(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、
図1A及び
図1Bを参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る圧電デバイス1は、蓄電素子部11と、蓄電素子部11に重なる圧電素子部12とを備える。
【0011】
蓄電素子部11には、第一導電層31と第二導電層32の間に挟まれた誘電体フィルム2が複数積層されている。圧電素子部12には、第三導電層33と第四導電層34の間に挟まれた圧電体フィルム4が複数積層されている。
【0012】
例えば、
図1において、蓄電素子部11は、積層している複数の誘電体フィルム2と、誘電体フィルム2の各々に重ねられている第一導電層31及び第二導電層32とを備える。なお、第一導電層31及び第二導電層32は、誘電体フィルム2の積層方向の最外に位置する誘電体フィルム2を除いた誘電体フィルム2の各々に重ねられていれば、最外に位置する誘電体フィルム2は第一導電層31及び第二導電層32のうちのいずれか一方と重なっているだけでもよい。この場合の「積層している」とは、蓄電素子部11内で複数の誘電体フィルム2が、その厚み方向に並んでいることを意味し、この場合、誘電体フィルム2同士が直接接していなくてもよい。
【0013】
圧電素子部12は、積層している複数の圧電体フィルム4と、圧電体フィルム4の各々に重ねられている第三導電層33及び第四導電層34とを備える。なお、第三導電層33及び第四導電層34は、圧電体フィルム4の積層方向の最外に位置する圧電体フィルム4を除いた圧電体フィルム4の各々に重ねられていれば、最外に位置する圧電体フィルム4は第三導電層33及び第四導電層34のうちのいずれか一方と重なっているだけでも良い。この場合の「積層している」とは、圧電素子部12内で複数の圧電体フィルム4が、その厚み方向に並んでいることを意味し、この場合、圧電体フィルム4同士が直接接していなくてもよい。
【0014】
第一導電層31と第三導電層33とは電気的に接続され、第二導電層32と第四導電層34とは電気的に接続されている。
【0015】
複数の圧電体フィルム4はいずれも湾曲した形状を有し、それにより、圧電素子部12全体が湾曲した形状を有する。
【0016】
本実施形態によると、圧電素子部12が荷重によって変形すると、圧電素子部12において、圧電体フィルム4の変位に起因する圧電効果によって電圧が生じる。そのため圧電デバイス1は荷重に応じた電圧を出力できる。
【0017】
本実施形態では、上記の通り
圧電体フィルム4が湾曲した形状を有することで、圧電素子部12全体が湾曲した形状を有しており、そのことが、荷重がかけられた場合に圧電素子部12で生じる電荷を増大させることができる。また、圧電素子部12で生じた電荷は蓄電素子部11に供給されて蓄電される。このため、圧電デバイス1にかけられた荷重が維持されても、圧電デバイス1が出力する電圧は減衰しにくい。また、圧電デバイス1にかけられる荷重が徐々に大きくなる場合のように、圧電体フィルム4の変位の加速度が小さい場合であっても、圧電デバイス1は十分に大きな電圧を出力できる。
【0018】
したがって、本実施形態では、荷重が維持されていることを、圧電デバイス1を利用して検知することができる。また、荷重が徐々に大きくなる場合であっても荷重を検知することもできる。さらに、本実施形態では、圧電デバイス1内で、圧電効果を発揮する圧電素子部12と、圧電効果によって生じた電荷を蓄電する蓄電素子部11とが積層しているので、上記の機能を発揮する圧電デバイス1をコンパクト化できるとともに、他の回路や検出器を要することなく、圧電デバイス1を利用して、荷重が維持されていることや、徐々に大きくなる荷重などを、検知することができる。また、圧電デバイス1を発電に利用することもできる。
【0019】
このような本実施形態の圧電デバイス1は、例えばトラフィックセンサ、タイヤ空気圧センサなどの交通分野、侵入検知、盗難警戒などのセキュリティ分野、音響ピックアップ、魚群探知機、ソナーなどの音響・超音波の分野、超音診断などの医療分野、床発電の分野など、種々の分野に適用可能である。
【0020】
圧電デバイス1の構成について、更に詳しく説明する。
【0021】
本実施形態では、
図1Aに示すように、圧電素子部は、蓄電素子部とは反対側に向けて突出するように湾曲した形状を有する。また、蓄電素子部は、圧電素子部側に向けて突出するように湾曲した形状を有する。すなわち、本実施形態では、蓄電素子部と圧電素子部は、いずれも、蓄電素子部から圧電素子部へと向かう一方向に向けて突出するように湾曲した形状を有する。これにより、圧電デバイス全体が、湾曲した形状を有する。
【0022】
本実施形態では、蓄電素子部及び圧電素子部は、湾曲していることで、一方向(以下、X方向という)から見て円弧形状を有する。
【0023】
まず蓄電素子部11について説明する。蓄電素子部11は、X方向から見て湾曲した形状を有することを除き、一般的な積層型のフィルムコンデンサと同様の構造を有することができる。
【0024】
本実施形態では、蓄電素子部11は、複数の誘電体フィルム2と、複数の導電層3とを備える。誘電体フィルム2と導電層3とは交互に並んでいる。導電層3は第一導電層31と第二導電層32とを含み、第一導電層31と第二導電層32は交互に並んでいる。すなわち、蓄電素子部11内では、第一導電層31、誘電体フィルム2、第二導電層32、誘電体フィルム2、第一導電層31、誘電体フィルム2…、というように、要素が繰り返し並んで積層している。これにより、蓄電素子部11は、積層している複数の誘電体フィルム2と、誘電体フィルム2の各々に接して重ねられている第一導電層31及び第二導電層32とを備え、誘電体フィルム2の各々は、第一導電層31と第二導電層32との間に挟まれている。誘電体フィルム2と導電層3の厚み方向及び積層方向は、X方向と直交する。
【0025】
本実施形態では、誘電体フィルム2、第一導電層31及び第二導電層32の各々は、X方向から見た形状が円弧形状であるように湾曲している。このような誘電体フィルム2、第一導電層31及び第二導電層32がX方向と直交する方向に積層しているため、蓄電素子部11全体が湾曲し、蓄電素子部11は円弧形状を有する。誘電体フィルム2の有する円弧形状の曲率は、例えば1/10〜1/2000(1/mm)の範囲内、好ましくは1/20〜1/1000(1/mm)の範囲内であるが、これに制限されない。
【0026】
誘電体フィルム2は、誘電体からなるフィルムであればよい。誘電体フィルム2は、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレンといった、プラスチックから作製される。すなわち、誘電体フィルム2は、例えばプラスチックフィルムである。本実施形態では、誘電体フィルム2は好ましくは圧電性を有さず、すなわち誘電体フィルム2の圧電定数は好ましくは0である。
【0027】
蓄電素子部11における導電層3は、導電体からなる層であればよい。導電層3は、例えばインジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、及びタングステンからなる群から選択される少なくとも一種の金属、又は少なくとも一種の金属の酸化物から、作製される。
【0028】
蓄電素子部11内の誘電体フィルム2の数は、例えば20〜1000の範囲内であるが、これに制限されない。
【0029】
次に、圧電素子部12について説明する。
【0030】
本実施形態では、圧電素子部12は、複数の圧電体フィルム4と、複数の絶縁フィルム8と、複数の導電層3とを備える。圧電体フィルム4と絶縁フィルム8とは、交互に並んでいる。隣合う圧電体フィルム4と絶縁フィルム8との間には導電層3が介在している。圧電素子部12における導電層3は第三導電層33と第四導電層34とを含み、第三導電層33と第四導電層34は交互に並んでいる。すなわち、圧電素子部12内では、第三導電層33、圧電体フィルム4、第四導電層34、絶縁フィルム8、第三導電層33、圧電体フィルム4…、というように、要素が繰り返し並んで積層している。これにより、圧電素子部12は、積層している複数の圧電体フィルム4と、圧電体フィルム4の各々に接して重ねられている第三導電層33及び第四導電層34とを備え、圧電体フィルム4の各々は、第三導電層33と第四導電層34との間に挟まれている。
【0031】
換言すれば、本実施形態では、圧電素子部12は、第三導電層33と第四導電層34とこれらの間に挟まれている圧電体フィルム4とからなる圧電素子9と、絶縁フィルム8とを、それぞれ複数備え、圧電素子9と絶縁フィルム8とは交互に並んで積層している。圧電体フィルム4と、絶縁フィルム8と、導電層3との厚み方向及び積層方向は、X方向と直交する。
【0032】
本実施形態では、圧電体フィルム4、絶縁フィルム8、第三導電層33及び第四導電層34の各々は、X方向から見た形状が円弧形状であるように湾曲している。このような圧電体フィルム4、絶縁フィルム8、第三導電層33及び第四導電層34がX方向と直交する方向に積層しているため、圧電素子部12全体が湾曲し、圧電素子部12は円弧形状を有する。圧電体フィルム4の有する円弧形状の曲率は、例えば1/10〜1/2000(1/mm)の範囲内、好ましくは1/20〜1/1000(1/mm)の範囲内であるが、これに制限されない。
【0033】
圧電体フィルム4は、圧電体からなるフィルムであればよい。圧電体フィルム4は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)から作製される。また、圧電体フィルム4は、フッ化ビニリデン−三フッ化エチレン共重合体(VDF/TrFE)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体(VDF/TeFE)、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体(VDCN/VAc)、ナイロン11、ポリ乳酸、ポリ尿素といった、圧電性を有するプラスチックから作製されてもよい。すなわち、圧電体フィルム4は、例えば圧電性を有するプラスチックフィルムである。
【0034】
なお、圧電体フィルム4がポリ乳酸を含有する場合、ポリ乳酸は生分解性を有することから、圧電デバイス1を廃棄する場合の環境への負荷を軽減できる。ポリ乳酸は、例えばポリL−乳酸又はポリD−乳酸であり、特に延伸されたポリL−乳酸又は延伸されたポリD−乳酸であることが好ましい。この場合、その厚み方向と直交する方向に沿った変位に応じて、厚み方向に分極する性質を有する圧電体フィルム4を得ることができる。ポリ乳酸の光学純度は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であればより好ましく、95モル%以上であれば特に好ましく、98モル%以上であれば最も好ましい。ポリ乳酸は、その分子構造中に乳酸由来以外の単位を含んでいてもよいが、乳酸由来の単位と乳酸由来以外の単位の合計に対する乳酸由来以外の単位の割合は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であればより好ましく、2モル%以下であれば特に好ましい。
【0035】
絶縁フィルム8は、電気絶縁性を有するフィルムであればよい。絶縁フィルム8は、例えば、2軸延伸ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエチレン系樹脂といった、電気絶縁性を有するプラスチックから作製される。すなわち、絶縁フィルム8は、例えば電気絶縁性を有するプラスチックフィルムである。絶縁フィルム8の厚みは、例えば1〜20μmの範囲内、好ましくは3〜9μmの範囲内である。
【0036】
圧電素子部12における導電層3は、導電体からなる層であればよい。導電層3は、例えばインジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、及びタングステンからなる群から選択される少なくとも一種の金属、又は少なくとも一種の金属の酸化物から、作製される。
【0037】
圧電素子部12内の圧電体フィルム4の数は、例えば40〜1000の範囲内であるが、特にこれに制限されない。
【0038】
圧電素子部12の厚みは、蓄電素子部11の厚みよりも小さいことが好ましい。この場合、蓄電素子部11よりも圧電素子部12の方が変形しやすいため、荷重を受けた場合の圧電素子部12の変位が大きくなり、それにより、圧電デバイス1の出力を向上できる。具体的には、蓄電素子部11の厚みは0.5〜25mmの範囲内であることが好ましく、これに対して、圧電素子部12の厚みは、0.1〜20mmの範囲内であることが好ましい。また、圧電素子部12の厚みは、蓄電素子部11の厚みの10〜90%の範囲内であることも好ましい。
【0039】
圧電体フィルム4の厚みは、誘電体フィルム2の厚みよりも大きいことが好ましく、すなわち、誘電体フィルム2の厚みは、圧電体フィルム4の厚みよりも小さいことが好ましい。一般に、圧電性を有するプラスチックフィルムの強度は弱いため、圧電体フィルム4の厚みが小さいと荷重によって圧電体フィルム4が破断されるなどして損傷されやすく、その結果、圧電デバイス1の出力が低下してしまうおそれがある。しかし、圧電体フィルム4の厚みが大きいと、圧電体フィルム4の損傷を抑制できる。また、誘電体フィルム2の厚みが小さいと、蓄電素子部11の静電容量が大きくなり、その結果、荷重が維持された場合の圧電デバイス1の出力の減衰がより抑制される。
【0040】
具体的には、圧電体フィルム4の厚みは3〜200μmの範囲内であることが好ましく、5〜50μmの範囲内であれば更に好ましい。また、誘電体フィルム2の厚みは1〜20μmの範囲内であることが好ましく、2〜9μmの範囲内であれば更に好ましい。また、圧電体フィルム4の厚みは、誘電体フィルム2の厚みの110〜10000%の範囲内であることも好ましい。
【0041】
なお、圧電体フィルム4の厚みを小さくすると、圧電素子部12の静電容量が大きくなることで、荷重が維持された場合に出力が減衰しにくくなることは期待できるものの、上記の通り圧電体フィルム4が損傷しやすくなってしまう。圧電体フィルム4の数を多くすることで圧電素子部12の静電容量を大きくすることもできるが、その場合は圧電素子部12の厚みが大きくなってしまって、荷重に対する圧電素子部12の変位量が小さくなってしまう。一方、本実施形態では、蓄電素子部11に圧電素子部12が重なっているため、圧電体フィルム4の厚み及び数にかかわらず、荷重が維持された場合の圧電デバイス1からの出力を減衰しにくくできる。
【0042】
圧電体フィルム4の誘電正接は、誘電体フィルム2の誘電正接よりも大きいことが好ましい。すなわち、誘電体フィルム2の誘電正接は、圧電体フィルム4の誘電正接よりも小さいことが好ましい。誘電体フィルム2の誘電正接が小さいと、蓄電素子部11における合成誘電正接を小さくできる。そのため、蓄電素子部11における充放電時の発熱を抑制できる。
【0043】
具体的には、圧電体フィルム4の誘電正接は0.04〜0.2の範囲内であることが好ましい。また、誘電体フィルム2の誘電正接は0.0005〜0.015の範囲内であることが好ましく、この値は小さいほど好ましい。
【0044】
圧電素子部12における第三導電層33及び第四導電層34の各々の厚みは、蓄電素子部11における第一導電層31及び第二導電層32の各々の厚みよりも、大きいことが好ましい。第三導電層33及び第四導電層34の厚みが大きいと、圧電素子部12内の内部抵抗を低減でき、また、荷重を受けて変形する部位である圧電素子部12の強度向上に寄与できる。
【0045】
第一導電層31、第二導電層32、第三導電層33及び第四導電層34の厚みは、これらの導電層3の表面抵抗値の抑制、蓄電素子部11及び圧電素子部12の製造性、蓄電素子部11内及び圧電素子部12内の層間強度の維持、これらの導電層3を作製する際のダメージ抑制なども考慮して決定されることが好ましい。
【0046】
具体的には、第一導電層31及び第二導電層32の厚みは、10nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。また、第三導電層33及び第四導電層34の厚みは、10nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
上記の通り、圧電素子部12は、蓄電素子部11に重ねられる。この場合、蓄電素子部11における誘電体フィルム2の積層方向、圧電素子部12における圧電体フィルム4の積層方向、及び蓄電素子部11と圧電素子部12の積層方向が、いずれも一致している。また、蓄電素子部11の有する円弧形状の中心、誘電体フィルム2の有する円弧形状の中心、圧電素子部12の有する円弧形状の中心軸、及び圧電体フィルム4の有する円弧形状の中心軸は、ほぼ一致している。
【0048】
圧電素子部12と蓄電素子部11とは、圧電素子部12の蓄電素子部11と対向する面と、蓄電素子部11の圧電素子部12と対向する面との間が、電気的に絶縁されるように、積層される。本実施形態において、圧電デバイス1は、蓄電素子部11と圧電素子部12との間に介在する弾性部材13を備える。すなわち、蓄電素子部11と圧電素子部12との間に、弾性部材13が介在している。この弾性部材13により、絶縁がなされうる。また、圧電デバイス1が弾性部材13を備えると、圧電素子部12が荷重により変形した場合、それに追随して弾性部材13が変形しやすく、そのため圧電素子部12が蓄電素子部11に重なっていても、圧電素子部12は変形しやすい。そのため、荷重に応じて圧電素子部12で発生する電圧が大きくなり、その結果、荷重に対する圧電デバイス1の出力が向上する。
【0049】
弾性部材13は、蓄電素子部11よりも高い弾性限界歪みを有する部材であれば特に制限されない。弾性部材13は、例えばニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、ラテックス、及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも一種の材料から作製される、シートあるいは発泡シートである。弾性部材13の厚みは例えば0.5〜5mmの範囲内である。
【0050】
圧電デバイス1は、上記のような弾性部材13を備えなくてもよい。その場合には、例えば圧電素子部12における導電層3と蓄電素子部11における誘電体フィルム2とが接して重なり、又は圧電素子部12における圧電体フィルム4或いは絶縁フィルム8と蓄電素子部11における導電層3とが接して重なり、又は圧電素子部12における圧電体フィルム4或いは絶縁フィルム8と蓄電素子部11における誘電体フィルム2とが接して重なることで、圧電素子部12の蓄電素子部11と対向する面と、蓄電素子部11の圧電素子部12と対向する面との間が、電気的に絶縁される。また、圧電素子部12と蓄電素子部11との間に、弾性部材13以外の電気絶縁性を有する部材を介在させてもよい。
【0051】
本実施形態では、圧電デバイス1は、第一外部電極61及び第二外部電極62を備える。これらの構成について説明する。
【0052】
上記の通り、第一導電層31と第三導電層33とは電気的に接続され、第二導電層32と第四導電層34とは電気的に接続されている。本実施形態では、圧電デバイス1は第一端部51と、第一端部51とは反対側にある第二端部52とを有し、第一端部51に第一外部電極61を、第二端部52に第二外部電極62を、それぞれ備える。第一外部電極61は、第一導電層31及び第三導電層33のいずれにも電気的に接続していることで、第一導電層31と第三導電層33とを電気的に接続している。また、第二外部電極62は、第二導電層32及び第四導電層34のいずれにも電気的に接続していることで、第二導電層32と第四導電層34とを電気的に接続している。この第一外部電極61及び第二外部電極62から、圧電デバイス1の出力を取り出すことができる。
【0053】
第一端部51は、本実施形態では、圧電デバイス1における、X方向の一端部である。第二端部52は、この第一端部51とは反対側の端部である。
【0054】
本実施形態では、蓄電素子部11における第一端部51側の面では第一導電層31が露出し、圧電素子部12における第一端部51側の面では第三導電層33が露出している。第一外部電極61は、蓄電素子部11における第一端部51側の面及び圧電素子部12における第一端部51側の面に接しており、これにより、第一外部電極61は、第一導電層31及び第三導電層33のいずれにも接している。このため、第一外部電極61は、第一導電層31及び第三導電層33のいずれにも電気的に接続している。
【0055】
また、本実施形態では、蓄電素子部11における第二端部52側の面では第二導電層32が露出し、圧電素子部12における第二端部52側の面では第四導電層34が露出している。第二外部電極62は、蓄電素子部11における第二端部52側の面及び圧電素子部12における第二端部52側の面に接しており、これにより、第二外部電極62は、第二導電層32及び第四導電層34のいずれにも接している。このため、第二外部電極62は、第二導電層32及び第四導電層34のいずれにも電気的に接続している。
【0056】
第一外部電極61及び第二外部電極62は、例えばアルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ニッケル、鉄、銅、及び真鍮、並びにこれらのうち二種以上の金属の合金からなる群から選択される、少なくとも一種の材料から作製される。第一外部電極61及び第二外部電極62は、導電性ゴムなどの変形容易な材料で作製されてもよい。第一外部電極61及び第二外部電極62は、導電性ペースト、導電性接着剤、又は導電性シートから作製されてもよい。
【0057】
圧電デバイス1の製造方法の一例について説明する。
【0058】
まず、
図2に示すような、蓄電素子部11の原部材110、圧電素子部12の原部材120、第一外部電極61の原部材610及び第二外部電極62の原部材620を備える、圧電デバイス1の中間製品10を作製する。なお、原部材110、原部材120、原部材610及び原部材620は、中間製品10から圧電デバイス1を作製すると、それぞれ蓄電素子部11、圧電素子部12、第一外部電極61及び第二外部電極62になる部材である。
【0059】
蓄電素子部11の原部材110の作製方法としては、一般的な巻回型のフィルムコンデンサの作製方法を採用できる。例えば、まず長尺な第一誘電体フィルム21の一面上に、必要に応じて密着性向上のためのコーティングを施してから、蒸着法、スパッタリング法などの方法で第一導電層31を作製する。これにより、第一誘電体フィルム21と第一導電層31とを備える第一金属化フィルム15を作製する。また、長尺な第二誘電体フィルム22の一面上に、必要に応じて密着性向上のためのコーティングを施してから、蒸着法、スパッタリング法などの方法で第二導電層32を作製する。これにより、第二誘電体フィルム22と第二導電層32とを備える第二金属化フィルム16を作製する。第一金属化フィルム15と第二金属化フィルム16とを重ねた状態で、これらを、一方向(以下Y方向という)に沿った中心軸を中心にして巻回することで、蓄電素子部11の原部材110を作製できる。原部材110は例えばY方向に沿った中心軸を有する管形状を有する。なお、蒸着法及びスパッタリング法のほか、例えば誘電体フィルム2の一面上に導電ペーストを塗布したり、導電性接着剤を塗布したり、金属箔などの導電性シートを重ねたりすることによって、導電層3を作製してもよい。なお、Y方向は、圧電デバイス1におけるX方向と一致する。
【0060】
これまでの説明では、第一誘電体フィルム21の片面上に第一導電層31を形成し、第二誘電体フィルム21の片面上に第二導電層32を形成したが、これに限定されない。例えば、第一誘電体フィルム21の一方の主面上に第一導電層31を、他方の主面上に第二導電層32を形成し、これと、導電層3を形成していない第二誘電体フィルム22とを巻回してもよい。
【0061】
この蓄電素子部11の原部材110の周りには、必要に応じて、弾性部材13を配置する。
【0062】
圧電素子部12の原部材120の作製方法としては、一般的な巻回型のフィルムコンデンサの作製方法に準じた方法を採用できる。例えば、まず長尺な圧電体フィルム4の一面上に、必要に応じて密着性向上のためのコーティングを施してから、蒸着法、スパッタリング法などの方法で導電層3を作製する。これにより、圧電体フィルム4と導電層3とを備える第三金属化フィルム17を作製する。また、長尺な絶縁フィルム8の一面上に、必要に応じて密着性向上のためのコーティングを施してから、蒸着法、スパッタリング法などの方法で導電層3を作製する。これにより、絶縁フィルム8と導電層3とを備える第四金属化フィルム18を作製する。続いて、第三金属化フィルム17と第四金属化フィルム18とを重ねた状態で、これらをY方向に沿った中心軸を中心にして、蓄電素子部11の原部材110の周りで巻回することで、圧電素子部12の原部材120を作製できる。原部材120は例えばY方向に沿った中心軸を有する管形状を有する。なお、蒸着法及びスパッタリング法のほか、例えば圧電体フィルム4又は絶縁フィルム8の一面上に導電ペーストを塗布したり、導電性接着剤を塗布したり、金属箔などの導電性シートを重ねたりすることによって、導電層3を作製してもよい。
【0063】
これまでの説明では、圧電体フィルム4の片面上に導電層3を形成し、絶縁フィルム8の片面上に導電層3を形成したが、これに限定されない。例えば、圧電体フィルム4と絶縁フィルム8のうち、一方の両主面上に導電層3を形成し、他方の両主面上には導電層3を形成せず、その後、圧電体フィルム4と絶縁フィルム8とを巻回しても良い。
【0064】
第一外部電極61の原部材610及び第二外部電極62の原部材620は、原部材110及び原部材120の、Y方向の一端及び他端にそれぞれ設けられる。原部材610及び原部材620は、例えばアルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ニッケル、鉄、銅、及び真鍮、並びにこれらのうち二種以上の金属の合金からなる群から選択される、少なくとも一種の材料から作製される。原部材610及び原部材620は、例えばメタリコン、めっき、蒸着といった方法で作製される。原部材610及び原部材620は、導電性ゴムなどの変形容易な材料で作製されてもよい。第一外部電極61及び第二外部電極62は、導電性ペースト、導電性接着剤といった材料を塗布したり、導電性シートを接着したりすることで作製されてもよい。
【0065】
このようにして、
図3に示すような、Y方向に沿った中心軸を有する管形状を有する中間製品10を作製できる。この中間製品10を、例えば複数箇所においてY方向と平行な面で切断することで、一つの中間製品10から複数の圧電デバイス1を作製できる。
【0066】
なお、原部材610及び原部材620を作製することなく原部材110及び原部材120を切断してから、第一外部電極61及び第二外部電極62を作製することで、圧電デバイス1を作製してもよい。