(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明の洗濯機は、被洗浄物と洗浄水を収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の内部の被洗浄物を押圧可能に進退自在に構成された押圧部と、前記洗浄槽の内部に給水する給水装置と、前記洗浄槽の内部の被洗浄物から洗浄水と空気とを吸引する吸引装置と、前記押圧部、給水装置、吸引装置等を制御して、洗い工程、すすぎ工程、および脱水工程を実行する制御部とを備えたものである。この構成によって、被洗浄物に機械力を作用させて洗ったり、絞ったりすることが不適切な被洗浄物に対し、ねじり等の機械力を加えず、かつ、従来より小型の洗浄槽の内部ですすぎおよび/または脱水を効率的に行うことができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記制御部は、前記すすぎ工程において、前記押圧部で被洗浄物を押圧するとともに、前記吸引装置によって前記洗浄槽の内部の圧力を低下させつつ、前記給水装置によって前記洗浄槽の内部に給水するように構成されたものである。この構成によって、押圧部を膨張圧縮させつつ通水すすぎを行うことができ、被洗浄物に機械力を作用させずに、より効率的なすすぎを行うことができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記制御部は、前記脱水工程において、前記押圧部で被洗浄物を押圧した状態で、前記吸引装置によって前記洗浄槽の内部の被洗浄物に含まれる洗浄水を前記洗浄槽の内部の空気とともに吸引して、被洗浄物の脱水を行うように構成されたものである。この構成によって、被洗浄物に機械力を作用させずに、より効率的な脱水を行うことができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれかの発明において、前記洗浄槽と前記吸引装置との間に、前記吸引装置によって吸引された洗浄水と空気とを分離させる分離機構を備えたものである。この構成によって、吸引された洗浄水による吸引力の低下を防止するこ
とができ、すすぎや脱水の工程の後半においても高い効果を維持することができる。
【0016】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれかの発明において、前記洗浄槽の内部に外気を導入する外気導入部を備えたものである。この構成によって、吸引装置の駆動による被洗浄物からの洗浄水の吸引と同時に外気を被洗浄物の内部に送り込むことが可能となる。これによって、さらに効率的かつ効果の大きいすすぎや脱水を行うことができる。
【0017】
第6の発明は、特に、第5の発明において、前記外気導入部は、前記洗浄槽の内部に導入される外気導入量を調節可能な風量調整部を有し、前記制御部は、前記風量調整部によって導入される風量を、前記すすぎ工程および/または前記脱水工程の進行に応じて調節するように構成されたものである。この構成によって、すすぎや脱水の進行に応じて導入される風量を最適に制御し、より効率的かつ効果の大きいすすぎや脱水を行うことができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の断面図である。
図2は、本実施の形態における洗濯機の蓋体を開いた状態の断面図である。
図3は、本実施の形態における洗濯機の動作を示す模式図である。
図4は、本実施の形態における洗濯機のすすぎ工程における動作を示すタイムチャートである。
図5は、本実施の形態における洗濯機の通水すすぎ動作時の断面図である。
【0020】
図1および
図2において、洗濯機1は、下部の水槽部6と、上部の蓋体5とで構成されている。水槽部6は、所定の深さを有する方形状に形成された洗浄槽4を備えている。洗浄槽4の上面に開口部3が形成され、衣類等の洗濯物である被洗浄物2が出し入れされる開口である。蓋体5は、水槽部6の上辺の後縁にヒンジ部6aによって回動自在に取り付けられ、洗浄槽4の開口部3を開閉する。
【0021】
洗浄槽4の底部4aには、使用者によって被洗浄物2が形を整えて収容される。本実施の形態において、被洗浄物2は、例えば、セーター、カーディガン等の毛織物や、極細の繊維で作られたデリケートな素材のスカーフ等、被洗浄物2に機械力が作用する一般的な洗濯機で洗うと型崩れしたり痛みやすいものが有効である。
【0022】
蓋体5の前面には、ハンドル5aが設けられている。蓋体5は、使用者がハンドル5aを持って矢印R1方向へ回動させることによって開口部3を開閉し、開いた状態で保持されるように構成されている。蓋体5は、開口部3を閉じるとロック装置(図示せず)により施錠されて閉じた状態に保持される。また、開くときはハンドル5aの操作でロック装置が解錠される。
【0023】
蓋体5の内側には、加圧減圧部7が設けられている。本実施の形態において、加圧減圧部7は、2組の第1の加圧減圧部7aと第2の加圧減圧部7bとで構成されている。具体的には、第1の加圧減圧部7aは、押圧部8aと加圧ポンプ10aと開閉弁11aとを含む。第2の加圧減圧部7bは、押圧部8bと加圧ポンプ10bと開閉弁11bとを含む。
【0024】
加圧減圧部7(7a、7b)は、ゴムや合成樹脂等で蛇腹状に形成された可撓性を有する袋状の押圧部8(8a、8b)と、この押圧部8(8a、8b)にホース9(9a、9b)を通して連通し、押圧部8(8a、8b)の内部に気体または液体などの流体を供給する加圧ポンプ10(10a、10b)と、押圧部8(8a、8b)に供給された流体を
排出する開閉弁11(11a、11b)とで構成されている。以降、複数を示すa、bの符号については、特に区別の必要がない限りは省略して表記する。
【0025】
2つの加圧減圧部7a、7bは蓋体5の内側に並べて設けられている。押圧部8a、8bは、蓋体5の洗浄槽4側に取り付けられており、膨張収縮することによって伸縮自在に設けられ、洗浄槽4の底部4aに収容された被洗浄物2に対して進退自在に構成されている。押圧部8は、被洗浄物2を押圧する押圧面8cと、蛇腹状の伸縮部8dとを有する。また、押圧部8は、押圧面8cが洗浄槽4の底部4aに届く程度まで伸長する。
【0026】
加圧減圧部7には、押圧部8(8a、8b)の内部が所定の圧力になると開放して外部へ排出する定圧開放弁(図示せず)が設けられている。定圧開放弁は、押圧部8が所定の圧力を超えて加圧されることを防ぐ。なお、本実施の形態では、押圧部8の内部に供給される流体を、空気として説明する。
【0027】
蓋体5には変形自在な中空のパッキン12が押圧部8a、8bの外側に環状に設けられている。パッキン12は、蓋体5が閉じられた際に洗浄槽4の開口部3の周縁部に沿って凹状に形成されたシール部13と密接する。これにより、蓋体5が閉じられた際に洗浄槽4の内部は水密、気密空間になり、洗い、すすぎ、脱水の各工程が実行される際に、水や空気が開口部3から外部に漏れることがない。
【0028】
蓋体5には洗浄槽4に洗浄水を供給する給水経路16が設けられている。給水経路16には給水弁14(給水装置)が設けられ、洗剤ケース15を介して洗浄槽4の内部に連通している。給水弁14が開閉されることにより、洗浄槽4の内部への水道水(洗浄水)の給水と停止が行われる。
【0029】
また、水位検知部17が、洗浄槽4の内部と連通するように設けられている。水位検知部17は、上方に開口部を有する水位検知槽18と、水位検知槽18の内部の水位の変動に応じて上下動するフロート19と、フロート19が所定の位置まで上昇したときに検知する水位スイッチ20を有している。
【0030】
洗浄槽4の底部4aには、洗い工程等で使用された洗浄水を排出する排水部21が形成されている。排水部21は、排水弁22が設けられた排水経路23に連通している。排水弁22が開閉されることにより、洗浄槽4の内部の洗浄水の排水と停止が行われる。
【0031】
また、水槽部6には、洗浄槽4の内部の水位が所定以上になったときに、洗浄槽4の内部の洗浄水を外部に排水するための溢水経路24が設けられている。溢水経路24は、洗浄槽4の上部に溢水孔24aを有し、排水弁22の下流側で排水経路23と接続されている。
【0032】
溢水経路24には溢水弁41が配設されている。溢水弁41は、一種の逆止弁である。溢水弁41は、洗い工程およびすすぎ工程においては、溢水孔24aから溢水経路24に流出した洗浄水を通過させて機外へ排出する。溢水弁41は、脱水工程においては、吸引ポンプ27で洗浄槽4の内部の空気が吸引された場合に、溢水経路24からの外気の通過を防止し、洗浄槽4の内部へ流入させない。
【0033】
洗浄槽4の底部4aの略中央部には、吸引口25が設けられている。吸引口25は、脱水経路26を経て被洗浄物2からの洗浄水を吸引する吸引ポンプ27(吸引装置)と連通している。
【0034】
洗浄槽4の内部に連通する外気導入部28が水槽部6に設けられている。外気導入部2
8は、洗浄槽4の内部に溜められる洗浄水の水位より上方に開口が設けられ、この開口は水位検知部17の上部に接続されている。この構成によって、外気が洗浄槽4の内部と連通している水位検知部17を通して洗浄槽4の内部に導入される。外気導入部28は、吸引ポンプ27によって洗浄槽4の内部の空気が吸引されたときに、洗浄槽4の外部から洗浄槽4の内部に外気を導入する。導入される外気は、機内または機外のいずれからであってもよい。外気導入部28には、導入される風量を調節可能な風量調整弁29(風量調整部)が設けられている。
【0035】
吸引ポンプ27と脱水経路26との間には、気液分離部30(分離機構)が設けられている。気液分離部30は、吸引ポンプ27によって吸引された洗浄槽4の内部の空気と被洗浄物2から吸引された洗浄水とを分離し、吸引された洗浄水を内底部に貯水する。気液分離部30は、略円筒形の耐圧容器で構成され、上方に脱水経路26と連通する二次側通風口31を有し、吸引経路32を通して吸引ポンプ27と連通する一次側通風口33を備えている。
【0036】
一次側通風口33と二次側通風口31との間には壁34が設けられている。壁34は、気液分離部30の上部内面から下方へ突出するように形成されている。壁34は、二次側通風口31から気液分離部30の内部に吸引された洗浄水が、一次側通風口33に侵入するのを防止する。
【0037】
気液分離部30の底部には脱水排水口35が設けられている。脱水排水口35は、機外に開放された脱水排水経路36に連通されている。脱水排水経路36には脱水排水弁37が配設されている。気液分離部30によって空気と分離され、気液分離部30の内底部に貯水された洗浄水は、脱水排水弁37が開かれることによって、機外に排水される。
【0038】
気液分離部30の内部の側壁に溢水検知部38が設けられている。溢水検知部38は、例えば、1対の電極等で構成され、気液分離部30の内部に貯水された洗浄水が所定量に達すると脱水排水弁37を開いて機外に排水する。溢水検知部38は、溢水検知部38によって気液分離部30の内部の洗浄水が所定量に達したことが検知されたときに、洗浄水の水面と壁34の下端との間に一定の距離が確保される高さ位置に設置されている。
【0039】
脱水経路26、吸引ポンプ27、気液分離部30、吸引経路32、脱水排水弁37、脱水排水弁37より上流側の脱水排水経路36のそれぞれの構造体および互いの接続部は、洗浄槽4の外部に対し気密および水密に構成されている。
【0040】
制御部39が、蓋体5の内部の側面部に配設されている。また、操作表示部40が制御部39の上面に設けられている。制御部39は、加圧ポンプ10、開閉弁11、給水弁14、排水弁22、吸引ポンプ27、風量調整弁29、脱水排水弁37等を制御し、洗い工程、すすぎ工程、および脱水工程を逐次実行する。
【0041】
以上のように構成された洗濯機1について、以下その動作、作用を説明する。
【0042】
使用者は、蓋体5の上面前部に設けられた操作表示部40から、運転コースの選択や各工程の時間等の設定内容を入力する。制御部39は、設定内容に基づいて、洗いから脱水までの工程を一連の動作として実行する。使用者は、洗い工程のみを実行するなど、任意に選択することができる。また、この設定作業は、後述する被洗浄物2をセットした後に行われてもよい。
【0043】
使用者は、ハンドル5aを操作して解錠した後、蓋体5を開いて洗浄槽4の底部4aに被洗浄物2の形を整えてセットする。被洗浄物2の大きさによっては、折りたたんでセッ
トしてもよい。被洗浄物2のセットが完了し、蓋体5が閉じられて施錠されると、制御部39は、操作表示部40で設定された運転コースに応じて運転を開始する。
【0044】
運転コースの最初の洗い工程において、制御部39は、初めに給水動作を行う。制御部39が給水弁14を開放することにより、給水経路16から洗浄槽4の内部に洗浄水として水道水と洗剤が供給される。このとき、洗浄水は徐々に被洗浄物2に浸透し、被洗浄物2の繊維の間に含まれた状態となる。制御部39は、洗浄水が洗浄槽4の内部に所定水位まで供給され、水位検知部17の水位スイッチ20により所定の水位を検知すると給水弁14を閉止する。
【0045】
制御部39は、給水が終わると、まず、第1の加圧減圧部7aの開閉弁11aを閉じて加圧ポンプ10aを所定時間、又は、押圧部8aの内部が所定圧に到達するまで駆動する。これにより、押圧部8aの内部に空気を供給して押圧部8aを膨張させる。
図3(a)に示されるように、伸縮部8dが伸長し、押圧部8aが被洗浄物2に向かって伸びると、押圧部8aの下方の被洗浄物2は押圧部8aの押圧面8cによって押圧される。被洗浄物2の押圧された部分は圧縮され、厚みが薄くなる。このとき、制御部39は、第2の加圧減圧部7bの開閉弁11bを開放し、押圧部8bを収縮可能にする。
【0046】
押圧部8aの膨張により被洗浄物2が圧縮されて体積変化することに伴い、被洗浄物2の内部に含まれる洗浄水は、被洗浄物2から押し出される。これによって、被洗浄物2の内部で水流が発生し、被洗浄物2に付着していた汚れがその水流により繊維から離れて除去される。
【0047】
また、被洗浄物2の内部に含まれる洗浄水は、被洗浄物2の内部で押圧部8aの下方から押圧部8bの下方へ矢印Aで示される方向へ移動する。そして、このように移動する洗浄水は、押圧部8bの下方の被洗浄物2を膨張させながら押圧部8bの押圧面8cを上方へ押し上げ、開放されている開閉弁11bから押圧部8bの内部の空気を排出して押圧部8bを収縮させる。
【0048】
次に、制御部39は、第2の加圧減圧部7bの開閉弁11bを閉じて加圧ポンプ10bを所定時間、又は、押圧部8bの内部が所定圧に到達するまで駆動し、押圧部8bの内部に空気を供給して押圧部8bを膨張させる。
図3(b)に示されるように、伸縮部8dが伸長し、押圧部8bが被洗浄物2に向かって伸びると、被洗浄物2は押圧部8bの押圧面8cによって押圧される。被洗浄物2の押圧された部分は圧縮され、厚みが薄くなる。このとき、制御部39は第1の加圧減圧部7aの開閉弁11aを開放し、押圧部8aを収縮可能にする。
【0049】
押圧部8bの膨張により被洗浄物2が圧縮されて体積変化することに伴い、被洗浄物2の内部に含まれる洗浄水は、被洗浄物2から押し出される。これによって、被洗浄物2の内部で水流が発生し、被洗浄物2に付着していた汚れがその水流により繊維から離れて除去される。
【0050】
また、被洗浄物2の内部に含まれる洗浄水は、被洗浄物2の内部で押圧部8bの下方から押圧部8aの下方へ矢印Bで示される方向へ移動する。そして、このように移動する洗浄水は、押圧部8aの下方の被洗浄物2を膨張させながら押圧部8aの押圧面8cを上方へ押し上げ、開放されている開閉弁11aから押圧部8aの内部の空気を排出して押圧部8aを収縮させる。
【0051】
このように、洗い工程では、押圧部8aと押圧部8bを交互となる異なるタイミングで膨張と収縮(例えば、押圧部8aの膨張による加圧および押圧部8bの収縮による減圧を
1秒、押圧部8bの膨張による加圧および押圧部8aの収縮による減圧を1秒)を所定時間(例えば、10分)繰り返すことにより、被洗浄物2に対して押し洗い効果を発揮させることができる。すなわち、被洗浄物2に撹拌や叩き洗い等による機械力が作用することなく、被洗浄物2の内部に多方向の水流を発生させて汚れを除去することができる。
【0052】
洗い工程から脱水工程までを一貫して実行する洗濯コースが設定された場合、制御部39は、洗い工程に続いて、すすぎ工程および脱水工程を実行する。
【0053】
すすぎ工程では、通常、給水経路16から洗浄槽4の内部に供給される新たな水道水を使用して、すすぎが複数回行われる。各すすぎにおいて、例えば、排水動作、中間脱水動作、排水動作の後、通水すすぎ動作が行われる。すすぎ工程において、制御部39は、加圧ポンプ10、開閉弁11、給水弁14、排水弁22、吸引ポンプ27、風量調整弁29、脱水排水弁37等を、
図4に示されるように制御する。
【0054】
排水動作では、排水弁22が開放され、洗浄槽4の内部の洗浄水が排水経路23を介して機外に排水される。中間脱水動作では、排水弁22が開放された状態のまま、開閉弁11a、11bが閉じられて加圧ポンプ10a、10bが駆動され、押圧部8a、8bが膨張する。これによって、被洗浄物2は、押圧部8a、8bそれぞれの押圧面8cによって押圧されて圧縮され、被洗浄物2が含んでいる洗浄水の一部が強制的に排水される。
【0055】
通水すすぎ動作では、
図5に示されるように、制御部39は、排水弁22を閉じた状態で、開閉弁11a、11bを閉じて加圧ポンプ10a、10bを駆動し、押圧部8a、8bを膨張させる。これによって、被洗浄物2は、押圧部8a、8bそれぞれの押圧面8cによって押圧されて圧縮される。
【0056】
制御部39は、加圧ポンプ10a、10bを駆動すると同時に、吸引ポンプ27を駆動する。このとき、風量調整弁29は開かれており、脱水排水弁37は閉じられている。したがって、吸引ポンプ27が駆動されることによって、洗浄槽4の内部の圧力は低下していくと同時に、外気が外気導入部28から洗浄槽4の内部に導入される。導入された外気は、さらに押圧部8a、8bで押圧された状態の被洗浄物2の内部に導入される。このとき、給水弁14が開けられることにより、洗浄槽4の内部へ水道水が給水される。
【0057】
外気導入部28から洗浄槽4の内部に導入された外気は、押圧部8によって圧縮された被洗浄物2から押し出され、繊維間に留まっている洗浄水とともに吸引ポンプ27によって吸引され、吸引口25へと移動する。これによって、被洗浄物2の内部の洗浄水の洗剤濃度が希釈され、すすぎが進行する。洗浄水とともに吸引された空気は、吸引口25から脱水経路26を経て、二次側通風口31から気液分離部30の内部へ導かれる。そして、気液分離部30の上部に設けられた一次側通風口33から吸引ポンプ27に吸引され、洗浄水と分離される。洗浄水は、
図5に示されるように、気液分離部30の内底部に貯水される。
【0058】
なお、加圧ポンプ10で供給される空気によって膨張された押圧部8の内部の圧力は、例えば、定圧開放弁等によって所定の圧力に保たれ、被洗浄物2は一定の圧力で加圧された状態に維持される。
【0059】
制御部39は、すすぎ工程を実行した後、脱水工程を実行する。脱水工程では、まず、制御部39は排水弁22を開放し、洗浄槽4の内部の洗浄水を排水部21から排水経路23を通じて機外に排水する。このとき、制御部39は風量調整弁29を開放する。これによって、洗浄槽4の内部は外気導入部28を介して外気と連通され、排水が円滑に行われる。
【0060】
排水後、制御部39は、排水弁22が開放されたままの状態で、加圧ポンプ10a、10bを駆動する。このとき、開閉弁11a、11bは閉じられている。押圧部8a、8bの内部に空気が供給され、押圧部8a、8bは膨張する。押圧部8a、8bが膨張することにより被洗浄物2が押圧されて圧縮され、被洗浄物2に含まれている洗浄水の一部が排水部21から排水経路23を介して機外に排水される。
【0061】
次に、制御部39は、加圧ポンプ10a、10bを駆動してから所定時間T1(例えば、1分)後、被洗浄物2が押圧部8a、8bによって加圧された状態で排水弁22を閉じ、吸引ポンプ27を駆動する。吸引ポンプ27が駆動されることによって、外気が外気導入部28から洗浄槽4の内部に導入される。導入された外気は、さらに押圧部8a、8bで押圧された状態の被洗浄物2の内部に導入される。このとき、風量調整弁29は開かれており、脱水排水弁37は閉じられている。
【0062】
なお、加圧ポンプ10で供給される空気によって膨張された押圧部8の内部の圧力は、例えば、定圧開放弁等によって所定の圧力に保たれ、被洗浄物2は一定の圧力で加圧された状態に維持される。
【0063】
外気導入部28から洗浄槽4の内部に導入された外気は、押圧部8によって圧縮された被洗浄物2から押し出され、繊維間に留まっている洗浄水とともに吸引ポンプ27によって吸引され、吸引口25へと移動する。
【0064】
吸引口25の近傍まで運ばれた洗浄水は、表面張力により被洗浄物2の繊維間に留まろうとするが、気流によるせん断力によって繊維から分離され、吸引口25から脱水経路26を経て気液分離部30へと運ばれる。
【0065】
洗浄水とともに吸引された空気は、吸引口25から脱水経路26を経て、二次側通風口31から気液分離部30の内部へ導かれる。そして、気液分離部30の上部に設けられた一次側通風口33から吸引ポンプ27に吸引される。空気とともに吸引された洗浄水は、一次側通風口33と二次側通風口31との間に設けられた壁34によって、一次側通風口33に侵入することなく重力により落下し、気液分離部30の内底部に貯水される。
【0066】
洗浄槽4の内部の洗浄水と空気が吸引されると、吸引によって発生する気流は最も抵抗の少ない流路を通過する。したがって、被洗浄物2の脱水が進行し、被洗浄物2の衣類構造間に洗浄水が含まれない短絡風路ができると、この短絡風路に気流が集中し、被洗浄物2からの洗浄水の吸引が停滞する。本実施の形態の洗濯機においては、被洗浄物2は、押圧部8a、8bによって常時一定の圧力で加圧されている。これによって、本実施の形態の洗濯機は、被洗浄物2の脱水が進行した脱水工程の後半においても、短絡風路ができるのを防止することができ、洗浄槽4の内部に導入される外気とともに洗浄水の吸引脱水を停滞させることなく進行させることができる。
【0067】
洗浄槽4の内部に導入された外気とともに洗浄水が吸引され、所定時間T2(例えば、4分)が経過すると、制御部39は、開閉弁11a、11bを開くとともに、加圧ポンプ10a、10bおよび吸引ポンプ27の駆動を停止する。これによって、押圧部8a、8bの内部の空気は開閉弁11a、11bから機外に排出され、被洗浄物2は、押圧部8a、8bによる押圧が解除されて脱水工程は終了する。脱水工程が終了すると、制御部39は、運転コースの実行を終了する。
【0068】
なお、すすぎ工程および脱水工程中に、気液分離部30の内底部に設定量を超えた洗浄水が貯水されたことを溢水検知部38が検知すると、制御部39は、吸引ポンプ27の駆
動を停止し、閉じていた脱水排水弁37を開いて、気液分離部30の内底部に貯水された洗浄水を脱水排水経路36から機外に排水する。
【0069】
なお、本実施の形態においては、加圧減圧部7は、可撓性を有する押圧部8と、押圧部8の内部に流体を供給して膨張させる加圧ポンプ10と、押圧部8の内部の流体を排出して収縮させる開閉弁11とで構成されている。しかし、これに限られるものではなく、例えば、押圧部8を収縮させるための減圧が開閉弁11に代えて減圧ポンプ(図示せず)により行われてもよい。また、加圧ポンプ10が逆転されて減圧ポンプとして利用されてもよい。この場合、被洗浄物2がスカーフ等の弾力性に乏しい薄手のものであったり、ニットなど弾力性に富む厚手のものであったりしても、押圧部8から排出される流体の量と排出速度を制御することができる。これによって、洗濯機は、被洗浄物2の状態などに合わせて安定した洗浄性能を得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態においては、加圧減圧部7が2組(7a、7b)設けられ、押圧部8a、8bが交互に膨張、収縮するように構成されているが、3組以上設けて順次、膨張、収縮するように構成されて異なるタイミングで動作するとよい。この場合、少なくとも1つの押圧部8の膨張時に、他の押圧部8が収縮するように構成され、膨張、収縮の順序は、規則的またはランダムのいずれであってもよい。
【0071】
また、押圧部8の内部に供給されて押圧部8を膨張させる流体は、気体でも液体でもよい。気体の場合、周囲の空気を加圧ポンプ等で吸気すればよく、排気するときも制約が少なくて都合がよい。液体の場合、水または水溶液またはオイルなどを使用することができる。さらに、液体を溜める貯留部があると望ましい。液体は空気より密度が高く気体のように弾性が大きくないため、押圧部8を確実に膨張させることができる。
【0072】
以上のように、本実施の形態の洗濯機は、被洗浄物2と洗浄水を収容する洗浄槽4と、洗浄槽4の内部の被洗浄物2を押圧可能に進退自在に構成された押圧部8と、洗浄槽4の内部に給水する給水弁14と、洗浄槽4の内部の被洗浄物2から洗浄水と空気とを吸引する吸引ポンプ27と、押圧部8、給水弁14、吸引ポンプ27等を制御して、洗い、すすぎ、脱水の各工程を実行する制御部39とを備えたものである。この構成によって、被洗浄物2に機械力を作用させて洗うことが不適切な被洗浄物2の布傷みや型崩れを抑え、かつ、従来より小型の洗浄槽4の内部ですすぎおよび/または脱水を効率的に行うことができる。
【0073】
また、制御部39は、すすぎ工程において、押圧部8で被洗浄物2を押圧するとともに、吸引ポンプ27によって洗浄槽4の内部の圧力を低下させつつ、給水弁14によって洗浄槽4の内部に給水するように構成されたものである。この構成によって、押圧部8を膨張圧縮させつつ通水すすぎを行うことができ、被洗浄物2に機械力を作用させずに、より効率的なすすぎを行うことができる。
【0074】
また、制御部39は、脱水工程において、押圧部8で被洗浄物2を押圧した状態で、吸引ポンプ27によって洗浄槽4の内部の被洗浄物2に含まれる洗浄水を洗浄槽4の内部の空気とともに吸引して、被洗浄物2の脱水を行うように構成されたものである。この構成によって、被洗浄物2に機械力を作用させずに、より効率的な脱水を行うことができる。
【0075】
また、洗浄槽4と吸引ポンプ27との間に、吸引ポンプ27によって吸引された洗浄水と空気とを分離させる気液分離部30を備えたものである。この構成によって、吸引された洗浄水によって引き起こされる吸引力の低下を防止することができ、すすぎや脱水の工程の後半においても高い効果を維持することができる。
【0076】
また、洗浄槽4の内部に外気を導入する外気導入部28を備えたものである。この構成によって、吸引ポンプ27の駆動による被洗浄物2からの洗浄水の吸引と同時に外気を被洗浄物2の内部に送り込むことが可能となる。これによって、さらに効率的かつ効果の大きいすすぎや脱水を行うことができる。
【0077】
また、外気導入部28は、洗浄槽4の内部に導入される外気導入量を調節可能な風量調整弁29を有し、制御部39は、風量調整弁29によって導入される風量を、すすぎ工程および/または脱水工程の進行に応じて調節するように構成されたものである。この構成によって、すすぎや脱水の進行に応じて導入される風量を最適に制御し、より効率的かつ効果の大きいすすぎや脱水を行うことができる。例えば、通水すすぎ動作において、吸引ポンプ27の駆動時に風量調整弁29を開いて外気を洗浄槽4の内部に導入可能とすることによって、吸引によるすすぎ効果を向上させることができる。また例えば、すすぎ工程や脱水工程において行われる排水動作時に、風量調整弁29を開くことにより、洗浄槽4の内部が外気導入部28を介して外気と連通され、排水を円滑に行うことができる。
【0078】
なお、本実施の形態においては、すすぎ工程において通水すすぎ動作を行うとしているが、すすぎ中に新たな水の供給が行われない、いわゆる溜めすすぎ動作を行うとした場合においても、同様の効果を得ることができる。溜めすすぎ動作の場合は、
図3に示されたように、洗い工程と同様に、押圧部8a、8bの膨張と収縮が互いに異なるタイミングで繰り返される。