(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続体状の基材上に有機溶剤を含む塗工液を塗布した後、前記基材上に塗布された前記塗工液を乾燥させることによって前記基材上に前記塗工液を乾燥させた塗工層を備えた積層シートを製造する積層シート製造装置であって、
連続体状の基材をその長手方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記基材の搬送経路上に配設され、前記搬送手段によって搬送される前記基材上に有機溶剤を含む塗工液を塗布する塗工手段と、
前記基材の搬送経路上における前記塗工手段の下流側に前記基材が通過可能に配設され、少なくとも前記基材上に塗布された前記塗工液の最表面を熱風により予備乾燥させる熱風乾燥炉と、
前記基材の搬送経路上における前記熱風乾燥炉の下流側に前記基材が通過可能に配設され、前記基材上に塗布された前記塗工液中の有機溶剤を過熱蒸気により蒸発させる過熱蒸気炉と、
前記基材の搬送経路上における前記過熱蒸気炉の下流側に前記基材が通過可能に配設され、少なくとも前記基材上に塗布された前記塗工液の最表面を熱風により仕上げ乾燥させる仕上げ熱風乾燥炉とを有し、
前記熱風乾燥炉は、前記過熱蒸気炉に搬送された前記基材の表面に過熱蒸気が結露することを防止可能に形成されていることを特徴とする積層シート製造装置。
前記熱風乾燥炉は、前記基材を高分子材料とした場合、前記過熱蒸気炉に搬送される前記基材上に塗工された塗工液中の含有溶剤分を5重量%以下とすることができるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層シート製造装置。
前記熱風乾燥炉は、前記過熱蒸気炉に搬送される前記基材を100℃以上に加熱可能に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層シート製造装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材上に塗工技術を用いて形成された塗工層を備えた積層シートが、種々の用途に利用されている。例えば、金属箔を基材とした積層シート、具体的には、銅箔を基材とした積層シートはフレキシブルプリント基板として、ステンレス箔(SUS箔)を基材としたものはHDD(ハードディスク)のバネ材として、また、洋白を基材としたものは絶縁シールド等として、さらに、高分子材料を基材とした積層シート、具体的には、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PVB(ポリビニルアセタール:ブチラール)、PA(ポリアミド:ナイロン)等の樹脂材料を基材としたものは耐熱性フィルムや電子用カバーレイフィルム等として利用されている。
【0003】
この種の積層シートの製造に際しては、連続体状(長尺状)の基材を、ローラ等の搬送装置によって塗工位置まで搬送し、この塗工位置に搬送された基材上に、ダイコートやグラビアコート等の塗工方法を用いて有機溶剤を含む塗工液(有機溶液)を塗布するようになっていた。そして、塗工液が塗布された基材を搬送装置によって炉内に搬送した上で、この炉内において基材上の塗工液をヒータを用いて加熱することによって、塗工液を乾燥硬化するようになっていた。このようにして、基材上に塗工液を硬化してなる塗工層が形成された複合材料シートが得られるようになっていた。
【0004】
ところで、このような積層シートを効率的に製造するためには、炉内における塗工液の乾燥を短時間のうちに十分に行うようにすることが有効である。しかしながら、単純に炉内の雰囲気温度を高めただけでは、基材の種類によっては基材に大きな熱変形が生じてしまうことによって、複合材料シートを適切に製造することができなくなってしまう。
【0005】
そこで、本出願人は、基材上に塗布された塗工液の乾燥を過熱蒸気によって行う積層シート製造装置を提案した(特許文献1)。この複合材料シート製造装置によれば、過熱蒸気によって基材上の塗工液に対して瞬時に大きな熱エネルギを付与することができるので、基材の熱変形を抑制しつつ塗工液を短時間のうちに乾燥することができるようになっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、本出願人は、前記の過熱蒸気を用いた積層シート製造装置において、更に過熱蒸気により塗工液を乾燥させる際に、基材への結露発生を防止して高品質な積層シートを製造する積層シート製造装置を提案した(特許文献2)。
また、更に高品質な積層シートを製造することが望まれていた。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、過熱蒸気により塗工液を乾燥させる際に、基材に結露が発生することを防止するとともにより高品質な積層シートを製造することのできる積層シート製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の積層シート製造装置の特徴は、連続体状の基材上に有機溶剤を含む塗工液を塗布した後、前記基材上に塗布された前記塗工液を乾燥させることによって前記基材上に前記塗工液を乾燥させた塗工層を備えた積層シートを製造する積層シート製造装置であって、連続体状の基材をその長手方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段による前記基材の搬送経路上に配設され、前記搬送手段によって搬送される前記基材上に有機溶剤を含む塗工液を塗布する塗工手段と、前記基材の搬送経路上における前記塗工
手段の下流側に前記基材が通過可能に配設され、少なくとも前記基材上に塗布された前記塗工液の最表面を熱風により予備乾燥させる熱風乾燥炉と、前記基材の搬送経路上における前記熱風乾燥炉の下流側に前記基材が通過可能に配設され、前記基材上に塗布された前記塗工液中の有機溶剤を過熱蒸気により蒸発させる過熱蒸気炉と、前記基材の搬送経路上における前記過熱蒸気炉の下流側に前記基材が通過可能に配設され、少なくとも前記基材上に塗布された前記塗工液の最表面を熱風により仕上げ乾燥させる仕上げ熱風乾燥炉とを有し、前記熱風乾燥炉は、前記過熱蒸気炉に搬送された前記基材の表面に過熱蒸気が結露することを防止可能に形成されている点にある。
【0010】
そして、このような構成を採用したことにより、搬送手段は、基材を長手方向に搬送することができる。また、塗工手段は、基材上に有機溶剤を含む塗工液を塗布することができる。さらに、熱風乾燥炉は、少なくとも基材上に塗布された塗工液の最表面を熱風により予備乾燥させることができる。さらにまた、過熱蒸気炉は、基材上に塗布された塗工液中の有機溶剤を過熱蒸気により蒸発させることができる。また、熱風乾燥炉は、過熱蒸気炉に搬送された基材の表面に過熱蒸気が結露することを防止できるように形成されているから、基材に結露が発生することを防止しながら有機溶剤を蒸発させることがでる。また、仕上げ熱風乾燥炉は、過熱蒸気炉を経た基材を更に熱風によって仕上げ乾燥することができるので、より高品質の積層シートを製造することができる。
【0011】
また、本発明において、前記熱風乾燥炉は、前記基材を高分子材料とした場合、前記過熱蒸気炉に搬送される前記基材上に塗工された塗工液中の含有溶剤分を5重量%以下とすることができるように形成されている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、基材を高分子材料とした場合における加熱蒸気による基材の加水分解を防止することができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記熱風乾燥炉は、前記過熱蒸気炉に搬送される前記基材を100℃以上に加熱可能に形成されている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、過熱蒸気炉に搬送された基材の表面に過熱蒸気が結露するのを確実に防止することができるし、基材を高分子材料とした場合における加熱蒸気による基材の加水分解を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る積層シート製造装置によれば、過熱蒸気により塗工液を乾燥させる際に、基材に結露が発生するのを防止する防止するとともに、仕上げ熱風乾燥炉により基材を確実に乾燥させて、より高品質の積層シートを製造することができるなどの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の積層シート製造装置1(以下、単に「製造装置」と記す。)は、送出し部2と、この送出し部2に連通された熱風乾燥炉3と、この熱風乾燥炉3に第1連通部4を介して連通された過熱蒸気炉5と、この過熱蒸気炉5に第2連通部6を介して連通された仕上げ熱風乾燥炉7と、この仕上げ熱風乾燥炉7に第3連通部8を介して連通された巻取り部9とを有している。なお、熱風乾燥炉3と過熱蒸気炉5と仕上げ熱風乾燥炉7とは、それぞれ脚部3c、5c、7cを介して製造装置1の設置面よりも鉛直上方に離間した位置に設置されている。
【0017】
前記送出し部2内には、連続体状の基材K(ウエブ)がロール状に巻回収容された送出しロール10が着脱自在かつ回転自在に配設されており、この送出しロール10は、基材Kをその搬送方向における下流側へと送り出すようになっている。この送出しロール10は、巻取り部9内に配設された後述する巻取りロール12とともに基材Kの搬送手段14を構成するようになっている。
【0018】
前記基材Kとしては、例えばPET、PEN、PI(ポリイミド)、PP(ポリプロピレン)、PES、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PVB(ポリビニルアセタール:ブチラール)、PA等の樹脂材料からなるものや、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなるものを用いることができる。
【0019】
前記送出し部2内における送出しロール10に対して基材Kの搬送方向の下流側の位置には、送出し部2内における搬送手段14による基材Kの搬送経路を形成する複数個のガイドローラ11(一部にのみ符号を付してある。)が回転自在に配設されている。そして、送り出しロール10から送り出された基材Kは、各ガイドローラ11に順次案内されて搬送を保持されるようにして下流側に搬送されるようになっている。なお、各ガイドローラ11の中には、基材Kにテンションを付与するように付勢されたガイドローラ11a(一部にのみ符号を付してある。)も含まれている。また、送出し部2内における基材Kの搬送経路は、水平方向における製造装置1の外側方向に向かった後に水平方向における製造装置1の内側方向かつ鉛直上方向に折り返すような搬送経路に形成されており、これによって送出し部2の省スペース化が可能となっている。
【0020】
前記送出し部2内における基材Kの搬送経路上には、塗工手段16が配設されており、この塗工手段16は、送り出しロール10によって送り出される基材K上に有機溶剤を含む塗工液を塗布するようになっている。
【0021】
前記塗工液としては、例えば、セラミックスラリーを用いることができる。このセラミックスラリーは、セラミック粉末と、トルエン、IPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤等からなる溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂またはポリビニルブチラール等からなるバインダ(溶質)とによって構成される。また、この他にも、塗工液としては、例えば、イミド系樹脂の一つであるPIの前駆体としてのアミック酸溶液を用いることができる。このアミック酸溶液は、酸無水物とジアミンの重合体と、溶媒としての高沸点水溶性溶剤の一種であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とによって構成される。さらに、この他にも、塗工液としては、リチウムイオン電池の電極の活物質のペースト(例えば、コバルト酸リチウムにバインダを混入したもの等)や、スーパーキャパシタの形成に用いられる塗工液を採用することができる。塗工液の種類は、製品の仕様等に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
前記塗工手段16としては、ダイコータ、リバースコータ、ナイフコータもしくはグラビアロールの直径が50mm以下のマイクログラビアコータ等を用いることができる。ただし、基材Kとしてポリイミド樹脂製のものを用いる場合には、ポリイミド樹脂の吸水性が強く、空気を巻き込むと基材Kが粘度の変化を起こしたり白濁化を起したりすることによって品質が劣化する可能性が高いので、空気が触れないダイコータを用いることが好ましい。
【0023】
そして、このような送出し部2内を搬送された基材Kは、送出し部2を出て熱風乾燥炉3の内部に搬入されるようになっている。この熱風乾燥炉3は、製造装置1全体の基材Kの搬送経路上における塗工手段16の下流側に配設されている。この熱風乾燥炉3は、塗工手段16によって塗工液が塗布された基材Kを、その長手方向において搬入および搬出自在とされている。すなわち、基材Kは、搬送経路の上流側から下流側(
図1の左側から右側)に向かって搬送され、熱風乾燥炉3内を通過可能に形成されている。
【0024】
前記熱風乾燥炉3内には、複数個、例えば4個のガイドローラ21が回転自在に配設されており、これらのガイドローラ21は、熱風乾燥炉3における搬入口3aから排出口3bに向かって間隔を設けるようにして配置されている。そして、これら複数個のガイドローラ21によって、熱風乾燥炉3内における基材Kの搬送経路が形成されている。すなわち、熱風乾燥炉3内に搬入された基材Kは、その塗工液が塗布された塗布面を鉛直上方に向けるとともに、塗布面に対向する底面を熱風乾燥炉3内の各ガイドローラ21に順次保持されるようにして下流側に向かって搬送されるようになっている。
【0025】
また、熱風乾燥炉3内における各ガイドローラ21に対する上部対向位置には、第1熱風供給装置22および第2熱風供給装置23からなる2台の熱風供給装置22、23が、互いに基材Kの搬送方向に間隔を設けるようにして配設されている。
【0026】
前記第1熱風供給装置22は、熱風乾燥炉3内の上流側に熱風を供給することによって、少なくとも熱風乾燥炉3内における上流側の搬送経路上を搬送される基材K上の塗工液の最表面を加熱して予備乾燥するようになっている。この第1熱風供給装置22は、周知のように、熱風乾燥炉3内における基材Kの搬送経路に平行とされた第1熱風用ノズル部24を有している。この第1熱風用ノズル部24は、熱風乾燥炉3内における上流側の搬送経路上の基材Kに対してその塗工面側(
図1における上方)において近接する位置に配置されている。第1熱風用ノズル部24における上部には、図示しない第1熱風供給管が連結されており、この第1熱風供給管は、熱風乾燥炉3における上壁部に形成された図示しない第1開孔を介して熱風乾燥炉3の外部に突出されている。また、第1熱風供給管における上端部には、第1熱風流路を介して第1送風加熱部(共に図示せず)が連結されており、この第1送風加熱部には、第1送風ファン(図示せず)が連結されている。このような第1熱風供給装置22においては、第1送風ファンによって発生した気流が、第1送風加熱部において加熱された上で、熱風として第1熱風供給管内に流入するようになっている。そして、第1熱風供給管内に流入した熱風は、第1熱風供給管から第1熱風用ノズル部24へと供給された後に、この第1熱風用ノズル部24によって
図1における下方へと噴射されるようになっている。これにより、第1熱風用ノズル部24に臨む基材K上の塗工液に熱風が上方から吹き付けられるようになっている。なお、第1送風加熱部は、第1送風ファンから送られた風を、ニクロム線等の熱抵抗体を用いた電気加熱によって加熱するものであってもよい。
【0027】
一方、第2熱風供給装置23は、熱風乾燥炉3内の下流側に熱風を供給することによって、少なくとも熱風乾燥炉3内における下流側の搬送経路上を搬送される基材K上の塗工液の最表面を加熱して予備乾燥するようになっている。この第2熱風供給装置23は、第1熱風供給装置22における熱風による乾燥が行われた塗工液に対して、更なる熱風による乾燥を行うようになっている。また、第2熱風供給装置23は、第1熱風供給装置22と同様に、熱風乾燥炉3内における基材Kの搬送経路に平行とされた第2熱風用ノズル部25を有している。なお、第2熱風供給装置23の構成は、第1熱風供給装置22と同様とされているので、その他の詳しい説明については省略する。
【0028】
そして、このような熱風乾燥炉3内における熱風による塗工液の予備乾燥が行われた基材Kは、排出口3bを通って熱風乾燥炉3から排出された後に、第1連通部4を経て過熱蒸気炉5内に搬入されるようになっている。
【0029】
前記過熱蒸気炉5は、製造装置1全体の基材Kの搬送経路上における熱風乾燥炉3の下流側に配設されている。この過熱蒸気炉5は、熱風乾燥炉3内における塗工液の予備乾燥が行われた基材Kを、その長手方向において搬入および搬出自在とされている。すなわち、基材Kは、搬送経路の上流側から下流側(
図1の左側から右側)に向かって搬送され、過熱蒸気炉5内を通過可能に形成されている。
【0030】
前記過熱蒸気炉5の内部には、複数個、例えば5個のガイドローラ31が回転自在に配設されており、これらのガイドローラ31は、過熱蒸気炉5における搬入側から排出側に向かって間隔を設けるようにして配置されている。そして、これら複数個のガイドローラ31によって、過熱蒸気炉5内における基材Kの搬送経路が形成されている。すなわち、過熱蒸気炉5内に搬入された基材Kは、その塗布面を鉛直上方に向けるとともに、その底面を過熱蒸気炉5内の各ガイドローラ31に順次保持されるようにして下流側に向かって搬送されるようになっている。
【0031】
また、過熱蒸気炉5内における各ガイドローラ31に対する上部対向位置には、過熱蒸気供給装置32が配設されている。この過熱蒸気供給装置32は、過熱蒸気炉5内に過熱蒸気を供給することによって、過熱蒸気炉5内に搬入された基材K上の塗工液を、低酸素雰囲気下で加熱して塗工液中の有機溶剤を蒸発させて乾燥および硬化するようになっている。ここで、低酸素雰囲気としては、例えば、酸素濃度が500PPM以下(より好ましくは100PPM以下)の雰囲気を挙げることができる。なお、過熱蒸気の理論上の酸素濃度は5PPMとされているが、このような過熱蒸気の理論上の酸素濃度の雰囲気を実現することができるのであれば、このような酸素濃度が5PPMの雰囲気を低酸素雰囲気として採用するようにしてもよい。
【0032】
前記過熱蒸気供給装置32は、過熱蒸気炉5内における基材Kの搬送方向下流側に向かって順次連設された図示しない複数個、例えば4個の過熱蒸気用ノズル部を有している。これらの過熱蒸気用ノズル部は、隣位の2つのガイドローラ31の相互間のほぼ中央位置において基材Kの搬送経路に対してその塗工面側において近接する位置に上方から臨むように配置されている。そして、過熱蒸気用ノズル部における上部には、図示しない分岐管がそれぞれ連結されている。これらの分岐管は、その上流側の端部において図示しない1本の過熱蒸気供給管としてまとめられている。なお、過熱蒸気供給管は、過熱蒸気炉5における上壁部に形成された図示しない開孔を介して過熱蒸気炉5の外部に突出されている。また、過熱蒸気供給管における上端部には、過熱蒸気の流路を介して過熱蒸気発生ユニット(共に図示せず)が連結されており、この過熱蒸気発生ユニットには、図示しない蒸気ボイラによって生成された湿り蒸気が所定の流速で供給されるようになっている。
【0033】
このような過熱蒸気供給装置32によって、過熱蒸気炉5内の基材Kは、基材K上の塗工液が、過熱蒸気による膜凝縮伝熱によって高い熱エネルギを付与されることによって、塗工液中の溶媒がほぼ完全に蒸発して除去されることになる。そして、過熱蒸気供給装置32によって加熱された基材Kは、基材K上の塗工液が乾燥硬化されてなる図示しない薄膜の塗工層が形成された積層シートSの状態として過熱蒸気炉5から排出されるようになっている。
【0034】
そして、このような過熱蒸気炉5内における過熱蒸気による塗工液の過熱蒸気乾燥が行われた基材Kは、排出口5bを通って過熱蒸気炉5から排出された後に、第2連通部6を経て仕上げ熱風乾燥炉7内に搬入されるようになっている。この仕上げ熱風乾燥炉7は、製造装置1全体の基材Kの搬送経路上における過熱蒸気炉5の下流側に配設されている。この仕上げ熱風乾燥炉7は、塗工手段16によって塗工液が塗布された基材Kを、その長手方向において搬入および搬出自在とされている。すなわち、基材Kは、搬送経路の上流側から下流側(
図1の左側から右側)に向かって搬送され、仕上げ熱風乾燥炉7内を通過可能に形成されている。
【0035】
前記仕上げ熱風乾燥炉7内には、複数個、例えば4個のガイドローラ41が回転自在に配設されており、これらのガイドローラ41は、仕上げ熱風乾燥炉7における搬入口7aから排出口7bに向かって間隔を設けるようにして配置されている。そして、これら複数個のガイドローラ41によって、仕上げ熱風乾燥炉7内における基材Kの搬送経路が形成されている。すなわち、仕上げ熱風乾燥炉7内に搬入された基材Kは、その塗工液が塗布された塗布面を鉛直上方に向けるとともに、塗布面に対向する底面を仕上げ熱風乾燥炉7内の各ガイドローラ41に順次保持されるようにして下流側に向かって搬送されるようになっている。
【0036】
また、仕上げ熱風乾燥炉7内における各ガイドローラ41に対する上部対向位置には、第1仕上げ熱風供給装置42および第2仕上げ熱風供給装置43からなる2台の熱風供給装置42、43が、互いに基材Kの搬送方向に間隔を設けるようにして配設されている。
【0037】
前記第1仕上げ熱風供給装置42は、仕上げ熱風乾燥炉7内の上流側に熱風を供給することによって、少なくとも仕上げ熱風乾燥炉7内における上流側の搬送経路上を搬送される基材K上の塗工液の最表面を加熱して仕上げ乾燥するようになっている。この第1仕上げ熱風供給装置42は、周知のように、仕上げ熱風乾燥炉7内における基材Kの搬送経路に平行とされた第1仕上げ熱風用ノズル部44を有している。この第1仕上げ熱風用ノズル部44は、仕上げ熱風乾燥炉7内における上流側の搬送経路上の基材Kに対してその塗工面側(
図1における上方)において近接する位置に配置されている。第1仕上げ熱風用ノズル部44における上部には、図示しない第1仕上げ熱風供給管が連結されており、この第1仕上げ熱風供給管は、仕上げ熱風乾燥炉7における上壁部に形成された図示しない第1開孔を介して仕上げ熱風乾燥炉7の外部に突出されている。また、第1仕上げ熱風供給管における上端部には、第1仕上げ熱風流路を介して第1送風加熱部(共に図示せず)が連結されており、この第1送風加熱部には、第1送風ファン(図示せず)が連結されている。このような第1仕上げ熱風供給装置42においては、第1送風ファンによって発生した気流が、第1送風加熱部において加熱された上で、熱風として第1仕上げ熱風供給管内に流入するようになっている。そして、第1仕上げ熱風供給管内に流入した熱風は、第1仕上げ熱風供給管から第1仕上げ熱風用ノズル部44へと供給された後に、この第1仕上げ熱風用ノズル部44によって
図1における下方へと噴射されるようになっている。これにより、第1仕上げ熱風用ノズル部44に臨む基材K上の塗工液に熱風が上方から吹き付けられるようになっている。なお、第1送風加熱部は、第1送風ファンから送られた風を、ニクロム線等の熱抵抗体を用いた電気加熱によって加熱するものであってもよい。
【0038】
一方、第2仕上げ熱風供給装置43は、仕上げ熱風乾燥炉7内の下流側に熱風を供給することによって、少なくとも仕上げ熱風乾燥炉7内における下流側の搬送経路上を搬送される基材K上の塗工液の最表面を加熱して予備乾燥するようになっている。この第2仕上げ熱風供給装置43は、第1仕上げ熱風供給装置42における熱風による乾燥が行われた塗工液に対して、更なる熱風による乾燥を行うようになっている。また、第2仕上げ熱風供給装置43は、第1仕上げ熱風供給装置42と同様に、仕上げ熱風乾燥炉7内における基材Kの搬送経路に平行とされた第2仕上げ熱風用ノズル部45を有している。なお、第2仕上げ熱風供給装置43の構成は、第1仕上げ熱風供給装置42と同様とされているので、その他の詳しい説明については省略する。
【0039】
そして、このような仕上げ熱風乾燥炉7内における熱風による塗工液の仕上げ乾燥が行われた基材Kは、排出口7bを通って仕上げ熱風乾燥炉7から排出された後に、第3連通部8を経て巻取り部9内に搬入されるようになっている。
【0040】
前記巻取り部9の内部には、仕上げ熱風乾燥炉7から排出された積層シートSが、第3連通部8を経て搬入されるようになっており、この巻取り部9内には、搬入された積層シートSを巻き取るための巻取りロール12が配設されている。巻取りロール12は、図示しないモータによって駆動されるようになっている。
【0041】
また、巻取り部9内における巻取りロール12に対する上流側の位置には、巻取り部9内における積層シートSの搬送経路を形成する複数個のガイドローラ51が回転自在に配設されている。なお、各ガイドローラ51の中には、基材Kにテンションを付与するように付勢されたガイドローラ51aも含まれている。そして、巻取り部9内に搬入された積層シートSは、各ガイドローラ51に順次巻回されるようにして巻取りロール12に巻き取られるようになっている。
【0042】
前記第1連通部4における上壁部には、図示しない第1排気口が形成されており、また、第2連通部6における上壁部には、図示しない第2排気口が形成されており、また、第3連通部8における上壁部には、図示しない第3排気口が形成されている。いる。さらに、これら第1排気口、第2排気口および第3排気口には、図示はしないが、排気管を介して排気ブロワが連結されている。そして、過熱蒸気炉5内において基材K上に供給された過熱蒸気は、搬入口5aまたは排出口5bを通って第1連通部4または第2連通部6に流入した上で、排気ブロワの吸引力によって吸引されて排気されるようになっている。この排気を行うことにより、塗工液から除去された有害物質(例えば、アミック酸溶液の溶媒であるNMP)を、排気と一緒に製造装置1の系外に取り出して、凝縮分離等の処理によって無害化することができ、環境汚染を防止することができる。
【0043】
そして、このような構成を備えた上で、本実施形態における製造装置1は、熱風乾燥炉3内における塗工液の乾燥である予備乾燥を、過熱蒸気炉5に搬送された基材Kの表面に過熱蒸気が結露することを防止できるように形成されている。また、基材Kを高分子材料とした場合、過熱蒸気炉5に搬送される基材K上に塗工された塗工液中の含有溶剤分を5重量%以下、好ましくは4−5重量%とすることができるように形成されている。このため、熱風乾燥炉3に供給される熱風の温度、風量等が基材Kの材料、厚さ、搬送速度、塗工液の材料、塗工厚さ等に応じて設定されるようになっている。この熱風の温度としては、100℃以上、好ましくは100−170℃とするとよい。
【0044】
本実施形態の製造装置1には、各部の動作の制御を司るための図示しない制御手段を有している。この制御手段は、各種の演算処理を行う演算部として機能するCPUと、プログラムやデータを記憶する記憶部として機能するメモリとを主として形成されている。また、制御手段には、種々の情報の表示を行うための表示装置、各種の情報の入力に用いる入力装置等も接続されている。
【0045】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0046】
本実施形態の製造装置1によれば、搬送手段14は、基材Kを長手方向に搬送することができ、塗工手段16は、基材K上に有機溶剤を含む塗工液を塗布することができ、熱風乾燥炉3は、少なくとも基材K上に塗布された塗工液の最表面を熱風により予備乾燥させることができ、過熱蒸気炉5は、基材K上に塗布された塗工液中の有機溶剤を過熱蒸気により蒸発させることができる。また、仕上げ熱風乾燥炉7は、過熱蒸気炉5を経た基材Kを更に熱風によって仕上げ乾燥することができる。
【0047】
さらに説明すると、本実施形態の製造装置1によれば、熱風乾燥炉3は、過熱蒸気炉5に搬送される基材Kを100℃以上に加熱可能に形成されている構成とされているから、過熱蒸気炉5に搬送された基材Kの表面に過熱蒸気が結露するのを確実に防止することができるし、基材Kを高分子材料とした場合における加熱蒸気による基材Kの加水分解を確実に防止することができる。
【0048】
また、本実施形態の製造装置1によれば、熱風乾燥炉3は、前記したように、過熱蒸気炉5に搬送された基材Kの結露を防止できるように形成されているから、基材Kに結露が発生することによる不具合、例えば水分付着による塗布乾燥面の突沸等の局所的な温度ムラ、金属の基材Kにおける結露による水分付着部位の乾燥後に発生する汚れや酸化、基材Kと塗布された塗工液との界面の突沸や乾燥過多による剥離が発生することなく、過熱蒸気炉5による基材K上に塗布された塗工液中の有機溶剤の蒸発による乾燥を確実に行うことができる。これにより、積層シートSの白化現象や突沸が発生するのを防止することができるので、高品質の積層シートSを効率よく得ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の製造装置1によれば、熱風乾燥炉3は、基材Kを高分子材料とした場合、過熱蒸気炉5に搬送される基材K上に塗工された塗工液中の含有溶剤分を5重量%以下とすることができるように形成されているから、基材Kを高分子材料とした場合における加熱蒸気による基材Kの加水分解を防止することができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態の製造装置1によれば、過熱蒸気炉5内に搬入された基材K上の塗工液に対して過熱蒸気を供給することにより、低酸素雰囲気下において基材K上の塗工液に対して瞬時に大きな熱エネルギを付与して塗工液中の有機溶剤を短時間でほぼ完全に除去することができるので、基材Kの酸化を防止しつつカールの発生を抑制することができるとともに、電力消費量を削減することができる。その結果、耐熱性、耐屈曲性および形状維持性等に優れた高品質の積層シートSを製造することができ、さらに、環境保護およびコストの削減を図ることができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態の製造装置1によれば、過熱蒸気炉5によって基材K上の塗工液を短時間のうちに乾燥することができるものであるため、過熱蒸気炉5における加熱工程を短縮化することができる。
【0052】
さらにまた、本実施形態の製造装置1によれば、仕上げ熱風乾燥炉7内に搬入された基材Kを100℃以上に加熱可能に形成されている構成とされているから、過熱蒸気炉5を経た基材Kを更に熱風によって仕上げ乾燥することができるので、より高品質の積層シートを製造することができる。
【0053】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。