(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の環境保護や環境意識の高まりの中で、化石燃料以外を燃料とする燃焼装置の導入や設置が求められるようになってきている。燃焼装置は様々な場面で使用される。例えば、生ごみや可燃性廃棄物の燃焼処理、土壌改質のための土壌燃焼、特殊な廃棄物の燃焼処理などの、処理のための燃焼に用いられる。あるいは、燃焼装置の燃焼によって得られる水蒸気、燃焼熱、燃焼ガス、燃焼エネルギーが利用されることも多い。例えば、燃焼エネルギーを用いた発電、燃焼熱や燃焼ガスを用いた、工場などでの熱源として利用されることがある。
【0003】
このように、燃焼そのものを必要とする場合(燃焼処理)や、燃焼によって得られる熱などのエネルギーを利用する場合(燃焼装置として)などのように、燃焼装置が様々な場面で使用されている。
【0004】
このような燃焼装置は、燃料を必要とする。これまで、多くの燃焼装置においては、燃料として化石燃料が使用されてきていた。石油、重油、天然ガスなどの化石燃料が使用されてきた。
【0005】
しかしながら、これら化石燃料の減少や価格高騰などもあり、化石燃料以外の燃料が求められている。また、化石燃料はその生産過程から燃焼による二酸化炭素排出などの問題もあり、環境保護や環境意識の点からも、代替エネルギーが求められている。
【0006】
このような化石燃料に代わり環境保護や環境意識の高まりに対応できる燃料として、自然由来のバイオマス燃料が注目されている。単なる伐採木をそのまま燃料として使用することもあるが、木材を炭化させた燃料がバイオマス燃料として使用されることも始まっている。製材所において発生する端材や、森林の間伐材などが、木質のバイオマス燃料として利用されている。
【0007】
しかしながら、近年の人口増加や森林面積の減少、林業の衰えなどもあり、端材や間伐材が減少している。あるいは木材そのものの減少による価格高騰もあって、木質のバイオマス燃料そのものの価格も高騰している問題がある。また、このような状況によって、木質バイオマス燃料の供給も不十分となっている。
【0008】
一方で、我が国においては多数の竹林が存在する。観光資源として手入れされている竹林もあるが、多くの竹林は山間部や里山などにあり、その竹林面積も非常に大きい。観光資源や庭園などとして管理されている竹林以外の竹林は、人手不足や地方人口の減少に伴って、手入れされないままの竹林が多数存在している。
【0009】
竹は、高い成長速度を有しており、手入れされない竹林においては、増え続ける竹の処理が問題となってきている。手入れされないままの竹林が増え続けることは、様々な問題を引き起こす。このため、地方自治体や地方住民が、竹林での竹の伐採作業などを行って、増え続ける竹により生じる問題を防止することがお行われている。
【0010】
しかしながら、竹の伐採によって大量の伐採竹が発生する。竹の利用用途は様々あるが、代替品も多数あることから、需要に対する供給が非常に大きく、伐採竹が余ってしまう問題に、多くの地域が悩まされている。伐採竹を処分することも、コストや環境問題の観点から簡単ではない。
【0011】
このような環境において、処分や利用用途に困っている竹の問題を解決すべく、木質バイオマス燃料に代わって、竹質バイオマス燃料が着目されるようになってきている。このような竹質バイオマス燃料の製造技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、原料である植物を微粒化する微粒化装置2と、微粒化装置2で微粒化された植物から大気圧環境下で水溶性物質を溶出させる溶出装置6と、溶出装置6から排出された植物を脱水する脱水装置である脱水機14と、脱水装置14で脱水された植物を貯留するサイロ17と、脱水装置14から排出された溶液を貯留する溶出液タンク20を有する植物性バイオ燃料改質方法を開示する。
【0014】
特許文献1は、竹を水に浸してカリウム(K)、塩素(Cl)を溶出させてから乾燥し、竹を燃料として使用することを開示する。
【0015】
竹は、カリウムや塩素を含んでおり、これを含んだまま燃料として使用すると、燃焼装置内で好ましくないガスを発生させたり、クリンカや不完全燃焼の不純物を生じさせたりする問題がある。クリンカや不純物は、燃焼装置内部に付着してしまい、燃焼装置の劣化を生じさせる問題もある。
【0016】
特許文献1は、水溶によってこれらカリウムや塩素を竹から除去することを目的としている。
【0017】
しかしながら、水溶によるこれらカリウムや塩素の除去は不十分である。水溶による水溶性物質の抽出そのもののレベルと能力に限界があるからである。また、竹や自然環境によってあるいは天候環境によって、含有するカリウムや塩素の量が、大きくばらつく。産地が異なったり、伐採時期が異なったりするだけで含有するカリウムや塩素の量が大きく異なる。
【0018】
水溶性抽出では、この量のばらつきに対応が難しい。一定のレベルでの抽出となってしまうので、水溶性抽出時間が不足すれば、多くのカリウムや塩素を含む竹からのこれらの除去が不十分となる。一方で、水溶性抽出時間を過剰にすると、少しのカリウムや塩素しか含まない竹には適していない。また、水溶性抽出時間が長くなりすぎれば、乾燥後の燃料としての燃焼能力が劣る問題にもつながる。
【0019】
また、水溶性抽出では、浸透圧などの現象によって、カリウムなどの除去に限界もあり、十分にこれらを除去できない問題もある。
【0020】
また、竹はカリウムや塩素だけでなく、竹タールも含んでいる。竹タールは、やはり燃焼時にクリンカや煙道にタール分付着体積などを生じさせる問題がある。水溶性抽出では、この竹タールは除去できず、特許文献1もこれに考慮をしていない。
【0021】
特許文献2は、竹材を切断する工程(切断工程)、切断した竹材を水に浸漬する工程(浸漬工程)、及び浸漬した竹材を水から取り出して乾燥する工程(乾燥工程)を含み、前記浸漬工程における水の温度が50〜100℃の範囲である燃料竹の製造方法を開示する。
【0022】
特許文献2も、水溶性抽出である点で、(問題1)竹によって大きくばらつきのあるカリウムや塩素の除去を、ばらつきなくかつ燃料としての欠点を生じさせずに、十分にできない、(問題2)除去能力が不十分である、(問題3)竹タールを除去できない、という、特許文献1と同じ問題を有している。
【0023】
特許文献3は、生後2年以上で枝葉部分を除去した生竹100重量%に対し、生後2年以上で枝葉部分を除去した含水率55%未満の枯れ竹25〜400重量%の割合で両方を破砕・粉砕機6に混入して破砕および粉砕し、竹ベースの混合粉末を得る破砕および粉砕工程と、破砕および粉砕工程で得られた竹ベースの混合粉末を乾燥機10で乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程で乾燥された竹ベースの混合粉末を造粒機12によって造粒し、竹ペレットを得る造粒工程とを有する構成とする竹ペレット燃料の製造方法。
【0024】
特許文献3は、乾燥および粉砕のみで竹燃料を製造するので、竹タールはいうに及ばず、カリウムや塩素も除去できない。除去できなければ、上述のように燃焼装置に対する問題が生じる。
【0025】
特許文献4は、木質系バイオマス原料を240℃以上300℃以下の温度で15分以上90分以下の時間熱分解処理した後に粉砕することで粉化を押さえながら破砕性を向上する方法、また、竹を170℃以上220℃以下の温度で15分以上120分以下の時間熱分解処理した後に破砕し、繊維方向強度を保ったまま、繊維間強度を弱める方法を開示する。
【0026】
特許文献4も、特許文献1〜3と同様の問題を有する。
【0027】
以上のように、従来技術においては、竹質バイオマス燃料を得るのに、含有する不純物を十分に除去して、燃焼装置での燃料として使用する際の問題点を生じさせにくい技術を実現できていなかった。
【0028】
本発明は、これらの問題に鑑み、カリウムなどの不純物を十分に除去して、燃料として問題なく使用できる竹質バイオマス燃料を製造する竹質バイオマス燃料
方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の竹質バイオマス燃料製造
方法は、原料竹を収容する収容室と、
前記収容室に水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
収容室に
水蒸気よりも温度が高いと共に水蒸気濃度が低い加熱水蒸気を供給する加熱水蒸気供給部と、
水蒸気および加熱水蒸気の供給を制御する制御部と、を備え、
水蒸気供給部は、水蒸気の供給量を調節できる水蒸気調節機構を有し、加熱水蒸気供給部は、加熱水蒸気の供給量を調節できる加熱水蒸気調節機構を有する竹質バイオマス燃料製造装置を用いて竹質バイオマス燃料を製造する竹質バイオマス燃料製造方法であって、
原料竹を収容室に収容した後、
制御部は、第1時間から第2時間においては、収容室に水蒸気供給部から水蒸気を供給し、第2時間から第3時間においては、収容室に加熱水蒸気供給部から加熱水蒸気を供給し、
制御部は、第1時間から第2時間においては、水蒸気調節機構を開くと共に加熱水蒸気調節機構を閉鎖し、
第2時間から第3時間においては、水蒸気調節機構を閉鎖すると共に、加熱水蒸気調節機構を開き、
水蒸気供給部が供給する水蒸気は、原料竹の温度および湿度を略均一に近づけ、
加熱水蒸気供給部が供給する加熱水蒸気は、原料竹が含有する、カリウム、塩素および竹タールを抽出除去し、
加熱水蒸気は、原料竹の乾燥も行い、
第1時間から第2時間までの時間より、第2時間から第3時間までの時間が長い。
【発明の効果】
【0030】
本発明の竹質バイオマス燃料製造
方法は、竹に対して、水蒸気を付与して全体の温度や湿度を一定にした後で、加熱水蒸気を付与することで、むらなくカリウムなどの余分成分を除去することができる。竹全体の
温度や湿度を一定にした後で、加熱水蒸気で除去するので、除去のばらつきが生じにくい。
【0031】
また、加熱水蒸気の付与によって、竹内部に含有される余分成分が熱抽出されるので、確実に除去できる。これは、カリウムや塩素だけでなく、竹タールについても同様である。単なる熱付与ではなく加熱水蒸気の付与であるので、竹の炭素成分などへの影響を与えにくい。
【0032】
水蒸気や加熱水蒸気は、実際に竹質バイオマス燃料を用いた燃焼装置からの排出物を利用することができ、全体としての循環の仕組みができる。結果として、処分に困る竹を活用しつつも、循環型燃焼システムを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置は、原料竹を収容する収容室と、
収容室に水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
収容室に加熱水蒸気を供給する加熱水蒸気供給部と、
水蒸気および加熱水蒸気の供給を制御する制御部と、を備え、
制御部は、第1時間から第2時間においては、収容室に水蒸気供給部から水蒸気を供給し、第2時間から第3時間においては、収容室に加熱水蒸気供給部から加熱水蒸気を供給する。
【0035】
この構成により、原料竹の温度および湿度を均一化した上で、加熱水蒸気により余分成分を除去して竹質バイオマス燃料を製造できる。
【0036】
本発明の第2の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第1の発明に加えて、水蒸気供給部は、水蒸気の供給量を調節できる水蒸気調節機構を有し、加熱水蒸気供給部は、加熱水蒸気の供給量を調節できる加熱水蒸気調節機構を有する。
【0037】
この構成により、制御部は、水蒸気の供給量の調節や停止、加熱水蒸気の供給量の調節や停止などを、適切に行うことができる。
【0038】
本発明の第3の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第2の発明に加えて、制御部は、
第1時間から第2時間においては、水蒸気調節機構を開くと共に加熱水蒸気調節機構を閉鎖し、
第2時間から第3時間においては、水蒸気調節機構を閉鎖すると共に、加熱水蒸気調節機構を開く。
【0039】
この構成により、水蒸気を供給する期間と加熱水蒸気を供給する期間とを切り替えることができる。
【0040】
本発明の第4の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、水蒸気供給部が供給する水蒸気は、原料竹の温度および湿度を略均一に近づけ、
加熱水蒸気供給部が供給する加熱水蒸気は、原料竹が含有する、カリウム、塩素および竹タールを抽出除去する。
【0041】
この構成により、確実に余分成分を除去できる。
【0042】
本発明の第5の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第4の発明に加えて、加熱水蒸気は、原料竹の乾燥も行う。
【0043】
この構成により、余分成分を除去しつつ、乾燥させて竹質バイオマス燃料を製造することができる。
【0044】
本発明の第6の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、記第1時間から第2時間までの時間より、第2時間から第3時間までの時間が長い。
【0045】
この構成により、余分成分の除去や乾燥を確実に行うことができる。
【0046】
本発明の第7の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第1の発明に加えて、水蒸気は、燃焼装置からの排出される水蒸気から得られ、
加熱水蒸気は、燃焼装置から排出される水蒸気と燃焼装置から排出される排熱とが混合されることで得られる。
【0047】
この構成により、燃焼装置と燃料製造装置とのサイクルシステムを実現できる。
【0048】
本発明の第8の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、加熱水蒸気は、水蒸気よりも温度が高いと共に水蒸気濃度が低い。
【0049】
この構成により、加熱水蒸気が、確実に除去や乾燥を行える。特に、塩素やカリウムだけでなく、竹タールも除去できる。
【0050】
本発明の第9の発明に係る竹質バイオマス燃料製造装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記原料竹もしくは前記収容室の温度を検出する温度センサーおよび湿度を検出する湿度センサーの少なくとも一つを更に備え、
【0051】
前記制御部は、前記温度センサーおよび前記湿度センサーの少なくとも一方の検出結果に基づいて、前記第1時間から前記第2時間までの時間および前記第2時間から前記第3時間までの時間の少なくとも一方を調節する。
【0052】
この構成により、原料竹の状態を反映した処理が実現できる。
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0055】
(全体概要)
本発明の実施の形態1における竹質バイオマス燃焼製造装置の全体概要を説明する。竹質バイオマス燃料とは、竹を原料として、燃焼装置で使用可能として得られる燃料である。
【0056】
図1は、本発明の実施の形態1における竹質バイオマス燃料製造装置の模式図である。竹質バイオマス燃料製造装置1は、原料竹10を基に、竹質バイオマス燃料を製造する。竹質バイオマス燃料製造装置1(以下、必要に応じて「燃料製造装置」と略す)は、収容室5、水蒸気供給部2、加熱水蒸気供給部3、制御部4と、を備える。
【0057】
収容室5は、竹質バイオマス燃料の原料となる原料竹10(竹林から伐採されたもの、各種のルートで入手される伐採竹など)を、収容する。水蒸気供給部2は、収容室5に水蒸気を供給する。水蒸気供給部2は、水蒸気が供給される供給路22を備えており、供給路22を通じて、収容室5に水蒸気を供給する。
【0058】
加熱水蒸気供給部3は、収容室5に加熱水蒸気を供給する。加熱水蒸気供給部3は、加熱水蒸気が供給される供給路32を備えており、供給路32を通じて、収容室5に加熱水蒸気を供給できる。
【0059】
制御部4は、水蒸気および加熱水蒸気の供給を制御する。制御部4は、水蒸気供給部2と加熱水蒸気供給部3とを制御することで、水蒸気および加熱水蒸気の供給を制御する。この制御によって、収容室5に供給される水蒸気と加熱水蒸気の供給量や供給時間が制御される。
【0060】
制御部4は、第1時間から第2時間までの間(第1時刻から第2時刻までの間)においては、収容室5に水蒸気供給部2から水蒸気を供給し、第2時間から第3時間までの間(第2時刻から第3時刻までの間)においては、収容室5に加熱水蒸気供給部3から加熱水蒸気を供給する。
【0061】
このとき、制御部4は、第1時間から第2時間までは、水蒸気供給部2から収容室5に対して、水蒸気のみを供給し、第2時間から第3時間までは、加熱水蒸気供給部3から収容室5に対して、加熱水蒸気のみを供給することもよい。この場合には、第2時間を境に、収容室5に供給されるのが、水蒸気から加熱水蒸気に変化する。
【0062】
図2は、本発明の実施の形態1における収容室への水蒸気等の供給を時間軸で示す模式図である。
【0063】
第1時間から第2時間までは、制御部4は、水蒸気供給部2を供給状態に制御して、供給路22から水蒸気を収容室5に供給する。第2時間から第3時間までは、制御部4は、加熱水蒸気供給部3を供給状態に制御して、供給路32から加熱水蒸気を収容室5に供給する。
【0064】
図2に示される通り、第1時間から第2時間までは水蒸気が供給される状態であり、第2時間から第3時間までは、加熱水蒸気が供給される状態である。もちろん、
図2のように第2時間で完全に入れ替わるのではなく、水蒸気が供給される時間帯と加熱水蒸気が供給される時間帯が重複してもよい。
【0065】
ここで、水蒸気供給部2から収容室5に水蒸気が供給されると、原料竹10に水蒸気が付与される。この水蒸気は、原料竹10の温度および湿度を、全体として略均一に近づける。例えば、単体の原料竹における全体において、温度および湿度を略均一に近づけることができる。あるいは、複数の原料竹の全体において、温度および湿度を略均一に近づけることができる。
【0066】
その後に加熱水蒸気が収容室5に供給されると、原料竹10に加熱水蒸気が付与される。加熱水蒸気は湿度としては水蒸気よりも低く温度が高い。この加熱水蒸気が付与されることで、原料竹10に含まれるカリウム、塩素、竹タールなどの不純成分が抽出・除去される。加えて、加熱水蒸気の有する熱によって、乾燥が進み、竹質バイオマス燃料が製造される。
【0067】
原料竹10は、加熱水蒸気の付与によって、不純成分が抽出除去されると共に、乾燥されて竹質バイオマス燃料とされる。ここで、原料竹10は、産地、伐採時期、伐採時期の天候や環境、運搬期間、運搬時の環境などによって、その含有する不純成分の量や含有率は、大きく変動する。水分量が多い原料竹と水分量が少ない原料竹とでは、不純成分の含有量や含有率は大きく相違する。
【0068】
この大きな相違が残っているままで加熱されても、不純成分の除去がばらついてしまう。ばらついてしまうことによって、不純成分が残った竹質バイオマス燃料となってしまう。これが従来技術の問題点であった。
【0069】
本発明の燃料製造装置1は、加熱水蒸気を供給する前に、水蒸気を供給して、原料竹10の温度および湿度を略均一に近づける。この結果、不純成分の含有量や含有率のばらつきが抑えられる。加えて、加熱水蒸気が供給されて不純成分が除去されつつ乾燥される場合にも、全体として均一に進みやすくなる。結果として、ばらつきがない不純成分の除去と乾燥が可能となる。
【0070】
これらの結果、塩素、カリウム、竹タールなどの不純成分が十分に除去された竹質バイオマス燃料を得ることができる。特に、加熱水蒸気は、塩素やカリウムのみならず、竹タールも抽出・除去できる。従来の乾燥や燃焼だけでは困難であった竹タールの除去もできる。
【0071】
(水蒸気供給部と加熱水蒸気供給部)
水蒸気供給部2は、水蒸気調節機構21を備える。水蒸気調節機構21は、水蒸気の供給量を調節できる。水蒸気調節機構21は、例えば、調節弁であって、調節弁の開閉によって水蒸気の供給量を調節できる。
【0072】
加熱水蒸気供給部3は、加熱水蒸気調節機構31を備える。加熱水蒸気調節機構31は、加熱水蒸気の供給量を調節できる。例えば、調節弁であって、調節弁の開閉によって加熱水蒸気の供給量を調節できる。
【0073】
水蒸気調節機構21も加熱水蒸気調節機構31も、閉鎖可能であるので、水蒸気あるいは加熱水蒸気の供給を停止させることもできる。
【0074】
制御部4は、水蒸気調節機構21を制御することで、収容室5への水蒸気の供給量を(停止も含めて)、調節できる。制御部4は、加熱水蒸気調節機構31を制御することで、収容室5への加熱水蒸気の供給量を(停止も含めて)、調節できる。
【0075】
第1時間から第2時間においては、制御部4は、水蒸気調節機構21を開くと共に加熱水蒸気調節機構31を閉鎖する。この制御によって、収容室5には、水蒸気のみが供給される。
【0076】
第2時間から第3時間においては、制御部4は、水蒸気調節機構21を閉鎖すると共に加熱水蒸気調節機構31を開く。この制御によって、第2時間から第3時間においては、収容室5には、加熱水蒸気のみが供給される。
【0077】
このように、第1時間から第2時間までの間においては、水蒸気によって原料竹10の温度や湿度が略均一に近づけられ、第2時間から第3時間までの間においては、加熱水蒸気によって、原料竹10の不純成分が抽出・除去されるようになる。これらを経て、原料竹10から竹質バイオマス燃料が製造される。
【0078】
また、加熱水蒸気は、収容室5の原料竹10の乾燥も行う。加熱水蒸気は、高い温度の熱量を有しており、この高温により、原料竹10を乾燥させることができるからである。乾燥がされることで、原料竹10は、燃料として使用できる、竹質バイオマス燃料となる。
【0079】
このとき、水蒸気調節機構21は、供給路22に備わっており、開閉によって供給路22での水蒸気の供給が切り替わる。同様に、加熱水蒸気調節機構31は、供給路32に備わっており、開閉によって供給路32での加熱水蒸気の供給が切り替わる。
【0080】
以上のように、実施の形態1の竹質バイオマス燃料製造装置1は、水蒸気と加熱水蒸気を用いて、原料竹10のカリウム、塩素、竹タールなどの余分成分を抽出・除去できる。これらの余分成分が除去された、使用時にクリンカや不完全燃焼ガスなどが発生しにくい竹質バイオマス燃料を製造することができる。特に、ばらつきや不良品の竹質バイオマス燃料が生じにくいメリットを生み出せる。
【0082】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明した竹質バイオマス燃料製造装置1の種々の工夫について説明する。
【0083】
(供給時間)
図3は、本発明の実施の形態2における水蒸気等の供給を時間軸で示す模式図である。制御部4は、第1時間から第2時間までにおいて、水蒸気を収容室5に供給し、第2時間から第3時間までにおいて、加熱水蒸気を収容室5に供給する。
【0084】
ここで、水蒸気が供給される第1時間から第2時間までの時間と、加熱水蒸気が供給される第2時間から第3時間までの時間とは、種々であってよい。ほぼ同一の長さの時間であってもよい。
【0085】
一方で、第1時間から第2時間までの長さよりも第2時間から第3時間までの長さが長いことも好適である。
図3は、この状態を示している。第1時間から第2時間までの長さは、水蒸気が供給される時間である。水蒸気は、上述した通り、収容室5に収容されている原料竹10の温度や湿度を略均一に近づける。
【0086】
これに対して、第2時間から第3時間までの間は、加熱水蒸気が供給される時間である。加熱水蒸気は、上述した通り、収容室5に収容されている原料竹10の余分成分を除去しつつ乾燥させる時間である。
【0087】
この観点から、
図3のように、第1時間から第2時間までの長さよりも、第2時間から第3時間までの長さが長いことも好適である。
【0088】
もちろん、水蒸気の供給と加熱水蒸気の供給とが複数回繰り返されてもよい。あるいは、両方が供給される時間があってもよい。また、収容室5内部に温度センサー、湿度センサーが設けられており、このセンサーの検出結果を読み出した制御部4が、第1時間から第2時間までの時間、第2時間から第3時間までの時間を、調節することも好適である。
【0089】
あるいは、水蒸気供給から加熱水蒸気供給がすぐに切り替わるのではなく、一定のインターバルがあってから切り替わることでもよい。
【0090】
(加熱水蒸気の特性)
加熱水蒸気は、水蒸気よりも温度が高いと共に湿度が低い(水分濃度が低い)。加熱水蒸気は、水蒸気に熱量のある熱が加わって加熱されるか、外部からの燃焼熱によって加熱されるかして得られる。このような特性を有することで、加熱水蒸気は、湿度を有する高い温度を原料竹10に付与して、原料竹10の余分成分を抽出・除去できる。
【0091】
なお、第2時間から第3時間までの間に、熱風のみが加えられてもよい。
【0092】
(水蒸気等の供給)
実施の形態1で説明した竹質バイオマス燃料装置1に供給される水蒸気および加熱水蒸気の生成経路について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2における竹質バイオマス燃料製造装置と周辺とを含む模式図である。
【0093】
図4では、燃焼装置20(燃焼ボイラー20として把握されてもよい)が示されている。燃焼装置20は、種々の燃料を用いて燃焼を行い、燃焼で得られる燃焼エネルギーを様々な分野に利用する。
【0094】
燃焼装置20は、燃料を燃焼させることで、水蒸気と排熱を生じさせることができる。これらは、他の目的のために利用されることもあるし、不要なものとして排出後に捨てられることもある。ここで、この燃焼装置20から排出される水蒸気を、水蒸気供給部2が利用することができる。
図4では、燃焼装置20から排出される水蒸気を、水蒸気供給部2が利用する状態を示している。
【0095】
また、燃焼装置20から排出される排熱を、加熱水蒸気に利用することもできる。
図4では、燃焼装置20に設けられる再加熱器50により排出される排熱によりと水蒸気が再加熱される経路が設けられており、この混合により、加熱水蒸気が得られる。混合によって得られた加熱水蒸気は、加熱水蒸気供給部3に繋がる。加熱水蒸気供給部3は、この混合によって得られた加熱水蒸気を、収容室5に供給できる。
【0096】
このように、燃焼装置20で生じる水蒸気と排熱部に設けられた再加熱器50を利用して、竹質バイオマス燃料製造装置1に必要な水蒸気と加熱水蒸気を得ることができる。このとき、燃焼装置20が、竹質バイオマス燃料を使用した燃焼装置の場合でも、これから生じる水蒸気と排熱が利用される。この構成であれば、竹質バイオマス燃料を使用した燃焼装置からの水蒸気と排熱が利用されて、竹質バイオマス燃料が製造されるサイクルが実現される。
【0097】
竹質バイオマス燃料を燃料として使用する燃焼装置20と、これから生じる水蒸気と排熱を利用して竹質バイオマス燃料製造装置1が繋がる。このつながりにより、竹質バイオマス燃料を中心としたサイクルが実現できる。燃焼装置20は、生じた燃焼エネルギーを様々な分野に利用させることができる。このサイクルにより、処分や廃棄が問題となっている竹の有効活用を実現できる。もちろん、竹から得られる竹質バイオマス燃料の余分成分が確実に除去されていることで、竹質バイオマス燃料を使用する燃焼装置20での、種々の問題も生じにくい。
【0098】
これらが相まって、竹の有効活用をしつつ燃焼エネルギーを利用するエネルギーサイクルを促進できる。
【0099】
以上、実施の形態1〜2で説明された燃焼装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。