特許第6986700号(P6986700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986700蓄冷装置及び蓄冷体の蓄冷量を決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986700
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】蓄冷装置及び蓄冷体の蓄冷量を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 16/00 20060101AFI20211213BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20211213BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F25D16/00
   F25D23/00 301G
   F25D11/00 101D
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-133143(P2017-133143)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-15448(P2019-15448A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】竹口 伸介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基啓
(72)【発明者】
【氏名】町田 博宣
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−063781(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/061067(WO,A1)
【文献】 特開平07−318215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 16/00
F25D 23/00
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄冷室と、
蓄冷体が収納された箱体であって、前記蓄冷室に配置されている箱体と、
前記箱体を冷却する冷凍サイクル装置と、
前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度を検出する温度センサと、
前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を記憶する記憶装置と、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記温度センサによって検出された初期温度を示す情報とに基づいて、前記蓄冷体の蓄冷量を決定する演算装置と、
前記冷凍サイクル装置の動作時間を計時するタイマーと、を備え、
前記冷凍サイクル装置の動作期間中に、前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間とに基づいて、前記蓄冷体の現在の蓄冷量を決定する、
蓄冷装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記記憶装置に記憶されている、前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、請求項1に記載の蓄冷装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に下記の条件(i)及び条件(ii)の両方が満たされているときに前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定し、下記の条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされていないときに前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定する、請求項1又は2に記載の蓄冷装置。
条件(i)前記初期温度が、前記蓄冷材料が液相から固相に変化するときに前記温度センサによって検出される温度範囲の上限以下である。
条件(ii)前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報が、前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であることを示す。
【請求項4】
前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第一相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記第一相関関係とは異なる前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第二相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、
請求項3に記載の蓄冷装置。
【請求項5】
記第一相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記第二相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記冷凍サイクル装置の動作期間中に、前記演算装置は、前記第一相関関係又は前記第二相関関係に基づいて、前記蓄冷体の現在の蓄冷量を決定する、
請求項4に記載の蓄冷装置。
【請求項6】
記演算装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間とに基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定し、
前記記憶装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を記憶する、
請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄冷装置。
【請求項7】
記第二相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記第二相関関係に基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定し、
前記記憶装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を記憶する、
請求項4に記載の蓄冷装置。
【請求項8】
蓄冷室と、
蓄冷体が収納された箱体であって、前記蓄冷室に配置されている箱体と、
前記箱体を冷却する冷凍サイクル装置と、
前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度を検出する温度センサと、
前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を記憶する記憶装置と、
前記蓄冷体の蓄冷量を決定する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記記憶装置に記憶されている、前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報と、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記温度センサによって検出された初期温度を示す情報とに基づいて、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であるか、前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であるかを決定し、
前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第一相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定し、
前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記第一相関関係とは異なる前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第二相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、
蓄冷装置。
【請求項9】
前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に下記の条件(i)及び条件(ii)の両方が満たされているときに前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定し、下記の条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされていないときに前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定する、請求項8に記載の蓄冷装置。
条件(i)前記初期温度が、前記蓄冷材料が液相から固相に変化するときに前記温度センサによって検出される温度範囲の上限以下である。
条件(ii)前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報が、前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であることを示す。
【請求項10】
蓄冷室と、
蓄冷体が収納された箱体であって、前記蓄冷室に配置されている箱体と、
前記箱体を冷却する冷凍サイクル装置と、
前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度を検出する温度センサと、
前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を記憶する記憶装置と、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記温度センサによって検出された初期温度を示す情報とに基づいて、前記蓄冷体の蓄冷量を決定する演算装置と、
前記冷凍サイクル装置の動作時間を計時するタイマーと、を備え、
前記演算装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間とに基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定し、
前記記憶装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を記憶する、
蓄冷装置。
【請求項11】
蓄冷体の蓄冷量を決定する方法であって、
前記蓄冷体は、蓄冷室に配置されている箱体であって冷凍サイクル装置によって冷却される箱体に収容されており、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を取得し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時の前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度である初期温度を示す情報を取得し、
前記相状態情報及び前記初期温度を示す情報に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定し、
前記冷凍サイクル装置の動作期間中に、前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記冷凍サイクル装置の動作時間とに基づいて、前記蓄冷体の現在の蓄冷量を決定する、
方法。
【請求項12】
前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に下記の条件(i)及び条件(ii)の両方が満たされているときに前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定し、下記の条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされていないときに前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定する、請求項11又は12に記載の方法。
条件(i)前記初期温度が、前記蓄冷材料が液相から固相に変化するときの前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度範囲の上限以下である。
条件(ii)前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報が、前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であることを示す。
【請求項14】
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第一相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記第一相関関係とは異なる前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第二相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記第二相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記冷凍サイクル装置の動作期間中に、前記第一相関関係又は前記第二相関関係に基づいて、前記蓄冷体の現在の蓄冷量を決定する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記冷凍サイクル装置の前記動作時間とに基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定して記憶する、
請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第二相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記第二相関関係に基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定して記憶する、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
蓄冷体の蓄冷量を決定する方法であって、
前記蓄冷体は、蓄冷室に配置されている箱体であって冷凍サイクル装置によって冷却される箱体に収容されており、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を取得し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時の前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度である初期温度を示す情報を取得し、
前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報とに基づいて、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であるか、前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であるかを決定し、
前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第一相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定し、
前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記第一相関関係とは異なる前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第二相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、
方法。
【請求項19】
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に下記の条件(i)及び条件(ii)の両方が満たされているときに前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定し、下記の条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされていないときに前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定する、請求項18に記載の方法。
条件(i)前記初期温度が、前記蓄冷材料が液相から固相に変化するときの前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度範囲の上限以下である。
条件(ii)前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報が、前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であることを示す。
【請求項20】
蓄冷体の蓄冷量を決定する方法であって、
前記蓄冷体は、蓄冷室に配置されている箱体であって冷凍サイクル装置によって冷却される箱体に収容されており、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を取得し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時の前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度である初期温度を示す情報を取得し、
前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記冷凍サイクル装置の動作時間とに基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定して記憶する、
方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄冷装置及び蓄冷体の蓄冷量を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄冷装置を備えたコールドロールボックスが知られている。コールドロールボックスは、例えば、食品などの物品がコールドロールボックスの内部に収納された状態で、配送車の荷台に積載されて搬送される。
【0003】
特許文献1には、蓄冷溶剤と、記憶部と、温度検出部と、蓄冷量演算部と、表示部とを含む蓄冷装置を備えたコールドロールボックスが記載されている。蓄冷溶剤において、凍結開始温度と凍結終了温度との間に所定の温度勾配特性を有するように添加物濃度が調製されている。蓄冷溶剤の凍結開始温度は、例えば概ね−7℃であり、蓄冷溶剤の凍結終了温度は概ね−22℃である。記憶部は、温度勾配特性に係るデータを記憶する。温度検出部は、蓄冷溶剤の温度を検出する。蓄冷量演算部は、温度検出部から得る検出温度と、記憶部から得る温度勾配特性に係るデータとに基づいて蓄冷量を求める。表示部は、蓄冷量演算部によって求めた蓄冷量を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−318215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の蓄冷装置によれば、蓄冷量を求める場合に蓄冷溶剤の過冷却について考慮されておらず蓄冷溶剤の種類によっては蓄冷量を適切に求めることができない可能性がある。そこで、本開示は、蓄冷体の蓄冷量をより適切に決定できる蓄冷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
蓄冷室と、
蓄冷体が収納された箱体であって、前記蓄冷室に配置されている箱体と、
前記箱体を冷却する冷凍サイクル装置と、
前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度を検出する温度センサと、
前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を記憶する記憶装置と、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記温度センサによって検出された初期温度を示す情報とに基づいて、前記蓄冷体の蓄冷量を決定する演算装置と、を備えた、
蓄冷装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
上記の蓄冷装置は、蓄冷体の蓄冷量をより適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の蓄冷装置の一例を模式的に示す構成図である。
図2図2は、蓄冷室における空気の流れの一例を説明する斜視図である。
図3図3は、図1に示す箱体の一部を模式的に示す図である。
図4図4は、図3におけるIV−IV線に沿った箱体の断面図である。
図5A図5Aは、蓄冷装置の動作を示すフローチャートである。
図5B図5Bは、蓄冷装置の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、初期温度Tiと蓄冷体の蓄冷量との第一相関関係の一例を示すグラフである。
図7図7は、初期温度Tiと蓄冷体の蓄冷量との第二相関関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明者らの検討に基づく知見>
蓄冷材料の中には過冷却現象を示すものがあり、蓄冷材料の蓄冷時には蓄冷材料が液相から固相に変化すべき温度(凝固点)以下に冷却されても液相を保ったままとなることがある。この場合、蓄冷材料の温度のみから蓄冷量を特定することは困難である。なお、本明細書において、「過冷却現象」とは、液相の蓄冷材料を冷却する過程において蓄冷材料が液相から固相に変化すべき温度(凝固点)以下になっても蓄冷材料が固相に変化せず液相を保ったままさらに温度低下する現象を意味する。また、そのような蓄冷材料の状態を過冷却状態という。
【0010】
特許文献1に記載の蓄冷装置において、蓄冷量演算部は、温度検出部から得る検出温度と、記憶部から得る温度勾配特性に係るデータとに基づいて蓄冷量を求めている。このように特許文献1に記載の蓄冷装置において、蓄冷量演算部は、蓄冷溶剤が過冷却状態にあるか否かを考慮して蓄冷量を求めているわけではない。このため、場合によっては、蓄冷量演算部によって求められた蓄冷量が適切でない可能性がある。
【0011】
本発明者らは、このような事情に鑑みて、蓄冷体に含まれる蓄冷材料の過冷却を考慮しつつ蓄冷量を適切に決定できる技術について日夜検討を重ねた。その結果、本発明者らは、本開示の蓄冷装置を案出した。
【0012】
本開示の第1態様は、
蓄冷室と、
蓄冷体が収納された箱体であって、前記蓄冷室に配置されている箱体と、
前記箱体を冷却する冷凍サイクル装置と、
前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度を検出する温度センサと、
前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を記憶する記憶装置と、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記温度センサによって検出された初期温度を示す情報とに基づいて、前記蓄冷体の蓄冷量を決定する演算装置と、を備えた、
蓄冷装置を提供する。
【0013】
第1態様によれば、演算装置は、蓄冷体の蓄冷を開始する時の相状態情報と初期温度を示す情報とに基づいて、蓄冷体の蓄冷量を決定する。例えば、蓄冷体の蓄冷を開始する時に記憶装置に記憶されている相状態情報と初期温度とによって蓄冷開始時の蓄冷体に含まれる蓄冷材料の相状態を決定できる。そのうえで、蓄冷開始時の蓄冷体に含まれる蓄冷材料の相状態に基づいて、初期温度から蓄冷体の蓄冷量を決定するための適切な相関関係が選択されて蓄冷体の蓄冷量を決定できる。その結果、蓄冷体に含まれる蓄冷材料が過冷却を示す場合でも蓄冷体の蓄冷量を適切に決定できる。
【0014】
本開示の第2態様は、第1態様に加えて、前記演算装置は、前記記憶装置に記憶されている、前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、蓄冷装置を提供する。例えば、最後に冷凍サイクル装置が停止した時の相状態情報が固相の蓄冷材料を含む状態であり、かつ、初期温度が、蓄冷材料が液相から固相に変化すべき温度以下である場合、蓄冷体は固相の蓄冷材料を含む状態に保たれている。このように、第2態様によれば、最後に冷凍サイクル装置が停止した時の相状態情報に基づいて、蓄冷開始時の蓄冷体に含まれる蓄冷材料の相状態を適切に決定でき、そのうえで、蓄冷体の蓄冷量を適切に決定できる。
【0015】
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様に加えて、前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に下記の条件(i)及び条件(ii)の両方が満たされているときに前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定し、下記の条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされていないときに前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定する、蓄冷装置を提供する。
条件(i) 前記初期温度が、前記蓄冷材料が液相から固相に変化するときに前記温度センサによって検出される温度範囲の上限以下である。
条件(ii) 前記冷凍サイクル装置の動作履歴において最後に前記冷凍サイクル装置が停止した時の前記相状態情報が、前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であることを示す。
【0016】
第3態様によれば、上記の条件(i)及び条件(ii)の成否に基づいて蓄冷体に含まれる蓄冷材料の状態を適切に決定できる。このため、蓄冷体の蓄冷量を適切に決定できる。
【0017】
本開示の第4態様は、第3態様に加えて、前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が固相の前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第一相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記第一相関関係とは異なる前記初期温度と前記蓄冷体の蓄冷量との第二相関関係に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、蓄冷装置を提供する。
【0018】
第4態様によれば、上記の条件(i)及び条件(ii)の成否に基づいて決定された蓄冷体の状態に応じて、初期温度から蓄冷体の蓄冷量を決定するための適切な相関関係が選択されて、蓄冷体の蓄冷量が適切に決定される。
【0019】
本開示の第5態様は、第1態様〜第4態様のいずれか1つの態様に加えて、前記冷凍サイクル装置の動作時間を計時するタイマーをさらに備え、前記冷凍サイクル装置の動作期間中に、前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間とに基づいて、前記蓄冷体の現在の蓄冷量を決定する、蓄冷装置を提供する。冷凍サイクル装置を動作させて蓄冷体に蓄冷する場合に、蓄冷体における冷熱の増加量は冷凍サイクル装置の動作時間と線形関係等の所定の関係にある。このため、第5態様によれば、相状態情報と、初期温度を示す情報と、タイマーによって計時された冷凍サイクル装置の動作時間とに基づいて、冷凍サイクル装置の動作期間中の特定の時点における蓄冷体の蓄冷量を決定できる。
【0020】
本開示の第6態様は、第4態様に加えて、
前記冷凍サイクル装置の動作時間を計時するタイマーをさらに備え、
前記第一相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記第二相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記冷凍サイクル装置の動作期間中に、前記演算装置は、前記第一相関関係又は前記第二相関関係に基づいて、前記蓄冷体の現在の蓄冷量を決定する、
蓄冷装置を提供する。
【0021】
本開示の第6態様によれば、冷凍サイクル装置の動作期間中に、初期温度と、蓄冷体の蓄冷量と、タイマーによって計時された冷凍サイクル装置の動作時間との相関関係に基づいて蓄冷体の蓄冷量を決定できる。しかも、上記の条件(i)及び条件(ii)の成否に基づいて決定された蓄冷体の状態に応じて適切な相関関係が選択される。
【0022】
本開示の第7態様は、第1態様〜第4態様のいずれか1つの態様に加えて、前記冷凍サイクル装置の動作時間を計時するタイマーをさらに備え、前記演算装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記記憶装置に記憶されている前記相状態情報と、前記初期温度を示す情報と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間とに基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定し、前記記憶装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を記憶する、蓄冷装置を提供する。上記の通り、蓄冷体における冷熱の増加量は冷凍サイクル装置の動作時間と線形関係等の所定の関係にある。このため、第7様によれば、相状態情報と、初期温度を示す情報と、タイマーによって計時された冷凍サイクル装置の動作時間とに基づいて、最終蓄冷量を決定できる。また、最終蓄冷量に基づいて冷凍サイクル装置の停止時の相状態情報を決定でき、冷凍サイクル装置の停止時の相状態情報を記憶装置に記憶させておくことによって、この相状態情報を次回の冷凍サイクル装置の起動時に蓄冷体の蓄冷量を適切に決定するために利用できる。
【0023】
本開示の第8態様は、第4態様に加えて、
前記冷凍サイクル装置の動作時間を計時するタイマーをさらに備え、
前記第二相関関係は、前記初期温度と、前記蓄冷体の蓄冷量と、前記タイマーによって計時された前記冷凍サイクル装置の前記動作時間との相関関係であり、
前記演算装置は、前記蓄冷体の蓄冷の開始時に前記蓄冷体が液相のみの前記蓄冷材料を含む状態であると決定したときに、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記第二相関関係に基づいて、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記蓄冷体の蓄冷量である最終蓄冷量を決定するとともに、前記最終蓄冷量に基づいて前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を決定し、
前記記憶装置は、前記冷凍サイクル装置を停止する時に、前記冷凍サイクル装置の停止時の前記相状態情報を記憶する、
蓄冷装置を提供する。
【0024】
本開示の第8態様によれば、冷凍サイクル装置を停止する時に、初期温度と、蓄冷体の蓄冷量と、タイマーによって計時された冷凍サイクル装置の動作時間との相関関係に基づいて最終蓄冷量を決定できる。しかも、上記の条件(i)及び条件(ii)の成否に基づいて決定された蓄冷体の状態に応じて適切な相関関係が選択される。
【0025】
本開示の第9態様は、
蓄冷体の蓄冷量を決定する方法であって、
前記蓄冷体は、蓄冷室に配置されている箱体であって冷凍サイクル装置によって冷却される箱体に収容されており、
前記冷凍サイクル装置を起動して前記蓄冷体の蓄冷を開始する時に前記蓄冷体が固相の蓄冷材料を含む状態及び前記蓄冷体が液相のみの蓄冷材料を含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を取得し、
前記蓄冷体の蓄冷の開始時の前記箱体の温度又は前記蓄冷体の温度である初期温度を示す情報を取得し、
前記相状態情報及び前記初期温度を示す情報に基づいて前記蓄冷体の前記蓄冷量を決定する、
方法を提供する。
【0026】
第9態様によれば、例えば、蓄冷体の蓄冷を開始する時の相状態情報と初期温度とによって蓄冷開始時の蓄冷体に含まれる蓄冷材料の相状態を決定できる。そのうえで、蓄冷開始時の蓄冷体に含まれる蓄冷材料の相状態に基づいて、初期温度から蓄冷体の蓄冷量を決定するための適切な相関関係が選択されて蓄冷体の蓄冷量が決定される。その結果、蓄冷体に含まれる蓄冷材料が過冷却を示す場合でも蓄冷体の蓄冷量を適切に決定できる。
【0027】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお添付の図面においてX軸は同一の方向を示し、Y軸はX軸と直交する別の同一の方向を示し、Z軸はX軸及びY軸に直交する方向を示す。XY平面が水平である。X軸、Y軸、及びZ軸に言及されることなく説明される構成要素は、必要に応じて、適切な位置に配置可能である。
【0028】
図1に示す通り、蓄冷装置100は、蓄冷室15と、箱体11と、冷凍サイクル装置20と、温度センサ12と、記憶装置35と、演算装置30とを備えている。図3に示す通り、箱体11には蓄冷体10が収納されており、図1に示す通り、箱体11は蓄冷室15に配置されている。冷凍サイクル装置20は箱体11を冷却する。これにより、箱体11に収容された蓄冷体10に冷熱が蓄えられる。図4に示す通り、蓄冷体10は蓄冷材料10aを含んでおり、蓄冷材料の液相から固相への相変化を利用して冷熱が蓄えられる。温度センサ12は、箱体11の温度又は蓄冷体10の温度を検出する。記憶装置35は相状態情報を記憶する。相状態情報は、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態及び蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態のいずれの状態であるかを示す。演算装置30は、冷凍サイクル装置20を起動して蓄冷体10の蓄冷を開始する時に記憶装置35に記憶されている相状態情報と、蓄冷体10の蓄冷の開始時に温度センサ12によって検出された初期温度を示す情報とに基づいて、蓄冷体10の蓄冷量を決定する。
【0029】
蓄冷装置100によれば、下記の工程(I)〜(III)を含む、蓄冷体10の蓄冷量を決定する方法を実行できる。
(I)冷凍サイクル装置20を起動して蓄冷体10の蓄冷を開始する時に蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態及び蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態のいずれの状態であるかを示す相状態情報を取得する。
(II)蓄冷体10の蓄冷の開始時の箱体11の温度又は蓄冷体10の温度である初期温度を示す情報を取得する。
(III)相状態情報及び初期温度を示す情報に基づいて前記蓄冷体(10)の前記蓄冷量を決定する。
【0030】
初期温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限以下であったとしても、蓄冷材料10aに固相が含まれるとは限らない。なぜなら、蓄冷材料10aが過冷却状態にあり、蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態にある可能性があるからである。このため、温度センサ12によって検出された温度が同一の温度である2つのケースにおいて、蓄冷体10における蓄冷材料10aの相状態が異なると、蓄冷体10の蓄冷量は当然異なる。このため、蓄冷体10の蓄冷の開始時に温度センサ12によって検出された初期温度を示す情報のみによって蓄冷体10の蓄冷量を適切に決定することはできない。しかし、演算装置30は、初期温度に加え、記憶装置35に記憶されている相状態情報に基づいて蓄冷体10の蓄冷量を決定するので、適切に蓄冷体10の蓄冷量を決定できる。
【0031】
図1に示す通り、演算装置30は、例えば、温度センサ12によって検出された温度を示す情報を取得できるように、温度センサ12と有線又は無線によって接続されている。また、演算装置30及び記憶装置35は、例えば、演算装置30が記憶装置35に記憶されている情報を読み出すことができるように、かつ、演算装置30による演算結果を記憶装置35に書き込むことができるようにバスなどの信号線によって接続されている。
【0032】
演算装置30は、例えば、記憶装置35に記憶されている、冷凍サイクル装置20の動作履歴において最後に冷凍サイクル装置20が停止した時の相状態情報に基づいて蓄冷体10の蓄冷量を決定する。例えば、最後に冷凍サイクル装置20が停止した時の相状態情報が固相の蓄冷材料10aを含む状態であり、かつ、初期温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化すべき温度以下である場合、蓄冷体は固相の蓄冷材料を含む状態に保たれている。このように、演算装置30は、最後に冷凍サイクル装置20が停止した時の相状態情報に基づいて、蓄冷開始時の蓄冷体10に含まれる蓄冷材料10aの相状態を適切に決定でき、そのうえで、蓄冷体10の蓄冷量を適切に決定できる。
【0033】
演算装置30は、例えば、蓄冷体10の蓄冷の開始時に下記の条件(i)及び条件(ii)の両方が満たされているときに蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であると決定する。一方、演算装置30は、例えば、下記の条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされていないときに蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態であると決定する。
条件(i):初期温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限以下である。
条件(ii):冷凍サイクル装置20の動作履歴において最後に冷凍サイクル装置20が停止した時の相状態情報が、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であることを示す。
【0034】
上記の通り、初期温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限以下である場合でも、蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態にある可能性がある。しかし、条件(i)に加えて、条件(ii)が成立する場合には、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であるとみなすことができる。なぜなら、固相の蓄冷材料10aが一度形成された状態で、温度センサ12によって検出される温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに範囲の上限以下に保たれていれば、固相の蓄冷材料10aが残っているからである。
【0035】
蓄冷装置100において蓄冷体10の蓄冷を行う場合、外部電源からの電力供給により冷凍サイクル装置20が動作する。電源インフラの事情などにより、冷凍サイクル装置20の動作を一時中断し、蓄冷装置100を移動させて別の電源から冷凍サイクル装置20に電力供給して蓄冷体10の蓄冷を再開することがあり得る。この場合、前回の冷凍サイクル装置20の動作時間が短く、蓄冷材料10aが過冷却状態のままで、冷凍サイクル装置20への電力供給が再開されることもあり得る。蓄冷装置100によれば、このような場合にも、蓄冷体10の蓄冷を再開する時に蓄冷体10の蓄冷量を適切に決定できる。
【0036】
例えば、蓄冷装置100において、演算装置30は、蓄冷体10の蓄冷の開始時に蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であると決定したときに、初期温度と蓄冷体10の蓄冷量との第一相関関係に基づいて蓄冷体10の蓄冷量を決定する。一方、演算装置30は、蓄冷体10の蓄冷の開始時に蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態であると決定したときに、第一相関関係とは異なる初期温度と蓄冷体10の蓄冷量との第二相関関係に基づいて蓄冷体10の蓄冷量を決定する。この場合、上記の条件(i)及び条件(ii)の成否に基づいて決定された蓄冷体10の状態に応じて、初期温度から蓄冷体10の蓄冷量を決定するための適切な相関関係が選択されて、蓄冷体10の蓄冷量が適切に決定される。
【0037】
初期温度と蓄冷体10の蓄冷量との第一相関関係の一例及び初期温度と蓄冷体10の蓄冷量との第二相関関係の一例をそれぞれ図6及び図7に示す。図6における直線のグラフは、蓄冷体10の蓄冷量が100%に達するまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間を、初期温度の関数として示している。図7において、実線のグラフは、蓄冷体10の蓄冷量が100%に達するまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間を初期温度の関数として示している。図7において、一点鎖線のグラフは、蓄冷体10の蓄冷材料10aの過冷却が解除されるまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間を初期温度の関数として示している。蓄冷体10の蓄冷材料10aの過冷却が解除されるときの蓄冷体の蓄冷量は、例えば20%である。図7において、二点鎖線のグラフは、蓄冷体10の蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限に達するまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間を初期温度の関数として示している。このように、第一相関関係及び第二相関関係は、例えば、初期温度と、蓄冷材料10aを所定の状態に蓄冷するまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間との相関関係である。なお、第一相関関係及び第二相関関係は、初期温度と蓄冷体10の蓄冷量との関係を直接的又は間接的に示すどのような相関関係であってもよい。
【0038】
図1に示す通り、蓄冷装置100は、例えば、タイマー37をさらに備える。タイマー37は、冷凍サイクル装置20の動作時間を計時する。例えば、冷凍サイクル装置20の動作期間中に、演算装置30は、蓄冷体10の現在の蓄冷量を決定する。この決定は、蓄冷体10の蓄冷を開始する時に記憶装置35に記憶されている相状態情報と、初期温度を示す情報と、タイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間とに基づいてなされる。
【0039】
冷凍サイクル装置20を動作させて蓄冷体10に蓄冷する場合に、蓄冷体10における冷熱の増加量は冷凍サイクル装置20の動作時間と線形関係等の所定の関係にある。このため、相状態情報と、初期温度を示す情報と、タイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間とに基づいて、冷凍サイクル装置20の動作期間中の特定の時点における蓄冷体10の蓄冷量を決定できる。
【0040】
演算装置30は、冷凍サイクル装置20の動作期間中に、例えば、上記の第一相関関係又は第二相関関係に基づいて、蓄冷体10の現在の蓄冷量を決定する。図6に示す通り、第一相関関係は、初期温度と、蓄冷体10の蓄冷量と、タイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間との相関関係である。図7に示す通り、第二相関関係は、初期温度と、蓄冷体10の蓄冷量と、タイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間との相関関係である。例えば、演算装置30は、図6又は図7の座標空間において、初期温度及びタイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間によって特定される座標を決定し、蓄冷体10の現在の蓄冷量を決定する。
【0041】
タイマー37は、タイマー37による計時結果を示す情報を演算装置30に送信できるように演算装置30に接続されている。
【0042】
演算装置30は、例えば、冷凍サイクル装置20を停止する時に、最終蓄冷量を決定する。この決定は、蓄冷体10の蓄冷を開始する時に記憶装置35に記憶されている相状態情報と、初期温度を示す情報と、タイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間とに基づいてなされる。最終蓄冷量は、冷凍サイクル装置20の停止時の蓄冷体10の蓄冷量である。加えて、演算装置30は、最終蓄冷量に基づいて冷凍サイクル装置20の停止時の相状態情報を決定する。その後、記憶装置35は、冷凍サイクル装置20を停止する時に、冷凍サイクル装置20の停止時の相状態情報を記憶する。
【0043】
蓄冷体10における冷熱の増加量は冷凍サイクル装置20の動作時間と線形関係等の所定の関係にある。このため、相状態情報と、初期温度を示す情報と、タイマーによって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間とに基づいて、最終蓄冷量を決定できる。また、最終蓄冷量に基づいて冷凍サイクル装置20の停止時の相状態情報を決定でき、冷凍サイクル装置20の停止時の相状態情報を記憶装置35に記憶させておくことによって、この相状態情報を次回の冷凍サイクル装置20の起動時に蓄冷体10の蓄冷量を適切に決定するために利用できる。
【0044】
演算装置30は、蓄冷体10の蓄冷の開始時に蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態であると決定したときに、冷凍サイクル装置20を停止する時に、例えば、上記の第二相関関係に基づいて、蓄冷体10の最終蓄冷量を決定する。図7に示す通り、第二相関関係は、初期温度と、蓄冷体10の蓄冷量と、タイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間との相関関係である。例えば、演算装置30は、図7の座標空間において、初期温度及びタイマー37によって計時された冷凍サイクル装置20の動作時間によって特定される座標を決定し、蓄冷体10の最終蓄冷量を決定する。加えて、演算装置30は、最終蓄冷量に基づいて冷凍サイクル装置20の停止時の相状態情報を決定する。その後、記憶装置35は、冷凍サイクル装置20を停止する時に、冷凍サイクル装置20の停止時の相状態情報を記憶する。
【0045】
図1に示す通り、蓄冷装置100は、例えば、貯蔵室50をさらに備え、蓄冷室15と、貯蔵室50との間は、床板60によって仕切られている。冷凍サイクル装置20は、例えば、蒸発器21、圧縮機22、凝縮器23、及び膨張弁24を備え、これらが配管によってこの順番で接続されている。冷凍サイクル装置20の蒸発器21は、箱体11に接するように配置されている。冷凍サイクル装置20に外部電源(図示省略)から電力が供給されると、圧縮機22が作動し、冷凍サイクル装置20を冷媒が循環することによって蒸発器21の周囲に低温の環境が作り出される。これにより、箱体11が冷却されて蓄冷体10に冷熱が蓄えられる。本実施形態では、このような動作を蓄冷と呼ぶ。
【0046】
図1に示す通り、蓄冷装置100は、例えば、送風機70及び冷気ダクト71をさらに備えている。送風機70は、例えば、貯蔵室50を定める側壁の上端近傍に配置されている。また冷気ダクト71は、蓄冷室15から送風機70まで延びている。貯蔵室50は、保冷対象の物品を収容するための空間である。蓄冷装置100は、例えば、貯蔵室50に収容された物品が保冷された状態で目的地に運ばれる。この場合、送風機70によって蓄冷装置100の内部の空気が循環する。これにより、冷凍サイクル装置20によって蓄冷された蓄冷体10と熱交換して冷却されて空気が冷気ダクト71を通過して送風機70によって貯蔵室50に吹き出される。このため、貯蔵室50の温度が所望の温度に保たれる。図1における矢印は保冷時の空気の流れを概念的に示す。
【0047】
図2に示す通り、例えば、蓄冷室15において複数の箱体11が特定の方向(Y軸方向)に並んでいる。例えば、複数の箱体11はY軸方向に所定の間隔で配置されている。複数の箱体11のそれぞれには、上記の通り、蓄冷体10が収納されている。図2における矢印は保冷時に送風機70の作動によって生じる空気の流れを概念的に示す。図2に示す通り、送風機70は、複数の箱体11が配列された面内(XY平面内)において特定の方向(Y軸方向)と交わる方向(X軸正方向)に沿って箱体11同士の間に形成された空間を通過する空気の流れを生じさせる。これにより、送風機70は、蓄冷体10によって冷却された空気を循環させる。
【0048】
箱体11は、特に制限されないが、空気の流れ方向(X軸方向)に細長く延びた直方体状の外形を有する。箱体11は、組み立てやすさを考慮して、Y軸方向に組み合わせ可能な複数の部品によって形成されていてもよい。箱体11を形成する材料は、特に制限されないが、例えば、アルミニウムなどの金属又は合金である。この場合、蓄冷体10が有する冷熱が箱体11の近くを流れる空気に伝わりやすい。
【0049】
蓄冷室15に配列された複数の箱体11の数は、特に制限されないが、例えば、蓄冷装置100に必要な冷熱量、蓄冷体10の寸法、及び蓄冷室15の高さ等のパラメータに基づいて適切に定められる。また、蓄冷室15に配列された複数の箱体11の数は、望ましくは、蓄冷室15を流れる空気との箱体11との熱交換面積が十分に確保されるように定められる。さらに、蓄冷室15に配列された複数の箱体11の数は、望ましくは、箱体11同士の間に形成された空気の流路において空気の流れに生じる圧力損失が適切な大きさに保たれるように定められる。
【0050】
温度センサ12は、箱体11の温度又は蓄冷体10の温度を検出する限り特に制限されないが、例えば、箱体11の表面温度、蓄冷体10の表面温度、又は蓄冷体10に含まれる蓄冷材料の温度を検出する。蓄冷装置100は、例えば1つの温度センサ12を備える。蓄冷装置100は、複数の温度センサ12を備えてもよい。この場合、複数の温度センサ12によって複数の位置で箱体11の温度又は蓄冷体10の温度を検出できる。
【0051】
1つの箱体11に複数の蓄冷体10が収納されている場合、例えば、複数の蓄冷体10のそれぞれについて温度センサ12を取り付けて、複数の蓄冷体10の表面温度を検出してもよい。この場合、望ましくは、演算装置30は、温度センサ12によって検出された複数の蓄冷体10の表面温度の中で最も高い温度を上記の初期温度と決定したうえで、蓄冷体10の蓄冷量を決定する。例えば、箱体11において空気の流れ方向(X軸正方向)に2つの蓄冷体が並んでいる場合について考える。この場合、上流側の蓄冷体10の蓄冷材料10aは完全に融解しており、この蓄冷体10の表面温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限より大きいと仮定する。加えて、下流側に位置する蓄冷体10の蓄冷材料10aは完全には融解しておらず、この蓄冷体10の表面温度が、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限未満であると仮定する。この場合、演算装置30は、望ましくは、温度センサ12によって検出された上流側の蓄冷体10の表面温度を上記の初期温度と決定したうえで、蓄冷体10の蓄冷量を決定する。例えば、演算装置30は、温度センサ12によって検出された上流側の蓄冷体10の表面温度を上記の初期温度と決定したうえで、第二相関関係に基づいて蓄冷体10の蓄冷量を決定する。これにより、演算装置は、下流側に位置する蓄冷体10の蓄冷材料10aの表面温度を初期温度と決定して、第一相関関係に基づいて蓄冷体10の蓄冷量を決定する場合に比べて、蓄冷量を低く決定する。このため、蓄冷体10の蓄冷量が蓄冷量の上限に達する前に蓄冷完了と判断されることを防止できる。
【0052】
温度センサ12は、特に制限されないが、例えば、熱電対又はサーミスターを有する接触式温度センサ又はサーモパイルを有する非接触式温度センサである。
【0053】
温度センサ12は、望ましくは、少なくとも1つの箱体11の表面温度又は少なくとも1つの箱体11に収納されている蓄冷体10の表面温度を検出する。この場合、温度センサ12を蓄冷体10の内部に設置する必要がないので、蓄冷体10におけるシール不良による蓄冷材料10aの漏えいが起こりにくい。また、蓄冷体10の交換が必要なときでも、温度センサ12の設置作業を簡単にでき、又は、温度センサ12の設置作業を不要にできる。
【0054】
温度センサ12は、例えば、蓄冷体10の表面又は箱体11の表面に設置されている。換言すると、温度センサ12は、蓄冷体10の表面又は箱体11の表面に接している。この場合、蓄冷体10の表面又は箱体11の表面と温度センサ12との間に隙間がほとんど形成されないので、蓄冷体10の表面又は箱体11の表面と温度センサ12との間に温度センサ12による温度検出を阻害する異物が存在しにくい。このため、蓄冷体10の表面温度又は箱体11の表面温度をより確実に検出できる。例えば、図4に示すように、温度センサ12は蓄冷体10の表面に設置されている。
【0055】
図4に示す通り、蓄冷体10において、例えば、蓄冷材料10aがフィルム製の容器10bに密閉されている。蓄冷体10は、例えば、液状の蓄冷材料10aが冷却されて固化することにより潜熱の形態で冷熱を蓄えることができる。蓄冷材料10aは、特に制限されないが、例えば、所定の濃度で塩化ナトリウムが添加された塩化ナトリウム及び水を含む混合物である。蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときの蓄冷材料10aの温度範囲の上限と下限との差は、特に制限されないが、例えば2℃以下である。このように、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときの蓄冷材料10aの温度範囲の上限と下限との差が小さいと、例えば、物品を保冷するために許容される保冷温度の許容範囲が狭い場合に蓄冷体10を有利に利用できる。容器10bを形成するフィルムは、例えば、アルミニウム層と、アルミニウム層の厚み方向の両側に配置された2つ以上の樹脂層とを備えた、積層フィルムである。
【0056】
図1に示す通り、蓄冷装置100は、例えば、表示部40をさらに備えている。表示部40は、演算装置30によって決定された蓄冷体10の蓄冷量を示す情報又は演算装置30によって決定された蓄冷体10の蓄冷量に基づいて生成された所定の情報を表示する。演算装置30は、例えばデジタルコンピュータの一部をなしており、表示部40は、例えば、演算装置30を含むデジタルコンピュータと通信ケーブルによって接続されている。表示部40は、特に制限されないが、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。表示部40は、例えば、蓄冷装置100の筐体の外周面に配置されている。演算装置30によって決定された蓄冷体10の蓄冷量を示す情報又は演算装置30によって決定された蓄冷体10の蓄冷量に基づいて生成された所定の情報は、演算装置30を含むデジタルコンピュータから無線によって蓄冷装置100の使用者の情報端末、又は、1台以上の蓄冷装置100を集中管理する基地局に送信されてもよい。また、演算装置30を含むコンピュータは、蓄冷装置100の貯蔵室50及び蓄冷室15を有する筐体の近くに配置されていてもよいが、その筐体から離れて配置されていてもよい。演算装置30を含むコンピュータが蓄冷装置100の筐体から離れて配置されている場合、蓄冷体10の蓄冷量の決定のために必要な情報が蓄冷装置100の温度センサ12から無線によって演算装置30を含むコンピュータに送られる。
【0057】
蓄冷体10に蓄冷する場合の蓄冷装置100の動作の一例について説明する。例えば、冷凍サイクル装置20の起動が指示されると、図5Aに示す通り、ステップS100において、演算装置30は、最後に冷凍サイクル装置20が停止した時の相状態情報Pfを記憶装置35から取得する。次に、ステップS101に進み、演算装置30は、温度センサ12によって検出された初期温度Tiを示す情報を取得する。次に、ステップS102に進み、演算装置30は、初期温度Tiが、蓄冷材料10aが液相から固相に変化するときに温度センサ12によって検出される温度範囲の上限Tu以下であるか否か判断する。ステップS102における判断結果が肯定的である場合、ステップS103に進み、相状態情報Pfは、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であることを示すか否か判断する。ステップS103における判断結果が肯定的である場合、ステップS104に進み、演算装置30は、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であると決定する。その後、ステップS105に進み、圧縮機22の作動が開始される。加えて、圧縮機22の作動が開始されるのと同期してタイマー37による計時が開始される。
【0058】
その後、ステップS106において所定時間が経過したと判断されると、ステップS107において、演算装置30は、初期温度Ti及びタイマー37による計時結果から図6に示す第一相関関係に基づいて蓄冷体10の現在の蓄冷量Qpを決定する。例えば、演算装置30は、図6に示す座標空間において初期温度Ti及びタイマー37による計時結果によって定まる座標を特定して、現在の蓄冷量Qpを決定する。ステップS107の処理は、蓄冷量Qp又は蓄冷量Qpに基づいて生成される情報(例えば、蓄冷量が100%に到達するまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間)を表示部40に表示する指示が入力された場合になされてもよい。
【0059】
その後、ステップS108に進み、圧縮機22が停止しているか否か判断される。ステップS108における判断結果が否定的である場合、ステップS106に戻る。ステップS108における判断結果が肯定的である場合、ステップS109に進み、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であることを示す相状態情報を記憶装置35に記憶させる。次に、ステップS110に進み、タイマー37をリセットして、一連の処理が終了する。
【0060】
図5A及び図5Bに示す通り、ステップS102における判断結果又はステップS103における判断結果が否定的である場合、ステップS200に進み、演算装置30は、蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態であると決定する。次に、ステップS201に進み、圧縮機22の作動が開始される。加えて、圧縮機22の作動が開始されるのと同期してタイマー37による計時が開始される。
【0061】
その後、ステップS202において所定時間が経過したと判断されると、ステップS203において、演算装置30は、初期温度Ti及びタイマー37による計時結果から図7に示す第二相関関係に基づいて蓄冷体10の現在の蓄冷量Qpを決定する。例えば、演算装置30は、図7に示す座標空間において初期温度Ti及びタイマー37による計時結果によって定まる座標を特定して、現在の蓄冷量Qpを決定する。ステップS203の処理は、蓄冷量Qp又は蓄冷量Qpに基づいて生成される情報(例えば、蓄冷量が100%に到達するまでに必要な冷凍サイクル装置20の動作時間)を表示部40に表示する指示が入力された場合になされてもよい。
【0062】
その後、ステップS204に進み、圧縮機22が停止しているか否か判断される。ステップS204における判断結果が否定的である場合、ステップS202に戻る。ステップS204における判断結果が肯定的である場合、ステップS205に進み、初期温度Ti及びタイマー37による計時結果から図7に示す第二相関関係に基づいて蓄冷体10の最終蓄冷量Qfを決定する。例えば、演算装置30は、図7に示す座標空間において初期温度Ti及びタイマー37による計時結果によって定まる座標を特定して、最終蓄冷量Qfを決定する。
【0063】
その後、ステップS206に進み、演算装置30は、最終蓄冷量Qfが所定値以上であるか否か判断する。この場合、所定値は、蓄冷材料10aの過冷却の解除される時の蓄冷量に相当する。換言すると、ステップS206において、蓄冷体10が、図7における一点鎖線のグラフよりも上方の領域に相当する状態にあるか否か判断される。
【0064】
その後、ステップS206における判断結果が肯定的である場合、ステップS207に進み、蓄冷体10が固相の蓄冷材料10aを含む状態であることを示す相状態情報を記憶装置35に記憶させる。次に、ステップS208に進んでタイマー37をリセットし、一連の処理を終了する。ステップS206における判断結果が否定的である場合、ステップS209に進み、蓄冷体10が液相のみの蓄冷材料10aを含む状態であることを示す相状態情報を記憶装置35に記憶させる。次に、ステップS210に進んでタイマー37をリセットし、一連の処理を終了する。
【0065】
このように、蓄冷装置100が動作することにより、蓄冷体10の蓄冷量を適切に決定できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示の蓄冷装置は、冷蔵又は冷凍において冷熱を一時的に蓄える用途に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
10 蓄冷体
10a 蓄冷材料
11 箱体
12 温度センサ
15 蓄冷室
20 冷凍サイクル装置
30 演算装置
35 記憶装置
37 タイマー
100 蓄冷装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7