【文献】
見守りセンサーにより把握したトイレ回数の日内変動および季節変動,「認知機能低下高齢者への自立支援機器を用いた地域包括的システムの開発と評価」平成24年度 総括・分担,2013年12月18日,p.145-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部は、前記利用情報として、トイレにおける電力消費量、トイレにおける水の使用量、トイレにおけるトイレットペーパの使用量、又は、トイレにおける人感センサの検出回数を取得する
請求項1に記載の認知機能評価装置。
前記検出装置は、トイレの電力消費量を検知する電力量計、トイレの水使用量を検知する水量計、トイレにおけるトイレットペーパの使用量を検出する検出センサ、又は、人感センサである
請求項4に記載の認知機能評価システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0014】
(実施の形態)
[認知機能評価装置の構成]
実施の形態に係る認知機能評価システムの構成に関して説明する。
図1は、実施の形態に係る認知機能評価システム200の概要を説明するための図である。
図2は、実施の形態に係る認知機能評価装置100及び認知機能評価システム200の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【0015】
認知機能評価システム200は、認知機能を評価する対象となる被評価者のトイレの利用回数から、被評価者の認知機能の程度を評価するための装置である。認知機能とは、認識したり、記憶したり、判断したりする能力を示す。一具体例として、認知機能評価装置100は、軽度の認知症(MCI:Mild Cognitive Inpairment)又は認知症の疑いがある人(MCI患者又は認知症患者)かどうかを評価する。
【0016】
認知症とは、上述した認知機能の低下が見られる症状を示す。認知症の一具体例としては、アルツハイマー型認知症(AD:Alzheimer’s disease)が挙げられる。認知症は自覚症状がないため、認知症患者の家族又は第三者等が認知症患者に病院での診察を促すことで、認知症患者は医師からの診察を受けることとなる。また、例えば、「物忘れ相談プログラム」(日本弘電社製)等の認知症の診断のためのバッチテストを被評価者が受けることにより、被評価者が認知症であるかどうかを確認することができる。なお、MCIとは、認知機能の低下は見られるが、日常生活には支障がない程度の症状を示し、認知症とは、認知機能の低下は見られ、且つ、日常生活には支障をきたす程度の症状であることを示す。
【0017】
しかしながら、このような認知症の診断のためのバッチテストでは、複数回繰り返すことにより被評価者がテスト項目を覚えてしまう等により、認知症の判定の精度が落ちるという課題がある。また、上記の通り、認知症は自覚症状がないため、認知症患者の家族又は第三者等が認知症患者に病院での診察を促されない限り、被評価者は医師からの診察を受けない可能性がある。
【0018】
本発明者らは、鋭意検討した結果、被評価者のトイレの利用回数と、被評価者の認知機能の程度とに相関があることを見出した。
【0019】
図1に示すように、認知機能評価装置100は、例えば、トイレ500内の分電盤550と接続されている。
【0020】
分電盤550は、図示しない外部商用電源から、トイレ500内の電気機器へ電力を供給する。分電盤550は、例えば、便器510の便座の温度、水温等を調整するためのヒータ(不図示)、当該ヒータをトイレ500のユーザが制御するためのボタンを有するトイレ機器制御ボタン520等と電気的に接続されている。また、分電盤550は、例えば、便器510内の水を排水するためのボタン等を有する排水ボタン530、トイレ500にユーザがいるか否かを検知する人感センサ540等のトイレ500内の電気機器と、電気的に接続されている。
【0021】
例えば、分電盤550は、トイレ500内で使用される電力を計測するための電力量計551であって、検出装置300一例である電力量計551を備える。電力量計551は、計測した消費電力量を、認知機能評価装置100が備える取得部110へ、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報として、出力する。利用情報は、例えば、被評価者がトイレ500を利用したか否かを認知機能評価装置100に判別させるための情報である。また、例えば、分電盤550は、トイレ500内において、検出装置300の別の一例である人感センサ540の検出回数を取得して、取得した検出回数を、認知機能評価装置100が備える取得部110へ、利用情報として、出力する。
【0022】
図2に示すように、認知機能評価システム200は、認知機能評価装置100と、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を検出する検出装置300と、報知装置400とを備える。
【0023】
認知機能評価装置100は、検出装置300によって検出された、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報から、所定の期間における被評価者のトイレ500の利用回数を算出し、認知機能の程度を評価するコンピュータである。認知機能評価装置100は、被評価者の認知機能の程度を評価した後、評価結果を報知装置400へ出力する。報知装置400は、認知機能評価装置100から取得した評価結果を、音声、画像等により被評価者、被評価者の家族、被評価者のかかりつけの医師等へ通知する。なお、予め設定される所定の期間は、任意に設定されてもよく、例えば、1日でもよいし、1週間でもよいし、1月でもよい。
【0024】
検出装置300は、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を検出して、認知機能評価装置100が備える取得部110に出力するセンサである。検出装置300は、例えば、トイレ500の電力消費量を検知する電力量計551、トイレ500の水使用量を検知する水量計511、トイレ500におけるトイレットペーパの使用量を検出する検出センサ552、又は、人感センサ540である。認知機能評価システム200は、検出装置300として、電力量計551、水量計511、検出センサ552、及び、人感センサ540の少なくとも一つを有していればよい。
【0025】
電力量計551は、トイレ500における電気機器の消費電力量を計測する計測器である。
【0026】
水量計511は、トイレ500における水の消費量を計測する計測器である。水量計511は、例えば、便器510の水タンク内に配置され、水タンク内の水量の変化を利用情報として検出する。水量計511は、トイレ500における水の使用量が計測できれば、特に限定されないが、例えば、超音波流量計である。
【0027】
検出センサ552は、トイレットペーパの使用量を検出するためのセンサである。検出センサ552は、トイレットペーパの使用量を検出できればよく、特に限定されないが、例えば、トイレットペーパの重さを検出する重量センサでもよい。
【0028】
人感センサ540は、トイレ500における人の有無を検知するセンサである。人感センサ540は、人の有無を検知できればよく、特に限定されないが、例えば、赤外線センサである。
【0029】
なお、認知機能評価システム200は、検出装置300として、電力量計551、水量計511、検出センサ552、及び、人感センサ540のうち、2つ以上を有していてもよい。認知機能評価装置100は、利用情報を検出可能な検出装置300として、機器を複数有することで、算出部120が算出する被評価者のトイレ500の利用回数の確度を上げることができる。
【0030】
報知装置400は、認知機能評価装置100から出力される評価結果を音声、画像等により、被評価者等へ報知する。報知装置400は、例えば、液晶パネル或いは有機ELパネル等によって構成されるモニタ、スピーカ、テレビ、又は、スマートフォン、タブレット端末等の情報端末である。
【0031】
認知機能評価装置100と、検出装置300及び報知装置400とは、利用情報、評価結果等を示すデータを送受信可能であればよく、有線で接続されていてもよいし、無線通信可能に接続されていてもよい。
【0032】
なお、認知機能評価装置100は、例えば、パーソナルコンピュータであるが、サーバ装置であってもよい。
【0033】
図2に示すように、認知機能評価装置100は、取得部110と、算出部120と、評価部130と、出力部140と、記憶部150とを備える。
【0034】
取得部110は、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を取得する。取得部110は、具体的には、検出装置300によって検出された利用情報を検出装置300から取得する。取得部110は、例えば、検出装置300と認知機能評価装置100とを接続するためのアダプタ等のインターフェースである。
【0035】
また、取得部110は、被評価者のトイレ500の利用情報として、トイレ500における電力消費量、トイレ500における水の使用量、トイレ500におけるトイレットペーパの使用量、又は、トイレ500における人感センサ540の検出回数を取得する。検出装置300としては、例えば、トイレ500の電力消費量を検知する電力量計551、トイレ500の水使用量を検知する水量計511、トイレ500におけるトイレットペーパの使用量を検出する検出センサ552、又は、人感センサ540が例示される。取得部110は、検出装置300で検出された利用情報を取得する。
【0036】
算出部120は、取得部110が取得した利用情報に基づいて、被評価者のトイレ500の利用回数を算出する。算出部120は、例えば、プロセッサ、マイクロコンピュータによってソフトウェア的に実現されてもよいし、専用回路によってハードウェア的に実現されてもよい。
【0037】
評価部130は、算出部120が算出した利用回数から被評価者の認知機能を評価する。評価部130は、具体的には、算出部120が算出した被評価者のトイレ500の利用回数と、記憶部150に記憶されている参照データ151とを照合し、被評価者の認知機能を評価する。例えば、記憶部150には、参照データ151として、健常者と、軽度の認知症患者又は認知症患者とを区別するためのトイレ500の利用回数の閾値が記憶されている。評価部130は、算出部120が算出したトイレ500の利用回数と、参照データ151として記憶されている閾値とを比較することで、被評価者が健常者であるか、軽度の認知症患者又は認知症患者であるかを評価する。評価部130は、例えば、プロセッサ、マイクロコンピュータによってソフトウェア的に実現されてもよいし、専用回路によってハードウェア的に実現されてもよい。なお、算出部120及び評価部130は、それぞれの機能を併せ持つ1つのプロセッサ、マイクロコンピュータ、又は、専用回路で実現されてもよいし、プロセッサ、マイクロコンピュータ、又は、専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。
【0038】
また、例えば、評価部130は、被評価者のトイレ500の利用回数が、予め定められた閾値より高い(多い)被評価者に比べて、当該閾値以下の被評価者の認知機能を低いと評価する。
【0039】
出力部140は、評価部130が評価した、被評価者の認知機能の程度の評価結果を報知装置400へ出力する。出力部140は、例えば、報知装置400と認知機能評価装置100とを接続するための通信アダプタ等の通信インターフェースである。
【0040】
記憶部150は、人のトイレ500の利用回数と、当該人の認知機能との関係を示す参照データ151が記憶されている記憶装置である。参照データ151は、被評価者の認知機能の評価が行われるときに評価部130によって参照される予め記憶部150に記憶されているデータである。言い換えると、評価部130は、算出部120が算出した被評価者のトイレ500の利用回数と記憶部150に記憶されている参照データ151とを照合することにより、被評価者の認知機能を評価する。記憶部150は、例えば、ROM(Read Only Memory)、不揮発性のRAM(Random Access Memory)等によって実現される。
【0041】
また、記憶部150には、算出部120及び評価部130が実行するプログラム、被評価者の認知機能の評価結果を出力する際に用いられる当該評価結果を示す画像データ及び/又は音声データも記憶されている。
【0042】
[認知機能評価装置の処理手順]
続いて、認知機能評価装置100が実行する認知機能評価方法における具体的な処理手順について説明する。
【0043】
図3は、実施の形態に係る認知機能評価装置100が被評価者の認知機能を評価する処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
まず、取得部110は、検出装置300によって検出された、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を取得する(ステップS101)。ステップS101において、例えば、検出装置300が電力量計である場合、取得部110は、検出装置300から、トイレ500における消費電力量を取得する。なお、トイレ500が複数人に利用される場合、トイレ500には、被評価者を特定するための認証装置が配置されていてもよい。認証装置は、例えば、網膜認証、指紋認証等をするためのカメラ、及び、認証するための被評価者の網膜、指紋等の情報を記憶しているメモリを備える。認証装置は、カメラによってトイレ500を利用する被評価者を識別し、認知機能評価装置100、又は、検出装置300に被評価者を特定するための情報を送信する。こうすることで、認知機能評価装置100は、被評価者によってトイレ500が利用された場合における消費電力量をより正確に算出することができる。
【0045】
次に、算出部120は、ステップS101で取得した利用情報に基づいて、被評価者のトイレ500の利用回数を算出する(ステップS102)。ステップS102において、例えば、検出装置300が電力量計551である場合、算出部120は、消費電力量の変化を取得してもよい。算出部120は、例えば、消費電力量の変化量が急激に変化した場合に、被評価者がトイレ500を利用したと判定してもよい。
【0046】
また、例えば、記憶部150は、被評価者のトイレ500の1回の利用における電力の消費量の推定値を記憶していてもよい。この場合、算出部120は、例えば、当該推定値と、1日における総消費電力量とから、被評価者の1日当たりのトイレ500の利用回数を算出してもよい。
【0047】
同様に、算出部120は、検出装置300が、水量計511、又は、トイレットペーパの使用量を検出する検出センサ552においても、それぞれ量の変化を取得し、変化量が急激に変化した場合に、被評価者がトイレ500を利用したと判定してもよい。或いは、それぞれの1日における消費量の推定値を記憶部150に予め記憶させ、算出部120は、当該推定値と、1日における総消費量とから、被評価者の1日当たりのトイレ500の利用回数を算出してもよい。また、検出装置300が人感センサ540である場合には、算出部120は、例えば、人感センサ540の検出回数から、被評価者の1日におけるトイレ500の利用回数を算出してもよい。
【0048】
次に、評価部130は、ステップS102で算出した利用回数から被評価者の認知機能を評価する(ステップS103)。ステップS103では、評価部130は、例えば、被評価者のトイレ500の利用回数が、予め定められた閾値より高い被評価者に比べて、当該閾値以下の被評価者の認知機能を低いと評価する。具体的には、評価部130は、算出部120が算出した被評価者のトイレ500の利用回数と記憶部150に記憶されている閾値である参照データ151とを照合することにより、被評価者の認知機能の程度を評価する。
【0049】
最後に、出力部140は、ステップS103で評価部130が評価した評価結果を出力する(ステップS104)。例えば、報知装置400がモニタ装置であり、且つ、ステップS104で出力された評価結果が画像データである場合、報知装置400は、評価結果を取得して当該画像データを表示する。
【0050】
このように、認知機能評価装置100が実行する認知機能評価方法には、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を取得する取得ステップ(ステップS101)と、取得ステップで取得した利用情報に基づいて、被評価者のトイレ500の利用回数を算出する算出ステップ(ステップS102)と、算出ステップで算出した利用回数から被評価者の認知機能を評価する評価ステップ(ステップS103)と、評価ステップで評価した評価結果を出力する出力ステップ(ステップS104)とが含まれる。
【0051】
なお、ステップS104において、出力部140は、評価部130がステップS103において被評価者を認知機能が低下した状態(つまり、軽度認知症又は認知症)であると判断した場合にのみ、報知装置400へ評価結果を出力してもよい。こうすることで、出力部140は、特に重要である医師の診断が必要と考えられる場合にのみ、被評価者、被評価者の家族等に対して報知することができる。
【0052】
[参照データの詳細]
以下、認知機能評価装置100が、被評価者の認知機能の程度を評価する際に用いる参照データ151の詳細について説明する。参照データ151としては、被評価者が、健常者か否かを評価部130が判別するためのトイレ500の利用回数の閾値であればよい。また、利用情報は、例えば、トイレ500の消費電力量でもよいし、トイレの消費水量でもよいし、人感センサ540の検出回数でもよい。以下では、検出装置300として、電力量計551が採用された場合について説明する。
【0053】
ところで、認知症の診断は、認知症の診断のためのバッチテストである物忘れ相談プログラムを人が受けることにより、当該人が認知症であるかどうかを特定することができる。
【0054】
図4は、人が物忘れ相談プログラムを受けた際に獲得したスコアを示す図である。
【0055】
本発明者らは、健常者、軽度の認知症患者(MCI患者)及び認知症患者を含む複数人を集めて、物忘れ相談プログラムを実施した。
図4に示す表のNo.には、人を特定するために任意に設定された番号が記載されており、点数には、当該人の物忘れ相談プログラムのスコアが記載されており、判定には、スコアから判定される、当該人が、健常者であるか、MCI患者であるか、認知症患者であるかの判定結果が記載されている。なお、
図4に示す表においては、スコアが14以上の人を健常(健常者)と判定し、スコアが7〜13の人をMCI(MCI患者)と判定し、スコアが6点以下の人を認知症(認知症患者)と判定している。
【0056】
また、物忘れ相談プログラムを受けた各人において、当該各人のトイレ500における消費電力量を取得し、取得した消費電力量からトイレ500の利用回数を算出することで、トイレ500の利用回数と当該人の認知機能の程度との関係を示す参照データ151を作成する。
【0057】
例えば、評価部130によって被評価者が健常者か、MCI患者又は認知症患者かを判定する場合、上述したトイレ500の利用回数の閾値(所定の閾値)が参照データ151となる。評価部130は、例えば、算出部120が算出したトイレ500の利用回数と閾値を含む参照データ151とを照合し、閾値以下であれば被評価者をMCI患者又は認知症患者と評価し、閾値より多ければ被評価者を健常者と評価する。
【0058】
図5Aは、健常者及びMCI患者における、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量の平均値を示す折れ線グラフである。
図5Bは、健常者及び認知症患者における、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量の平均値を示す折れ線グラフである。
【0059】
図5A及び
図5Bに示すように、MCI患者及び認知症患者は、健常者と比較して各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量の平均値が低い。具体的には、健常者は、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量の平均値が凡そ48Whよりも高い。また、MCI患者及び認知症患者は、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量の平均値が凡そ48Whよりも低い。このように、健常者と、MCI患者及び認知症患者とは、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量の平均値を評価することで、判別することができる。
【0060】
ここで、例えば、トイレ500の利用が1回当たりの消費電力量が8Whだとすれば、
図5A及び
図5Bに示す例においては、トイレ500の利用回数の閾値は、6回となる。このような場合、例えば、参照データ151として、トイレ500の利用回数の閾値が6として記憶部150に記憶されている。また、取得部110は、被評価者における、所定の期間として1日当たり、及び、トイレ500の利用情報として1日当たりの消費電力量を取得する。また、算出部120は、取得部110が取得した消費電力量からトイレ500の利用回数を算出し、取得した電力消費量から被評価者のトイレ500の利用回数を算出する。また、評価部130は、算出部120が算出した被評価者のトイレ500の利用回数が閾値である6を超える場合には、被評価者を健常者として評価し、6以下の場合には、被評価者をMCI又は認知症の疑いがあると評価する。また、出力部140は、評価部130の評価結果を、例えば、報知装置400へ出力する。
【0061】
また、発明者らは、健常者及びMCI患者に、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量、及び、各月ごとのトイレ500の総消費電力量に有意な差があるかを調査するために、有意差検定(t検定)を実施した。t検定とは、2つの母集団がいずれも正規分布に従うと仮定した上での、平均が等しいかどうかの検定のことである。なお、本実施の形態では、有意水準を、0.05とした。
【0062】
図6Aは、健常者及びMCI患者における、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量をボックスプロットで示すグラフである。
図6Bは、健常者及びMCI患者における、各月ごとのトイレ500の総消費電力量をボックスプロットで示すグラフである。
【0063】
各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量について、健常者とMCI患者とで比較した場合、95%信頼区間の外側に来る確率をpとしたとき、p=0.00007279であった。これより、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量は、健常者とMCI患者とには、有意差があると判定できる。
【0064】
また、各月ごとのトイレ500の総消費電力量について、健常者とMCI患者とで比較した場合、95%信頼区間の外側に来る確率をpとしたとき、p=0.000033382であった。これより、各月ごとのトイレ500の総消費電力量は、健常者とMCI患者とには、有意差があると判定できる。
【0065】
図6Cは、健常者、MCI患者、及び、認知症患者における、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量をボックスプロットで示すグラフである。
【0066】
図6Cに示すように、健常者と認知症患者との間にもまた、各月ごとの1日当たりのトイレ500の消費電力量に違いがあることが分かる。
【0067】
ここで、発明者らは、MCI又は認知症である疑いのある人は、おむつ等の尿漏れパッド(以下、パッドと呼称する)の使用者がいることから、当該パッドの利用がトイレ500の利用回数に影響を及ぼしている可能性があるかを調査した。
【0068】
図6Dは、パッドの有無における、各月ごとのトイレの総消費電力量をボックスプロットで示すグラフである。なお、
図6Dにおける健常者の被評価者数(N数)は4であり、そのうち、パッドの使用者は、0である。また、
図6DにおけるMCI患者のうちパッドを使用していないN数(
図6Dに示すMCIパッド無)は3である。また、
図6DにおけるMCI患者のうちパッドを使用しているN数(
図6Dに示すMCIパッド有)は1である。また、
図6Dにおける認知症患者の被評価者数(N数)は3であり、そのうち、パッドの使用者は、3である。
【0069】
図6Dに示すように、MCIパッド無、MCIパッド有、及び、認知症の被評価者は、健常の被評価者とは異なり、且つ、それぞれ互いに類似する傾向があり、各月ごとの1日当たりの消費電力量が低い。また、例えば、MCIパッド無は、MCIパッド有及び認知症と類似する傾向があり、MCIパッド有及び認知症と有意な差が確認できない。つまり、トイレ500の利用回数には、パッドの有無にかかわらず、健常者と、MCI患者又は認知症患者との間に差異が確認できる。そのため、健常者とMCI患者又は認知症患者との間におけるトイレ500の利用回数の差異の要因は、パッドではなく、認知機能の程度によるものであることが分かる。
【0070】
図7Aは、物忘れ相談プログラムのスコアに対する各月ごとの1日当たりの消費電力量の平均値を示す図である。
図7Bは、物忘れ相談プログラムのスコアに対する各月ごとの総消費電力量の平均値を示す図である。なお、
図7A及び
図7Bに示すデータのプロット数は、それぞれ60である。また、
図7A及び
図7Bのそれぞれに示す直線は、最小二乗法により算出した回帰直線である。
【0071】
図7Aに示すように、物忘れ相談プログラムのスコアと、各月ごとの1日当たりの消費電力量の平均値とには、正の相関があることが分かる。相関係数は、凡そ0.3376である。
【0072】
同様に、
図7Bに示すように、物忘れ相談プログラムのスコアと、各月ごとの総消費電力量の平均値とには、正の相関があることが分かる。相関係数は、凡そ0.3336である。
【0073】
これらのことから、認知機能評価装置100は、各月ごとの1日当たりの消費電力量又は総消費電力量を被評価者のトイレ500の利用情報として取得し、健常者と、MCI患者又は認知症患者との判別でなく、被評価者の認知機能の程度を段階的に評価してもよい。
【0074】
例えば、上記の説明においては、参照データ151が有する閾値は1つであったが、閾値の数は特に限定されない。参照データ151として用いられる閾値は、1つでもよいし、2以上でもよい。例えば、参照データ151には2つの閾値が用いられ、認知機能評価装置100は、当該2つの閾値によって、健常者であるか、MCI患者であるか、認知症患者であるかを評価してもよい。
【0075】
(変形例)
上記実施の形態では、認知機能評価装置100は、検出装置300によって検出された、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報から、所定の期間における被評価者のトイレ500の利用回数を算出し、認知機能の程度を評価する。ここで、検出装置300は、トイレ500の電力消費量を検知する電力量計551、トイレ500の水使用量を検知する水量計511、トイレ500におけるトイレットペーパの使用量を検出する検出センサ552、又は、人感センサ540であるとして説明した。
【0076】
図8は、実施の形態の変形例に係る認知機能評価システム200の構成を示す図である。
【0077】
図8には、検出装置300の別の一例として、圧力センサ560を例示している。
【0078】
圧力センサ560は、圧力を検出するセンサである。具体的には、圧力センサ560は、被評価者に踏まれたか否かを検出する。このように、圧力センサ560によってもまた、被評価者のトイレ500の利用情報は、検出され得る。つまり、検出装置300には、例えば、
図1に示す人感センサ540ではなく、圧力センサ560が採用されてもよい。圧力センサ560は、例えば、通信装置570と接続されている。
【0079】
通信装置570は、圧力センサ560が検出した圧力の変化を、被評価者のトイレ500の利用情報として、認知機能評価装置100へ出力する装置である。
図8に示す例においては、通信装置570は、無線通信可能に認知機能評価装置100と接続されている。この場合、取得部110は、無線通信するための無線通信モジュールを有していてもよい。こうすることで、認知機能評価装置100は、大掛かりな設備を要することなく、被評価者のトイレ500の利用情報を取得することができる。
【0080】
なお、認知機能評価システム200は、検出装置300として、
図1に示す電力量計551、水量計511、検出センサ552、人感センサ540、及び、
図8に示す圧力センサ560のうち、少なくとも2つを有していてもよく、例えば、圧力センサ560及び人感センサ540の両方を有してもよい。
【0081】
また、圧力センサ560及び認知機能評価装置100(具体的には、取得部110)は、通信装置570を介さずに有線により接続されていてもよい。
【0082】
[効果等]
以上、実施の形態に係る認知機能評価装置100は、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を取得する取得部110と、取得部110が取得した当該利用情報に基づいて、被評価者のトイレ500の利用回数を算出する算出部120と、算出部120が算出した当該利用回数から被評価者の認知機能を評価する評価部130と、評価部130が評価した評価結果を出力する出力部140と、を備える。
【0083】
これにより、認知機能評価装置100によれば、トイレ500の利用回数から、被評価者の認知機能の程度を評価することができる。そのため、認知機能評価装置100によれば、簡便に被評価者の認知機能を評価できる。特に、認知機能評価装置100によれば、被評価者が、健常であるのか、日常生活に支障をきたさない程度に認知機能が低下しているMCIであるのかを簡便に判別することができる。
【0084】
また、認知機能評価装置100は、被評価者が日常生活をする中で取得される情報から、自覚症状がない認知症患者へ認知機能の程度を通知できるため、例えば、認知症患者に医師に診察を受けるように促すことができる。言い換えると、認知機能評価装置100は、自覚症状がない認知症患者へ認知機能の程度を通知することで、認知症患者が医師に診察を受ける支援をすることができる。
【0085】
例えば、評価部130は、トイレ500の利用回数が、予め定められた閾値より高い被評価者に比べて、当該閾値以下の被評価者の認知機能を低いと評価してもよい。
【0086】
上記のとおり、発明者らは、トイレ500の利用回数が、健常者よりもMCI患者及び認知症患者の方が少ないことを見出した。これにより、評価部130は、被評価者の利用回数が、予め定められた閾値と比較することで、被評価者の認知機能が健常であるか、MCI患者又は認知症の疑いがあるかを評価できる。
【0087】
また、例えば、取得部110は、利用情報として、トイレ500における電力消費量、トイレ500における水の使用量、トイレ500におけるトイレットペーパの使用量、又は、トイレ500における人感センサ540の検出回数を取得してもよい。
【0088】
これら利用情報を用いることで、算出部120は、簡便に被評価者のトイレ500の利用回数を算出することができる。
【0089】
また、例えば、認知機能評価装置100は、人のトイレ500の利用回数と、人の認知機能との関係を示す参照データ151を記憶する記憶部150を備えてもよい。評価部130は、算出部120が算出した被評価者のトイレ500の利用回数と記憶部150に記憶されている参照データ151とを照合することにより、被評価者の認知機能を評価してもよい。
【0090】
つまり、認知機能評価装置100は、参照データ151を記憶している外部のサーバ装置等の通信することで、被評価者の認知機能の評価をしてもよいが、参照データ151を記憶している記憶装置である記憶部150を備えてもよい。これにより、認知機能評価装置100は、外部のサーバ装置を通信するためのネットワークに接続することなく、被評価者の認知機能を評価することができる。そのため、認知機能評価装置100の利便性は、向上される。
【0091】
また、実施の形態に係る認知機能評価システム200は、認知機能評価装置100と、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報として検出し、当該利用情報を認知機能評価装置100が備える取得部110に出力する検出装置300と、を備える。
【0092】
これにより、認知機能評価システム200は、トイレ500の利用回数から、被評価者の認知機能の程度を評価することができる。そのため、認知機能評価システム200によれば、簡便に被評価者の認知機能を評価できる。また、認知機能評価システム200は、被評価者が日常生活をする中で取得される情報から、自覚症状がない認知症患者へ認知機能の程度を通知できるため、例えば、認知症患者に医師に診察を受けるように促すことができる。言い換えると、認知機能評価システム200は、自覚症状がない認知症患者へ認知機能の程度を通知することで、認知症患者が医師に診察を受ける支援をすることができる。
【0093】
また、例えば、検出装置300は、トイレ500の電力消費量を検知する電力量計551、トイレ500の水使用量を検知する水量計511、トイレ500におけるトイレットペーパの使用量を検出する検出センサ552、又は、人感センサ540でもよい。
【0094】
これらを検出装置300として採用することにより、認知機能評価システム200は、簡便に被評価者のトイレ500の利用回数を算出することができる。
【0095】
また、実施の形態に係る認知機能評価装置100が実行する認知機能評価方法は、被評価者のトイレ500の利用状況を示す利用情報を取得する取得ステップと、取得ステップで取得した当該利用情報に基づいて、被評価者のトイレ500の利用回数を算出する算出ステップと、算出ステップで算出した当該利用回数から被評価者の認知機能を評価する評価ステップと、評価ステップで評価した評価結果を出力する出力ステップと、を含む。
【0096】
また、本発明は、上記認知機能評価方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現されてもよい。
【0097】
これにより、トイレ500の利用回数から、被評価者の認知機能の程度を評価することができるプログラムが実現されるため、このようなプログラムによれば、簡便に被評価者の認知機能を評価できる。
【0098】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態及び実施の形態の変形例に係る認知機能評価装置等について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0099】
上記実施の形態では、認知機能の低下の症状の一具体例として、アルツハイマー型認知症が挙げられた。しかしながら、認知機能とは、認識したり、記憶したり、判断したりする能力を示し、認知症とは、上述した認知機能の低下が見られる症状を示す。つまり、認知機能評価装置が評価する認知機能の程度は、アルツハイマー型認知症に限定されず、例えば、血管性認知症、酩酊の度合い等でもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では、被評価者の認知機能の程度を評価するために、物忘れ相談プログラムのスコアと人のトイレ500の利用回数との関係性を示すデータを参照データ151として予め記憶部150が記憶している。しかしながら、参照データ151は、トイレ500の利用回数と照合することで認知機能の程度の評価をすることができるデータであればよく、物忘れ相談プログラムのスコアとトイレ500の利用回数との関係性を示すデータに限定されない。例えば、参照データ151は、MoCA(Montreal Cognitive Assessment)テスト、MMSE(Mini−Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)等のスコアとトイレ500の利用回数との関係を示すデータでもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、「閾値より大きい」、「閾値以下」等と記載したが、厳密な意味で記載するものではない。例えば、「閾値より大きい」と記載する場合においては、閾値以上であることを意味してもよい。また、「閾値より大きい」、「閾値以下」と対比して記載する場合に、当該閾値を境に区別されることを意味し、それぞれ、「閾値以上」、「閾値未満」であることを意味してもよい。
【0102】
また、本発明は、認知機能評価装置及び認知機能評価システムとして実現できるだけでなく、認知機能評価装置及び認知機能評価システムの行う各構成要素が行う処理をステップとして含むプログラム、及び、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ等の記録媒体として実現することもできる。また、当該プログラムは、インターネット等の通信路で配信されてもよい。
【0103】
つまり、上記包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。例えば、認知機能評価装置が備える各構成要素は、一つの筐体内にある必要はなく、それぞれが異なる場所に配置されて各種データの送受信が可能に接続させていればよい。
【0104】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。