(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(半導体基板)
図1は、本実施形態に係る半導体基板の構成を示す平面図および断面図である。本実施形態に係る半導体基板10(半導体ウエハー)は、
図1に示すように、主基板1と、主基板1上に形成され、シード部3Sを含む下地層4と、下地層4上に形成され、平面視でシード部3Sと重なる開口部KSおよびマスク部5を有するマスク層6と、シード部3S上およびマスク部5上に配された、GaN系半導体を含む半導体層8とを含む。マスク層4の開口部KSはテーパ形状(下地層4側に向けて幅が狭くなる形状)でもよい。この場合、開口部KSの幅、マスク部5の幅はマスク層上面を対象として表記することができる。ただし、これに限定されない。
【0009】
GaN系半導体とは、ガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)を含む半導体であり、例えば、GaN、AlGaN、AlGaInN、InGaNを挙げることができる。半導体基板とは、GaN系半導体を含む基板という意味であり、主基板1は、半導体であってもよいし、非半導体であってもよい。主基板1、下地層4およびマスク層6を含めてテンプレート基板7と呼ぶことがある。
【0010】
半導体層8は、開口部KSから露出するシード部3Sを起点として、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法によって形成される。このため、半導体層8を、ELO半導体層8と記載することがある。半導体層8の半導体層8の厚み方向はZ方向(GaN系結晶の<0001>方向)である。開口部KSは長手形状であり、その幅方向はX方向(GaN系結晶の<11−20>方向)である。
【0011】
図2は、本実施形態に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
図2に示すように、半導体基板10は、主基板1、下地層4、マスク層6、半導体層8、および機能層9をこの順に設けた構成でもよい。
【0012】
半導体基板10では、主基板上に複数の層が積層されているが、その積層方向を「上方向」とすることができる。また、半導体基板10の法線方向と平行な視線で半導体基板10を視ることを「平面視」と呼ぶことができる。
【0013】
(主基板)
主基板1には、GaN系半導体と異なる格子定数を有する異種基板を用いる。異種基板としては、シリコン(Si)基板、サファイア(Al
2O
3)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板等を挙げることができる。ベース基板100の面方位は、例えば、シリコン基板の(111)面、サファイア基板の(0001)面、SiC基板の6H−SiC(0001)面である。これらは例示であって、半導体層8をELO法で成長させることができる基板および面方位であれば何でもよい。
【0014】
(下地層)
下地層4として、主基板側から順に、バッファ層2(例えば、AlN層)およびシード層3(例えば、GaN系半導体)を設けることができる。バッファ層2は、主基板1とシード層3とがダイレクトに接触して互いに溶融することを低減することができる溶融抑制層である。また、シード層3の結晶性を高める効果もある。AlN層は、例えばMOCVD法を用いて、厚さ10nm程度〜5μm程度に形成する。例えば、GaN系半導体であるシード層3と溶融し合わない主基板1を用いた場合には、バッファ層2を設けない構成も可能である。主基板1にシリコン基板等を用いた場合、シード層であるGaN系半導体と溶融し合うため、例えば、AlN層等のバッファ層2を設けることで、溶融が低減される。
【0015】
シード層3には、例えば、AlGaN層を用いることができる。シード層3は、マスク層6の開口部KSと重なるシード部3Sを含む。シード層3として、Al組成がグレーデットにGaNに近づくグレーデット層を用いることができる。グレーデット層は、例えば、AlN層側から順に、第1層であるAl
0.7Ga
0.3N層、および第2層であるAl
0.3Ga
0.7N層を設けた積層体である。この場合、第2層(Al:Ga:N=0.3:0.7:1)におけるGaの組成比(0.7/2=0.35)は、第1層(Al:Ga:N=0.7:0.3:1)におけるGaの組成比(0.3/2=0.15)よりも大きい。グレーデット層は、MOCVD法で容易に形成することができ、3層以上で構成してもよい。シード層3にグレーデット層を用いることで、異種基板である主基板1からの応力を緩和することができる。シード層3を、GaN層を含む構成とすることができる。この場合、シード層3をGaN単層としてもよいし、シード層3であるグレーデット層の最上層をGaN層にしてもよい。
【0016】
(マスク層)
マスク層6には、マスク部5および開口部KSが形成される。マスク層6として、酸化シリコン(SiOx)膜、窒化シリコン(SiNx)膜、酸窒化シリコン膜(SiON)、窒化チタン(TiNx)膜等の無機絶縁膜を用いることができる。例えば、下地層4上に、スパッタ法を用いて厚さ100nm程度〜4μm程度(好ましくは150nm程度〜2μm程度)の酸化シリコン膜を全面形成し、酸化シリコン膜の全面にレジストを塗布する。その後、フォトリソグラフィー法を用いてレジストをパターニングし、ストライプ状の開口部を持ったレジストを形成する。その後、フッ酸(HF)、バッファードフッ酸(BHF)等のウェットエッチャントによって酸化シリコン膜の一部を除去して開口部KSとし、レジストを有機洗浄で除去することで、開口部KSおよびマスク部5を有するマスク層6が形成される。
【0017】
開口部KSは長手形状であり、複数の開口部KSが、ELO半導体層8のa軸方向(第1方向X)に第1周期をもって周期的に配列される。
【0018】
開口部KSの幅は、0.1μm〜20μm程度とする。開口部KSの幅が小さいほど、開口部KSからELO半導体層8に伝搬する貫通転移の数は減少する。また、後工程においてELO半導体層8の剥離も容易になる。さらに、表面欠陥の少ない有効部の面積を大きくすることができる。
【0019】
マスク層6には、上記材料を含む積層膜、例えば酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を含む積層膜を用いることもできる。
【0020】
(ELO半導体層の成膜)
半導体層8(ELO半導体層8)として、GaN系半導体層をELO法で形成する。ELO半導体層8がGaNで構成され、シード部3SがGaNを含んでいてもよい。例えば、主基板1、下地層4およびマスク層6を含むテンプレート基板20をMOCVD装置に導入し、テンプレート基板20上にGaN層を成膜する。ELO成膜条件の一例として、基板温度:1120℃、成長圧力:50kPa、TMG(トリメチルガリウム):22sccm、NH
3:15slm、V/III=6000(III族原料の供給量に対する、V族原料の供給量の比)を採用することができる。
【0021】
半導体層8の成膜では、半導体層8とマスク部5との相互反応を低減し、半導体層8とマスク部5とがファンデルワールス力で接触する状態を維持することが好ましい。すなわち、半導体層8とマスク部5とは、主にファンデルワールス力で接触している。
【0022】
(ELO半導体層の形状)
半導体層8は、平面視において開口部KSとマスク部の中央5Cとの間に位置する有効部YS(後工程にて素子部を構成する部分)を有する。半導体層8のうち、シード部3S上に位置する部分(貫通転位が多い部分)は非有効部NSとなる。すなわち、半導体層8は、相対的に貫通転位の少ない有効部YSと、相対的に貫通転位の多い非有効部NSを含む。機能層9が活性層(例えば、電子と正孔が結合する層)を含む場合、活性層は平面視で有効部YSと重なるように設けることができる。ただし、N型電極等は、平面視で非有効部NSと重なるように設けてもよい。
【0023】
貫通転位は、ELO半導体層8の厚み方向(<0001>方向、Z方向)に沿って、半導体層8の下面または内部からその表面または表層に延びる転位(欠陥)である。貫通転位は、半導体層8の表面(c面に平行)について、CL(Cathode luminescence)測定を行うことにより観察可能である。
【0024】
図1の半導体層8は、マスク部5の中央近傍にエッジ面(側面)8Eを有し、隣接するシード部3Sから成長した半導体層8と会合しない。なお、c面のELO半導体層8を島状に形成する場合、典型的には、ELO半導体層8の側面は<1−10α>面(αは任意の整数)、<11−2β>面(βは任意の整数)もしくはこれらと結晶学的に等価な面により形成される。すなわち、半導体層8のエッジ面8Eが斜め面(ファセット)を有していてもよい。
【0025】
このように、隣り合う2つのシード部3Sから逆向きに横方向成長した半導体層8同士がマスク部5上で接触(会合)せず、ギャップ(間隙)GPをもつことで、半導体層8の内部応力を低減することができる。これにより、半導体層8に生じるクラック、欠陥を低減することができる。この効果は、主基板1が異種基板である本実施形態で特に効果的となる。ギャップGPの幅は4μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。
【0026】
半導体層8は、n型のGaN系半導体でもよい(ドナーとしては、例えばシリコン)。半導体層8よりも上層に、例えばp型半導体層を含む機能層9を形成する場合(
図2参照)、半導体層8がn型ドーパントとしてシリコンや酸素を有する場合、p型ドーパント(マグネシウム等)が補償されうるところ、ギャップGPの幅を上記範囲に抑えることでこの現象を大幅に低減することができる。
【0027】
図3は、本実施形態に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。機能層9を形成する場合、
図3のようにエッジグロース9G(角部)が生じることがある。例えば、機能層9がAlGaN層を含む場合である。エッジグロースは、10μm以上の幅、高さ200〜300nm程度のサイズになることもあり、後工程の障害となるが、ギャップGPの幅を上記範囲に抑えることでエッジグロース9Gを大幅に低減する(例えば、100nm以下)ことができる。
【0028】
図4および
図5は、本実施形態に係る半導体基板の別構成を示す平面図および断面図である。
図4の半導体層8は、隣り合う2つのシード部3Sから逆向きに横方向成長した半導体層同士が、マスク部の中央5C近傍で会合し、一体化した構成を有する。この構成においては、ELO半導体層8の成膜条件、マスク部5の幅等を適宜設定することで、
図5に示すように、会合点である、マスク部の中央5Cの近傍に中空部8Cを形成させてもよい。中空部8Cの形状は、マスク部5側が幅広となる形状(例えば、断面視で錘型、滴型)である。この場合の半導体層8は、平面視で中空部8Cと重なる部分(非有効部NS)を有している。すなわち、半導体層8は、有効部YSと、有効部YSに隣接した非有効部NSを有していることになる。
【0029】
マスク層6の材料として用いられる、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン膜は、GaN系半導体と比べて熱膨張係数が小さいため、1000℃程度で会合させたELO半導体層8を室温に降温する際、熱膨張係数の違いに起因してELO半導体層8にクラックが生じうる。中空部8Cは、半導体層8の内部応力を大幅に低減する効果があるため、このようなクラックの発生を効果的に低減することができる。また、半導体層8の表面は、中空部8Cの上部にあたる部分に窪み8Dを有していてもよい。この窪み8Dも半導体層8の内部応力を緩和する効果がある。
【0030】
(機能層)
図2の半導体基板10は、半導体層8上に機能層9を含む。機能層9は、例えば、GaN系のn型半導体層、GaN系のノンドープ半導体層、GaN系のp型半導体層、導電層、および絶縁層の少なくとも1つを含む。機能層9のGaN系半導体層については、どのような成膜方法でもよい。
【0031】
機能層9は、機能層8とともに半導体デバイス(例えば、LED、レーザ)を構成するものでもよいが、これに限定されない。例えばGaN系のn型半導体層だけを設けてもよい。
【0032】
(半導体基板上での素子分離)
図6は、本実施形態に係る、素子分離の工程を示す断面図である。
図7は、本実施形態に係る素子分離の工程を示す平面図である。
図6に示すように、半導体基板10において平面視で開口部KSと重なる領域AKを、気相エッチングを用いて、下地層4に到るまで除去する。
【0033】
ここでは、下地層4、マスク層6、半導体層8および機能層9それぞれの一部が除去対象となり、除去後に形成されるトレンチTR(素子分離溝)内には、下地層4およびマスク部5が露出する。トレンチTRの開口幅は、マスク層の開口部KSの幅よりも大きくすることが望ましい。素子分離の工程によって、半導体基板10において、素子部DSを分離することができる。この段階では、素子部DSは、テンプレート基板のマスク部5とファンデルワールス結合しており、半導体基板10の一部である。
【0034】
図7に示すように、トレンチTRは、平面視において格子形状(ラティスパターン)に形成することができる。この場合、隣り合う横トレンチ(X方向に延伸)と隣り合う縦トレンチ(Y方向に延伸)とで囲まれる領域に素子部DSが1つ含まれる構成としてもよい。
【0035】
気相エッチングは、一般的なフォトリソグラフィ法で実現される。エッチング終了後に、気相エッチングのマスクとなったフォトレジストを除去する必要があるが、弱超音波を用いた有機洗浄を行えば、素子部DSがマスク部5から剥がれ落ちるおそれは少ない。
【0036】
図8は、素子分離の工程の別例を示す断面図である。
図8のように、半導体基板10において平面視で開口部KSと重なる領域およびギャップ部GPと重なる領域を、気相エッチングを用いて、下地層4に到るまで除去してもよい。こうすれば、半導体層8の第2方向(開口部KSの長手方向、Y方向)の蛇行が解消され、形状の揃った素子部DSを得ることができる。
【0037】
図9は、素子分離の工程の別例を示す断面図である。
図9のように、半導体基板10において平面視で開口部KSと重なる領域およびマスク部5中央部(非有効部NS)と重なる領域を、気相エッチングを用いて、下地層4に到るまで除去することができる。
【0038】
(テンプレート基板からの素子剥離)
図10は、素子剥離の工程を示す断面図である。半導体層8とマスク部5は、ファンデルワールス力(弱い力)で結合しているため、
図10に示すように、スタンプ装置ST等の引力(粘着力、吸引力、静電力等)によって機能層9を引き上げることで、素子部DSを容易にテンプレート基板から剥離し、半導体デバイス20とすることができる。粘弾性エラストマースタンプ、静電接着スタンプ等を用いてマスク部5から直接剥離できることは、コスト、スループット等の面で大きなメリットとなる。ただし、マスク部5と半導体層8との癒着があると剥離が難しくなるため、このような癒着を低減することの意義は大きい(後述)。粘弾性エラストマースタンプ、静電接着スタンプ等を半導体層8に接触させた後、例えば超音波による振動等を加えてもよい。この振動等によって、さらに容易に、マスク部5から半導体層8を剥離することができる。
【0039】
図11は素子剥離の工程の別例を示す断面図である。
図11に示すように、マスク部5をウェットエッチングし、半導体層8の素子部DSがシード層3とのみ接続した状態とした後にテープTP等で機械的に素子部DSをテンプレート基板7から剥離してもよい。この場合、開口部KS上をエッチングする必要がないため、大型の半導体デバイス20を形成することができる。この剥離方法は、半導体層8が分離型の場合(マスク部上にエッジ面をもつ場合)に、素子分離の工程を省くことができるメリットがある。半導体層8が一体型の場合(マスク部上にエッジ面をもたない場合)は、エッチャント流入用の掘り込み(下地層まで)を形成すればよく、素子剥離が容易というメリットがある。
【0040】
(半導体デバイス)
図10および
図11に示すように、テンプレート基板7から剥離された素子部DSは半導体デバイス20として機能する。具体的な半導体デバイス20としては、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、ショットキーダイオード、フォトダイオード、トランジスタ(パワートランジスタ、高電子移動度トランジスタを含む)等を挙げることができる。
【0041】
(電子機器)
図12は、本実施形態に係る電子機器の構成を示す模式図である。
図12の電子機器30は、半導体層8および機能層9を含む半導体デバイス20と、半導体デバイス20が実装される駆動基板23と、駆動基板23を制御する制御回路25とを含む。
図13は、本実施形態に係る電子機器の別構成を示す模式図である。
図13の電子機器30は、半導体層8および機能層9を含む半導体基板10と、半導体基板10が実装される駆動基板23と、駆動基板23を制御する制御回路25とを含む。この場合、主基板1が光透過性を有する基板(例えば、サファイア基板)であってもよい。
【0042】
電子機器としては、表示装置、レーザ出射装置(ファブリペロータイプ、面発光タイプを含む)、照明装置、通信装置、情報処理装置、電力制御装置を挙げることができる。
(ELO半導体層裏面の空隙)
以下では、半導体基板10におけるELO半導体層8の裏面(マスク部5との境界面)について説明する。
【0043】
異種基板を用い、かつマスク部5を幅広にする場合は、ELO半導体層8の裏面に空隙が生じることがある。この空隙はELO半導体層8の表面欠陥の原因(例えば、半導体層8に応力がかかった際に欠陥の起点)となり、ELO半導体層8上に形成されるデバイスの特性悪化、信頼性の低下を招くことになる。本実施形態では、横方向成膜レートを高め、ELO半導体層8とマスク部5との相互反応を低減することで、マスク部5の表面モフォロジーを改善し、結果として、ELO半導体層8の裏面の空隙およびマスク部5との癒着を低減することに成功した。
【0044】
具体的には、マスク部5の劣化を低減するため、横方向成膜レートを高め、マスク部5を横方向成長膜(ELO半導体層8)によって速やかに覆っている。MOCVDの中で、横方向成膜レートが小さい場合、マスク部5を高温下で水素および窒素に長時間曝すことになり、マスク部5の蒸発および分解が進み、表面モフォロジーの悪化、ピンホールの発生、ピットの発生等を招くおそれがあるからである。
【0045】
横方向成膜レートを高める手法は、以下のとおりである。まず、マスク層6の開口部KSから露出したシード部上に、c軸方向に成長する縦成長層を形成し、その後、a軸方向に成長する横成長層を形成する。この際、縦成長層の厚みを、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下とすることで、横成長層の厚みを低く抑え、横方向成膜レートを高めることができる。
【0046】
図14は、半導体層の横成長の一例を示す断面図である。
図14に示すように、開口部KSと重なるシード部3S上に、イニシャル成長層SLを形成し、その後、イニシャル成長層SLから半導体層8を横方向成長させることが望ましい。イニシャル成長層SLは、半導体層8の横方向成長の起点となる。半導体層8の成膜においては、イニシャル成長層SLのエッジが、マスク部5の上面に乗りあがる直前(マスク部5の側面上端に接している段階)、またはマスク部5の上面に乗り上がった直後のタイミングでイニシャル成長層SLの成膜を止める(すなわち、このタイミングで、ELO成膜条件を、c軸方向成膜条件からa軸方向成膜条件に切り替える)ことが好ましい。こうすれば、イニシャル成長層SLがマスク部5からわずかに突出している状態から横方向成膜を行なうため、半導体層8の厚み方向への成長に材料が消費されることを低減し、効果的に半導体層8を高速で横方向成長させることができる。イニシャル成長層SLは、例えば、2.0μm以上3.0μm以下の厚さに形成すればよい。
【0047】
図14のようにイニシャル成長層SLを成膜した後に半導体層8を横方向成長させることで、有効部YS内部の非貫通転位を多くする(有効部YS表面における貫通転位密度を低減する)ことができる。また、有効部YS内部における不純物濃度(例えば、シリコン、酸素)の分布を制御することができる。なお、半導体層8の成膜中の条件を適宜制御することによって、半導体層8をZ方向(c軸方向)に成長させたり、X方向(a軸方向)に成長させたりする制御が可能である。
【0048】
非貫通転位は、c軸に平行な面(厚み方向に平行な面)による断面においてCL観測される転位であり、主には基底面(c面)転位である。c軸に平行な面は、(1−100)面に平行な面(法線がY方向の面)であってもよいし、(11−20)面に平行な面(法線がX方向の面)であってもよい。
【0049】
半導体層8の有効部YSの非貫通転位密度は、有効部YSの貫通転位密度よりも大きい。換言すれば、半導体層8の有効部YSは、非貫通転位密度が貫通転位密度よりも大きい、GaN系結晶体(GaN系レイヤ)と表現することができる。この場合の非貫通転位密度は、貫通転位密度の10倍以上、例えば20倍以上とすることができる。貫通転位密度は、例えば、5×10
6〔個/cm
2〕以下とすることができる。有効部(GaN系結晶体)の幅(X方向の長さ)は、例えば、10μm以上とすることができる。また、有効部(GaN系結晶体)を、X方向(a軸方向)のサイズよりもY方向(m軸方向)のサイズが大きい長手形状とすることができる。有効部(GaN系結晶体)については、(11−20)面に平行な面による断面の非貫通転位密度が、(1−100)面に平行な面による断面の非貫通転位密度よりも大きくてもよい。また、有効部(GaN系結晶体)は、横方向(X方向)成長によって形成されるため、X方向に関して、成長初期にあたる一方の端部よりも成長末期にあたる他方の端部の方が不純物(マスク層6に含まれる原子、例えばシリコン、酸素)の濃度が低い構成とすることができる。
【0050】
マスク部5の質(厚みの均一性、膜質等)は、マスク部5が形成される下地層の表面平坦性、結晶性、材質の影響を受ける。下地層に欠陥部があると、その欠陥部からマスク部5と下地層の反応が進み、マスク部5の質が低下する。この結果、マスク部5とその上に成膜されるELO半導体層8の反応が促進され、ELO半導体の裏面(マスク部5との境界面)に空隙が発生することがある。ELO法では、マスク部5の両側から中央に向けて成膜が進むため、中央に近い部分(成膜までの時間が長い部分)に空隙が生じ易い。
【0051】
ELO半導体層8の成膜温度については、1200℃を超える高温よりも、1150℃以下の温度が好ましい。1000℃を下回るような低温においてもELO半導体層8の形成は可能であり、相互反応低減の観点ではより好ましいといえる。このような低温成膜においては、ガリウム原料としてトリメチルガリウム(TMG)を用いると、原料が十分に分解されず、ガリウム原子と炭素原子が同時にELO半導体層8に、通常より多く取り込まれることが分かった。ELO法は、a軸方向の成膜は早く、c軸方向の成膜が遅いため、c面成膜時に多く取り込まれるためであると考えられる。
【0052】
ELO半導体膜に取り込まれた炭素(カーボン)は、マスク部5との反応を低減し、マスク部5との相互反応を低減し、マスク部5との癒着などを引き起こさないことが分かっている。そのため、ELO半導体層8の低温成膜では、アンモニアの供給量を減らし、低V/III(<1000)程度で成膜することで、原料あるいはチャンバー雰囲気内の炭素元素をELO半導体層8が取り込み、マスク部5との反応を低減することができる。この場合、半導体層8が炭素(カーボン)を含む構成となる。
【0053】
また、1000℃を下回るような低温成膜では、ガリウム原料ガスとしてトリエチルガリウム(TEG)を用いることが好ましい。TEGはTMGに比べ、低温で有機原料が効率よく分解するため、横方向成膜レートを高めることができる。
【0054】
ELO半導体層8としてInGaN層を形成してもよい。InGaN層の横方向成膜は、例えば1000℃を下回るような低温で行う。高温ではインジウムの蒸気圧が高くなり、膜中に有効に取り込まれないためである。成膜温度が低温になることで、マスク部5とInGaN層の相互反応が低減される効果がある。また、InGaN層は、GaN層よりもマスク部5との反応性が低いという効果もある。InGaN層にインジウムがIn組成レベル1%以上で取り込まれるようになると、マスク部5との反応性がさらに低下するため、望ましい。ガリウム原料ガスとしては、トリエチルガリウム(TEG)を用いることが好ましい。
【0055】
マスク部5とELO半導体層8の相互反応は、様々な要因により複合的に引き起こされるため、上述の方策を組み合わせてもよい。
【0056】
ELO半導体層8の裏面における空隙の発生を抑えることで、ELO半導体層8表面の線状欠陥を低減することができる。ELO半導体層8のm面は応力に対して脆弱であり、欠陥が発生しやすい。この線状欠陥は、m面に沿った結晶の滑りによって生じたものであると考えられる。
【0057】
(ELO半導体層裏面の癒着)
異種基板を用い、かつマスク部5を幅広にする場合は、ELO半導体層8の裏面にマスク部5との癒着が生じることがある。この癒着が存在すると、ELO半導体層8と異種基板との熱膨張係数の違いによって発生する応力が緩和され難くなり、表面欠陥の原因となる。また、ELO半導体層8をテンプレート基板7から剥離する際に、剥離歩留まりを悪化させる。
【0058】
本実施形態では、ELO半導体層8とマスク部5との相互反応を低減することで、ELO半導体層8とマスク部5との癒着を低減する。具体的には、マスク部5の材質および厚みを最適化するとともに、マスク部5の膜密度を高める。マスク部5の膜密度が低い場合、MOCVD装置内の高温、水素雰囲気の成膜に対して、膜の蒸発が早かったり、エッチングレートが高くなったりする。このようなマスク部5を横方向成長するELO半導体層8が覆っていくと、マスク部5とELO半導体層8が癒着する。これは、マスク部5とELO半導体層8が混じり合った反応層が生じてELO半導体層8がマスク部5に固着してしまうからだと考えられる。
【0059】
ELO半導体層8とマスク部5が固着すると、ELO半導体層8の裏面に中間層(マスク部5と半導体層8が反応したり、混じり合ったりしている層)が形成される。この中間層(癒着層)は、フッ酸等のエッチャントを用いてマスク部5を除去した場合でも除去されず、ELO半導体層8の裏面に残る。そのため、中間層が形成されると、テンプレート基板7から剥離した後のELO半導体層8の裏面の表面モフォロジーが悪化する。癒着の影響が少ないものは、AFM(Atomic Force Microscope)で算術平均表面粗さRaが10nm以下であり、好ましいものは1nm程度となる。また、癒着の影響が大きいものは、Raが13nm程度であった。後述する剥離方法(実施例1参照)を用い、ELO半導体層8の裏面の表面粗さをAFMで測定することで、癒着の状態等を知ることができる。
【0060】
(マスク層の好適な構成)
マスク層としては、上述のシリコン酸化膜(SiO
x)のほかに、窒化チタン膜(TiN等)、シリコン窒化膜(SiNなど)、シリコン酸窒化膜(SiON)、および高融点金属膜のいずれか1つからなる単層膜あるいは2以上からなる複層膜を挙げることができる。
【0061】
ELO法に一般的に用いられる酸化シリコン膜を用いても、マスク層の成膜条件、ELO半導体層8の成膜条件の最適化により、マスク部5およびELO半導体層8間の相互反応を効果的に低減することができるが、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜でもよい。
【0062】
酸化シリコン膜は、ELO半導体層8形成中に微量ながら分解、蒸発し、ELO半導体層8に取り込まれてしまうことがあるが、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜は、高温で分解、蒸発し難いというメリットがある。
【0063】
そこで、マスク層を、シリコン窒化膜あるいはシリコン酸窒化膜の単層膜としてもよいし、下地層上にシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜をこの順に形成した複層膜としてもよいし、下地層上にシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜をこの順に形成した複層膜としてもよいし、下地層上にシリコン窒化膜、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜をこの順に形成した複層膜としてもよい。
【0064】
マスク部5のピンホール等の異常個所は、成膜後に有機洗浄などを行い、再度成膜装置に導入して同膜種を形成することで、異常個所を消滅させてもよい。一般的なシリコン酸化膜を用い、上記のような再成膜方法を用いて良質なマスク層を形成してもよい。
【0065】
(本半導体基板の評価)
以下では、半導体基板10の評価を説明する。
図15〜
図18は本半導体基板(ELO半導体層がマスク上でエッジ面をもつ構成)の評価について示す平面図および模式図である。半導体層8の裏面(マスク部との境界面8R)については、マスク部5と接する境界面の状態で評価することもできるし、半導体層8をマスク部5から剥離し、その剥離面を評価することもできる。この場合、マスク部5をウェットエッチング等で除去すれば半導体層8を剥離することができる(なお、半導体層8が一体型の場合は下地層4までの事前掘り込みを行ってもよい)。
【0066】
半導体基板10について、ELO半導体層8の表面をCL(カソードルミネセンス)法で測定した結果、有効部YSの上面8Fは、開口部KSの幅方向に沿う第1方向X(a軸方向)に10μm、第1方向と直交する第2方向Y(m軸方向)に10μmのサイズを有する少なくとも1つの低欠陥領域ALが含まれ、低欠陥領域ALでは、線状欠陥(m面滑りに起因すると考えられる、第1方向Xに対して斜めをなす線状欠陥)が測定されなかった(
図15参照、評価基準1)。より具体的には、有効部YSの上面は、第1方向Xに並ぶ複数の低欠陥領域ALと、第2方向Yに並ぶ複数の低欠陥領域ALとを含んでいた(
図15参照、評価基準2)。有効部YSの第1方向のサイズは、開口部KSの幅よりも大きかった(
図15参照、評価基準3)。
【0067】
有効部YSは、マスク部5との境界面8Rにおいて、第1方向Xに10μm、第2方向Yに10μmのサイズを有する第1領域A1と、前記サイズと同サイズであって、第1領域A1よりもマスク部5の中央側に位置し、かつマスク部5の中央5Cとの間隔PTがマスク部5の幅の30%以下である第2領域A2とを有していた。そして、有効部YSをマスク部5から剥離し、第1領域A1および第2領域A2をAFMで観察した結果、第1領域A1における長径0.1〔μm〕以上の凹部の数は、第2領域A2における長径0.1〔μm〕以上の凹部の数以下であった(
図16参照、評価基準4)。また、第1領域A1に存在する凹部の長径は1μm以下であった(以下、評価基準5)。
【0068】
また、マスク部5から剥離する前の有効部YSについて、第1領域A1および第2領域A2の断面観察をAFMで行った結果、第1領域A1における長径0.1〔μm〕以上の空隙(ボイド)の数は、第2領域A2における長径0.1〔μm〕以上の空隙の数以下であった(
図16参照、評価基準6)。
【0069】
有効部YSは、マスク部5との境界面8Rにおいて、第1方向Xに10μm、第2方向Yに10μmのサイズを有する第3領域A3と、前記サイズと同サイズであって、第3領域A3よりもマスク部5の中央側に位置した第4領域A4とを有していた。そして、有効部YSをマスク部5から剥離し、第1領域A3および第2領域A4をAFMで観察した結果、第3領域A3の癒着面積は、第4領域A4の癒着面積よりも小さかった(
図17参照、評価基準7)。さらに、第3領域A3は、マスク部5との癒着が実質的に見られない非癒着領域であった(以下、評価基準8)。なお、第4領域A4は、マスク部の中央5Cとの間隔PTがマスク部5の幅の30%以下となる位置であった。
【0070】
有効部YSは、第1部分P1と、第1部分P1よりも開口部KSから遠く、開口部KSとの間隔KTが10μm以上である第2部分P2とを含み、第1部分P1をマスク部5から剥離したときの剥離面F1の表面粗さ(Ra)を第1表面粗さ、第2部分P2をマスク部5から剥離したときの剥離面F2の表面粗さ(Ra)を第2表面粗さとして、第1表面粗さは、第2表面粗さ以下であった(
図18参照、評価基準9)。ここでは、各剥離面の5μm×5μmの範囲についての算術平均あらさ(Ra)を、AFMで測定した粗さ曲線の一部を基準長さで抜き出し、その区間の凹凸状態を平均値で表すことができる。さらに、第1表面粗さに対する第2表面粗さの比の値が、1.0〜10であった(評価基準10)。さらに、有効部YSをマスク部5から剥離したときの剥離面(F1・F2を含む)に、第1方向に10μm、第2方向に10μmのサイズを有し、長径0.1〔μm〕以上の凹部が存在しない平坦領域が含まれていた(評価基準11)。また、第2表面粗さが10〔nm〕未満であった(評価基準12)。また、平面視において、第1部分P1が開口部KSに隣接するとともに、第2部分P2とマスク部の中央5Cとの間隔PTがマスク部5の幅の30%以下であった(評価基準13)。また、第1部分P1の剥離面F1に含まれる長径0.1μm以上の凹部が剥離面に占める面積割合を第1凹部占有率、第2部分の剥離面F2に含まれる長径0.1μm以上の凹部が剥離面に占める面積割合を第2凹部占有率として、第1凹部占有率は、第2凹部占有率以下であった(評価基準14)。ここでは、各剥離面の5μm×5μmの範囲についてAFMにて凹部(空隙領域)を測定し、その長径、占有率等を得ることができる。
【0071】
また、第1部分P1の剥離面F1における不純物濃度は、第2部分P2の剥離面F2における不純物濃度よりも大きかった(評価基準15)。
【0072】
さらに、有効部YSの上面8Rにおける貫通転位密度が5×10
6〔個/cm
2〕以下であった(評価基準16)。
【0073】
上述のとおり、半導体層8の表面陥生を低減するには、マスク部5との癒着を低減して応力の緩和を行うとともに、表面欠陥(m面滑り)の原因となる空隙の発生を低減することが重要である。
【0074】
マスク5の開口部KSからマスク5上に横方向成長するELO半導体層8の結晶性は極めて高い。半導体基板10では、マスク部5と半導体層8の相互反応を低減することで、半導体層8の裏面に発生する空隙、癒着を低減し、主基板1からの応力を効果的に緩和することができている。これにより、有効部YSに発生する欠陥は半導体層8の表面まで貫通することなく、その内部に閉じ込められていることがわかる。
【0075】
図19〜
図22は別構成(ELO半導体層がマスク上でエッジ面をもたない一体型)の半導体基板の評価について示す平面図および模式図である。この場合も、前記評価基準1〜16が満たされていることが分かった。
【0076】
図23は、半導体基板10(主基板はシリコン基板)のELO半導体層8を対象としたCL(カソードルミネセンス)像である。有効部YSには、暗点も暗線も観測されない。非有効部NSにのみ、シリコン基板とGaNの格子定数差からくる貫通転位が10
19/cm
2程度存在している。
【0077】
図24は、半導体基板10(主基板はサファイア基板)のELO半導体層8を対象としたCL(カソードルミネセンス)像である。ELO半導体層8は、テンプレート基板からメカニカルに剥離しているため、非有効部は少しダメージを受けており、剥離面が平坦ではないため、CL像が少し乱れているものの、有効部には、貫通転位である暗点、暗線等は見られないか、もしくは低い転位密度を実現できている。
【0078】
図25は、半導体基板10のELO半導体層裏面(剥離面)を対象としたCL像である。有効部YSには、空隙も癒着も見られないことがわかる。
【0079】
(ELO成膜の参考例)
図26は、参考例のGaN層表面のCL像である。この参考例では、主基板としてサファイアを用い、ELO法によるGaN層を製膜している。開口部上には、高密度の貫通転位(Dislocation)である暗点(10
18〜10
19/cm
2)と暗線の両方が存在している。また、マスク部上においても、開口部上よりは密度は低下するものの、暗点と暗線が観測される。
【0080】
図27は、参考例のGaN層表面のCL像である。この参考例では、主基板としてシリコンを用い、ELO法によるGaN層を製膜している。開口部上には、10
19/cm
2程度の暗点が観測され、マスク部上においても暗線が観測されている。
【0081】
図28は、参考例のGaN層表面のCL像である。この参考例では、主基板としてシリコンを用い、ELO法によるGaN層を製膜している。マスク部上の端部に多数の空隙が認められる。
【0082】
図29は、参考例のELO法成膜のGaN層裏面(剥離面)を対象とした光学顕微鏡像である。マスク部とGaN層との癒着NL(反応層)が見てとれる。このようなGaN層をマスク部からメカニカルに(例えば、ダイヤモンドペンを使用して)剥がすと、
図30の剥がれ領域NAに示されるように、テンプレート基板から、GaN層とマスク部とが一緒になって剥がれてしまう。
【0083】
参考例から、ELO法さえ用いれば空隙、癒着がなくなり、マスク部上の表面欠陥が大幅に低減するというものではないことがわかる。暗線(線状欠陥)に関しては、発生すると広範囲に影響がわたるため、その低減には大きな意義がある。
【0084】
(実施例1)
図31は、実施例1の半導体基板の構成を示す断面図である。主基板1には、(111)面を有するシリコン基板を用いた。下地層4のバッファ層2は、AlN層(例えば、30nm)とした。下地層4のシード層3は、第1層であるAl
0.6Ga
0.4N層(例えば、300nm)と、第2層であるGaN層(例えば、1〜2μm)とがこの順に形成されたグレーデット層とした。すなわち、第2層(Ga:N=1:1)におけるGaの組成比(1/2=0.5)は、第1層(Al:Ga:N=0.6:0.4:1)におけるGaの組成比(0.6/2=0.3)よりも大きい。
【0085】
マスク層6には、酸化シリコン膜(SiO
2)と窒化シリコン膜(SiN)とをこの順に形成した積層体を用いた。酸化シリコン膜の厚みは、例えば0.3μm、窒化シリコン膜の厚みは、例えば70nmである。酸化シリコン膜および窒化シリコン膜それぞれの成膜には、プラズマ化学気相成長(CVD)法を用いた。
【0086】
半導体層8はGaN層とし、MOCVD装置を用いてELO成膜を行った。まず、開口部KSに露出したシード層3(第2層のGaN層)の表面にELO半導体層8が選択成長し、引き続いてマスク部5上に横方向成長する。この際は、マスク部5上においてその両側から横方向成長する半導体層同士が会合する前に成長を停止させた。この時のギャップGPは2μmであった。
【0087】
マスク部5の幅WMは50μm、開口部KSの幅は5μm、ELO半導体層8の横幅WLは53μm、有効部YSの幅(X方向のサイズ)は24μmであった。また、ELO半導体層8の層厚は5μmであり、ELO半導体層8のアスペクト比は、53μm/5μm=10.6となり、非常に高いアスペクト比が実現された。
【0088】
実施例1で得られた半導体基板10を評価したところ、上述の評価基準1〜16が満たされていることが分かった。
【0089】
半導体層8の裏面評価の際の半導体層8の剥離については、以下のように行うことができる。例えば、マスク層6がシリコンの、酸化膜、窒化膜または酸窒化膜で形成されている場合、素子分離の工程(
図8・
図9参照)を行った半導体基板10を、フッ酸のエッチャントに10〜60分程度つけておくことで、マスク層6がエッチャントに溶解し、半導体層8をテンプレート基板7から剥離することができる。
【0090】
別の剥離方法として、
図32に示すように、半導体基板10を、フッ酸のエッチャントにつけて、マスク層6を溶解し、その後、半導体層8の表面に粘着テープ(例えば、半導体ウエハーをダイシングする際に用いる粘着質のダイシングテープ)を張り付け、そのまま、ペルチェ素子を用いて、粘着テープが付いた状態の半導体基板10を低温に下げるてもよい。この際に、一般に半導体よりも熱膨張係数の大きな粘着テープは大きく収縮し、半導体層8に応力を印可する。半導体層8は、開口部KS内でのみテンプレート基板7と結合しており、またマスク部5が除去されているため、粘着テープからの応力がテンプレート基板7との結合部に効果的に印可され、機械的に、その結合部をへき開、もしくは破壊することができる。すなわち、結合部をドライエッチングで除去しなくて済む。
【0091】
(実施例2)
図33は、実施例2の半導体基板の構成を示す断面図である。実施例2では、マスク部5上でELO半導体層8がエッジ面をもたない一体型を採用した。マスク部5の幅は50μm、開口部KSの幅は5μmである。膜応力の緩和の観点から、中空部8Cの高さは、1μm以上が好ましい。中空部8Cの底面の幅も1μm以上が好ましく、より好ましくは2μm以上である。
【0092】
実施例2で得られた半導体基板10を評価したところ、上述の評価基準1〜16が満たされていることが分かった。
【0093】
(実施例3)
図34は、実施例3の半導体基板の構成を示す断面図である。実施例3では、開口部KSの幅が1μm以下の、700nmであり、マスク部5の幅が、100μmとした。実施例3では、有効部YSの幅を広くとることができるため、高出力レーザ半導体素子(リッジ幅が40μm程度)等に好適となる。
図34には、半導体層8がマスク部5上でエッジ面をもつ構造を示したが、マスク部5上でエッジをもたない一体型でもよい。
【0094】
実施例3で得られた半導体基板10を評価したところ、上述の評価基準1〜16が満たされていることが分かった。
【0095】
(実施例4)
図35は、実施例4の構成を示す断面図である。実施例4では、半導体層8上に、LEDを構成する機能層9を成膜する。半導体層8は、例えばシリコン等がドープされたn型である。機能層9は、下層側から順に、活性層34、電子ブロッキング層35、およびGaN系p型半導体層36を含む。活性層34は、MQW(Multi-Quantum Well)であり、InGaN層およびGaN層を含む。電子ブロッキング層35は、例えばAlGaN層である。GaN系p型半導体層36は、例えばGaN層である。アノード38は、GaN系p型半導体層36と接触するように形成し、カソード39は、半導体層8と接触するように形成される。
【0096】
半導体層裏面の空隙は表面欠陥(線状欠陥)の原因となり、半導体デバイスの特性を低下させる。また、半導体デバイスが発光素子である場合、半導体層裏面の空隙は出射光の面内均一性を低下させる。実施例6ではELO半導体層8上に素子部(発光素子部)DSを形成し、これを剥離して発光素子である半導体デバイス20を得ることができるため、これらの問題を改善することができる。具体的には、半導体デバイス20の発光領域に欠陥は見られなかった。
【0097】
図36は、実施例4の適用例を示す断面図である。実施例4によって、赤色マイクロLED20R、緑色マイクロLED20G、青色マイクロLED20Bを得ることができ、これらを、駆動基板(TFT基板)23に実装することで、マイクロLEDディスプレイ30D(電子機器)を構成することができる。一例として、駆動基板23の複数の画素回路27に、赤色マイクロLED20R、緑色マイクロLED20G、青色マイクロLED20Bを、導電樹脂24(例えば、異方性導電樹脂)等を介してマウントし、その後、駆動基板23に制御回路25およびドライバ回路29等を実装する。ドライバ回路29の一部が駆動基板23に含まれていてもよい。
【0098】
(実施例5)
図37は、実施例5の構成を示す断面図である。実施例5では、半導体層8上に、半導体レーザを構成する機能層9を成膜する。機能層9は、下層側から順に、n型光クラッド層41、n型光ガイド層42、活性層43、p型光ガイド層44、p型光クラッド層45、電子ブロッキング層46、およびGaN系p型半導体層47を含む。各ガイド層42・44には、InGaN層を用いることができる。各クラッド層41・45には、GaN層もしくはAlGaN層を用いることができる。アノード48はGaN系p型半導体層47と接触するように形成する。
【0099】
実施例5では、
図37に示すように、素子部DSを剥離した後に、カソード49を半導体層8の裏面に形成する。よって、半導体層8裏面の品質がデバイス特性に影響する。
【0100】
(実施例6)
図38は実施例6の構成を示す断面図である。
図39は実施例6の別構成を示す断面図である。実施例6では、主基板1に、表面凹凸加工されたサファイア基板を用いる。下地層4は、バッファ層2とシード層3を有する。半導体層8は、マスク5上にエッジ面を有する形態(
図38)でも、マスク上にエッジ面を有さない一体型(
図39)でもよい。実施例6では、主基板1上に(20−21)面を持つGaN層を下地層4として成膜できる。この場合、ELO半導体層8は下地層4において結晶主面である(20−21)面となり、半極性面のELO半導体層8を得ることができる。半極性面上に、レーザ、LED用の機能層を設けることで、ピエゾ電界が少なく、活性層において、電子とホールの再結合確率が高まるといったメリットがある。なお、表面凹凸加工されたサファイア基板を用いることで、主基板1上に(11−22)面を持つGaN層を下地層4として成膜することもできる。
【0101】
(製造装置)
半導体基板10の製造方法には、少なくとも、テンプレート基板7上にELO法を用いて半導体層8を形成する工程が含まれる。主基板1上に下地層4およびマスク層6を形成する工程が含まれていてもよい。
【0102】
半導体基板10は、例えば
図40に記載の半導体基板の製造装置で作製することができる。半導体基板の製造装置70は、少なくとも、テンプレート基板7上にELO法を用いて半導体層8を形成する工程を行う半導体層形成部71と、半導体層形成部71を制御する制御部72とを含む。半導体層形成部71はMOCVD装置を含んでいてもよく、制御部72がプロセッサおよびメモリを含んでいてもよい。制御部72は、例えば、内蔵メモリ、通信可能な通信装置、またはアクセス可能なネットワーク上に格納されたプログラムを実行することで半導体層形成部71を制御する構成でもよく、このプログラムおよびこのプログラムが格納された記録媒体等も本実施形態に含まれる。半導体基板の製造装置70は、主基板1上に下地層4およびマスク層6を形成する工程を行うテンプレート基板形成部、半導体層8上に機能層9を形成する工程を行う機能層形成部等を含んでいてもよい。さらに、素子剥離の工程を行う半導体デバイス製造装置を構成することもできる。半導体デバイス製造装置は素子分離の工程を行ってもよい。半導体デバイス製造装置が半導体基板の製造装置70を含んでいてもよい。
【0103】
(附記事項)
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【解決手段】異種基板(1)と、開口部(KS)およびマスク部(5)を有するマスク層(6)と、開口部と重なるシード部(3S)と、シード部上およびマスク部上に配された、GaN系半導体を含む半導体層(8)とを備え、半導体層の有効部(YS)の上面は、開口部の幅方向に沿う第1方向に10μm、第1方向と直交する第2方向に10μmのサイズを有する少なくとも1つの低欠陥領域(AL)を含み、低欠陥領域(AL)では、CL法による線状欠陥が測定されない。