急停止状態に遷移させるように、飛行体10の各部を制御する。すなわち、遷移線ST11の状態遷移が行われる。
【0101】
その後、フライトコントローラ80は、ステップS21に戻り、ステップS21の判定処理を再度実行する。
図8の処理も、飛行体10の飛行中、繰り返し実行される。
【0102】
一方、ステップS24において、ステップS23で設定したフラグが立っていない場合(ステップS24:NO)、フライトコントローラ80は、前進加速状態から緊急停止状態への遷移が不可能と判断する。これにより、フライトコントローラ80は、前進加速状態を維持しつつ、ステップS21に戻る。
【0103】
また、ステップS22において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]の範囲にない場合、すなわち、グリップハンドル26Rの操作量が+NP1[%]以上のP1方向側にある場合(操作量≧+NP1[%]、ステップS22:NO)、ステップS26に進む。ステップS26において、フライトコントローラ80は、搭乗者18が前進方向への加速の意思があると判断し、
図7のステップS6と同様に、操作量検出センサ98が検出した操作量に基づいて、ピッチ目標角度を算出する。
【0104】
次のステップS27において、フライトコントローラ80は、ステップS7と同様に、各種センサの検出結果に基づいて、ピッチ目標角度に対する補正量を算出する。ステップS28において、フライトコントローラ80は、ステップS8と同様に、ピッチ目標角度を補正量で補正することで、該ピッチ目標角度を、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作量通りのピッチ角度に調整する。この場合でも、フライトコントローラ80は、補正後のピッチ目標角度に基づく指令信号を各ESC88に出力し、各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rを制御させ、飛行体10の前進加速状態の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS21に戻る。
【0105】
一方、ステップS21において、飛行体10の現在の飛行状態が前進加速状態でない場合(ステップS21:NO)、ステップS29に進む。ステップS29において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が緊急停止状態であるかどうかを判定する。緊急停止状態であれば(ステップS29:YES)、次のステップS30に進む。
【0106】
ステップS30において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98の検出結果に基づき、搭乗者18がグリップハンドル26RをP1方向に操作することで、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が+NP1[%]〜+100[%]の範囲にあるかどうかを判定する。
【0107】
ステップS30で否定的な判定結果となった場合、例えば、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]である場合(ステップS30:NO)、次のステップS31に進む。
【0108】
ステップS31において、フライトコントローラ80は、IMU84等を含む各種センサの検出結果に基づいて、飛行体10の速度を算出する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS26〜S28の処理を順に行う。但し、ステップS26において、フライトコントローラ80は、ステップS31で算出した速度も考慮してピッチ目標角度を算出する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS21に戻る。
【0109】
一方、ステップS30でグリップハンドル26Rの操作量(位置)が+NP1[%]〜+100[%]の範囲にある場合(ステップS30:YES)、次のステップS32に進む。ステップS32において、フライトコントローラ80は、搭乗者18が前進の意図でP1方向にグリップハンドル26Rを操作したものと判断し、緊急停止状態から前進加速状態への遷移を許可するためのフラグ(状態遷移許可フラグ)を設定する。この場合でも、フライトコントローラ80は、状態遷移を許可する場合には、フラグを「オン(1)」に設定し、一方で、状態遷移を不許可とする場合には、フラグを「オフ(0)」に設定する。
【0110】
なお、緊急停止状態から前進加速状態への遷移を不許可にする場合としては、例えば、(1)飛行体10の前方に障害物があり、前進させると障害物に衝突することが予測される場合、(2)速度の絶対値が上限値を超えている場合、がある。
【0111】
ステップS33において、フライトコントローラ80は、ステップS32で設定したフラグが立っているかどうか、すなわち、フラグが「オン」であるかどうかを判定する。フラグが立っている場合(ステップS33:YES)、ステップS34に進む。ステップS34において、フライトコントローラ80は、飛行体10を緊急停止状態から前進加速状態に遷移させるように、飛行体10の各部を制御する。すなわち、遷移線ST13の状態遷移が行われる。その後、フライトコントローラ80は、ステップS21に戻る。
【0112】
一方、ステップS33において、フラグが立っていない場合(ステップS33:NO)、フライトコントローラ80は、緊急停止状態から前進加速状態への遷移が不可能と判断し、緊急停止状態を維持しつつステップS21に戻る。
【0113】
ステップS29において、飛行体10の現在の飛行状態が緊急停止状態でない場合(ステップS29:NO)、ステップS35に進む。ステップS35において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が前進加速状態及び緊急停止状態以外の状態、すなわち、ホバリング状態等であると判断し、現在の状態で飛行体10の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS21に戻る。
【0114】
<2.4 前進減速状態から緊急停止状態への遷移動作>
図9は、
図6の遷移線ST12の状態遷移の詳細を示すフローチャートである。
【0115】
先ず、ステップS41において、フライトコントローラ80(
図1及び
図5参照)は、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態であるかどうかを判定する。前進減速状態であれば(ステップS41:YES)、次のステップS42に進む。
【0116】
ステップS42において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98の検出結果に基づき、搭乗者18がグリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)をP2方向に操作して、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]の範囲にある場合(ステップS42:YES)、次のステップS43に進む。
【0117】
ステップS43において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98等の各種センサの検出結果に基づいて、前進減速状態から緊急停止状態への遷移を許可するためのフラグ(状態遷移許可フラグ)を設定する。この場合でも、フライトコントローラ80は、状態遷移を許可する場合、フラグを「オン(1)」に設定し、一方で、状態遷移を不許可とする場合、フラグを「オフ(0)」に設定する。
【0118】
なお、前進減速状態から緊急停止状態への遷移を不許可とする場合としては、例えば、飛行体10の前方に障害物があり、緊急停止すると障害物に衝突することが予測される場合、がある。
【0119】
ステップS44において、フライトコントローラ80は、ステップS43で設定したフラグが立っているかどうか、すなわち、フラグが「オン」であるかどうかを判定する。フラグが立っている場合、ステップS45に進む。ステップS45において、フライトコントローラ80は、飛行体10を前進減速状態から緊急停止状態に遷移させるように、飛行体10の各部を制御する。すなわち、遷移線ST12の状態遷移が行われる。
【0120】
その後、フライトコントローラ80は、ステップS41に戻り、ステップS41の判定処理を再度実行する。
図9の処理も、飛行体10の飛行中、繰り返し実行される。
【0121】
一方、ステップS44において、ステップS43で設定したフラグが立っていない場合(ステップS44:NO)、フライトコントローラ80は、前進減速状態から緊急停止状態への遷移が不可能と判断する。これにより、フライトコントローラ80は、前進減速状態を維持しつつ、ステップS41に戻る。
【0122】
また、ステップS42において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が−100[%]〜−NP2[%]の範囲にない場合、すなわち、グリップハンドル26Rの操作量が+NP1[%]以上のP1方向側にある場合(操作量≧+NP1[%]、ステップS42:NO)、ステップS46に進む。ステップS46において、フライトコントローラ80は、搭乗者18が前進方向への飛行の意思があると判断し、
図7のステップS6及び
図8のステップS26と同様に、操作量検出センサ98が検出した操作量に基づいて、ピッチ目標角度を算出する。
【0123】
次のステップS47において、フライトコントローラ80は、ステップS7、S27と同様に、各種センサの検出結果に基づいて、ピッチ目標角度に対する補正量を算出する。ステップS48において、フライトコントローラ80は、ステップS8、S28と同様に、ピッチ目標角度を補正量で補正することで、該ピッチ目標角度を、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作量通りのピッチ角度に調整する。この場合でも、フライトコントローラ80は、補正後のピッチ目標角度に基づく指令信号を各ESC88に出力し、各電動モータ44L、44R、50L、50R、72L、72R、76L、76Rを制御させ、飛行体10の前進減速状態の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS41に戻る。
【0124】
一方、ステップS41において、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態でない場合(ステップS41:NO)、ステップS49に進む。ステップS49において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が緊急停止状態であるかどうかを判定する。緊急停止状態であれば(ステップS49:YES)、次のステップS50に進む。
【0125】
ステップS50において、フライトコントローラ80は、
図8のステップS31と同様に、IMU84等を含む各種センサの検出結果に基づいて、飛行体10の速度を算出する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS46〜S48の処理を順に行う。この場合も、ステップS46において、フライトコントローラ80は、ステップS50で算出した速度を考慮してピッチ目標角度を算出する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS41に戻る。
【0126】
一方、ステップS49において、飛行体10の現在の飛行状態が緊急停止状態でない場合(ステップS49:NO)、ステップS51に進む。ステップS51において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態及び緊急停止状態以外の状態、すなわち、ホバリング状態又は後退の状態等であると判断し、現在の状態で飛行体10の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS41に戻る。
【0127】
<2.5 前進減速状態からホバリング状態への遷移動作>
図10は、
図6の遷移線ST10の状態遷移の詳細を示すフローチャートである。
【0128】
先ず、ステップS61において、フライトコントローラ80(
図1及び
図5参照)は、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態であるかどうかを判定する。前進減速状態であれば(ステップS61:YES)、次のステップS62に進む。
【0129】
ステップS62において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98の検出結果に基づき、搭乗者18がグリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)をP2方向に操作して、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が閾値未満、具体的には、該操作量が中立領域(
図3参照)に戻されたかどうかを判定する。閾値未満であれば(ステップS62:YES)、次のステップS63に進む。
【0130】
ステップS63において、フライトコントローラ80は、IMU84等の各種センサの検出結果に基づき、飛行体10の速度を算出する。
【0131】
ステップS64において、フライトコントローラ80は、算出した速度の絶対値が閾値未満、すなわち、速度の絶対値が不感帯にあるかどうかを判定する。閾値未満であれば(ステップS64:YES)、次のステップS65に進む。
【0132】
ステップS65において、フライトコントローラ80は、操作量検出センサ98等の各種センサの検出結果に基づいて、前進減速状態からホバリング状態への遷移を許可するためのフラグ(状態遷移許可フラグ)を設定する。この場合でも、フライトコントローラ80は、状態遷移を許可する場合、フラグを「オン(1)」に設定し、一方で、状態遷移を不許可とする場合、フラグを「オフ(0)」に設定する。
【0133】
なお、前進減速状態からホバリング状態への遷移を不許可にする場合としては、例えば、飛行体10の前方に障害物があり、ホバリング状態にすると障害物に衝突することが予測される場合、がある。
【0134】
ステップS66において、フライトコントローラ80は、ステップS65で設定したフラグが立っているかどうか、すなわち、フラグが「オン」であるかどうかを判定する。フラグが立っている場合、ステップS67に進む。ステップS67において、フライトコントローラ80は、飛行体10を前進減速状態からホバリング状態に遷移させるように、飛行体10の各部を制御する。すなわち、遷移線ST10の状態遷移が行われる。
【0135】
その後、フライトコントローラ80は、ステップS61に戻り、ステップS61の判定処理を再度実行する。
図10の処理も、飛行体10の飛行中、繰り返し実行される。
【0136】
一方、ステップS66において、ステップS65で設定したフラグが立っていない場合(ステップS66:NO)、フライトコントローラ80は、前進減速状態からホバリング状態への遷移が不可能と判断する。これにより、フライトコントローラ80は、前進減速状態を維持しつつ、ステップS61に戻る。
【0137】
また、ステップS62、S64において、否定的な判定結果となった場合(ステップS62、S64:NO)、ステップS68に進む。ステップS68において、フライトコントローラ80は、搭乗者18が飛行体10を前進させる意思があると判断し、
図7のステップS6、
図8のステップS26及び
図9のステップS46と同様に、操作量検出センサ98が検出した操作量に基づいて、ピッチ目標角度を算出する。
【0138】
次のステップS69において、フライトコントローラ80は、ステップS7、S27、S47と同様に、各種センサの検出結果に基づいて、ピッチ目標角度に対する補正量を算出する。ステップS70において、フライトコントローラ80は、ステップS8、S28、S48と同様に、ピッチ目標角度を補正量で補正することで、該ピッチ目標角度を、搭乗者18によるグリップハンドル26Rの操作量通りのピッチ角度に調整する。この場合でも、フライトコントローラ80は、補正後のピッチ目標角度に基づく指令信号を各ESC88に出力し、各電動モータ44L、44Rを制御させ、飛行体10の前進減速状態の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS61に戻る。
【0139】
一方、ステップS61において、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態でない場合(ステップS61:NO)、ステップS71に進む。ステップS71において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態がホバリング状態であるかどうかを判定する。ホバリング状態であれば(ステップS71:YES)、次のステップS72に進む。
【0140】
ステップS72において、フライトコントローラ80は、IMU84等を含む各種センサの検出結果に基づいて、飛行体10の速度を算出する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS68〜S70の処理を順に行う。但し、ステップS68において、フライトコントローラ80は、ステップS72で算出した速度も考慮してピッチ目標角度を算出する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS61に戻る。
【0141】
ステップS71において、飛行体10の現在の飛行状態がホバリング状態でない場合(ステップS71:NO)、ステップS73に進む。ステップS73において、フライトコントローラ80は、飛行体10の現在の飛行状態が前進減速状態及びホバリング状態以外の状態、すなわち、緊急停止状態又は後退の状態等であると判断し、現在の状態で飛行体10の飛行を制御する。その後、フライトコントローラ80は、ステップS61に戻る。
【0142】
<2.6
図6の状態遷移図の変形例>
図11は、
図6の状態遷移図の変形例である。
図11は、緊急停止状態が存在しない点で、
図6とは異なる。そのため、
図11では、緊急停止状態に関わる遷移線ST11〜ST15、ST34が省略され、その代わりに遷移線ST38〜ST41が追加されている。
【0143】
遷移線ST38は、前進加速状態から後退加速状態への遷移線であり、遷移線ST39は、前進減速状態から後退加速状態への遷移線である。いずれの遷移線ST38、ST39も、前進加速状態又は前進減速状態において、グリップハンドル26R(
図1〜
図2B参照)の操作量(位置)が中立領域(
図3参照)よりもP2方向側となった際に、後退加速状態への状態遷移が行われる。
【0144】
遷移線ST40は、後退減速状態から前進減速状態への遷移線である。この場合、後退減速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域に戻され、且つ、飛行体10(
図1及び
図5参照)の速度が前進方向に0よりも大きい場合に、前進減速状態への状態遷移が行われる。
【0145】
例えば、前進加速状態で飛行体10が前方に飛行している場合に、搭乗者18がグリップハンドル26Rの操作量(位置)を中立領域のP2方向側の範囲に戻すと、飛行体10は、後退加速状態に遷移し、後退方向に飛行する。その後、搭乗者18がグリップハンドル26RをP1方向側に戻して、グリップハンドル26Rの操作量が中立領域になると、飛行体10は、後退減速状態に遷移して飛行する可能性がある。この場合、搭乗者18は、グリップハンドル26Rの操作量を中立領域に戻しているので、飛行体10を減速させる意図があると考えられる。そのため、飛行体10を前方に傾けつつ後退減速状態にしても、依然として後方への飛行が継続される。このような場合には、速やかに飛行体10を前進減速状態に遷移させる。
【0146】
遷移線ST41は、前進減速状態から後退減速状態への遷移線である。この場合、前進減速状態において、グリップハンドル26Rの操作量(位置)が中立領域に戻され、且つ、飛行体10の速度が後退方向に0よりも大きい場合に、後退減速状態への状態遷移が行われる。
【0147】
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る飛行体10及びその制御方法では、飛行体10が、搭乗者18が操作するグリップハンドル26R又はレバー100、102(操作部)と、搭乗者18によるグリップハンドル26R又はレバー100、102の操作に基づき空中での飛行を制御するフライトコントローラ(制御部)80とを有する。
【0148】
この場合、グリップハンドル26R又はレバー100、102は、中立位置に対してP1方向(第1の操作方向)、又は、中立位置に対してP1方向とは異なるP2方向(第2の操作方向)に操作され、中立位置を中心としたP1方向及びP2方向への所定範囲が中立領域に設定されている。
【0149】
また、フライトコントローラ80は、中立位置からP1方向へのグリップハンドル26R又はレバー100、102の操作量に応じて、飛行体10を前進方向(第1の移動方向)に移動させ、一方で、中立位置からP2方向へのグリップハンドル26R又はレバー100、102の操作量に応じて、飛行体10を前進方向とは異なる後退方向(第2の移動方向)に移動させる。さらに、フライトコントローラ80は、P1方向又はP2方向に操作されたグリップハンドル26R又はレバー100、102の位置が中立領域に変位した場合、飛行体10を減速させる。
【0150】
これにより、飛行体10の飛行中、グリップハンドル26R又はレバー100、102の位置が中立領域に変位すれば、飛行体10が減速するため、該飛行体10の速度を速やかに0、すなわち、ホバリング状態にすることが可能となる。これにより、簡単な構成で、緊急時のフェールセーフを実現することが可能となる。
【0151】
この場合、フライトコントローラ80は、搭乗者18がグリップハンドル26R又はレバー100、102をP1方向又はP2方向から中立領域に操作したときに、飛行体10を減速させる。このように、搭乗者18がグリップハンドル26R又はレバー100、102を操作して減速の意思を示している場合に、飛行体10を減速させるので、搭乗者18の意思に応じて、飛行体10を適切に飛行させることが可能となる。
【0152】
また、フライトコントローラ80は、グリップハンドル26R又はレバー100、102が搭乗者18と非接触状態になることに伴い、グリップハンドル26R又はレバー100、102の位置が中立領域に変位したときに、飛行体10を減速させてもよい。これにより、搭乗者18が不意に右手25Rを離したときに、飛行体10を減速させてホバリング状態に遷移させることができる。この結果、容易且つ簡単にフェールセーフを実現することができる。
【0153】
さらに、フライトコントローラ80は、P1方向又はP2方向から中立領域へのグリップハンドル26R又はレバー100、102の戻り量、戻り速度又は戻り加速度に応じて飛行体10の減速度を決定すればよい。これにより、戻り量、戻り速度又は戻り加速度が大きいほど、減速度を大きくする等、搭乗者18の意思に応じて、飛行体10を的確に減速させることができる。
【0154】
さらにまた、フライトコントローラ80は、中立領域でのグリップハンドル26R又はレバー100、102の操作量又は位置に応じて、飛行体10の減速度を決定してもよい。これにより、搭乗者18がグリップハンドル26R又はレバー100、102の操作量又は位置を中立領域に戻したときに、飛行体10を確実に減速させることができる。
【0155】
この場合、フライトコントローラ80は、中立領域でのグリップハンドル26R又はレバー100、102の操作量が小さい程、又は、中立領域でのグリップハンドル26R又はレバー100、102の位置が中立位置に近い程、飛行体10の減速度を大きくすればよい。これにより、飛行体10の減速に伴う搭乗者18の違和感が緩和され、搭乗者18は、二輪車等の車両と同様の感覚で飛行体10を操縦することが可能となる。
【0156】
また、P1方向及びP2方向は、中立位置を中心として互いに逆方向であり、飛行体10の進行方向である前進方向及び後退方向が互いに逆方向である。これにより、搭乗者18は、違和感なくグリップハンドル26R又はレバー100、102を操作して飛行体10を飛行させることができる。
【0157】
この場合、グリップハンドル26Rは、搭乗者18が把持した状態で、中立位置を中心にP1方向又はP2方向に回動され、一方で、レバー100、102は、中立位置を中心にP1方向又はP2方向に操作される。これにより、搭乗者18は、グリップハンドル26R又はレバー100、102を容易に操作して、飛行体10を飛行させることができる。
【0158】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。