(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986638
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】パッケージ型流体機械
(51)【国際特許分類】
F04B 41/00 20060101AFI20211213BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
F04B41/00 A
F04B39/12 G
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-546614(P2020-546614)
(86)(22)【出願日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2018033908
(87)【国際公開番号】WO2020054006
(87)【国際公開日】20200319
【審査請求日】2020年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史紀
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広明
(72)【発明者】
【氏名】岡 大地
(72)【発明者】
【氏名】山本 明弘
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−161654(JP,A)
【文献】
特開2005−061070(JP,A)
【文献】
特開2014−211119(JP,A)
【文献】
特開2012−127224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/00
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部を有する圧縮機ユニットと、
内部に前記圧縮機ユニットを配置した筐体と、
前記筐体の前面を構成する前面パネルと、
前記圧縮機ユニットを前面に引き出す引き出し機構と、
正面に配置され、操作を受付ける操作パネルと、
前記操作パネルの横方向の端部側に支持軸を有し、前記操作パネルを、前記支持軸の回りに移動できる支持機構とを有し、
前記操作パネルの移動により、前記圧縮機ユニットの引き出しを可能とすることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記前面パネルは、複数のパネルからなることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項3】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記前面パネルは、保持機構により保持されることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項4】
請求項3に記載のパッケージ型流体機械において、
前記保持機構は、ネジもしくは、マグネットであることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項5】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記圧縮機ユニットは、縦方向に複数段配置されていることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項6】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記操作パネルは、長方形状であり、
前記操作パネルの短辺に前記支持軸を配置したことを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項7】
請求項5に記載のパッケージ型流体機械において、
最上段の前記圧縮機ユニットを取り出す場合に、
前記支持機構は、前記前面パネルに対して略垂直な方向に前記操作パネルを保持できることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項8】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記圧縮機ユニットは、前記圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータとを有することを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項9】
請求項8に記載のパッケージ型流体機械において、
前記圧縮機ユニットは、前記圧縮部と前記モータとが結合された一体型であることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項10】
請求項9に記載のパッケージ型流体機械において、
前記圧縮部は、前記モータに対して、前面側に配置されたことを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項11】
請求項8に記載のパッケージ型流体機械において、
アフタークーラ、ドライヤを有し、
前記圧縮機ユニットは、前面から背面に向かって、前記圧縮部と前記モータ、冷却ファンが配置され、
前記操作パネルの移動により、前記圧縮機ユニットおよび前記アフタークーラ、前記ドライヤのメンテナンスを可能とすることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項12】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記支持機構は、
ヒンジを有することを特徴とするパッケージ型流体機械。
【請求項13】
請求項1に記載のパッケージ型流体機械において、
前記支持機構は、
前記操作パネルを、横方向に移動可能であることを特徴とするパッケージ型流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ型流体機械に関し、特に、操作パネルを備えたパッケージ型流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインでの動力源や、工作機、プレス機、エアブローなどのエア源、として利用される圧縮気体を生成する気体圧縮機などの流体機械が知られている。流体機械は、ケーシングによって構成される圧縮室内で気体を圧縮する圧縮部を備え、圧縮された気体は吐出口から吐出配管を介して気体タンクに吐出させる構成となっている。
【0003】
また、圧縮部と、それを駆動するモータや、制御回路、操作パネル等を一体としてパーケージに収め、省スペース化を図ったパッケージ型気体圧縮機がある。このようなパッケージ型流体機械においては、圧縮部の部品交換や、グリースの補給等の定期的なメンテナンスが必要である。
【0004】
パッケージ型流体機械に関する特許文献1には、防音箱の側面の一部を、防音箱の外側に向けて上方から下方に開く開閉部とし、その開閉部に操作パネルを配置することで、操作パネルの裏側に配置された制御基板などのメンテナンス作業を容易に行うことが出来るパッケージ型流体機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−144928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような、省スペース化を図ったパッケージ型流体機械において、圧縮部のメンテナンスをするために、筐体から圧縮部を取り出しやすくすることが望ましい。
【0007】
一方、筐体に設けた制御回路などを操作する操作パネルは、使用者が操作、もしくは目視しやすい高さに配置されることになる。その上、操作パネルについては、筐体内に格納された圧縮部を、メンテナンスをしやすい構造が望まれる。
【0008】
特許文献1におけるパッケージ型流体機械は、操作パネル自体をメンテナンスする場合には、有効である。しかし、操作パネルに配置した開閉部は、上下に移動可能な構成であるが前面の幅方向は固定されており、開閉部を下方に移動させて開いたとしても、筐体から圧縮部を取り出す際には、開閉部が障害となってしまう。
【0009】
つまり、特許文献1におけるパッケージ型流体機械は、パッケージ型流体機械における圧縮部のメンテナンスを容易にすることについては、十分に配慮されてはいないと考える。
【0010】
本発明の目的は、圧縮部を取り出してメンテナンスをするのが容易なパッケージ型流体機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい一例は、流体を圧縮する圧縮部を有する圧縮機ユニットと、内部に前記圧縮機ユニットを配置した筐体と、前記筐体の前面を構成する前面パネルと、操作を受付ける操作パネルと、前記操作パネルの横方向の端部側に支持軸を有し、前記操作パネルを、前記支持軸の回りに移動できる支持機構とを有し、前記移動により前記圧縮部の取り出しを可能とするパッケージ型流体機械である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧縮部を取り出してメンテナンスをするのが容易なパッケージ型流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1におけるパッケージ型流体機械の正面図である。
【
図2】実施例1におけるパッケージ型流体機械の正面から見た内部構成を示す図である。
【
図3】実施例1におけるパッケージ型流体機械の内部構成を示す斜視図である。
【
図4】実施例1における操作パネルと支持機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、実施例1におけるパッケージ型流体機械100の正面図である。パッケージ型流体機械100の筐体の一部を構成する前面パネル12は、ネジなどの保持機構を用いて、前面パネル以外の筐体に、着脱することが可能となっている。
【0016】
また、パッケージ型流体機械100の正面には、パッケージ型流体機械100を操作する操作パネル11が配置される。
【0017】
前面パネル12は、操作パネルを配置する位置を除いて、パッケージ型流体機械100の前面を覆うパネルであり、前面パネル12を取り外すことで、内部の部品などのメンテナンスをすることができる。前面パネル12を、着脱するようにすることで、ドア式にした場合に比べて、横方向の作業をする空間を広くできる。
【0018】
操作パネル11は、使用者が操作する電源スイッチや、異常の警告などを示す表示領域を備え、操作パネルの裏側には、モータを制御するインバータなどと接続するケーブルが配置されている。
【0019】
図2は、前面パネルを取り外したパッケージ型流体機械100の正面図を示す。
【0020】
実施例1のパッケージ型流体機械100は、3段の圧縮機ユニット2101、2102、2103を備える。
【0021】
各圧縮機ユニット21は、
図5に示すように、圧縮部51と、モータ52と、冷却ファン53を有する構成である。
【0022】
実施例1では、圧縮部51の圧縮方式として、固定スクロールと旋回スクロールとの間で圧縮室を構成し、旋回運動によって空気を圧縮するスクロール圧縮機を例に説明する。
【0023】
圧縮部51は、上下にフィルタ22を備え、圧縮する空気をフィルタ22から導入する。圧縮部51にて圧縮された空気は、圧縮された空気を冷却する1次アフタークーラ、2次アフタークーラ、ドライヤを備える筐体を通り、圧縮空気として外部の空気タンクに供給される。
【0024】
図3は、実施例1におけるパッケージ型流体機械100の内部構成を示す斜視図である。
【0025】
各圧縮機ユニット2101、2102、2103を載せる台座を備えた引き出し機構33が備えられている。メンテナンスをする場合に、引き出し機構33を用いて、前面に、各圧縮機ユニット2101、2102、2103を引き出したり、押し込んだりすることができる構成である。ここで、引き出し機構33は、台座と、レール、キャスタなどから構成できる。
【0026】
最上段の圧縮機ユニット2101を引き出す際に、正面に配置した操作パネル11は、邪魔になる。そこで、操作パネル11の支持機構の支持軸により、前面側に回転させることで、パッケージ型流体機械100の横方向を長くすることなく、パッケージ型流体機械100がコンパクトな形状であっても、各圧縮機ユニット2101、2102、2103のメンテナンスを容易にできる。
【0027】
1次アフタークーラを冷却する空気は、冷却ファン53から送風され、圧縮部51を冷却し、排気ダクト31から排気される。排気ダクト31は、圧縮機ユニット2101、2102、2103を配置した機械室の、前面から見て左側の前面側に配置される。
【0028】
排気ダクト31の背面側には、圧縮機ユニット2101、2102、2103に対応して、3段に分かれたインバータ室34が配置されており、各インバータ室34には、モータ52を制御するインバータが配置される。
【0029】
各圧縮機ユニット2101、2102、2103は、前面側から背面方向に向かって、圧縮部51、モータ52、冷却ファン53を配置している。メンテナンスの頻度が高い圧縮部51を、前面側に配置しているため、圧縮部51のメンテナンスの作業を容易にすることができる。
【0030】
図4は、パッケージ型流体機械100から取り出した操作パネル11と、その支持機構42を示す図である。
【0031】
図4(a)は、通常の操作をする際の操作パネル11と支持機構42の状態を示す図であり、
図4(b)は、圧縮機ユニット2101、2102、2103などのメンテナンスをする場合における操作パネル11と支持機構42の状態を示す図である。
【0032】
支持機構42には支持軸41を設けている。支持軸41は、長方形の操作パネル11の短辺のうち、パッケージ型流体機械100の端部側である右側に配置している。支持軸41の回りに回転できるようにヒンジ機構とすることにより、横方向43の端部側に、操作パネル11を移動して保持することができる構造となっている。
【0033】
図4(b)に示すように、操作パネル11を、パッケージ型流体機械100の前面に対して略垂直(垂直も含む)に移動させることで、最上段の圧縮機ユニット2101を容易に引き出すことができる。さらに、右側に、2次アフタークーラ、ドライヤを配置する場合には、2次アフタークーラ、ドライヤのメンテナンスも、圧縮部やモータを有する圧縮機ユニット2101、2102、2103のメンテナンスと同時に作業をすることができる。
【0034】
圧縮機ユニット2101をメンテナンスする際には、作業を容易にするため、操作パネル11を、パッケージ型流体機械100の前面に対して90度以上移動させることもできる。
【0035】
図5は、圧縮機ユニット21を説明するための図である。圧縮機ユニット21は、圧縮部51と、モータ52と、冷却ファン53を有する構成である。本実施例では、圧縮部51は、スクロール圧縮機であり、モータ52は、アキシャルギャップ型モータとしている。
【0036】
本実施例の圧縮機ユニット21は、モータ52と圧縮部51とは結合され、モータ一体型の圧縮機ユニットを構成している。モータ52は、円板状に配置された回転子と固定子が対向して回転する構造のアキシャルギャップ型モータとすることで薄型化が可能である。さらに、透磁率が高く鉄損が小さい材料であるアモルファスを固定子鉄心として用いることでモータ52の高効率化が可能であり、さらに小型化が可能となる。
【0037】
モータ52により回転される回転軸54の端部側には、冷却ファン53が設置されている。冷却ファン53は、回転軸54に装着された回転羽根が、樹脂製のファンカバー内に収容された構造である。
【0038】
冷却ファン53は、回転軸54により駆動された回転羽根の回転により、冷却ファンの側面から流入した外気を、吸込んで、冷却風を発生させる、冷却ファンである。
【0039】
回転羽根の回転によりファンカバー内部に発生した冷却風は、各圧縮機ユニット21の側面に設けた冷却ダクトを通って、圧縮部51であるスクロール圧縮機の固定スクロール又は旋回スクロールに供給される。
【0040】
本実施例では、各圧縮機ユニット2101、2102、2103を引き出してメンテナンスする際に、操作パネルを支持機構により、引き出す場合に障害とならないように、移動させことができるため、各圧縮機ユニット2101、2102、2103のメンテナンスを容易にすることができる。
【0041】
また、アフタークーラ、ドライヤなどの各圧縮機ユニット2101、2102、2103以外の部品のメンテナンスをする際にも、操作パネルが障害にならないように、移動できることで、メンテナンスを容易にすることができる。
【0042】
前面パネル12は、一枚の場合に限らず、複数に分割してもよい。前面パネル12を上下の2枚に分割した場合には、操作パネル11用の開口を備えた上側の前面パネル12は、下側の前面パネル12に比べて、縦方向の長さを短くして、上側の前面パネル12の方を軽くするよう分割する。上側の前面パネル12は、作業者の上半身以上の高さに位置し、前面パネル12の脱着時に、力が必要になるためである。
【0043】
前面パネル12は、左右で2分割するように分割してもよい。その場合は、両者の前面パネル12の横幅は、等しくする方が、前面パネルを脱着する際に、作業しやすい。
【0044】
前面パネル12を、パッケージ型流体機械100の筐体に保持する保持機構としては、ネジもしくはマグネットを用いる。
【0045】
前面パネル12を上下の2つに分割した場合には、操作パネル11のメンテナンスを容易にするために、上側の前面パネル12を、マグネットで保持するようにしてもよい。また、複数段の圧縮機ユニット2102、2103が、誤って飛び出さないように、下側の前面パネル12は、ネジで保持するようにしてもよい。
【0046】
上記の実施例では、操作パネル11を、前面から見て、パッケージ型流体機械100の右側の端部に配置したが、左側の端部に配置し、ヒンジを、操作パネル11の短辺の左側に配置してもよい。
【0047】
上記の実施例では、圧縮部51は、スクロール圧縮機で、モータ52は、アモルファスを固定子鉄心として用いたアキシャルギャップ型モータとして説明した。それらに限ることなく、圧縮部51は、スクロール圧縮機以外、例えば、レシプロ圧縮機などの他の圧縮機であってもよい。また、モータとしては、例えば、ラジアルギャップ型モータなどの他の構成のモータを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
11:操作パネル、12:前面パネル、
21、2101、2102、2103:圧縮機ユニット、
41:支持軸、42:支持機構、51:圧縮部、52:モータ、53:冷却ファン、
100:パッケージ型流体機械