(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容する有底ケースと、前記有底ケースの開口を封止する封口部材と、前記コンデンサ素子に接続し、かつ前記封口部材を貫通するタブ端子と、前記封口部材の前記有底ケースの外側に配される主面の少なくとも一部を覆う樹脂層と、を備え、
前記封口部材は、前記タブ端子が貫通する第1孔および前記主面の前記第1孔の周囲に立設された第1リブと、前記主面の周縁近傍において前記有底ケースの開口端部に沿って環状に立設された第2リブと、を有し、
前記樹脂層は、前記第1リブと前記第2リブとの間に形成された領域に配されており、
前記タブ端子は、前記第1リブにより、前記樹脂層と離間し、
前記有底ケースの前記開口端部は、前記第2リブよりも外側において前記封口部材の前記主面に接触することにより、前記樹脂層と離間している、電解コンデンサ。
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容する有底ケースと、前記有底ケースの開口を封止する封口部材と、前記コンデンサ素子に接続し、かつ前記封口部材を貫通するタブ端子と、前記封口部材の前記有底ケースの外側に配される主面の少なくとも一部を覆う樹脂層と、を備え、
前記封口部材は、前記主面の周縁近傍において前記有底ケースの開口端部に沿って環状に立設された第2リブを備え、
前記有底ケースの前記開口端部は、前記第2リブよりも外側において前記封口部材の前記主面に接触することにより、前記樹脂層と離間している、電解コンデンサ。
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容する有底ケースと、前記有底ケースの開口を封止する封口部材と、前記コンデンサ素子に接続し、かつ前記封口部材を貫通するタブ端子と、前記封口部材の前記有底ケースの外側に配される主面の少なくとも一部を覆う樹脂層と、を備え、
前記封口部材は、前記タブ端子が貫通する第1孔を有し、
前記樹脂層は、前記タブ端子が貫通し、かつ前記第1孔と連なる第2孔を有し、
前記タブ端子は、前記第2孔において前記樹脂層と前記タブ端子との間に形成された環状の第1隙間により前記樹脂層と離間し、
前記有底ケースの前記開口端部は、前記樹脂層の周面との間に形成された環状の第2隙間により前記樹脂層と離間している、電解コンデンサ。
前記樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、前記硬化性樹脂組成物の硬化により前記封口部材と接着している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容する有底ケースと、有底ケースの開口を封止する封口部材と、コンデンサ素子に接続し、かつ封口部材を貫通するタブ端子と、封口部材の有底ケースの外側に配される主面の少なくとも一部を覆う樹脂層と、を備える。封口部材は、タブ端子が貫通する孔(第1孔)を有しており、タブ端子は、樹脂層とは離間している。もしくは、封口部材は、主面の周縁またはその近傍において有底ケースの開口端部に沿って環状に立設されたリブを備え、有底ケースは、樹脂層と離間している。
【0011】
電解コンデンサは、例えば、タブ端子が接続したコンデンサ素子を収容した有底ケースの開口を、コンデンサ素子から延在するタブ端子を貫通させた状態の封口部材で封止する工程と、封止する工程の後、封口部材の有底ケースの外側に配される主面に、硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を硬化させることにより、主面の少なくとも一部を覆う樹脂層を形成する工程と、を備える製造方法により得ることができる。ここで、封口部材は、タブ端子が貫通する第1孔を有している。樹脂層を形成する工程では、タブ端子(および/または有底ケース)と樹脂層とを離間させるように樹脂層を形成する。
【0012】
本発明の実施形態では、樹脂層とタブ端子(および/または有底ケース)とを離間させる。これにより、タブ端子(および/または有底ケース)と樹脂層との接触が抑制されるため、リフロー処理時や高温環境下でタブ端子および/または有底ケースが膨張しても、この膨張の直接的な影響を樹脂層が受けない。よって、樹脂層の劣化(例えば、割れなどの破損)を抑制できる。また、リフロー処理時や高温環境下でタブ端子や有底ケースが熱くなると、封口部材も膨張することがある。しかし、本実施形態では、樹脂層がタブ端子や有底ケースに固着していないため、封口部材が膨張しても、樹脂層の劣化が抑制される。樹脂層の劣化が抑制されることで、封口部材の酸化劣化が抑制されるため、絶縁性を確保し易くなり、漏れ電流の増加を抑制できる。また、電解液を用いる電解コンデンサでは、電解液の蒸散を抑制できるため、製品寿命が短くなるのを抑制できる。
【0013】
一方、従来の技術では、樹脂層を予め封口部材の外側の主面に形成した後に封口すると、封口の際に樹脂層に応力が加わり劣化することがある。そのため、有底ケースを封口部材で封口した後に、樹脂層が形成される。この場合、樹脂層を形成する材料を封口部材上に塗布する際に、封口部材を貫通するタブ端子に接触し、最終的に形成された樹脂層もタブ端子に接触した状態となる。電解コンデンサをリフロー処理する際には、タブ端子が加熱されて膨張する。タブ端子と樹脂層とでは膨張率が異なるため、これらが接触していると、膨張の応力で樹脂層が劣化し、割れなどを生じることがある。また、タブ端子は、通常、線膨張係数が互いに異なる金属でそれぞれ形成された複数の部位(例えば、封口部材を貫通する棒状部、棒状部の先端から延びる線状部(つまり、リード線)など)を含む。そのため、それぞれの部位に樹脂層が接触した状態で、タブ端子に高温環境下やリフロー処理で熱が加わると、各部位の膨張率に差が生じ、この応力が樹脂層に加わって劣化し易くなる。さらに、タブ端子の熱や膨張により、封口部材も膨張する。そのため、タブ端子と樹脂層とが接触していると、封口部材の膨張に伴う応力によっても樹脂層の劣化を招くことになる。また、有底ケースと樹脂層とが接触する場合にも同じような問題が起こる。
【0014】
樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。また、硬化性樹脂組成物の23℃における粘度は、1〜70Pa・sであることが好ましい。上記の粘度を有する硬化性樹脂組成物は、適度な流動性を有し、封口部材の主面上に、樹脂層を容易に形成することができる。
【0015】
有底ケース(より具体的には、有底ケースの開口端部(開口端および開口端の近傍を含む))は、樹脂層と離間していることが好ましい。この場合、有底ケースと樹脂層との接触が抑制され、高温環境下で、有底ケースに熱が加わっても、樹脂層の劣化が抑制される。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0016】
[第1実施形態]
(電解コンデンサ)
本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサでは、封口部材は、リブを備えている。より具体的には、封口部材は、主面の第1孔の周囲に立設された第1リブを備えており、樹脂層は、第1リブを取り囲む領域(第1リブの外側の領域)に配されている。そして、タブ端子は、第1リブにより、樹脂層と離間している。樹脂層を形成する工程では、第1リブを取り囲む領域に硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を硬化させて樹脂層を形成し、第1リブによりタブ端子と樹脂層とを離間させる。第1リブにより、タブ端子と樹脂層との接触が抑制されるため、高温環境下やリフロー処理による樹脂層の劣化を抑制できる。
【0017】
第1実施形態に係る電解コンデンサでは、封口部材は、主面の周縁またはその近傍において有底ケースの開口端部に沿って環状に立設された第2リブを備えていてもよい。また、第2リブと上記の第1リブとの双方を供えていてもよい。この場合、樹脂層は、第1リブと第2リブとの間に形成された領域(凹状の領域)に配されている。樹脂層を形成する工程では、第1リブと第2リブとの間に形成された領域に硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を硬化させて樹脂層を形成する。
このように第2リブを設ける場合、樹脂層は、第2リブの内側に形成されるため、有底ケースの開口端部と樹脂層との接触が抑制され、高温環境下で、有底ケースに熱が加わっても、樹脂層の劣化が抑制される。
【0018】
有底ケースの開口端部は、封口部材の第2リブ上または第2リブよりも外側において封口部材に接触していてもよい。この場合、第2リブの内側には樹脂層が形成されるため、有底ケースと樹脂層との接触が抑制され、高温環境下やリフロー処理により有底ケースに熱が加わっても、樹脂層の劣化が抑制される。一方、有底ケースの開口端部をカール加工して封口部材に押し付ける際の安定性を高める観点からは、封口部材の第2リブは、封口部材の端まで設けられていることが好ましい。
【0019】
樹脂層の厚みは、50μm以上であり、かつ第1リブの高さよりも小さいことが好ましい。封口部材が第2リブを有する場合には、樹脂層の厚みは、第2リブの高さよりも小さいことが好ましい。これらの場合、封口部材の酸化劣化を抑制する高い効果を確保することができるとともに、タブ端子や有底ケースと樹脂層との接触をより確実に抑制することができるため、樹脂層の劣化を抑制できる。
【0020】
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
図2は、同電解コンデンサに係る巻回体の一部を展開した概略図である。
図3は、
図1の電解コンデンサの封口部材を概略的に示す斜視図である。
【0021】
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封口部材12と、封口部材12を覆う座板13と、封口部材12を貫通するタブ端子14A,14Bと、電解質(例えば、電解液などの液状成分)(図示せず)とを備える。コンデンサ素子10は、液状成分とともに、外装ケースに収容される。有底ケース11の開口端部は、内側に横絞り加工して封口部材12を圧縮しており、開口端部はカール加工され封口部材12の主面を押さえつけている。
【0022】
タブ端子14A,14Bは、それぞれ、第1部分(線状部)15A,15Bと、第1部分15A,15Bにそれぞれ接続した第2部分16A,16Bを含む。第2部分16A,16Bは、それぞれ、封口部材12を貫通する棒状部17A,17Bと、棒状部17A,17Bにそれぞれ一体化された扁平部18A,18Bとを有している。棒状部17A,17Bの先端部は封口部材12から、外側に露出している。線状部(リード線)15A,15Bは、棒状部17A,17Bの先端部からそれぞれ延びており、座板13に形成された孔に通され、座板13の外側に導出されている。第2部分16A,16Bは、それぞれ、扁平部18A,18Bを介して、コンデンサ素子10に接続されている。
【0023】
コンデンサ素子10は、例えば、
図2に示すような巻回体を備えており、巻回体に導電性高分子を付着させることにより作製してもよい。巻回体は、誘電体層を有する陽極箔21と、陰極箔22と、これらの間に介在するセパレータ23と、を備えている。導電性高分子は、陽極箔21と陰極箔22との間において、陽極箔21の誘電体層の表面の少なくとも一部を覆うように付着している。コンデンサ素子10において、陽極箔21にはタブ端子14Aが接続され、陰極箔22にはタブ端子14Bが接続されている。
【0024】
陽極箔21および陰極箔22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、
図2は、巻回体の最外周を止めずに、一部が展開された状態を示している。
【0025】
図3に示されるように、封口部材12は、タブ端子14A,14Bをそれぞれ貫通させる第1孔12a、12b、第1孔12a,12bの周囲にそれぞれ立設された第1リブ12c,12d、および封口部材12の外側の主面(上面)の周縁近傍において、有底ケース11の開口端部に沿って環状に立設された第2リブ12eを備えている。第1リブ12c,12dは、環状の第2リブ12eで囲まれた状態となっている。
【0026】
第1リブ12c,12dと第2リブ12eとの間には、凹状の領域が形成されており、この領域には、樹脂層19が配されている。そのため、封口後に樹脂層19を形成しても、樹脂層19と、タブ端子14A,14Bとの接触を抑制することができる。また、図示例では、有底ケース11の開口端部を、第2リブ12eの外側に位置させているため、樹脂層19と有底ケース11との接触も抑制することができる。よって、高温環境下やリフロー処理時に、熱によりタブ端子14A,14Bや有底ケース11が膨張しても、膨張による樹脂層19への影響を低減することができ、樹脂層19に加わる応力を抑制することができる。よって、樹脂層19の劣化を抑制することができる。
【0027】
図4は、他の実施形態に係る封口部材の構造を説明するための概略斜視図である。
図4の封口部材112では、第2リブ112eの形状や位置が、
図3の封口部材12とは異なるだけでその他は同じである。封口部材112は、
図3の例と同じく、陽極箔および陰極箔のそれぞれに接続した各タブ端子を貫通させる第1孔112a,112bを有しており、第1孔112a,112bの周囲には、第1リブ112c,112dが立設されている。
【0028】
第2リブ112eは、封口部材112の周縁に円環状に立設されており、第1リブ112c,112dは、第2リブ112eにより囲まれた状態になっている。そして、樹脂層は、第1リブ112c,112dと第2リブ112eとの間の凹状の領域に形成される。また、第1リブ112c,112dと第2リブ112eとは繋がっていてもよい。
このように、封口部材がその周縁に第2リブを有する場合には、有底ケースの開口端部は、樹脂層に接触しないように、第2リブ上(第2リブの上面)から封口部材を押し付けた状態にすることが好ましい。この場合には、開口端部により安定して押し付け易いように、第2リブの上面を平坦にしたり、上側のリブの幅を広めにしたりすればよい。
【0029】
以下に、第1実施形態に係る電解コンデンサの構成について、より詳細に説明する。
(タブ端子)
封口部材を貫通するタブ端子は、封口部材の第1孔から導出される第1部分とコンデンサ素子に接続される第2部分とを有している。タブ端子の第1部分と第2部分とは、溶接などにより接続されており、この接続部分は封口部材から外側に露出している。封口後に、封口部材の主面に樹脂層を形成する場合には、タブ端子の外側に露出した部分に樹脂層が接触した状態となり易い。タブ端子は、全体として、通常、金属で形成されているため、リフロー処理や高温環境下に晒されると膨張する。本実施形態では、樹脂層とタブ端子の接触が抑制されているため、リフロー処理や高温環境下に晒されても、樹脂層の劣化を抑制できる。
【0030】
一般に、タブ端子の第1部分には第1金属が含まれ、第2部分には、第1金属とは異なる第2金属が含まれていることが多い。第1部分と第2部分との接続部分は、封口部材から外側に露出しているため、封口後の樹脂層を形成する場合には接続部分やその周辺など、第1部分と第2部分との双方に樹脂層が接触した状態となり易い。タブ端子に熱が加わったときに第1部分と第2部分とでは膨張率が異なるため、樹脂層が双方の部分に接触した状態では、樹脂層の劣化が起こり易い。本実施形態では、樹脂層とタブ端子との間が離間されているため、樹脂層が接続部分に接触することによる劣化も抑制することができる。
【0031】
タブ端子の第2部分は、例えば、封口部材を貫通する棒状部を有しており、棒状部の先端は、封口部材から外側へ露出している。第2部分は、さらに、コンデンサ素子と接続する扁平部を有してもよい。扁平部により、コンデンサ素子との接続が容易になる。棒状部の形状は特に制限されず、丸棒状(例えば、断面が円形や楕円形である棒状)であってもよく、角棒状(例えば、断面が多角形である棒状)であってもよい。
【0032】
第2部分が扁平部を有する場合、扁平部と棒状部とは電気的に接続していればよく、一体化していてもよい。例えば、第2金属を含む棒状体の一端部を圧延することで扁平部が形成され、圧延されない領域が棒状部として残ることで、扁平部と棒状部とが一体化した第2部分を形成することができる。
【0033】
第1部分は、例えば、封口部材から露出する棒状部の先端から延在する線状部を有している。線状部は、棒状部の一端部に溶接などにより接続される。線状部の形状は特に制限されず、例えば、ワイヤ状であってもよく、リボン状であってもよい。
【0034】
第1金属としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、錫などが挙げられる。第1金属は、これらの金属を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。第1金属は、金属の単体であってもよく、上記の金属を含む合金であってもよい。第2金属としては、アルミニウムが例示できる。第2金属の具体例としては、金属アルミニウムやアルミニウム合金が挙げられる。
【0035】
なお、第1部分は、上記の群より選択される少なくとも一種の金属(例えば、鉄および/または銅)を含む部材と、上記の群より選択される他の金属(例えば、錫など)を含むめっき被膜とを有してもよい。
タブ端子(棒状部や扁平部など)のサイズは、電解コンデンサのサイズや封口部材の厚みなどに応じて適宜決定すればよい。
【0036】
(封口部材)
コンデンサ素子を収容した後、有底ケースの開口は、封口部材で封止される。
封口部材は、絶縁性物質であればよい。絶縁性物質としては弾性体が好ましい。ゴムなどの弾性体を含む封口部材を用いることで、高い封止性を確保することができる。高い耐熱性が得られ易い観点からは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロンゴムなど)、ブチルゴム、イソプレンゴムなどが好ましい。
【0037】
封口部材は、有底ケースの開口の形状に対応する形状(例えば、円盤状などのディスク状など)を有している。有底ケースは、有底ケースの開口端部をカール加工し、開口端部が封口部材に押し付けられることにより封口される。
【0038】
封口部材には、タブ端子を貫通させる第1孔が形成されている。第1孔において封口部材とタブ端子とは接触した状態であるため、第1孔の形状やサイズは、タブ端子(特に、棒状部)の形状やサイズに応じて決定される。封口部材は、通常、
図1に示すように、コンデンサ素子の陽極箔に接続された陽極タブ端子を通すための孔と、陰極箔に接続された陰極タブ端子を通すための孔との一対の第1孔を備えている。第1孔の位置は、陽極箔に接続したタブ端子と、陰極箔に接続したタブ端子とを絶縁できれば特に制限されない。
【0039】
第1リブの高さや形状は、タブ端子と樹脂層とが接触しないように適宜決定できる。第1リブの高さは、タブ端子の第1部分と第2部分との接続部分の位置よりも高いことが好ましい。
図1に示されるように座板を設ける場合には、座板を安定に装着するために、第1リブの高さは、有底ケースの上端の位置と同じかまたはそれよりも低いことが好ましい。
【0040】
第2リブの高さや形状は、適度な厚みの樹脂層を形成しながらも、有底ケースの開口端部と樹脂層とが接触しないように適宜決定される。また、第1リブの場合と同じ理由で、第2リブの高さは、有底ケースの上端の位置と同じかまたはそれよりも低いことが好ましい。
【0041】
第1リブおよび第2リブの高さはそれぞれ、例えば、0.05〜2mmであり、0.1〜0.5mmであることが好ましい。
第1リブおよび第2リブの幅は、封口部材の主面上を樹脂層でできるだけ覆うことができる範囲で適宜決定すればよい。第1リブおよび第2リブの幅はそれぞれ、例えば、0.1〜1mmである。
【0042】
第1リブおよび第2リブの形状は特に制限されず、封口部材の厚み方向の断面形状は方形状であってもよく、方形状の上側の角部が丸まった形状などであってもよい。第1リブおよび第2リブを有する封口部材は、金型で成形されるため、金型から抜き出し易いように、第1リブおよび第2リブのそれぞれは、リブの下側(封口部材の外側の主面側)の幅よりも上側の幅が小さいテーパ形状としてもよい。
【0043】
(樹脂層)
封口部材の有底ケースの外側に配される主面には、この主面の少なくとも一部を覆うように樹脂層が形成されている。より詳しくは、樹脂層は、上記主面に設けられた第1リブを取り囲む外側の領域や、第1リブと第2リブとの間に形成された凹状の領域に配されている。樹脂層は、この領域の少なくとも一部を覆っていればよいが、封口部材の酸化劣化を抑制する観点からは、上記の領域全体を覆うように形成することが好ましい。第1リブ、または第1リブおよび第2リブにより、樹脂層のタブ端子や有底ケースとの接触が抑制されるため、高温環境下でタブ端子や有底ケースが膨張しても、樹脂層の劣化を抑制できる。
【0044】
樹脂層に含まれる樹脂としては、例えば、硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などが含まれていてもよい。硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が例示される。
【0045】
硬化性樹脂としては、例えば、光や熱の作用により硬化または重合する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマーなど)が使用される。このような化合物(または硬化性樹脂)としては、例えば、エポキシ化合物、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ジアリルフタレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。硬化性樹脂組成物は、複数の硬化性樹脂を含んでもよい。
【0046】
フィラーとしては、例えば、絶縁性の粒子および/または繊維などが好ましい。フィラーを構成する絶縁性材料としては、例えば、シリカ、アルミナなどの絶縁性の化合物(酸化物など)、ガラス、鉱物材料(タルク、マイカ、クレーなど)などが挙げられる。樹脂層は、これらのフィラーを一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。樹脂層中のフィラーの含有量は、例えば、30〜80質量%である。
硬化剤、重合開始剤、触媒などは、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0047】
樹脂層は、例えば、硬化性樹脂組成物を封口部材の主面(具体的には、第1リブと第2リブとの間の領域)に塗布して塗膜を形成し、光を照射したり、加熱したりして、塗膜を硬化させることにより形成できる。
【0048】
樹脂層の厚みは、特に制限されないが、封口部材の酸化劣化を抑制し易い観点からは、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましい。また、樹脂層のタブ端子との接触を抑制する観点からは、第1リブの高さよりも小さいことが好ましく、有底ケースとの接触を抑制する観点からは、第2リブの高さよりも小さいことが好ましい。樹脂層の厚みは、例えば、0.5mm以下であり、0.3mm以下であることが好ましい。
【0049】
(有底ケース)
コンデンサ素子を収容する有底ケースの材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金が挙げられる。有底ケースには、例えば、第1金属または第2金属と同じ金属を利用してもよい。
コンデンサ素子を収容した後、有底ケースの開口は、封止部材で封止される。
【0050】
(コンデンサ素子)
(陽極箔)
陽極箔としては、例えば、表面が粗面化された金属箔が挙げられる。金属箔を構成する金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属、または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
【0051】
金属箔表面の粗面化は、公知の方法により行うことができる。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、例えば、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば、直流電解法または交流電解法などにより行ってもよい。
【0052】
(誘電体層)
誘電体層は、陽極箔の表面に形成される。具体的には、誘電体層は、粗面化された金属箔の表面に形成されるため、陽極箔の表面の孔や窪み(ピット)の内壁面に沿って形成される。
【0053】
誘電体層の形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理は、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬することにより行ってもよい。化成処理では、必要に応じて、金属箔を化成液に浸漬した状態で、電圧を印加してもよい。
【0054】
通常は、量産性の観点から、大判の弁作用金属などで形成された金属箔に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、誘電体層が形成された陽極箔が準備される。
【0055】
(陰極箔)
陰極箔には、例えば、金属箔が使用される。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。陰極箔には、必要に応じて、粗面化および/または化成処理を行ってもよい。粗面化および化成処理は、例えば、陽極箔について記載した方法などにより行なうことができる。
【0056】
(セパレータ)
セパレータとしては、特に制限されず、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド)の繊維を含む不織布などを用いてもよい。
【0057】
コンデンサ素子は、公知の方法により作製することができる。例えば、コンデンサ素子は、誘電体層を形成した陽極箔と陰極箔とを、セパレータを介して重ね合わせた後、陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子層を形成することにより作製してもよい。誘電体層を形成した陽極箔と陰極箔とを、セパレータを介して巻回することにより、
図2に示されるような巻回体を形成し、陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子層を形成することにより作製してもよい。巻回体を形成する際、タブ端子を巻き込みながら巻回することにより、
図2に示すように、タブ端子14A,14Bを巻回体から植立させてもよい。
【0058】
陽極箔、陰極箔およびセパレータのうち、巻回体の最外層に位置するもの(
図2では、陰極箔22)の外側表面の端部は、巻止めテープで固定される。なお、陽極箔を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極箔の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体などの状態のコンデンサ素子に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
【0059】
電解質としては、電解液、固体電解質、またはその両方を用いることができる。
電解液としては、非水溶媒であってもよく、非水溶媒とこれに溶解させたイオン性物質(溶質、例えば、有機塩)との混合物であってもよい。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。非水溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチルアセトアミドなどを用いることができる。有機塩としては、例えば、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0060】
固体電解質は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。導電性高分子を含む固体電解質は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。
【0061】
(電解コンデンサの製造方法)
第1実施形態に係る電解コンデンサは、タブ端子が接続したコンデンサ素子を収容した有底ケースの開口を、コンデンサ素子から延在するタブ端子を貫通させた状態の封口部材で封止する工程と、封止する工程の後、封口部材の有底ケースの外側に配される主面に、主面の少なくとも一部を覆う樹脂層を形成する工程と、を備える製造方法により製造できる。封止工程に先立って、コンデンサ素子は、有底ケース内に収容されるが、導電性高分子層を形成する前の巻回体を、有底ケースに収容し、ケース内で導電性高分子層を形成して、ケース内に収容された状態のコンデンサ素子を得てもよい。巻回体やコンデンサ素子を有底ケースに収容する際には、巻回体やコンデンサ素子に接続されたタブ端子が、有底ケースの開口側に位置するように、収容される。電解質は、封止工程の前にコンデンサ素子に含浸される。また、組み立てた電解コンデンサには、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
【0062】
以下に、各工程についてより詳細に説明する。
(封止工程)
封止工程では、例えば、コンデンサ素子から延在するタブ端子を貫通させた状態の封口部材を、有底ケース内に収容したコンデンサ素子の上方に配置し、次に、有底ケースの開口端部に、横絞り加工を施して封口部材を固定する。そして、有底ケースの開口端をカール加工し、開口端部は封口部材に押し付けられる。
【0063】
なお、封口部材をコンデンサ素子の上方に配置する際には、封口部材に形成された孔に、コンデンサ素子から延びるタブ端子(具体的には棒状部)を貫通させ、第1部分(具体的には線状部)を導出させる。
図1に示すような座板を配置する場合には、カール部分に配置すればよい。
【0064】
(樹脂層形成工程)
この工程では、封止した後に、封口部材の有底ケースの外側に配される主面(上面)に樹脂層を形成する。例えば、上記主面の第1リブを取り囲む外側の領域や、第1リブと第2リブとの間に形成された領域に、硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を硬化させることにより、硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された樹脂層を形成することができる。塗膜は、公知の塗布方法により形成できる。このように樹脂層を形成することで、第1リブにより、タブ端子と樹脂層とが離間される。
【0065】
硬化性樹脂組成物を塗布し易く、適度な厚みの樹脂層を形成し易い観点からは、硬化性樹脂組成物の23℃における粘度は、例えば、1〜70Pa・sであり、2〜30Pa・sであることが好ましい。
なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、市販の回転式粘度計(例えば、スピンドルタイプのB型粘度計)を用いて、23℃で、所定の回転速度(例えば、1〜10rpm)で測定することができる。
【0066】
塗膜の硬化は、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の種類に応じて、光照射や加熱により行なうことができる。
【0067】
[第2実施形態]
(電解コンデンサ)
本発明の第2実施形態に係る電解コンデンサでは、樹脂層は、タブ端子が貫通し、かつ第1孔と連なる第2孔を有している。タブ端子は、第2孔において樹脂層とタブ端子との間に形成された環状の隙間により樹脂層と離間している。樹脂層を形成する工程では、樹脂層とタブ端子との間に環状の隙間が形成されるように第2孔を形成して、環状の隙間によりタブ端子と樹脂層とを離間させる。環状の隙間によりタブ端子と樹脂層との接触が抑制されるため、高温環境下やリフロー処理による樹脂層の劣化を抑制できる。
【0068】
樹脂層を形成する工程では、ディスペンサなどにより硬化性樹脂組成物を上記の主面に塗布することが好ましい。この場合、樹脂層と、タブ端子や有底ケースとの間に環状の隙間を形成し易く、容易に離間させることができる。
【0069】
第2実施形態でも、有底ケースの開口端部は、樹脂層と離間していることが好ましい。この場合、樹脂層と有底ケースとの接触も抑制される。よって、リフロー処理時や高温環境下で、各部材の膨張率の差が生じても、樹脂層に加わる応力が従来よりも小さくなるため、樹脂層の劣化がさらに抑制される。
【0070】
第2実施形態に係る電解コンデンサは、樹脂層および封口部材の形状が第1実施形態とは異なるだけで、その他の構成は第1実施形態と共通しており、第1実施形態の説明を参照できる。
【0071】
図5は、第2実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
図6は、
図5の電解コンデンサの封口部材を概略的に示す斜視図である。なお、
図5の電解コンデンサに係る巻回体については、その一部を展開した概略図として、第1実施形態の
図2を参照できる。
図5においても、樹脂層および封口部材以外の構成については、第1実施形態の
図1の説明を参照できる。
【0072】
図5(および
図2)に示されるように、封口部材212は、タブ端子14A,14Bをそれぞれ貫通させる第1孔212a、212bを備えている。封口部材212の外側の主面(上面)には、樹脂層219が形成されている。樹脂層219は、第1孔212a,212bとそれぞれ連なる第2孔220a,220bを有している。タブ端子14A,14Bは、第1孔212a,212bにおいて、封口部材212に接触している。一方、第2孔220a,220bでは、タブ端子14A,14Bのそれぞれと樹脂層219との間には環状の隙間が形成されている。そしてこの隙間により、樹脂層219とタブ端子14A,14Bとが離間されており、接触が抑制されている。接触が抑制されることで、リフロー処理や高温環境下に晒された際に、熱によりタブ端子14A,14Bや封口部材212が膨張しても、膨張による樹脂層219への影響を低減することができ、樹脂層219に加わる応力を抑制することができる。よって、樹脂層219の劣化を抑制することができる。
【0073】
図示例では、樹脂層219と、有底ケース11の開口端部との間にも環状の隙間220cが形成されることで、両者は離間している。これにより、リフロー時や高温環境下で有底ケース11(および封口部材212)が膨張しても、有底ケース11と樹脂層219との膨張率の差に起因する応力が樹脂層219に加わることが抑制され、樹脂層219の劣化を抑制できる。
【0074】
以下に、第2実施形態に係る電解コンデンサの構成について、より詳細に説明する。
第2実施形態では、封口部材は、第1リブや第2リブを有さない点で第1実施形態とは異なるが、それ以外は、第1実施形態における説明を参照できる。
【0075】
第2実施形態では、樹脂層は、タブ端子の周囲に第2孔を形成するように封口部材の主面上に形成されている。第2孔の部分では、樹脂層とタブ端子との間には環状の隙間が形成されており、樹脂層とタブ端子との接触が抑制されている。
また、樹脂層は、樹脂層と有底ケース(具体的には開口端部)との間に環状の隙間を形成するように形成することが好ましい。
【0076】
樹脂層とタブ端子との間の環状の隙間および樹脂層と有底ケースとの間の環状の隙間のそれぞれの幅は、樹脂層の厚みにもよるが、例えば、0.2〜1mmであり、0.3〜0.5mmであることが好ましい。隙間の幅がこのような範囲である場合、タブ端子、有底ケースや封口部材が膨張しても、樹脂層への応力の影響を抑制し易い。
なお、環状の隙間の幅とは、樹脂層とタブ端子または有底ケースとの間に形成される隙間の最小幅を言う。
樹脂層に含まれる樹脂としては、第1実施形態の場合と同様に、硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
【0077】
(電解コンデンサの製造方法)
第2実施形態に係る電解コンデンサの製造方法については、樹脂層の形成工程以外は、第1実施形態に係る電解コンデンサの製造方法に関する説明が参照できる。
樹脂層形成工程では、封止した後に、封口部材の外側に露出する主面に硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を硬化させることにより、硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された樹脂層を形成する。このとき、第2孔において樹脂層とタブ端子との間に環状の隙間を形成して、タブ端子と樹脂層とが離間した状態となるように、第2孔を形成しながら樹脂層を形成する。塗膜の硬化は、第1実施形態と同様に光照射や加熱により行なうことができる。
【0078】
塗膜は、公知の塗布方法により形成できる。例えば、タブ端子の周囲や有底ケースの開口端部の内側にカバーとなる部材を配置し、残された領域に樹脂層の材料(硬化性樹脂組成物など)を塗布して塗膜を形成し、硬化させて樹脂層を形成した後、カバーとなる部材を除去することで、この除去した位置に環状の隙間を形成してもよい。簡便で樹脂層の形状を制御し易い観点からは、ディスペンサを用いて樹脂層の材料を塗布して塗膜を形成することが好ましい。ディスペンサとしては、市販のものを使用できる。供給量の制御方式や補正方式は特に制限されない。
【0079】
硬化性樹脂組成物を塗布し易いながらも、硬化性樹脂組成物の過度な流動を抑制する観点から、硬化性樹脂組成物の23℃における粘度は、例えば、1〜70Pa・sであり、2〜30Pa・sであることが好ましい。なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、上述の方法で測定することができる。
【0080】
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極箔に代えて金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、陽極箔に代えて金属板を用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量270μFの巻回型の電解コンデンサ(直径10mm×長さ10mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
【0083】
(コンデンサ素子の作製)
表面を粗面化したAl箔に、アジピン酸アンモニウム溶液を用いて化成処理し、誘電体層を形成した。得られた陽極箔を所定サイズに裁断した。陽極箔と陰極箔としてのAl箔に、それぞれ、タブ端子の扁平部を接続し、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体を作製した。このとき、タブ端子の棒状部および線状部は、巻回体より引き出した状態で、タブ端子を巻き込みながら巻回した。巻回体に、さらにアジピン酸アンモニウム溶液を用いて再度化成処理した。
【0084】
所定容器に収容されたポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸と水とを含む導電性高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、導電性高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、導電性高分子を巻回体の陽極箔と陰極箔との間に付着させた。このようにして、コンデンサ素子を完成させ、直径10mm×長さ10mmの有底円筒状のケースに収容した。
【0085】
(電解液の含浸)
ケース内に電解液を注液し、減圧雰囲気(40kPa)中でコンデンサ素子に電解液を含浸させた。電解液としては、γブチロラクトンとスルホランとフタル酸エチルジメチルアミンとを含む溶液を用いた。
【0086】
(コンデンサ素子の封止)
図1および
図3に示すようなブチルゴム製の封口部材の第1孔に、コンデンサ素子から導出されたタブ端子を貫通させ、線状部を封口部材の外側に引き出した。この状態で、封口部材を、ケースの開口に嵌め込み、横絞り加工を施して、封口部材を固定した。ケースの開口端部をカール加工することにより、コンデンサ素子を封止した。
【0087】
(樹脂層の形成)
エポキシ樹脂と、フィラーとしての平均粒径10μmの球状シリカと、硬化剤とを含む熱硬化性樹脂組成物(粘度:27Pa・s)を、封口部材の上面の第1リブと第2リブとの間に塗布し、塗膜を熱硬化性樹脂組成物の硬化温度以上に加熱して、
図1に示すような樹脂層(厚み0.3mm)を形成した。硬化性樹脂組成物の固形分全体(つまり、形成された樹脂層)に占めるフィラーの含有量は、75質量%であった。
その後、定格電圧を印加しながら、130℃で2時間エージング処理を行った。このようにして、電解コンデンサを完成させた。
【0088】
(評価)
(静電容量およびESR)
得られた電解コンデンサについて、下記の手順で、静電容量およびESR値を求めた。
4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数120Hzにおける静電容量(初期静電容量)(μF)を測定した。
4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100kHzにおけるESR値(初期ESR値)(mΩ)を測定した。
静電容量およびESR値は、それぞれ、ランダムに選択した10個の電解コンデンサについて測定し、平均値を算出した。
【0089】
(漏れ電流)
ランダムに選択した10個の電解コンデンサを、155℃で3000時間の条件下で保存し、電解コンデンサの陽極箔と陰極箔との間に35Vの電圧を印加し、120秒後の漏れ電流を測定した。そして、漏れ電流量が500μAを超えるものを不良品と判断して、10個の電解コンデンサに占める不良品の個数をLC不良率とし、漏れ電流の指標とした。
【0090】
(樹脂層の劣化)
ランダムに選択した10個の電解コンデンサを、165℃で150時間の条件下で保存し、樹脂層の劣化(割れ)を目視で観察した。10個の電解コンデンサに占める樹脂層に割れが見られた電解コンデンサの個数を求めた。
【0091】
(実施例2)
図5および
図6に示すようなブチルゴム製の封口部材を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ素子を封止した。
エポキシ樹脂と、フィラーとしての平均粒径10μmの球状シリカと、硬化剤とを含む熱硬化性樹脂組成物(粘度:27Pa・s)を、ディスペンサ(武蔵エンジニアリング(株)製、SMARTSHOT MS−1D)を用いて封口部材上に塗布した。このとき、タブ端子の周囲および有底ケースの開口端部と塗膜との間に、
図5および
図6に示すような環状の隙間がそれぞれ形成されるように塗膜を形成した。塗膜を熱硬化性樹脂組成物の硬化温度以上に加熱して、
図5および
図6に示すような樹脂層(厚み0.3mm)を形成した。硬化性樹脂組成物の固形分全体(つまり、形成された樹脂層)に占めるフィラーの含有量は、75質量%であった。
【0092】
その後、定格電圧を印加しながら、130℃で2時間エージング処理を行った。このようにして、電解コンデンサを完成させた。
得られた電解コンデンサを用いる以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0093】
(比較例1)
樹脂層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様に、電解コンデンサを形成し、評価を行った。比較例1については、樹脂層の劣化に代えて、封口部材の劣化(割れ)を評価した。
【0094】
(比較例2)
熱硬化性樹脂組成物を、タブ端子の周囲に接触するように封口部材上に塗布し、塗膜を形成した。このこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層を形成し、電解コンデンサを作製した。得られた電解コンデンサを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。A1〜A2は、実施例1〜2であり、B1〜B2は、比較例1〜2である。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるように、樹脂層がタブ端子に接触していない実施例では、比較例に比べて、樹脂層の劣化が低減され、LC不良率が低くなった。樹脂層を有さない比較例1では、全ての電解コンデンサで封口部材に割れが生じた。樹脂層がタブ端子に接触している比較例2では、全ての電解コンデンサで樹脂層に割れが生じた。