特許第6986640号(P6986640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986640非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986640
(24)【登録日】2021年12月1日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20211213BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20211213BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20211213BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20211213BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01M50/451
   H01M50/423
   H01M50/434
   H01M50/443 M
   H01M50/446
   H01M50/443 B
   H01M50/457
   H01M50/489
   H01M50/491
   H01M50/426
   H01M50/42
   B32B5/24 101
   B32B7/12
   H01M50/443 E
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2020-552048(P2020-552048)
(86)(22)【出願日】2020年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2020021912
(87)【国際公開番号】WO2020246497
(87)【国際公開日】20201210
【審査請求日】2020年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2019-104514(P2019-104514)
(32)【優先日】2019年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 勧
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
【審査官】 佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−023186(JP,A)
【文献】 特開2008−243805(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030507(WO,A1)
【文献】 特表2018−530860(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/151144(WO,A1)
【文献】 特許第6513893(JP,B1)
【文献】 特開2001−240460(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/123798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40−50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、バインダ樹脂である全芳香族ポリアミド、及び平均一次粒径が0.01μm以上0.20μm以下である無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、
前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、
を備えた非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記非水系二次電池用セパレータを150℃で1時間熱処理したときのMD方向及びTD方向の熱収縮率が10%以下である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記非水系二次電池用セパレータを130℃で1時間熱処理したときのMD方向とTD方向の熱収縮率が6%以下である、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記耐熱性多孔質層の空孔率が30%〜70%である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が、耐熱性多孔質層の全質量に対して、50質量%〜90質量%である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記無機粒子が、マグネシウム系粒子およびバリウム系粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項7】
前記バインダ樹脂である全芳香族ポリアミドが、メタ型全芳香族ポリアミドである、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項8】
前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項9】
前記耐熱性多孔質層は、単位面積当たりの質量が両面合計で2.0g/m〜10.0g/mである、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項10】
前記耐熱性多孔質層は、片面当たりの厚みが0.5μm〜4.0μmである、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項11】
前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL〜300秒/100mLである、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項12】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、カムコーダ等の携帯型電子機器の電源として広く用いられている。また、リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、電力貯蔵用や電動車両用の電池としての適用が検討されている。
【0003】
非水系二次電池の普及にともない、安全性と安定した電池特性を確保することがますます求められている。安全性と安定した電池特性を確保するための具体的方策としては、セパレータの耐熱性を高めること、及び、電極とセパレータとの接着性を高めることが挙げられる。
【0004】
耐熱性を高めたセパレータとして、無機粒子及び耐熱性樹脂の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層を備えたセパレータが知られている。電極との接着性を高めたセパレータとして、電極に対する接着性を有する樹脂を含有する接着層を備えたセパレータが知られている。例えば、以下の特許文献1〜7に開示されているセパレータは、耐熱性多孔質層と接着層とを両方備えている。
特許文献1:特許第5971662号公報
特許文献2:特許第5976015号公報
特許文献3:特許第5946257号公報
特許文献4:特許第6112115号公報
特許文献5:国際公開第2013/151144号
特許文献6:特開2013−20769号公報
特許文献7:特許第6513893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のような耐熱性多孔質層と接着層を両方備えたセパレータにおいては、層数が多いためセパレータ全体として膜厚が大きくなる傾向がある。電池のエネルギー密度の向上という観点では、セパレータは、より薄膜化されることが望ましい。一方で、セパレータの薄膜化のために耐熱性多孔質層を薄く形成することが考えられる。しかしながら、耐熱性多孔質層を薄く形成すると、セパレータの耐熱性が低下してしまう傾向がある。このように、耐熱性多孔質層と接着層とを両方備えたセパレータにおいては、セパレータの薄膜化と耐熱性とは互いにトレードオフの関係にあり、これらを如何に両立させるかが技術的な課題となっている。
【0006】
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、耐熱性多孔質層と接着層とを備えた非水系二次電池用セパレータにおいて、薄膜化と耐熱性を両立させることが可能な非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とし、これを解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
【0008】
[1] 多孔質基材と、前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、バインダ樹脂、及び平均一次粒径が0.01μm以上0.45μm未満である無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備えた非水系二次電池用セパレータ。
[2] 前記非水系二次電池用セパレータを150℃で1時間熱処理したときのMD方向及びTD方向の熱収縮率が10%以下である、上記[1]に記載の非水系二次電池用セパレータ。
[3] 前記非水系二次電池用セパレータを130℃で1時間熱処理したときのMD方向とTD方向の熱収縮率が6%以下である、上記[1]又は上記[2]に記載の非水系二次電池用セパレータ。
[4] 前記耐熱性多孔質層の空孔率が30%〜70%である、上記[1]〜上記[3]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[5] 前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が、耐熱性多孔質層の全質量に対して、50質量%〜90質量%である、上記[1]〜上記[4]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[6] 前記無機粒子が、マグネシウム系粒子およびバリウム系粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]〜上記[5]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[7] 前記バインダ樹脂が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]〜上記[6]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[8] 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、上記[1]〜上記[7]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[9] 前記耐熱性多孔質層は、単位面積当たりの質量が両面合計で2.0g/m〜10.0g/mである、上記[1]〜上記[8]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[10] 前記耐熱性多孔質層は、片面当たりの厚みが0.5μm〜4.0μmである、上記[1]〜上記[9]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[11] 前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL〜300秒/100mLである、上記[1]〜上記[10]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
[12] 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された上記[1]〜上記[11]のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、耐熱性多孔質層と接着層とを備えた非水系二次電池用セパレータにおいて、薄膜化と耐熱性を両立した非水系二次電池用セパレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、本開示の非水系二次電池用セパレータの一実施形態を示す模式的断面図である。
図1B図1Bは、本開示の非水系二次電池用セパレータの他の一実施形態を示す模式的断面図である。
図1C図1Cは、本開示の非水系二次電池用セパレータの他の一実施形態を示す模式的断面図である。
図1D図1Dは、本開示の非水系二次電池用セパレータの他の一実施形態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において、「MD方向」とは、長尺状に製造される多孔質基材及びセパレータにおいて長尺方向(即ち、搬送方向)を意味し、「機械方向(machine direction)」ともいう。また、「TD方向」とは、「MD方向」に直交する方向を意味し、「幅方向(transverse direction)」ともいう。
【0016】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物又は層中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
なお、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0017】
本開示において、セパレータを構成する各層の積層関係について「上」及び「下」で表現する場合、基材に対してより近い層について「下」といい、基材に対してより遠い層について「上」という。
【0018】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0019】
本開示において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0020】
本開示における重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される値とする。
具体的には、ポリエチレン微多孔膜の試料をo−ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、GPC(Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム;GMH6−HTおよびGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定することでMwを得る。分子量の校正には、分子量単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いることができる。
【0021】
本開示における耐熱性樹脂とは、融点が180℃以上の樹脂、又は、融点を有さず分解温度が180℃以上の樹脂を指す。つまり、本開示における耐熱性樹脂とは、180℃未満の温度領域で溶融及び分解を起こさない樹脂である。
【0022】
<非水系二次電池用セパレータ>
本開示の非水系二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、多孔質基材と、前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、バインダ樹脂、及び平均一次粒径が0.01μm以上0.45μm未満である無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備える。
【0023】
本開示のセパレータの層構成の例を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1A図1Dはそれぞれ、本開示のセパレータの実施形態例の模式的断面図である。図1A図1Dは、主に層の積層順を説明するための模式的断面図であって、各層の構造は捨象又は単純化している。図1A図1Dにおいて、同様の機能を有する層には同じ符号を付して説明する。
【0025】
図1Aに示すセパレータ10Aは、多孔質基材20の両面に耐熱性多孔質層30が配置され、多孔質基材20と2つの耐熱性多孔質層30との積層体40の両面に接着層50が配置されたセパレータである。
【0026】
図1Bに示すセパレータ10Bは、多孔質基材20の両面に耐熱性多孔質層30が配置され、多孔質基材20と2つの耐熱性多孔質層30との積層体40の片面に接着層50が配置されたセパレータである。
【0027】
図1Cに示すセパレータ10Cは、多孔質基材20の片面に耐熱性多孔質層30が配置され、多孔質基材20と1つの耐熱性多孔質層30との積層体40の両面に接着層50が配置されたセパレータである。
【0028】
図1Dに示すセパレータ10Dは、多孔質基材20の片面に耐熱性多孔質層30が配置され、多孔質基材20と1つの耐熱性多孔質層30との積層体40の片面に接着層50が配置されたセパレータである。セパレータ10Dにおいて、接着層50は、耐熱性多孔質層30の表面に配置されている。
【0029】
更に、図示しないが、本開示のセパレータは、多孔質基材の一方面に耐熱性多孔質層が配置され、多孔質基材の他方面に接着層が配置されたセパレータであってもよい。
【0030】
−耐熱性多孔質層−
本開示における耐熱性多孔質層は、多孔質基材の上(好ましくは多孔質基材の表面)に配置された層である。耐熱性多孔質層は、多孔質基材の片面のみにあってもよく、多孔質基材の両面にあってもよい。耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面にあると、セパレータの耐熱性がより優れ、電池の安全性をより高めることができる。また、セパレータにカールが発生しにくく、電池製造時のハンドリング性に優れる。耐熱性多孔質層が多孔質基材の片面のみにあると、セパレータのイオン透過性がより優れる。また、セパレータ全体の厚みを抑えることができ、エネルギー密度のより高い電池を製造し得る。
【0031】
耐熱性多孔質層の形態例として、例えば下記の形態(a)または(b)が挙げられる。
【0032】
形態(a):
耐熱性多孔質層が、バインダ樹脂および無機粒子を含有しており、無機粒子がバインダ樹脂によって結着されている多孔質層である。
【0033】
形態(b):
耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成され、かつ、バインダ樹脂並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成され、かつ、バインダ樹脂を含有する多孔性被膜とを備える。内層は、無機粒子がバインダ樹脂により結着されており、多孔性被膜よりも径の大きな多孔質構造である。耐熱性多孔質層は全体として、いわゆるスキン−コア構造を呈する。
【0034】
−接着層−
本開示における接着層は、多孔質基材又は耐熱性多孔質層の面上に配置された層であり、セパレータの最外層として存在する。接着層は、積層体の片面のみにあってもよく、積層体の両面にあってもよい。接着層が積層体の片面のみにある場合、接着層は耐熱性多孔質層の面上に配置されていることが好ましい。接着層は、電池の正極又は負極の組成又は表面性状に合せて、積層体の片面に配置するか両面に配置するかを選択してよい。接着層が積層体の片面のみにある方が、セパレータ全体の厚みを抑えることができ、エネルギー密度のより高い電池を製造し得る。
【0035】
本開示における接着層は、接着性樹脂粒子が積層体の表面に付着してなる層である。
例えばセパレータ10A〜10Dにおいて、接着層50は、接着性樹脂粒子52が積層体40の面上に互いに隣接して多数並ぶことで層に形成された構造を有しており、また、接着性樹脂粒子52が厚み方向に重ならない単層の構造を有している。ただし、本開示における接着層の構造は、上記構造に限定されず、接着性樹脂粒子が積層体の面上に多数点在した構造を有していてもよいし、接着性樹脂粒子が厚み方向に複数個重なって2層以上の重層構造を有していてもよい。本開示における接着層は、電極への接着性により優れる観点から、接着性樹脂粒子が積層体の面上に互いに隣接して多数並んだ構造を有していることが好ましく、電池のエネルギー密度を高める観点から、接着性樹脂粒子が厚み方向に重ならない単層の構造を有していることが好ましい。
【0036】
以下、本開示のセパレータが有する多孔質基材、耐熱性多孔質層及び接着層の詳細を説明する。
【0037】
[多孔質基材]
本開示における多孔質基材は、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。
このような基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シート;などが挙げられる。本開示においては、セパレータの薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。
【0038】
多孔質基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料が好ましく、有機材料又は無機材料のいずれでもよい。
【0039】
多孔質基材は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与するため、熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。シャットダウン機能とは、電池温度が高まった際に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられ、中でもポリオレフィンが好ましい。
【0040】
多孔質基材としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(「ポリオレフィン微多孔膜」という。)が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、従来の電池セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜が挙げられ、この中から十分な力学特性とイオン透過性を有するものを選択することが好ましい。
【0041】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能を発現する観点から、ポリエチレンを含むポリエチレン微多孔膜が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜中におけるポリエチレンの含有量としては、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して、95質量%以上が好ましい。
【0042】
ポリオレフィン微多孔膜は、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜が好ましい。
【0043】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能と、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性とを備える観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン微多孔膜が好ましい。このようなポリオレフィン微多孔膜としては、ポリエチレンとポリプロピレンが1つの層において混在している微多孔膜が挙げられる。微多孔膜においては、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点から、95質量%以上のポリエチレンと5質量%以下のポリプロピレンとを含むことが好ましい。また、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点からは、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含み、少なくとも1層はポリプロピレンを含む構造のポリオレフィン微多孔膜も好ましい。
【0044】
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、重量平均分子量(Mw)が10万〜500万のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に良好な力学特性を付与できる。一方、ポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜のシャットダウン特性が良好であるし、微多孔膜の成形がしやすい。
【0045】
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出してシート化し、これを結晶化処理した後延伸し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法:流動パラフィンなどの可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し熱処理をして微多孔膜とする方法;などが挙げられる。
【0046】
繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂;セルロース;などの繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シートが挙げられる。
【0047】
多孔質基材の表面には、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液又は接着層を形成するための樹脂粒子分散液との濡れ性を向上させる目的で、多孔質基材の性質を損なわない範囲で、各種の表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0048】
−多孔質基材の特性−
多孔質基材の厚みは、電池のエネルギー密度を高める観点から、12.0μm以下が好ましく、10.0μm以下がより好ましい。また、多孔質基材の厚みは、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、3.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましい。
【0049】
多孔質基材のガーレ値(JIS P8117:2009)は、電池の短絡の抑制又は良好なイオン透過性を得る観点から、50秒/100mL〜400秒/100mLが好ましく、50秒/100mL〜200秒/100mLがより好ましい。
【0050】
多孔質基材の空孔率は、適切な膜抵抗やシャットダウン機能を得る観点から、20%〜60%が好ましい。
多孔質基材の空孔率は、下記の算出方法に従って求める。即ち、構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)は以下の式より求められる。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
【0051】
多孔質基材の突刺強度は、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、200g以上が好ましい。
多孔質基材の突刺強度は、カトーテック社KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/秒の条件で突刺試験を行って測定される最大突刺荷重(g)を指す。
【0052】
[耐熱性多孔質層]
本開示における耐熱性多孔質層は、多孔質基材の片面又は両面に設けられ、バインダ樹脂、及び平均一次粒径が0.01μm以上0.45μm未満である無機粒子を含有する。耐熱性多孔質層は、多数の微細孔を有し、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった被膜である。
【0053】
耐熱性多孔質層のバインダ樹脂の種類は、無機粒子を結着させ得るものであれば、特に制限されない。耐熱性多孔質層のバインダ樹脂は、セパレータの耐熱性向上という観点からは耐熱性樹脂が好ましい。耐熱性多孔質層のバインダ樹脂は、電解液に対して安定で電気化学的にも安定な樹脂が好ましい。バインダ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
耐熱性多孔質層のバインダ樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルイミド、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、共重合ポリエーテルポリアミド、フッ素系ゴム、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、セルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0055】
耐熱性多孔質層のバインダ樹脂は、粒子状樹脂でもよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等の樹脂粒子が挙げられる。耐熱性多孔質層のバインダ樹脂は、セルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂でもよい。耐熱性多孔質層のバインダ樹脂として粒子状樹脂又は水溶性樹脂を用いる場合は、バインダ樹脂を水に分散又は溶解させて塗工液を調製し、該塗工液を用いて乾式塗工法にて耐熱性多孔質層を多孔質基材上に形成することができる。
【0056】
耐熱性多孔質層のバインダ樹脂としては、耐熱性に優れる観点から、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む耐熱性樹脂が好ましい。中でも、耐久性の観点から、全芳香族ポリアミドが好ましい。全芳香族ポリアミドは、メタ型でもパラ型でもよい。全芳香族ポリアミドの中でも、多孔質層を形成しやすい観点および電極反応において耐酸化還元性に優れる観点から、メタ型全芳香族ポリアミドが好ましい。全芳香族ポリアミドには、少量の脂肪族単量体が共重合されていてもよい。
【0057】
耐熱性多孔質層のバインダ樹脂として用いられる全芳香族ポリアミドとしては、具体的には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド又はポリパラフェニレンテレフタルアミドが好ましく、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがより好ましい。
【0058】
耐熱性多孔質層のバインダ樹脂としては、耐熱性多孔質層と接着層との密着性という観点では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(PVDF系樹脂)が好ましい。PVDF系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン);フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体(ポリフッ化ビニリデン共重合体);ポリフッ化ビニリデンとポリフッ化ビニリデン共重合体の混合物;が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロパーフルオロプロピルエーテル、エチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。PVDF系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が60万〜300万であることが好ましい。PVDF系樹脂は、酸価が3mgKOH/g〜20mgKOH/gであることが好ましい。PVDF系樹脂の酸価は、例えば、PVDF系樹脂にカルボキシ基を導入することにより制御できる。PVDF系樹脂へのカルボキシ基の導入及び導入量は、PVDF系樹脂の重合成分としてカルボキシ基を有する単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、及びこれらのフッ素置換体)を用い、その重合比を調整することにより制御できる。
【0059】
本開示における無機粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素等の金属水酸化物の粒子;シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物の粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩の粒子;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩の粒子;などが挙げられる。無機粒子としては、電解液に対する安定性及び電気化学的な安定性の観点から、マグネシウム系粒子およびバリウム系粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む粒子が好ましい。
ここで、マグネシウム系粒子とは、マグネシウム化合物を含む無機粒子を意味し、具体的には例えば水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
バリウム系粒子とは、バリウム化合物を含む無機粒子を意味し、具体的には例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。
無機粒子は、シランカップリング剤等により表面修飾されたものでもよい。
【0060】
無機粒子の粒子形状に限定はなく、球形、楕円形、板状、針状、不定形のいずれでもよい。耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子は、電池の短絡抑制の観点から、板状の粒子、又は凝集していない一次粒子であることが好ましい。
【0061】
無機粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子の平均一次粒径は、0.01μm以上0.45μm未満であることが重要である。無機粒子の平均一次粒径が0.01μm以上であれば、粒子同士の凝集を抑制し、均一性の高い耐熱性多孔質層を形成し得る。このような観点では、無機粒子の平均一次粒径は0.05μm以上がより好ましく、0.10μm以上が更に好ましい。無機粒子の平均一次粒径が0.45μm未満であると、耐熱性多孔質層を薄膜化した構成においても耐熱性を高めることができる。この機序としては、次のように考えられる。即ち、無機粒子の粒径が小さいことにより、単位体積あたりの無機粒子の表面積(比表面積)が大きくなる。したがって、無機粒子とバインダ樹脂との接触点が多くなる。これにより、高温に曝された際の耐熱性多孔質層の収縮が抑制される。また、粒径の小さい無機粒子どうしが多数繋がることにより、高温に曝された際において、耐熱性多孔質層が破膜しにくくなると推測される。このような観点では、無機粒子の平均一次粒径は0.40μm以下がより好ましく、0.30μm以下が更に好ましく、0.20μm以下が特に好ましい。
【0063】
無機粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求める。SEM観察に供する試料は、耐熱性多孔質層の材料である無機粒子、又は、セパレータから取り出した無機粒子である。セパレータから無機粒子を取り出す方法に制限はなく、例えば、セパレータを800℃程度に加熱してバインダ樹脂を消失させ無機粒子を取り出す方法、セパレータを有機溶剤に浸漬して有機溶剤でバインダ樹脂を溶解させ無機粒子を取り出す方法などが挙げられる。
【0064】
本開示において、耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、耐熱性多孔質層の全質量に対して、50質量%〜90質量%であることが好ましい。耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は50質量%以上であれば、セパレータの耐熱性を好適に高めることができ、このような観点では55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、耐熱性多孔質が多孔質基材から剥がれにくい観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0065】
耐熱性多孔質層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。分散剤は、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に、例えば、多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
【0066】
−耐熱性多孔質層の特性−
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層の厚みは、セパレータの耐熱性又はハンドリング性の観点から、片面当たり0.5μm以上が好ましく、片面当たり0.8μm以上がより好ましく、セパレータのハンドリング性又は電池のエネルギー密度の観点から、片面当たり4.0μm以下が好ましく、片面当たり3.5μm以下がより好ましい。耐熱性多孔質層の厚みは、耐熱性多孔質層が多孔質基材の片面のみにある場合でも両面にある場合でも、両面の合計として、1.0μm以上が好ましく、1.6μm以上がより好ましく、8.0μm以下が好ましく、7.0μm以下がより好ましい。
【0067】
本開示のセパレータにおいて、耐熱性多孔質層は、単位面積当たりの質量が両面合計で2.0g/m〜10.0g/mであることが好ましい。耐熱性多孔質層の質量は、セパレータの耐熱性又はハンドリング性の観点から、両面の合計として、2.0g/m以上が好ましく、3.0g/m以上がより好ましく、セパレータのハンドリング性又は電池のエネルギー密度の観点から、9.0g/m以下が好ましく、8.0g/m以下がより好ましい。
【0068】
本開示のセパレータにおいて、耐熱性多孔質層の空孔率は30%〜70%であることが好ましい。耐熱性多孔質層の空孔率は、セパレータのイオン透過性の観点から、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。耐熱性多孔質層の空孔率は、無機粒子として平均一次粒径0.01μm以上0.45μm未満の小さな無機粒子を用いた場合に、耐熱性多孔質層をより緻密な構造にして耐熱性を高める観点から、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。耐熱性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
ここに、耐熱性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、耐熱性多孔質層の厚みがt(cm)である。
【0069】
本開示のセパレータにおいて、多孔質基材と耐熱性多孔質層との間の剥離強度は、電極に対するセパレータの接着強度の観点から、5N/m以上が好ましく、10N/m以上がより好ましく、15N/m以上が更に好ましく、20N/m以上が更に好ましい。剥離強度は、イオン透過性の観点から、75N/m以下が好ましく、60N/m以下がより好ましく、50N/m以下が更に好ましい。本開示のセパレータが多孔質基材の両面に耐熱性多孔質層を有する場合、多孔質基材と耐熱性多孔質層との間の剥離強度は、多孔質基材の両面において上記の範囲であることが好ましい。
【0070】
[接着層]
本開示のセパレータにおける接着層は、多孔質基材と耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が付着した構造を有する。接着層は、接着性樹脂粒子同士に存在する隙間によって、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている。接着性樹脂粒子が付着した構造とは、完成したセパレータにおいて、樹脂が粒子形状を保持している態様はもちろんのこと、接着層の材料として樹脂粒子を用いて完成したセパレータにおいて熱処理又は乾燥処理により樹脂粒子が一部溶融して粒子形状を保持していない態様も含む。
【0071】
接着層が、接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層又は多孔質基材に付着した構造であることにより、耐熱性多孔質層又は多孔質基材と接着層との間の界面破壊が発生しにくい。また、接着層が、接着性樹脂粒子どうしが互いに付着し連結した構造であることにより、接着層が靱性に優れ、接着層の凝集破壊が発生しにくい。
【0072】
接着性樹脂粒子は、電池の電極に対して接着性を有する粒子状の樹脂である。接着性樹脂粒子は、正極又は負極の組成に合せて樹脂の種類を選択してよい。接着性樹脂粒子は、電解液に対して安定で電気化学的にも安定な樹脂粒子が好ましい。
【0073】
接着性樹脂粒子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系ゴム、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)、又はこれらの2種以上の混合物を含む粒子が挙げられる。中でも、耐酸化性に優れる観点から、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂を含む粒子が好ましい。
【0074】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン);フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体(ポリフッ化ビニリデン共重合体);ポリフッ化ビニリデンとポリフッ化ビニリデン共重合体の混合物;が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロパーフルオロプロピルエーテル、エチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。これらモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
接着性樹脂粒子に含まれるポリフッ化ビニリデン共重合体は、電池製造時の加圧及び加熱に耐え得る機械的強度を得る観点から、フッ化ビニリデン由来の構成単位を50モル%以上有する共重合体が好ましい。
【0076】
接着性樹脂粒子に含まれるポリフッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、又はフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体が好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体がより好ましい。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体としては、ヘキサフルオロプロピレン由来の構成単位を0.1モル%〜10モル%(好ましくは0.5モル%〜5モル%)含む共重合体が好ましい。
【0077】
接着性樹脂粒子に含まれる接着性樹脂(好ましくは、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデン共重合体)の重量平均分子量は、1000〜500万が好ましく、1万〜300万がより好ましく、5万〜200万が更に好ましい。
【0078】
接着性樹脂粒子に含まれるアクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸、架橋ポリ(メタ)アクリル酸塩、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、変性されたアクリル系樹脂でもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。アクリル系樹脂は、ポリフッ化ビニリデンとアクリル系樹脂の混合物又はポリフッ化ビニリデン共重合体とアクリル系樹脂の混合物として用いてもよい。
【0079】
接着性樹脂粒子としては、ポリフッ化ビニリデン粒子、ポリフッ化ビニリデン共重合体粒子、ポリフッ化ビニリデンとポリフッ化ビニリデン共重合体の混合物の粒子、ポリフッ化ビニリデンとアクリル系樹脂の混合物の粒子、又はポリフッ化ビニリデン共重合体とアクリル系樹脂の混合物の粒子が好ましい。ここで、ポリフッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、又はフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体が好ましい。
【0080】
接着性樹脂粒子を構成するポリフッ化ビニリデンとアクリル系樹脂の混合物、又はポリフッ化ビニリデン共重合体とアクリル系樹脂の混合物は、耐酸化性の観点から、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデン共重合体を20質量%以上含むことが好ましい。
【0081】
接着性樹脂粒子としては、2種以上の接着性樹脂粒子を組み合せて用いてもよい。
接着層のイオン透過性、接着層の電極に対する接着性、接着層と耐熱性多孔質層との間の剥離強度、及び接着層のハンドリング性をバランスよく調整する観点からは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を用いることが好ましい。第一の接着性樹脂粒子(以下、「樹脂粒子F」ともいう。)とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を全固形分量に対して50質量%超含む粒子である。第二の接着性樹脂粒子(以下、「樹脂粒子A」ともいう。)とは、アクリル系樹脂を全固形分量に対して50質量%超含む粒子である。
【0082】
樹脂粒子Fが含むポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリフッ化ビニリデンとポリフッ化ビニリデン共重合体の混合物が挙げられ、これら重合体の好ましい態様は先述したとおりである。樹脂粒子Fには、ポリフッ化ビニリデン系樹脂以外のその他の樹脂が含まれていてもよい。
【0083】
樹脂粒子Fに含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂の量は、樹脂粒子Fの全固形分量に対して、50質量%超であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
【0084】
樹脂粒子Aが含むアクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸、架橋ポリ(メタ)アクリル酸塩、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、変性されたアクリル系樹脂でもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。樹脂粒子Aには、アクリル系樹脂以外のその他の樹脂が含まれていてもよい。
【0085】
樹脂粒子Aに含まれるアクリル系樹脂の量は、樹脂粒子Aの全固形分量に対して、50質量%超であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
【0086】
接着層に樹脂粒子Fと樹脂粒子Aとの混合物が含まれる場合、接着層に含まれる樹脂粒子Fと樹脂粒子Aの質量比は、接着層に求める特性に応じて調整すればよい。接着層に含まれる樹脂粒子Fと樹脂粒子Aの質量比(樹脂粒子F:樹脂粒子A)は、50:50〜90:10であることが好ましい。樹脂粒子Fと樹脂粒子Aの質量比は、60:40〜80:20であることがより好ましい。
【0087】
樹脂粒子Fと樹脂粒子Aとの混合物は、接着層の製造に用いられる塗工液としては、分散媒に樹脂粒子F及び樹脂粒子Aが分散した分散液であることが好ましい。分散液の分散媒としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂及び耐熱性多孔質層を溶解しない分散媒であれば特に限定されないが、取り扱いの安全上、水が好ましい。つまり、当該分散液は、水に樹脂粒子F及び樹脂粒子Aが分散した水性分散液であることが好ましい。当該水性分散液に含まれる樹脂粒子Fと樹脂粒子Aの質量比は、接着層の製造に用いられる際において、樹脂粒子F:樹脂粒子A=50:50〜90:10であることが好ましい。樹脂粒子F:樹脂粒子A=60:40〜80:20であることがより好ましい。
【0088】
水に樹脂粒子F及び樹脂粒子Aが分散した水性分散液の代表的な市販品としては、例えば、アルケマ社製のAquatec FMA−12、Aquatec ARC、Aquatec CRX等;JSR社製のTRD202A等;が挙げられる。
【0089】
水に樹脂粒子F及び樹脂粒子Aが分散した水性分散液は、樹脂粒子F及び樹脂粒子Aを水に分散させて調製してもよく、水に樹脂粒子Fが分散した水性分散液と水に樹脂粒子Aが分散した水性分散液とを混合して調製してもよい。
【0090】
水に樹脂粒子Fが分散した水性分散液としては、市販品を含む公知の水性分散液を用いることができ、又は、市販品を含む公知の樹脂粒子Fを水に分散させて用いることができる。水に樹脂粒子Fが分散した水性分散液の代表的な市販品としては、例えば、アルケマ社製のLBG2200LX、LATEX32、KYNAR WATERBORNE RCシリーズ(RC−10246、RC−10278、RC−10280等);ソルベイスペシャルティーポリマーズ社製のXPH838シリーズ、XPH882シリーズ、XPH883シリーズ、XPH884シリーズ、XPH859シリーズ、XPH918シリーズ等;クレハ社製のPVDF水性分散液;などが挙げられる。
【0091】
水に樹脂粒子Aが分散した水性分散液としては、市販品を含む公知の水性分散液を用いることができ、又は、市販品を含む公知の樹脂粒子Aを水に分散させて用いることができる。水に樹脂粒子Aが分散した水性分散液の代表的な市販品としては、例えば、日本ゼオン社製のBM−120S等;DIC社製のアクリル粒子水性分散液;などが挙げられる。
【0092】
接着性樹脂粒子の体積平均粒径は、良好な多孔構造を形成する観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、接着層の厚みを抑える観点から、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.6μm以下が更に好ましい。
【0093】
接着層は、本開示の効果を阻害しない範囲で、接着性樹脂粒子以外の成分を含んでいてもよい。接着層は、層全量の90質量%以上を接着性樹脂粒子が占めることが好ましく、95質量%以上を接着性樹脂粒子が占めることがより好ましい。接着層は、実質的に接着性樹脂粒子のみを含有することが更に好ましい。
【0094】
本開示のセパレータにおける接着層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。
分散剤は、接着層を形成するための樹脂粒子分散液を用いる場合において、樹脂粒子分散液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。
湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、接着層を形成するための樹脂粒子分散液を用いる場合において、樹脂粒子分散液に、例えば、耐熱性多孔質層とのなじみをよくする目的、樹脂粒子分散液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
【0095】
接着層に含まれる界面活性剤としては、例えば、非反応性のアニオン性界面活性剤(例えば、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等);非反応性のノニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等);親水基と親油基とを有する界面活性剤の化学構造の中にエチレン性不飽和二重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤;が挙げられる。
【0096】
反応性界面活性剤であるアニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸基、スルホネート基、硫酸エステル基及びこれらの塩から選ばれる基を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられ、スルホン酸基又はそのアンモニウム塩若しくはアルカリ金属塩である基(即ちアンモニウムスルホネート基若しくはアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。具体的には、アルキルアリルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩、アンモニウム=α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、スチレンスルホン酸塩、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルの硫酸エステル塩が挙げられる。
【0097】
反応性界面活性剤であるノニオン性界面活性剤としては、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルが挙げられる。
界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0098】
本開示のセパレータの一実施形態は、接着層がさらに界面活性剤を含有する。接着層が含有する界面活性剤としては、非反応性のアニオン性界面活性剤、非反応性のノニオン性界面活性剤、反応性のアニオン性界面活性剤及び反応性のノニオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。非反応性のアニオン性界面活性剤、非反応性のノニオン性界面活性剤、反応性のアニオン性界面活性剤及び反応性のノニオン性界面活性剤それぞれの具体例としては、接着層を形成するための樹脂粒子分散液に含まれる界面活性剤として先述した具体例が挙げられる。接着層がさらに界面活性剤を含有する場合、接着層の全質量に占める界面活性剤の質量割合は、0.1質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜8質量%がより好ましい。
【0099】
接着層は、接着層を形成するための樹脂粒子分散液を用いて形成することができる。例えば、接着性樹脂粒子及び必要に応じて接着性樹脂粒子以外の成分を含有する樹脂粒子分散液を、多孔質基材及び耐熱性多孔質層の少なくとも一方に塗布等により付与することで形成することができる。
【0100】
接着層の重量は、電極に対する接着性の観点から、片面あたり、0.2g/m以上が好ましく、0.25g/m以上がより好ましく、0.3g/m以上が更に好ましく、イオン透過性、セパレータのハンドリング性又は電池のエネルギー密度の観点から、片面あたり、2.0g/m以下が好ましく、1.8g/m以下がより好ましく、1.6g/m以下が更に好ましい。
【0101】
接着層における接着性樹脂粒子の被覆率(粒子が平面を覆う面積割合)は、セパレータの平面視での面積に対して、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。接着層における接着性樹脂粒子の被覆率は、走査型電子顕微鏡によりセパレータの表面を面垂直方向から撮像し、正方形の領域を無作為に10点特定し、各領域の被覆率を求め、さらに10点の平均値を算出することで求める。
【0102】
−セパレータの特性−
本開示のセパレータの厚みは、セパレータの機械的強度の観点から、8.0μm以上が好ましく、9.0μm以上がより好ましく、電池のエネルギー密度の観点から、20.0μm以下が好ましく、15.0μm以下がより好ましい。
【0103】
本開示のセパレータの突刺強度は、セパレータの機械的強度又は電池の耐短絡性の観点から、150g〜1000gが好ましく、200g〜600gがより好ましい。セパレータの突刺強度の測定方法は、多孔質基材の突刺強度の測定方法と同様である。
【0104】
本開示のセパレータの空孔率は、電極に対する接着性、セパレータのハンドリング性、イオン透過性又は機械的強度の観点から、30%〜60%が好ましい。
【0105】
本開示のセパレータの膜抵抗は、電池の負荷特性の観点から、0.5ohm・cm〜10ohm・cmが好ましく、1ohm・cm〜8ohm・cmがより好ましい。
【0106】
本開示のセパレータのガーレ値(JIS P8117:2009)は、機械的強度とイオン透過性のバランスの観点から、50秒/100mL〜800秒/100mLが好ましく、80秒/100mL〜500秒/100mLがより好ましく、100秒/100mL〜400秒/100mLが更に好ましい。
【0107】
本開示のセパレータは、イオン透過性の観点から、セパレータのガーレ値と多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL〜300秒/100mLであることが好ましい。セパレータのガーレ値と多孔質基材のガーレ値との差は、200秒/100mL以下がより好ましく、150秒/100mL以下が更に好ましい。
【0108】
本開示のセパレータのMD方向の引張強度は、セパレータの機械的強度又はハンドリング性(接着層の定着性)の観点から、500kgf/cm以上が好ましく、600kgf/cm以上がより好ましく、700kgf/cm以上が更に好ましい。上記の観点からは、MD方向の引張強度は高いほど好ましいが、通常は3000kgf/cm以下である。
【0109】
本開示のセパレータのTD方向の引張強度は、セパレータの機械的強度又はハンドリング性(接着層の定着性)の観点から、500kgf/cm以上が好ましく、600kgf/cm以上がより好ましく、700kgf/cm以上が更に好ましい。上記の観点からは、TD方向の引張強度は高いほど好ましいが、通常は3000kgf/cm以下である。
【0110】
本開示のセパレータに含まれる水分量(質量基準)は、1000ppm以下が好ましい。セパレータの水分量が少ないほど、電池を構成した場合において、電解液と水との反応が抑えられ、電池内でのガス発生を抑えることができ、電池のサイクル特性が向上する。この観点から、セパレータに含まれる水分量は、800ppm以下がより好ましく、500ppm以下が更に好ましい。
【0111】
本開示のセパレータは、130℃で1時間熱処理したときのMD方向の収縮率が、6%以下が好ましく、5.5%以下がより好ましい。
本開示のセパレータは、130℃で1時間熱処理したときのTD方向の収縮率が、6%以下が好ましく、5.5%以下がより好ましい。
【0112】
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのMD方向の収縮率が、10%以下が好ましく、9.5%以下がより好ましい。
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのTD方向の収縮率が、10%以下が好ましく、9.5%以下がより好ましい。
また、本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのMD方向及びTD方向の熱収縮率が10%以下であることもより好ましい。
【0113】
セパレータを130℃又は150℃で1時間熱処理したときの収縮率は、以下の測定方法によって求める。
セパレータをMD方向100mm×TD方向100mmに切り出し、セパレータのサンプルの中心を通過するようにMD方向とTD方向のそれぞれに70mmの長さの基準線を引いて試験片とした。2枚のA4サイズの用紙の間に試験片を配置した後、130℃と150℃のオーブン中に静置、それぞれ1時間放置した。熱処理前後の試験片のMD方向とTD方向の長さを測定し、以下の式から熱収縮率を算出し、上記の操作をさらに2回行い、試験片3枚の熱収縮率を平均して、セパレータの熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(熱処理前のMD方向の長さ−熱処理後のMD方向の長さ)÷熱処理前のMD方向の長さ}×100
熱収縮率(%)={(熱処理前のTD方向の長さ−熱処理後のTD方向の長さ)÷熱処理前のTD方向の長さ}×100
【0114】
本開示のセパレータを熱処理したときの収縮率は、例えば、耐熱性多孔質層中の無機粒子の含有量、耐熱性多孔質層の厚み、耐熱性多孔質層の空孔率等によって制御し得る。
【0115】
−セパレータの製造方法−
本開示のセパレータは、例えば、下記の製造方法A又は製造方法Bによって製造される。製造方法A及び製造方法Bにおいて、耐熱性多孔質層の形成方法は、湿式塗工法でもよく、乾式塗工法でもよい。
製造方法Bは、下記の形態B−1〜B−7のいずれでもよい。形態B−1〜B−4は、耐熱性多孔質層を湿式塗工法によって形成する形態である。形態B−5〜B−7は、耐熱性多孔質層を乾式塗工法によって形成する形態である。
【0116】
本開示において、湿式塗工法とは、塗工層を凝固液中で固化させる方法であり、乾式塗工法とは、塗工層を乾燥させて塗工層を固化させる方法である。
【0117】
(a)製造方法A(非連続的な製造方法):
ロールから繰り出された多孔質基材上に耐熱性多孔質層を形成して、多孔質基材と耐熱性多孔質層との積層体を得た後、一旦、積層体を別のロールに巻き取る。次いで、ロールから繰り出された積層体上に接着層を形成してセパレータを得て、でき上がったセパレータを別のロールに巻き取る。
【0118】
(b)製造方法B(連続的な製造方法):
ロールから繰り出された多孔質基材上に、耐熱性多孔質層と接着層とを連続的に又は同時に形成し、でき上がったセパレータを別のロールに巻き取る。
【0119】
次に、湿式塗工法による形態を説明する。
形態B−1:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ水洗及び乾燥を行い、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0120】
形態B−2:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ水洗を行い、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0121】
形態B−3:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液及び接着性樹脂粒子分散液を同時に二層塗工し、凝固液に浸漬して前者の塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、水洗及び乾燥を行う。
【0122】
形態B−4:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、接着性樹脂粒子を含む水浴を搬送することによって水洗及び接着性樹脂粒子の付着を行い、水浴から引き揚げ乾燥を行う。
【0123】
次に、乾式塗工法による形態を説明する。
形態B−5:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、乾燥を行い、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0124】
形態B−6:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0125】
形態B−7:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液及び接着性樹脂粒子分散液を同時に二層塗工し、乾燥を行う。
【0126】
以下に、形態B−1の製造方法Bを例に挙げて、製造方法に含まれる工程の詳細を説明する。
【0127】
形態B−1の製造方法Bは、多孔質基材の少なくとも一方の面に耐熱性多孔質層を湿式塗工法によって形成して、多孔質基材と耐熱性多孔質層との積層体を得て、次いで、積層体の少なくとも一方の面に接着層を乾式塗工法によって形成する。形態B−1の製造方法Bは、下記の工程(1)〜(7)を含み、工程(1)〜(7)を順次行う。
【0128】
工程(1):耐熱性多孔質層形成用塗工液の作製
耐熱性多孔質層形成用塗工液(以下、製造方法の説明において「塗工液」という。)は、バインダ樹脂及び無機粒子を溶媒に溶解又は分散させて作製する。塗工液には、必要に応じて、バインダ樹脂以外のその他の樹脂、又は樹脂以外のその他の成分を溶解又は分散させる。
【0129】
塗工液の調製に用いる溶媒は、バインダを溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
【0130】
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔構造を有する多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0131】
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔構造を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を40質量%以下含む混合溶媒が好ましい。
【0132】
塗工液におけるバインダ樹脂濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、1質量%〜20質量%であることが好ましい。
【0133】
工程(2):接着性樹脂粒子分散液の作製
接着性樹脂粒子分散液は、接着性樹脂粒子を水に分散させて作製する。接着性樹脂粒子分散液には、水への接着性樹脂粒子の分散性を高めるために界面活性剤を添加してもよい。接着性樹脂粒子分散液は、市販品又は市販品の希釈液でもよい。
【0134】
接着性樹脂粒子分散液における接着性樹脂粒子の濃度は、塗工適性の観点から、1質量%〜60質量%であることが好ましい。
【0135】
工程(3):塗工液の塗工
塗工液を多孔質基材の少なくとも一方の面に塗工し、多孔質基材上に塗工層を形成する。多孔質基材への塗工液の塗工方法としては、ナイフコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。耐熱性多孔質層を多孔質基材の両面に形成する場合、塗工液を両面同時に多孔質基材へ塗工することが生産性の観点から好ましい。
【0136】
工程(4):塗工層の固化
塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層において相分離を誘発しつつバインダ樹脂を固化させ、耐熱性多孔質層を形成する。これにより、多孔質基材と耐熱性多孔質層とからなる積層体を得る。
【0137】
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせるのが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は40質量%〜90質量%であることが、多孔構造の形成および生産性の観点から好ましい。凝固液の温度は、例えば20℃〜50℃である。
【0138】
工程(5):塗工層の水洗及び乾燥
積層体を凝固液から引き揚げ、水洗する。水洗することによって、積層体から凝固液を除去する。さらに、乾燥することによって、積層体から水を除去する。水洗は、例えば、水洗浴中に積層体を搬送することによって行う。乾燥は、例えば、高温環境中に積層体を搬送すること、積層体に風をあてること、積層体をヒートロールに接触させること等によって行う。乾燥温度は40℃〜80℃が好ましい。
【0139】
工程(6):接着性樹脂粒子分散液の塗工
積層体の少なくとも一方の面に、接着性樹脂粒子分散液を塗工する。接着性樹脂粒子分散液を塗工する方法としては、ナイフコート法、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
【0140】
工程(7):接着性樹脂粒子分散液の乾燥
積層体上の接着性樹脂粒子分散液を乾燥させ、接着性樹脂粒子を積層体の表面に付着させる。乾燥は、例えば、高温環境中に積層体を搬送すること、積層体に風をあてること等によって行う。乾燥温度は40℃〜100℃が好ましい。
【0141】
第一のセパレータを製造するための製造方法A又は形態B−2〜形態B−4の製造方法Bは、上記の工程(1)〜(7)を一部省略したり変更したりすることで実施できる。
【0142】
第二のセパレータを製造するための製造方法A又は形態B−2〜形態B−7の製造方法Bは、上記の工程(1)〜(7)を一部省略したり変更したりすることで実施できる。
【0143】
<非水系二次電池>
本開示の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であり、正極と、負極と、本開示の非水系二次電池用セパレータとを備える。ドープとは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0144】
本開示の非水系二次電池は、例えば、負極と正極とがセパレータを介して対向した電池素子が電解液と共に外装材内に封入された構造を有する。本開示の非水系二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適である。
【0145】
本開示の非水系二次電池は、本開示のセパレータが電極との接着に優れることにより、電池の生産性および電池のサイクル特性(容量維持率)に優れる。
【0146】
以下、本開示の非水系二次電池が備える正極、負極、電解液及び外装材の形態例を説明する。
【0147】
正極の実施形態例としては、正極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられ、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMn1/2Ni1/2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3、LiMn、LiFePO、LiCo1/2Ni1/2、LiAl1/4Ni3/4等が挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚み5μm〜20μmの、アルミ箔、チタン箔、ステンレス箔等が挙げられる。
【0148】
本開示の非水系二次電池においては、本開示のセパレータの接着層にポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有させた場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が耐酸化性に優れるため、接着層を非水系二次電池の正極側に配置することで、正極活物質として、4.2V以上の高電圧で作動可能なLiMn1/2Ni1/2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3等を適用しやすい。
【0149】
負極の実施形態例としては、負極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、リチウムを電気化学的に吸蔵し得る材料が挙げられ、具体的には例えば、炭素材料;ケイ素、スズ、アルミニウム等とリチウムとの合金;ウッド合金;などが挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚み5μm〜20μmの、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等が挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
【0150】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等が挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそのフッ素置換体等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル;などが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。電解液としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを質量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)20:80〜40:60で混合し、リチウム塩を0.5mol/L〜1.5mol/Lの範囲にて溶解した溶液が好適である。
【0151】
外装材としては、金属缶、アルミラミネートフィルム製パック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本開示のセパレータはいずれの形状にも好適である。
【0152】
本開示の非水系二次電池の製造方法としては、セパレータに電解液を含浸させて熱プレス処理(本開示において「ウェットヒートプレス」という。)を行って電極に接着させることを含む製造方法;セパレータに電解液を含浸させずに熱プレス処理(本開示において「ドライヒートプレス」という。)を行って電極に接着させることを含む製造方法;が挙げられる。
【0153】
本開示の非水系二次電池は、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置し、長さ方向に巻き回して巻回体を製造した後、この巻回体を用いて、例えば下記の製造方法1〜3により製造できる。巻回体の代わりに、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層する方式(所謂スタック方式)によって製造した素子を用いる場合も同様である。
【0154】
製造方法1:巻回体にドライヒートプレスして電極とセパレータとを接着した後、外装材(例えばアルミラミネートフィルム製パック。以下同じ)に収容し、そこに電解液を注入し、外装材の上からさらに巻回体をウェットヒートプレスし、電極とセパレータとの接着と、外装材の封止とを行う。
【0155】
製造方法2:巻回体を外装材に収容し、そこに電解液を注入し、外装材の上から巻回体をウェットヒートプレスし、電極とセパレータとの接着と、外装材の封止とを行う。
【0156】
製造方法3:巻回体にドライヒートプレスして電極とセパレータとを接着した後、外装材に収容し、そこに電解液を注入し、外装材の封止を行う。
【0157】
上記製造方法1〜3における熱プレスの条件としては、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスそれぞれ、プレス温度は60℃〜120℃が好ましく、70℃〜100℃がより好ましく、プレス圧は、電極1cm当たりの荷重として、0.5kg〜90kgが好ましい。プレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば0.1分間〜60分間の範囲で調節する。
【0158】
上記製造方法1又は3においては、ドライヒートプレスする前に巻回体に常温プレス(常温下での加圧)を施して、巻回体を仮接着してもよい。上記製造方法2においては、巻回体を外装材に収容する前に常温プレスして、巻回体を仮接着してもよい。
【実施例】
【0159】
以下に実施例を挙げて、本開示のセパレータ及び非水系二次電池をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のセパレータ及び非水系二次電池の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0160】
<測定方法、評価方法>
実施例及び比較例で適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
[無機粒子の平均一次粒径]
耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に添加する前の無機粒子を試料とし、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ粒子100個の長径を計測し、その平均値を算出し、無機粒子の平均一次粒径(μm)とした。SEMの倍率は5万倍〜30万倍とした。セパレータから取り出した無機粒子を試料とする場合には、上記の無機粒子の平均一次粒径の説明の項目に表した、セパレータから無機粒子を取り出す方法等により、無機粒子を取り出した。取り出した無機粒子を上述の手法により平均一次粒径を測定した。
【0161】
[多孔質基材及びセパレータの厚み]
多孔質基材及びセパレータの厚み(μm)は、接触式の厚み計(ミツトヨ社、LITEMATIC VL−50)にて20点を測定し、これを平均することで求めた。測定端子は直径5mmの円柱状の端子を用い、測定中に0.01Nの荷重が印加されるように調整した。
【0162】
[耐熱性多孔質層の厚み]
耐熱性多孔質層の厚み(両面合計、μm)は、多孔質基材と多孔質基材の両面に設けられた2層の耐熱性多孔質層とからなる積層体の厚み(μm)から多孔質基材の厚み(μm)を減算して求めた。耐熱性多孔質層の片面の厚みは、耐熱性多孔質層の厚み(両面合計)を2で除して求めた。
【0163】
[目付]
目付(1m当たりの質量、g/m)は、サンプルを10cm×30cmに切り出し、質量を測定し、質量を面積で除算して求めた。
【0164】
[各層の塗工量]
各層の塗工量(g/m)は、層形成後の目付(g/m)から層形成前の目付(g/m)を減算して求めた。
【0165】
[ガーレ値]
多孔質基材及びセパレータのガーレ値(秒/100mL)は、JIS P8117:2009に従い、ガーレ式デンソメータ(東洋精機社、G−B2C)を用いて測定した。なお、以下の表において、セパレータのガーレ値から多孔質基材のガーレ値を減算した値をガーレ差(秒/100mL)と称す。
【0166】
[多孔質基材の空孔率]
多孔質基材の空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
Ws:多孔質基材の目付(g/m)、ds:多孔質基材の真密度(g/cm)、t:多孔質基材の厚み(cm)。
【0167】
[耐熱性多孔質層の空孔率]
耐熱性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
ここに、耐熱性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、耐熱性多孔質層の厚みがt(cm)である。
【0168】
[熱収縮率]
セパレータをMD方向100mm×TD方向100mmに切り出し、セパレータのサンプルの中心を通過するようにMD方向とTD方向のそれぞれに70mmの長さの基準線を引いて試験片とした。2枚のA4サイズの用紙の間に試験片を配置した後、130℃と150℃のオーブン中に静置、それぞれ1時間放置した。熱処理前後の試験片のMD方向とTD方向の長さを測定し、以下の式から熱収縮率を算出し、上記の操作をさらに2回行い、試験片3枚の熱収縮率を平均して、セパレータの熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(熱処理前のMD方向の長さ−熱処理後のMD方向の長さ)÷熱処理前のMD方向の長さ}×100
熱収縮率(%)={(熱処理前のTD方向の長さ−熱処理後のTD方向の長さ)÷熱処理前のTD方向の長さ}×100
【0169】
[多孔質基材と耐熱性多孔質層との間の剥離強度]
セパレータにT字剥離試験を行った。具体的には、セパレータの一方の表面に粘着テープ(3M社(韓国)、製品番号550、幅12mm)を貼り(貼る際に、粘着テープの長さ方向をセパレータのMD方向に一致させた。)、セパレータを粘着テープごと、TD方向12mm、MD方向70mmに切り出した。粘着テープを直下の接着層及び耐熱性多孔質層と共に少し剥がし、2つに分離した端部をテンシロン(オリエンテック社、RTC−1210A)に把持させてT字剥離試験を行った。なお、粘着テープは、接着層及び耐熱性多孔質層を多孔質基材から剥がすための支持体として用いたものである。T字剥離試験の引張速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、幅10mmあたりの荷重(N/10mm)に換算した。さらに試験片3枚の荷重を平均し、この平均値(N/10mm)を100倍して、剥離強度(N/m)とした。
【0170】
[電極とセパレータの接着強度]
正極活物質であるコバルト酸リチウム97g、導電助剤であるアセチレンブラック1.5g、バインダであるポリフッ化ビニリデン1.5g、及び適量のN−メチルピロリドンを双腕式混合機にて攪拌混合し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを厚み20μmのアルミ箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、正極活物質層を有する正極(片面塗工、目付20mg/cm、密度4.0g/cm)を得た。
【0171】
上記で得た正極を幅15mm、長さ70mmに切り出し、セパレータをTD方向18mm、MD方向75mmに切り出し、厚み20μmのアルミ箔を幅15mm、長さ70mmに切り出した。正極/セパレータ/アルミ箔の順に重ねて積層体を作製し、この積層体をアルミラミネートフィルム製パック中に収容した。次に、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にし、熱プレス機を用いてパックごと積層体を熱プレス(温度85℃、荷重1MPa、プレス時間30秒間)して、正極とセパレータとの接着を行った。その後、パックを開封し、積層体を取り出し、積層体からアルミ箔を取り除いたものを試験片とした。
【0172】
試験片のセパレータをテンシロン(エー・アンド・デイ社、STB−1225S)の下部チャックに固定した。この際、試験片の長さ方向(即ちセパレータのMD方向)が重力方向になるように、セパレータをテンシロンに固定した。正極を下部の端から2cm程度セパレータから剥がして、その端部を上部チャックに固定し、180°剥離試験を行った。180°剥離試験の引張速度は100mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した。さらに試験片3枚の荷重を平均して、電極とセパレータの接着強度(N/15mm)とした。表1,2には、比較例1のセパレータの接着強度を基準値100とし、実施例及び比較例の各セパレータの接着強度を百分率で示す。
【0173】
[熱伝導率測定]
上記(電極とセパレータの接着強度)における正極作製と同様にして正極(両面塗工、目付40mg/cm、密度4.0g/cm)を作製した。
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダであるスチレン−ブタジエン共重合体の変性体を40質量%含有する水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、及び適量の水を双腕式混合機にて攪拌混合し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを厚み10μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥後プレスして、負極活物質層を有する負極(両面塗工、目付20mg/cm、密度1.7g/cm)を得た。
寸法150mm×75mmに切り出したセパレータと正極及び負極をセパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータになるように重ねて試験片を準備した。JIS R2616:2001に記載されている非定常熱線法に準拠し、熱伝導率測定装置(京都電子工業製QTM−500)を用いて、昇温範囲30℃〜120℃、昇温速度5℃/分の条件で熱伝導率(W/m・K)を測定した。熱伝導率に基づき、試験片の熱伝導性を下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:熱伝導率が7.0W/m・K以上である。
B:熱伝導率が6.5W/m・K以上、7.0W/m・K未満である。
C:熱伝導率が6.0W/m・K以上、6.5W/m・K未満である。
D:熱伝導率が6.0W/m・K未満である。
【0174】
[製造歩留り]
上記[熱伝導率測定]における正極及び負極作製と同様にして正極/負極(両面塗工)を作製した。
セパレータ(幅108mm)を2枚用意して重ね、MD方向の一端をステンレス製の巻芯に巻きつけた。2枚のセパレータの間に、リードタブを溶接した正極(幅106.5mm)をはさみ、一方のセパレータ上に、リードタブを溶接した負極(幅107mm)を配置し、巻回して、巻回体を連続的に50個作製した。得られた巻回体を常温プレス(荷重1MPa、プレス時間30秒間)し、次いで熱プレス(温度85℃、荷重1MPa、プレス時間30秒間)して、平板状の電池素子を得た。
熱プレス直後と熱プレスから1時間経過後において、平板状の電池素子の厚みを測定し、厚みの変化が3%以下の場合を合格と判定し、厚みの変化が3%超の場合を不合格と判定した。合格した電池素子の個数割合(%)を算出し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:合格した個数割合が100%(不合格が0個)である。
B:合格した個数割合が95%以上、100%未満(不合格が1個又は2個)である。
C:合格した個数割合が90%以上、95%未満(不合格が3個〜5個)である。
【0175】
[電池膨れ]
上記[製造歩留り]と同様にして電池素子を50個作製した。この電池素子をアルミラミネートフィルム製パック中に収容し電解液を浸み込ませ、真空シーラーを用いて封入した。電解液としては、1mol/L LiPF−エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート(質量比3:7)を用いた。その後、電池素子及び電解液を収容したアルミラミネートフィルム製パックを熱プレス機により熱プレス(温度85℃、荷重1MPa、プレス時間10秒間)して、試験用の二次電池50個を得た。
温度25℃下、試験用二次電池50個に100サイクルの充放電を行った。充電は0.7C且つ4.2Vの定電流定電圧充電とし、放電は0.5C且つ2.75Vカットオフの定電流放電とした。
充放電前と100サイクルの充放電後において、試験用二次電池の厚みを測定し、厚みの変化が8%以下の場合を合格と判定し、厚みの変化が8%超の場合を不合格と判定した。合格した電池素子の個数割合(%)を算出し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:合格した個数割合が100%(不合格が0個)である。
B:合格した個数割合が95%以上、100%未満(不合格が1個又は2個)である。
C:合格した個数割合が95%未満(不合格が3個以上)である。
【0176】
[衝突試験]
上記[製造歩留り]と同様にして電池素子を50個作製した。温度25℃下、試験用二次電池50個を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電した。米国のUL(Underwriters Laboratories Inc.)が定めるUL1642規格に準じて、ラミネートセルの上面の中央に直径15.8mmのステンレス棒をセットし、9.1kgの重りを61±2.5cmの高さから、ステンレス棒の上に落下させる衝突試験を行った。 衝突試験の結果、ガス噴出及び発火は無く、衝突後1秒以内でラミネートセルの電圧が降下した場合を合格と判定し、ガス噴出及び発火がある場合を不合格と判定した。合格した電池素子の個数割合(%)を算出し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:合格した個数割合が100%(不合格が0個)である。
B:合格した個数割合が95%以上、100%未満(不合格が1個又は2個)である。
C:合格した個数割合が95%未満(不合格が3個以上)である。
【0177】
[実施例1]
メタ型アラミド(ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人株式会社製、コーネックス(登録商標))と、水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒径0.30μm)を、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)の混合溶媒(DMAc:TPG=80:20[質量比])に攪拌混合し、塗工液を得た。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm;PVDF粒子)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率39%、ガーレ値100秒/100mL;表1中、「PE」と表記した。以下同様。)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:TPG:水=32:8:60[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥することで塗工量3.0g/mの耐熱性多孔質層を形成した。次いで、これを、水性分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、水性分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
この実施例1のセパレータの構成、特性および電池評価結果を以下の表1に示す。また、以下の各実施例および比較例についても同様に、表1,2にまとめて示す。
【0178】
[実施例2]
耐熱性多孔質層の塗工量を、2.3g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0179】
[実施例3]
耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合を50質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0180】
[実施例4]
耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合を90質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0181】
[比較例1]
水酸化マグネシウム粒子として平均一次粒径0.5μmのものを用い、耐熱性多孔質層の塗工量を3.1g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0182】
[比較例2]
水酸化マグネシウム粒子として平均一次粒径0.9μmのものを用い、耐熱性多孔質層の塗工量を、2.9g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0183】
[比較例3]
アルミナ粒子(住友化学社、AKP−3000、体積平均粒径0.45μm、テトラポッド状粒子)と、粘度調整剤であるカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社、D1200、エーテル化度0.8〜1.0)と、結着樹脂としてアクリル樹脂(DIC社、DICNAL LSE−16AD4)と、非イオン性界面活性剤(サンノプコ社、SNウェット366)とを質量比94.6:3.8:1.4:0.2にて混合し、水を添加して分散させ、固形分濃度40質量%の塗工液を作製した。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm)が水に分散したPVDF粒子分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工し、乾燥した。次いで、これを、PVDF粒子分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、PVDF粒子分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
【0184】
[実施例5]
メタ型アラミド(ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人株式会社製、コーネックス(登録商標))と、硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm)とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が4.5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)に攪拌混合し、塗工液を得た。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm;PVDF粒子)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:水=50:50[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥することで塗工量3.2g/mの耐熱性多孔質層を形成した。次いで、これを、水性分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、水性分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
【0185】
[実施例6]
フラスコに4200gのN−メチルピロリドン(NMP)を仕込み、200℃で2時間乾燥した塩化カルシウム272.65gを添加して100℃に昇温した。塩化カルシウムが完全に溶解した後、液温を室温に戻して、パラフェニレンジアミン132.91gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド243.32gを10分割して約5分おきに添加した。次いで、溶液を20±2℃に保ったまま1時間熟成し、気泡を抜くため減圧下30分間攪拌した。次いで、この重合液100gにNMP溶液を徐々に添加し、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)の濃度を2質量%とした。PPTAと水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒径0.3μm)を、両者の質量比が20:80となるように攪拌混合し、塗工液を得た。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm;PVDF粒子)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(NMP:水=40:60[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥することで塗工量3.0g/mの耐熱性多孔質層を形成した。次いで、これを、水性分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、水性分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
【0186】
[実施例7]
無機粒子として平均一次粒径0.03μmの硫酸バリウム粒子を用い、耐熱性多孔質層の塗工量を3.0g/mとし、多孔質基材として厚み7μm、空孔率35%、ガーレ値160秒/100mLのポリエチレン微多孔膜を用いた以外は、実施例5と同様にしてセパレータを作製した。
【0187】
[実施例8]
耐熱性多孔質層の塗工量を2.4g/mとした以外は、実施例7と同様にしてセパレータを作製した。
【0188】
[実施例9]
ポリアミドイミド(Solvay社、Torlon4000TF)と、水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒径0.3μm)を、両者の質量比が20:80で、ポリアミドイミド濃度が8質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)に攪拌混合し、塗工液を得た。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:水=40:60[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥した。次いで、これを、水性分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、水性分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
【0189】
[実施例10]
ポリイミド(PI技術研究所、Q−VR−X1444)と、水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒径0.3μm)を、両者の質量比が20:80で、ポリイミド濃度が6質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)の混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に攪拌混合し、塗工液を得た。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm;PVDF粒子)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:TPG:水=36:4:60[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥した。次いで、これを、水性分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、水性分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
【0190】
[実施例11]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(VDF−HFP共重合体、VDF:HFP(モル比)=97.6:2.4、重量平均分子量113万;PVDF)を、樹脂濃度が4質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)の混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に溶解し、さらに硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm)を攪拌混合し、塗工液を得た。塗工液において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と硫酸バリウム粒子の質量比は20:80とした。
ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm;PVDF粒子)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに塗工液を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚み6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:TPG:水=36:4:60[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥した。次いで、これを、水性分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、水性分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
【0191】
[実施例12]
耐熱性多孔質層の塗工量を10.2g/mとし、多孔質基材として厚み7μm、空孔率35%、ガーレ値160秒/100mLのポリエチレン微多孔膜を用いた以外は、実施例5と同様にしてセパレータを作製した。
【0192】
【表1】

【0193】
【表2】

【0194】
表1〜表2に示すように、実施例のセパレータは、薄膜としつつも、比較例に比べて優れた耐熱性を示した。
【0195】
2019年6月4日に出願された日本出願特願2019−104514の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D