(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記回転体カバー(55)は前記回転軸線(Rx)に同軸に円を描く筒形状に形成され、前記導風口(88)は、前記回転軸線(Rx)を含む水平面(HP)よりも下側に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両のパワーユニット。
請求項1または2に記載の鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記回転体カバー(55)は、前記回転軸線(Rx)回りで全周にわたって連続する壁体(82)を有することを特徴とする鞍乗り型車両のパワーユニット。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記回転体カバー(55)には、前記導風口(88)に配置されて、前記回転軸線(Rx)に対して放射状に延びる整流板(88a)が形成されることを特徴とする鞍乗り型車両のパワーユニット。
請求項4に記載の鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記整流板(88a)は前記回転軸線(Rx)回りで等間隔に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両のパワーユニット。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記回転体カバー(55)は樹脂製であることを特徴とする鞍乗り型車両のパワーユニット。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記回転体カバー(55)は、前記回転軸線(Rx)回りで前記回転体(72)を囲む第1体(55a)と、前記第1体(55a)に結合されて、前記周壁(82)を有する第2体(55b)とを備え、前記第1体(55a)には、前記周壁(82)で囲まれる空間から、前記第1体(55a)で囲まれる空間を仕切る網目状の仕切り(89)が形成され、前記第2体(55b)には、前記回転軸線(Rx)を含む水平面(HP)よりも上方で前記仕切り(89)に向かって突出する突起(92)が形成されることを特徴とする鞍乗り型車両のパワーユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランクケースには、ACGカバーを受け止めて、部分的にACGスターターのローターを囲む環状壁が形成される。環状壁には前方および上方で切り欠きが形成される。切り欠きからACGスターターのローターに向かって外気は線形に流入することから、ローターは効率的に冷却されるものの、外気に混ざって収容空間には異物が進入しやすい。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、クランクケースに結合されるカバーの収容空間に対して異物の流通を抑制することができる鞍乗り型車両のパワーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、回転自在にクランク軸を支持するクランクケースと、前記クランクケースの外側で前記クランク軸上に設けられ、前記クランク軸の回転軸線回りで回転する回転体と、前記クランクケースに結合されて、前記回転軸線回りで前記回転体を囲み前記回転体の収容空間を形成する回転体カバーとを備える鞍乗り型車両のパワーユニットにおいて、前記回転体カバーは、軸方向に前記回転体よりも外側で前記回転軸線回りに前記収容空間を囲む周壁を有し、前記周壁には径方向に外気を導入する導風口が設けられる。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記回転体カバーは前記回転軸線に同軸に円を描く筒形状に形成され、前記導風口は、前記回転軸線を含む水平面よりも下側に配置される。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記回転体カバーは、前記回転軸線回りで全周にわたって連続する壁体を有する。
【0009】
第4側面によれば、第1〜第3側面のいずれか1の構成に加えて、前記回転体カバーには、前記導風口に配置されて、前記回転軸線に対して放射状に延びる整流板が形成される。
【0010】
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、前記整流板は前記回転軸線回りで等間隔に配置される。
【0011】
第6側面によれば、第1〜第5側面のいずれか1の構成に加えて、前記回転体カバーは樹脂製である。
【0012】
第7側面によれば、第1〜第6側面のいずれか1の構成に加えて、前記回転体カバーは、前記回転軸線回りで前記回転体を囲む第1体と、前記第1体に結合されて、前記周壁を有する第2体とを備え、前記第1体には、前記周壁で囲まれる空間から、前記第1体で囲まれる空間を仕切る網目状の仕切りが形成され、前記第2体には、前記回転軸線を含む水平面よりも上方で前記仕切りに向かって突出する突起が形成される。
【発明の効果】
【0013】
第1側面によれば、外気は、回転体カバーの導風口から径方向に収容空間に流入し、回転軸線の軸方向に回転体に向かって進む。外気の流通経路は非線形なので、回転体に向かって異物の流通は抑制されることができる。
【0014】
第2側面によれば、導風口は水平方向よりも下向きに開口するので、上向きの導風口は排除され、乗員に向かって吸気音が放出されることは防止されることができる。
【0015】
第3側面によれば、壁体は全周にわたって連続するので、回転軸線の軸方向に負荷に対して回転体カバーの強度は増大し、強度の増大に伴って導風口の開口面積は拡大されることができる。
【0016】
第4側面によれば、外気は整流板で整流されて径方向に導入されることができる。外気の導入は良好に整流されることができる。
【0017】
第5側面によれば、整流板は回転軸線回りで等間隔に配置されるので、外気は回転軸線に向かって良好に流入することができる。
【0018】
第6側面によれば、回転体カバーは樹脂製であるので、熱くなりにくい。金属製に比べて軽量化されることができる。
【0019】
第7側面によれば、鞍乗り型車両が冠水路を走行する際に、導風口から回転体の収容空間に水が浸入しても、網目状の仕切りが落ち葉などの異物で塞がれることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。ここで、車体の上下前後左右は自動二輪車に乗車した乗員の目線に基づき規定されるものとする。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗り型車両である自動二輪車の全体像を概略的に示す。自動二輪車11は、車体フレーム12と、車体フレーム12に装着された車体カバー13とを備える。車体カバー13は、燃料タンク14を覆って燃料タンク14の後方の乗員シート15に接続されるタンクカバー16を有する。燃料タンク14に燃料は貯留される。自動二輪車11の運転にあたって乗員は乗員シート15を跨ぐ。乗員シート15には、運転者のほか、タンデム乗車の乗員(以下「タンデム乗員」という)が着座することができる。
【0024】
車体フレーム12は、ヘッドパイプ17と、ヘッドパイプ17から後ろ下がりに延びて、後下端にピボットフレーム18を有するメインフレーム19と、メインフレーム19の下方の位置でヘッドパイプ19から下方に延びるダウンフレーム21と、メインフレーム19の湾曲域19aから水平方向に後方に延びる左右のシートフレーム22と、シートフレーム22の下方でピボットフレーム18から後上がりに延びて後端で下方からシートフレーム22に結合されるリアフレーム23とを有する。リアフレーム23は下方からシートフレーム22を支える。
【0025】
ヘッドパイプ14には操向自在にフロントフォーク24が支持される。フロントフォーク24には車軸25回りで回転自在に前輪WFが支持される。フロントフォーク24の上端には操向ハンドル26が結合される。
図2に示されるように、操向ハンドル26は地面に並列に車幅方向に左右に延びる。操向ハンドル26の両端にはハンドルグリップ27が固定される。運転者は自動二輪車11の運転にあたって左右の手でそれぞれハンドルグリップ27を握る。
【0026】
図1に示されるように、車両の後方で車体フレーム12にはピボット28回りで上下に揺動自在にスイングアーム29が連結される。スイングアーム29の後端に車軸31回りで回転自在に後輪WRが支持される。前輪WFと後輪WRとの間で車体フレーム12には後輪WRに伝達される駆動力を生成するパワーユニット32が搭載される。パワーユニット32の動力は動力伝達装置33を経て後輪WRに伝達される。
【0027】
自動二輪車11は、ピボットフレーム18の前方でパワーユニット32の左右両側に配置される1対のステップ34と、ステップ34の後方に位置して、車軸31よりも前方で後輪WRの左右両側に配置される1対のタンデムステップ35とを備える。
図2に示されるように、ステップ34は、エンジン32に下方から取り付けられて車幅方向に延びる棒体36の両端にそれぞれ固定される。タンデムステップ35は、ピボット28から後方に延びて後輪WRの側方で上方に湾曲し上端でリアフレーム23に結合されるブラケット37にそれぞれ固定される。運転者は乗員シート15に跨いでステップ34に足を載せることができる。タンデム乗員は運転者の後方で乗員シート15に跨いでタンデムステップ35に足を載せることができる。
【0028】
パワーユニット32は、ダウンフレーム21およびメインフレーム19の間に配置されて、ダウンフレーム21およびメインフレーム19にそれぞれ連結されるクランクケース38と、クランクケース38の前側から上方に延びて、前傾するシリンダー軸線Cを有するシリンダーブロック39と、シリンダーブロック39の上端に結合されて、動弁機構を支持するシリンダーヘッド41と、シリンダーヘッド41の上端に結合されて、シリンダーヘッド41上の動弁機構を覆うヘッドカバー42とを備える。クランクケース38には、前側から前方に突出する上下2つのエンジンハンガー43aと、後側から後方に突出する上下2つのエンジンハンガー43b、43cとが形成される。前側のエンジンハンガー43aは、ボルトナットといった連結具44aでダウンフレーム21に連結される。後側のエンジンハンガー43b、43cは、ボルトナットといった連結具44b、44cでピボットフレーム18に連結される。クランクケース38では回転軸線Rx回りで動力が生成される。クランクケース38には、後述される交流発電機(ACG)スターターおよびスプロケットを収容する左ケースカバー45が結合される。
【0029】
図3に示されるように、シリンダーブロック39には、シリンダー軸線Cに沿ってピストン47の線形往復運動を案内するシリンダー48が区画される。ここでは、シリンダーブロック39には単一のピストン47を受け入れる単一のシリンダー48が形成される。ピストン47とシリンダーヘッド41との間に燃焼室49が区画される。シリンダーヘッド41には燃焼室49に臨む点火プラグ51が取り付けられる。カムシャフト52の回転に応じて開閉する吸気弁および排気弁の働きで燃焼室49に混合気が導入され燃焼後の排ガスは燃焼室49から排気される。
【0030】
クランクケース38は第1ケース半体38aおよび第2ケース半体38bに分割される。第1ケース半体38aおよび第2ケース半体38bは内面同士で向き合わせられる。第1ケース半体38aおよび第2ケース半体38bは合わせ面で液密に相互に結合されて協働でクランク室53を区画する。左ケースカバー45は、第1ケース半体38aの外面に結合されて、第1ケース半体38aとの間にACGスターター54を収容するACGカバー(回転体カバー)55と、第1ケース半体38aの外面に結合されて、第1ケース半体38aとの間にスプロケット56を収容するスプロケットカバー57とで構成される。
図2に示されるように、ACGカバー55およびスプロケットカバー57は、ステップ34の先端と、ハンドルグリップ27の先端と、倒立時の前輪WFの接地点とを結ぶ仮想平面VPよりも内側に配置される。
図3に示されるように、第2ケース半体38bの外面には、第2ケース半体38bとの間に後述される摩擦クラッチ58を収容するクラッチカバー59が結合される。
【0031】
クランク軸61は、第1ケース半体38aおよび第2ケース半体38bにそれぞれ嵌め込まれる玉軸受62、63に連結されるジャーナル64a、64bと、ジャーナル64a、64bの間に配置されて、クランク室53に収容されるクランク65とを備える。クランク65は、ジャーナル64a、64bに一体化されるクランクウエブ66と、クランクウエブ66を相互に連結するクランクピン67とを有する。ジャーナル64a、64bの軸心は回転軸線Rxに一致する。クランクピン67には、ピストン47から延びるコネクティングロッド68の大端部が回転自在に連結される。コネクティングロッド68はピストン47の線形往復運動をクランク軸61の回転運動に変換する。
【0032】
クランクケース38から外側に一方向に突出するクランク軸61の一端にはACGスターター54が接続される。ACGスターター54は、クランクケース38の外面に固定されるステーター71と、クランクケース38から突き出るクランク軸61の一端に相対回転不能に結合されるローター(回転体)72とを備える。ステーター71は、クランク軸61周りで周方向に配列されて、ステーターコアに巻き付けられる複数のコイル71aを有する。ローター72は、ステーター71を囲む環状の軌道に沿って周方向に配列される複数の磁石72aを有する。クランク軸61が回転すると、コイル71aに対して磁石72aが相対変位し、ACGスターター54は発電する。反対に、コイル71aに電流が流通すると、コイル71aで磁界が生成され、クランク軸61の回転が引き起こされる。ローター72には、回転時に軸方向に空気を引き込んで、収容空間内で遠心方向に気流を生成する羽根72bが設けられる。
【0033】
パワーユニット32は、クランク軸61に組み合わせられるドグクラッチ式の変速機73を備える。変速機73はクランクケース38内でクランク室53に連続して区画される変速機室74に収容される。変速機73はクランク軸61の軸心に平行な軸心を有するメイン軸75およびカウンター軸(出力軸)76を備える。メイン軸75およびカウンター軸76は転がり軸受で回転自在にクランクケース38に支持される。
【0034】
メイン軸75およびカウンター軸76には複数のミッションギア77が支持される。ミッションギア77は転がり軸受同士の間に配置されて変速機室74に収容される。ミッションギア77は、メイン軸75またはカウンター軸76に同軸に相対回転自在に支持される回転ギア77aと、メイン軸75に相対回転不能に固定されて、対応する回転ギア77aに噛み合う固定ギア77bと、メイン軸75またはカウンター軸76に相対回転不能かつ軸方向変位自在に支持されて、対応する回転ギア77aに噛み合うシフトギア77cとを含む。回転ギア77aおよび固定ギア77bの軸方向変位は規制される。軸方向変位を通じてシフトギア77cが回転ギア77aに連結されると、回転ギア77aとメイン軸75またはカウンター軸76との相対回転は規制される。シフトギア77cが他軸の固定ギア77bに噛み合うと、メイン軸75およびカウンター軸76の間で回転動力は伝達される。他軸の固定ギア77bに噛み合う回転ギア77aにシフトギア77cが連結されると、メイン軸75およびカウンター軸76の間で回転動力は伝達される。こうしてカウンター軸76は、変速機73を介して任意の減速比でクランク軸61の回転力を出力する。
【0035】
メイン軸75は、クランクケース38の外側でクランクケース38およびクラッチカバー59の間に収容される一次減速機構78を通じてクランク軸61に接続される。一次減速機構78は、動力伝達ギア78aと、メイン軸75上に相対回転自在に支持される被動ギア78bとを備える。動力伝達ギア78aは、クランクケース38から外側に突出するクランク軸61の他端に固定される。被動ギア78bは動力伝達ギア78aに噛み合う。
【0036】
メイン軸75には、クランクケース38およびクラッチカバー52の間に収容される摩擦クラッチ58が連結される。摩擦クラッチ58はクラッチアウター58aおよびクラッチハブ58bを備える。クラッチアウター58aに一次減速機構78の被動ギア78bは連結される。クラッチレバーの操作に応じて摩擦クラッチ58ではクラッチアウター58aおよびクラッチハブ58bの間で連結および切断が切り替えられる。
【0037】
カウンター軸76にスプロケット56は固定される。動力伝達装置33は、スプロケット56と、後輪WRの車軸31に固定される被動スプロケットと、スプロケット56および被動スプロケットに巻き掛けられる巻き掛けチェーン79とを備える。スプロケット56は、巻き掛けチェーン79を介して後輪WRにカウンター軸76の回転力を伝達する。
【0038】
ACGカバー55は、回転軸線Rx回りでACGスターター54のローター72を囲む内側周壁81aと、回転軸線Rxの軸方向にACGスターター54のローター72よりも外側で回転軸線Rx回りにACGスターター54の収容空間を囲む外側周壁81bとを有する。
図4に示されるように、内側周壁81aおよび外側周壁81bは回転軸線Rxに同軸に円を描く筒形状に形成される。外側周壁81bは回転軸線Rx回りで全周にわたって連続する壁体82を有する。
【0039】
ACGカバー55には、内側周壁81aよりも径方向外側に配置されてクランクケース38の外面に重ねられ、ボルト83でクランクケース38に締結される取り付けボス84が形成される。ACGカバー55は、内側周壁81aから後方に延びる箱形状の拡張体85でスプロケットカバー57に連結される。スプロケットカバー57には、スプロケット56の上下位置で、クランクケース38にスプロケットカバー57を締結するねじ86を収容する窪み87が形成される。窪み87の底板は、クランクケース38の外面に重ねられ、クランクケース38にねじ込まれるねじ86の頭を受け止める。
【0040】
外側周壁81bには径方向に外気を導入する導風口87が設けられる。導風口87は、回転軸線Rxを含む水平面HPよりも下側に配置される。外側周壁81bには、導風口87に配置されて、回転軸線Rxに対して放射状に延びる整流板88aが形成される。整流板88aは回転軸線Rx回りで等間隔に配置される。
【0041】
図5に示されるように、ACGカバー55は、取り付けボス84(
図4参照)を有してクランクケース38に固定され、内側周壁81aを形成する内側部材(第1体)55aと、内側部材55aに結合されて、外側周壁81bを有する外側部材(第2体)55bとを備える。外側部材55bは、回転軸線Rxの軸方向にローター72よりも外側で内側部材55aを覆う。
【0042】
内側部材55aには、外側周壁81bで囲まれる空間から、内側部材55aで囲まれる空間を仕切る網目状の仕切り89が形成される。
図6に示されるように、仕切り89は、円形の輪郭を有する開口91の外縁から回転軸線Rxに向かって径方向に延びる線形体89aと、開口91の円形に同心に円を描き、線形体89aを接続する円形体89bとを有する。網目の大きさは例えば1.5〜3.0cm四方程度に設定されればよい。
【0043】
図5に示されるように、外側部材55bの内面には、回転軸線Rxを含む水平面HPよりも上方で仕切り89に向かって突出する複数の突起92が形成される。突起92は例えば回転軸線Rxに平行な軸心を有する棒体で構成される。突起92は、例えば回転軸線Rxに同心に描かれる円弧に沿って配列される。
【0044】
内側部材55aは外側部材55bよりも高い剛性を有する素材から形成される。ここでは、内側部材55aおよび外側部材55bはともに樹脂材から成型される。内側部材55aは例えばポリアミド66(PA66樹脂)から成型される。外側部材55bは例えばポリプロピレン(PP樹脂)から成型される。
【0045】
内側部材55aは、外側周壁55bの壁体82に囲まれて、先端にいくにつれて径方向に縮小する接続端93を有する。接続端93は、外側周壁81bに向き合って先端にいくにつれて径方向に縮小する第1壁93aと、第1壁93aの先端から回転軸線Rxに向かって広がる第2壁93bと、第2壁93bの内側からクランクケース38に向かって広がって、第1壁93aとの間に空間を形成する第3壁93cとを有する。第3壁93cの内側に開口91は区画される。内側周壁81a、第1壁93a、第2壁93bおよび第3壁93cは均一な壁厚で連続する。
【0046】
図6に示されるように、接続端93と外側部材55bとの間には相互に係合する1以上の係合機構94が配置される。
図7も併せて参照し、係合機構94は、接続端93に形成されて、径線上に延びる2つの溝94aと、外側部材55bに形成されて、径線上に広がって個々に溝94aに進入する2つの板片94bとを備える。ここでは、溝94aは回転軸線Rx回りに120度未満の間隔で配置される。その他、溝94aは例えば周方向に等間隔以外の間隔で配置されればよい。溝94aが等間隔以外の間隔で配置されれば、溝94aと板片94bとの対応関係が確実に決まるので、外側部材55bは誤りなく回転軸線Rx回りに規定の角位置で内側部材55aに重ねられることができる。溝が外側部材55bに形成されて板片が内側部材55aに形成されてもよい。
【0047】
図5に示されるように、外側部材55bには、内側部材55aの内方から内側部材55aを貫通するねじ95がねじ込まれるボス96が形成される。ボス96は、接続端93に区画される窪み93dに軸方向外側から進入して、先端で窪み93dの底板に受け止められる。ねじ95は窪み93dの底板にボス96を締結する。ねじ95は回転軸線Rxに平行な軸心を有する。
図6に示されるように、ボス96は回転軸線Rx回りに120度の等間隔で配置される。
【0048】
図5に示されるように、壁体82の縁(端面)と内側部材55aとの間には隙間が形成される。そして、ねじ95の頭は、ローター72のうち、羽根72bに外接する円筒面によりも外側で回転軸線Rx回りに途切れなく連続する面72cに向き合う。羽根72bは、面72cよりも小さい径を有して面72c内側の凹み内でローター72に締結される部材に形成される。
【0049】
内側部材55aの周壁(内側周壁81a)には、ACGスターター54の収容空間と、スプロケットカバー57で覆われる空間との間で上下に広がって両者を隔てる隔壁97が形成される。隔壁97の下端には排風口98が形成される。
図8に示されるように、内側周壁81aは、ローター54の回転方向DRに排風口98に近づくにつれて径方向にローター54の外周から遠ざかる。
【0050】
スプロケットカバー57は、クランクケース38の外面との間に、排風口98から所定長さで延びる排風通路99を区画する。スプロケットカバー57は、スプロケット56を収容する空間から排風通路99を仕切る仕切り壁101を有する。仕切り壁101と外壁102との間に排風通路99は区画される。
【0051】
排風通路99は、ローター54に同軸にローター54を囲む仮想円筒面の接線方向に沿って、ローター54の回転方向に下流に向かって延びる。排風通路99は、スプロケット56の下方位置で車体後方に向かって延びる。排風通路99は、車体後方にいくにつれて地面に向かって低下するように傾斜する。排風通路99の出口99aは、エンジンハンガー43cに固定される連結具44cに向き合わせられる。排風通路99の出口99aでは、仕切り壁101に向き合うスプロケットカバー57の外壁が仕切り壁101に向かって上向きに折り返される。折り返しは下方から排風通路99に対して異物の進入を阻害することができる。排風口98では、スプロケットカバー57の外壁に上からACGカバー55の外壁が重ねられる。
図1から明らかなように、排風通路99の出口99aはステップ34よりも後方に配置される。排風通路99の出口99aはタンデムステップ35に下方から外接する水平面ZPよりも低い位置に位置する。
【0052】
図5に示されるように、ACGカバー55の内側部材55aは、回転軸線Rxに直交する平面で形成される合わせ面103でクランクケース38に接触する。内側部材55aには、合わせ面103の外周から突出してクランクケース38の外面に被さる止水壁104が形成される。
図9に示されるように、止水壁104は回転軸線Rxよりも前方および上方に配置される。止水壁104は、隔壁97の上端から前方に合わせ面103に沿って連続し、回転軸線Rxを含む水平面HPよりも低い位置で途切れる(
図6参照)。
【0053】
次に本実施形態の動作を説明する。燃焼室49内で混合気が爆発すると、シリンダー48内でピストン47の往復線形運動が引き起こされる。ピストン47の往復線形運動に応じてクランク軸61は回転する。その結果、ACGスターター54のローター72はステーター71に対して相対的に変位する。ACGスターター54は発電する。
【0054】
ローター72の回転に応じて羽根72bは遠心方向に気流を生成する。気流の生成にあたって、外側部材55bの導風口87から接続端93の第2壁93bに沿って径方向に外気はACGスターター54の収容空間に流入する。外気は収容空間内で回転軸線Rxの軸方向にローター72に向かって進む。外気の流通経路は非線形なので、ローター72に向かって異物の流通は抑制されることができる。外気は開口91から内側部材55aの内部空間に流入する。外気はACGスターター54の収容空間内でACGスターター54を冷却する。
【0055】
羽根72bの回転で遠心方向に誘導される冷却風は排風口98から外側に流出し、排風通路99に沿ってステップ34の後方まで案内される。排風の経路は運転者の足を回避することができる。運転者の足は排風の影響に曝されずに済む。
【0056】
パワーユニット32の始動時には、ACGスターター54のコイル71aに電流が供給されると、コイル71aと磁石72aとの間で相対変位が生み出される。こうしてACGスターター54ではローター72は回転する。ローター72の回転はクランク軸61の回転を引き起こす。ローター72の回転に応じて羽根72bは遠心方向に気流を生成する。外気は開口91から内側部材55aの内部空間に流入する。外気はACGスターター54の収容空間内でACGスターター54を冷却する。ACGスターター54の発熱で温風は生成される。温風は排風通路99に沿ってステップ34の後方まで案内される。排風の経路は運転者の足を回避することから、運転者の足はACGスターター54からの温風に曝されずに済む。
【0057】
本実施形態ではACGカバー55は回転軸線Rxに同軸に円を描く筒形状に形成される。そして、導風口88は、回転軸線Rxを含む水平面HPよりも下側に配置される。こうして導風口88は水平方向よりも下向きに開口するので、上向きの導風口は排除され、乗員に向かって吸気音が放出されることは防止される。
【0058】
ACGカバー55の外側部材55bは、回転軸線Rx回りで全周にわたって連続する壁体82を有する。壁体82は全周にわたって連続するので、回転軸線Rxの軸方向に負荷に対して外側部材55bの強度は増大し、強度の増大に伴って導風口88の開口面積は拡大されることができる。
【0059】
ACGカバー55には、導風口88に配置されて、回転軸線Rxに対して放射状に延びる整流板88aが形成される。外気は整流板88aで整流されて径方向に導入される。外気の導入は良好に整流されることができる。加えて、整流板88aは回転軸線Rx回りで等間隔に配置されることから、外気は回転軸線Rxに向かって良好に流入することができる。
【0060】
本実施形態に係るパワーユニット32ではACGカバー55は樹脂製である。ACGカバー55は樹脂製であるので、熱くなりにくい。ACGカバー55は金属製に比べて軽量化されることができる。
【0061】
本実施形態では、ACGカバー55は、回転軸線Rx回りでACGスターター54のローター72を囲む内側部材(第1体)55aと、内側部材55aに結合されて、外側周壁81bを有する外側部材(第2体)55bとを備える。このとき、内側部材55aには、外側周壁81bで囲まれる空間から、内側部材55aで囲まれる空間を仕切る網目状の仕切り89が形成される。外側部材55bには、回転軸線Rxを含む水平面HPよりも上方で仕切り89に向かって突出する突起92が形成される。自動二輪車11が冠水路を走行する際に、導風口88からACGスターター54の収容空間に水が浸入しても、網目状の仕切り89が落ち葉などの異物で塞がれることを防止する。
【0062】
なお、パワーユニット32には、前述の4ストロークの単気筒内燃機関に代えて、並列置きや水平対向、V型といった複数気筒の内燃機関が用いられてもよく、同様な2ストロークの内燃機関が用いられてもよい。