(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986741
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ガス栓カバー
(51)【国際特許分類】
F16K 27/12 20060101AFI20211213BHJP
F16K 5/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
F16K27/12
F16K5/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-178998(P2017-178998)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-52745(P2019-52745A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】上林 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤木 顕士
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐一郎
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭49−011495(JP,Y1)
【文献】
特開2005−220525(JP,A)
【文献】
特開2000−283304(JP,A)
【文献】
実公昭48−014323(JP,Y1)
【文献】
実開平06−053866(JP,U)
【文献】
特開2008−232382(JP,A)
【文献】
実開昭55−049182(JP,U)
【文献】
特開2002−130528(JP,A)
【文献】
実開昭54−003638(JP,U)
【文献】
特開平11−094099(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0070662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00−5/22
27/00−27/12
39/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の配管接続筒部からせん収容部を介して下流側の配管接続筒部に至るガス流路が形成されるガス栓本体と、
前記せん収容部内に回動自在に収容されて前記ガス流路を開閉するせんと、
前記せんの頂面の中央に突設させた操作凸部を、裏面中央の凹部内に相対回動阻止状態に嵌め込んだ状態で、前記せん収容部の開放端側に連設された円筒部に抜け止め状態に且つ相対回動可能に装着されて前記せん収容部内のせんを回動操作する操作つまみと、
前記操作つまみと前記せんとの間に介在され且つ前記せんをせん収容部の底側へ付勢する付勢手段とを備えたガス栓に装着させるガス栓カバーにおいて、
前記操作つまみが挿通可能なつまみ挿通孔が設けられ且つ前記操作つまみ側からガス栓本体の外面に被覆させる本体カバーと、
前記本体カバーと別個に設けられ且つ、前記操作つまみの頂面形状に倣った外面形状を有すると共に、前記外面形状と同じ向きの操作つまみを略密着状態に収容可能な内面形状を有する一方開放のつまみカバーとからなり、
前記本体カバーと前記つまみカバーは、共に耐熱樹脂製とし、
前記つまみカバーには、操作つまみに抜け止め状態に係合可能な係合部が設けられ、
ガス栓本体に本体カバーを被覆させると共に、操作つまみにつまみカバーを装着させて前記係合部を係合させた状態にて、つまみカバーの開放端が、本体カバーのつまみ挿通孔の周縁に当接するように設定されているガス栓カバー。
【請求項2】
請求項1に記載のガス栓カバーにおいて、前記本体カバーのつまみ挿通孔の周縁と、つまみカバーの開放端に、それぞれ所定幅の環状鍔部を外方に向かって張り出させ、
本体カバーをガス栓本体に、つまみカバーを操作つまみにそれぞれ装着させた状態にて、各環状鍔部の対向面相互が当接するように設定されているガス栓カバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス栓カバーにおいて、本体カバーは、ガス栓本体の配管接続方向と、少なくとも他の一方向とに、連続して開放する形状に形成されているガス栓カバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のガス栓カバーにおいて、前記つまみカバー内に操作つまみを収容した状態にて、操作つまみに設けられている封印用孔に対応するつまみカバーの所定位置に孔部が設けられ、
前記孔部と前記封印用孔とに連通可能な連結部材を介して、つまみカバーは操作つまみに連結される構成としたガス栓カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓カバー、特に、ガス栓に装着させて、ガス栓を熱から保護するガス栓カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なガス栓は、
図5に示すように、配管接続筒部(31a)(31b)が両側方に連通し且つ上方開放端に円筒部(33)が延設されているせん収容部(30)からなるガス栓本体(31)と、ガス挿通孔(3a)が貫通し且つせん収容部(30)内に回動自在に収容されているせん(3)と、円筒部(33)に回動自在に取り付けられてせん(3)を回動操作する操作つまみ(4)とを備えており、上流側の配管接続筒部(31a)から、せん収容部(30)内のせん(3)のガス挿通孔(3a)を介して、下流側の配管接続筒部(31b)に至るガス流路が形成される。
せん収容部(30)は上方に向かって拡径するテーパ状内周面(35)を有すると共に、せん(3)はテーパ状内周面(35)に沿ったテーパ状外周面(36)を有する逆円錐台形状に形成されており、操作つまみ(4)を回動させると、せん(3)は、テーパ状外周面(36)を、せん収容部(30)のテーパ状内周面(35)に摺接させながら、せん収容部(30)内にて回動する。
【0003】
また、操作つまみ(4)の裏面と、せん(3)の頂面との間には、せん(3)をせん収容部(30)内に押し込んだ状態で保持するための押えバネ(5)が圧縮状態で介在されており、せん(3)は、押えバネ(5)の付勢力によって、せん収容部(30)の底側へ押し込まれた状態で収容されている。
【0004】
上記ガス栓は全体に鋳鉄製であるから熱変形する性質がある。ガス栓が温度変化の緩やかな環境下に置かれる場合では、ガス栓本体(31)及びせん(3)は、同じ膨張・収縮度合いで熱変形するため何ら問題はないが、例えば、業務用厨房で使用されるガス栓のように、燃焼機器からの輻射熱の影響を強く受けたり、熱湯や高温の油が掛かったりすると、外側に位置するガス栓本体(31)が、内部に位置するせん(3)よりも先に温度上昇し、ガス栓本体(31)のみが熱膨張することがある。
ガス栓本体(31)が熱膨張することにより、せん収容部(30)のテーパ状内周面(35)の内径が拡径すると、その内部に収容されているせん(3)が、押えバネ(5)の付勢力によって、拡径されたせん収容部(30)の底側へ一層深く押し込まれてしまう。この状態で、自然に又は冷水がかかる等してガス栓本体(31)が冷却されると、テーパ状内周面(35)の内径が収縮され、せん(3)のテーパ状外周面(36)がせん収容部(30)のテーパ状内周面(35)で加圧される。
【0005】
せん収容部(30)のテーパ状内周面(35)とせん(3)のテーパ状外周面(36)との間に十分なグリスが介在されている場合は、これら相互間の摩擦係数が小さくなるため、せん収容部(30)のテーパ状内周面(35)の内径の収縮に伴って、せん収容部(30)の底側に沈み込んだせん(3)に上昇方向の力が作用し、せん(3)をテーパに沿って押し上げて元の位置に復帰させることが出来る。しかしながら、長期に渡ってガス栓が繰り返し開閉操作されることによりグリスが薄くなったり、基油成分が枯渇してくると、摺動面相互の摩擦係数が大きくなり、この場合、せん収容部(30)の底側に沈み込んだせん(3)は上昇せず、収縮するせん収容部(30)のテーパ状内周面(35)で、せん(3)のテーパ状外周面(36)が締め付けられる。その結果、操作つまみ(4)でせん(3)を回動させることが困難となり、ガス栓の開閉操作に支障を来す不都合がある。
【0006】
上記問題を解決するために、特許文献1のように、ガス栓本体(31)の急激な温度上昇や冷却を防止するために、ガス栓全体にカバーを被覆させて、ガス栓に熱湯や高温の油、または、冷水等が掛からないようにすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−25798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のカバーは、本体カバーとつまみカバーが一体に設けられた構成であるから、例えば、ガス栓本体(31)に本体カバーを、操作つまみ(4)につまみカバーを同時に装着させると、カバーを装着した状態では操作つまみ(4)を回動させることが出来ず、ガス栓の開閉操作を行う度につまみカバーを外さなければならない。また、上記本体カバーは、ガス栓本体(31)の全体を包むように装着させる構成であるから、例えば、ガス栓本体(31)の底部が、厨房の壁面やシステムキッチンの天板等に近接又は接触する態様で設置されている既設のガス栓への後付けは困難である。さらに、つまみカバーを操作つまみ(4)に装着させた状態では、ガス栓の開閉状態を確認することが出来ない。これらのことから、上記従来のカバーは使い勝手が悪いものであった。
【0009】
本発明は、『上流側の配管接続筒部からせん収容部を介して下流側の配管接続筒部に至るガス流路が形成されるガス栓本体と、
前記せん収容部内に回動自在に収容されて前記ガス流路を開閉するせんと、
前記せんの頂面の中央に突設させた操作凸部を、裏面中央の凹部内に相対回動阻止状態に嵌め込んだ状態で、前記せん収容部の開放端側に
連設された円筒部に抜け止め状態に且つ相対回動可能に装着されて前記せん収容部内のせんを回動操作する操作つまみと、
前記操作つまみと前記せんとの間に介在され且つ前記せんをせん収容部の底側へ付勢する付勢手段とを備えたガス栓に装着させるガス栓カバー』において、既設のガス栓に容易に装着可能とし、装着させた状態でもガス栓の開閉状態が確認出来ると共に、操作つまみを操作可能とするガス栓カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、『前記操作つまみが挿通可能なつまみ挿通孔が設けられ且つ前記操作つまみ側からガス栓本体の外面に被覆させる本体カバーと、
前記本体カバーと別個に設けられ且つ、前記操作つまみの頂面形状に倣った外面形状を有すると共に、前記外面形状と同じ向きの操作つまみを略密着状態に収容可能な内面形状を有する一方開放のつまみカバーとからなり、
前記本体カバーと前記つまみカバーは、共に耐熱樹脂製とし、
前記つまみカバーには、操作つまみに抜け止め状態に係合可能な係合部が設けられ、
ガス栓本体に本体カバーを被覆させると共に、操作つまみにつまみカバーを装着させて前記係合部を係合させた状態にて、つまみカバーの開放端が、本体カバーのつまみ挿通孔の周縁に当接するように設定されている』ことである。
【0011】
上記技術的手段は次のように作用する。
つまみ挿通孔に操作つまみを挿通させて、本体カバーをガス栓本体の外面を覆うように装着させる。
また、つまみカバーの内面形状は操作つまみが略密着状態で収容可能としたから、つまみカバーは、操作つまみに回り止め状態に装着されると共に、係合部を操作つまみに係合させることによって抜け止め状態に装着可能となる。
上記要領にて、本体カバーをガス栓本体に被覆させると共に、つまみカバーを操作つまみに装着させると、本体カバーのつまみ挿通孔の周縁に、つまみカバーの開放端が当接する。係合部によって操作つまみに対して抜け止め状態に取り付けられたつまみカバーの開放端で、ガス栓本体に被覆させた本体カバーが押さえられることとなり、本体カバーはガス栓本体に装着中に不用意に浮き上がったり、ズレたりすることなく、確実にガス栓本体を保護することが出来る。
また、つまみカバーと本体カバーは別個に設けられているから、ガス栓本体に本体カバーを、操作つまみにつまみカバーを装着させた状態でも、操作つまみを回動操作させて、ガス流路を開閉することが出来る。さらに、つまみカバーの外面形状は、つまみカバー内に収容状態にある操作つまみの頂面形状に倣った形状に形成されているから、つまみカバーを装着させた状態でガス流路の開閉状態を確認することが出来る。
【0012】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『前記本体カバーのつまみ挿通孔の周縁と、つまみカバーの開放端に、それぞれ所定幅の環状鍔部を外方に向かって張り出させ、
本体カバーをガス栓本体に、つまみカバーを操作つまみにそれぞれ装着させた状態にて、各環状鍔部の対向面相互が当接するように設定されている』ことである。
ガス栓に装着させた状態にある本体カバーとつまみカバーは、各々の環状鍔部が当接することで、本体カバーは、つまみカバーで確実に且つ均等に押されることとなり、本体カバーはガス栓本体に一層確実に脱落防止状態に装着可能となる。
【0013】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『本体カバーは、ガス栓本体の配管接続方向と、少なくとも他の一方向とに、連続して開放する形状に形成されている』ことである。
本体カバーは、配管接続方向に開放すると共に、これに連続するように、少なくとも他の一方向に開放する構成であるから、本体カバーを、ガス栓の所定の方向から、つまみ挿通孔に操作つまみを挿通させながら、ガス栓本体に被せて装着することが出来る。よって、既設のガス栓への装着・取外しが容易となる。
【0014】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『前記つまみカバー内に操作つまみを収容した状態にて、操作つまみに設けられている封印用孔に対応するつまみカバーの所定位置に孔部が設けられ、
前記孔部と前記封印用孔とに連通可能な連結部材を介して、つまみカバーは操作つまみに連結される構成とした』ものである。
一般に、ガス栓を閉栓状態で封印するために、操作つまみには、ガス栓本体に連結される封印用線材を挿通させるための封印用孔が設けられている。操作つまみをつまみカバー内に収容したとき、前記封印用孔に対応するつまみカバーの所定位置に孔部を設けると共に、両者に連結部材を連通させて固定することにより、つまみカバーは、操作つまみに対して確実に抜け止め状態に連結され、不用意に外れることがない。
【発明の効果】
【0015】
本体カバーは、つまみ挿通孔に操作つまみを挿通させて、ガス栓本体の頂面側から被せるだけであるから、ガス栓本体への本体カバーの装着、取外しが容易であり、既設のガス栓へも装着可能である。
つまみカバーは、係合部を操作つまみに係合させることにより、操作つまみに抜け止め状態に取り付けられ、この状態にて、つまみカバーの開放端が、ガス栓本体に被覆させた本体カバーのつまみ挿通孔の周縁に当接する構成としたから、ガス栓本体に被覆させた本体カバーは、操作つまみに抜け止め状態に装着させたつまみカバーによって押さえられ、ガス栓本体から不用意に浮き上がったり、ズレたりすることがない。よって、ガス栓本体は、本体カバーにより、燃焼機器からの輻射熱や飛散する熱湯や高温の油から確実に保護されることとなり、熱膨張や収縮を防止することが出来る。言い換えれば、せん収容部が温度変化により拡径、縮径を繰り返すことがないから、せんが、付勢手段の付勢力によってせん収容部の底側へ押し込まれたまま回動し難くなるといった不都合が防止され、操作つまみによるせんのスムーズな開閉操作を長期にわたって持続することができる。
【0016】
また、つまみカバーと本体カバーは別個に設けられているから、ガス栓本体に本体カバーを、操作つまみにつまみカバーを装着させた状態でも、操作つまみをつまみカバーと共に回動操作させて、ガス流路を開閉することが出来る。
また、つまみカバーの内面形状は操作つまみが略密着状態で収容可能な形状としたから、つまみカバーは操作つまみに対して回り止め状態に装着されると共に、操作つまみよりも一回り大きく形成されるため、手で支持し易い。よって、ガス流路を開閉操作する際に、操作つまみにかかる操作力が多少大きい場合でも、つまみカバーをつかんで回動させることにより、回動操作し易いものとなる。
さらに、つまみカバーの外面形状は、その内面に収容させた操作つまみの頂面形状に倣った形状としたから、操作つまみの頂面に、ガス流路の方向を示す突起等を設けておけば、つまみカバーにも表れる突起を目印に、ガス流路の開閉を確認することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態のガス栓カバーとガス栓とを示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態のガス栓カバーの本体カバーのみをガス栓に装着させた状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態のガス栓カバーをガス栓に装着させた状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態のガス栓カバーをガス栓に装着させた状態を示す使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本願発明の実施の形態におけるガス栓カバー(100)と、これを装着させるガス栓の分解斜視図であり、
図2は、
図1のガス栓に本体カバー(1)のみを装着させた状態を示す斜視図であり、
図3は、さらに、つまみカバー(2)も装着させた状態を示している。
ガス栓カバー(100)を装着させるガス栓としては、
図5に示した従来の鋳鉄製のガス栓と同様なものが採用可能であり、
図1において上方開放端部に円筒部(33)が連設され且つ逆円錐台形状のせん(3)が収容されるせん収容部(30)と、せん収容部(30)の胴部の両側方にそれぞれ連通状態に連設された配管接続筒部(31a)(31b)とからガス栓本体(31)が構成されている。せん(3)に貫通させたガス通過孔(3a)の両開放端を、配管接続筒部(31a)(31b)側に向けると、ガス栓は開栓状態となり、上流側の配管接続筒部(31a)から、せん(3)のガス通過孔(3a)を介して、下流側のガス流出筒部(31b)に至るガス流路が形成される。この開栓状態から、せん(3)を90度回転させると、前記ガス流路は閉塞され、ガス栓は閉栓状態となる。
【0019】
せん(3)の頂面(34)の中央に突設させた一対の操作凸部(32)(32)を操作つまみ(4)の裏面中央の凹部(図示せず)内に相対回動阻止状態に嵌め込んだ状態で、操作つまみ(4)を、円筒部(33)に抜け止め状態に且つ相対回動可能に装着する。これにより、操作つまみ(4)を回動させることで、せん(3)も同方向に回動させることができ、ガス流路を開閉させることができる。
なお、せん(3)の頂面(34)と操作つまみ(4)の裏面との間には、押えバネ(5)が介在されており、せん(3)は、押えバネ(5)によって、せん収容部(30)の底側へ押圧されながら、操作つまみ(4)の回動操作によって、せん収容部(30)内で回動される。
【0020】
操作つまみ(4)の頂面には、一つの直径に沿って操作用突起部(41)が、せん(3)のガス通過孔(3a)に沿って突設されている。すなわち、
図1に示すように、操作用突起部(41)の両端部(41a)(41b)が、配管接続筒部(31a)(31b)側にそれぞれ位置する姿勢のとき、ガス栓は開栓状態にあり、その状態から、90度回動させて、操作用突起部(41)が配管接続筒部(31a)(31b)に対して直交する姿勢のとき、ガス栓が閉栓状態であることがわかる。
また、操作用突起部(41)の両端部(41a)(41b)は、操作つまみ(4)の円形胴部の外周面より外方に突出する長さに形成されており、一方の端部(41a)には、ガス栓を閉栓状態で封印する際に、封印用線材(図示せず)を挿通させるための封印用孔(40)が貫通している。 なお、この封印用孔(40)が形成されている側の端部(41a)が、開栓状態では、ガス流路の上流側となるように取り付けられる。
【0021】
次に、ガス栓カバー(100)について説明する。
ガス栓カバー(100)は、ガス栓本体(31)に略密着状態に被覆させる本体カバー(1)と、操作つまみ(4)に略密着状態に被覆させるつまみカバー(2)とからなり、両者共に耐熱樹脂製とする。
【0022】
本体カバー(1)は、ガス栓本体(31)の配管接続筒部(31a)(31b)への配管接続方向と、図面における下方に連続して開放すると共に、その頂面には、操作つまみ(4)が挿通可能な大きさ形状のつまみ挿通孔(10)が開放している。すなわち、本体カバー(1)は、つまみ挿通孔(10)の対向する両側に、せん収容部(30)と配管接続筒部(31a)(31b)を含むガス栓本体(31)の両側面をそれぞれ保護する一対の保護板(12)(12)が垂下する形状となっている。
なお、保護板(12)(12)における配管接続方向の両開放部(13a)(13b)の上辺の形状は、六角筒状の配管接続筒部(31a)(31b)の頂部の二辺に沿った山状に形成されている。
【0023】
つまみ挿通孔(10)の形状は、操作つまみ(4)の浅い円形胴部が挿通可能な円形孔部における前記配管接続方向の対向位置に、操作用突起部(41)の両端部(41a)(41b)を挿通させるための逃がし部(10a)(10b)がそれぞれ連続する形状に形成されている。
また、逃がし部(10a)(10b)を含むつまみ挿通孔(10)の外周縁全域には、環状鍔部(11)を張り出させている。
【0024】
操作つまみ(4)の上から被覆させるつまみカバー(2)は、操作つまみ(4)の頂面形状に倣った外面形状を有しており、操作用突起部(41)に対応する位置には、突起カバー部(21)が突設されている。この突起カバー部(21)は中空であり、操作用突起部(41)を突起カバー部(21)内に挿入させながら、操作つまみ(4)の頂面全体をつまみカバー(2)内に略密着状態に収容することが出来る。これにより、つまみカバー(2)は操作つまみ(4)に対して回り止め状態に被覆されることとなる。
なお、つまみカバー(2)の開放端には、環状鍔部(22)を外方に張り出させている。
【0025】
なお、操作つまみ(4)の操作用突起部(41)の下流側の端部(41b)に対応する突起カバー部(21)の一方の端部(21b)の開放端には、
図4に示すように、操作用突起部(41)の一方の端部(41b)の裏面に係合させる係合部(23)が設けられている。
また、つまみカバー(2)内に操作つまみ(4)を収容したとき、封印用孔(40)に対応する突起カバー部(21)の側面には孔部(20)を貫通させている。
【0026】
上記した本体カバー(1)とつまみカバー(2)とからなるガス栓カバー(100)を、ガス栓本体(31)に操作つまみ(4)が組み付けられたガス栓に装着させるには、まず、操作用突起(41)の両端部(41a)(41b)を配管接続筒部(31a)(31b)側に位置させて、ガス栓を開栓状態とする。
この状態にて、本体カバー(1)に形成されているつまみ挿通孔(10)の逃がし部(10a)(10b)を、操作つまみ(4)の操作用突起部(41)の両端部(41a)(41b)に対応させて、つまみ挿通孔(10)に操作つまみ(4)を挿通させる。これにより、本体カバー(1)は、
図2に示すように、配管接続方向に開放する開放部(13a)(13b)が、配管接続筒部(31a)(31b)の上部を覆い且つ、一対の保護板(12)がガス栓本体(31)の両側面の略全域を覆うように、ガス栓本体(31)に被覆される。このとき、操作つまみ(4)の円形胴部の下端に対応する位置にあるつまみ挿通孔(10)の周縁には、本体カバー(1)の環状鍔部(11)が外方に張り出す態様となっている。
なお、この状態では、本体カバー(1)は、ガス栓本体(31)に被覆させただけであり、固定されていない。
【0027】
次に、
図2に示した状態にあるガス栓の操作つまみ(4)に、つまみカバー(2)を装着させる。これには、上記したように、操作つまみ(4)の操作用突起部(41)に、つまみカバー(2)の突起カバー部(21)を合わせて、突起カバー部(21)内に操作用突起部(41)を嵌め込むと同時に、係合部(23)を操作つまみ(4)の一方の端部(41b)の裏面に係合させて、つまみカバー(2)内に、操作つまみ(4)全体を略密着状態に且つ抜け止め状態に収容する。
そして、突起カバー部(21)の孔部(20)と、操作用突起部(41)の封印用孔(40)に、ボルト(50)を連続して差し込み、図示しないナットで固定することにより、つまみカバー(2)は操作つまみ(4)に対して、確実に抜け止め状態に固定されることとなる。
【0028】
このとき、つまみカバー(2)の環状鍔部(22)の下面が、本体カバー(1)の環状鍔部(11)の上面に当接するように設定されているから、操作つまみ(4)に抜け止め状態に固定されたつまみカバー(2)の環状鍔部(22)で、本体カバー(1)の環状鍔部(11)が押圧されることとなり、ガス栓本体(31)に被覆させただけの本体カバー(1)は、ガス栓本体(31)から不用意に浮き上がったり、ズレたりすることなく、確実に、ガス栓本体(31)に装着されて、保護板(12)でガス栓本体(31)の両側面を保護することが出来る。
【0029】
上記ガス栓は、
図4に示すように、上下に配設された上流側配管(51)と下流側配管(52)との間に配管接続される場合があり、この場合、上流側の配管接続筒部(31a)が下方に、下流側の配管接続筒部(31b)が上方に位置する姿勢でガス栓本体(31)が配される。この状態のガス栓本体(31)に開栓状態に取り付けられた操作つまみ(4)の操作用突起部(41)は、上流側の端部(41a)が下に、下流側の端部(41b)が上に位置する態様となっている。そこで、上側に位置する端部(41b)に、突起カバー部(21)の一方の端部(21b)を対応させると同時に、係合部(23)を、端部(41b)にその上方から係合させながら、突起カバー部(21)内に操作用突起部(41)を収容することで、つまみカバー(2)は操作つまみ(4)に落下防止状態に仮固定することが出来る。
その後、封印用孔(40)と孔部(20)とにボルト(50)を挿通させて抜け止め状態に固定することにより、つまみカバー(2)は操作つまみ(4)に確実に固定状態に装着させることが出来る。
【0030】
本体カバー(1)とつまみカバー(2)とは別体に構成されているから、本体カバー(1)をガス栓本体(31)に、つまみカバー(2)を操作つまみ(4)にそれぞれ装着させた状態でも、つまみカバー(2)と共に操作つまみ(4)を回動させることが出来る。よって、ガス栓にガス栓カバー(100)を装着させた状態でも、ガス栓の開閉操作が可能であり、ガス栓を操作するたびに、ガス栓カバー(100)を取り外す必要がない上に、つまみカバー(2)は操作つまみ(4)よりも一回り大きいから、操作つまみ(4)を直接操作するよりも、少ない力で回動させることが出来、操作し易いものとなる。
また、操作つまみ(4)の操作用突起部(41)は、ガス通過孔(3a)に沿って位置するように設定されていると共に、操作用突起部(41)に沿って突起カバー部(21)が位置するように、つまみカバー(2)は操作つまみ(4)に装着されるから、つまみカバー(2)を装着させた状態でも、ガス栓の開閉状態を確認することが出来る。
【0031】
本体カバー(1)は、配管接続方向及びこれに続く一方に開放する形状とし、ガス栓の操作つまみ(4)をつまみ挿通孔(10)に挿通させて嵌め込むだけでガス栓本体(31)に装着させることが出来るようにしたから、既設のガス栓にも問題なく取り付けることが出来る。
なお、本体カバー(1)は、ガス栓本体(31)に対して、固定されておらず、操作つまみ(4)に抜け止め状態に固定されたつまみカバー(2)の環状鍔部(22)が本体カバー(1)の環状鍔部(11)を押圧することで、ガス栓本体(31)に対して、不用意にずれたり外れたりすることはなく取り付けられる構成としたから、ガス栓本体(31)に対する本体カバー(1)の装着・取外しが容易となる。
【0032】
本体カバー(1)及びつまみカバー(2)は共に、耐熱樹脂製としたから、厨房にて、ガス栓全体を、燃焼機器からの輻射熱や、熱湯や高温の油からガス栓本体(31)や操作つまみ(4)を確実に保護してガス栓本体(31)の温度上昇を確実に防止することが出来る。よって、ガス栓本体(31)のみが熱による膨張・収縮を繰り返すようなことはなく、せん(3)が、熱により拡径させられたせん収容部(30)の底側に、押えバネ(5)の付勢力によって押し込まれた状態で固着されることはない。よって、操作つまみ(4)によるスムーズなガス栓の開閉操作が確保され、温度変化の激しい厨房でもガス栓の長期の使用が可能となる。
【0033】
また、上記実施の形態では、つまみカバー(2)の孔部(20)と操作つまみ(4)の封印用孔(40)とに連続して挿通させる連結部材として、ボルト(50)を採用したが、ボルト(50)に替えて、ピン、又は、結束バンドや針金等を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
(100) ・・・・・・ガス栓カバー
(1) ・・・・・・・本体カバー
(10)・・・・・・・つまみ挿通孔
(2) ・・・・・・・つまみカバー
(23)・・・・・・・係合部
(3) ・・・・・・・せん
(30)・・・・・・・せん収容部
(31)・・・・・・・ガス栓本体
(31a)(31b)・・・・配管接続筒部
(4) ・・・・・・・操作つまみ
(5) ・・・・・・・押えバネ(付勢手段)