(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)概要
以下の実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
本実施形態の照明器具1は、例えば非常用照明を行うように構成されている。照明器具1は、
図3に示すように、常用時には外部の電源(例えば商用の交流電源9)からの電力で非常用電源12の充電を行い(光源10は非点灯)、非常時には非常用電源12からの電力で光源10を点灯させて非常用照明を行う。言い換えれば、照明器具1は、一例として、常用時には常用照明を行わない、非常用照明専用の照明器具である。
【0014】
照明器具1は、一例として、オフィスビル等の建物内の通路における天井(又は階段の踊り場等の天井)に直付け固定されるように構成されている。ただし、照明器具1は、天井に埋め込みされるように構成されていてもよいし、天井以外にも壁等に固定されるように構成されていてもよい。また、照明器具1は、天井材(造営材)の吊りボルトにより直付けされてもよい。照明器具1は、オフィスビル以外にも、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港、集合住宅(マンション)、戸建住宅等に設置されてもよい。
【0015】
ここで、照明器具1は、
図3に示すように、光源10と検出部(停電検出回路113)と通信部115と制御部(制御回路114)とを備えている。停電検出回路113は、電源(例えば、商用の交流電源9)の停電を検出する。通信部115は、停電以外の特定の事象の検出を示す検出信号を、外部の通信装置(受信機4)から受信するように構成されている。制御回路114は、光源10の点灯状態を制御するように構成されている。以下では、停電以外の「特定の事象」が、一例として、火災であることを想定して説明する。しかし、「特定の事象」は、火災以外にも、例えば地震、津波等の緊急災害、更には不審者の侵入等であってもよい。
【0016】
本実施形態では、制御回路114は、停電検出回路113が停電を検出すると、光源10を第1点灯状態で点灯させるように制御する。また、制御回路114は、通信部115が検出信号を受信すると、光源10を第1点灯状態とは異なる第2点灯状態で点灯させるように制御する。「第1点灯状態」は、一例として、連続点灯である。「第2点灯状態」は、一例として、点滅点灯である。
【0017】
また、本実施形態の照明システム100は、照明器具1と、特定の事象(火災)の検出を示す検出信号を、照明器具1へ送信可能な通信装置(受信機4)と、備えている。本実施形態では、上述の通り「特定の事象」が一例として火災であるため、説明の便宜上、照明システム100が、少なくとも1つの照明器具1を備えた自動火災報知システムとして構成されていることを想定する。
【0018】
この構成によれば、照明器具1の制御回路114が、停電の発生か特定の事象の発生かに応じて、異なる点灯状態で光源10の点灯制御を行う。したがって、照明器具1及び照明システム100は、例えば照明器具1とは別に光警報装置を設置する必要がなく、あるいは光警報装置の数を削減することができる。その結果、停電時の照明及び特定の事象の発生の報知に関する信頼性を保ちつつ、設置コストの削減を図ることができる。
【0019】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態の照明システム100について、
図1〜
図4を参照して詳しく説明する。照明システム100は、「(1)概要」の欄で説明したように、少なくとも1つの照明器具1(
図1では6つ)と受信機4(通信装置)とを備えている(
図1参照)。照明器具1は、例えば、建物(例えば1階〜4階)の各階における通路の天井等に3つ設置される。
図1は、説明の便宜上、1階に設置されている照明器具1A〜1Cと、2階に設置されている照明器具1D〜1Fとだけ示している。受信機4は、建物の防災センタ等に設置されている。
【0020】
また、照明システム100は、
図1に示すように、それぞれ建物の各階に対応するように複数の火災感知システム8(
図1では2つ、すなわち照明器具1と同様に1階と2階分のみ図示)を備えている。各火災感知システム8は、中継器3と、複数の火災感知器2(
図1では3つ)と、発信機5と、終端抵抗7と、を有している。各火災感知器2は、例えば、対応する階における通路の天井に設置される。中継器3は、例えば、対応する階に設置された分散処理盤内に収容されている。発信機5は、通路周辺の壁、又は分散処理盤等に取り付けられている。本実施形態では、一例として、警戒区域を建物のフロア単位に設定しているが、特に限定されない。
【0021】
照明システム100は、
図1に示すように、音響装置6を、更に備えている。音響装置6は、例えば、ベルと、ベルを鳴動させるモータ等を有する。受信機4は、火災の発生時に、音響装置6を鳴動させる。照明システム100は、音声警報機能を有する非常放送設備を、更に備えていてもよい。非常放送設備は、防災センタ等に設置される。受信機4は、火災の発生時に、非常放送設備を通じて、建物全体に音響又は音声により火災の発生を、非常用放送にて報知することが可能である。また、照明システム100は、火災の発生時に、防排煙設備の防火扉を制御することが可能であってもよい。
【0022】
火災感知システム8は、照明システム100において必須の構成要素ではない。照明システム100は、既存の火災感知器及び発信機に適用される形態であってもよい。また、「特定の事象」が火災以外の場合、照明システム100は、火災感知システム8以外のシステムを備えていてもよい。例えば、「特定の事象」が不審者の侵入である場合、照明システム100は、不審者の侵入を感知する防犯システムを備えていてもよい。また、中継器3は、省略されてもよい。
【0023】
受信機4と複数の中継器3とは、例えば、2本1組(2線式)の第1通信線L1で電気的に接続されていて、互いに通信可能となっている。各中継器3は、対応する3つの火災感知器2及び発信機5と、2本1組(2線式)の第2通信線L2で電気的に接続されている。また、各階に設置された第2通信線L2の終端(中継器3とは反対側の端部)に、終端抵抗7が電気的に接続されている。終端抵抗7は、必須の構成ではなく、省略されていてもよい。例えば、発信機5が終端として設置されていてもよい。
【0024】
受信機4、中継器3、及び火災感知器2は、一例として、R型(Record-type)の通信方式で互いに通信するように構成されている。より詳細には、受信機4、中継器3、及び火災感知器2は、第1通信線L1を介して時分割多重伝送方式により通信する。時分割多重伝送方式の通信プロトコルとしては、例えば、NMAST(登録商標)の通信規格を採用することができる。受信機4は、第1通信線L1に対して、伝送信号として双極性(±24V)の時分割多重信号を送出し、パルス幅変調によってデータが伝送されるようになっている。複数の火災感知器2のうち一部は、P型感知器又は一般感知器であってもよく、この場合、P型(Proprietary-type)の通信方式で中継器3と通信する。
【0025】
各火災感知器2は、例えば、煙及び/又は熱を感知する感知器である。各火災感知器2は、火災の発生を検知すると、火災の発生を通知する信号(以下、火災報と呼ぶ。)を、第2通信線L2に出力する。各発信機5は、一例として、押釦を有し、押釦が押し操作されることで、火災報を第2通信線L2に出力する。要するに、各発信機5は、建物内の在館者が火災を発見した際に押釦を手動で操作することによって、対応する中継器3に対して火災の発生の通知を行う。中継器3は、火災報を受信すると、第1通信線L1を介して火災報を受信機4に送信する。
【0026】
受信機4は、複数の火災感知器2のうち少なくとも1つの火災感知器2又は発信機5から火災報を受信すると、火災の発生を報知する動作(以下、第1動作と呼ぶ)を行う。ここで言う第1動作は、例えば、音響装置6を通じて建物全体に音響又は音声により火災の発生を報知したり、電気通信回線を介して建物の外部の施設(例えば消防署等)に火災の発生を通報したりする動作である。
【0027】
受信機4と複数の照明器具1とは、例えば、2本1組(2線式)の第3通信線L3で電気的に接続されていて、R型の通信方式で互いに通信するように構成されている。受信機4と複数の照明器具1のうちの一部とは、P型の通信方式で通信してもよい。本実施形態では、各階に第3通信線L3が配線されており、各第3通信線L3には、3つの照明器具1が接続されている。図示は省略するが、各第3通信線L3の終端(受信機4とは反対側の端部)には、終端抵抗が電気的に接続されていることが好ましい。
【0028】
(2.2)受信機
以下、受信機4について更に詳しく説明する。受信機4は、
図2に示すように、制御部40、第1通信部41、第2通信部42、記憶部43、表示部44、及び操作部45等を有する。
【0029】
第1通信部41は、第1通信線L1を介して中継器3に接続されている。第2通信部42は、第3通信線L3を介して照明器具1に接続されている。記憶部43は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等のような不揮発性のメモリを有している。記憶部43は、複数の第1アドレス情報と、複数の第2アドレス情報と、複数の第3アドレス情報と、を記憶している。ここで言う第1アドレス情報とは、各中継器3にそれぞれ対応する固有のアドレス情報(識別情報)であり、中継器3ごとに異なる。また、ここで言う第2アドレス情報とは、各火災感知器2にそれぞれ対応する固有のアドレス情報であり、火災感知器2ごとに異なる。また、ここで言う第3アドレス情報とは、各照明器具1にそれぞれ対応する固有のアドレス情報であり、照明器具1ごとに異なる。
【0030】
制御部40は、第1通信部41、第2通信部42、記憶部43、表示部44、及び操作部45を制御するように構成されている。制御部40は、例えば、マイクロコンピュータを主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0031】
制御部40は、第1応答信号を中継器3に要求する第1要求信号を、定期的に(例えば24時間ごとに)第1通信部41から中継器3の第1通信ユニット31に送信させるように構成されている。第1応答信号は、複数の第2アドレス情報と、各火災感知器2の種類(例えば、熱感知器、煙感知器等)と、各火災感知器2の感度に関する情報(例えば第1種〜第3種等)と、を含む信号である。
【0032】
制御部40は、中継器3から第1応答信号を受信すると、第1応答信号に含まれている第1アドレス情報と複数の第2アドレス情報とを記憶部43に記憶させる。制御部40は、第1アドレス情報と複数の第2アドレス情報とに基づいて、火災感知システム8の中継器3及び複数の火災感知器2を判別することができる。制御部40は、更に、第1応答信号に含まれる各火災感知器2の種類と感度に関する情報とを記憶部43に記憶させることができる。
【0033】
制御部40は、第2応答信号を照明器具1に要求する第2要求信号を、定期的に(例えば24時間ごとに)第2通信部42から照明器具1の通信部115(
図3参照)に送信させるように構成されている。第2応答信号は、第3アドレス情報を含む信号である。第2応答信号は、各照明器具1の種類(直付け型又は埋め込み型等)に関する情報を含んでいてもよい。制御部40は、複数の照明器具1に対して、照明器具1との間で通信を行うタイミングを規定するために定期的に同期信号を送信する。
【0034】
表示部44は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)、液晶ディスプレイ、又は有機エレクトロルミネセンスディスプレイ等を備えている。表示部44は、制御部40に制御されることで、中継器3から受信した応答信号に含まれるデータに応じた内容を表示する。表示部44は、例えば、火災感知器2の異常を知らせる情報を表示する。表示部44は、火災の発生及び火災の発生したフロアを表示する。また、受信機4は、中継器3から火災報と、火災を感知した火災感知器2の第2アドレス情報とを受信していて、表示部44は、当該火災感知器2の設置場所を表示するように構成されている。
【0035】
操作部45は、ユーザからの操作入力を受け付ける。操作部45は、複数のスイッチを有する。操作部45は、受信機4から中継器3及び各火災感知器2に対して任意の信号を送信するための操作を受け付けるように構成されている。任意の信号とは、各火災感知器2のアライブチェックのための信号、自動試験を実施するための信号等である。また、操作部45は、照明器具1に対しても任意の信号を送信するための操作を受け付けるように構成されている。任意の信号とは、例えば、各照明器具1のアライブチェックのための信号等である。また、上述の第1要求信号及び第2要求信号も、定期的な送信以外に、ユーザからの操作部45への操作入力で送信されてもよい。
【0036】
受信機4は、商用の交流電源9(
図1参照)を主電源とする。受信機4は、交流電源9から電源線L0(
図1参照)を介して供給される電圧(実効値が100Vの交流電圧)から所定の電圧値(例えば、24V)の直流電圧を生成する。受信機4は、交流電源9の代わりに自家発電設備等を主電源としてもよし、交流電源9と自家発電設備の両方を主電源としてもよい。受信機4は、第1通信線L1を構成する一対の電線間に直流電圧を印加することにより、各中継器3の動作用の電力を供給する。受信機4は、交流電源9からの電力供給が停止している時(停電時)、動作用の電力を確保できるように、蓄電池を用いた予備電源46を、更に備えている。受信機4は、主電源の停電時に、電力の供給元を主電源から予備電源46に自動的に切り替え、主電源の復旧時には予備電源46から主電源に自動的に切り替える。
【0037】
ここで、本実施形態の制御部40は、第1通信部41で中継器3から火災報を受信すると、火災の発生を報知する第1動作に加えて、第2動作を実行するように構成されている。第2動作とは、火災の検出を示す検出信号を生成して、第2通信部42を通じて、検出信号を照明器具1へ送信する動作である。すなわち、制御部40は、中継器3から火災報を受信すると、第3通信線L3を介して、検出信号を第2通信部42から複数の照明器具1へ送信させるように構成されている。本実施形態の第2通信部42は、第3通信線L3に接続されている複数の照明器具1に対して検出信号をマルチキャストするように構成されているが、特定の照明器具1を指定して検出信号を個別に送信(ユニキャスト)してもよい。
【0038】
受信機4は、有線である第1通信線L1を介して複数の中継器3と接続され、また、有線である第3通信線L3を介して複数の照明器具1と接続されている。しかし、通信方式は、有線通信方式に限定されない。受信機4は、例えば電波を媒体とした無線通信方式により、複数の中継器3及び複数の照明器具1と通信してもよい。
【0039】
(2.3)中継器及び火災感知器
各中継器3は、
図2に示すように、制御部30、第1通信線L1に接続されている第1通信ユニット31、第2通信線L2に接続されている第2通信ユニット32、記憶部33、プロトコル変換部34、及び同期信号生成部35等を有している。
【0040】
記憶部33は、例えば、EEPROM等のような不揮発性のメモリを有し、当該中継器3自身の固有の第1アドレス情報を記憶している。第1アドレス情報は、例えば、中継器3を建物内に設置する前に、アドレス設定器等を介して施工者によって当該中継器3の記憶部33に書き込まれる。また、記憶部33は、第2通信線L2に接続されている3つの火災感知器2から取得した第2アドレス情報を記憶している。
【0041】
制御部30は、第1通信ユニット31、第2通信ユニット32、記憶部33、プロトコル変換部34、及び同期信号生成部35を制御するように構成されている。制御部30は、例えば、マイクロコンピュータを主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0042】
プロトコル変換部34は、第1通信ユニット31と第2通信ユニット32との間における通信プロトコルの変換を行うように構成されている。同期信号生成部35は、火災感知器2との間で通信を行うタイミングを規定するために定期的に同期信号を生成し、中継器3に接続されている3つの火災感知器2に送信するように構成されている。制御部30は、同期信号生成部35で生成された同期信号を、第2通信ユニット32を通じて、3つの火災感知器2に送信する。同期信号は、各中継器3の同期信号生成部35で生成される代わりに、受信機4で生成されてもよい。
【0043】
制御部30は、第1通信ユニット31で受信した受信機4からの信号に含まれる内容に基づいて、第2通信ユニット32を通じて3つの火災感知器2と通信する。例えば、第1通信ユニット31が第1要求信号を受信した場合、制御部30は、各火災感知器2と通信して第2アドレス情報を取得し、複数の第2アドレス情報を含む第1応答信号を受信機4に送信する。
【0044】
各中継器3は、受信機4から供給される電力を用いて、3つの火災感知器2の動作用の電力を生成するように構成されている。各中継器3は、第2通信線L2を構成する一対の電線間に電圧を印加することにより、3つの火災感知器2の動作用の電力を供給する。
【0045】
各火災感知器2は、例えば煙の濃度の変化、一酸化炭素等のガス濃度の変化、温度の変化を検知することで、煙や火災の発生を検知する検知部を有する。各火災感知器2は、検知部の検知結果に基づいて火災の発生を検知すると、例えばブザー等を通じて、周囲に火災の発生を報知するように構成されている。
【0046】
各火災感知器2は、例えばEEPROM等のような不揮発性のメモリを有していて、自身の第2アドレス情報を記憶している。各火災感知器2は、火災の発生を検知すると、火災報を、メモリ内に記憶されている自身の第2アドレス情報と共に第2通信線L2に出力する。中継器3は、火災報及び第2アドレス情報を受信すると、第1通信線L1を介して火災報及び第2アドレス情報を受信機4に送信する。第2アドレス情報は、例えば、火災感知器2を建物内に設置する前に、アドレス設定器等を介して施工者によって当該火災感知器2のメモリに書き込まれる。
【0047】
(2.4)照明器具
照明器具1は、通路における天井等に直付け固定されるように構成されている。照明器具1は、
図3に示すように、光源10と、点灯装置11と、非常用電源12と、器具本体13(
図4参照)と、を備えている。
【0048】
光源10は、例えば、少なくとも1つのLEDチップ、LEDチップが実装された矩形板状の実装基板、光学レンズ101(
図4参照)、及び、これらを支持するホルダを有している。また、光源10は、例えば、LEDチップ等から発せられる熱を伝導させる熱伝導シート、及び放熱部材等を有している。
【0049】
LEDチップは、例えば、青色光を放射する青色発光ダイオードである。また、LEDチップが実装されている実装基板の実装面は、LEDチップから放射される青色光を波長変換する蛍光物質(例えば黄色蛍光体)が混入された封止樹脂で封止されている。矩形板状の実装基板の実装面における対角の位置にある一対の角部には、カソード電極とアノード電極が形成されている。光源10は、点灯装置11から出力される直流電圧がアノード電極とカソード電極に印加されることにより、白色の照明光を放射するように構成される。
【0050】
非常用電源12は、乾電池型の複数の蓄電池と、これら複数の蓄電池を収容する合成樹脂材料製のケースとを有している。器具本体13は、光源10、点灯装置11及び非常用電源12が固定される円盤状の基部と、光源10、点灯装置11及び非常用電源12を覆う扁平な略円筒形状のカバー130(
図4参照)と、を有している。基部は、天井にねじ止めされて直付けされる。カバー130は、
図4に示すように、その下部中央において厚み方向に貫通する孔131を有している。光源10の光学レンズ101は、孔131を通じて器具本体13から外部に露出している。また、カバー130は、その下部中央付近において厚み方向に貫通する4つ貫通孔132〜135を有している。
【0051】
点灯装置11は、
図3に示すように、直流電源回路110、充電回路111、点灯回路112、停電検出回路113(検出部)、制御回路114(制御部)、及び、通信部115を有している。また、点灯装置11は、モニタランプ116、第1押釦スイッチ117、第2押釦スイッチ118、及び受光部121を、更に有している。
【0052】
直流電源回路110は、例えば、リンギングチョークコンバータ等の自励型のスイッチング電源回路で構成され、商用の交流電源9(電源)から電源線L0を介して供給される交流電圧を、当該交流電圧の実効値よりも低い直流電圧に変換する。充電回路111は、交流電源9から給電されているときに動作し、直流電源回路110から非常用電源12へ一定の充電電流を流すように構成される。点灯回路112は、非常用電源12から供給される直流電流を定電流化して光源10に供給するように構成される。停電検出回路113は、直流電源回路110の出力電圧から交流電源9の停電を検出して制御回路114に通知するように構成される。以下では、停電検出回路113が停電を検出している状態を「第1検出状態」と呼ぶ。
【0053】
モニタランプ116は、例えば、緑色光を放射するLEDチップを有し、充電回路111から非常用電源12に供給される充電電流によって発光する。モニタランプ116のランプカバーは、
図4に示すように、カバー130の貫通孔132を通じて露出している。通信部115は、第3通信線L3に接続されていて、受信機4から検出信号を受信可能に構成されている。以下では、通信部115が受信機4から検出信号を受信している状態を「第2検出状態」と呼ぶ。
【0054】
受光部121は、受光素子を有している。受光部121は、赤外線を通信媒体とする無線信号を受信し、受信した無線信号から送信フレームを復調して制御回路114に渡すように構成される。受光素子は、カバー130の貫通孔133と対向するように配置されている。この無線信号は、非常用照明器具である照明器具1の定期点検の作業を行う作業者に操作されるワイヤレス送信器14(
図4参照)から送信される。定期点検は、非常用照明器具である照明器具1に対して、法令で定められた期間ごとに実施され、点灯回路112を強制的に動作させて光源10が規定の時間以上、点灯状態を維持することを確認することを目的とする。
【0055】
ここで、制御回路114は、照明器具1の状態が第1検出状態及び第2検出状態の両方に該当しないとき、充電回路111を動作させ、かつ、点灯回路112を停止(光源10の消灯)させるように構成される。制御回路114は、照明器具1の状態が第1検出状態及び第2検出状態のうち少なくとも一方に該当するとき、充電回路111を停止させ、かつ、点灯回路112を動作させるように構成される。特に、制御回路114は、照明器具1の状態が第1検出状態に該当するとき、光源10を第1点灯状態で点灯させるように点灯回路112を制御する。ここでは、第1点灯状態は、例えば連続点灯である。一方、制御回路114は、照明器具1の状態が第2検出状態に該当するとき、光源10を第1点灯状態とは異なる第2点灯状態で点灯させるように点灯回路112を制御する。ここでは、第2点灯状態は、例えば点滅点灯である。要するに、点灯回路112は、制御回路114からの指示に応じて、連続点灯と点滅点灯と消灯とを切り替え可能に構成されている。
【0056】
点滅する光は、所定の点滅周波数で点滅する光であるのが好ましい。点滅周波数とは、光の点滅する周波数である。点滅周波数は、例えば、0.5Hz〜2Hzであり、一例として、1Hzである。点滅周波数が0.5Hzの場合には、点滅周期が2秒になる。また、点滅周波数が1Hzの場合には、点滅周期が1秒になる。点滅周波数が2Hzの場合には、点滅周期が0.5秒になる。
【0057】
制御回路114は、停電の発生か火災の発生かに応じて、異なる点灯状態で光源10を点灯させるように点灯回路112を制御する。したがって、照明器具1とは別に光警報装置を設置する必要がなく、あるいは光警報装置の数を削減することができ、停電時の照明及び火災の発生の報知に関する信頼性を保ちつつ、設置コストの削減を図ることができる。また、光警報装置が不要、あるいは光警報装置の数を削減できるため、建物の天井、壁等の意匠性(見栄え)が損なわれることを抑制できる。
【0058】
制御回路114は、第1押釦スイッチ117が押操作された場合、あるいは、受光部121から送信フレームを受け取った場合、充電回路111を停止させ、かつ、点灯回路112を動作させて定期点検動作を行うように構成される。ただし、制御回路114は、第2押釦スイッチ118が押操作された場合、点灯回路112を数秒間動作させた後、再度、点灯回路112を停止させ、かつ、充電回路111を動作させるように構成される。点検動作において、光源10の連続点灯と点滅点灯の両方を確認できるように、点灯回路112に連続点灯及び点滅点灯を順次実行させることが望ましい。
【0059】
本実施形態では、第1押釦スイッチ117の押釦を押すための第1操作部材(不図示)が、貫通孔134(
図4参照)と対向するように配置されている。第1操作部材は、貫通孔134よりも外側へ突出することなく器具本体13内に収められており、例えばドライバー等の工具の先端で押し操作される。第2押釦スイッチ118の押釦を押すための第2操作部材122が、
図4に示すように、貫通孔135と対向するように配置されている。第2操作部材122は、貫通孔135よりも外側に突出しており、人の指で押し操作される。
【0060】
ところで、本実施形態では、制御回路114は、照明器具1の状態が第2検出状態に該当するとき、第1検出状態に該当するか否かに関わらず(停電の検出の有無に関わらず)、光源10を第2点灯状態で点灯させるように構成されている。したがって、建物内の在館者に対して、停電に比べて迅速な避難行動が要求される火災の発生を、いち早く報知することができる。
【0061】
(2.5)優先度受付部及びフラグ受付部
照明器具1の点灯装置11は、
図3に示すように、優先度受付部119及びフラグ受付部120を、更に備えている。優先度受付部119は、火災と停電との優先度を受け付けるように構成されている。フラグ受付部120は、第1点灯状態(連続点灯)の有効及び無効を判別するための第1判別フラグと、第2点灯状態(点滅点灯)の有効及び無効を判別するための第2判別フラグと、を受け付けるように構成されている。ただし、本実施形態では、受光部121が、優先度受付部119及びフラグ受付部120として機能する。
【0062】
つまり、火災と停電との優先度に関する情報を含んだ無線信号がワイヤレス送信器14より受光部121へ送信されることで、これらの優先度を照明器具1に登録することが可能となっている。同様に、第1判別フラグと第2判別フラグとに関する情報を含んだ無線信号がワイヤレス送信器14より受光部121へ送信されることで、これらの判別フラグを照明器具1に登録することが可能となっている。制御回路114は、例えばEEPROM等のような不揮発性のメモリを有していて、受光部121が上記の優先度及び判別フラグを受信すると、これらをメモリに記憶させる。上述した照明器具1自身の固有のアドレス情報である第3アドレス情報も、このメモリに記憶されている。
【0063】
制御回路114は、所定の期間内(例えば数分内)において停電の検出と検出信号の受信との両方があった場合、光源10を火災と停電とのうちの優先度の高い方に対応した点灯状態で点灯させるように制御する。
【0064】
また、制御回路114は、停電検出回路113が停電を検出すると、第1判別フラグの有効又は無効に応じて、光源10を第1点灯状態で点灯するか否かを決定する。さらに、制御回路114は、通信部115が検出信号を受信すると、第2判別フラグの有効又は無効に応じて、光源10を第2点灯状態で点灯するか否かを決定する。
【0065】
上記の優先度及び判別フラグの設定は、例えば照明器具1の施工時に施工者によって行われることが望ましい。上記の優先度及び判別フラグは、各照明器具1に対して個別に設定することができるため、例えば、対象となる照明器具1が設置されている場所に応じて適宜に異なるように設定されてもよい。例えば、建物内における通路及び非常階段等の天井に設置されている照明器具1に対しては、火災よりも停電の方の優先度が高くなるように設定さてもよい。また、建物内における壁等に設置されている照明器具1に対しては、停電よりも火災の方の優先度が高くなるように設定されてもよい。
【0066】
優先度受付部119及びフラグ受付部120は、受光部121とは別に設けられていてもよい。優先度受付部119及びフラグ受付部120は、例えば、カバー130から露出するように設けられたディップスイッチにより構成され、ディップスイッチのオン/オフにより上記の優先度及び判別フラグが設定されてもよい。
【0067】
また、通信部115が、優先度受付部119及びフラグ受付部120として機能してもよい。要するに、ワイヤレス送信器14の代わりに、受信機4から第3通信線L3を通じて上記の優先度及び判別フラグが送信されてもよい。つまり、施工者は、受信機4の操作部45の入力操作により、各照明器具1の上記の優先度及び判別フラグを設定することができてもよい。
【0068】
(2.6)優先度に関する動作説明
以下、火災及び停電の優先度に関する動作について説明する。ここでは、例えば1階に設置されている3つの照明器具1A〜1Cに対して、下記の表1のように優先度を設定する場合を想定する。例えば、施工者は、ワイヤレス送信器14を照明器具1Aの受光部121に向けて、停電の優先度が高くなるように操作入力を行うと、制御回路114のメモリには、停電の優先度として例えば「1」の数値情報が記憶される。このとき、制御回路114のメモリには、火災の優先度として例えば「0」の数値情報が記憶される(つまり「0」よりも「1」が優先度高とする)。また、施工者は、照明器具1Bに対して、火災の優先度が高くなるようにワイヤレス送信器14の操作入力を行うと、制御回路114のメモリには、火災の優先度として「1」、停電の優先度として「0」の数値情報が記憶される。一方、施工者は、照明器具1Cに対して、火災及び停電の優先度の設定を行わなかったとする。つまり、照明器具1Cの制御回路114のメモリには、照明器具1Cの製造時に設定された初期値としていずれの優先度も「0」が記憶されたままとなる。
【0070】
ここで、仮に火災が先に発生し、その数分後に停電が発生する場合(所定の期間内において検出信号の受信と停電の検出の両方がある場合)を想定する。照明器具1A〜1Cは、火災の発生に応じて、光源10を第2点灯状態(点滅点灯)で点灯させる。その後照明器具1Aは、停電の発生を検知すると、停電の優先度が高く設定されているため光源10を第2点灯状態から第1点灯状態(連続点灯)へ切り替えて点灯させる。一方、照明器具1Bは、停電の発生を検知したとしても、火災の優先度が高く設定されているため光源10を継続的に第2点灯状態で点灯させる。照明器具1Cは、優先度の設定が無いため、「(2.4)照明器具」の欄で説明したように、停電の有無に関わらず、第2点灯状態を優先させる。すなわち、照明器具1Cは、停電の発生を検知したとしても、光源10を継続的に第2点灯状態で点灯させる。
【0071】
このように優先度の設定を行うことで、ある照明器具1に関しては、停電に対する非常用照明を優先させて、別の照明器具1に関しては、火災の発生に対する報知を優先させることができる。したがって、例えば、照明器具1が通路及び非常階段等の天井に設置されている場合には非常用照明を優先させて、照明器具1が壁に設置されている場合には火災の発生に対する報知を優先させることができる。その結果、設置場所に応じて非常用照明の提供と火災発生の報知との優先度の差別化を図ることができる。
【0072】
(2.7)判別フラグに関する動作説明
以下、第1判別フラグ及び第2判別フラグに関する動作について説明する。ここでは、例えば1階〜2階に設置されている6つの照明器具1A〜1Fに対して、下記の表2のように判別フラグを設定する場合を想定する。表2の「メモリ内の数値情報」において、左の数値情報が第1判別フラグの数値情報に、右の数値情報が第2判別フラグの数値情報に、それぞれ相当する。
【0073】
例えば、施工者は、ワイヤレス送信器14を照明器具1Aの受光部121に向けて、第1判別フラグが有効となるように操作入力を行うと、照明器具1Aの制御回路114のメモリには、第1判別フラグとして例えば「0」の数値情報が記憶される。また、施工者が、第2判別フラグが無効となるように操作入力を行うと、照明器具1Aの制御回路114のメモリには、第2判別フラグとして例えば「1」の数値情報が記憶される。
【0074】
施工者は、照明器具1Bに対して、第1判別フラグが無効となるようにワイヤレス送信器14の操作入力を行うと、照明器具1Bの制御回路114のメモリには、「1」の数値情報が記憶される。また、施工者が、第2判別フラグが有効となるように操作入力を行うと、照明器具1Bの制御回路114のメモリには、「0」の数値情報が記憶される。
【0075】
施工者は、照明器具1C及び照明器具1Dに対して、第1判別フラグ及び第2判別フラグの両方が有効となるようにワイヤレス送信器14の操作入力を行うと、これらの制御回路114のメモリには、両フラグに対して「0」の数値情報が記憶される。
【0076】
施工者は、照明器具1Eに対して、第1判別フラグ及び第2判別フラグの両方が無効となるようにワイヤレス送信器14の操作入力を行うと、照明器具1Eの制御回路114のメモリには、両判別フラグに対して「1」の数値情報が記憶される。
【0077】
施工者は、照明器具1Fに対して、第1判別フラグ及び第2判別フラグの設定を行わなかったとする。この場合、照明器具1Fの制御回路114のメモリには、照明器具1Fの製造時に設定された初期値として両判別フラグに対して「0」が記憶されたままとなる。
【0079】
ここで、仮に停電が発生したとする。第1判別フラグが有効に設定されている、すなわち制御回路114のメモリ内における第1判別フラグの数値情報が「0」である照明器具1A、1C、1D及び1Fについては、光源10は第1点灯状態(連続点灯)で点灯する。一方、第1判別フラグが無効に設定されている照明器具1B及び1Eについては、停電が発生したとしても光源10は、消灯したままとなる。
【0080】
また、上述した所定の期間内において、停電に続き火災が発生したとする。連続点灯していた照明器具1Aは、第2判別フラグが無効(数値情報が「1」)に設定されているため、制御回路114は、光源10を継続的に第1点灯状態(連続点灯)で点灯させる。また、連続点灯していた照明器具1C、1D及び1Fは、第2判別フラグが有効(数値情報が「0」)に設定されているため、照明器具1C、1D及び1Fの制御回路114は、メモリ内に記憶されている優先度を読み込む。火災の優先度が停電の優先度より高く設定されていれば、制御回路114は、光源10を第1点灯状態から第2点灯状態(点滅点灯)へ切り替えて点灯させる。火災の優先度が停電の優先度より低く設定されていれば、制御回路114は、光源10を継続的に第1点灯状態で点灯させる。
【0081】
消灯していた照明器具1Bは、第2判別フラグが有効(数値情報が「0」)に設定されているため、照明器具1Bの制御回路114は、光源10を消灯状態から第2点灯状態(点滅点灯)へ切り替えて点灯させる。また、消灯していた照明器具1Eは、第2判別フラグが無効(数値情報が「1」)に設定されているため、照明器具1Eの制御回路114は、光源10を継続的に消灯させたままとする。
【0082】
第1判別フラグ及び第2判別フラグと、優先度との間に矛盾が生じるような設定がなされている場合に、その旨を通知するための表示部が照明器具1に設けられていてもよい。あるいは、照明器具1がその旨を受信機4へ送信し、受信機4が表示部44を通じてその旨を通知してもよい。ここで言う矛盾とは、例えば、停電の優先度が火災の優先度よりも高く設定されているにも関わらず、停電に対応する第1判別フラグが無効で、火災に対応する第2判別フラグが有効に設定されていることである。
【0083】
このように判別フラグの有効・無効を設定することで、例えば、比較的多くの照明器具1が設置されているような照明空間において、全ての照明器具1に対して停電時又は火災の発生時に照明するといった無駄を省くことができる。すなわち、消費電力の削減を図ることができる。
【0084】
優先度受付部119及びフラグ受付部120は、照明器具1にとって必須の構成要素ではなく、これらは省略されてもよい。あるいは、照明器具1は、優先度受付部119及びフラグ受付部120のうちのいずれか一方のみを備えていてもよい。また、制御回路114のメモリ内に記憶される優先度及び判別フラグに関する情報は、単なる一例であり、「0」及び「1」の数値情報に限定されない。
【0085】
(3)変形例
以下に、いくつかの変形例について列記する。以下では上述した実施形態を「基本例」と呼ぶ。以下に説明する変形例も、上述した基本例と適宜組み合わせて適用可能である。
【0086】
基本例では、第1点灯状態が連続点灯で、第2点灯状態が点滅点灯であるが、この限りではなく、例えば第1点灯状態と第2点灯状態とで光源10の発光色を変えてもよい。つまり、光源10は、上述した青色光を放射するLEDチップに加えて、例えば、赤色光を放射するLEDチップを有していてもよい。この場合、制御回路114は、第1点灯状態では光源10が通常の白色光を放射するように、第2点灯状態では白色光とは異なる色の光を放射するように、点灯させるLEDチップを点灯回路112に切り替えさせるように制御してもよい。
【0087】
基本例では、照明器具1が、常用時には常用照明を行わない、すなわち非常用照明専用の照明器具であるが、この限りではない。照明器具1は、常用時には交流電源9からの電力で非常用電源12の充電と光源10の点灯(常用照明)の両方を行い、非常時には非常用電源12からの電力で光源10の点灯(非常用照明)を行うように構成されてもよい。あるいは、例えば、照明器具1は、
図5に示すように、常用光源で常用照明を行う常用照明装置16と、常用光源とは別の非常用光源で非常用照明を行う非常用照明装置17と、これらを支持する長尺の器具本体18と、を備えていてもよい。この場合、非常用照明装置17の非常用光源が、基本例の光源10に相当し、非常用照明装置17の非常用光源の点灯状態を制御する制御回路が、基本例の制御回路114に相当する。
【0088】
基本例では、照明器具1の制御回路114は、停電が発生しておらず火災のみが発生しているときであっても、非常用電源12から供給される電力で光源10を点灯させるように制御しているが、この限りではない。制御回路114は、例えば、停電が発生しておらず火災のみが発生しているときには、商用の交流電源9から供給される電力で光源10を点灯させるように制御してもよい。
【0089】
また、基本例では、各照明器具1が非常用電源12を備えているが、非常用電源12は照明器具1の必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。この場合、非常時には、受信機4が、第3通信線L3を通じて予備電源46の電力を各照明器具1へ供給するように構成されてもよい。あるいは、特定の照明器具1のみが非常用電源12を備えていて、当該特定の照明器具1が、非常用電源12を備えていない他の照明器具1に対して、第3通信線L3を通じて非常用電源12の電力を供給するように構成されてもよい。ただし、火災による第3通信線L3の断線等を考慮すれば、各照明器具1が非常用電源12を備えていることが望ましい。
【0090】
(4)利点
以上説明したように、第1の態様に係る照明器具1は、光源10と検出部(停電検出回路113)と通信部115と制御部(制御回路114)とを備える。上記検出部は、電源(交流電源9)の停電を検出する。通信部115は、停電以外の特定の事象(例えば火災)の検出を示す検出信号を、通信装置(受信機4)から受信する。上記制御部は、光源10の点灯状態を制御する。上記制御部は、上記検出部が停電を検出すると、光源10を第1点灯状態で点灯させるように制御する。また、上記制御部は、通信部115が検出信号を受信すると、光源10を第1点灯状態とは異なる第2点灯状態で点灯させるように制御する。第1の態様によれば、例えば照明器具1とは別に光警報装置を設置する必要がなく、あるいは光警報装置の数を削減できるため、停電時の照明及び特定の事象の発生の報知に関する信頼性を保ちつつ、設置コストの削減を図ることができる。また、光警報装置が不要、あるいは光警報装置の数を削減できるため、建物の天井、壁等の意匠性(見栄え)が損なわれることを抑制できる。
【0091】
第2の態様に係る照明器具1に関して、第1の態様において、制御部(制御回路114)は、通信部115が検出信号を受信すると、停電の検出の有無に関わらず、光源10を第2点灯状態で点灯させることが好ましい。第2の態様によれば、建物内の在館者に対して停電に比べて迅速な避難行動が要求される特定の事象(例えば火災)の発生を、周囲にいち早く報知することができる。
【0092】
第3の態様に係る照明器具1は、第1の態様又は第2の態様において、特定の事象と停電との優先度を受け付ける優先度受付部119を、更に備えることが好ましい。制御部(制御回路114)は、所定の期間内において停電の検出と検出信号の受信との両方があった場合、光源10を特定の事象と停電とのうちの優先度の高い方に対応した点灯状態で点灯させるように制御することが好ましい。第3の態様によれば、ある照明器具1に対しては停電に対する非常用照明を優先させて、別の照明器具1に対しては特定の事象の発生に対する報知を優先させることができる。したがって、例えば、照明器具1が通路及び非常階段等の天井に設置されている場合には非常用照明を優先させて、照明器具1が壁に設置されている場合には特定の事象の発生に対する報知を優先させることができる。その結果、設置場所に応じて非常用照明の提供と特定の事象の発生の報知との優先度の差別化を図ることができる。
【0093】
第4の態様に係る照明器具1は、第1の態様〜第3の態様のいずれか1つにおいて、フラグ受付部120を、更に備えることが好ましい。フラグ受付部120は、第1点灯状態の有効及び無効を判別するための第1判別フラグと、第2点灯状態の有効及び無効を判別するための第2判別フラグと、を受け付けることが好ましい。制御部(制御回路114)は、検出部(停電検出回路113)が停電を検出すると、第1判別フラグの有効又は無効に応じて、光源10を第1点灯状態で点灯するか否かを決定する。また、上記制御部は、通信部115が検出信号を受信すると、第2判別フラグの有効又は無効に応じて、光源10を第2点灯状態で点灯するか否かを決定する。第4の態様によれば、例えば、比較的多くの照明器具1が設置されているような照明空間において、全ての照明器具1に対して停電時又は特定の事象の発生時に照明するといった無駄を省くことができる。すなわち、消費電力の削減を図ることができる。
【0094】
第5の態様に係る照明器具1に関して、第1の態様〜第4の態様のいずれか1つにおいて、第1点灯状態は、連続点灯であり、第2点灯状態は、点滅点灯であることが好ましい。第5の態様によれば、建物内の在館者は、特定の事象の発生の報知と停電時の非常用照明とを明確に区別することができる。また、例えば特定の事象が火災の場合、光警報装置と同等の信頼性を確保することができる。
【0095】
第6の態様に係る照明器具1は、第1の態様〜第5の態様のいずれか1つにおいて、非常用電源12を、更に備えることが好ましい。制御部(制御回路114)は、検出部(停電検出回路113)が停電を検出すると、非常用電源12から供給される電力で光源10を点灯させることが好ましい。第6の態様によれば、照明器具1は、停電時における自身の動作電力を、例えば受信機4の予備電源46等から給電を受ける場合に比べて、より確実に得ることができる。
【0096】
第7の態様に係る照明システム100は、第1の態様〜第6の態様のいずれか1つにおける照明器具1と、特定の事象の検出を示す検出信号を、照明器具1へ送信可能な通信装置(受信機4)と、備える。第7の態様によれば、停電時の照明及び特定の事象の発生の報知に関する信頼性を保ちつつ、設置コストの削減を図ることが可能な照明器具1を備えた照明システム100を提供することができる。