特許第6986735号(P6986735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6986735-走行基材加工装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986735
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】走行基材加工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/02 20060101AFI20211213BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20211213BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B05C13/02
   B65H27/00 Z
   B05C9/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-108057(P2017-108057)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-202291(P2018-202291A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591091629
【氏名又は名称】株式会社康井精機
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】康井 義成
(72)【発明者】
【氏名】草野 拓
(72)【発明者】
【氏名】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】石井 敦
(72)【発明者】
【氏名】大野 和也
(72)【発明者】
【氏名】石橋 義哉
(72)【発明者】
【氏名】小菅 尚志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直哉
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−020325(JP,A)
【文献】 特開2016−169059(JP,A)
【文献】 特開2013−103217(JP,A)
【文献】 特開2006−231217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 13/02
B65H 27/00
B05C 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉状の加工室内において連続体状の基材を水平状態に貫通搬送させながら加熱加工を施す走行基材加工装置において、
前記加工室内に前記基材の搬送をガイドするガイドローラを回転自在に複数設け、各ガイドローラと前記加工室外部の駆動手段とを、各ガイドローラの熱伸縮を吸収して伝達する非接触継ぎ手手段を設け
前記ガイドローラの上側および下側にそれぞれ上側熱源手段および下側熱源手段を設け、前記両熱源手段より熱風を供給して前記加工室内を外部より与圧状態に保持できるように形成されている
ことを特徴とする走行基材加工装置。
【請求項2】
前記基材は薄膜状の被塗工基材であり、前記加工室は前記被塗工基材の片面若しくは両面に塗工された塗工剤を乾燥させる乾燥室であり、前記被接触継ぎ手手段はマグネットカップリングであり、前記両熱源手段は乾燥風として前記熱風を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行基材加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行基材加工装置に係り、特に加工室を貫通走行する基材に対して加工を施すのに好適な走行基材加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する基材に加工を施す装置としては、薄いフィルム基材を連続的に走行させながら各種の塗工材を薄く塗工する装置が挙げられる。そして、塗工材を乾燥させるための乾燥装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5834048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては乾燥室内をフィルムが浮いた状態で貫通走行している。塗工目的によっては、基材をガイドローラによって支承しながら乾燥させる必要がある。
【0005】
ところが、乾燥室内は塗工材を乾燥させるために高温に設定されているので、ガイドローラが長手方向に熱変形して伸縮するために塗工精度が悪くなることがある。
【0006】
更に、ガイドローラの伸縮を許容しながら回転させるために、駆動源の回転をオルダム継手を介して伝達しているが、ガイドローラが振動したり、騒音が発生したり、塵埃が発生してしまう。そのことが原因となってフィルムに塵埃が付着したり、ガイドローラの回転周速度が不安定となって基材にカールやスクラッチが発生するという不都合が発生していた。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、連続走行する基材を適正に加工することができ、ガイドローラを適正に回転させることができ、塗工材を乾燥させる場合には、高品質な塗工を施すことができる走行基材加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の走行基材加工装置は、密閉状の加工室内において連続体状の基材を水平状態に貫通搬送させながら加熱加工を施す走行基材加工装置において、前記加工室内に前記基材の搬送をガイドするガイドローラを回転自在に複数設け、各ガイドローラと前記加工室外部の駆動手段とを、各ガイドローラの熱伸縮を吸収して伝達する非接触継ぎ手手段を設け、前記ガイドローラの上側および下側にそれぞれ上側熱源手段および下側熱源手段を設け、前記両熱源手段より熱風を供給して前記加工室内を外部より与圧状態に保持できるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
そして、このような構成を採用したことにより、非接触継ぎ手手段を介してガイドローラを振動させることなく静寂状態を保持して適正に回転させることができ、ガイドローラの熱による伸縮も吸収して適正に回転させることができ、連続走行する基材を適正に加熱加工して高品質な被加工物を提供することができる。更に、ガイドローラの上側および下側にそれぞれ上側熱源手段および下側熱源手段を設けているので、前記両熱源手段より熱風を供給して前記加工室内を外部より与圧状態に保持できるので、外部からの塵埃の侵入を確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明において、走行基材加工装置は、前記第1の形態において、前記基材が薄膜状の被塗工基材であり、前記加工室が前記被塗工基材の片面若しくは両面に塗工された塗工剤を乾燥させる乾燥室であり、前記非接触継ぎ手手段がマグネットカップリングであり、前記両熱源手段は乾燥風として前記熱風を供給することを特徴とする。
【0011】
そして、このような構成を採用したことにより、マグネットカップリングを介してガイドローラを振動させることなく静寂状態を保持して適正に回転させることができ、ガイドローラの熱による伸縮も吸収して適正に回転させることができ、連続走行する被塗工基材の片面若しくは両面に塗工された塗工剤を適正に乾燥させて、被塗工基材にカールやスクラッチが発生することなく適正に加熱加工して、高品質な塗工が施された被塗工基材を提供することができる。更に、連続走行する被塗工基材の両面から乾燥風としての熱風を供給して被塗工基材を上下両面より空中に支承するようにして連続走行させることにより、被塗工基材にカールやスクラッチが発生することなく適正に加熱加工して、より高品質な塗工が施された被塗工基材を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る走行基材加工装置によれば、連続走行する基材を適正に加工することができ、ガイドローラを適正に回転させることができ、塗工材を乾燥させる場合には、高品質な塗工を施すことができる走行基材加工装置を提供することができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の1実施形態を示す縦断側面図
図2図1の2−2線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の走行基材加工装置を図1〜2に示す実施形態により説明する。
【0015】
本実施形態は本発明を樹脂フィルム、金属箔などの薄膜状の基材にインク、溶融樹脂などの塗工材を塗工して乾燥炉によって乾燥する場合に適用した例について説明する。
【0016】
図1〜2においては、乾燥炉1を含む構成をスケルトン的に示している。
【0017】
本実施形態においては、乾燥炉1は水平方向に長い密閉状の乾燥室2を備えている。鉛直方向に長い乾燥室2としてもよい。連続体状の基材3は公知の搬送手段(図示せず)によって、乾燥室2の一方の端部に形成されている入り口4から搬入され、他方の端部に形成されている出口5から搬出されるようにして貫通搬送されるようになっている。乾燥室5内の基材3の搬送方向には複数のガイドローラ6が所定の間隔をもって回転自在に配設されている。各ガイドローラ6は、図2に示すように、両端の回転支軸6a部分をそれぞれ軸受7によって水平に支承されているとともに乾燥室2内の温度変化による若干の軸方向の伸縮を自在にして支承されている。ガイドローラ6の一方の回転支軸6aの延長上に同軸状にして駆動手段としての駆動軸8が乾燥室2の側壁2a部分に軸受9によって回転自在に軸支されている。同軸状に対向しているガイドローラ6の一方の回転支軸6aと駆動軸8との間をガイドローラ6の軸方向の熱伸縮を吸収して伝達する非接触継ぎ手手段としての公知のマグネットカップリング10によって接続している。本実施形態のマグネットカップリング10は、磁性円盤10aをガイドローラ6の一方の回転支軸6aと駆動軸8との対向している端部に所定のギャップGを介して対向するように配置されている。このギャップGがガイドローラ6の軸方向の熱伸縮を吸収して回転力を伝達できるように作用する。なお、マグネットカップリング10としては、対向する磁性円盤10a方式に代えて、外側の円筒状磁性体の内側に半径方向および軸長方向にギャップを介しての円柱状磁性体を緩く挿入する方式としてもよい。乾燥室2の側面2aから露出している駆動軸8には公知の手段を介して駆動源から回転力が付与されるように形成されている。この場合に複数のガイドローラ6を等速の周速度となるようにするとよい。乾燥室2内には、基材3の上側および下側に基材3に塗工された塗工材を乾燥させる公知の上側熱源手段11、下側熱源手段12が設けられている。これらの熱源手段11、12より供給される熱風などにより乾燥室2内は外部より与圧状態にされて外部との遮断状態を確実に保持されるようになっている。
【0018】
次に、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0019】
乾燥炉1の運転に際しては、連続体状の基材3を所定速度で乾燥室2内を貫通走行させ、駆動源によって各駆動軸8を等速に回転させて各マグネットカップリング10を介して各ガイドドーラ6を等速に回転させ、熱源手段11、12より走行している基材3に対して熱風を付与して、基材3の上下面に塗工された塗工材を乾燥させる。乾燥室2内は与圧状態とされていて外部に対して密閉状態とされる。
【0020】
この時、各ガイドローラ6によって基材3が支承されるので、特許文献1のような浮いた状態で走行していないので、塗工材の乾燥がより良好に実行される。
【0021】
特に、各ガイドローラ6が被接触継ぎ手手段であるマグネットカップリング10を介して回転駆動されるので、振動することなく、騒音を発生することなく、極めて静寂に回転する。更に、ガイドローラ6は熱によって軸方向に伸縮しても、マグネットカップリング10がギャップGを介して吸収されるので、常に適正に回転駆動される。複数のガイドローラ6はその周速度を等速になるように制御される。
【0022】
これによって、連続走行する被塗工基材である基材3の片面若しくは両面に塗工された塗工剤を適正に乾燥させて、基材3にカールやスクラッチが発生することなく適正に加熱加工を施して、高品質な塗工が施された基材3を提供することができる。
【0023】
工程全体を通して塵埃が発生することがないので、塗工部分に塵埃が付着することも確実に防止することができ、メンテナンスも非常に簡易となる。
【0024】
前記実施形態においては、本発明を塗工材を乾燥させる乾燥炉1に適用したが、熱によって軸方向に伸縮するガイドローラを用いて加熱加工する工法に本発明を適用するとよい。その場合にも、非接触継ぎ手手段を介してガイドローラを振動させることなく静寂状態を保持して適正に回転させることができ、ガイドローラの熱による伸縮も吸収して適正に回転させることができ、連続走行する基材を適正に加熱加工して高品質な被加工物を提供することができる。
【0025】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 乾燥炉
2 乾燥室
3 基材
6 ガイドローラ
8 駆動軸
10 マグネットカップリング
図1
図2